説明

電子制御ユニットのメモリチェックシステム

【課題】ECUのリセット処理後再起動の時間を短縮し早期に電装品への制御を開始すると共に、メモリ異常が繰り返し検知された場合であっても電装品の誤動作やECUのリセット処理の反復を防止する。
【解決手段】車両に搭載されたROM15と、所定周期で周期処理を行うCPU13とを備えた電子制御ユニット10を備え、起動時に第1のリセット処理を開始してCPU13は周期処理を実行すると共に、周期処理の空き時間にROMのチェックを行い、メモリチェックで異常を検知した場合には、CPU13が自動的に第2のリセット処理を行い、第2のリセット処理後CPU13の周期処理の開始前に、再びROMのチェックを行い、該メモリチェックによりROM異常を検知した場合には、メモリチェックを繰り返して周期処理を行わないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御ユニットのメモリチェックシステムに関し、詳しくは、電子制御ユニットのリセット処理後の再起動に要する時間を短縮すると共に、メモリ異常による電装品の誤動作を防止するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたライトやパワーウィンドウなどの電装品は、電子制御ユニット(ECU)により制御されている。これらECUは、電装品が電力消費量の大きい高負荷状態となったり、配線にノイズが混入するなどの原因により、一時的にECUに電力を供給している電源の電圧が下がり、自動車の走行中にリセット処理を行う場合がある。
ECUがリセット処理を行った場合、演算処理部等の初期設定、記憶されているROMやRAMのメモリチェック、初期化等処理および各電装品制御用のアプリケーションの起動を含む周期処理を行い、再起動を行っている。
一方、車両や電装品の高性能化に伴い、ECUも高機能化、高性能化が進んでおり、ROMやRAMの容量が増加していると共にECUが処理すべきアプリケーションの数も増大している。
【0003】
このため、リセット処理されたECUが再起動し、リセット処理により動作を停止したアプリケーションが再び起動するまでに時間を要するという問題がある。
特に、ECUがヘッドライトやテールライトなど安全系の電装品を制御している場合、該ECUがリセット処理を行い、ヘッドライト等の制御用アプリケーションが起動するまでの時間が所定時間を越えて長くなると、点灯していたヘッドライト等が一時的に消灯してしまうなどの問題がある。
【0004】
リセット処理からアプリケーションの起動までに時間を要する原因のひとつに、ROMチェック等のメモリチェックを行う時間が長いことが挙げられる。
そこで、例えば、特開平10−83355号公報(特許文献1)においては、各電装品制御用のアプリケーションの起動を含む周期処理を優先的に行い、時間の要するROMチェックをメイン周期の余り時間に行う方法が提案されている。
ECUのリセット処理後の再起動の際に特許文献1の方法を用いると、ROMのチェックを行なう前に各電装品制御用のアプリケーションが起動するので、ECUのリセット処理後再起動に要する時間を短縮でき、早期に電装品への制御を開始することができる。
【0005】
また、特開2006−15099号公報(特許文献2)においては、電装品の重要度に応じて電装品制御用アプリケーションに優先度を付け、ECUのリセット処理後には、優先度の高いアプリケーションに関する初期設定、ROM、RAMのメモリチェック、初期化およびアプリケーションの起動を行い、その後に優先度の低いアプリケーションの初期設定等および起動を行っている。
特許文献2においても、時間を要するメモリチェックは優先度の高いアプリケーションに関するものだけを先に行っているので、ECUのリセット処理後重要な電装品への制御開始までの時間を短縮することができる。
【0006】
【特許文献1】特開平10−83355号公報
【特許文献2】特開2006−15099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1においては、全てのROMチェックが完了する前にアプリケーションが起動するため、ROMに異常があっても常にアプリケーションが起動してしまい、ECUがリセット処理を行う度に電装品の誤動作を引き起こす問題がある。
また、ROMやRAMのメモリチェックにおいてメモリ異常が検知されたときにはECUが自発的にリセット処理を行う設定とする場合が多い。特許文献2において該設定とした場合、メモリ異常を検知して自発的にリセット処理を行った後もメモリ異常が回復していなければ、電装品の誤動作を引き起こす問題がある。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、ECUのリセット処理後再起動に要する時間を短縮し早期に電装品への制御を開始すると共に、メモリ異常が繰り返し検知された場合であっても電装品の誤動作やECUのリセット処理の反復を防止することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、車両に搭載された電装品を動作させるアプリケーションおよびデータがメモリされた記憶部と、所定周期で前記アプリケーションの起動を含む周期処理を行う演算処理部を有する電子制御ユニットを備え、
起動時に第1のリセット処理を開始して初期設定を行い、前記演算処理部は前記周期処理を行うと共に、前記周期処理が開始してから前記所定周期が終了するまでの空き時間に前記記憶部のメモリチェックを行い、
前記メモリチェックでメモリ異常が検知された場合には、前記演算処理部が自動的に第2のリセット処理を行い、
前記第2のリセット処理後に、前記演算処理部の周期処理の開始前に前記メモリのチェックを行ってメモリ異常の検知時にメモリチェックを繰り返し、前記演算処理部による周期処理を行わないことを特徴とする電子制御ユニットのメモリチェックシステムを提供している。
【0010】
起動時の第1のリセット処理とは、バッテリ電源との接続などにより電子制御ユニットに電源投入がなされた場合、また、電子制御ユニットに電力を供給している電源電圧の一時的な低下、マイコンの瞬停などの後に再び電子制御ユニットに所定電圧が印加された場合など、電源電圧の変化により行われる電子制御ユニットの起動によるリセット処理を指す。
また、第2のリセット処理とは、マイコンの動作中に自発的にあるいは外部からの指令に応じて割り込み的に行われる演算処理部のリセット処理を指す。
【0011】
ECUの起動時の第1のリセット処理時には、記憶部のメモリチェックによりメモリ異常が検知されるか否かは不明であるが、メモリ異常が発生していない場合もあるため、メモリチェックよりもアプリケーションの起動を含む周期処理を優先し、メモリチェックは周期処理が開始してから前記所定周期が終了するまでの周期処理の空き時間に行う。
メモリチェックよりも周期処理を先に行うことで、第1のリセット処理後、電装品制御用のアプリケーションを早期に起動することができ、電装品への制御開始までの時間を短縮することができる。
【0012】
第1のリセット処理後の周期処理の空き時間でのメモリチェックによりメモリ異常が検知された場合には、演算処理部は自動的に再起動を行う第2のリセット処理を行う。
既に一度メモリ異常を検知しているため、第2のリセット処理後にはアプリケーションの起動を含む周期処理よりも記憶部のメモリチェックを優先する。該メモリチェックにより再びメモリ異常が検知された場合にはメモリチェックを繰り返し行う構成とすることで、メモリ異常が解消するまでは周期処理を実行しないため、アプリケーションが起動せず電装品の誤動作を防ぐことができる。
【0013】
なお、起動時の第1のリセット処理後から第2のリセット処理前までは記憶部にメモリ異常が発生している場合であっても周期処理が行われてアプリケーションが起動するが、短時間であるため電装品の動作に影響はない。
【0014】
前記記憶部にはメモリ異常回数カウンタを備え、メモリ異常が所定回数以上検知された場合、省電力モードへ移行することが好ましい。
第2のリセット処理後のメモリチェックにおいて所定回数以上メモリ異常が繰り返して検知された場合には、演算処理部は電子制御ユニットが正常に動作することができないと判断し自らを省電力モードへ移行する。省電力モードとすることで、電子制御ユニットを起動させるためのバッテリの消費を抑えることができる。
【0015】
前記第2のリセット処理後のメモリチェックでメモリ異常が検知されない場合には、再び前記第2のリセット処理を行った後、前記演算処理部が前記周期処理を実行することが好ましい。
メモリ異常が解消した場合にのみ再び第2のリセット処理を行うことで、メモリ異常を検知する度に電子制御ユニットのリセット処理が繰り返し行われることを防ぐことができる。
また、電子制御ユニットはリセット処理の度に起動信号を同じ通信バスに接続された他の電子制御ユニットに向けて送信するため、電子制御ユニットのリセット処理が繰り返されると不要な信号が通信バスに流れて通信負荷率が上昇するが、電子制御ユニットのリセット処理の繰り返しを防ぐことで、通信バスの通信負荷率の上昇を防ぐことができる。
さらに、同じ通信バスに接続された他の電子制御ユニットは、自身が省電力モードに移行可能な状態であっても起動信号を受信していると省電力モードに移行できないが、電子制御ユニットは繰り返し起動信号を送信することがないので、他の電子制御ユニットは省電力モードへの移行が可能となる。
さらにまた、前記第2のリセット処理後にはメモリチェックよりも前記周期処理を優先して実行するため、前記第2のリセット処理後ECUを早期に起動することができる。
【0016】
具体的には、前記記憶部はROMおよびRAMを備え、起動時の第1のリセット処理後にRAMチェックおよびRAMの初期化して、前記演算処理部による周期処理を行い、前記空き時間に前記ROMのチェックを実施している。
【0017】
本発明のメモリチェックシステムは、エアバックなど安全に関わる電装品や、エンジン・ハンドル制御等走行に関わる電装品を制御する電子制御ユニットに搭載されるものではないことが好ましい。
安全や走行に関わる電装品は、メモリチェックでメモリ異常が検知されてもメモリチェックを繰り返したり省電力モードとならず、動作を継続することが好ましいからである。
【0018】
本発明のメモリチェックシステムは、安全や走行に関わる電装品以外の電装品、例えばパワーウィンドウ、ドア開閉、ドアロック等のボディ系の電装品を制御する電子制御ユニットに搭載されるものであることが好ましい。
ボディ系の電装品を制御する電子制御ユニットに搭載されることで、電子制御ユニットのリセット処理後、電装品の制御開始までに時間を要さず、さらに、メモリ異常が解消するまではアプリケーションが起動せず、電装品の誤動作を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0019】
前述したように、本発明のメモリチェックシステムによれば、電子制御ユニットの起動時の第1のリセット処理時には、メモリチェックよりもアプリケーションの起動を含む周期処理を優先し、メモリチェックは周期処理が開始してから前記所定周期が終了するまでの周期処理の空き時間に行っているので、第1のリセット処理後電子制御ユニットを早期に起動することができ、電装品への制御開始までの時間を短縮することができる。
【0020】
さらに、第1のリセット処理後の周期処理の空き時間でのメモリチェックによりメモリ異常を検知した場合には、演算処理部は第2のリセット処理を行い、第2のリセット処理後の起動は周期処理よりもメモリチェックを優先する。該メモリチェックにより再びメモリ異常を検知した場合には、メモリ異常が解消するまではアプリケーションが起動せず、電装品の誤動作を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4は本発明の第1実施形態を示す。
図1は本発明のメモリチェックシステムが搭載された電子制御ユニット10(ECU)のハードウェア構成図を示し、マイコン11、入出力インターフェース12を備えている。
マイコン11は入出力インターフェース12を介して車載LANの通信線20と接続しており、通信線20に接続された他の電子制御ユニット10と情報信号を送受信している。また、イグニッションスイッチ21等を介して電源22を接続しており、電源22が入力されることで第1のリセット処理である電子制御ユニット10の起動を行っている。
【0022】
マイコン11は演算処理部であるCPU13、記憶部であるRAM14およびROM15、入出力ポート16を備えている。
ROM15はCPU13の動作のためのアプリケーションプログラム及び動作データを記憶している。
CPU13は演算処理、メモリチェック、自己リセット処理等の動作を行うものであり、各動作はアプリケーションプログラムとしてROM15に記憶され、該アプリケーションプログラムをROM15から読み出し、各動作を行っている。
メモリチェックはチェックサム演算によりROM15のメモリチェックを行うものである。
自己リセット処理は第2のリセット処理であり、マイコン11の動作中に、自発的にあるいは外部からの指令に応じて割り込み的にマイコン11のリセット処理を行うものである。
演算処理は、電子制御ユニットに接続された電装品を制御するためのアプリケーションの起動を含むメイン周期処理を行っているものであり、その処理結果を入出力ポート16、通信線20を介して外部に出力することで、電装品(図示せず)の制御を行っている。
【0023】
RAM14はCPU13が使用するデータの保存場所として利用していると共に、メモリ異常フラグFのための領域を備えている。メモリ異常フラグFの領域はROMチェックでエラーが生じた場合に該エラーを記憶するためのものである。本実施形態では、メモリ異常フラグFのオンをメモリ異常有り、メモリ異常フラグFのオフをメモリ異常無しとして、それぞれ4バイトの数値列を用いて表している。メモリ異常フラグFのオンオフは1ビットの0、1で表すと最も簡単であるが、第1のリセット処理時にRAM値にノイズが入ると、本来オンであるはずのメモリ異常フラグFの値がオフとなって記憶されるなど、誤ったフラグの状態がメモリ異常フラグFに記憶され、メモリ異常フラグFの値に信頼性がなくなるため、4バイトの数値列を用いて信頼性の向上を図っている。
なお、メモリ異常フラグFをRAM14に設けず、例えばEEPROMなどの不揮発性メモリに記憶してもよい。
【0024】
次に、マイコン11の動作を説明する。
まず、電源22の投入時のマイコン11の処理動作について図2および図3を参照して説明する。
ステップS10は起動時の第1のリセット処理であり、バッテリ電源の接続により電子制御ユニット10に電源22が投入された場合に、マイコン11の起動処理を行っている。
ステップS11は起動による初期設定を行っている。CPU13周辺レジスタの内容設定、ROM15からのプログラムの読み込み等を含む一般的な初期設定である。
ステップS12はRAM14の全アプリケーションの割当領域のチェック処理を行っている。
ステップS13はRAM14の初期化を行っている。
【0025】
ステップS14はROM15から読み出したアプリケーションのプログラムを起動して実行するメイン周期処理を行っている。ここで、ステップS14からS16までの処理はメイン周期時間に1回行うものである。
ステップS15はメイン周期時間のうち、メイン周期処理を行っていない余り時間にROMチェックを行っている。ROMチェックは、ROM15の先頭アドレスから最終アドレスまでメモリ内容を加算し、加算結果であるサム値が所定値と一致すればROM15は正常であると判定し、サム値が所定値と一致しなければROM15に異常があると判定するものである。
ROMチェックは1回のメイン周期時間内では終了せず、ステップS14からS16までの処理を複数回繰り返すことで最終アドレスまでチェックを行っている。ROMチェックの詳細については図3に後述する。
【0026】
ステップS16はメイン周期時間が経過したか否かをチェックしている。メイン周期時間が経過している場合にはステップS14に戻り、新たにメイン周期時間を開始してステップS14のメイン周期処理を行う。メイン周期時間が経過していない場合は、ステップS15に戻りROMチェックの続きを行う。
【0027】
次に、ステップS15のROMチェックの動作について、図3を用いて説明する。
ステップS20ではROM15の先頭アドレスからメモリ内容を順次加算していくROMチェックサム演算を所定時間行っている。
ステップS21では、加算が最終アドレスまで終了しているか否かを判断している。最終アドレスまで終了していない場合、加算を一時中断し、加算が終了したアドレスを記憶した後にフローチャートを終了して図2のステップS16にリターンする。
【0028】
ステップS16でメイン周期時間が経過している場合は、図2のステップS14に戻り、新たにステップS14のメイン周期処理を行った後、残り時間でステップS15のROMチェックの続きを行う。このとき、ステップS20では、前回のROMチェックで加算したアドレスの次のアドレスから加算を開始する。
このように、ステップS14からS16を繰り返してROMチェックを行い、最終アドレスまでROMチェックサム演算が終了した場合にはステップS22に進む。
【0029】
ステップS22では、ROMチェックサム演算のサム値が所定値と一致しているか否かを判定している。一致した場合にはROM15に異常がないと判定してステップS23に進む。一致しない場合には、ROM15に異常があると判定して図4に進む。
ステップS23ではROMチェックの終了処理を行っている。
【0030】
図3のステップS22でROM15に異常があると判定した場合の動作を図4を用いて説明する。
ステップS30で、RAM14に備えたメモリ異常フラグFをオンにし、メモリ異常が発生していることを記憶する。
ステップS31ではリセット処理前のフェールセーフ処理を行っている。
ステップS32では第2のリセット処理を行っている。第2のリセット処理は、CPU13が割り込み的に自らマイコン11の再起動を行うものである。なお、第2のリセット処理ではCPU13がリセット処理されるだけであり、RAM14にはリセット処理中も常に電源22が供給されているため、RAM14に記憶されたメモリ異常フラグF等の内容はリセット処理後も保存されている。
【0031】
ステップS33では、ステップ11と同様にCPU13のリセット処理後の一般的な初期設定を行っている。
ステップS34では、メモリ異常フラグFがオンか否かを判定している。ステップS30でメモリ異常フラグFをオンしているので、ステップS34ではメモリ異常フラグFはオンのままであり、ステップS35に進む。
【0032】
ステップS35では再びステップS20と同様のROMチェックサム演算を行っている。
ステップS36で最終アドレスまでRAM14の内容の加算が終了したかを判定し、終了していない場合はステップS35に戻って最終アドレスまで加算を繰り返す。最終アドレスまで加算が終了した場合はステップS37に進む。
【0033】
ステップS37ではサム値が所定値と一致しているか否かを判定している。一致していない場合は、ステップS35に戻り、再びROM15の開始アドレスからROMチェックサム演算を繰り返す。すなわち、ROM15に異常がある場合には、常にサム値は所定値と一致しないので、ステップS35のROMチェックサム演算からステップS37の判定までのROMチェックを繰り返すこととなる。
ROMチェックを繰り返して、ステップS37でサム値と所定値が一致した場合、即ちサム値が正常になり、ROM15の異常が解消した場合、ステップS38に進む。
ステップS38では、メモリ異常フラグFをオフにする。
【0034】
その後、ステップS32の第2のリセット処理に戻り、再び自己リセット処理を行う。ステップS33の初期設定を行い、ステップS34のメモリ異常フラグFがオンか否かの判定を行う。ここで、ステップS38でメモリ異常フラグFをオフにしているので、図2のステップS12に戻る。
図2のステップ12のRAM14チェック、ステップS13のRAM14初期化を行い、ステップS14からS16をメイン周期時間ごとに1回ずつ処理する。
【0035】
なお、一度図4のフローチャートの動作を行い、図4から割り込みのステップでステップS14のメイン周期処理を行っている場合には、ステップS15のROMチェックは行わず、ステップS14のメイン周期処理だけを繰り返してもよい。
また、電源22の投入時のマイコン11の処理動作において、図2のステップS11と図4からの割り込みのステップとの間に、メモリ異常フラグがオンか否かを判断するステップがあってもよい。電源投入などの起動時の第1のリセット処理後においては、メモリ異常フラグにはCPUは書き込みを行っていない状態なので、メモリ異常フラグはオンにはならず、ステップS12に進むことになる。
【0036】
本実施形態によれば、ECU10の電源投入等の第1のリセット処理時には、メモリチェックよりもアプリケーションの起動を含むメイン周期処理を優先し、メモリチェックは周期処理が開始してから前記所定周期が終了するまでの周期処理の空き時間に行うため、第1のリセット処理後ECU10を早期に起動することができ、電装品への制御開始までの時間を短縮することができる。
また、メモリ異常を検知した場合には、第2のリセット処理を行っており、第2のリセット処理後の起動はメイン周期処理よりもメモリチェックを優先するため、メモリ異常が解消するまではアプリケーションが起動せず、電装品の誤動作を防ぐことができる。
なお、本実施形態ではRAMチェックは常に初期設定の後に行っているが、ROMチェックを常に初期設定の後に行い、第1のリセット処理後メイン周期処理の後にRAMチェックを行うと共に第2リセット処理の後にRAMチェックを行ってもよい。
【0037】
図5及び図6に本発明の第2実施形態を示す。
RAM14にメモリ異常カウンタCの領域を設けており、CPU13は第2のリセット処理後のROMチェックで所定の回数以上メモリ異常を判定した場合には、ECUを省電力モードに移行している。
【0038】
第2実施形態の動作を図6を用いて説明する。
電源22の投入時のマイコン11の起動の処理動作については図2および図3に示す第1実施形態と同様である。図3のステップS22でROM15に異常があると判定した場合、図6のフローチャートの動作を行う。
【0039】
第1実施形態と同様に、メモリ異常フラグFをオン(S30)したのち、フェールセーフ処理(S31)、第2のリセット処理(S32)、初期設定(S33)を行う。ステップS34ではメモリ異常フラグFはオンのままであり、ステップS40に進む。
ステップS40ではメモリ異常カウンタCをクリアしてゼロにする。
ステップS35でROMチェックサム演算を最終アドレスまで行い、サム値が所定値と一致しておらず、ROM15が異常の場合には、ステップS41に進む。
ステップS41ではメモリ異常カウンタCをインクリメント(+1)する。
【0040】
ステップS42ではメモリ異常カウンタCが所定回数以上であるか否かを判定する。所定回数以下であれば、再びステップS35に戻りステップS37の判定までROMチェックを行い、ステップS42でメモリ異常カウンタCをインクリメントする。メモリ異常カウンタCが所定回数以上であれば、ステップS43に進む。
ステップS43では、CPU13はフェールセーフ処理を行っている。
ステップS44ではCPU13は自らを省電力モードに移行している。
【0041】
本実施形態によれば、第2のリセット処理後のメモリチェックにおいて所定回数以上メモリ異常を繰り返して検知する場合には、省電力モードへ移行させているので、ECUを起動させるためのバッテリの消費を抑えることができる。
なお、他の構成および作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明である電子制御ユニットの第1実施形態のハードウェア構成図を示す図である。
【図2】電源投入時の電子制御ユニットの動作を示すフローチャートである。
【図3】ROMチェックのフローチャートである。
【図4】ROMチェックでメモリ異常が検知された場合のフローチャートである。
【図5】第2実施形態のハードウェア構成図を示す図である。
【図6】第2実施形態を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
10 電子制御ユニット
11 マイコン
13 CPU
14 RAM
15 ROM
20 通信線
22 電源
C メモリ異常カウンタ
F メモリ異常フラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された電装品を動作させるアプリケーションおよびデータがメモリされた記憶部と、所定周期で前記アプリケーションの起動を含む周期処理を行う演算処理部を有する電子制御ユニットを備え、
起動時に第1のリセット処理を開始して初期設定を行い、前記演算処理部は前記周期処理を行うと共に、前記周期処理が開始してから前記所定周期が終了するまでの空き時間に前記記憶部のメモリチェックを行い、
前記メモリチェックでメモリ異常が検知された場合には、前記演算処理部が自動的に第2のリセット処理を行い、
前記第2のリセット処理後に、前記演算処理部の周期処理の開始前に前記メモリのチェックを行ってメモリ異常の検知時にメモリチェックを繰り返し、前記演算処理部による周期処理を行わないことを特徴とする電子制御ユニットのメモリチェックシステム。
【請求項2】
前記記憶部にはメモリ異常回数カウンタを備え、メモリ異常が所定回数以上検知された場合、省電力モードへ移行する請求項1に記載の電子制御ユニットのメモリチェックシステム。
【請求項3】
前記第2のリセット処理後のメモリチェックでメモリ異常が検知されない場合、再び前記第2のリセット処理を行った後、前記演算処理部が前記周期処理を実行する請求項1または請求項2に記載の電子制御ユニットのメモリチェックシステム。
【請求項4】
前記記憶部はROMおよびRAMを備え、前記第1のリセット処理後にRAMチェックおよびRAMの初期化して、前記演算処理部による周期処理を行い、前記空き時間に前記ROMのチェックを実施する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電子制御ユニットのメモリチェックシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−210096(P2008−210096A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45378(P2007−45378)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】