説明

電子制御式エンジン

【課題】複数のコントローラを備える電子制御式エンジンにおいて、各コントローラの異常発生を監視することができる電子制御式エンジンを提供する。
【解決手段】メインコントローラ20及びサブコントローラ30を備え、いずれか一方のコントローラで燃料噴射量を決定する電子制御式エンジン1において、一方から他方のコントローラへ動作信号を送信するメイン側出力専用線50及びサブ側出力専用線51をそれぞれ設け、動作信号の受信が所定期間途絶えたことを検知したときに相手コントローラ又は前記専用線が異常と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御式エンジンであって、メインコントローラ及びサブコントローラを備え、いずれか一方のコントローラで燃料噴射量を決定する電子制御式エンジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、メインコントローラとしてのCPUとサブコントローラとしてのバックアップ回路とを備えて、基準位置信号及び角度検出信号を双方に入力する構成であって、CPU故障時にバックアップ回路がバックアップをしている際の燃料噴射信号又は燃料噴射停止信号を出力する構成が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−79383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の電子制御式エンジンでは、バックアップ回路の異常発生の有無を監視することはできない。また、バックアップ回路は作動頻度が低いものの、必要な時には確実な作動が要求されるため、その異常発生の有無を監視する必要性は高い。
【0005】
そこで、本発明はかかる課題に鑑み、複数のコントローラを備える電子制御式エンジンにおいて、各コントローラの異常発生を監視することができる電子制御式エンジンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、メインコントローラ及びサブコントローラを備え、いずれか一方のコントローラで燃料噴射量を決定する電子制御式エンジンにおいて、一方から他方のコントローラへ動作信号を送信する専用線をそれぞれ設け、動作信号の受信が所定期間途絶えたことを検知したときに相手コントローラ又は前記専用線が異常と判定するものである。
【0008】
請求項2においては、メインコントローラ及びサブコントローラを備え、いずれか一方のコントローラで燃料噴射量を決定する電子制御式エンジンにおいて、交互に一方から他方のコントローラへ動作信号を送信する専用線を設け、動作信号の受信が所定期間途絶えたことを検知したときに相手コントローラが異常と判定するものである。
【0009】
請求項3においては、双方のコントローラが相手コントローラの異常を判定したときはメインコントローラが異常としてサブコントローラによる燃料噴射量制御に切り換えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、メインコントローラとサブコントローラとの間で相互に監視を行うことができる。
【0012】
請求項2においては、メインコントローラとサブコントローラとの間で相互に監視を行うことができる。また、通信線を共有できるので部品を削減することができる。
【0013】
請求項3においては、通信線を共用する場合に通信線に異常が発生して他方のコントローラの動作信号が受信できない場合でも対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例に係る電子制御式エンジンの全体的な構成を示したブロック図。
【図2】電子制御式エンジンを示すブロック図。
【図3】メインコントローラとサブコントローラの相互監視の構成を示すブロック図。
【図4】メインコントローラとサブコントローラの相互監視の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
まず、本発明に係る電子制御式エンジン1について図1を用いて説明する。
前記電子制御式エンジン1は、図示せぬ燃焼室内へ燃料を噴射するための複数の燃料噴射弁10を具備している。前記燃料噴射弁10は、電磁弁で構成されており、ソレノイド11、スプリング12、及びニードル13などにより構成されている。各燃料噴射弁10のソレノイド11は通常時においてはメインコントローラ20に接続されている。このように構成することにより、ソレノイド11に電流を流せばニードル13が移動して弁を開け燃焼室内へ燃料を送り込むことができる。一方、メインコントローラ20が故障した際には、各燃料噴射弁10はバックアップコントローラとしてのサブコントローラ30と接続され、該サブコントローラ30により開閉が制御される。但し、電子制御式エンジン1はラック位置をソレノイドで変更する構成であってもよく、電子制御により燃料噴射量を変更できるエンジンであれば限定するものではない。
【0016】
前記メインコントローラ20はCPU(Central Processing Unit)やRAMやROM等で構成されており、各燃料噴射弁10の開弁時間を制御することにより噴射量を調節するものである。前記メインコントローラ20は各燃料噴射弁10とメイン側切換スイッチ45を介して接続されており、また、メインコントローラ20及びサブコントローラ30の運転切換を行う制御盤40に接続されている。そして、通常時には前記メインコントローラ20が各燃料噴射弁10の開閉制御を行うものである。
【0017】
前記サブコントローラ30はCPUやRAMやROM等で構成されており、各燃料噴射弁11とサブ側切換スイッチ46を介して接続されている。また、メインコントローラ20及びサブコントローラ30の運転切換を行う制御盤40に接続されている。そして、メインコントローラ20が故障した際には、前記サブコントローラ30が各燃料噴射弁10の開閉制御を行うものである。なお、サブコントローラ30はメインコントローラ20と同様の構成であり、その役割を交換することも可能である。すなわち、通常使うコントローラがメインコントローラ20であり、バックアップさせておいたコントローラがサブコントローラ30となる。また、メインコントローラ20とサブコントローラ30にはそれぞれ回転数検知手段や温度検知手段等の検知手段が接続され、それぞれの値を同様の方法で演算し、所定の値はRAM等に記憶している。
【0018】
前記制御盤40は、前記メインコントローラ20及びサブコントローラ30の運転切換を行うものである。前記制御盤40はメインコントローラ20及びサブコントローラ30に接続されており、また、メインコントローラ20と各燃料噴射弁10とを接続するための電気回路の中途部に設けられたメイン側切換スイッチ45と接続されている。また、サブコントローラ30と各燃料噴射弁10とを接続するための電気回路の中途部に設けられたサブ側切換スイッチ46と接続されている。通常時には、前記メイン側切換スイッチ45がONとなっており、前記サブ側切換スイッチ46がOFFとなっている。
前記メイン側切換スイッチ45及びサブ側切換スイッチ46はON/OFFの切換が可能なスイッチ回路若しくはリレー回路で構成されている。
【0019】
次に、メインコントローラ20に異常が発生した時の前記燃料噴射弁10の制御について図1を用いて説明する。
前記メインコントローラ20に異常が生じた場合には、メインコントローラ20よりメイン側異常検出信号が制御盤40に入力される。その場合、制御盤40は前記メインコントローラ20に対し動作を停止するように動作停止信号を出力し、前記サブコントローラ30に対し動作開始信号を出力する。また同時に、前記メイン側切換スイッチ45をONからOFFに切り換え、サブ側切換スイッチ46をOFFからONに切り換えるものである。
【0020】
次にサブコントローラ30に異常が発生した時の前記燃料噴射弁10の制御について図2を用いて説明する。
前記サブコントローラ30に異常が生じた場合には、サブコントローラ30よりサブ側異常検出信号が制御盤40に入力される。その場合、前記制御盤40は前記サブコントローラ30に対し動作を停止するように動作停止信号を出力する。また、前記メイン側切換スイッチ45はONの状態を維持し、前記サブ側切換スイッチ46はOFFの状態を維持するものである。
【0021】
次にメインコントローラ20とサブコントローラ30との間で行われる異常発生相互監視制御について図3を用いて説明する。
前記メインコントローラ20とサブコントローラ30との間にはメイン側出力専用線50と、サブ側出力専用線51とが設けられている。メインコントローラ20とサブコントローラ30とを相互に接続して前記メイン側出力専用線50は、メインコントローラ20からサブコントローラ30へメイン側動作信号を伝達するための専用線であり、メインコントローラ20の通信ポート20a及びサブコントローラ30の通信ポート30aに接続されている。前記通信ポート20a及び通信ポート30aは動作信号を受け渡しするためのインターフェースである。また、前記メインコントローラ20からサブコントローラ30へ向けては、常にメイン側動作信号が送信されている。
【0022】
また、前記サブ側出力専用線51は、サブコントローラ30からメインコントローラ20へサブ側動作信号を伝達するための専用線であり、メインコントローラ20の通信ポート20a及びサブコントローラ30の通信ポート30aに接続されている。また、前記サブコントローラ30からメインコントローラ20へ向けては、常にサブ側動作信号が送信されている。
ここで、前記メイン側出力専用線50及びサブ側出力専用線51を介して送信される動作信号は一定の時間間隔を空けて一定の大きさで送信される間欠信号で構成されている。なお、動作信号は間欠信号のみに限られず、例えば、電圧の高低で表現された信号を用いることも可能である。
【0023】
前記メイン側出力専用線50からの動作信号が途絶えた、若しくは動作信号の時間間隔に異常が生じた場合には、サブコントローラ30はメインコントローラ20に何らかの異常があったと判断し、メイン側異常検出信号を制御盤40へと送信する。
また、前記サブ側出力専用線51からの動作信号が途絶えた、若しくは動作信号の時間間隔に異常が生じた場合には、メインコントローラ20はサブコントローラ30に何らかの異常があったと判断し、サブ側異常検出信号を制御盤40へと送信する。
【0024】
このように構成することにより、メインコントローラ20とサブコントローラ30との間で相互に異常発生の監視を行うことができる。
【0025】
また、一本の通信線55を用いたメインコントローラ20とサブコントローラ30との間の異常発生相互監視制御について図4を用いて説明する。
前記メインコントローラ20とサブコントローラ30との間には一本の通信線55が設けられている。前記通信線55は、メインコントローラ20からサブコントローラ30へメイン側動作信号を、及び、サブコントローラ30からメインコントローラ20へサブ側動作信号を、伝達するための専用線であり、メインコントローラ20の通信ポート20a及びサブコントローラ30の通信ポート30aに接続されている。前記通信ポート20a及び通信ポート30aは前記動作信号を受け渡しするためのインターフェースである。前記メインコントローラ20からサブコントローラ30へ向けて、及び、サブコントローラ30からメインコントローラ20へ向けて、常に交互にメイン側動作信号及びサブ側動作信号が送信されている。
ここで、前記通信線55を介して送信される動作信号は一定の時間間隔を空けて一定の大きさで送信される間欠信号で構成されている。なお、動作信号は間欠信号のみに限られず、例えば、電圧の高低で表現された信号を用いることも可能である。
【0026】
前記通信線55で送信されるメインコントローラ20からのメイン側動作信号が途絶えた、若しくはメイン側動作信号に異常があった場合には、サブコントローラ30はメインコントローラ20に何らかの異常があったと判断し、メイン側異常検出信号を制御盤40へと送信する。
また、前記通信線55で送信されるサブコントローラ30からのサブ側動作信号が途絶えた、若しくはサブ側動作信号に異常があった場合には、メインコントローラ20はサブコントローラ30に何らかの異常があったと判断し、サブ側異常検出信号を制御盤40へと送信する。
【0027】
このように構成することにより、メインコントローラ20とサブコントローラ30との間で相互に異常発生の監視を行うことができる。また、通信線55を共有できるので部品を削減することができる。
【0028】
前記メインコントローラ20と制御盤40との間には遅延回路56が設けられている。該遅延回路56には、メインコントローラ20からのサブ側異常検出信号が制御盤40へ到達するのを一定時間遅らせる回路である。
【0029】
例えば、通信線55が断線してしまった場合には、メインコントローラ20からのメイン側動作信号及びサブコントローラ30からのサブ側動作信号が同時に途絶えてしまうため、メインコントローラ20及びサブコントローラ30はお互いに何らかの異常があったと判断し、メインコントローラ20はサブ側異常検出信号を、サブコントローラ30はメイン側異常検出信号をそれぞれ制御盤40へと送信する。ここで、前記遅延回路56によって、メインコントローラ20から送信されたサブ側異常検出信号は制御盤40に到達するのが一定時間遅れることになる。その結果、前記サブコントローラ30からのメイン側異常検出信号が早く制御盤40に到達し、メインコントローラ20に対し、制御盤40から動作停止信号が送信されて、サブコントローラ30に動作開始信号が送信される。
【0030】
このように構成することにより、通信線55を共用する場合に通信線55に異常が発生して相手コントローラの動作信号が受信できない場合でも対処することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 電子制御式エンジン
10 燃料噴射弁
11 ソレノイド
12 スプリング
13 ニードル
20 メインコントローラ
30 サブコントローラ
40 制御盤
45 メイン側切換スイッチ
46 サブ側切換スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインコントローラ及びサブコントローラを備え、いずれか一方のコントローラで燃料噴射量を決定する電子制御式エンジンにおいて、一方から他方のコントローラへ動作信号を送信する専用線をそれぞれ設け、動作信号の受信が所定期間途絶えたことを検知したときに相手コントローラ又は前記専用線が異常と判定することを特徴とする電子制御式エンジン。
【請求項2】
メインコントローラ及びサブコントローラを備え、いずれか一方のコントローラで燃料噴射量を決定する電子制御式エンジンにおいて、交互に一方から他方のコントローラへ動作信号を送信する専用線を設け、動作信号の受信が所定期間途絶えたことを検知したときに相手コントローラが異常と判定することを特徴とする電子制御式エンジン。
【請求項3】
双方のコントローラが相手コントローラの異常を判定したときはメインコントローラが異常としてサブコントローラによる燃料噴射量制御に切り換えることを特徴とする請求項2に記載の電子制御式エンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−248986(P2010−248986A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98325(P2009−98325)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】