説明

電子回路用プラスチックフィルムおよびそれを用いた電子回路材料

【課題】電子回路用として、金属膜との接着性の高い、薄膜化に対応したプラスチックフィルムを供給する。
【解決手段】厚みが3〜12μm、200℃での熱収縮率が0.5%以下、少なくとも一方の表面の表面酸素量が20〜50%であり表面硬度が3H以下である電子回路用プラスチックフィルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路用に供するプラスチックフィルムおよび、そのプラスチックフィルムに金属膜を設けてなる電子回路材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やモバイルコンピューター、薄型テレビなどデジタル機器は小型化、薄型化、軽量化の流れから、それに用いられる電子回路やその材料の薄膜化が強く求められてきている。またインターネットやイントラネットの普及から、それらを統合するサーバーなど情報通信の統合端末などは高速化、高性能化が求められており、メモリーやCPUなどの高密度化、高集積化、高密度実装化が求められている。
【0003】
このような薄膜化の要望から、プラスチックを材料としその表面に金属配線を施してなる可撓性の印刷回路などの電子回路材料が種々検討され、とくに熱寸法安定性に優れ、かつ高弾性率を有するために薄膜化が可能である芳香族ポリアミド樹脂をそのフィルム素材に用いることが提案されている。例えば、コロナ処理を施し、かつ表面弾性率(すなわち表面硬度)を高くした芳香族ポリアミドフィルムに熱硬化性接着剤を接着する方法などである(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−123928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記方法、すなわちコロナ処理のみでは、近年求められている厳しい接着に対する信頼性を満足することが難しくなってきている。すなわち、いくらコロナ処理を高めても接着剤とフィルムとの剥離力(剥離に抗する力)は十分に上がらない傾向にある。これはプラスチックフィルム自体の表面硬度が高いと、かえって界面での微妙な力の逃げが起こらず、すぐに及んだ力が接着剤との剥離に働いてしまうためと考えられる。電子回路材料の薄膜化のため、接着剤も薄膜化の傾向にあり、ますますこの剥離力の向上は急務となってきている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、かかる問題を解決するために次の構成からなる。すなわち、厚みが3〜12μmの範囲で、200℃での熱収縮率が0.5%以下で、表面酸素量が20〜50%で、表面硬度が3H以下である電子回路用プラスチックフィルムに関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、電子回路用として、金属膜との接着性の高い、薄膜化に対応したプラスチックフィルムを供給することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のプラスチックフィルムには、耐熱性や高弾性化などの目的からポリアミド、とくに芳香族ポリアミドが好適に用いられる。さらに主として芳香族ポリアミド樹脂を60モル%以上含むことがより好適である。上記の樹脂はホモポリマーであってもよいし、コポリマーであってもよいし、また他の成分を40モル%未満の割合で混合したものでもよい。
【0008】
ここで、芳香族ポリアミドは、次の一般式(I)および/または一般式(II)で表される繰り返し単位を50モル%以上含むものが好ましく、70モル%以上からなるものがより好ましい。その他の成分として、他の繰り返し単位が共重合、またはブレンドされていても差し支えない。
一般式(I)
【0009】
【化1】

【0010】
一般式(II)
【0011】
【化2】

【0012】
ここでAr1、Ar2、Ar3は、例えば、
【0013】
【化3】

【0014】
などが挙げられ、X、Yは
−O−、−CH2−、−CO−、−SO2−、−S−、−C(CH32
などから選ばれるが、これに限定されるものではない。さらにこれらの芳香環上の水素原子の一部が、塩素、フッ素、臭素などのハロゲン基(とくに塩素)、ニトロ基、アルキル基(とくにメチル基)、アルコキシル基などの置換基で置換されているものも含み、また、重合体を構成するアミド結合中の水素が他の置換基によって置換されているものも含む。なお、Ar1、Ar2、Ar3は同じかまたは異なってもよい。またこれらは2種以上の共重合体であってもよいし、混合体であってもよい。さらに上記以外の芳香族または脂肪族の共重合成分を50モル%未満の割合で共重合されていてもよい。ここで共重合可能な成分としてはシクロヘキシレンなどの脂環族化合物、ヘキシレンなどの脂肪族化合物を挙げることができる。また上記の芳香環がパラ位で結合されたものが、全芳香環の50モル%以上、好ましくは75モル%以上を占める重合体が、フィルムのヤング率が高く耐熱性も良好となり好ましい。また芳香環上の水素原子の一部がハロゲン基(とくに塩素)で置換された芳香環が全体の30モル%以上であると耐熱性が向上し、吸湿による寸法変化、剛性低下などの特性が改善され好ましい。
【0015】
本発明のプラスチックフィルムは、加工の際のハンドリング性の観点から、少なくとも一方の方向の引っ張りヤング率で8〜16GPaの範囲であることが好ましい。引っ張りヤング率が8GPa未満では、いわゆる“腰”が無いために貼り合わせの加工性が乏しく、一方、16GPaより大きいと、フィルムの伸度が犠牲となり、切れやすかったり裂けやすかったりと、やはり加工性に乏しくなる。なお、電子回路材料に供するには、プラスチックフィルムの物性は等方的であることが好ましいため、全ての方向、とくに長手方向と幅方向のヤング率の差が3GPa未満であることが好ましい。
【0016】
また、本発明のプラスチックフィルムには、物性を損なわない程度に滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、その他の添加物などが添加されていてもよい。
【0017】
本発明のプラスチックフィルムは、電子回路材料の薄膜化の要求から、厚みが3〜12μmの範囲である。厚みが3μm未満では、薄膜化の要求を満たすことは可能であるが薄いがゆえの取り扱い難さ(加工の際の破れやシワ)があり、また微細な孔(ピンホール)が発生してしまう場合がある。一方厚みが12μmを超えると薄膜化の要求には応えられない。
【0018】
本発明のプラスチックフィルムは、200℃での熱収縮率が0.5%以下である。200℃での熱収縮率が0.5%より大きいと、加工時(接着剤とのプレス加工など)の熱により収縮が起こり、銅薄膜を接着した製品でのシワや変形などを引き起こしたり、パターニングなどを施した場合の線間の短絡などを引き起こすことがある。さらに、200℃での熱収縮率は好ましくは0.3%以下である。
【0019】
本発明のプラスチックフィルムは、一方の面の中心線表面粗さが1〜8nmの範囲であることが好ましい。中心線表面粗さが8nmを超える場合、銅薄膜を施した際に大きな突起を生じ、顕著な場合にはその突起によってパターニングを施した際に線間の断線や短絡を引き起こす可能性がある。一方、中心線平均粗さが1nm未満であると、平滑であるがゆえに摩擦が大きくなり、走行性やハンドリング性が損なわれることがある。
【0020】
中心線表面粗さを調整するには、フィルム中に粒子を0.001〜1.5重量%含有していることが好ましい。粒子含有量が0.001重量%未満では、平滑過ぎ、1.5重量%を超えると、粒子脱落が発生しやすく、表面が粗くなりすぎる。より好ましくは、0.1〜1重量%であり、さらに好ましくは0.2〜0.5重量%である。
【0021】
粒子としては、例えば架橋ポリビニルベンゼン、アクリル、架橋ポリスチレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、フッ素樹脂などの有機高分子からなる粒子、コロイダルシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カーボンブラック、ゼオライトなどの無機粒子、あるいは上記有機高分子粒子に他の有機物で被覆など各種処理を施した粒子、あるいは上記無機粒子の表面を上記有機高分子で被覆などの各種処理を施した粒子などが挙げられる。さらに、これらの中から、複数の粒子を組み合わせて用いてもよく、また大きさの異なる粒子を組み合わせて使用しても差し支えない。
【0022】
本発明のプラスチックフィルムは、少なくとも一方の表面の表面酸素量が20〜50%である。すなわち、表面酸素量が20%未満であれば銅薄膜を接着するための該耐熱接着剤とプラスチックフィルムとの接着性が十分でなくなる場合がある。このように接着性を向上させるために表面酸素量を調整する方法としては、大気放電処理法、コロナ処理法、酸素プラズマ処理法などが挙げられる。このうち、プラズマ処理による表面処理としては不活性ガスプラズマによる処理が好ましく、窒素ガス、Ne、Ar、Kr、Xeなどが用いられる。プラズマを発生させる方法に格別な制限はなく、不活性気体をプラズマ発生装置内に導入し、プラズマを発生させることで達成できる。プラズマ処理に要する時間はとくに限定されず、通常1秒〜20分、好ましくは5秒〜5分である。プラズマ処理時のプラズマの周波数と出力、プラズマ発生のためのガス圧、処理温度に関しても格別な制限はなく、プラズマ処理装置で扱える範囲であればよい。周波数は通常13.56MHz、出力は通常50W〜1,000W、ガス圧は通常0.01Pa〜10Pa 、温度は、通常20℃〜250℃、好ましくは20℃〜180℃である。出力が高すぎると、フィルムの表面に亀裂が入る懸念があり、また、ガス圧が高すぎるとフィルム表面の平滑性が低下するおそれがある。
【0023】
なお表面酸素量は接着性の観点からは多い方が好ましいが、50%を超えると、それに伴う表面の脆化、粗面化や白濁化が懸念され、これを超えないように、プラズマ処理条件を調整することが好ましく、表面酸素量は、好ましくは22〜40%、さらに好ましくは24〜30%である。
【0024】
本発明のプラスチックフィルムは、少なくとも一方の表面硬度が3H以下であることが好ましい。なお、「表面硬度が3H以下」とは、表面硬度が3Hよりも軟らかいことを意味している。
これは、表面硬度が3Hより軟らかければ、プラスチックフィルムと耐熱性接着剤の界面に剥離の力が加わった場合でもプラスチックフィルム表面に若干の変形や歪みが起こって、その力が緩和され剥離されにくくなるためである。
【0025】
本発明のプラスチックフィルムは、吸湿率が2.0%以下であることが好ましい。これは、吸湿率が2.0%より大きければ、吸湿に伴う変形や寸法変化によって電子回路材料とする際の加工性が著しく損なわれる(シワや変形)ことや、耐熱性接着剤との接着性が乏しくなること、また電子回路材料とした際の絶縁性や耐久性などに著しい品質懸念をもたらすためである。
この吸湿量の制御は、芳香環上の水素原子の一部をハロゲン基(とくに塩素)で置換することにより実現できる。
【0026】
次に、本発明のプラスチックフィルムおよび電子回路材の製造方法について、ポリアミド樹脂フィルムを例に挙げて述べるが、これに限定されるものではない。
【0027】
まずN−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性有機溶媒中で酸クロライドとジアミンを溶液重合し、その際に発生する塩化水素を水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化リチウム、炭酸リチウムなどの無機の中和剤、あるいはエチレンオキサイド、トリエチルアミン、ジエタノールアミンなどの中和剤によって中和する。これらのポリマー溶液はそのまま製膜原液として使用してもよく、また、一旦単離したのち有機溶剤あるいは硫酸などの無機溶剤に再溶解して用いてもよい。また表面粗さの調整などのため、粒子を添加する場合は、この際に添加することが好ましい。なお添加方法および希釈方法は公知の方法が適用できる。このようにして得られた製膜原液を、いわゆる溶液製膜法によってフィルム化する。なお、溶液製膜法には乾湿式法、乾式法、湿式法、半乾半湿式法などがあり、特に乾湿式法、半乾半湿式法が好ましい。なおここでは乾湿式法を例にとる。
【0028】
まず製膜原液を口金からドラム、エンドレスベルトなどの支持体上に押し出して薄膜とし、次いでかかる薄膜層から溶媒を飛散させ薄膜自体が自己支持性を持つまで乾燥する。この際の薄膜中の有機高分子体の濃度が30〜70重量%となるように乾燥温度、乾燥時間を選択する。続いて該薄膜を支持体から剥離し、20〜70℃の水中を通過させ脱塩、脱溶媒する。この際に該薄膜の延伸を行ってもよい。なお延伸にロールを用いる場合は、表面が鏡面であるロールを用いる。水中を通過させた後、一旦該薄膜を50〜100℃の温度で予熱し、その後に該薄膜の両端を把持した状態でステンターにて該薄膜を乾燥する。さらに該薄膜の両端を把持した状態で、ステンターにて250〜400℃の温度範囲で熱処理および幅方向に1.10〜1.80倍の範囲で延伸し、さらに250〜400℃の温度範囲で0.90〜0.99倍に幅方向に緩和し(すなわちリラックス)、最終的には所定の幅に裁断し製品とする。
【0029】
なお表面酸素量を所定の値とするために、延伸前、延伸中、延伸後のいずれかに、大気放電、コロナ処理、酸素プラズマなどの処理を行う。
【0030】
なお電子回路材とするには、該プラスチックフィルムの少なくとも片面に耐熱性接着剤を施し、その上に金属膜を乗せ、熱プレスを施して接着する。金属膜としては導電性金属が多く用いられるが、主として銅を主体としたものが好ましい。さらに必要が有ればパターンニングや穿孔を行う。この加工品そのものを基板として用いてもよく、あるいは回路部品の一部として回路基板に搭載して用いてもよい。
【0031】
接着剤としては、特に限定されないが、加熱により溶融する接着剤、加熱、電子線、紫外線などで硬化する接着剤、天然ゴム、合成イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体等のゴム系粘着剤、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルエーテル等のビニル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤などを主構成物とした粘着剤など公知のものが使用できる。本発明の銅からなる金属膜を接着した電子回路材の耐熱性を損なわないためには、耐熱性が高い接着層を用いることが好ましい。耐熱性が高い接着層の主構成物としては、エポキシ系、ポリエステル系、ポリイミド系、ポリアミドイミド系、ポリアミド系などの耐熱性化合物が挙げられる。また、必要に応じて、接着付与樹脂、軟化剤、酸化防止剤、難燃剤、硬化剤等を添加することができる。接着層の厚みは2〜50μmの範囲が好ましく、より好ましくは5〜50μmの範囲である。また、回路基板の薄膜化や製作コストの低減に寄与する観点からは、厚みは薄い方が好ましく、具体的には50〜10μmが好ましく、より好ましくは10〜5μmである。
【実施例】
【0032】
以下、「部」とあるのは「重量部」の意味で用いた。
【0033】
(1)フィルムのヤング率
フィルムを試料幅10mm、長さ150mmに切断し、チャック間100mmにして引張速度300mm/分、チャート速度500mm/分にて、インストロンタイプの万能引張試験装置で引張り、その際の伸度と応力の関係をプロットして、立ち上がり部分での荷重−伸び曲線の接線として求めた。
【0034】
(2)フィルムの中心線表面粗さ
デジタルインスツルメント社製SPM観測システム(TappingModeAFM、NanoScopeIII Ver.3.25。商品名)を用いて測定した。
【0035】
・測定面積 :5×5μm四方
・サンプル数:246本
・カットオフ:20μm
(3)フィルムの熱収縮率
フィルムを試料幅10mm、長さ150mm以上に切断し、所定の長さがわかるように上下に標線を記入する。上端をクリップで把持し下端に1gの重りをぶら下げてしわを取った状態で、200℃の温度に調整したオーブン内に入れて30分間加熱し、常温に戻す。このときの加熱前後の標線間の長さの差を、加熱前の標線間の長さで割って、パーセント(%)で表した。
【0036】
(4)フィルムの表面酸素量
X線光電子分光装置 ESCALLAB200iXL(VG SCIENTIFIC社製)を用い、Al−Kα1,2線にて1.49keVの条件で測定を行い、得られたチャートのO1sピーク面積から表面酸素量を求めた。
【0037】
(5)フィルムの硬度
JIS K5600−5−4(1999)引っ掻き(鉛筆法)に準じ、鉛筆をフィルムに対し角度45°、荷重750gで測定した。鉛筆は三菱製を使用した。
【0038】
(6)フィルムの吸湿率
幅方向中央部分から100mm×100mmに切り取ったフィルムを200℃で1時間乾燥した後の重量T0を測定後、25℃、75%RHに調整されたデシケーター中に48時間静置し、吸湿時の重量T1を測定し、以下の式で求めた。
【0039】
吸湿率(%)=((T1−T0)/T0)×100
(7)フィルム中の粒子含有量
フィルムを熱天秤を用いて以下の条件で加熱し、残存分を粒子含有量とした。
【0040】
装置:島津製作所(株)製 TG−40M型、データ処理:(株)東レリサーチセンター製データ処理システム「TRC−THADAP−TG」、雰囲気:空気流(50ml/分)、温度較正:高純度ニッケル(キュリーポイント=353℃)、温度範囲:室温〜1,000℃、昇温速度:20℃/分、試料量:約20mg
(8)フィルムと銅薄膜との剥離力の測定と加工性の評価
フィルムの片面に熱硬化性ポリイミド系接着剤(宇部興産(株)製UPA−85)をTHF溶液にして、乾燥後の膜厚が2μmになるように塗布後、熱風乾燥機を用い90℃で5分間乾燥し、接着剤側に銅箔(三井金属鉱業(株)製NS−VLP(厚さ12μm))を合わせ、ロールラミネーターで50MPaの圧力で、1m/分の速度でラミネートした。ラミネート後、熱風乾燥機を用い、80℃で1時間、120℃で1時間、さらに120℃で1時間ステップキュアした。さらに、得られた銅層付きフィルムを塩化第2鉄溶液で2mm幅にエッチングし、20mm幅の銅層を、TOYO BALDWIN社製“テンシロン”UTM−4−100にて引っ張り、速度50mm/分、180°剥離(剥離されるフィルム層がU字に180°折れ重なって引き剥がされる状態)で剥離力を評価し、1mm幅あたりに換算した。
【0041】
また、加工特性については、ラミネート後の外観から以下のとおり評価した。
【0042】
○:シワなどの変形は、殆ど観察されない。
【0043】
△:端部に一部シワが見られるが中央部にまでは及んでいない。
【0044】
×:シワが端部のみならず、中央部にまで及んでいる。
【0045】
(実施例1)
N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという)に、分散された一次粒径60nmのコロイダルシリカ/NMPスラリーを準備した。このスラリー中のシリカ濃度は5重量%であった。このスラリーに超音波分散を40℃で12時間施した。超音波分散の終了したスラリーを、濾過精度0.6μmのポリプロピレン製のフィルターにより濾過し、次いで、濾過精度0.9μmの燒結金属フィルター(SUS製)により濾過した。
【0046】
一方、重合槽に粒子スラリー濾過に用いたのと同様のフィルターで濾過したNMPを3,000部に2−クロルパラフェニレンジアミン114部、4,4’−ジアミノフェニルエーテル40部を溶解し、これに2−クロルテレフタル酸クロリド237.5部を添加し、2時間攪拌重合した。これを水酸化リチウムで中和して、ポリマー濃度10重量%、粘度3,000ポイズの芳香族ポリアミド溶液を得た。
【0047】
この溶液に、前記で準備したコロイダルシリカ含有スラリーを添加して、ポリマーあたり0.5重量%のコロイダルシリカの添加になるようにした。
【0048】
こうして得られた製膜原液を濾過精度5,000nmおよび1,000nmのフィルターを順次通した後、エンドレス金属ベルト上にキャスト時溶液温度60℃で流延し、150℃の熱風で2分間加熱して溶媒を蒸発させ、自己支持性を得たフィルムを金属ベルトから剥離し、40℃の水浴中に5分間浸漬導入し、残留溶媒と中和で生じた無機塩の水抽室出を行った。この際長手方向に1.3倍の延伸を行った。引き続き、両端を把持してテンターに導入した。次いでテンターで、160℃で30秒乾燥を行い、幅方向に1.4倍に延伸、温度330℃の熱風ノズルからの熱風により熱処理を2分行い、15℃/秒の速度で徐冷し、最終的に厚さ5μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。次いで、このフィルムを実質的に無拘束の状態で、420℃の加熱バーに両面とも接触させた後、常圧下で、コロナ処理を行った。
このフィルムのヤング率は、長手方向が14.3GPa、幅方向が14.8GPaであった。
さらに、200℃の熱収縮率は0.1%、表面酸素量は25%、表面硬度は3H、吸湿率は0.8%、および、中心線表面粗さは5nmであった。
【0049】
このフィルムについて銅薄膜との剥離力の測定と加工性の評価を行ったところ、剥離性は1.2N/mmで良好で、加工性もシワなどの変形が見られず良好であった。
【0050】
(実施例2〜4、比較例1〜4)
フィルム厚み、粒子の添加量、延伸条件、熱処理条件、コロナ処理条件を変えること以外は実施例1と同様にフィルムを作り、フィルム物性を評価するとともに、銅薄膜との剥離力の測定と加工性の評価を行った。この結果を表1に示した。
【0051】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが3〜12μm、200℃での熱収縮率が0.5%以下、少なくとも一方の表面の表面酸素量が20〜50%であり表面硬度が3H以下である電子回路用プラスチックフィルム。
【請求項2】
プラスチックとして芳香族ポリアミド樹脂を含んでいる、請求項1に記載の電子回路用プラスチックフィルム。
【請求項3】
吸湿率が2.0%以下である、請求項1または2に記載の電子回路用プラスチックフィルム。
【請求項4】
少なくとも一方の表面の中心線平均粗さが1〜8nmの範囲にある、請求項1〜3のいずれかに記載の電子回路用プラスチックフィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の電子回路用プラスチックフィルムの少なくとも一方の面に耐熱性接着剤を介して金属膜が接着されてなる電子回路材。
【請求項6】
銅を含む金属膜が接着されてなる、請求項5に記載の電子回路材。

【公開番号】特開2008−189912(P2008−189912A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−994(P2008−994)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】