電子放出素子、及びそれを用いた電子放出型のセンサ、電気分解装置
【課題】
電子放出電流が大きく、製造が容易で堅牢性に富んだ電子放出電流の大きな電子放出を実現し、3極真空管、磁気センサ、真空センサなどの応用デバイスを提供すること。
【解決手段】
陰極2から陽極3へ向けて電子を放出する電子放出素子において、陰極2と陰極2に隣接する電子放出領域1に跨って、かつ電気絶縁性薄膜5を介してゲート電極4を設け、陰極2に対して正となる電圧をゲート電極4に印加することにより、ゲート電極4近傍の陰極2における電子放出面6の障壁幅を狭くして電子に対するトンネル効果を促進し、陰極2から陽極3への電子放出を生じ易くしたことを特徴とする。
電子放出電流が大きく、製造が容易で堅牢性に富んだ電子放出電流の大きな電子放出を実現し、3極真空管、磁気センサ、真空センサなどの応用デバイスを提供すること。
【解決手段】
陰極2から陽極3へ向けて電子を放出する電子放出素子において、陰極2と陰極2に隣接する電子放出領域1に跨って、かつ電気絶縁性薄膜5を介してゲート電極4を設け、陰極2に対して正となる電圧をゲート電極4に印加することにより、ゲート電極4近傍の陰極2における電子放出面6の障壁幅を狭くして電子に対するトンネル効果を促進し、陰極2から陽極3への電子放出を生じ易くしたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子放出面近傍にゲート電極を備え、そのゲート電極にバイアスを印加することにより陰極からの電子放出を促進する電子放出素子、及びその電子放出素子を用いた磁気センサ又は真空センサのような電子放出型のセンサ、電気分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の電子放出デバイスが提案され、フラットディスプレイなどへの応用が試みられている。当初はspindt形とよばれる先を尖らせた円錐形の陰極が提案されている(例えば、特許文献1参照)が、この構造は電子放出させるのに高い電圧が必要なことや、加工が難しいなどの問題点がある。また、気相合成ダイヤモンドなど負の電子親和力(NEA:Negative Electron Affinity)を呈する材料で構成される電子エミッタが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この電子エミッタもピラミッド状に形成され、電子放出部分の先端が尖っており、ダイヤモンドなどの表面処理やその周囲の環境により特性が変化する不安定性などの問題を有する。
【0003】
また、近年では、カーボンナノチューブを電子放出物質として用い、効果的に電子放出を行うことが提案されている(例えば、特許文献3、4参照)。カーボンナノチューブは、低電圧でナノスケールの微小な先端から電子放出が可能なことから、フラットディスプレイや電子顕微鏡の電子源などへの応用が試みられている。しかしながら、カーボンナノチューブはシリコンチップに結合力の弱いファンデルワールス力で支持されているために、堅牢性に乏しく、環境によってはカーボンナノチューブ自体が化学変化を起こし、特性が劣化するなどの問題が考えられる。また、実効的な集積密度を大きくするのは困難であり、大きな放出電流を得難いという問題もある。また、低い電圧でも十分に電子を放出するために、表面の屈折率が2.5以上である非晶質炭素膜を用いて冷陰極素子を構成するものも提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【0004】
更にまた、カソード電極上に電気絶縁層を介してゲート電極を形成し、カソード電極から放出された電子ができるだけ多く陽極に到達するようにしているものも多数提案されている。例えば、陰極から放出された電子の散乱を軽減し、電子ビーム径を小さくするものとして、カソード電極上に電気絶縁層を介してゲート電極を形成し、カソード電極を薄くした面域上に電子放出膜を設け、陽極との距離が電子放出膜、電気絶縁層、ゲート電極の順になるように形成している発明がある(例えば、特許文献6参照)。この提案によれば、前述のような効果が得られるが、電気絶縁膜のチャージアップが大きくなり、電子が放出され難くなるという欠点がある。また,これらのゲート電極は、電子放出を支配する陰極放出面の真空に対する障壁幅を効率よく狭めて、積極的に電子放出を促進しているものではない。さらに、これらのゲート電極は陰極に対して開放状態で、このゲートに捕獲される電子も生じるため、陽極に電子を到達させるためには、ゲートに印加する電圧の調整が必要となる。 さらに、従来の3極真空管に代表される真空管デバイスは、電子の高速動作のため、限られた用途ではあるが現在でも使用されている。これらほとんどのデバイスは熱電子放出機構を利用したものであり、陰極を加熱するためのヒータや駆動回路が必要であり、温度変化による電子放出の変動が大きいばかりではなく消費電力も大きく、素子の経時変化による劣化等のデメリットが多い。本発明によるゲート電極による電子放出促進機構をこれらの真空管に応用することにより、低制御電力動作で、堅牢な高速真空電子素子が実現できる。
【特許文献1】特開平07−065697号公報
【特許文献2】特開2000−123711公報
【特許文献3】特開2000−268705公報
【特許文献4】特開2000−285795公報
【特許文献5】特開2001−250470公報
【特許文献6】特開2003−109489公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献に開示されている電子放出素子は、いずれも加工が困難な陰極構造や特殊な電子放出物質を用いねばならず、非常に条件が管理されている環境下で用いねばならない。更に、従来のゲート電極はいずれも、陰極から放出された電子をできるだけ多く陽極に、又は陽極の所定箇所に到達させる働きを行うだけであるので、特別の材質の陰極を用いなければ、放出電流の大きな電子放出を行う電子放出素子を得るのは困難であるという欠点がある。すなわち、従来のゲート電極は陰極から放出された電子を制御するのが主であり、電子放出の積極的な促進作用は有してはいない。
【0006】
本発明は、電子を放出する陰極近傍に電気絶縁型のゲート電極を設け、その電気絶縁型のゲート電極に、陰極が呈する電位障壁のトンネル効果を促進する大きさのバイアス電圧を印加することにより、陰極から電子が放出され易くすることを特徴とし、特に、ナノレベルの加工精度を必要とせず、化学的に不安定で経時変化しやすい仕事関数の小さな電子放出材料を必要としないので,従来に比べて条件の悪い環境下でも用いることが可能で、製造が容易で堅牢性に富んだ放出電流の大きな電子放出デバイス及び3極真空管(以下、本発明では総称して電子放出素子という。)を提供することを課題としている。つまり、本発明はゲート電極によって陰極からいかに多くの電子を放出させ易くするかというところに特徴がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、前記課題を解決するために、陰極から陽極へ向けて電子を放出する電子放出素子において、前記陰極と該陰極に隣接する電子放出領域に跨って、かつ電気絶縁性薄膜を介してゲート電極を設け、前記陰極に対して正となる電圧を前記ゲート電極に印加することにより、前記ゲート電極近傍における前記陰極の電子放出面の障壁幅を狭くして電子に対するトンネル効果を促進し、前記陰極から前記陽極への電子放出を生じ易くしたことを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0008】
第2の発明は、陰極から陽極へ向けて電子を放出する電子放出素子において、ゲート電極上に電気絶縁性薄膜が形成され、前記電気絶縁性薄膜上に、前記陰極と前記陽極とが互いに所定距離離れて形成されており、前記陰極と前記陽極との間は真空であるか、又は液体あるいは気体が存在し、前記ゲート電極近傍における前記陰極の電子放出面の障壁幅を狭くする電圧を前記ゲート電極に印加することによって、トンネル効果を促進し、前記陰極から前記陽極へ向けての電子放出を生じ易くすることを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0009】
第3の発明は、前記第2の発明において、前記電気絶縁性薄膜は、膜厚の薄い薄膜部分と該薄膜部分よりも膜厚の厚い第1、第2の厚膜部分を有し、前記陰極は、前記電気絶縁性薄膜の前記第1の厚膜部分から前記薄膜部分まで延び、前記陽極は、前記電気絶縁性薄膜の前記第2の厚膜部分だけに形成されており、前記電気絶縁性薄膜に電子がチャージアップされるのを抑制することを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0010】
第4の発明は、前記第2の発明において、前記ゲート電極は、厚い第1の部分と該第1の部分よりも薄い第2の部分とを有すると共に、前記電気絶縁性薄膜で覆われており、前記ゲート電極の前記第2の部分に形成されている前記電気絶縁性薄膜の上に前記陰極が形成され、前記ゲート電極の前記第1の部分に形成されている前記電気絶縁性薄膜の上に前記陽極が形成されることを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0011】
第5の発明は、陰極から陽極へ向けて電子を放出する電子放出素子において、絶縁性基板又は半導体基板上に前記陰極とゲート電極とが形成され、前記ゲート電極は電気絶縁性薄膜で覆われ、前記電気絶縁性薄膜上に前記陽極が形成されており、前記陰極と前記ゲート電極との間には前記電気絶縁性薄膜が介在し、前記陰極と前記陽極との間は真空であるか、又は液体あるいは気体が存在し、前記ゲート電極近傍における前記陰極の電子放出面の障壁幅を狭くする電圧を前記ゲート電極に印加することによって、トンネル効果を促進し、前記陰極から前記陽極へ向けての電子放出を生じ易くすることを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0012】
第6の発明は、陰極から陽極へ向けて電子を放出する電子放出素子において、ゲート電極上に電気絶縁性薄膜が形成されていて、該電気絶縁性薄膜の一部面域上に前記陰極が形成され、前記陰極と前記陽極とが互いに所定距離離れて空間的に分離されており、前記陰極と前記陽極との間の周囲は真空であるか、又は液体あるいは気体が存在し、前記ゲート電極近傍における前記陰極の電子放出面の障壁幅を狭くする電圧を前記ゲート電極に印加することによって、トンネル効果を促進し、前記陰極から前記陽極へ向けての電子放出を生じ易くすることを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0013】
第7の発明は、前記第6の発明において、前記ゲート電極は凸部を有し、その凸部を含む前記ゲート電極を前記電気絶縁性薄膜が被覆し、前記陰極は、前記凸部を囲む前記電気絶縁性薄膜上に形成され、前記ゲート電極の前記凸部の頂部面は、前記陰極と比べて前記陽極に近い位置にあることを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0014】
第8の発明は、前記第4の発明又は前記第5の発明、あるいは前記第7において、前記ゲート電極は、前記陰極に近い側よりも前記陽極側に近い側が狭くなる断面台形状になっていることを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0015】
第9の発明は、前記第4の発明又は前記第5の発明、あるいは前記第7の発明において、電子放出面近傍の前記ゲート電極と前記陰極との間の前記電気絶縁性薄膜を他の領域の前記電気絶縁性薄膜の膜厚よりも薄くすることを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0016】
第10の発明は、陰極から陽極へ向けて電子を放出する電子放出素子において、半導体基板の一方の主面側に前記陰極と電気絶縁性薄膜とが位置し、また、前記半導体基板の他方の主面にはゲート電極が形成され、前記陰極は、前記半導体領域上と前記電気絶縁性薄膜とに跨って形成されており、前記陽極は前記電気絶縁性薄膜上に形成され、前記陰極と前記ゲート電極とは前記半導体基板とそれぞれ接合をなし、前記接合は、前記電気絶縁性薄膜の破壊電圧よりも小さい降伏電圧を有し、前記陰極と前記陽極との間の周囲は真空であるか、又は液体あるいは気体が存在し、前記ゲート電極近傍における前記陰極の電子放出面の障壁幅を狭くする電圧を前記ゲート電極に印加することによって、トンネル効果を促進し、前記陰極から前記陽極へ向けての電子放出を生じ易くすることを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0017】
第11の発明は、前記第1の発明ないし前記第10の発明のいずれかにおいて、前記陰極における電子放出面を薄い第2の電気的絶縁性薄膜で覆い、実効的な電子放出面の電子障壁を低下させたことを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0018】
第12の発明は、前記第1の発明ないし前記第11の発明のいずれかに記載した前記電子放出素子の前記電子放出領域は真空であり、前記ゲート電極に正電圧又はゼロ電圧を印加することによってオンとなり、そのゲート電極にゼロ電圧又は負の電圧を印加することによって、オフとなる3極真空管又は電力用スイッチ素子として用いることを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0019】
第13の発明は、前記第2の発明ないし前記第12の発明のいずれかにおいて、第4の電極を設けて、前記陰極を基準として前記陽極に第1の正電圧を印加し、前記ゲートに第2の正電圧を印加して、前記電子放出素子の電子放出を促進するとともに、第4の電極に正又は負の第3の電圧を印加して、陽極の電流及び第4の電極の電流を検出することにより、前記陽極と前記陰極との近傍における磁気、真空度などの状態を検出することを特徴とする電子放出型のセンサを提供する。
【0020】
第14の発明は、前記第2の発明ないし前記第12の発明のいずれかの電子放出素子を用いた電気分解装置において、前記陽極と前記陰極との間に電気分解される液体又は気体を存在させ、前記陰極を基準として前記陽極に第1の正電圧を印加すると共に、前記ゲート電極に第2の正電圧を印加することにより、前記電子放出素子の電子放出が促進され、前記液体又は気体の電気分解を促進することを特徴とする電気分解装置を提供する。
【発明の効果】
【0021】
前記第1の発明によれば、電子に対するトンネル効果を促進できるので放出電流密度を増大できる。また、陰極と陽極間の低電圧化も可能であり、電子は直接ゲート電極に流れないので、陽極への電子の到達率を向上できる。さらに、化学的に安定な金属材料も陰極として用いることができ、電子放出素子の堅牢性も達成できる。陰極と陽極の幅を増加させることにより大電流化を図ることができ、パワー半導体デバイスであるパワーMOSFETやIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)と同様な電力用スイッチを実現できる。この場合、半導体を用いた電力用デバイスに比べて、陰極と陽極間を数10分の1から数100分の1の長さに短縮できるので、非常にコンパクトな高耐圧デバイスも実現できる。
【0022】
前記第2の発明によれば、電子放出領域を真空にした場合は、ゲート電極により電子放出を制御する集積回路等や電力用の3極真空管に応用が可能となり、真空センサなどにも応用できる。また、電子放出領域を液体あるいは気体にすることにより、放出された電子による液体の電気分解や、気体のイオン化等を利用したセンサなどへの応用が可能になる。さらに、ゲート電圧により電子放出量が増大するので、電気分解や気体のイオン化などの高速化が期待できる。
【0023】
前記第3の発明によれば、陰極から放出された電子の電気絶縁性薄膜上の散乱や、電気絶縁性薄膜5上への帯電、つまりチャージアップを防止できる。また、静電破壊電圧を増大させることにより堅牢性が向上できる。
【0024】
前記第4の発明によれば、電子放出素子の集積化を図って電子放出電流を増大させることができる。
【0025】
前記第5の発明によれば、絶縁性基板上に電子放出素子の集積化を図ることにより電子放出電流を増大させることができる。
【0026】
前記第6の発明によれば、陽極からの電界は電気絶縁性薄膜5に対してほぼ法線方向に作用するので、電子放出面から放出された電子の電気絶縁性薄膜上での散乱や、電子放出素子へのチャージアップを抑制できる。
【0027】
前記第7の発明によれば、電子放出領域を高集積化することにより電子放出素子の大電流化が図れるので、フラットディスプレイなどの高輝度化が達成できる。
【0028】
前記第8の発明によれば、電子放出面から放出された電子の電気絶縁性薄膜上での散乱や、電子放出素子へのチャージアップを抑制できる。
【0029】
前記第9の発明によれば、電子放出素子の制御性を低下させることなく、高耐圧化を図ることができる。
【0030】
前記第10の発明によれば、逆バイアスショットキー接合を利用することによって、電気絶縁性薄膜の静電破壊を防止することができる。
【0031】
前記第11の発明によれば、障壁高さを低下させることによってトンネル効果を促進できるので、電子放出を促進させることができ、放出電流密度を増大できる。
【0032】
前記第12の発明によれば、第1の発明ないし第11の発明に係る電子放出素子のゲート電極の電圧を正、又は0に制御することによりオンとなり、ゲート電極の電圧をゼロ、又は負に制御することによりオフとなる、3極真空管又は電力用スイッチ素子として動作させることができる。
【0033】
前記第13の発明によれば、磁気や真空をセンシングする電子放出型の感度の良好なセンサを実現できる。
【0034】
前記第14の発明によれば、高速で電気分解を行うことができ、水の電気分解に応用すれば、高速に水素ガスや酸素ガスを生成することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
[実施形態1]
図1及び図2によって請求項1の第1の発明を実施するための実施形態1に係る電子放出素子について説明する。図1は電子放出素子の基本構造を示し、図2はゲート電圧による電子放出の促進作用を説明するためのエネルギー状態図である。図1に示すように本電子放出素子の構成は、電子放出領域である電子放出空間1を挟んで位置する陰極2及び陽極3と、陰極2に近接させて設けたゲート電極4からなり、3端子型のデバイス構造となる。ゲート電極4は、薄い電気絶縁性薄膜5(数nmから数100nm程度)を介して、陰極2の電子放出面6にほぼ直交し、かつ電子放出面6と真空空間である電子放出領域1とに跨って配置される。この電子放出素子にあっては、電子放出領域1を真空空間とし、陰極2と陽極3との間隔を応用に合わせて適宜(数nmから数mm程度に)設定することにより、集積回路等に応用できる微小の電子放出デバイス、つまり微小の3極真空管や電力用の3極真空管又は電力用スイッチ素子、さらにディスプレー用の電子放出デバイスにも応用できる。
【0036】
前述したようにこの実施形態の電子放出素子にあっては、電気絶縁性薄膜5を介在させたゲート電極4を陰極2の電子放出面6近傍に設けているので、陰極2に対して正となる電圧を陽極3に印加した状態で、陰極2に対して正となる電圧をゲート電極4に印加することにより、ゲート電極4近傍の電子放出面6の障壁幅が狭くなり、電子に対するトンネル効果が促進され、放出電流密度を増大できる。また、ゲート電圧の制御による電子放出促進効果により、陰極2と陽極3間の低電圧化も可能であり、電子は直接ゲート電極に流れないので、陽極3への電子の到達率を向上できる。ゲート電極4の薄い電気絶縁性薄膜5の厚みは、応用に応じて設定する必要があり、低電圧の集積回路や3極真空管においては数nm程度にし、電力用の3極真空管やディスプレー用の電子放出デバイスにおいては数10nmから数100nm程度の範囲内で適宜選択する。
【0037】
この電子放出素子の動作原理について説明すると、図2の曲線(a)に示すように、陰極2と陽極3間のみに電圧を印加して、ゲート電極4に電圧を印加しない場合は、陰極2内の電子には電子放出空間1に対して障壁が存在するために、電子放出は生じにくい。図2の曲線(b)に示すように、ゲート電極4に電圧を印加することによりゲート電極4近傍の陰極2の表面電界が107V/cm程度以上になると障壁幅が狭くなり、トンネル効果が生じやすくなって電子放出を促進させることができる。この場合の電子放出が生じる領域の大部分は、ゲート電極4直下の電気絶縁性薄膜5近傍における電子放出面6の数nm程度の幅に限られ、ゲート電極4から離れるに従って電子放出作用は低下する。このように電子放出面6の内の限られた幅ではあるが、障壁幅を著しく低下させることができるので電子放出量を促進できる。
【0038】
したがって、第1の発明の電子放出素子によれば、電気絶縁性薄膜5を介在させたゲート電極4を陰極2の電子放出面6近傍に設けて、陰極2に対して正となる電圧をゲート電極4に印加することにより、ゲート電極4近傍の電子放出面6の障壁幅が狭くなり、電子に対するトンネル効果が促進され、放出電流密度を増大できる。また、ゲート電極4の電圧制御による電子放出促進効果により、陰極2と陽極3間の低電圧化も可能であり、電子は直接ゲート電極4に流れないので、陽極3への電子の到達率を向上できる。さらに、従来では仕事関数が大きく電子放出には不向きとされているが、化学的に安定な金属材料も陰極2として用いることができ、電子放出素子の堅牢性も達成できる。勿論、陰極の電子放出材料としては、適宜、仕事関数の小さな材料等の電子放出の生じやすい材料や負の電子親和力を持つ材料を用いてもよいことは言うまでもない。
【0039】
[実施形態2]
図3によって請求項2に係る第2の発明を実施するための実施形態2の電子放出素子について説明する。図3において、図1で示した記号と同一の記号は図1の部材と同じ名称の部材を示すものとする。実施形態2の電子放出素子は基板を用いている。図3(A)に示すように、不純物濃度の高い半導体あるいは導電性材料からなる導電性基板7Aをゲート領域あるいはゲート電極4として用い、その一方の表面に電気絶縁性薄膜5を形成し、さらに電気絶縁性薄膜5上に陰極2と陽極3とを形成している。導電性基板7Aとしては、金属材料でも合金材料を用いても良い。作成プロセスに耐え得るだけの厚みの導電性基板7Aを用い、表面に電気絶縁物を形成する。電気絶縁物材料としては種々あるが、図3(A)に示す電子放出素子では、SiO2(二酸化シリコン)膜を用いた例について示す。SiO2膜をスパッタにより100nmほど導電性基板7A上に堆積させ、陰極2及び陽極3となる金属材料をスパッタ又は蒸着で形成する。陽極3と陰極2のパターニングを行って電極を形成することで、電子放出素子が実現できる。
【0040】
また、この実施形態2では導電性基板を用いているが、別の実施例として図3(B)に示すように、加工の容易なSi基板のような半導体基板7Bを用いてもよい。ただし、この場合はゲート電圧によるバイアス効果を上げるために0.1Ωcm以下の抵抗率の半導体基板が望ましい。また、同図に示すように半導体基板7Bの他方の面にゲート電極4を形成する必要がある。Si基板の場合は、熱酸化により緻密な酸化膜を作成することができる。ただし、半導体基板7Bの抵抗率が大きい場合には、ゲート領域となるSi基板にオーミック電極を形成する工程が増える。さらに、別の実施例として図3(C)に示すように、絶縁性基板7Cを用いても、第2の発明による電子放出素子が実現できる。この場合は、ガラスなどの絶縁性基板7Cを用いて、その上にゲート電極4及び電気絶縁性薄膜5をスパッタにより形成し、部分的にゲート電極4のパッド部の電気絶縁性薄膜5を開口する。続いて、陰極材料をスパッタして、陰極2と陽極3のパターニングを行うことで、図3(C)の電子放出素子を作成できる。この第2の発明によれば、図3に示すように前記第1の発明による電子放出素子を、簡易プロセスの横型構造で形成できる。なお、動作原理は前記第1の発明と同様であるので説明を省略する。
【0041】
[実施形態3]
図4によって、請求項3に係る第3の発明の実施形態3に係る電子放出素子について説明する。図4において、図1〜図3で用いた記号と同じ記号はそれら図面で用いた部材と同じ名称の部材を示すものとする。第3の発明によれば、前記第2の発明と電子放出の原理は同様であるが、電子放出領域1の下の面域に比べて陽極3の下の面域における電気絶縁性薄膜5を厚くし、陰極2の一部分を電気絶縁性薄膜5の薄い部分に形成して、陰極2から上方にある陽極3方向へ放出電子を向けることで、放出電子が電気絶縁性薄膜5上を散乱することなく、陽極3へ到達させることができる。また、この構造では、電子放出領域1以外の電気絶縁性薄膜5を厚く形成し、静電破壊電圧を増大させて堅牢性を向上できる。この実施形態3の場合は、厚い電気絶縁性薄膜5を形成したあとに、フォトリソグラフィーにより電子放出領域1周辺の酸化膜を一旦除去し、薄い電気絶縁性薄膜5を再度形成することにより、図4の構造を実現できる。その他の電極形成法や応用などについては、前述した第2の発明の実施形態2と全く同様となる。この第3の発明においても、前記第2の発明と同様に、半導体基板や絶縁性基板を用いても実現できる。なお、動作原理は前記第2の発明の電子放出素子とほぼ同様であるので、動作説明については省略する。
【0042】
[実施形態4]
図5及び図6によって、請求項4の第4の発明に係る実施形態4の電子放出素子について説明する。図5、図6において、図1〜図4で用いた記号と同じ記号はそれら図面で用いた部材と同じ名称の部材を示すものとする。実施形態4の電子放出素子は、図5に示すように、前記第2の発明による電子放出素子を縦型構造に形成したものであり、電子放出素子の集積化を図って電子放出電流を増大させることができる。実施形態4の電子放出素子は、ゲート電極4として前記第2の発明と同様に導電性基板、又は半導体基板を用いることができる。
【0043】
次に、導電性基板を用いた場合の実施例の製作プロセスを図6により説明すると、先ず、図6(A)に示すように、厚みを適宜選択した導電性基板7Aの一方の表面に、電気絶縁性薄膜5を堆積する。この場合は、電気絶縁性薄膜5としてSiO2膜を用い、厚みを1μm程度として800V程度の絶縁破壊電圧に耐えるようにする。次にフォトレジストでマスク9を形成する。続いて図6(B)に示すように、SiO2膜をエッチングし、導電性基板7Aをエッチングする。この際、急峻な側壁を得るためには、リアクティブイオンエッチング等の異方性の強いエッチングを用いる。さらに図6(C)に示すように、導電性基板7Aのエッチングした面域などを覆うように電気絶縁性薄膜5を形成するが、この厚みは数nmから数100nm程度であり、集積回路用や電力用のスイッチなどの仕様に合わせて設定する。
【0044】
次に、電気絶縁性薄膜5を覆うように電極材料10をスパッタにより形成し、図6(D)に示すようにフォトレジストの粘度などを調整して、側壁部がレジスト11で覆われない条件で塗布し、つまり、電極材料10の側壁部が覆われないように塗布した状態でベーキングする。続いて、前記側壁部の電極材料10をエッチングすることで、陰極2、陽極3が形成され、図6(E)に示すような第4の発明の電子放出素子が得られる。この電子放出素子では、図3(A)で示した実施形態2の電子放出素子と同様に導電性基板7Aがゲート電極4となり、陰極2、陽極3が電気絶縁性薄膜5を介してゲート電極4である導電性基板7Aに対設される。この実施形態では導電性基板7Aを用いているが、図3(B)に示したように、加工の容易なSi基板のような半導体基板を用いてもよい。この場合は、半導体基板にゲート電極を形成する必要がある。この場合もゲート電極4のバイアス効果を上げるために半導体基板とゲート電極のオーミック性が良好であることが望ましいので、0.1Ωcm以下程度の抵抗率の基板を用いるのが良い。なお、Si基板の場合は、熱酸化により緻密な酸化膜も作成可能である。
【0045】
[実施形態5]
図7によって、請求項5の第5の発明に係る実施形態5の電子放出素子について説明する。図7(A)及び(B)において、図1〜図6で用いた記号と同じ記号はそれら図面で用いた部材と同じ名称の部材を示すものとする。実施形態5の電子放出素子は。図7(A)及び(B)に示すように、ガラスなどの絶縁性基板7Cを用い、その上にスパッタなどによりに電極材料を堆積し、リアクティブイオンエッチングなどを行って不要部分を削除してゲート電極4を形成する。電気絶縁性薄膜5をスパッタにより形成し、部分的にゲート電極4のパッド部の電気絶縁性薄膜5を開口する。その際、陰極下となる電気絶縁性薄膜5を除去した場合は図7(A)のデバイス構造となり、陰極下となる電気絶縁性薄膜5を除去しない場合は図7(B)のデバイス構造となる。続いて、電極材料をスパッタして、陰極2と陽極3のパターニングを行うことで、図7(A)及び(B)に示す電子放出素子を作成できる。また、ゲート電極材料として導電性の高い、つまり不純物濃度の高い半導体を用い、リアクティブイオンエッチングなどにより不要部分を削除してゲート電極4を形成してもよい。この第5の発明によれば、比較的簡単なプロセスで薄い電気絶縁性フィルムなどに、電子放出素子を集積化することができる。なお、動作原理は前記第4の発明と同様であるので説明を省略する。
【0046】
[実施形態6]
図8によって、請求項6の第6の発明に係る実施形態6の電子放出素子について説明する。図8において、図1〜図7で用いた記号と同じ記号はそれら図面で用いた部材と同じ名称の部材を示すものとする。第6の発明は、図8に示すように陰極2と陽極3とが分離した構造であり、フラットディスプレイなどへの応用可能な電子放出素子が簡易プロセスで実現可能となる。第6の発明によれば、電気絶縁性薄膜5のほぼ法線方向に陽極3からの電界が作用するので、電子放出面から放出された電子の電気絶縁性薄膜5上の散乱やチャージアップを抑制できるという特徴を有する。
【0047】
この実施形態6の電子放出素子は、図8に示すように陰極2と陽極3とが電気的かつ空間的に分離しており、フラットディスプレイなどの電子放出デバイスを簡易プロセスで実現できる。なお、図8は電子放出デバイスの1画素を示しており、他の画素もこれに並列構造で形成されている。この電子放出デバイスにおいて、ゲート電極4として導電性基板7Aを用いる場合の製作プロセスについて説明する。導電性基板7Aの表面にSiO2膜などの電気絶縁性薄膜5、さらにその上に電極材料をスパッタなどにより堆積する。次に、堆積された電極材料の一部をマスクし、エッチングして陰極2を形成することにより、電子放出素子を簡易プロセスで作成できる。
【0048】
次に、第6の発明における電子放出素子の動作原理を説明する。陽極3と陰極2間に電圧を印加した状態では電子放出は生じないが、この状態で陰極2に対して正となる電圧をゲート電極4に印加すると、陰極2のゲート電極4に近い側壁領域において、真空準位に対する障壁幅が小さくなり電子放出が促進される。このデバイスにおいては、電気絶縁性薄膜5の表面に対して法線方向に陽極3からの電界が生じるので、この放出電子は電気絶縁性薄膜5上を散乱せずに、また、この電気絶縁性薄膜5上にチャージアップすることがない。また、この実施形態6の電子放出デバイスの周囲が液体であれば、電気分解等への応用も可能であり、この場合は電子放出の促進作用により、電気分解の高速化が図れる。この実施形態6の陰極2と陽極3とについては、応用に応じて適宜間隔を設定するが、陰極2と陽極3とは分離していても、あるいは絶縁物を介して連結させても良い。なお、この実施形態については、導電性基板7Aを用いた製作プロセスについて説明したが、前記第4の発明と同様に、半導体基板や絶縁性基板を用いてもよい。
【0049】
[実施形態7]
図9によって、請求項7の第7の発明に係る実施形態7の電子放出素子について説明する。図9において、図1〜図8で用いた記号と同じ記号はそれら図面で用いた部材と同じ名称の部材を示すものとする。第7の発明は、前記第6の発明と動作原理は同様であるが、図9に示すように凸形のゲート構造に採用することで、電子放出素子の電子放出領域1の高集積化により大電流化が図れるので、フラットディスプレイなどの高輝度化が達成できるところに特徴がある。
【0050】
この実施形態7に係る電子放出素子は、図9(A)に示すように、前記第6の発明による電子放出素子のゲート電極4を凸形構造にしたものであり、電子放出領域の高集積化により大電流化が図れる。図9(A)も電子放出素子の1画素について示したものである。次にこの実施例の製作プロセスについて説明する。このデバイスの陰極部とゲート電極部の製作に関しては、前記第4の発明に係る電子デバイスの製作方法とほぼ同様となり、図6(A)から図6(D)に示す通り、凸形のゲート電極部とその表面を覆う電気絶縁膜性薄膜5とを形成し、さらにその上に電極材料を形成するまでは同様のプロセスとなる。しかしながら、この第7の発明の電子放出デバイスの製作にあたっては、フォトレジストの粘度を低目に調整することにより、凸形部の頂部面と側壁部とがレジストで覆われない条件で塗布し、電極材料をエッチングする必要がある。このプロセスにより、図9(A)に示す第7の発明の電子放出デバイスが作成できる。また、フォトレジストの粘度を調整して、凸形部の頂部面と底部面はレジストで覆われ、凸形部の側壁部はレジストで覆われない条件で作成しても良い。この場合は図9(B)の電子放出デバイスが実現でき、凸形部の頂部面に形成された第4の電極15を制御電極として用いることができる。
【0051】
この実施形態7では導電性基板をゲート電極4として用いているが、加工の容易なSi基板などの半導体基板を用いても良い。この場合もゲート電極4のバイアス効果を上げるために0.1Ωcm以下程度の抵抗率の半導体基板が望ましい。Si基板の場合は、熱酸化により緻密な酸化膜も作成可能である。また、この実施形態7の電子放出デバイスの周囲が液体であれば、電気分解などへの応用も可能であり、この場合は電子放出の促進作用により電気分解の高速化が図れる。この実施形態の陰極2と陽極3とについては、応用に応じて適宜間隔を設定するが、陰極2と陽極3は分離しても、絶縁物を介して連結しても良い。更にまた、前記実施形態と同様に基板として絶縁性基板を用い、その絶縁基板にゲート電極を形成してもよい。
【0052】
[実施形態8]
図10によって、請求項8の第8の発明に係る実施形態8の電子放出素子について説明する。図10において、図1〜図9で用いた記号と同じ記号はそれら図面で用いた部材と同じ名称の部材を示すものとする。この第8の発明の電子放出素子は、前記第4の発明あるいは前記第7の発明による電子放出素子のゲート電極4を台形形状にすることにより、ゲート電極4上における電気絶縁性薄膜5の接線方向の電界緩和を図ったものであり、陰極2から放出される電子の電気絶縁性薄膜5上の散乱やチャージアップを防止することができる。それぞれ、前記第4の発明に適用した場合を図10(A)に示し、前記第7の発明に適用した場合を図10(B)に示している。
【0053】
最初に、前記実施形態4の電子放出素子に適用した場合の実施形態について図10(A)を用いて説明する。この電子放出の製作プロセスについては、前記第4の発明の電子放出デバイスの製作プロセスを示す図6とほぼ同様であるが、図6(B)に示すような急峻な側壁を形成するような垂直方向に異方性の強いエッチングを採用せずに、幾分等方性のあるエッチング技術を用いて横方向のアンダーエッチを利用し、台形形状のゲート領域を形成する。これから後のプロセスについては、図6とほぼ同様となり、この実施形態8を実施形態4に適用した場合の電子放出デバイスが実現できる。このデバイスの場合は台形形状のゲート電極の採用により、陰極2から放出された電子に対してはゲート電極4上の電気絶縁性薄膜5に沿う方向よりも、陰極2に対して垂直方向の電界が強いので、放出電子の電気絶縁性薄膜5上の散乱やチャージアップを防止できる。したがって、放出された電子を効率よく陽極3へ輸送できる。
【0054】
次に、図10(B)を用いて、この第8の発明を実施形態7の電子放出素子に適用した場合について説明する。この電子放出の製作プロセスについては、台形形状のゲート領域4の作成とその上への電気絶縁性薄膜5の堆積、さらに陰極2の電極材料の堆積までは、この第8の発明を前記第4の発明の電子放出素子に適用した場合の製作プロセスと同様である。異なる点は、フォトレジストの粘度を低く目に調整することにより、凸形部の頂部面と側壁部がレジストで覆われない条件で塗布した後にベーキングし、電極材料をエッチングする点である。このプロセスにより、この第8の発明を実施形態7に適用した場合の縦型の電子放出デバイスが作成できる。このデバイスにおいても、台形形状のゲート電極の採用により、陰極2から放出される電子の電気絶縁性薄膜5上の散乱やチャージアップを防止することができる。また図面は示さないが、請求項7の発明による実施形態7の図9(B)の電子放出デバイスと同様に、凸形部の頂部面上に第4の電極15を制御電極として形成しても良い。なお、この実施形態8については、導電性基板を用いてゲート電極(ゲート領域を含む)を形成する製作プロセスについて説明したが、ゲート電極を導電率の高い半導体基板で形成しても良いし、また絶縁性基板上に作成しても良い。これらの電子放出デバイスは実施形態4及び実施形態7の電子放出デバイスと同様に、電子放出デバイスの周囲の空間が真空であれば、3極真空管として動作させることができ、また、この実施形態8の電子放出デバイスの周囲が液体であれば、電子放出の促進作用と放出された電子の陽極3への到達が高効率となり、電気分解の高速化が図れる。
【0055】
[実施形態9]
図11によって、請求項9の第9の発明に係る実施形態9の電子放出素子について説明する。図11において、図1〜図10で用いた記号と同じ記号はそれら図面で用いた部材と同じ名称の部材を示すものとする。この第9の発明は、前記第4の発明ないし前記第8の発明のいずれかの電子放出素子における電子放出面近傍のゲート電極4と陰極2との間の電気絶縁性薄膜5を薄くして制御性を高め、それ以外の電気絶縁性膜5を厚くして高耐圧化を図ったものであり、制御性と堅牢性の向上を図ることができる。図11は第9の発明を実施形態4に適用した場合であり、この図を用いて実施形態9について説明する。製作プロセスについては、図6に示した前記第4の発明の電子放出デバイスの製作プロセスと図6(C)における電気絶縁性薄膜を形成するまでのプロセスは同様であるが、この電気絶縁性薄膜5の耐圧を大きくするために厚めに形成する。
【0056】
次に、フォトレジストの粘度を調整して、凸形部の頂部面と下部面との電気絶縁性薄膜がレジストで覆われ、側壁部がレジストで覆われない条件で塗布し、ベーキングする。続いて、側壁部の電気絶縁性薄膜部分のみをエッチングし、再度電気絶縁性薄膜5を薄めに形成する。この膜厚については、用途に合わせて数nmから数100nm程度で適宜選択する。以降の電極形成については、実施形態4における図6(D)、(E)に示したプロセスと同様となり、この第9の発明を実施形態4に適用した場合の電子放出デバイスが実現できる。このデバイスにおいては電子放出面近傍のゲート電極4と陰極2との間の電気絶縁性薄膜5を薄くすることによって、電子放出を促進させて制御性を高めることができ、それ以外の電気絶縁性膜5は厚くして高耐圧化を図ることができるので、制御性と堅牢性の双方とも向上させることができる。この第9の発明を図10に示した実施形態8に適用した場合、その製作プロセスは実施形態8と同様となるので説明を省略する。上述の実施形態では導電性基板を用いているが、半導体基板や絶縁性基板上にゲート電極4を形成してもよい。この第9の発明の応用についても、前記実施形態4の電子放出デバイスと同様となる。
【0057】
[実施形態10]
図12によって、請求項10の第10の発明に係る実施形態10の電子放出素子について説明する。図12において、図1〜図11で用いた記号と同じ記号はそれら図面で用いた部材と同じ名称の部材を示すものとする。第10の発明は、前記実施形態3ないし前記実施形態9の電子放出デバイスにおいて、陰極2と電気絶縁性薄膜5とゲート電極4からなる構造を逆バイアスのショットキー接合により短絡することで、電気絶縁性薄膜5の静電破壊防止を実現したところに特徴がある。この実施形態10は実施形態3の電子放出素子の横型構造に適用したものであり、実施形態10の電子放出素子ではn型半導体基板12を用いている。電子放出領域近傍の電気絶縁性薄膜5の厚みは応用により異なるが、集積回路などや低耐圧の三極真空管では数nmの厚みで、その静電破壊電圧は数10V、電力用の三極真空管や電気分解の応用ではその厚みは数10nm程度であり、その静電破壊電圧は数100V程度となる。このような電子放出デバイスとして動作させる場合には、陰極2とゲート電極4間にも正電圧が印加されるので、電子放出領域1近傍の電気絶縁性薄膜5が薄い場合には、静電破壊を防止する必要が生じる。
【0058】
この実施形態10の電子放出素子ではn型半導体基板12をゲート領域としている。この構造では、n型半導体基板12の一方の主面側にショットキー接合13を形成するゲート電極4を備え、他方の主面側に電気絶縁性薄膜5を形成し、その一部を除去して陰極2を形成して、さらにn型半導体基板12との間にショットキー接合13を形成している。したがって、陰極2とn型半導体基板12間、ゲート電極4とn型半導体基板12間の両者にショットキー接合13が形成される。なお、陽極3下の電気絶縁性薄膜5の厚みを1μm程度とすれば、その静電破壊電圧は800V程度となり、静電破壊は生じにくい。動作状態では、陰極2とゲート電極4間には正電圧が印加されるが、この場合にショットキー接合13は逆バイアスとなるので、印加電圧は短絡されることはなく、ゲート制御により電子放出が可能となる。このショットキー接合13の降伏電圧を電子放出領域1近傍の電気絶縁性薄膜5の静電破壊電圧よりも小さくなるように設定しておくことにより、大きな電圧が陰極2とゲート電極4間に印加されても、逆バイアス状態にあるショットキー接合13が降伏してこれ以上大きな電圧が印加されないので、電気絶縁性薄膜5の静電破壊を防止することが可能となる。また、逆極性の電圧がゲート電極4に印加された場合も陰極2とn型半導体基板12間のショットキー接合13は順方向となるが、n型半導体基板12とゲート電極4間のショットキー接合13は逆方向となるので、同様に大きな電圧が印加されると逆方向のショットキー接合13が降伏し、これ以上電圧が印加されるのが防止できる。したがって、確実に電気絶縁性薄膜5の静電破壊を防止できる。
【0059】
本実施形態10の製作プロセスについて説明する。図12において、最初にn型半導体基板12の表面における陽極3の下の面域に、二酸化シリコン薄膜を熱酸化により1μm程度の厚みに形成する。次に、陽極3の下面に相当する面域以外の電気絶縁性薄膜をフォトエッチングによりエッチングする。続いて、再度電気絶縁性薄膜5となる二酸化シリコン薄膜を熱酸化により数nm程度で形成する。この膜厚の静電破壊電圧は数10V程度となる。さらに、陰極2の下面となる面域に相当する電気絶縁性薄膜をフォトエッチングにより除去し、しかる後に電極材料をスパッタ等で形成し、陰極2、陽極3及びゲート電極4を形成することによって、図12に示す本実施形態の電子放出デバイスが実現できる。この構造では、n型半導体基板12の抵抗率を0.5Ωcmから数Ωcm程度にすることにより、陰極2とn型半導体基板12との間にショットキー接合を形成できる。このショットキー接合の逆耐圧は、n型半導体基板12の抵抗率により変化させることができ、上記の抵抗率では数Vから数10V程度となる。
【0060】
次にこの実施形態10の電子放出素子の動作について説明する。動作状態では、陰極2に対してゲート電極4に正となる電圧が印加される。この極性においては、陰極2とn型半導体基板12間のショットキー接合は逆バイアスであり、ゲート電極4とn型半導体基板12間のショットキー接合は順バイアスとなるので、陰極2とn型半導体基板12間の逆バイアスのショットキー接合に並列接続構成となる陰極2と電気絶縁性薄膜5とn型半導体基板12との間に大きな電圧が印加され、電子放出が促進される。この極性の印加電圧を大きくしていくと、逆バイアス状態のショットキー接合が降伏状態となり、これ以上電圧が印加されるのが防止できる。このショットキー接合の降伏電圧を電子放出領域1近傍の電気絶縁性薄膜5の静電破壊電圧よりも小さくなるように設定することにより、陰極2とゲート電極間4との間に大きな電圧が印加されても、ショットキー接合が降伏して電気絶縁性薄膜5の静電破壊を防止することができる。また、逆極性の電圧がゲート電極4に印加された場合も陰極2とn型半導体基板12間のショットキー接合は順方向、n型半導体基板12とゲート電極4間のショットキー接合は逆方向となるので、同様に逆極性においても大きな電圧が印加されるのを防止できる。なお、この実施例においては基板としてn型半導体基板を用いているが、p型半導体基板を用いてショットキー接合を形成してもよい。さらに、プロセス的に多少工程数が増えるが、ショットキー接合に変えてpn接合を用いても良い。この場合にはpnp型又はnpn型の半導体素子を基板として用い、基板と陰極2、基板とゲート電極4間はオーミック接触とすればよい。
【0061】
[実施形態11]
図13ないし図15によって、請求項11の第11の発明に係る実施形態11の電子放出素子について説明する。図13において、図1〜図12で用いた記号と同じ記号はそれら図面で用いた部材と同じ名称の部材を示すものとする。第11の発明によれば、前記第2の発明ないし前記第10の発明のいずれかの電子放出素子において、陰極2の電子放出領域1に臨む電子放出面を数Åから数10Å程度の薄い第2の電気的絶縁性薄膜14で覆うことによって、実効的な電子の障壁高さを低下させることに特徴がある。図14(A)は、本発明を実施したデバイスの電圧が印加される前のエネルギー状態を示している。図14(B)において、曲線(a)は陰極2に第2の電気的絶縁性薄膜14を形成しておらず、ゲート電圧を印加しない状態の電子のエネルギー状態を示す。また、曲線(b)は陰極2に第2の電気的絶縁性薄膜14を形成し、ゲート電圧を印加しない状態の電子のエネルギー状態を示し、曲線(c)はゲート電圧を印加した状態の電子のエネルギー状態を示している。図14(B)から、陰極2に第2の電気的絶縁性薄膜14を形成することにより障壁高さが低下し、トンネル効果が促進されるので、ゲート電圧を印加することによって、より一層トンネル効果が有効となり、電子放出を促進できることが明らかである。
【0062】
図15は、この第11の発明を図4に示した前記実施形態3の横型構造に適用した場合における電子放出素子の他の一実施例を示している。この実施例のデバイスのプロセスは、前記実施形態3の電子放出デバイスのプロセスとほとんど同様であるが、最終段階で電子放出面近傍に数Åから数10Å程度の薄い第2の電気的絶縁性薄膜14を形成している。この第2の電気的絶縁性薄膜14の働きは、図13に示した電子放出素子の第2の電気的絶縁性薄膜14と全く同じである。なお、図15に示す電子放出素子は、ゲート電極4として導電性基板を用いているが、半導体基板や絶縁性基板の上にゲート電極を形成してもよい。図15に示す電子放出素子は、第11の発明を実施形態3の電子放出素子に適用した場合を示しているが、同様に前記実施形態2、前記実施形態4ないし前記実施形態10の電子放出素子にも適用できる。
【0063】
[実施形態12]
請求項12の第12の発明に係る実施形態12については図示しないが、前記実施形態1ない前記実施形態11の電子放出素子において電子放出領域1を真空空間にした場合は、ゲート電極4により電子放出を制御する集積回路などや電力用の3極真空管に応用が可能となる。この電子放出デバイスの周囲の空間が真空であれば、このデバイスは3極真空管として動作させることができ、陰極2と陽極3間を10nm以下とすれば、集積回路としての応用が可能であり、陰極2と陽極3間を10nmから10μm程度すれば、耐圧数10Vから数1000Vの電力用スイッチ素子に応用できる。また、陰極2の幅と陽極3の幅とを増大させることにより大電流化を図ることができ、既存のパワー半導体デバイスであるパワーMOSFETやIGBTと同様な電力用スイッチ素子を実現できる。半導体を用いた電力用デバイスに比べて、陰極2と陽極3間を数10分の1から数100分の1の長さに短縮できるので、非常に小型の高耐圧デバイスを実現できる。
【0064】
この実施形態の一実施例は、陰極2と陽極3との間に電圧が印加され、ゲート電極4に電圧を印加しない状態ではトンネル電流が生じないノーマリオフ型の3極真空管又は電力用スイッチ素子を示しており、この場合には、陰極2に対して正となる電圧をゲート電極4に印加すると、ノーマリオフ型の3極真空管又は電力用スイッチ素子はオンで、ゲート電極から電圧を除去するとオフである。また、他の一実施例として、陰極2と陽極3との間に電圧が印加され、ゲート電極4に電圧を印加しない状態でもトンネル電流を生じるノーマリオン型の3極真空管又は電力用スイッチ素子とすることもできる。この場合には、陰極2に対して負となる電圧をゲート電極4に印加することにより、ノーマリオン型の3極真空管又は電力用スイッチ素子をオフさせることができる。このようなノーマリオン型の3極真空管又は電力用スイッチ素子では、陰極2と陽極3との間の電界をかなり大きくしなければならず、また、陰極2の全面で行われる電子放出をゲート電極の負電圧で止めさせるためには、凸形ゲート構造の電極を採用し、単一ユニットの陰極幅を狭める必要がある。したがって、この場合には、第12の発明を実施形態4、実施形態5、実施形態7〜実施形態9に適用するのが好ましい。なおこの場合は、陰極の電子放出領域以外の陰極領域は絶縁物で覆うなどして、電子放出が生じないような配慮が必要となる。
【0065】
具体例を示すと、ノーマリオン型の電力用スイッチ素子における陰極2と陽極3との間の寸法が0.1μm程度であれば、陰極2と陽極3間に100V程度の電圧を印加することによりトンネル電流が生じオンする。この場合、ゲート電極4が凸形状であって、陰極2の幅が0.03μm程度以下のときには、陰極2に対して−10V程度の電圧をゲート電極4に印加することにより、ノーマリオン型の電力用スイッチ素子をオフすることができる。このように、ノーマリオン型の電力用スイッチ素子であっても、陰極幅を狭めた陰極構造とすることによって、実用的な大きさのゲート電圧でオフさせることができ、非常に小型のノーマリオン型の電力用スイッチ素子を実現できる。3極真空管についても同様なことが言える。
【0066】
[実施形態13]
図16ないし図23によって、請求項13の第13の発明に係る実施形態13の電子放出素子の各具体例について説明する。図16ないし図23において、図1〜図15で用いた記号と同じ記号はそれら図面で用いた部材と同じ名称の部材を示すものとする。この第13の発明は、前記実施形態2ないし前記実施形態11の電子放出素子において、第4の電極15を設けることにより、陰極2と陽極3との近傍における真空度、磁気などの状態を検出するセンサを実現したものである。検出の機構は、陰極2を基準として陽極3に第1の正電圧を印加し、ゲート電極4に第2の正電圧を印加して電子放出を促進すると共に、第4の電極15に正又は負の第3の電圧を印加して、陽極3の電流及び第4の電極15の電流を検出することによる。この第13の発明により、磁気や真空を検出する電子放出型のセンサが実現できる。この実施形態13の電子放出素子の製作プロセスは、前記実施形態2の電子放出デバイスとほぼ同様であるが、陽極3側に第4の電極15を形成する点が異なる。また、この実施形態13においては、第4の電極15は陽極3に対して対象的な位置に配置されている。
【0067】
次にこの実施形態13の電子放出素子を磁気センサに応用した場合の電子放出デバイスの一実施例について、図17を用いて説明する。磁気センサに応用する場合は、陰極2を基準として陽極3に第1の直流電圧源16により第1の正電圧を印加し、第2の直流電圧源17によりゲート電極4に第2の正電圧を印加して電子放出を促進すると共に、第4の電極15にも陰極2に対して陽極3と同じ大きさの正電圧を第1の直流電圧源16により印加する。この状態では、陽極3と第4の電極15は陰極2に対して対象位置にあるから、両電極に到達する放出電子電流はほぼ同程度となる。この状態にさらに、陰極2から放出された電子の運動方向と垂直に上方から下方に向かう磁場を印加すると、放出した電子に対してローレンツ力が働く。この場合は陽極3に向かう電子はローレンツ力により第4の電極15の方向に曲げられることになり、陽極3への電子電流は減少し、第4の電極15に流れる電流が増加することになる。これらの陽極3及び第4の電極15の電流差を計測することで、磁気センサに応用することができる。この実施形態13の磁気センサによれば、半導体を用いた磁気センサに比較して、電子の速度を桁違いに増加できるので、高感度特性が得られる。
【0068】
同様に図16の構造の電子放出素子を真空センサに応用した場合の一実施例について、図18を用いて説明する。この実施例の場合は、陰極2に対して陽極3及びゲート電極4に正電圧を印加する点においては、前述の磁気センサと全く同様であるが、第4の電極15には、陰極2に対して負となる電圧を第3の直流電圧源18により印加する点が異なる。このバイアス状態では、陰極2から放出された放出電子が真空中の気体分子と衝突して、気体分子をイオン化させることにより、電子は陽極3に到達し、イオンは第4の電極15に収集されることになる。このイオン電流は真空の気体分子の数に比例するので、イオン電流を測定することにより、閉じられた雰囲気の真空度が計測できる。従来の電離真空計はフィラメントを用いた熱電子放出を用いているので、真空度の低い状態で使用するとフィラメントが焼損する大きな問題があった。本実施例の真空センサは、原理的には従来の電離真空計と同様であるが、冷陰極の電子放出を用いているので、真空度の低い状態から使用でき、かつ非常に堅牢な真空センサが提供できる。
【0069】
この第13の発明における別の一実施例としては、図19に示すよう、図4に示した前記実施形態3の電子放出素子に適用した場合も可能である。また、図20に示すように電気絶縁性薄膜5の段差を利用して、陽極3と第4の電極15それぞれの幅を増大させることにより、電子放出電流を増大させて検出感度を上げることも可能である。また、図21に示すように、図5に示した前記実施形態4の縦型構造の電子放出素子にも応用することができる。さらに、図22に示すように、図9に示した前記実施形態7の縦型構造の電子放出素子にも応用して、陽極3と第4の電極15とを空間的に分離させて形成した電子放出デバイスとすることも可能である。また、図23に示すように、陽極3を凸型ゲートの頂部面上に形成し、第4の電極15を空間的に分離させても良いし、図示はしないが逆に第4の電極15を凸型ゲートの頂部面上に形成し、陽極3を空間的に分離させても良い。さらに図24に示すように、実施形態5における図7の実施例と同様に、この第11の発明を絶縁性基板に適用することも可能である。なお、陽極3と第4の電極15は、必ずしも陰極2に対して対称配置でなくてもよい。そして、これら電子放出デバイスに図17又は図18で示したように、陰極2とゲート電極4との間、陰極2と陽極3との間、陰極2と第4の電極15との間に所定の電圧を印加することによって、磁気センサあるいは真空センサとすることができる。
【0070】
[実施形態14]
請求項14の第14の発明に係る実施形態14についても図示しないが、前記実施形態2ないし前記実施形態11の電子放出素子を電気分解用の電子放出デバイスとして用い、陰極2と陽極3との間の電子放出領域1に電気分解される液体又は気体を存在させ、陰極2と陽極3間に印加された電圧の他に、陰極2とゲート電極4間に正電圧を印加することにより、陰極2からの電子放出が促進され、電気分解の高速性を達成できる。この第13の発明を水の電気分解に応用すれば、高速に水素ガスや酸素ガスを生成することが可能である。さらに、電子放出を促進するために、ゲート電圧印加と共に電子放出面に光照射を行っても良い。光照射により陰極表面の電子が高いエネルギーレベルに励起されるので、電子に対する実効的な障壁高さを低めることができ、トンネル効果が促進される。なお照射する光は紫外線程度の波長が望ましいが、ランプなどの人工光を用いてもよいし太陽光を用いてもよい。なお、液体中でこの電子放出デバイスを使用する場合は、陰極2及び陽極3に対してゲート電極4を電気的に絶縁する必要がある。
【0071】
以上の実施形態において基板をほとんど図示していないが、実施形態1、実施形態3、実施形態4、実施形態6ないし実施形態11では所望の機械的な強度を得るために基板上に形成される場合が多い。また、図1に示す実施形態1の構造、図13に示す実施形態11の構造では、基板として絶縁性基板を用いるが、図16〜図23に示す電子放出デバイスを含む他の実施形態でも絶縁性基板上に、ゲート電極を形成しても勿論よい。また、ゲート電極を金属薄板などの導電性基板又は半導体基板を用いて形成することも可能である。また、これら基板は図示しない他の電子部品が搭載されている基板であっても良いし、この電子放出素子の基板に他の半導体素子などの電子部品が一緒に搭載されていても勿論よい。また、基板は可撓性を呈する導電性又は電気絶縁性のフィルムであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施形態1に係る電子放出素子の基本構造を示す図である。
【図2】実施形態1に係る電子放出素子の基本原理を説明するためのである。
【図3】実施形態2に係る電子放出デバイスの基本構造を示す図である。
【図4】実施形態3に係る電子放出デバイスの他の基本構造を示す図である。
【図5】実施形態4に係る電子放出デバイスの他の基本構造を示す図である。
【図6】実施形態4に係る電子放出デバイスの製作プロセスを説明するための図である。
【図7】実施形態5に係る電子放出素子の基本構造を示す図である。
【図8】実施形態6に係る電子放出素子の基本構造を示す図である。
【図9】実施形態7に係る電子放出デバイスの基本構造を示す図である。
【図10】実施形態8に係る電子放出デバイスの基本構造を示し、実施形態4、実施形態7の電子放出素子に適用した場合を示す図である。
【図11】第9の発明に係る電子放出素子の基本構造を示し、実施形態4の電子放出素子に適用した場合を示す図である。
【図12】第10の発明に係る電子放出素子の基本構造を示し、実施形態3の横型構造の電子放出素子に適用した場合を示す図である。
【図13】実施形態11に係る電子放出素子の基本構造を示すための図である。
【図14】実施形態11に係る電子放出素子の基本原理を示すための図である。
【図15】第11の発明を実施形態3の電子放出素子に適用した場合の基本構造を示す図である。
【図16】実施形態13に係る横型構造の電子放出素子の基本構造を示し、実施形態2の電子放出素子に適用した場合を示す図である。
【図17】第13の発明を実施形態2の横型構造の電子放出素子に適用し、磁気センサに応用した一実施例を説明するための図である。
【図18】第13の発明を実施形態2の横型構造の電子放出素子に適用し、真空センサに応用した一実施例を説明するための図である。
【図19】第13の発明を実施形態3の横型構造の電子放出素子に適用した場合の基本構造を説明するための図である。
【図20】第13の発明を実施形態3の横型構造の電子放出素子に適用した場合の他の基本構造を説明するための図である。
【図21】第13の発明を実施形態4の縦型構造の電子放出素子に適用した場合の基本構造を説明するための図である。
【図22】第13の発明を実施形態7の縦型構造の電子放出素子に適用した場合の基本構造を説明するための図である。
【図23】第13の発明を実施形態7における他の縦型構造の電子放出素子に適用した場合の基本構造を説明するための図である。
【図24】第13の発明を実施形態5の縦型構造の電子放出素子に適用した場合の基本構造を説明するための図である。
【符号の説明】
【0073】
1・・・電子放出領域
2・・・陰極
3・・・陽極
4・・・ゲート電極
5・・・電気絶縁性薄膜
6・・・電子放出面
7A・・・導電性基板
7B・・・半導体基板
7C・・・絶縁性基板
9・・・フォトレジスト
10・・・電極材料
11・・・レジスト材料
12・・・n型半導体領域
13・・・ショットキー接合
14・・・陰極2面上に設けた第2の電気絶縁性薄膜
15・・・第4の電極
16〜18・・・直流電圧源
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子放出面近傍にゲート電極を備え、そのゲート電極にバイアスを印加することにより陰極からの電子放出を促進する電子放出素子、及びその電子放出素子を用いた磁気センサ又は真空センサのような電子放出型のセンサ、電気分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の電子放出デバイスが提案され、フラットディスプレイなどへの応用が試みられている。当初はspindt形とよばれる先を尖らせた円錐形の陰極が提案されている(例えば、特許文献1参照)が、この構造は電子放出させるのに高い電圧が必要なことや、加工が難しいなどの問題点がある。また、気相合成ダイヤモンドなど負の電子親和力(NEA:Negative Electron Affinity)を呈する材料で構成される電子エミッタが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この電子エミッタもピラミッド状に形成され、電子放出部分の先端が尖っており、ダイヤモンドなどの表面処理やその周囲の環境により特性が変化する不安定性などの問題を有する。
【0003】
また、近年では、カーボンナノチューブを電子放出物質として用い、効果的に電子放出を行うことが提案されている(例えば、特許文献3、4参照)。カーボンナノチューブは、低電圧でナノスケールの微小な先端から電子放出が可能なことから、フラットディスプレイや電子顕微鏡の電子源などへの応用が試みられている。しかしながら、カーボンナノチューブはシリコンチップに結合力の弱いファンデルワールス力で支持されているために、堅牢性に乏しく、環境によってはカーボンナノチューブ自体が化学変化を起こし、特性が劣化するなどの問題が考えられる。また、実効的な集積密度を大きくするのは困難であり、大きな放出電流を得難いという問題もある。また、低い電圧でも十分に電子を放出するために、表面の屈折率が2.5以上である非晶質炭素膜を用いて冷陰極素子を構成するものも提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【0004】
更にまた、カソード電極上に電気絶縁層を介してゲート電極を形成し、カソード電極から放出された電子ができるだけ多く陽極に到達するようにしているものも多数提案されている。例えば、陰極から放出された電子の散乱を軽減し、電子ビーム径を小さくするものとして、カソード電極上に電気絶縁層を介してゲート電極を形成し、カソード電極を薄くした面域上に電子放出膜を設け、陽極との距離が電子放出膜、電気絶縁層、ゲート電極の順になるように形成している発明がある(例えば、特許文献6参照)。この提案によれば、前述のような効果が得られるが、電気絶縁膜のチャージアップが大きくなり、電子が放出され難くなるという欠点がある。また,これらのゲート電極は、電子放出を支配する陰極放出面の真空に対する障壁幅を効率よく狭めて、積極的に電子放出を促進しているものではない。さらに、これらのゲート電極は陰極に対して開放状態で、このゲートに捕獲される電子も生じるため、陽極に電子を到達させるためには、ゲートに印加する電圧の調整が必要となる。 さらに、従来の3極真空管に代表される真空管デバイスは、電子の高速動作のため、限られた用途ではあるが現在でも使用されている。これらほとんどのデバイスは熱電子放出機構を利用したものであり、陰極を加熱するためのヒータや駆動回路が必要であり、温度変化による電子放出の変動が大きいばかりではなく消費電力も大きく、素子の経時変化による劣化等のデメリットが多い。本発明によるゲート電極による電子放出促進機構をこれらの真空管に応用することにより、低制御電力動作で、堅牢な高速真空電子素子が実現できる。
【特許文献1】特開平07−065697号公報
【特許文献2】特開2000−123711公報
【特許文献3】特開2000−268705公報
【特許文献4】特開2000−285795公報
【特許文献5】特開2001−250470公報
【特許文献6】特開2003−109489公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献に開示されている電子放出素子は、いずれも加工が困難な陰極構造や特殊な電子放出物質を用いねばならず、非常に条件が管理されている環境下で用いねばならない。更に、従来のゲート電極はいずれも、陰極から放出された電子をできるだけ多く陽極に、又は陽極の所定箇所に到達させる働きを行うだけであるので、特別の材質の陰極を用いなければ、放出電流の大きな電子放出を行う電子放出素子を得るのは困難であるという欠点がある。すなわち、従来のゲート電極は陰極から放出された電子を制御するのが主であり、電子放出の積極的な促進作用は有してはいない。
【0006】
本発明は、電子を放出する陰極近傍に電気絶縁型のゲート電極を設け、その電気絶縁型のゲート電極に、陰極が呈する電位障壁のトンネル効果を促進する大きさのバイアス電圧を印加することにより、陰極から電子が放出され易くすることを特徴とし、特に、ナノレベルの加工精度を必要とせず、化学的に不安定で経時変化しやすい仕事関数の小さな電子放出材料を必要としないので,従来に比べて条件の悪い環境下でも用いることが可能で、製造が容易で堅牢性に富んだ放出電流の大きな電子放出デバイス及び3極真空管(以下、本発明では総称して電子放出素子という。)を提供することを課題としている。つまり、本発明はゲート電極によって陰極からいかに多くの電子を放出させ易くするかというところに特徴がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、前記課題を解決するために、陰極から陽極へ向けて電子を放出する電子放出素子において、前記陰極と該陰極に隣接する電子放出領域に跨って、かつ電気絶縁性薄膜を介してゲート電極を設け、前記陰極に対して正となる電圧を前記ゲート電極に印加することにより、前記ゲート電極近傍における前記陰極の電子放出面の障壁幅を狭くして電子に対するトンネル効果を促進し、前記陰極から前記陽極への電子放出を生じ易くしたことを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0008】
第2の発明は、陰極から陽極へ向けて電子を放出する電子放出素子において、ゲート電極上に電気絶縁性薄膜が形成され、前記電気絶縁性薄膜上に、前記陰極と前記陽極とが互いに所定距離離れて形成されており、前記陰極と前記陽極との間は真空であるか、又は液体あるいは気体が存在し、前記ゲート電極近傍における前記陰極の電子放出面の障壁幅を狭くする電圧を前記ゲート電極に印加することによって、トンネル効果を促進し、前記陰極から前記陽極へ向けての電子放出を生じ易くすることを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0009】
第3の発明は、前記第2の発明において、前記電気絶縁性薄膜は、膜厚の薄い薄膜部分と該薄膜部分よりも膜厚の厚い第1、第2の厚膜部分を有し、前記陰極は、前記電気絶縁性薄膜の前記第1の厚膜部分から前記薄膜部分まで延び、前記陽極は、前記電気絶縁性薄膜の前記第2の厚膜部分だけに形成されており、前記電気絶縁性薄膜に電子がチャージアップされるのを抑制することを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0010】
第4の発明は、前記第2の発明において、前記ゲート電極は、厚い第1の部分と該第1の部分よりも薄い第2の部分とを有すると共に、前記電気絶縁性薄膜で覆われており、前記ゲート電極の前記第2の部分に形成されている前記電気絶縁性薄膜の上に前記陰極が形成され、前記ゲート電極の前記第1の部分に形成されている前記電気絶縁性薄膜の上に前記陽極が形成されることを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0011】
第5の発明は、陰極から陽極へ向けて電子を放出する電子放出素子において、絶縁性基板又は半導体基板上に前記陰極とゲート電極とが形成され、前記ゲート電極は電気絶縁性薄膜で覆われ、前記電気絶縁性薄膜上に前記陽極が形成されており、前記陰極と前記ゲート電極との間には前記電気絶縁性薄膜が介在し、前記陰極と前記陽極との間は真空であるか、又は液体あるいは気体が存在し、前記ゲート電極近傍における前記陰極の電子放出面の障壁幅を狭くする電圧を前記ゲート電極に印加することによって、トンネル効果を促進し、前記陰極から前記陽極へ向けての電子放出を生じ易くすることを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0012】
第6の発明は、陰極から陽極へ向けて電子を放出する電子放出素子において、ゲート電極上に電気絶縁性薄膜が形成されていて、該電気絶縁性薄膜の一部面域上に前記陰極が形成され、前記陰極と前記陽極とが互いに所定距離離れて空間的に分離されており、前記陰極と前記陽極との間の周囲は真空であるか、又は液体あるいは気体が存在し、前記ゲート電極近傍における前記陰極の電子放出面の障壁幅を狭くする電圧を前記ゲート電極に印加することによって、トンネル効果を促進し、前記陰極から前記陽極へ向けての電子放出を生じ易くすることを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0013】
第7の発明は、前記第6の発明において、前記ゲート電極は凸部を有し、その凸部を含む前記ゲート電極を前記電気絶縁性薄膜が被覆し、前記陰極は、前記凸部を囲む前記電気絶縁性薄膜上に形成され、前記ゲート電極の前記凸部の頂部面は、前記陰極と比べて前記陽極に近い位置にあることを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0014】
第8の発明は、前記第4の発明又は前記第5の発明、あるいは前記第7において、前記ゲート電極は、前記陰極に近い側よりも前記陽極側に近い側が狭くなる断面台形状になっていることを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0015】
第9の発明は、前記第4の発明又は前記第5の発明、あるいは前記第7の発明において、電子放出面近傍の前記ゲート電極と前記陰極との間の前記電気絶縁性薄膜を他の領域の前記電気絶縁性薄膜の膜厚よりも薄くすることを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0016】
第10の発明は、陰極から陽極へ向けて電子を放出する電子放出素子において、半導体基板の一方の主面側に前記陰極と電気絶縁性薄膜とが位置し、また、前記半導体基板の他方の主面にはゲート電極が形成され、前記陰極は、前記半導体領域上と前記電気絶縁性薄膜とに跨って形成されており、前記陽極は前記電気絶縁性薄膜上に形成され、前記陰極と前記ゲート電極とは前記半導体基板とそれぞれ接合をなし、前記接合は、前記電気絶縁性薄膜の破壊電圧よりも小さい降伏電圧を有し、前記陰極と前記陽極との間の周囲は真空であるか、又は液体あるいは気体が存在し、前記ゲート電極近傍における前記陰極の電子放出面の障壁幅を狭くする電圧を前記ゲート電極に印加することによって、トンネル効果を促進し、前記陰極から前記陽極へ向けての電子放出を生じ易くすることを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0017】
第11の発明は、前記第1の発明ないし前記第10の発明のいずれかにおいて、前記陰極における電子放出面を薄い第2の電気的絶縁性薄膜で覆い、実効的な電子放出面の電子障壁を低下させたことを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0018】
第12の発明は、前記第1の発明ないし前記第11の発明のいずれかに記載した前記電子放出素子の前記電子放出領域は真空であり、前記ゲート電極に正電圧又はゼロ電圧を印加することによってオンとなり、そのゲート電極にゼロ電圧又は負の電圧を印加することによって、オフとなる3極真空管又は電力用スイッチ素子として用いることを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0019】
第13の発明は、前記第2の発明ないし前記第12の発明のいずれかにおいて、第4の電極を設けて、前記陰極を基準として前記陽極に第1の正電圧を印加し、前記ゲートに第2の正電圧を印加して、前記電子放出素子の電子放出を促進するとともに、第4の電極に正又は負の第3の電圧を印加して、陽極の電流及び第4の電極の電流を検出することにより、前記陽極と前記陰極との近傍における磁気、真空度などの状態を検出することを特徴とする電子放出型のセンサを提供する。
【0020】
第14の発明は、前記第2の発明ないし前記第12の発明のいずれかの電子放出素子を用いた電気分解装置において、前記陽極と前記陰極との間に電気分解される液体又は気体を存在させ、前記陰極を基準として前記陽極に第1の正電圧を印加すると共に、前記ゲート電極に第2の正電圧を印加することにより、前記電子放出素子の電子放出が促進され、前記液体又は気体の電気分解を促進することを特徴とする電気分解装置を提供する。
【発明の効果】
【0021】
前記第1の発明によれば、電子に対するトンネル効果を促進できるので放出電流密度を増大できる。また、陰極と陽極間の低電圧化も可能であり、電子は直接ゲート電極に流れないので、陽極への電子の到達率を向上できる。さらに、化学的に安定な金属材料も陰極として用いることができ、電子放出素子の堅牢性も達成できる。陰極と陽極の幅を増加させることにより大電流化を図ることができ、パワー半導体デバイスであるパワーMOSFETやIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)と同様な電力用スイッチを実現できる。この場合、半導体を用いた電力用デバイスに比べて、陰極と陽極間を数10分の1から数100分の1の長さに短縮できるので、非常にコンパクトな高耐圧デバイスも実現できる。
【0022】
前記第2の発明によれば、電子放出領域を真空にした場合は、ゲート電極により電子放出を制御する集積回路等や電力用の3極真空管に応用が可能となり、真空センサなどにも応用できる。また、電子放出領域を液体あるいは気体にすることにより、放出された電子による液体の電気分解や、気体のイオン化等を利用したセンサなどへの応用が可能になる。さらに、ゲート電圧により電子放出量が増大するので、電気分解や気体のイオン化などの高速化が期待できる。
【0023】
前記第3の発明によれば、陰極から放出された電子の電気絶縁性薄膜上の散乱や、電気絶縁性薄膜5上への帯電、つまりチャージアップを防止できる。また、静電破壊電圧を増大させることにより堅牢性が向上できる。
【0024】
前記第4の発明によれば、電子放出素子の集積化を図って電子放出電流を増大させることができる。
【0025】
前記第5の発明によれば、絶縁性基板上に電子放出素子の集積化を図ることにより電子放出電流を増大させることができる。
【0026】
前記第6の発明によれば、陽極からの電界は電気絶縁性薄膜5に対してほぼ法線方向に作用するので、電子放出面から放出された電子の電気絶縁性薄膜上での散乱や、電子放出素子へのチャージアップを抑制できる。
【0027】
前記第7の発明によれば、電子放出領域を高集積化することにより電子放出素子の大電流化が図れるので、フラットディスプレイなどの高輝度化が達成できる。
【0028】
前記第8の発明によれば、電子放出面から放出された電子の電気絶縁性薄膜上での散乱や、電子放出素子へのチャージアップを抑制できる。
【0029】
前記第9の発明によれば、電子放出素子の制御性を低下させることなく、高耐圧化を図ることができる。
【0030】
前記第10の発明によれば、逆バイアスショットキー接合を利用することによって、電気絶縁性薄膜の静電破壊を防止することができる。
【0031】
前記第11の発明によれば、障壁高さを低下させることによってトンネル効果を促進できるので、電子放出を促進させることができ、放出電流密度を増大できる。
【0032】
前記第12の発明によれば、第1の発明ないし第11の発明に係る電子放出素子のゲート電極の電圧を正、又は0に制御することによりオンとなり、ゲート電極の電圧をゼロ、又は負に制御することによりオフとなる、3極真空管又は電力用スイッチ素子として動作させることができる。
【0033】
前記第13の発明によれば、磁気や真空をセンシングする電子放出型の感度の良好なセンサを実現できる。
【0034】
前記第14の発明によれば、高速で電気分解を行うことができ、水の電気分解に応用すれば、高速に水素ガスや酸素ガスを生成することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
[実施形態1]
図1及び図2によって請求項1の第1の発明を実施するための実施形態1に係る電子放出素子について説明する。図1は電子放出素子の基本構造を示し、図2はゲート電圧による電子放出の促進作用を説明するためのエネルギー状態図である。図1に示すように本電子放出素子の構成は、電子放出領域である電子放出空間1を挟んで位置する陰極2及び陽極3と、陰極2に近接させて設けたゲート電極4からなり、3端子型のデバイス構造となる。ゲート電極4は、薄い電気絶縁性薄膜5(数nmから数100nm程度)を介して、陰極2の電子放出面6にほぼ直交し、かつ電子放出面6と真空空間である電子放出領域1とに跨って配置される。この電子放出素子にあっては、電子放出領域1を真空空間とし、陰極2と陽極3との間隔を応用に合わせて適宜(数nmから数mm程度に)設定することにより、集積回路等に応用できる微小の電子放出デバイス、つまり微小の3極真空管や電力用の3極真空管又は電力用スイッチ素子、さらにディスプレー用の電子放出デバイスにも応用できる。
【0036】
前述したようにこの実施形態の電子放出素子にあっては、電気絶縁性薄膜5を介在させたゲート電極4を陰極2の電子放出面6近傍に設けているので、陰極2に対して正となる電圧を陽極3に印加した状態で、陰極2に対して正となる電圧をゲート電極4に印加することにより、ゲート電極4近傍の電子放出面6の障壁幅が狭くなり、電子に対するトンネル効果が促進され、放出電流密度を増大できる。また、ゲート電圧の制御による電子放出促進効果により、陰極2と陽極3間の低電圧化も可能であり、電子は直接ゲート電極に流れないので、陽極3への電子の到達率を向上できる。ゲート電極4の薄い電気絶縁性薄膜5の厚みは、応用に応じて設定する必要があり、低電圧の集積回路や3極真空管においては数nm程度にし、電力用の3極真空管やディスプレー用の電子放出デバイスにおいては数10nmから数100nm程度の範囲内で適宜選択する。
【0037】
この電子放出素子の動作原理について説明すると、図2の曲線(a)に示すように、陰極2と陽極3間のみに電圧を印加して、ゲート電極4に電圧を印加しない場合は、陰極2内の電子には電子放出空間1に対して障壁が存在するために、電子放出は生じにくい。図2の曲線(b)に示すように、ゲート電極4に電圧を印加することによりゲート電極4近傍の陰極2の表面電界が107V/cm程度以上になると障壁幅が狭くなり、トンネル効果が生じやすくなって電子放出を促進させることができる。この場合の電子放出が生じる領域の大部分は、ゲート電極4直下の電気絶縁性薄膜5近傍における電子放出面6の数nm程度の幅に限られ、ゲート電極4から離れるに従って電子放出作用は低下する。このように電子放出面6の内の限られた幅ではあるが、障壁幅を著しく低下させることができるので電子放出量を促進できる。
【0038】
したがって、第1の発明の電子放出素子によれば、電気絶縁性薄膜5を介在させたゲート電極4を陰極2の電子放出面6近傍に設けて、陰極2に対して正となる電圧をゲート電極4に印加することにより、ゲート電極4近傍の電子放出面6の障壁幅が狭くなり、電子に対するトンネル効果が促進され、放出電流密度を増大できる。また、ゲート電極4の電圧制御による電子放出促進効果により、陰極2と陽極3間の低電圧化も可能であり、電子は直接ゲート電極4に流れないので、陽極3への電子の到達率を向上できる。さらに、従来では仕事関数が大きく電子放出には不向きとされているが、化学的に安定な金属材料も陰極2として用いることができ、電子放出素子の堅牢性も達成できる。勿論、陰極の電子放出材料としては、適宜、仕事関数の小さな材料等の電子放出の生じやすい材料や負の電子親和力を持つ材料を用いてもよいことは言うまでもない。
【0039】
[実施形態2]
図3によって請求項2に係る第2の発明を実施するための実施形態2の電子放出素子について説明する。図3において、図1で示した記号と同一の記号は図1の部材と同じ名称の部材を示すものとする。実施形態2の電子放出素子は基板を用いている。図3(A)に示すように、不純物濃度の高い半導体あるいは導電性材料からなる導電性基板7Aをゲート領域あるいはゲート電極4として用い、その一方の表面に電気絶縁性薄膜5を形成し、さらに電気絶縁性薄膜5上に陰極2と陽極3とを形成している。導電性基板7Aとしては、金属材料でも合金材料を用いても良い。作成プロセスに耐え得るだけの厚みの導電性基板7Aを用い、表面に電気絶縁物を形成する。電気絶縁物材料としては種々あるが、図3(A)に示す電子放出素子では、SiO2(二酸化シリコン)膜を用いた例について示す。SiO2膜をスパッタにより100nmほど導電性基板7A上に堆積させ、陰極2及び陽極3となる金属材料をスパッタ又は蒸着で形成する。陽極3と陰極2のパターニングを行って電極を形成することで、電子放出素子が実現できる。
【0040】
また、この実施形態2では導電性基板を用いているが、別の実施例として図3(B)に示すように、加工の容易なSi基板のような半導体基板7Bを用いてもよい。ただし、この場合はゲート電圧によるバイアス効果を上げるために0.1Ωcm以下の抵抗率の半導体基板が望ましい。また、同図に示すように半導体基板7Bの他方の面にゲート電極4を形成する必要がある。Si基板の場合は、熱酸化により緻密な酸化膜を作成することができる。ただし、半導体基板7Bの抵抗率が大きい場合には、ゲート領域となるSi基板にオーミック電極を形成する工程が増える。さらに、別の実施例として図3(C)に示すように、絶縁性基板7Cを用いても、第2の発明による電子放出素子が実現できる。この場合は、ガラスなどの絶縁性基板7Cを用いて、その上にゲート電極4及び電気絶縁性薄膜5をスパッタにより形成し、部分的にゲート電極4のパッド部の電気絶縁性薄膜5を開口する。続いて、陰極材料をスパッタして、陰極2と陽極3のパターニングを行うことで、図3(C)の電子放出素子を作成できる。この第2の発明によれば、図3に示すように前記第1の発明による電子放出素子を、簡易プロセスの横型構造で形成できる。なお、動作原理は前記第1の発明と同様であるので説明を省略する。
【0041】
[実施形態3]
図4によって、請求項3に係る第3の発明の実施形態3に係る電子放出素子について説明する。図4において、図1〜図3で用いた記号と同じ記号はそれら図面で用いた部材と同じ名称の部材を示すものとする。第3の発明によれば、前記第2の発明と電子放出の原理は同様であるが、電子放出領域1の下の面域に比べて陽極3の下の面域における電気絶縁性薄膜5を厚くし、陰極2の一部分を電気絶縁性薄膜5の薄い部分に形成して、陰極2から上方にある陽極3方向へ放出電子を向けることで、放出電子が電気絶縁性薄膜5上を散乱することなく、陽極3へ到達させることができる。また、この構造では、電子放出領域1以外の電気絶縁性薄膜5を厚く形成し、静電破壊電圧を増大させて堅牢性を向上できる。この実施形態3の場合は、厚い電気絶縁性薄膜5を形成したあとに、フォトリソグラフィーにより電子放出領域1周辺の酸化膜を一旦除去し、薄い電気絶縁性薄膜5を再度形成することにより、図4の構造を実現できる。その他の電極形成法や応用などについては、前述した第2の発明の実施形態2と全く同様となる。この第3の発明においても、前記第2の発明と同様に、半導体基板や絶縁性基板を用いても実現できる。なお、動作原理は前記第2の発明の電子放出素子とほぼ同様であるので、動作説明については省略する。
【0042】
[実施形態4]
図5及び図6によって、請求項4の第4の発明に係る実施形態4の電子放出素子について説明する。図5、図6において、図1〜図4で用いた記号と同じ記号はそれら図面で用いた部材と同じ名称の部材を示すものとする。実施形態4の電子放出素子は、図5に示すように、前記第2の発明による電子放出素子を縦型構造に形成したものであり、電子放出素子の集積化を図って電子放出電流を増大させることができる。実施形態4の電子放出素子は、ゲート電極4として前記第2の発明と同様に導電性基板、又は半導体基板を用いることができる。
【0043】
次に、導電性基板を用いた場合の実施例の製作プロセスを図6により説明すると、先ず、図6(A)に示すように、厚みを適宜選択した導電性基板7Aの一方の表面に、電気絶縁性薄膜5を堆積する。この場合は、電気絶縁性薄膜5としてSiO2膜を用い、厚みを1μm程度として800V程度の絶縁破壊電圧に耐えるようにする。次にフォトレジストでマスク9を形成する。続いて図6(B)に示すように、SiO2膜をエッチングし、導電性基板7Aをエッチングする。この際、急峻な側壁を得るためには、リアクティブイオンエッチング等の異方性の強いエッチングを用いる。さらに図6(C)に示すように、導電性基板7Aのエッチングした面域などを覆うように電気絶縁性薄膜5を形成するが、この厚みは数nmから数100nm程度であり、集積回路用や電力用のスイッチなどの仕様に合わせて設定する。
【0044】
次に、電気絶縁性薄膜5を覆うように電極材料10をスパッタにより形成し、図6(D)に示すようにフォトレジストの粘度などを調整して、側壁部がレジスト11で覆われない条件で塗布し、つまり、電極材料10の側壁部が覆われないように塗布した状態でベーキングする。続いて、前記側壁部の電極材料10をエッチングすることで、陰極2、陽極3が形成され、図6(E)に示すような第4の発明の電子放出素子が得られる。この電子放出素子では、図3(A)で示した実施形態2の電子放出素子と同様に導電性基板7Aがゲート電極4となり、陰極2、陽極3が電気絶縁性薄膜5を介してゲート電極4である導電性基板7Aに対設される。この実施形態では導電性基板7Aを用いているが、図3(B)に示したように、加工の容易なSi基板のような半導体基板を用いてもよい。この場合は、半導体基板にゲート電極を形成する必要がある。この場合もゲート電極4のバイアス効果を上げるために半導体基板とゲート電極のオーミック性が良好であることが望ましいので、0.1Ωcm以下程度の抵抗率の基板を用いるのが良い。なお、Si基板の場合は、熱酸化により緻密な酸化膜も作成可能である。
【0045】
[実施形態5]
図7によって、請求項5の第5の発明に係る実施形態5の電子放出素子について説明する。図7(A)及び(B)において、図1〜図6で用いた記号と同じ記号はそれら図面で用いた部材と同じ名称の部材を示すものとする。実施形態5の電子放出素子は。図7(A)及び(B)に示すように、ガラスなどの絶縁性基板7Cを用い、その上にスパッタなどによりに電極材料を堆積し、リアクティブイオンエッチングなどを行って不要部分を削除してゲート電極4を形成する。電気絶縁性薄膜5をスパッタにより形成し、部分的にゲート電極4のパッド部の電気絶縁性薄膜5を開口する。その際、陰極下となる電気絶縁性薄膜5を除去した場合は図7(A)のデバイス構造となり、陰極下となる電気絶縁性薄膜5を除去しない場合は図7(B)のデバイス構造となる。続いて、電極材料をスパッタして、陰極2と陽極3のパターニングを行うことで、図7(A)及び(B)に示す電子放出素子を作成できる。また、ゲート電極材料として導電性の高い、つまり不純物濃度の高い半導体を用い、リアクティブイオンエッチングなどにより不要部分を削除してゲート電極4を形成してもよい。この第5の発明によれば、比較的簡単なプロセスで薄い電気絶縁性フィルムなどに、電子放出素子を集積化することができる。なお、動作原理は前記第4の発明と同様であるので説明を省略する。
【0046】
[実施形態6]
図8によって、請求項6の第6の発明に係る実施形態6の電子放出素子について説明する。図8において、図1〜図7で用いた記号と同じ記号はそれら図面で用いた部材と同じ名称の部材を示すものとする。第6の発明は、図8に示すように陰極2と陽極3とが分離した構造であり、フラットディスプレイなどへの応用可能な電子放出素子が簡易プロセスで実現可能となる。第6の発明によれば、電気絶縁性薄膜5のほぼ法線方向に陽極3からの電界が作用するので、電子放出面から放出された電子の電気絶縁性薄膜5上の散乱やチャージアップを抑制できるという特徴を有する。
【0047】
この実施形態6の電子放出素子は、図8に示すように陰極2と陽極3とが電気的かつ空間的に分離しており、フラットディスプレイなどの電子放出デバイスを簡易プロセスで実現できる。なお、図8は電子放出デバイスの1画素を示しており、他の画素もこれに並列構造で形成されている。この電子放出デバイスにおいて、ゲート電極4として導電性基板7Aを用いる場合の製作プロセスについて説明する。導電性基板7Aの表面にSiO2膜などの電気絶縁性薄膜5、さらにその上に電極材料をスパッタなどにより堆積する。次に、堆積された電極材料の一部をマスクし、エッチングして陰極2を形成することにより、電子放出素子を簡易プロセスで作成できる。
【0048】
次に、第6の発明における電子放出素子の動作原理を説明する。陽極3と陰極2間に電圧を印加した状態では電子放出は生じないが、この状態で陰極2に対して正となる電圧をゲート電極4に印加すると、陰極2のゲート電極4に近い側壁領域において、真空準位に対する障壁幅が小さくなり電子放出が促進される。このデバイスにおいては、電気絶縁性薄膜5の表面に対して法線方向に陽極3からの電界が生じるので、この放出電子は電気絶縁性薄膜5上を散乱せずに、また、この電気絶縁性薄膜5上にチャージアップすることがない。また、この実施形態6の電子放出デバイスの周囲が液体であれば、電気分解等への応用も可能であり、この場合は電子放出の促進作用により、電気分解の高速化が図れる。この実施形態6の陰極2と陽極3とについては、応用に応じて適宜間隔を設定するが、陰極2と陽極3とは分離していても、あるいは絶縁物を介して連結させても良い。なお、この実施形態については、導電性基板7Aを用いた製作プロセスについて説明したが、前記第4の発明と同様に、半導体基板や絶縁性基板を用いてもよい。
【0049】
[実施形態7]
図9によって、請求項7の第7の発明に係る実施形態7の電子放出素子について説明する。図9において、図1〜図8で用いた記号と同じ記号はそれら図面で用いた部材と同じ名称の部材を示すものとする。第7の発明は、前記第6の発明と動作原理は同様であるが、図9に示すように凸形のゲート構造に採用することで、電子放出素子の電子放出領域1の高集積化により大電流化が図れるので、フラットディスプレイなどの高輝度化が達成できるところに特徴がある。
【0050】
この実施形態7に係る電子放出素子は、図9(A)に示すように、前記第6の発明による電子放出素子のゲート電極4を凸形構造にしたものであり、電子放出領域の高集積化により大電流化が図れる。図9(A)も電子放出素子の1画素について示したものである。次にこの実施例の製作プロセスについて説明する。このデバイスの陰極部とゲート電極部の製作に関しては、前記第4の発明に係る電子デバイスの製作方法とほぼ同様となり、図6(A)から図6(D)に示す通り、凸形のゲート電極部とその表面を覆う電気絶縁膜性薄膜5とを形成し、さらにその上に電極材料を形成するまでは同様のプロセスとなる。しかしながら、この第7の発明の電子放出デバイスの製作にあたっては、フォトレジストの粘度を低目に調整することにより、凸形部の頂部面と側壁部とがレジストで覆われない条件で塗布し、電極材料をエッチングする必要がある。このプロセスにより、図9(A)に示す第7の発明の電子放出デバイスが作成できる。また、フォトレジストの粘度を調整して、凸形部の頂部面と底部面はレジストで覆われ、凸形部の側壁部はレジストで覆われない条件で作成しても良い。この場合は図9(B)の電子放出デバイスが実現でき、凸形部の頂部面に形成された第4の電極15を制御電極として用いることができる。
【0051】
この実施形態7では導電性基板をゲート電極4として用いているが、加工の容易なSi基板などの半導体基板を用いても良い。この場合もゲート電極4のバイアス効果を上げるために0.1Ωcm以下程度の抵抗率の半導体基板が望ましい。Si基板の場合は、熱酸化により緻密な酸化膜も作成可能である。また、この実施形態7の電子放出デバイスの周囲が液体であれば、電気分解などへの応用も可能であり、この場合は電子放出の促進作用により電気分解の高速化が図れる。この実施形態の陰極2と陽極3とについては、応用に応じて適宜間隔を設定するが、陰極2と陽極3は分離しても、絶縁物を介して連結しても良い。更にまた、前記実施形態と同様に基板として絶縁性基板を用い、その絶縁基板にゲート電極を形成してもよい。
【0052】
[実施形態8]
図10によって、請求項8の第8の発明に係る実施形態8の電子放出素子について説明する。図10において、図1〜図9で用いた記号と同じ記号はそれら図面で用いた部材と同じ名称の部材を示すものとする。この第8の発明の電子放出素子は、前記第4の発明あるいは前記第7の発明による電子放出素子のゲート電極4を台形形状にすることにより、ゲート電極4上における電気絶縁性薄膜5の接線方向の電界緩和を図ったものであり、陰極2から放出される電子の電気絶縁性薄膜5上の散乱やチャージアップを防止することができる。それぞれ、前記第4の発明に適用した場合を図10(A)に示し、前記第7の発明に適用した場合を図10(B)に示している。
【0053】
最初に、前記実施形態4の電子放出素子に適用した場合の実施形態について図10(A)を用いて説明する。この電子放出の製作プロセスについては、前記第4の発明の電子放出デバイスの製作プロセスを示す図6とほぼ同様であるが、図6(B)に示すような急峻な側壁を形成するような垂直方向に異方性の強いエッチングを採用せずに、幾分等方性のあるエッチング技術を用いて横方向のアンダーエッチを利用し、台形形状のゲート領域を形成する。これから後のプロセスについては、図6とほぼ同様となり、この実施形態8を実施形態4に適用した場合の電子放出デバイスが実現できる。このデバイスの場合は台形形状のゲート電極の採用により、陰極2から放出された電子に対してはゲート電極4上の電気絶縁性薄膜5に沿う方向よりも、陰極2に対して垂直方向の電界が強いので、放出電子の電気絶縁性薄膜5上の散乱やチャージアップを防止できる。したがって、放出された電子を効率よく陽極3へ輸送できる。
【0054】
次に、図10(B)を用いて、この第8の発明を実施形態7の電子放出素子に適用した場合について説明する。この電子放出の製作プロセスについては、台形形状のゲート領域4の作成とその上への電気絶縁性薄膜5の堆積、さらに陰極2の電極材料の堆積までは、この第8の発明を前記第4の発明の電子放出素子に適用した場合の製作プロセスと同様である。異なる点は、フォトレジストの粘度を低く目に調整することにより、凸形部の頂部面と側壁部がレジストで覆われない条件で塗布した後にベーキングし、電極材料をエッチングする点である。このプロセスにより、この第8の発明を実施形態7に適用した場合の縦型の電子放出デバイスが作成できる。このデバイスにおいても、台形形状のゲート電極の採用により、陰極2から放出される電子の電気絶縁性薄膜5上の散乱やチャージアップを防止することができる。また図面は示さないが、請求項7の発明による実施形態7の図9(B)の電子放出デバイスと同様に、凸形部の頂部面上に第4の電極15を制御電極として形成しても良い。なお、この実施形態8については、導電性基板を用いてゲート電極(ゲート領域を含む)を形成する製作プロセスについて説明したが、ゲート電極を導電率の高い半導体基板で形成しても良いし、また絶縁性基板上に作成しても良い。これらの電子放出デバイスは実施形態4及び実施形態7の電子放出デバイスと同様に、電子放出デバイスの周囲の空間が真空であれば、3極真空管として動作させることができ、また、この実施形態8の電子放出デバイスの周囲が液体であれば、電子放出の促進作用と放出された電子の陽極3への到達が高効率となり、電気分解の高速化が図れる。
【0055】
[実施形態9]
図11によって、請求項9の第9の発明に係る実施形態9の電子放出素子について説明する。図11において、図1〜図10で用いた記号と同じ記号はそれら図面で用いた部材と同じ名称の部材を示すものとする。この第9の発明は、前記第4の発明ないし前記第8の発明のいずれかの電子放出素子における電子放出面近傍のゲート電極4と陰極2との間の電気絶縁性薄膜5を薄くして制御性を高め、それ以外の電気絶縁性膜5を厚くして高耐圧化を図ったものであり、制御性と堅牢性の向上を図ることができる。図11は第9の発明を実施形態4に適用した場合であり、この図を用いて実施形態9について説明する。製作プロセスについては、図6に示した前記第4の発明の電子放出デバイスの製作プロセスと図6(C)における電気絶縁性薄膜を形成するまでのプロセスは同様であるが、この電気絶縁性薄膜5の耐圧を大きくするために厚めに形成する。
【0056】
次に、フォトレジストの粘度を調整して、凸形部の頂部面と下部面との電気絶縁性薄膜がレジストで覆われ、側壁部がレジストで覆われない条件で塗布し、ベーキングする。続いて、側壁部の電気絶縁性薄膜部分のみをエッチングし、再度電気絶縁性薄膜5を薄めに形成する。この膜厚については、用途に合わせて数nmから数100nm程度で適宜選択する。以降の電極形成については、実施形態4における図6(D)、(E)に示したプロセスと同様となり、この第9の発明を実施形態4に適用した場合の電子放出デバイスが実現できる。このデバイスにおいては電子放出面近傍のゲート電極4と陰極2との間の電気絶縁性薄膜5を薄くすることによって、電子放出を促進させて制御性を高めることができ、それ以外の電気絶縁性膜5は厚くして高耐圧化を図ることができるので、制御性と堅牢性の双方とも向上させることができる。この第9の発明を図10に示した実施形態8に適用した場合、その製作プロセスは実施形態8と同様となるので説明を省略する。上述の実施形態では導電性基板を用いているが、半導体基板や絶縁性基板上にゲート電極4を形成してもよい。この第9の発明の応用についても、前記実施形態4の電子放出デバイスと同様となる。
【0057】
[実施形態10]
図12によって、請求項10の第10の発明に係る実施形態10の電子放出素子について説明する。図12において、図1〜図11で用いた記号と同じ記号はそれら図面で用いた部材と同じ名称の部材を示すものとする。第10の発明は、前記実施形態3ないし前記実施形態9の電子放出デバイスにおいて、陰極2と電気絶縁性薄膜5とゲート電極4からなる構造を逆バイアスのショットキー接合により短絡することで、電気絶縁性薄膜5の静電破壊防止を実現したところに特徴がある。この実施形態10は実施形態3の電子放出素子の横型構造に適用したものであり、実施形態10の電子放出素子ではn型半導体基板12を用いている。電子放出領域近傍の電気絶縁性薄膜5の厚みは応用により異なるが、集積回路などや低耐圧の三極真空管では数nmの厚みで、その静電破壊電圧は数10V、電力用の三極真空管や電気分解の応用ではその厚みは数10nm程度であり、その静電破壊電圧は数100V程度となる。このような電子放出デバイスとして動作させる場合には、陰極2とゲート電極4間にも正電圧が印加されるので、電子放出領域1近傍の電気絶縁性薄膜5が薄い場合には、静電破壊を防止する必要が生じる。
【0058】
この実施形態10の電子放出素子ではn型半導体基板12をゲート領域としている。この構造では、n型半導体基板12の一方の主面側にショットキー接合13を形成するゲート電極4を備え、他方の主面側に電気絶縁性薄膜5を形成し、その一部を除去して陰極2を形成して、さらにn型半導体基板12との間にショットキー接合13を形成している。したがって、陰極2とn型半導体基板12間、ゲート電極4とn型半導体基板12間の両者にショットキー接合13が形成される。なお、陽極3下の電気絶縁性薄膜5の厚みを1μm程度とすれば、その静電破壊電圧は800V程度となり、静電破壊は生じにくい。動作状態では、陰極2とゲート電極4間には正電圧が印加されるが、この場合にショットキー接合13は逆バイアスとなるので、印加電圧は短絡されることはなく、ゲート制御により電子放出が可能となる。このショットキー接合13の降伏電圧を電子放出領域1近傍の電気絶縁性薄膜5の静電破壊電圧よりも小さくなるように設定しておくことにより、大きな電圧が陰極2とゲート電極4間に印加されても、逆バイアス状態にあるショットキー接合13が降伏してこれ以上大きな電圧が印加されないので、電気絶縁性薄膜5の静電破壊を防止することが可能となる。また、逆極性の電圧がゲート電極4に印加された場合も陰極2とn型半導体基板12間のショットキー接合13は順方向となるが、n型半導体基板12とゲート電極4間のショットキー接合13は逆方向となるので、同様に大きな電圧が印加されると逆方向のショットキー接合13が降伏し、これ以上電圧が印加されるのが防止できる。したがって、確実に電気絶縁性薄膜5の静電破壊を防止できる。
【0059】
本実施形態10の製作プロセスについて説明する。図12において、最初にn型半導体基板12の表面における陽極3の下の面域に、二酸化シリコン薄膜を熱酸化により1μm程度の厚みに形成する。次に、陽極3の下面に相当する面域以外の電気絶縁性薄膜をフォトエッチングによりエッチングする。続いて、再度電気絶縁性薄膜5となる二酸化シリコン薄膜を熱酸化により数nm程度で形成する。この膜厚の静電破壊電圧は数10V程度となる。さらに、陰極2の下面となる面域に相当する電気絶縁性薄膜をフォトエッチングにより除去し、しかる後に電極材料をスパッタ等で形成し、陰極2、陽極3及びゲート電極4を形成することによって、図12に示す本実施形態の電子放出デバイスが実現できる。この構造では、n型半導体基板12の抵抗率を0.5Ωcmから数Ωcm程度にすることにより、陰極2とn型半導体基板12との間にショットキー接合を形成できる。このショットキー接合の逆耐圧は、n型半導体基板12の抵抗率により変化させることができ、上記の抵抗率では数Vから数10V程度となる。
【0060】
次にこの実施形態10の電子放出素子の動作について説明する。動作状態では、陰極2に対してゲート電極4に正となる電圧が印加される。この極性においては、陰極2とn型半導体基板12間のショットキー接合は逆バイアスであり、ゲート電極4とn型半導体基板12間のショットキー接合は順バイアスとなるので、陰極2とn型半導体基板12間の逆バイアスのショットキー接合に並列接続構成となる陰極2と電気絶縁性薄膜5とn型半導体基板12との間に大きな電圧が印加され、電子放出が促進される。この極性の印加電圧を大きくしていくと、逆バイアス状態のショットキー接合が降伏状態となり、これ以上電圧が印加されるのが防止できる。このショットキー接合の降伏電圧を電子放出領域1近傍の電気絶縁性薄膜5の静電破壊電圧よりも小さくなるように設定することにより、陰極2とゲート電極間4との間に大きな電圧が印加されても、ショットキー接合が降伏して電気絶縁性薄膜5の静電破壊を防止することができる。また、逆極性の電圧がゲート電極4に印加された場合も陰極2とn型半導体基板12間のショットキー接合は順方向、n型半導体基板12とゲート電極4間のショットキー接合は逆方向となるので、同様に逆極性においても大きな電圧が印加されるのを防止できる。なお、この実施例においては基板としてn型半導体基板を用いているが、p型半導体基板を用いてショットキー接合を形成してもよい。さらに、プロセス的に多少工程数が増えるが、ショットキー接合に変えてpn接合を用いても良い。この場合にはpnp型又はnpn型の半導体素子を基板として用い、基板と陰極2、基板とゲート電極4間はオーミック接触とすればよい。
【0061】
[実施形態11]
図13ないし図15によって、請求項11の第11の発明に係る実施形態11の電子放出素子について説明する。図13において、図1〜図12で用いた記号と同じ記号はそれら図面で用いた部材と同じ名称の部材を示すものとする。第11の発明によれば、前記第2の発明ないし前記第10の発明のいずれかの電子放出素子において、陰極2の電子放出領域1に臨む電子放出面を数Åから数10Å程度の薄い第2の電気的絶縁性薄膜14で覆うことによって、実効的な電子の障壁高さを低下させることに特徴がある。図14(A)は、本発明を実施したデバイスの電圧が印加される前のエネルギー状態を示している。図14(B)において、曲線(a)は陰極2に第2の電気的絶縁性薄膜14を形成しておらず、ゲート電圧を印加しない状態の電子のエネルギー状態を示す。また、曲線(b)は陰極2に第2の電気的絶縁性薄膜14を形成し、ゲート電圧を印加しない状態の電子のエネルギー状態を示し、曲線(c)はゲート電圧を印加した状態の電子のエネルギー状態を示している。図14(B)から、陰極2に第2の電気的絶縁性薄膜14を形成することにより障壁高さが低下し、トンネル効果が促進されるので、ゲート電圧を印加することによって、より一層トンネル効果が有効となり、電子放出を促進できることが明らかである。
【0062】
図15は、この第11の発明を図4に示した前記実施形態3の横型構造に適用した場合における電子放出素子の他の一実施例を示している。この実施例のデバイスのプロセスは、前記実施形態3の電子放出デバイスのプロセスとほとんど同様であるが、最終段階で電子放出面近傍に数Åから数10Å程度の薄い第2の電気的絶縁性薄膜14を形成している。この第2の電気的絶縁性薄膜14の働きは、図13に示した電子放出素子の第2の電気的絶縁性薄膜14と全く同じである。なお、図15に示す電子放出素子は、ゲート電極4として導電性基板を用いているが、半導体基板や絶縁性基板の上にゲート電極を形成してもよい。図15に示す電子放出素子は、第11の発明を実施形態3の電子放出素子に適用した場合を示しているが、同様に前記実施形態2、前記実施形態4ないし前記実施形態10の電子放出素子にも適用できる。
【0063】
[実施形態12]
請求項12の第12の発明に係る実施形態12については図示しないが、前記実施形態1ない前記実施形態11の電子放出素子において電子放出領域1を真空空間にした場合は、ゲート電極4により電子放出を制御する集積回路などや電力用の3極真空管に応用が可能となる。この電子放出デバイスの周囲の空間が真空であれば、このデバイスは3極真空管として動作させることができ、陰極2と陽極3間を10nm以下とすれば、集積回路としての応用が可能であり、陰極2と陽極3間を10nmから10μm程度すれば、耐圧数10Vから数1000Vの電力用スイッチ素子に応用できる。また、陰極2の幅と陽極3の幅とを増大させることにより大電流化を図ることができ、既存のパワー半導体デバイスであるパワーMOSFETやIGBTと同様な電力用スイッチ素子を実現できる。半導体を用いた電力用デバイスに比べて、陰極2と陽極3間を数10分の1から数100分の1の長さに短縮できるので、非常に小型の高耐圧デバイスを実現できる。
【0064】
この実施形態の一実施例は、陰極2と陽極3との間に電圧が印加され、ゲート電極4に電圧を印加しない状態ではトンネル電流が生じないノーマリオフ型の3極真空管又は電力用スイッチ素子を示しており、この場合には、陰極2に対して正となる電圧をゲート電極4に印加すると、ノーマリオフ型の3極真空管又は電力用スイッチ素子はオンで、ゲート電極から電圧を除去するとオフである。また、他の一実施例として、陰極2と陽極3との間に電圧が印加され、ゲート電極4に電圧を印加しない状態でもトンネル電流を生じるノーマリオン型の3極真空管又は電力用スイッチ素子とすることもできる。この場合には、陰極2に対して負となる電圧をゲート電極4に印加することにより、ノーマリオン型の3極真空管又は電力用スイッチ素子をオフさせることができる。このようなノーマリオン型の3極真空管又は電力用スイッチ素子では、陰極2と陽極3との間の電界をかなり大きくしなければならず、また、陰極2の全面で行われる電子放出をゲート電極の負電圧で止めさせるためには、凸形ゲート構造の電極を採用し、単一ユニットの陰極幅を狭める必要がある。したがって、この場合には、第12の発明を実施形態4、実施形態5、実施形態7〜実施形態9に適用するのが好ましい。なおこの場合は、陰極の電子放出領域以外の陰極領域は絶縁物で覆うなどして、電子放出が生じないような配慮が必要となる。
【0065】
具体例を示すと、ノーマリオン型の電力用スイッチ素子における陰極2と陽極3との間の寸法が0.1μm程度であれば、陰極2と陽極3間に100V程度の電圧を印加することによりトンネル電流が生じオンする。この場合、ゲート電極4が凸形状であって、陰極2の幅が0.03μm程度以下のときには、陰極2に対して−10V程度の電圧をゲート電極4に印加することにより、ノーマリオン型の電力用スイッチ素子をオフすることができる。このように、ノーマリオン型の電力用スイッチ素子であっても、陰極幅を狭めた陰極構造とすることによって、実用的な大きさのゲート電圧でオフさせることができ、非常に小型のノーマリオン型の電力用スイッチ素子を実現できる。3極真空管についても同様なことが言える。
【0066】
[実施形態13]
図16ないし図23によって、請求項13の第13の発明に係る実施形態13の電子放出素子の各具体例について説明する。図16ないし図23において、図1〜図15で用いた記号と同じ記号はそれら図面で用いた部材と同じ名称の部材を示すものとする。この第13の発明は、前記実施形態2ないし前記実施形態11の電子放出素子において、第4の電極15を設けることにより、陰極2と陽極3との近傍における真空度、磁気などの状態を検出するセンサを実現したものである。検出の機構は、陰極2を基準として陽極3に第1の正電圧を印加し、ゲート電極4に第2の正電圧を印加して電子放出を促進すると共に、第4の電極15に正又は負の第3の電圧を印加して、陽極3の電流及び第4の電極15の電流を検出することによる。この第13の発明により、磁気や真空を検出する電子放出型のセンサが実現できる。この実施形態13の電子放出素子の製作プロセスは、前記実施形態2の電子放出デバイスとほぼ同様であるが、陽極3側に第4の電極15を形成する点が異なる。また、この実施形態13においては、第4の電極15は陽極3に対して対象的な位置に配置されている。
【0067】
次にこの実施形態13の電子放出素子を磁気センサに応用した場合の電子放出デバイスの一実施例について、図17を用いて説明する。磁気センサに応用する場合は、陰極2を基準として陽極3に第1の直流電圧源16により第1の正電圧を印加し、第2の直流電圧源17によりゲート電極4に第2の正電圧を印加して電子放出を促進すると共に、第4の電極15にも陰極2に対して陽極3と同じ大きさの正電圧を第1の直流電圧源16により印加する。この状態では、陽極3と第4の電極15は陰極2に対して対象位置にあるから、両電極に到達する放出電子電流はほぼ同程度となる。この状態にさらに、陰極2から放出された電子の運動方向と垂直に上方から下方に向かう磁場を印加すると、放出した電子に対してローレンツ力が働く。この場合は陽極3に向かう電子はローレンツ力により第4の電極15の方向に曲げられることになり、陽極3への電子電流は減少し、第4の電極15に流れる電流が増加することになる。これらの陽極3及び第4の電極15の電流差を計測することで、磁気センサに応用することができる。この実施形態13の磁気センサによれば、半導体を用いた磁気センサに比較して、電子の速度を桁違いに増加できるので、高感度特性が得られる。
【0068】
同様に図16の構造の電子放出素子を真空センサに応用した場合の一実施例について、図18を用いて説明する。この実施例の場合は、陰極2に対して陽極3及びゲート電極4に正電圧を印加する点においては、前述の磁気センサと全く同様であるが、第4の電極15には、陰極2に対して負となる電圧を第3の直流電圧源18により印加する点が異なる。このバイアス状態では、陰極2から放出された放出電子が真空中の気体分子と衝突して、気体分子をイオン化させることにより、電子は陽極3に到達し、イオンは第4の電極15に収集されることになる。このイオン電流は真空の気体分子の数に比例するので、イオン電流を測定することにより、閉じられた雰囲気の真空度が計測できる。従来の電離真空計はフィラメントを用いた熱電子放出を用いているので、真空度の低い状態で使用するとフィラメントが焼損する大きな問題があった。本実施例の真空センサは、原理的には従来の電離真空計と同様であるが、冷陰極の電子放出を用いているので、真空度の低い状態から使用でき、かつ非常に堅牢な真空センサが提供できる。
【0069】
この第13の発明における別の一実施例としては、図19に示すよう、図4に示した前記実施形態3の電子放出素子に適用した場合も可能である。また、図20に示すように電気絶縁性薄膜5の段差を利用して、陽極3と第4の電極15それぞれの幅を増大させることにより、電子放出電流を増大させて検出感度を上げることも可能である。また、図21に示すように、図5に示した前記実施形態4の縦型構造の電子放出素子にも応用することができる。さらに、図22に示すように、図9に示した前記実施形態7の縦型構造の電子放出素子にも応用して、陽極3と第4の電極15とを空間的に分離させて形成した電子放出デバイスとすることも可能である。また、図23に示すように、陽極3を凸型ゲートの頂部面上に形成し、第4の電極15を空間的に分離させても良いし、図示はしないが逆に第4の電極15を凸型ゲートの頂部面上に形成し、陽極3を空間的に分離させても良い。さらに図24に示すように、実施形態5における図7の実施例と同様に、この第11の発明を絶縁性基板に適用することも可能である。なお、陽極3と第4の電極15は、必ずしも陰極2に対して対称配置でなくてもよい。そして、これら電子放出デバイスに図17又は図18で示したように、陰極2とゲート電極4との間、陰極2と陽極3との間、陰極2と第4の電極15との間に所定の電圧を印加することによって、磁気センサあるいは真空センサとすることができる。
【0070】
[実施形態14]
請求項14の第14の発明に係る実施形態14についても図示しないが、前記実施形態2ないし前記実施形態11の電子放出素子を電気分解用の電子放出デバイスとして用い、陰極2と陽極3との間の電子放出領域1に電気分解される液体又は気体を存在させ、陰極2と陽極3間に印加された電圧の他に、陰極2とゲート電極4間に正電圧を印加することにより、陰極2からの電子放出が促進され、電気分解の高速性を達成できる。この第13の発明を水の電気分解に応用すれば、高速に水素ガスや酸素ガスを生成することが可能である。さらに、電子放出を促進するために、ゲート電圧印加と共に電子放出面に光照射を行っても良い。光照射により陰極表面の電子が高いエネルギーレベルに励起されるので、電子に対する実効的な障壁高さを低めることができ、トンネル効果が促進される。なお照射する光は紫外線程度の波長が望ましいが、ランプなどの人工光を用いてもよいし太陽光を用いてもよい。なお、液体中でこの電子放出デバイスを使用する場合は、陰極2及び陽極3に対してゲート電極4を電気的に絶縁する必要がある。
【0071】
以上の実施形態において基板をほとんど図示していないが、実施形態1、実施形態3、実施形態4、実施形態6ないし実施形態11では所望の機械的な強度を得るために基板上に形成される場合が多い。また、図1に示す実施形態1の構造、図13に示す実施形態11の構造では、基板として絶縁性基板を用いるが、図16〜図23に示す電子放出デバイスを含む他の実施形態でも絶縁性基板上に、ゲート電極を形成しても勿論よい。また、ゲート電極を金属薄板などの導電性基板又は半導体基板を用いて形成することも可能である。また、これら基板は図示しない他の電子部品が搭載されている基板であっても良いし、この電子放出素子の基板に他の半導体素子などの電子部品が一緒に搭載されていても勿論よい。また、基板は可撓性を呈する導電性又は電気絶縁性のフィルムであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施形態1に係る電子放出素子の基本構造を示す図である。
【図2】実施形態1に係る電子放出素子の基本原理を説明するためのである。
【図3】実施形態2に係る電子放出デバイスの基本構造を示す図である。
【図4】実施形態3に係る電子放出デバイスの他の基本構造を示す図である。
【図5】実施形態4に係る電子放出デバイスの他の基本構造を示す図である。
【図6】実施形態4に係る電子放出デバイスの製作プロセスを説明するための図である。
【図7】実施形態5に係る電子放出素子の基本構造を示す図である。
【図8】実施形態6に係る電子放出素子の基本構造を示す図である。
【図9】実施形態7に係る電子放出デバイスの基本構造を示す図である。
【図10】実施形態8に係る電子放出デバイスの基本構造を示し、実施形態4、実施形態7の電子放出素子に適用した場合を示す図である。
【図11】第9の発明に係る電子放出素子の基本構造を示し、実施形態4の電子放出素子に適用した場合を示す図である。
【図12】第10の発明に係る電子放出素子の基本構造を示し、実施形態3の横型構造の電子放出素子に適用した場合を示す図である。
【図13】実施形態11に係る電子放出素子の基本構造を示すための図である。
【図14】実施形態11に係る電子放出素子の基本原理を示すための図である。
【図15】第11の発明を実施形態3の電子放出素子に適用した場合の基本構造を示す図である。
【図16】実施形態13に係る横型構造の電子放出素子の基本構造を示し、実施形態2の電子放出素子に適用した場合を示す図である。
【図17】第13の発明を実施形態2の横型構造の電子放出素子に適用し、磁気センサに応用した一実施例を説明するための図である。
【図18】第13の発明を実施形態2の横型構造の電子放出素子に適用し、真空センサに応用した一実施例を説明するための図である。
【図19】第13の発明を実施形態3の横型構造の電子放出素子に適用した場合の基本構造を説明するための図である。
【図20】第13の発明を実施形態3の横型構造の電子放出素子に適用した場合の他の基本構造を説明するための図である。
【図21】第13の発明を実施形態4の縦型構造の電子放出素子に適用した場合の基本構造を説明するための図である。
【図22】第13の発明を実施形態7の縦型構造の電子放出素子に適用した場合の基本構造を説明するための図である。
【図23】第13の発明を実施形態7における他の縦型構造の電子放出素子に適用した場合の基本構造を説明するための図である。
【図24】第13の発明を実施形態5の縦型構造の電子放出素子に適用した場合の基本構造を説明するための図である。
【符号の説明】
【0073】
1・・・電子放出領域
2・・・陰極
3・・・陽極
4・・・ゲート電極
5・・・電気絶縁性薄膜
6・・・電子放出面
7A・・・導電性基板
7B・・・半導体基板
7C・・・絶縁性基板
9・・・フォトレジスト
10・・・電極材料
11・・・レジスト材料
12・・・n型半導体領域
13・・・ショットキー接合
14・・・陰極2面上に設けた第2の電気絶縁性薄膜
15・・・第4の電極
16〜18・・・直流電圧源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極から陽極へ向けて電子を放出する電子放出素子において、
前記陰極と該陰極に隣接する電子放出領域に跨って、かつ電気絶縁性薄膜を介してゲート電極を設け、前記陰極に対して正となる電圧を前記ゲート電極に印加することにより、前記ゲート電極近傍における前記陰極の電子放出面の障壁幅を狭くして電子に対するトンネル効果を促進し、前記陰極から前記陽極への電子放出を生じ易くしたことを特徴とする電子放出素子。
【請求項2】
陰極から陽極へ向けて電子を放出する電子放出素子において、
ゲート電極上に電気絶縁性薄膜が形成され、
前記電気絶縁性薄膜上に、前記陰極と前記陽極とが互いに所定距離離れて形成されており、
前記陰極と前記陽極との間は真空であるか、又は液体あるいは気体が存在し、
前記ゲート電極近傍における前記陰極の電子放出面の障壁幅を狭くする電圧を前記ゲート電極に印加することによって、トンネル効果を促進し、前記陰極から前記陽極へ向けての電子放出を生じ易くすることを特徴とする電子放出素子。
【請求項3】
請求項2において、
前記電気絶縁性薄膜は、膜厚の薄い薄膜部分と該薄膜部分よりも膜厚の厚い第1、第2の厚膜部分を有し、
前記陰極は、前記電気絶縁性薄膜の前記第1の厚膜部分から前記薄膜部分まで延び、
前記陽極は、前記電気絶縁性薄膜の前記第2の厚膜部分だけに形成されており、
前記電気絶縁性薄膜に電子がチャージアップされるのを抑制することを特徴とする電子放出素子。
【請求項4】
請求項2において、
前記ゲート電極は、厚い第1の部分と該第1の部分よりも薄い第2の部分とを有すると共に、前記電気絶縁性薄膜で覆われており、
前記ゲート電極の前記第2の部分に形成されている前記電気絶縁性薄膜の上に前記陰極が形成され、
前記ゲート電極の前記第1の部分に形成されている前記電気絶縁性薄膜の上に前記陽極が形成されることを特徴とする電子放出素子。
【請求項5】
陰極から陽極へ向けて電子を放出する電子放出素子において、
絶縁性基板又は半導体基板上に前記陰極とゲート電極とが形成され、
前記ゲート電極は電気絶縁性薄膜で覆われ、
前記電気絶縁性薄膜上に前記陽極が形成されており、
前記陰極と前記ゲート電極との間には前記電気絶縁性薄膜が介在し、
前記陰極と前記陽極との間は真空であるか、又は液体あるいは気体が存在し、
前記ゲート電極近傍における前記陰極の電子放出面の障壁幅を狭くする電圧を前記ゲート電極に印加することによって、トンネル効果を促進し、前記陰極から前記陽極へ向けての電子放出を生じ易くすることを特徴とする電子放出素子。
【請求項6】
陰極から陽極へ向けて電子を放出する電子放出素子において、
ゲート電極上に電気絶縁性薄膜が形成されていて、該電気絶縁性薄膜の一部面域上に前記陰極が形成され、
前記陰極と前記陽極とが互いに所定距離離れて空間的に分離されており、
前記陰極と前記陽極との間の周囲は真空であるか、又は液体あるいは気体が存在し、
前記ゲート電極近傍における前記陰極の電子放出面の障壁幅を狭くする電圧を前記ゲート電極に印加することによって、トンネル効果を促進し、前記陰極から前記陽極へ向けての電子放出を生じ易くすることを特徴とする電子放出素子。
【請求項7】
請求項6において、
前記ゲート電極は凸部を有し、
該凸部を含む前記ゲート電極を前記電気絶縁性薄膜が被覆し、
前記陰極は、前記凸部を囲む前記電気絶縁性薄膜上に形成され、
前記ゲート電極の前記凸部の頂部面は、前記陰極と比べて前記陽極に近い位置にあることを特徴とする電子放出素子。
【請求項8】
請求項4、あるいは請求項5、又は請求項7において、
前記ゲート電極は、前記陰極に近い側よりも前記陽極側に近い側が狭くなる断面台形状になっていることを特徴とする電子放出素子。
【請求項9】
請求項4又は請求項5、あるいは請求項7において、
電子放出面近傍の前記ゲート電極と前記陰極との間の前記電気絶縁性薄膜を他の領域の前記電気絶縁性薄膜の膜厚よりも薄くすることを特徴とする電子放出素子。
【請求項10】
陰極から陽極へ向けて電子を放出する電子放出素子において、
半導体基板の一方の主面側に前記陰極と電気絶縁性薄膜とが位置し、また、前記半導体基板の他方の主面にはゲート電極が形成され、
前記陰極は、前記半導体領域上と前記電気絶縁性薄膜とに跨って形成されており、
前記陽極は前記電気絶縁性薄膜上に形成され、
前記陰極と前記ゲート電極とは前記半導体基板とそれぞれ接合をなし、
前記接合は、前記電気絶縁性薄膜の破壊電圧よりも小さい降伏電圧を有し、
前記陰極と前記陽極との間の周囲は真空であるか、又は液体あるいは気体が存在し、
前記ゲート電極近傍における前記陰極の電子放出面の障壁幅を狭くする電圧を前記ゲート電極に印加することによって、トンネル効果を促進し、前記陰極から前記陽極へ向けての電子放出を生じ易くすることを特徴とする電子放出素子。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかにおいて、
前記陰極における電子放出面を薄い第2の電気的絶縁性薄膜で覆い、実効的な電子放出面の電子障壁を低下させたことを特徴とする電子放出素子。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれかに記載した前記電子放出素子の前記電子放出領域は真空であり、前記ゲート電極に正電圧又はゼロ電圧を印加することによってオンとなり、該ゲート電極にゼロ電圧又は負の電圧を印加することによって、オフとなる3極真空管又は電力用スイッチ素子として用いることを特徴とする電子放出素子。
【請求項13】
請求項2ないし請求項12のいずれかの電子放出素子を用いた電子放出型のセンサにおいて、
第4の電極を設けて、前記陰極を基準として前記陽極に第1の正電圧を印加し、前記ゲートに第2の正電圧を印加して、前記電子放出素子の電子放出を促進するとともに、第4の電極に正又は負の第3の電圧を印加して、陽極の電流及び第4の電極の電流を検出することにより、前記陽極と前記陰極との近傍における磁気、真空度などの状態を検出することを特徴とする電子放出型のセンサ。
【請求項14】
請求項2ないし請求項12のいずれかの電子放出素子を用いた電気分解装置において、
前記陽極と前記陰極との間に電気分解される液体又は気体を存在させ、
前記陰極を基準として前記陽極に第1の正電圧を印加すると共に、前記ゲート電極に第2の正電圧を印加することにより、
前記電子放出素子の電子放出が促進され、前記液体又は気体の電気分解を促進することを特徴とする電気分解装置。
【請求項1】
陰極から陽極へ向けて電子を放出する電子放出素子において、
前記陰極と該陰極に隣接する電子放出領域に跨って、かつ電気絶縁性薄膜を介してゲート電極を設け、前記陰極に対して正となる電圧を前記ゲート電極に印加することにより、前記ゲート電極近傍における前記陰極の電子放出面の障壁幅を狭くして電子に対するトンネル効果を促進し、前記陰極から前記陽極への電子放出を生じ易くしたことを特徴とする電子放出素子。
【請求項2】
陰極から陽極へ向けて電子を放出する電子放出素子において、
ゲート電極上に電気絶縁性薄膜が形成され、
前記電気絶縁性薄膜上に、前記陰極と前記陽極とが互いに所定距離離れて形成されており、
前記陰極と前記陽極との間は真空であるか、又は液体あるいは気体が存在し、
前記ゲート電極近傍における前記陰極の電子放出面の障壁幅を狭くする電圧を前記ゲート電極に印加することによって、トンネル効果を促進し、前記陰極から前記陽極へ向けての電子放出を生じ易くすることを特徴とする電子放出素子。
【請求項3】
請求項2において、
前記電気絶縁性薄膜は、膜厚の薄い薄膜部分と該薄膜部分よりも膜厚の厚い第1、第2の厚膜部分を有し、
前記陰極は、前記電気絶縁性薄膜の前記第1の厚膜部分から前記薄膜部分まで延び、
前記陽極は、前記電気絶縁性薄膜の前記第2の厚膜部分だけに形成されており、
前記電気絶縁性薄膜に電子がチャージアップされるのを抑制することを特徴とする電子放出素子。
【請求項4】
請求項2において、
前記ゲート電極は、厚い第1の部分と該第1の部分よりも薄い第2の部分とを有すると共に、前記電気絶縁性薄膜で覆われており、
前記ゲート電極の前記第2の部分に形成されている前記電気絶縁性薄膜の上に前記陰極が形成され、
前記ゲート電極の前記第1の部分に形成されている前記電気絶縁性薄膜の上に前記陽極が形成されることを特徴とする電子放出素子。
【請求項5】
陰極から陽極へ向けて電子を放出する電子放出素子において、
絶縁性基板又は半導体基板上に前記陰極とゲート電極とが形成され、
前記ゲート電極は電気絶縁性薄膜で覆われ、
前記電気絶縁性薄膜上に前記陽極が形成されており、
前記陰極と前記ゲート電極との間には前記電気絶縁性薄膜が介在し、
前記陰極と前記陽極との間は真空であるか、又は液体あるいは気体が存在し、
前記ゲート電極近傍における前記陰極の電子放出面の障壁幅を狭くする電圧を前記ゲート電極に印加することによって、トンネル効果を促進し、前記陰極から前記陽極へ向けての電子放出を生じ易くすることを特徴とする電子放出素子。
【請求項6】
陰極から陽極へ向けて電子を放出する電子放出素子において、
ゲート電極上に電気絶縁性薄膜が形成されていて、該電気絶縁性薄膜の一部面域上に前記陰極が形成され、
前記陰極と前記陽極とが互いに所定距離離れて空間的に分離されており、
前記陰極と前記陽極との間の周囲は真空であるか、又は液体あるいは気体が存在し、
前記ゲート電極近傍における前記陰極の電子放出面の障壁幅を狭くする電圧を前記ゲート電極に印加することによって、トンネル効果を促進し、前記陰極から前記陽極へ向けての電子放出を生じ易くすることを特徴とする電子放出素子。
【請求項7】
請求項6において、
前記ゲート電極は凸部を有し、
該凸部を含む前記ゲート電極を前記電気絶縁性薄膜が被覆し、
前記陰極は、前記凸部を囲む前記電気絶縁性薄膜上に形成され、
前記ゲート電極の前記凸部の頂部面は、前記陰極と比べて前記陽極に近い位置にあることを特徴とする電子放出素子。
【請求項8】
請求項4、あるいは請求項5、又は請求項7において、
前記ゲート電極は、前記陰極に近い側よりも前記陽極側に近い側が狭くなる断面台形状になっていることを特徴とする電子放出素子。
【請求項9】
請求項4又は請求項5、あるいは請求項7において、
電子放出面近傍の前記ゲート電極と前記陰極との間の前記電気絶縁性薄膜を他の領域の前記電気絶縁性薄膜の膜厚よりも薄くすることを特徴とする電子放出素子。
【請求項10】
陰極から陽極へ向けて電子を放出する電子放出素子において、
半導体基板の一方の主面側に前記陰極と電気絶縁性薄膜とが位置し、また、前記半導体基板の他方の主面にはゲート電極が形成され、
前記陰極は、前記半導体領域上と前記電気絶縁性薄膜とに跨って形成されており、
前記陽極は前記電気絶縁性薄膜上に形成され、
前記陰極と前記ゲート電極とは前記半導体基板とそれぞれ接合をなし、
前記接合は、前記電気絶縁性薄膜の破壊電圧よりも小さい降伏電圧を有し、
前記陰極と前記陽極との間の周囲は真空であるか、又は液体あるいは気体が存在し、
前記ゲート電極近傍における前記陰極の電子放出面の障壁幅を狭くする電圧を前記ゲート電極に印加することによって、トンネル効果を促進し、前記陰極から前記陽極へ向けての電子放出を生じ易くすることを特徴とする電子放出素子。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかにおいて、
前記陰極における電子放出面を薄い第2の電気的絶縁性薄膜で覆い、実効的な電子放出面の電子障壁を低下させたことを特徴とする電子放出素子。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれかに記載した前記電子放出素子の前記電子放出領域は真空であり、前記ゲート電極に正電圧又はゼロ電圧を印加することによってオンとなり、該ゲート電極にゼロ電圧又は負の電圧を印加することによって、オフとなる3極真空管又は電力用スイッチ素子として用いることを特徴とする電子放出素子。
【請求項13】
請求項2ないし請求項12のいずれかの電子放出素子を用いた電子放出型のセンサにおいて、
第4の電極を設けて、前記陰極を基準として前記陽極に第1の正電圧を印加し、前記ゲートに第2の正電圧を印加して、前記電子放出素子の電子放出を促進するとともに、第4の電極に正又は負の第3の電圧を印加して、陽極の電流及び第4の電極の電流を検出することにより、前記陽極と前記陰極との近傍における磁気、真空度などの状態を検出することを特徴とする電子放出型のセンサ。
【請求項14】
請求項2ないし請求項12のいずれかの電子放出素子を用いた電気分解装置において、
前記陽極と前記陰極との間に電気分解される液体又は気体を存在させ、
前記陰極を基準として前記陽極に第1の正電圧を印加すると共に、前記ゲート電極に第2の正電圧を印加することにより、
前記電子放出素子の電子放出が促進され、前記液体又は気体の電気分解を促進することを特徴とする電気分解装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2007−35453(P2007−35453A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217425(P2005−217425)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000103976)オリジン電気株式会社 (223)
【出願人】(592258661)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000103976)オリジン電気株式会社 (223)
【出願人】(592258661)
【Fターム(参考)】
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