説明

電子機器、利用制限方法、及び利用制限プログラム

【課題】利用制限機能に関する柔軟性を向上させること。
【解決手段】アプリケーションプログラムをインストール可能な電子機器であって、表示手段において表示対象とするアプリケーションプログラムの切り替えを制御するシステム制御手段と、システム制御手段によって表示対象とされたアプリケーションプログラムに対応する操作画面を表示手段へ表示させる表示制御手段と、アプリケーションプログラムより表示手段の排他的な使用の開始要求と、排他的な使用の終了要求とを受け付ける要求受付手段とを有し、システム制御手段は、要求受付手段によって排他的な使用の開始要求が受け付けられているアプリケーションプログラムが有る場合は、当該アプリケーションプログラムより排他的な使用の終了要求が受け付けられるまで、表示対象を当該アプリケーションプログラムから他のアプリケーションプログラムへ切り替えない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、利用制限方法、及び利用制限プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置等の組み込み機器についても、様々な形態によって利用制限機能が実現されている。利用制限機能の代表的な例として認証機能が挙げられる(例えば、特許文献1)。すなわち、認証機能においては、認証されていないユーザについて機能の全部又は一部の利用が制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来、利用制限機能については機器に予め組み込まれている、いわゆる既製の仕組みが利用されるのが一般的である。特に、汎用的なコンピュータに比べてソフトウェアの実装に関する自由度が低い機器については、ユーザに固有の事情等に応じたユーザ独自の利用制限機能を比較的容易に実装するのは困難であった。
【0004】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、利用制限機能に関する柔軟性を向上させることのできる電子機器、利用制限方法、及び利用制限プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで上記課題を解決するため、本発明は、アプリケーションプログラムをインストール可能な電子機器であって、前記表示手段において表示対象とするアプリケーションプログラムの切り替えを制御するシステム制御手段と、前記システム制御手段によって表示対象とされたアプリケーションプログラムに対応する操作画面を前記表示手段へ表示させる表示制御手段と、前記アプリケーションプログラムより前記表示手段の排他的な使用の開始要求と、前記排他的な使用の終了要求とを受け付ける要求受付手段とを有し、前記システム制御手段は、前記要求受付手段によって前記排他的な使用の開始要求が受け付けられているアプリケーションプログラムが有る場合は、当該アプリケーションプログラムより前記排他的な使用の終了要求が受け付けられるまで、前記表示対象を当該アプリケーションプログラムから他のアプリケーションプログラムへ切り替えない。
【0006】
また、上記課題を解決するため、本発明は、アプリケーションプログラムをインストール可能な電子機器が実行する利用制限方法であって、システム制御手段が、前記表示手段において表示対象とするアプリケーションプログラムの切り替えを制御する手順と、表示制御手段が、前記システム制御手段によって表示対象とされたアプリケーションプログラムに対応する操作画面を前記表示手段へ表示させる手順と、要求受付手段が、前記アプリケーションプログラムより前記表示手段の排他的な使用の開始要求と、前記排他的な使用の終了要求とを受け付ける手順とを有し、前記システム制御手段は、前記要求受付手段によって前記排他的な使用の開始要求が受け付けられているアプリケーションプログラムが有る場合は、当該アプリケーションプログラムより前記排他的な使用の終了要求が受け付けられるまで、前記表示対象を当該アプリケーションプログラムから他のアプリケーションプログラムへ切り替えない。
【0007】
このような電子機器又は利用制限方法では、利用制限機能に関する柔軟性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、利用制限機能に関する柔軟性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態における画像形成装置のハードウェア構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における画像形成装置のソフトウェア構成例を示す図である。
【図3】本体認証部による利用制限処理の処理手順を説明するためのシーケンス図である。
【図4】パネル制御部による画面情報の管理形態の一例を示す図である。
【図5】利用制限アプリがインストールされた場合の利用制限処理の処理手順を説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態では、電子機器の一例として複合機やLP等の画像形成装置を用いた例を説明する。但し、本実施の形態は、画像形成装置以外の電子機器、例えば各種家電製品等に対して適用されてもよい。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態における画像形成装置のハードウェア構成例を示す図である。図1において、画像形成装置10は、コントローラ11、スキャナ12、プリンタ13、モデム14、操作パネル15、ネットワークインタフェース16、及びSDカードスロット17等のハードウェアを有する。
【0012】
コントローラ11は、CPU111、RAM112、ROM113、及びHDD114等を有する。ROM113には、各種のプログラムやプログラムによって利用されるデータ等が記録されている。RAM112は、プログラムをロードするための記憶領域や、ロードされたプログラムのワーク領域等として用いられる。CPU111は、RAM112にロードされたプログラムを処理することにより、各種の機能を実現する。HDD114には、プログラムやプログラムが利用する各種のデータ等が記録される。
【0013】
スキャナ12は、原稿より画像データを読み取るためのハードウェアである。プリンタは13、印刷データを印刷用紙に印刷するためのハードウェアである。モデム14は、電話回線に接続するためのハードウェアであり、FAX通信による画像データの送受信を実行するために用いられる。操作パネル15は、ユーザからの入力の受け付けを行うめのボタン及びタッチパネル等の入力手段や、液晶画面等の表示手段を備えたハードウェアである。ネットワークインタフェース16は、LAN等のネットワーク(有線又は無線の別は問わない。)に接続するためのハードウェアである。SDカードスロット17は、SDカード80に記録されたプログラムを読み取るために利用される。すなわち、画像形成装置10では、ROM113に記録されたプログラムだけでなく、SDカード80に記録されたプログラムもRAM112にロードされ、実行されうる。但し、例えば、USBメモリ又はCD−ROM等、SDカード80以外の記憶媒体が利用されてもよい。
【0014】
図2は、本発明の実施の形態の画像形成装置におけるソフトウェア構成例を示す図である。同図において、画像形成装置10は、標準アプリ221、SDKアプリ223、SDKプラットフォーム224、コントロールサービス225、及びOS226等を有する。
【0015】
OS226は、いわゆるOS(Operating System)である。画像形成装置10上の各ソフトウェアは、OS226上においてプロセス又はスレッドとして起動される。
【0016】
標準アプリ221は、画像形成装置10に標準的に(出荷時に予め)実装されているアプリケーションプログラムの集合である。同図では、スキャンアプリ2211、印刷アプリ2212、コピーアプリ2213、及びFAXアプリ2214が例示されている。スキャンアプリ2211は、スキャンジョブを実行する。印刷アプリ2212は印刷ジョブを実行する。コピーアプリ2213は、コピージョブを実行する。FAXアプリ2214は、FAXの送信ジョブ又は受信ジョブを実行する。
【0017】
コントロールサービス225は、各アプリケーションより共通に利用される機能、各アプリケーションの動作を制御するための機能、又は各種のハードウェアリソース等を制御するための機能等を実現するソフトウェアモジュール群を含む。同図には、コントロールサービス225の一部として、システム制御部2251、パネル制御部2252、及び本体認証部2253が示されている。システム制御部2251は、本実施の形態において、操作パネル15において表示対象(操作対象)とするアプリケーションを切り替えるための制御を行う。本実施の形態において、操作パネル15において二つ以上のアプリケーションは同時には表示対象とはなれない。ここでいうアプリケーションは、標準アプリ221及びSDKアプリ223の双方を含む。したがって、操作パネル15において何らかのアプリケーションが表示対象とされている場合、当該アプリケーションは、いずれか一つの標準アプリ221又はいずれか一つのSDKアプリ223である。
【0018】
パネル制御部2252は、システム制御部2251による表示対象の切り替え制御に応じ、操作パネル15への各アプリケーションの操作画面の表示を制御する。本体認証部2253は、画像形成装置10に予め組み込まれた既製の利用制限機能を実現する。具体的には、本体認証部2253は、画像形成装置10のユーザの認証を実行し、認証されたユーザにのみ所定のアプリケーション等の利用を制限する。なお、詳細については省略するが、本体認証部2253についてもカスタマイズは可能である。例えば、認証エンジンとして利用するサーバの切り替え等は可能である。但し、カスタマイズの範囲は、予め定められた範囲(設定項目)に限定される。
【0019】
SDKアプリ223は、画像形成装置10の出荷後において、画像形成装置10の機能拡張を図るためのプラグインとして追加的にインストールされるアプリケーションプログラムである。本実施の形態において、SDKアプリ223は、Java(登録商標)言語によって実装され、Java(登録商標)バイトコードとよばれる中間コード(実行コード)の形態で配布される。また、SDKアプリ223は、画像形成装置10の操作パネル15に画面等の表示部品(GUI(Graphical User Interface))を表示させ、表示部品を介して利用される。同図では、SDKアプリ223として、利用制限アプリ223a、Bアプリ223b、及びCアプリ223cが例示されている。利用制限アプリ223aは、ユーザ独自の利用制限機能が実装されたSDKアプリ223である。ユーザ独自の利用制限機能とは、本体認証部2253を利用しない利用制限機能をいう。SDKアプリ223の実装に関する自由度は、画像形成装置10の既製の機能に対するカスタマイズに関する自由度に比べれば遙かに高い。したがって、利用制限アプリ223aによる利用制限機能の内容は、所定のものに特定されない。本実施の形態において、利用制限アプリ223aは、ユーザ独自の認証機能が実装されたSDKアプリ223であるとする。
【0020】
SDKプラットフォーム224は、SDKアプリ223の実行環境を提供する、SDKアプリ223のアプリケーションプラットフォームである。各SDKアプリ223は、SDKプラットフォーム224が提供するAPI(Application Program Interface)を利用して開発される。SDKプラットフォーム224のAPIは公開されており、サードベンダ等によってもSDKアプリ223は開発されうる。APIとは、具体的には、関数又はメソッド等の集合である。また、広義においては、非同期に発生するイベント等をSDKアプリ223に通知するための仕組み等もAPIに含まれる。
【0021】
なお、コントロールサービス225から見た場合、SDKプラットフォーム224は、各標準アプリ221と同列の一つのアプリケーションとして見える。より詳しくは、各標準アプリ221は、それぞれ独立したプロセスとしてOS226によって起動される。SDKプラットフォーム224も一つのプロセスとしてOS226によって起動される。したがって、コントロールサービス225から見た場合、各標準アプリ221及びSDKプラットフォーム224は、それぞれプロセスとして見える。
【0022】
一方、各SDKアプリ223は、一つのプロセスであるSDKプラットフォーム224内のスレッドとして起動される。すなわち、SDKアプリ223ごとにスレッドが生成される。
【0023】
斯かる構成から明らかなように、SDKアプリ223は、コントロールサービス225からはSDKプラットフォーム224によって隠蔽されている、したがって、コントロールサービス225は、各SDKアプリ223を直接制御することはできない。各SDKアプリ223を直接制御可能なのはSDKプラットフォーム224に限定される。また、コントロールサービス225は、各SDKアプリ223からはSDKプラットフォーム224によって隠蔽されている。
【0024】
以下、画像形成装置10の処理手順について説明する。まず、本体認証部2253による利用制限処理について説明する。図3は、本体認証部による利用制限処理の処理手順を説明するためのシーケンス図である。なお、図3の処理は、利用制限アプリ223aがインストールされていない状態において実行されるものである。
【0025】
画像処理装置10が起動されると、コントロールサービス225の各モジュール(システム制御部2251、パネル認証部、本体認証部2253等)、標準アプリ221、SDKプラットフォーム224の順で、OS226によってそれぞれプロセスとして起動される。また、SDKプラットフォーム224は、インストールされているSDKアプリ223のうち、自動起動の設定がされているものをスレッドとして起動させる。なお、SDKアプリ223については、自動起動又は手動起動の設定が可能とされている。自動起動は、画像形成装置10の起動時に自動的に起動される起動形態をいう。手動起動は、SDKプラットフォーム224が表示させる管理画面を介してユーザによって入力される指示に応じて起動される起動形態をいう。
【0026】
各標準アプリ221及びSDKプラットフォーム224は、起動に応じ、自らの固定的な識別情報(以下、「アプリID」という。)と、プロセス間通信のための識別情報(プロセスID)とをシステム制御部2251に登録する(S101)。
【0027】
続いて、各標準アプリ221及びSDKプラットフォーム224は、自らのアプリIDと、自らの操作画面の画面情報(画面データ)とをパネル制御部2252に登録する(S102)。パネル制御部2252は、アプリIDと画面情報とを関連付けて管理する。その結果、パネル制御部2252によって図4に示されるような情報が管理される。
【0028】
図4は、パネル制御部による画面情報の管理形態の一例を示す図である。同図に示されるように、パネル制御部2252は、標準アプリ221ごとに当該標準アプリ221の画面情報を管理する。一方、SDKプラットフォーム224については、いずれかのSDKアプリ223が表示対象とされた場合に、当該SDKアプリ223の画面情報が登録される。すなわち、SDKプラットフォーム224の画面情報は、表示対象とされるSDKアプリ223が切り替わる度に更新される。同図における「アクティブな」とは、表示対象とされた状態をいう。なお、ステップS102の段階において、SDKプラットフォーム224によって登録される画面情報は、例えば、自動起動されるSDKアプリ223のうち、表示に関する優先順位が最も高いSDKアプリ223の画面情報である。または、空の画面情報が登録されてもよい。
【0029】
ステップS111以降は、画像形成装置10の起動時(起動直後)だけでなくアクティブなアプリケーションの切り替え時にも実行される。なお、アクティブなアプリケーションは、操作パネル15に配置されたハードキー(以下、「機能選択キー」という。)によって切り替えることができる。機能選択キーは、標準アプリ221及びSDKプラットフォーム224ごとに存在する。したがって、本実施の形態では、5つの機能選択キーが存在する。
【0030】
ステップS111において、システム制御部2251は、表示対象とされた標準アプリ221又はSDKプラットフォーム224に対して表示対象への遷移要求を行う。起動直後の表示対象は、予めシステム制御部2251に対して設定されている表示に関する優先順位に基づいて判定される。また、アクティブなアプリケーションの切り替え時には、押下された機能選択キーが表示対象とされる。なお、機能選択キーの押下は、パネル制御部2252によって検知される。パネル制御部2252は、機能選択キーのキーコードと、各アプリケーションのアプリIDとを予め関連付けて管理している。したがって、パネル制御部2252は、押下された機能選択キーのキーコードに基づいて、当該キーコードに対応するアプリIDを特定する。パネル制御部2252は、特定されたアプリIDをシステム制御部2251に通知する。システム制御部2251は、当該通知によって切り替え先(遷移先)のアプリケーションを識別することができる。
【0031】
システム制御部2251より表示対象への遷移要求を受けた標準アプリ221又はSDKプラットフォーム224は、表示対象への遷移可能であれば、表示対象への遷移の了解を示す応答を返信する(S112)。なお、表示対象への遷移が可能であるか否かは、例えば、標準アプリ221又はSDKプラットフォーム224はが使用するハードウェアリソースの状態等に基づいて判断される。
【0032】
システム制御部2251は、表示対象への遷移の了解を示す応答を受信すると、表示対象のアプリIDを指定して、パネル制御部2252に対して画面の表示要求を行う(S113)。パネル制御部2252は、当該表示要求に指定されたアプリIDに対応付けられている画面情報に基づいて、操作画面を操作パネル15に表示させる(S114)。したがって、いずれかの標準アプリ221、又はいずれかのSDKアプリ223の操作画面が表示される。
【0033】
なお、ステップS112において、表示対象への遷移の拒否を示す応答が受信された場合、システム制御部2251は、表示対象の切り替えは行わない。但し、起動直後においては、例えば、優先順位が次の標準アプリ221等に対してステップS111以降が繰り返される。
【0034】
一方、表示対象とされた標準アプリ221又はSDKプラットフォーム224は、表示対象への遷移の了解の応答後、本体認証部2253に対してログイン画面の表示要求を行う(S115)。当該要求に応じ、本体認証部2253は、パネル制御部2252に対してログイン画面の表示要求を行う(S116)。パネル制御部2252は、当該要求に応じ、ステップS114において表示された操作画面に重畳させてログイン画面を表示させる。(S117)。すなわち、ログイン画面は、特別な画面としてパネル制御部2252に認識されている。したがって、パネル制御部2252は、他の操作画面が表示中であっても、当該操作画面に重畳させてログイン画面を表示させる。ログイン画面が重畳されることにより、ユーザは、表示対象とされた標準アプリ221等を利用できない状態となる。すなわち、利用制限状態が実現される。
【0035】
続いて、ログイン画面に対してユーザ情報(ユーザ名及びパスワード)がユーザによって入力されると(S118)、パネル制御部2252は、入力されたユーザ情報をログイン画面のオーナーである本体認証部2253に通知する(S119)。本体認証部2253は、当該ユーザ情報に基づいて認証処理を行う(S120)。認証に成功すると、本体認証部2253は、ログイン画面の表示要求元の標準アプリ221又はSDKプラットフォーム224に対して認証に成功したことを通知する(S121)。
【0036】
認証の成功の通知を受けた標準アプリ221又はSDKプラットフォーム224は、ログイン画面の消去を本体認証部2253に要求する(S122)。本体認証部2253は、当該要求に応じ、ログイン画面の消去をパネル制御部2252に要求する(S123)。パネル制御部2252は、当該要求に応じ、ログイン画面を消去する(非表示とする)。その結果、ユーザは、ステップS114において表示された操作画面を介して標準アプリ221又はSDKアプリ223を利用することが可能となる。すなわち、利用制限状態が解除される。
【0037】
なお、一度認証が実行された後にステップS111以降が実行される場合(すなわち、機能選択キーが押下された場合)、本体認証部2253は、ステップS115のログイン画面の表示要求に応じ、ログイン画面を表示させることなく認証の成功の通知(S121)を行えばよい。但し、標準アプリ221及びSDKプラットフォーム224ごとにログインを行わせたい場合は、ステップS111以降の全てのステップが繰り返されればよい。
【0038】
続いて、利用制限アプリ223aがインストールされた場合の利用制限処理について説明する。図5は、利用制限アプリがインストールされた場合の利用制限処理の処理手順を説明するためのシーケンス図である。同図では、図3のステップS101及びS102は省略されている。すなわち、利用制限アプリがインストールされた場合もステップS101及びS102は実行される。
【0039】
利用制限アプリ223aは、SDKプラットフォーム224によって起動されると、認証代行要求をSDKプラットフォーム224に行う(S201)。認証代行とは、本体認証部2253に代わって利用制限機能を実現することをいう。なお、利用制限アプリ223aは、自動起動の設定がなされていることとする。したがって、ステップS201は、画像形成装置10の起動時において、SDKプラットフォーム224が起動された際に実行される。
【0040】
続いて、SDKプラットフォーム224は、本体認証部2253に対して、認証代行の要求を行う(S202)。当該要求には、SDKプラットフォーム224のアプリIDが指定される。本体認証部2253は、認証代行の要求を受けた場合、自らによる利用制限機能を無効化する。例えば、仮に、ログイン画面の表示要求を受けたとしても、ログイン画面の表示処理は行わず、当該要求に対して認証に成功したことを応答する。
【0041】
続いて、SDKプラットフォーム224は、当該アプリIDを指定して、認証代行が行われることをシステム制御部2251に通知する(S203)。システム制御部2251は、指定されたアプリIDを認証代行先の識別情報として記憶する。
【0042】
一方、利用制限アプリ223aは、認証代行の要求後、自らの識別情報(以下、「SDKアプリID」という。)を指定して、自らの画面情報の登録をSDKプラットフォーム224に要求する(S204)。SDKプラットフォーム224は、自らのアプリIDを指定して当該画面情報の登録をパネル制御部2252に要求する(S205)。なお、SDKプラットフォーム205は、SDKアプリIDに関連付けて画面情報を管理する。また、ステップS205は、図3のステップS102として実行されてもよい。
【0043】
更に、利用制限アプリ223aは、自らの識別情報(以下、「SDKアプリID」という。)を指定して、SDKプラットフォーム224に対して画面のロック要求を行う(S206)。画面のロックの要求とは、操作パネル15における表示手段の排他的な使用の要求に相当する。また、画面のロックとは、画面の遷移を生じさせない状態とすることをいう。SDKプラットフォーム224は、画面のロック要求に指定されたSDKアプリIDを、画面のロック元として記憶する。
【0044】
続いて、システム制御部2251は、表示対象への遷移要求をSDKプラットフォーム224に対して行う(S207)。当該ステップは、起動時におけるステップS111(図3)に相当する。但し、ここでは、表示に関する優先順位に基づいてではなく、認証代行先として登録されているSDKプラットフォーム224が表示対象として判定される。すなわち、認証代行先が登録されている場合、システム制御部2251は、優先順位よりも認証代行先を表示対象として優先させる。
【0045】
SDKプラットフォーム224は、表示対象に遷移可能であれば、表示対象への遷移の了解を示す応答を返信する(S208)。システム制御部2251は、表示対象への遷移の了解を示す応答を受信すると、表示対象のアプリID(すなわち、SDKプラットフォーム224のアプリID)を指定して、パネル制御部2252に対して画面の表示要求を行う(S209)。パネル制御部2252は、当該表示要求に指定されたアプリIDに対応付けられている画面情報に基づいて、操作画面を操作パネル15に表示させる(S210)。したがって、ここでは、ステップS205においてSDKプラットフォーム224のアプリIDに対して登録された画面情報に基づいて、利用制限アプリ223aの操作画面が表示される。
【0046】
ここで、当該操作画面の内容は、利用制限アプリ223aの実装に依存する。また、利用制限アプリ223aは、一つのSDKアプリ223に過ぎない。したがって、利用制限アプリ223の操作画面が表示されたことのみによっては利用制限状態は実現されない。例えば、機能選択キーが押下されれば、標準アプリ211の操作画面が表示されてしまうからである。しかし、利用制限アプリ223は、ステップS206において画面のロック要求を行っている。当該画面のロックと、システム制御部2251による振る舞いとによって、利用制限状態が確保される。
【0047】
具体的には、この状態において、機能選択キーが押下され、他の標準アプリ211への切り替えがユーザによって試みられると、システム制御部2251は、表示対象の解放要求をSDKプラットフォーム224に対して行う(S211)。表示対象の解放要求とは、表示対象としての地位を他のアプリケーションに譲ることをいう。なお、表示対象としての地位とは、操作パネル15における表示手段を占有できる地位に相当する。当該解放要求に応じ、SDKプラットフォーム224は、画面のロック要求が行われている場合、当該解放要求を拒否する(S212)。システム制御部2251は、当該解放要求が拒否された場合、表示対象の切り替えは行わない。すなわち、図3のステップS111以降の処理は実行されない。したがって、利用制限アプリ223aが、画面のロックを解除するまで、操作パネル15には利用制限223aアプリの操作画面が表示された状態が維持される。すなわち、他のアプリケーションについて利用制限状態が実現される。
【0048】
本実施の形態において、利用制限アプリ223aには、ユーザ独自の認証機能が実装されている。したがって、利用制限アプリ223aによって表示される操作画面は、ユーザ独自の認証機能に対応した操作画面である。当該操作画面は、例えば、定期的に変化するパスワードを入力させるための画面であるとする。
【0049】
ユーザが、当該操作画面にパスワードを入力すると、パネル制御部2252は、当該パスワードを当該操作画面のオーナーであるSDKプラットフォーム224に通知する(S213)。なお、厳密には、当該操作画面のオーナーは利用制限アプリ223aであるが、パネル制御部2252の管理上においては、SDKプラットフォーム224がオーナーとして見える(図4参照)。
【0050】
続いて、SDKプラットフォーム224は、現在表示対象とされている利用制限アプリ223aに対して当該パスワードを通知する(S214)。利用制限アプリ223aは、通知されたパスワードに基づいて認証処理を実行する(S215)。認証に成功した場合、利用制限アプリ223aは、SDKプラットフォーム224に対して、自らのSDKアプリIDを指定して画面のロックの解除を要求する(S216)。すなわち、操作パネル15の表示手段の排他的な使用の終了が要求される。SDKプラットフォーム224は、画面のロックの解除要求に指定されたSDKアプリIDが、画面のロックの要求元のSDKアプリIDと一致する場合は、画面のロックを解除する。したがって、この状態において、仮に機能選択キーが押下されると、ステップS111以降が実行される。但し、本体認証部2253による利用制限機能は無効化されているため、ステップS116〜S120は実行されない。したがって、ユーザは、他の標準アプリ221等を利用することができる。すなわち、利用制限状態が解除される。
【0051】
なお、ステップS215における認証に失敗した場合、利用制限アプリ223aは、ロックの解除要求は行わない。したがって、利用制限状態は維持されたままとなる。
【0052】
続いて、利用制限アプリ223aは、表示対象の放棄要求をSDKプラットフォーム224に対して行う(S217)。表示対象の放棄とは、表示対象としての地位の放棄をいう。続いて、SDKプラットフォーム224は、自らのアプリIDを指定して、表示対象の放棄要求をシステム制御部2251に対して行う(S218)。当該放棄要求に応じ、システム制御部2251は、図3のステップS111以降を実行する。この際、表示に関する優先順位に従って表示対象が選択される。このように、SDKアプリ223による能動的な表示対象の放棄が可能とされていることにより、利用制限状態の解除に応じて自動的に操作画面を遷移させることができる。
【0053】
なお、その後、操作パネル15のログアウトキーが押下されると、ログアウトキーの押下イベントは、パネル制御部2252によって検知される。パネル制御部2252は、当該イベントの検知に応じ、ログアウトを本体認証部2253に通知する(S251)。本体認証部2253は、認証代行先のSDKプラットフォーム224に対してログアウトを通知する(S252)。SDKプラットフォーム224は、認証代行先の利用制限アプリ223aの画面情報をパネル制御部2252に登録する(S253)。その後、ステップS207以降と同じ処理手順が実行され、再び利用制限アプリ223aの操作画面が操作パネル15に表示される。すなわち、利用制限状態が再現される。
【0054】
なお、ステップS252において、SDKプラットフォーム224が利用制限アプリ223aの画面情報を再登録するのは、利用制限が解除された期間において、他のSDKアプリ223の画面情報が、パネル制御部2252に対して登録されている可能性が有るからである。
【0055】
上述したように、本実施の形態によれば、SDKプラットフォーム224は、認証代行要求、画面のロック要求、画面のロック解除要求、及び表示対象放棄要求を受け付けることができる。すなわち、各要求を受け付けるためのAPI(メソッド又は関数)を備える。したがって、当該APIを用いてSDKアプリ223を実装することにより、例えば、利用制限アプリ223aのようなユーザ独自の利用制限機能を実現することができる。
【0056】
なお、利用制限の形態は、認証に限られない。認証代行要求、画面のロック要求、画面のロック解除要求、及び表示対象放棄要に対応するAPIを用いて、どのような機能を有するSDKアプリ223を実装するかはユーザの自由である。例えば、利用制限アプリ223aが、所定の時刻が到来するまでロックの解除要求を行わないようにすれば、所定の時間帯において、画像形成装置10の利用を制限することができる。
【0057】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 画像形成装置
11 コントローラ
12 スキャナ
13 プリンタ
14 モデム
15 操作パネル
16 ネットワークインタフェース
17 SDカードスロット
30 ユーザ端末
31 Webブラウザ
80 SDカード
111 CPU
112 RAM
113 ROM
114 HDD
221 標準アプリ
222 アプリ管理サービス
223 SDKアプリ
224 SDKプラットフォーム
225 コントロールサービス
226 OS
2251 システム制御部
2252 パネル制御部
2253 本体認証部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】特開2009−289164号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アプリケーションプログラムをインストール可能な電子機器であって、
前記表示手段において表示対象とするアプリケーションプログラムの切り替えを制御するシステム制御手段と、
前記システム制御手段によって表示対象とされたアプリケーションプログラムに対応する操作画面を前記表示手段へ表示させる表示制御手段と、
前記アプリケーションプログラムより前記表示手段の排他的な使用の開始要求と、前記排他的な使用の終了要求とを受け付ける要求受付手段とを有し、
前記システム制御手段は、前記要求受付手段によって前記排他的な使用の開始要求が受け付けられているアプリケーションプログラムが有る場合は、当該アプリケーションプログラムより前記排他的な使用の終了要求が受け付けられるまで、前記表示対象を当該アプリケーションプログラムから他のアプリケーションプログラムへ切り替えない電子機器。
【請求項2】
前記要求受付手段は、前記アプリケーションプログラムからの表示対象の放棄要求を受け付け、
前記システム制御手段は、前記要求受付手段による前記放棄要求の受け付けに応じ、前記前記表示対象を切り替える請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記システム制御手段は、入力手段を介してユーザによって入力される前記表示対象の切り替え指示に応じ、前記要求受付手段に切り替えの了解を要求し、
前記要求受付手段は、前記排他的な使用の開始要求を受け付けている前記アプリケーションプログラムについて前記排他的な使用の終了要求を受け付けていない場合は、前記切り替えの拒否を前記システム制御手段に応答し、
前記システム制御手段は、前記切り替えの拒否の応答を受けた場合は、前記表示対象の切り替えを行わない請求項1又は2記載の電子機器。
【請求項4】
アプリケーションプログラムをインストール可能な電子機器が実行する利用制限方法であって、
システム制御手段が、前記表示手段において表示対象とするアプリケーションプログラムの切り替えを制御する手順と、
表示制御手段が、前記システム制御手段によって表示対象とされたアプリケーションプログラムに対応する操作画面を前記表示手段へ表示させる手順と、
要求受付手段が、前記アプリケーションプログラムより前記表示手段の排他的な使用の開始要求と、前記排他的な使用の終了要求とを受け付ける手順とを有し、
前記システム制御手段は、前記要求受付手段によって前記排他的な使用の開始要求が受け付けられているアプリケーションプログラムが有る場合は、当該アプリケーションプログラムより前記排他的な使用の終了要求が受け付けられるまで、前記表示対象を当該アプリケーションプログラムから他のアプリケーションプログラムへ切り替えない利用制限方法。
【請求項5】
前記要求受付手段が、前記アプリケーションプログラムからの表示対象の放棄要求を受け付ける手順を有し、
前記システム制御手段は、前記要求受付手段による前記放棄要求の受け付けに応じ、前記前記表示対象を切り替える請求項4記載の利用制限方法。
【請求項6】
前記システム制御手段が、入力手段を介してユーザによって入力される前記表示対象の切り替え指示に応じ、前記要求受付手段に切り替えの了解を要求する手順と、
前記要求受付手段が、前記排他的な使用の開始要求を受け付けている前記アプリケーションプログラムについて前記排他的な使用の終了要求を受け付けていない場合は、前記切り替えの拒否を前記システム制御手段に応答する手順とを有し、
前記システム制御手段は、前記切り替えの拒否の応答を受けた場合は、前記表示対象の切り替えを行わない請求項4又は5記載の利用制限方法。
【請求項7】
アプリケーションプログラムをインストール可能な電子機器を、
前記表示手段において表示対象とするアプリケーションプログラムの切り替えを制御するシステム制御手段と、
前記システム制御手段によって表示対象とされたアプリケーションプログラムに対応する操作画面を前記表示手段へ表示させる表示制御手段と、
前記アプリケーションプログラムより前記表示手段の排他的な使用の開始要求と、前記排他的な使用の終了要求とを受け付ける要求受付手段として機能させ、
前記システム制御手段は、前記要求受付手段によって前記排他的な使用の開始要求が受け付けられているアプリケーションプログラムが有る場合は、当該アプリケーションプログラムより前記排他的な使用の終了要求が受け付けられるまで、前記表示対象を当該アプリケーションプログラムから他のアプリケーションプログラムへ切り替えない利用制限プログラム。
【請求項8】
前記要求受付手段は、前記アプリケーションプログラムからの表示対象の放棄要求を受け付け、
前記システム制御手段は、前記要求受付手段による前記放棄要求の受け付けに応じ、前記前記表示対象を切り替える請求項7記載の利用制限プログラム。
【請求項9】
前記システム制御手段は、入力手段を介してユーザによって入力される前記表示対象の切り替え指示に応じ、前記要求受付手段に切り替えの了解を要求し、
前記要求受付手段は、前記排他的な使用の開始要求を受け付けている前記アプリケーションプログラムについて前記排他的な使用の終了要求を受け付けていない場合は、前記切り替えの拒否を前記システム制御手段に応答し、
前記システム制御手段は、前記切り替えの拒否の応答を受けた場合は、前記表示対象の切り替えを行わない請求項7又は8記載の利用制限プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−191952(P2011−191952A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56703(P2010−56703)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】