説明

電子機器およびその検査方法

【課題】傾斜センサと冷却ファンなどの回転動作を伴う冷却装置を備えている電子機器において、傾斜センサで異常傾斜が検出された場合に、それが、傾斜センサの動作異常に起因するものか、冷却装置の動作異常に起因するものかを速やかに判定することが可能な電子機器を提供する。
【解決手段】加速度センサ30の出力に基づいて、検出された傾斜角の値に周期的な異常の要素があるか否かを判定し、周期的な異常の要素がなく傾斜角度の異常のみである場合は、加速度センサ30に問題があるものとして交換を指示し、周期的な異常の要素がある場合には、傾斜角の変動量をフーリエ変換することで、周期的な異常の要素を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器に関し、特に、自機の傾斜角を測定する傾斜センサと、自機内部の冷却のための冷却ファンとを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信の基地局装置などのように、鉄柱や建物に固定されて使用する電子機器においては、例えば特許文献1に示されるように、装置内に加速度センサなどの傾斜センサを内蔵し、当該傾斜センサの出力に基づいて自機の傾きを計測する構成を採っている。
【0003】
基地局装置などは、屋外に設置する場合が多く、基地局装置が外的要因により傾斜する可能性を有しているためであり、傾斜センサにより測定された自機の傾きの情報は、インターネットなどの通信ネットワークを介して所定のセンタ装置に送られ、自機の傾きが所定値を越える大きさとなった場合には警告が出され、作業員による基地局装置の確認作業や、基地局装置のメンテナンスが実行されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−267023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、基地局装置には、装置の筐体内の温度を下げるため、筐体内に複数の冷却ファンを取り付け、各部品の動作温度範囲内で各部品が動作できるように、部分的な冷却を行っている。このように、傾斜センサと複数の冷却ファンとを備えている基地局装置では、傾斜センサが正常に動作しているか、また、異常な振動等を起こしている冷却ファンが装着されていないかについて出荷時に検査を実施している。
【0006】
このとき、例えば、ベアリングや回転軸が磨耗、変形しているような冷却ファンを取り付けると、動作時に異常な振動等が発生し、それを傾斜センサが異常傾斜として検出する可能性がある。
【0007】
しかし、出荷検査の段階で上記の不具合が検出された場合、それが、傾斜センサ自体の異常によるものか、本当に冷却ファンの異常によるものかの判断が難しく、特に、複数の冷却ファンが組み込まれている場合には、まず、傾斜センサを取り替え、それでも異常傾斜が検出される場合には、次に、冷却ファンを順次取り替えることで異常を呈している冷却ファンを特定する作業が必要であり、非効率的であった。
【0008】
また、製品として出荷され、所定の場所に取り付けられた後においても、何らかの要因で冷却ファンに異常が発生した場合は、異常傾斜として誤検出される可能性があり、その場合は、取り付けの現地において、上述した取り替え作業を行う必要が生じるという問題があった。
【0009】
本発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、傾斜センサと冷却ファンなどの回転動作を伴う冷却装置を備えている電子機器において、傾斜センサで異常傾斜が検出された場合に、それが、傾斜センサの動作異常に起因するものか、冷却装置の動作異常に起因するものかを速やかに判定することが可能な電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る電子機器は、自機の傾きを検出する傾斜センサと、それぞれ回転周波数の異なる回転体を有した複数の回転機能装置と、前記傾斜センサの出力信号に基づいて前記電子機器の傾斜角を定期的に算出する演算処理装置とを備えた電子機器であって、前記演算処理装置は、算出した前記傾斜角から傾斜角の変動量のデータを取得し、前記傾斜角の変動量のデータに周期的な異常の要素が含まれているか否かを判定するとともに、周期的な異常の要素が含まれている場合には、その周期を検出する機能を有する。
【0011】
また、本発明に係る電子機器の検査方法は、自機の傾きを検出する傾斜センサと、それぞれ回転周波数の異なる回転体を有した複数の回転機能装置と、前記傾斜センサの出力信号に基づいて前記電子機器の傾斜角を定期的に算出する演算処理装置と、を備えた電子機器の検査方法であって、前記演算処理装置は、算出した前記傾斜角から傾斜角の変動量のデータを取得し、前記傾斜センサによって異常傾斜が検出された場合、前記演算処理装置は、前記傾斜角の変動量のデータに周期的な異常の要素が含まれていない場合には、前記傾斜センサの異常と判定して、前記傾斜センサの交換を指示し、前記傾斜角の変動量のデータに周期的な異常の要素が含まれている場合には、その周期を検出して、前記複数の回転機能装置のうち、何れの回転周波数と一致するかの確認を行うことで、異常動作する回転機能装置を特定し、その交換を指示する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、傾斜センサで異常傾斜が検出された場合に、それが、傾斜センサの動作異常に起因するものか、回転機能装置の動作異常に起因するものかを速やかに判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る実施の形態の基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図2】加速度センサの出力から傾斜角を算出する方法を説明する図である。
【図3】基地局装置の概略の内部構造を示す斜視図である。
【図4】基地局装置おける傾斜角度の検出動作を説明するフローチャートである。
【図5】傾斜角の変動量をプロットした図である。
【図6】傾斜角の変動量をフーリエ変換した結果を示す図である。
【図7】傾斜角の変動量をプロットした図である。
【図8】傾斜角の変動量をフーリエ変換した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施の形態>
以下、本発明に係る電子機器の実施の形態として、移動体通信の基地局装置に本発明を適用した場合について説明する。
【0015】
<装置構成>
図1は、実施の形態に係る基地局装置100の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る基地局装置100は、次世代PHSに準拠した基地局であり、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号を使用したOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式を用いて、複数の通信端末と無線通信を行う。
【0016】
また、基地局装置100は、ネットワークと接続されており、当該ネットワークに接続された他の基地局などの通信装置やセンタ装置との通信も行う。
【0017】
図1に示されるように、基地局装置100は、通信端末と無線通信を行う無線通信部1と、ネットワークと通信するネットワーク回線部2と、無線通信部1およびネットワーク回線部2を制御する主制御部3と、複数の冷却ファン10a〜10dとを備えている。また、基地局装置100は、無線通信部1、ネットワーク回線部2、主制御部3および冷却ファン10a〜10dに電力を供給する電源部4を備えている。
【0018】
なお、冷却ファン10a〜10dのそれぞれは、主制御部3によって制御されるが、制御線等の図示は省略している。以後、冷却ファン10a〜10dを特に区別する必要がない場合には、冷却ファン10a〜10dのそれぞれを「冷却ファン10」と呼称する。
【0019】
ネットワーク回線部2は、例えばTCP(Transmission Control Protocol)を使用してネットワークと通信を行う。ネットワーク回線部2は、ネットワークから受信したデータを主制御部3に出力するとともに、主制御部3からのデータをネットワークに送信する。
【0020】
無線通信部1は、アンテナ1aで受信された通信端末からのOFDM信号に対して、増幅処理およびダウンコンバート等を行って、ベースバンドのOFDM信号を生成して主制御部3に出力する。また、無線通信部1は、主制御部3で生成される、ベースバンドの送信用のOFDM信号に対して、アップコンバートおよび増幅処理などを行い、搬送帯域のOFDM信号を生成してアンテナ1aに入力する。これにより、アンテナ1aからはOFDM信号が無線送信される。
【0021】
主制御部3は、無線通信部1から出力されるOFDM信号に対してFFT(Fast Fourier Transform)処理等を行って、当該OFDM信号に含まれるデータを取得する。そして、主制御部3は、取得したデータのうち、ネットワーク向けのデータをネットワーク回線部2に送信する。また、主制御部3は、ネットワーク回線部2からのデータを含む、ベースバンドのOFDM信号を生成して無線通信部1に出力する。
【0022】
さらに主制御部3は、定期的に基地局装置100の傾斜角θを測定する。すなわち、主制御部3は、傾斜センサとしての加速度センサ30および、例えばCPUで構成される演算処理装置31を備えている。加速度センサ30は、例えば3軸加速度センサであって、検出軸として、互いに直交するx軸、y軸およびz軸を備えている。加速度センサは30は、x軸方向、y軸方向およびz軸方向の加速度を検出して出力する。本実施の形態に係る基地局装置100は、静止した状態で電柱等に固定設置されることから、加速度センサ30は、重力加速度についてのx軸方向成分x0、y軸方向成分y0およびz軸方向成分z0を検出して出力する。
【0023】
演算処理装置31は、加速度センサ30の出力信号、つまりx軸方向成分x0、y軸方向成分y0およびz軸方向成分z0に基づいて、現在の基地局装置100の傾斜角θを測定する。具体的には、演算処理装置31は、以下の数式(1)を用いて基地局装置100の傾斜角θを求める。
【0024】
【数1】

【0025】
ここで、x0、y0およびz0は、基地局装置100を電柱等に固定した直後において、加速度センサ30から出力されるx軸方向成分x0、y軸方向成分y0およびz軸方向成分z0をそれぞれ示している。
【0026】
数式(1)に示される傾斜角θは、図2に示すように、加速度センサ30のx軸、y軸およびz軸の直交座標系において、原点から点(x0,y0,z0)に向かうベクトルと、原点から点(x,y,z)に向かうベクトルとが成す角度を示している。
【0027】
すなわち、傾斜角θは、基地局装置100の現在の姿勢が、固定された直後の姿勢からどれだけ傾いているかを示している。このように、傾斜角θは、固定直後の基地局装置100に対する現在の基地局装置100の相対的な傾斜角を示している。演算処理装置31は、加速度センサ30の出力を定期的に取り込むことで、定期的に基地局装置100の傾斜角θを算出する。
【0028】
主制御部3は、演算処理装置31で傾斜角θが求められるたびに、傾斜角θが予め定めたしきい値よりも大きいか否かを判定する。そして、主制御部3は、傾斜角θがしきい値よりも大きいと判定した場合は、基地局装置100の現在の姿勢が異常であると判定し、その旨を通知するためのアラーム情報をネットワーク回線部2を通じてネットワークに送信する。ネットワークに送信されたアラーム情報は、当該ネットワークに接続されたセンタ装置に入力される。センタ装置は、基地局装置100からアラーム情報が入力されると、表示器等を利用して、当該基地局装置100の姿勢が異常であることを示す警報を作業員に通知する。センタ装置から警報が通知された作業員は、対象の基地局装置100が設置されている場所まで移動し、当該基地局装置100の姿勢を確認する。そして、作業員は、基地局装置100の姿勢を元に戻したり、当該基地局装置100を他の基地局装置100に交換したりする。
【0029】
基地局装置100は、その姿勢が異常となると、アンテナ1aの向きが不適切となることから、通信端末と通信しにくくなる。また、基地局装置100は、その姿勢が異常となると、設置場所から落下する可能性があるが、上記のように自機の姿勢の異常を検出した場合には、その旨をセンタ装置に通知することで、上述した不具合の発生を未然に防ぐことができる。
【0030】
また、基地局装置100に設けられている冷却ファン10a〜10dは、上述した電源4やCPU31の他に、基地局装置100が有するパワーアンプ、DSP(Digital Signal Processor)等の部品をそれぞれの動作温度範囲で使用するために設けられている。
【0031】
図3は基地局装置100の概略構造を示す斜視図であり、内部構造を示すために、筐体の一部を切り欠いた図として示している。
【0032】
図3に示されるように、基地局装置100は、略直方体の金属製の筐体200を備えており、図3に示されるXYZ直交座標系では、筐体200の厚み方向をZ軸方向としている。
【0033】
図3において、筐体200内には、金属製のシールド板210と、加速度センサ30が搭載された基板220と、冷却ファン10a〜10dとが収納された構成が開示されているが、これ以外の構成については図示を省略している。
【0034】
シールド板210および基板220は、ともに板状部材であって、それらの厚み方向がZ軸方向(筐体200の厚み方向)と一致するように筐体200内に配置されている。基板220は、プリント配線板であって、加速度センサ30を含む主制御部3以外にも、コネクタや電子部品などの様々な部品が実装されているが図示は省略する。
【0035】
シールド板210は、筐体200に取り付けられており、当該筐体200と電気的に接続されている。基板220は、シールド板210の上面に対して複数の金属製のスペーサ230によって取り付けられている。基板220に形成されたグランドパターンはシールド板210と電気的に接続されている。加速度センサ30は、そのx軸方向、y軸方向およびz軸方向が、図3のX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向とそれぞれ一致するように基板220上に配置されている。
【0036】
冷却ファン10aは、シールド板210の裏面に対して取付部材240によって取り付けられている。冷却ファン10bは、シールド板210の上面の−X方向端部に対して取付部材250によって取り付けられている。冷却ファン10cは、シールド板210の上面の−X方向端部に対して取付部材260によって取り付けられている。冷却ファン10b,10cはY軸方向に沿って並んでいる。冷却ファン10dは、筐体200の内側底面の+X方向端部に対して取付部材270によって取り付けられている。
【0037】
冷却ファン10b,10cのそれぞれは、その回転軸方向(車軸方向)がX軸方向に一致するように配置されている。冷却ファン10b,10cのそれぞれは、基板220の上方空間に風を送るように+X方向に向かって送風する。
【0038】
シールド板210の裏面の冷却ファン10aは、その回転軸方向がZ軸方向に一致するように配置されている。冷却ファン10aは、シールド板210に向かって風を送るように+Z方向に向かって送風する。
【0039】
筐体200の内側底面の冷却ファン10dは、その回転軸方向がX軸方向に一致するように配置されている。冷却ファン10dは、シールド板210の下方空間に向かって風を送るように−X方向に向かって送風する。
【0040】
なお、シールド板210の上面には、基板220以外にも、コネクタや電子部品等の部品が実装されたプリント配線板(図示せず)がスペーサ(図示せず)を介して取り付けられている。なお、冷却ファンの個数は上述した個数に限定されるものではなく、より少ない個数でも、また、より多い個数でも良い。また、配設位置、風向も上述した場所、方向に限定されるものではない。
【0041】
ここで、冷却ファン10a〜10dは、予め、それぞれの回転数が異なるように設定されている。具体的には、各冷却ファンに供給するDC電源電圧の値を少しずつ異なる値とすることで実現している。より具体的には、図1に示すように、各冷却ファンの電源ラインにダイオード素子DEを介挿することで、ダイオード素子による電圧降下分だけDC電源電圧の値を下げて、その分だけ、回転数を下げることができる。なお、ダイオード素子の1個あたりの電圧降下は、0.6〜0.7Vであるので、介挿するダイオード素子の個数を増やせば、その分だけDC電源電圧の値が下がることとなり、各冷却ファンで介挿するダイオード素子の個数を変えることで、それぞれの回転数を変えることができる。また、ダイオードの代わりに抵抗素子を介挿しても同様の効果が得られる。
【0042】
以上説明した基地局装置100によれば、出荷時の傾斜角度の検出動作および出荷後の定期的な傾斜角度の検出動作において、異常傾斜が検出された場合、それが、傾斜センサの動作異常に起因するものか、冷却装置の動作異常に起因するものかを速やかに判定でき、さらに、冷却装置の動作異常である場合は、異常を呈している冷却装置を特定することも可能となる。
【0043】
以下、基地局装置100における傾斜角度の検出動作について、図1を参照しつつ図4に示すフローチャートを用いて説明する。なお、以下の説明においては、冷却ファン10a〜10dを、便宜的に冷却ファン1、2、3および4と呼称し、冷却ファン10a〜10dの何れであるかは特定しないものとする。
【0044】
<判定動作>
図4において、主制御部3において傾斜角度の検出動作を開始すると、演算処理装置31が、加速度センサ30の出力を読み込む(ステップS1)。
【0045】
演算処理装置31では、読み込んだ加速度センサ30の出力を用いて、傾斜角度を算出する。なお、傾斜角度の算出には、先に説明した数式(1)を用いる。そして、演算処理装置31では、算出した傾斜角度と、予め定められた傾斜角の閾値(角度異常の閾値)とを比較することで、傾斜角度(センサ値)に異常があるか否かを判定する(ステップS2)。
【0046】
ステップS2において傾斜角度に異常がないと判定された場合は、検出動作を終了するが、傾斜角度に異常があると判定された場合はステップS3に進む。この場合、角度異常の検出が、出荷後の定期的な検出動作でなされたのであれば、基地局装置100の現在の姿勢が異常である旨のアラーム情報をネットワーク回線部2を通じてネットワークに送信する。また、出荷時の検出動作においては、ネットワーク回線部2を所定の検査装置に接続し、現在の姿勢が異常である旨の表示が当該検査装置上に表示されるように構成すれば良い。
【0047】
ステップS3では、加速度センサ30の出力に基づいて、検出された傾斜角の値に周期的な異常の要素があるか否かを演算処理装置31において判定する。なお、判定方法は後述する。そして、周期的な異常の要素がなく傾斜角度の異常のみである場合は、ステップS8に進んで加速度センサ30の交換の指示、例えば加速度センサ30に問題があることを報知する信号等の出力を行い、検出動作を終了する。なお、加速度センサ30の交換は、具体的には、図3に示した主制御部3を搭載する基板220の交換により実施される。
【0048】
一方、ステップS3において、検出された傾斜角の値に周期的な異常の要素があると判定された場合、ステップS4において、当該周期的な異常が、冷却ファン1の回転数に依存する周期で発生しているか否かを演算処理装置31において判定する。そして、周期的な異常が、冷却ファン1の回転数に依存する周期で発生していると判定された場合は、ステップS9に進んで冷却ファン1の交換の指示、例えば冷却ファン1に問題があることを報知する信号等を出力した後、ステップS5に進む。なお、冷却ファン1に問題があることを報知する信号を受けると、作業員が冷却ファン1の交換作業を行う。
【0049】
一方、ステップS4において、周期的な異常が、冷却ファン1の回転数に依存していないと判定された場合は、ステップS5において、当該周期的な異常が、冷却ファン2の回転数に依存する周期で発生しているか否かを演算処理装置31において判定する。そして、周期的な異常が、冷却ファン2の回転数に依存する周期で発生していると判定された場合は、ステップS10に進んで冷却ファン2の交換の指示、例えば冷却ファン2に問題があることを報知する信号等を出力した後、ステップS6に進む。なお、冷却ファン2に問題があることを報知する信号を受けると、作業員が冷却ファン2の交換作業を行う。
【0050】
一方、ステップS5において、周期的な異常が、冷却ファン2の回転数に依存していないと判定された場合は、ステップS6において、当該周期的な異常が、冷却ファン3の回転数に依存する周期で発生しているか否かを演算処理装置31において判定する。そして、周期的な異常が、冷却ファン3の回転数に依存する周期で発生していると判定された場合は、ステップS11に進んで冷却ファン3の交換の指示、例えば冷却ファン3に問題があることを報知する信号等を出力した後、ステップS7に進む。なお、冷却ファン3に問題があることを報知する信号を受けると、作業員が冷却ファン3の交換作業を行う。
【0051】
一方、ステップS6において、周期的な異常が、冷却ファン3の回転数に依存していないと判定された場合は、ステップS7において、当該周期的な異常が、冷却ファン4の回転数に依存する周期で発生しているか否かを演算処理装置31において判定する。そして、周期的な異常が、冷却ファン4の回転数に依存する周期で発生していると判定された場合は、ステップS12に進んで冷却ファン4の交換の指示、例えば冷却ファン4に問題があることを報知する信号等を出力し、検出動作を終了する。なお、冷却ファン4に問題があることを報知する信号を受けると、作業員が冷却ファン4の交換作業を行う。
【0052】
なお、ステップS7において、周期的な異常が、冷却ファン4の回転数に依存していないと判定された場合は、他の周期的な要素が考えられるので、検出動作を終了する。
【0053】
<周期的な異常の判定方法>
以下、図5〜図8を用いて、傾斜角の値の周期的な異常の要素の判定方法について説明する。
【0054】
図5および図7は、定期的にサンプリングされた加速度センサ30の加速度値を傾斜角の変動量に変換してプロットしたグラフであり、横軸に時間を示し、縦軸に角度(図2に示すθ)の変動量を示している。また、予め定められた傾斜角の閾値(角度異常の閾値)を閾値ラインAL1として示している。この閾値ラインAL1を、角度の変動量が越えた場合は、演算処理装置31は何らかの理由でセンサ値に異常が発生したものと判定する。
【0055】
ここで、図5においては、角度異常の閾値の前後に及ぶように傾斜角の不規則な変動が見られる。この不規則な変動は、加速度センサ30の出力がノイズを含んでいるためであり、角度異常の閾値に達しない値もあるが、演算処理装置31では、平均値としては角度異常の閾値に達していると判断して、センサ値に異常が発生したものと判定する。
【0056】
図6は、図5に示す傾斜角の変動量を演算処理装置31でフーリエ変換して得られたグラフであり、横軸に周波数(f)を示し、縦軸にスペクトルの強度を示している。また、スペクトル強度の閾値として、最大ピークを1として、その半分か、半分より小さい値を閾値ラインAL2として予め設定しておく。
【0057】
図6では、冷却ファン1〜4のそれぞれの回転周波数(回転周期に等しい)をf1、f2、f3およびf4として示すが、何れの周波数においてもスペクトルは現れておらず、ファンの回転周波数に依存した周期的な異常の要素は検出されていない。演算処理装置31は、冷却ファン1〜4の回転周波数に対応するスペクトルの出現の有無を検出することで、検出された傾斜角の値に周期的な異常の要素があるか否かを判定する。
【0058】
図5および図6からは、周期的な異常の要素がなく傾斜角度の異常のみが検出されているので、演算処理装置31は、加速度センサ30の異常であると判定し、加速度センサ30の交換の指示を行う。
【0059】
なお、出荷時の傾斜角度の検出動作においては、基地局装置100を適正な角度に取り付けた状態で傾斜角度の検出動作を行うので、例えば加速度センサ30に問題があることを報知する信号が出力されたということは、加速度センサ30に異常があることはほぼ間違いないと考えられる。また、出荷後の定期的な傾斜角度の検出動作は、基地局装置100の設置時に傾斜角度の初期化を行い、その後の変化量を見て正常か異常の判定を行う。
【0060】
また、図7においては、傾斜角の不規則な変動の大部分は閾値ラインAL1には達していないが、局所的に閾値ラインAL1を越える変動が現れている。演算処理装置31では、この局所的に閾値ラインAL1を越える変動により、センサ値に異常が発生したものと判定する。
【0061】
図8は、図7に示す傾斜角の変動量を演算処理装置31でフーリエ変換して得られたグラフであり、横軸に周波数(f)を示し、縦軸にスペクトルの強度を示している。
【0062】
図8では、冷却ファン1〜4のそれぞれの回転周波数をf1、f2、f3およびf4として示しており、この例では、回転周波数f1においてスペクトルP1が現れている。
【0063】
演算処理装置31は、回転周波数f1に対応するスペクトルP1の出現により、検出された傾斜角の値に周期的な異常の要素があるものと判定する。
【0064】
そして、回転周波数f1のスペクトルP1が現れたことにより、演算処理装置31においては、冷却ファン1の回転数に依存する周期で傾斜角の異常が発生しているものと判定し、冷却ファン1の交換の指示、例えば冷却ファン1に問題があることを報知する信号等を出力する。
【0065】
なお、上記のように冷却ファンの回転周波数に依存する周期的な異常を検出するには、ナイキストの法則に基づいて、加速度センサ30のサンプリング周波数は冷却ファンの回転周波数(最も回転周波数の高いもの)の2倍以上となるように設定する。
【0066】
<効果>
以上説明したように、基地局装置100においては、加速度センサ30の出力に基づいて、検出された傾斜角の値に周期的な異常の要素があるか否かを判定し、周期的な異常の要素がなく傾斜角度の異常のみである場合は、加速度センサ30に問題があるものとして交換を指示し、周期的な異常の要素がある場合には、傾斜角の変動量をフーリエ変換することで、周期的な異常の要素を検出する構成を採っている。このため、加速度センサ30で異常傾斜が検出された場合に、それが、加速度センサ30の動作異常に起因するものか、冷却ファン10a〜10dの動作異常に起因するものかを速やかに判定することができる。また、予め、冷却ファン10a〜10dの回転周期をそれぞれ異なった値に設定しておくことで、フーリエ変換により周期的な異常が、何れの冷却ファンの回転周期に依存しているかを特定でき、問題のある冷却ファンだけを交換すれば済むので、作業効率を向上することができる。
【0067】
<変形例1>
以上説明した実施の形態では、傾斜角の変動量をフーリエ変換することで、周期的な異常の要素を検出する構成を示したが、加速度センサ30の出力に基づいて算出された傾斜角の変動量のデータを、例えばバンドパスフィルタを通すことで、バンドパスフィルタの特性で決まる周波数成分の信号のみを抽出する構成としても良い。この場合、バンドパスフィルタは演算処理装置31の機能により実現しても良いし、加速度センサ30の出力をDSP(図示せず)に入力し、DSPの機能により実現しても良い。冷却ファン1〜4の回転周波数f1〜f4は予め判っているので、それぞれの周波数に対応したバンドパスフィルタを準備しておき、それぞれに傾斜角の変動量のデータを通す。これにより、対応する周波数成分がある場合には、その周波数成分のみがフィルタを通過して出力されるので、その周波数成分から冷却ファンを特定することができる。
【0068】
<変形例2>
以上説明した実施の形態では、冷却ファンの異常を検出した場合、該当する冷却ファンを交換することで対処する例を説明したが、他の機器に障害を起こすレベルの振動でなければ交換はせず、冷却ファンの回転周波数に依存する振動を除去する処置を採る構成としても良い。例えば、振動する冷却ファンの固定を補強して振動を抑制したり、冷却ファンの取付部材を、防振部材を介して筐体や基板に取り付けるなどの処置を採ることで、冷却ファンを交換することなく使用を続けることが可能となる。
【0069】
<変形例3>
以上説明した実施の形態では、加速度センサ30により傾斜角を算出し、その変動量をフーリエ変換することで、周期的な異常の要素を検出する構成を示したが、周期的な異常が冷却ファンの回転周波数に依存しているのであれば、振動センサにより振動を検出することによっても周期的な異常の要素を検出することができる。
【0070】
周期的な異常の要素がある場合、振動センサの出力は、図7に示されるような出力となることが予想され、当該出力をフーリエ変換することで、周期的な異常の要素を検出することができる。
【符号の説明】
【0071】
10a〜10d 冷却ファン
30 加速度センサ
31 演算処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自機の傾きを検出する傾斜センサと、
それぞれ回転周波数の異なる回転体を有した複数の回転機能装置と、
前記傾斜センサの出力信号に基づいて前記電子機器の傾斜角を定期的に算出する演算処理装置と、を備えた電子機器であって、
前記演算処理装置は、
算出した前記傾斜角から傾斜角の変動量のデータを取得し、前記傾斜角の変動量のデータに周期的な異常の要素が含まれているか否かを判定するとともに、周期的な異常の要素が含まれている場合には、その周期を検出する機能を有する、電子機器。
【請求項2】
前記演算装置は、
前記傾斜角の変動量のデータにフーリエ変換を施した結果に基づいて、前記傾斜角の変動量のデータに周期的な異常の要素が含まれているか否かを判定するとともに、前記周期的な異常の要素の周期を検出する、請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記複数の回転機能装置は、前記電子機器内を冷却する冷却ファンを含む、請求項1記載の電子機器。
【請求項4】
自機の傾きを検出する傾斜センサと、それぞれ回転周波数の異なる回転体を有した複数の回転機能装置と、前記傾斜センサの出力信号に基づいて前記電子機器の傾斜角を定期的に算出する演算処理装置と、を備えた電子機器の検査方法であって、
前記演算処理装置は、
算出した前記傾斜角から傾斜角の変動量のデータを取得し、
前記傾斜センサによって異常傾斜が検出された場合、
前記演算処理装置は、
前記傾斜角の変動量のデータに周期的な異常の要素が含まれていない場合には、前記傾斜センサの異常と判定して、前記傾斜センサの交換を指示し、
前記傾斜角の変動量のデータに周期的な異常の要素が含まれている場合には、その周期を検出して、前記複数の回転機能装置のうち、何れの回転周波数と一致するかの確認を行うことで、異常動作する回転機能装置を特定し、その交換を指示する、電子機器の検査方法。
【請求項5】
前記演算装置は、
前記傾斜角の変動量のデータにフーリエ変換を施した結果に基づいて、前記傾斜角の変動量のデータに周期的な異常の要素が含まれているか否かを判定するとともに、前記周期的な異常の要素の周期を検出する、請求項4記載の電子機器の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−33990(P2012−33990A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169128(P2010−169128)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】