説明

電子機器における表面温度分布の調節方法

【課題】本発明は、電子機器における表面温度分布の調節方法に関して、電子機器における表面温度の局所的な上昇を抑制することを目的とする。
【解決手段】電子機器の外装ケース1と、この外装ケース1内に納められた発熱電子部品3と、外装ケース1の内側に設けられ発熱電子部品3から発する局所的な熱を所定範囲に分散させるグラファイトシート5からなり、発熱電子部品3と対峙するグラファイトシート5領域に貫通孔6を設けるとともに、この貫通孔6の孔径を調節して電子機器の表面温度を調節するのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱電子部品を有する電子機器における表面温度分布の調節方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に携帯電話やノート型パソコンなどのモバイル型電子機器においては、外装ケースの表面温度に対して所定の温度以下となるように規定が設けられている。
【0003】
そして、このような規定に対応するため電子機器において回路形成に用いられるパワーアンプやLSIといった発熱電子部品と対峙する外装ケースの内側面に熱伝導性の高いグラファイトシートを貼り付けることが知られている。
【0004】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平10−229287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、携帯電話やノート型パソコンに見られるように電子機器の薄型化が進められる中、発熱電子部品と外装ケースとの間隔が極めて小さくなってきていることや、電子機器の高性能化に伴う発熱電子部品自体の発熱量が増加していることがあり、単に外装ケースの内側面にグラファイトシートを貼り付けても、発熱電子部品と対峙する部分に対する十分な熱分散を行うことが困難なものとなってきた。
【0006】
そこで、本発明は電子機器における表面温度の局所的な上昇を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、この目的を達成するために本発明は、特に電子機器における発熱電子部品と対峙するグラファイトシート領域に貫通孔を設けるとともに、この貫通孔の孔径を調節して電子機器の表面温度を調節するのである。
【発明の効果】
【0008】
この方法によれば、発熱電子部品から発せられる局所的な熱はグラファイトシートにより熱分散できるとともに、外装ケースと最も近接し表面温度に上昇が激しい発熱電子部品との対峙領域においてグラファイトシートに貫通孔が設けられるため、この部分においてはグラファイトシートより熱伝導性の低い空気が介在するようになるため、この貫通孔の孔径を調節することにより、外装ケースの部分的な温度上昇を調節できるようになり、電子機器における表面温度の局所的な上昇を抑制することが出来るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図を用いながら説明する。
【0010】
図1は携帯電話などの電子機器の構造を模式的に表したものであり、電子機器の外表面を形成する外装ケース1の内部において配線基板2上に送信回路用のパワーアンプなどの発熱電子部品3および各種電子部品4が実装された構造を示している。
【0011】
また、この電子機器においては、発熱電子部品3の発熱により外装ケース1の表面が局所的に温度上昇しないようにするため、この発熱電子部品3と対峙する領域を含む外装ケース1の内側面に熱伝導性の高いグラファイトシート5が貼り付けられている。
【0012】
なお、グラファイトシート5としてはポリイミド等の高分子樹脂シートを1200度以上の温度で炭化させ、その後、2600度以上の温度でグラファイト化し、図2に示されるように炭素が2次元的に密な結合した炭素層の多層構造体とし、炭素の結合面内において高い熱電導特性を示すものや、膨張黒鉛をシート状に成形したものや、グラファイトファイバーをシート状に成形したものなどが挙げられる。
【0013】
そして、この電子機器においてはグラファイトシート5における発熱電子部品3と対峙する領域内に貫通孔6が形成されており、この貫通孔6を設けることで電子機器の表面温度分布、つまり外装ケース1の表面温度分布を調節し、電子機器における表面温度の局所的な上昇を抑制することが出来るのである。
【0014】
すなわち、発熱電子部品3の位置と外装ケース1の温度分布は図3に示されるように電子機器におけるグラファイトシート5の有無やグラファイトシート5における貫通孔6の有無により温度分布が変化するもので、発熱電子部品3と外装ケース1との間にグラファイトシート5を設けていない構成においては、破線aで示すように発熱電子部品の対峙提示する直上領域が極端に温度が高くなり他の部分が低い状態となる。
【0015】
また、発熱電子部品3と外装ケース1の間の一面にグラファイトシート5を設けた構成においては、破線bで示されるようにグラファイトシート5に熱伝導性により温度分布がグラファイトシート5を設けていない破線aの温度分布に比べピーク温度が下がった状態で平均化される。
【0016】
ただし、グラファイトシート5はシート面内方向に対する熱伝導性は高いもののシート厚み方向においてもある程度の熱伝導性を有することから、破線aの温度分布に比べ平均化されるものの、熱源となる発熱電子部品3との距離が近い発熱電子部品3の直上部分において他の部分よりも温度上昇が大きくなっている。
【0017】
これらに対し、発熱電子部品3と外装ケース1の間にグラファイトシート5を設け、発熱電子部品3と対峙するグラファイトシート5領域に貫通孔6を設けた構成においては、実線cで示されるように、破線bにおけるピーク温度部分が下がったものとなる。
【0018】
これは発熱電子部品3と対峙する領域に貫通孔6を設けたことによるもので、グラファイトシート5は先にも述べたようにシート面内方向において2次元的に密に結合した炭素層の多層構造体であるため、シート面内方向において高い熱伝導性を有するものであるが、多層方向においてもある程度の熱伝導性を有するため、この部分に貫通孔6を設けることで空間が生じグラファイトシート5より熱伝導性の低い空気で満たされるので、この部分における温度上昇を抑制できるのである。
【0019】
つまり、発熱電子部品3の直上に位置するグラファイトシート5領域に貫通孔6を設けることは、グラファイトシート5により発熱電子部品3と対峙する領域において局所的な温度上昇を分散させ温度分布をシート内で均一化させることに併せて、ピーク温度を低減させることが出来るのである。
【0020】
なお、グラファイトシート5に貫通孔6を設けるにあたっては、図4に示されるように貫通孔6の孔径が大きければ実線dに示すように貫通孔6の内側領域において再びピーク温度を形成し、孔径が小さければ破線eに示すようにピーク温度の引き下げ幅が小さくなってしまうことから、部品形状に応じて貫通孔6の孔径を適宜調整し、電子機器の表面温度分布を調節する必要があるのである。
【0021】
また、発熱電子部品3形状が大きく単一の貫通孔6だけでは温度分布特性を調整し難い場合には図5に示すように貫通孔6を複数設けることでピーク温度をさらに分散させることができ、この分散状態において個々の貫通孔6の孔径を調整することで、より細かな調整が可能となるのである。
【0022】
さらに、電子機器の表面温度分布を調節できることから、電子機器の薄型化の際発熱電子部品3と外装ケース1との間隔をより小さなものと出来るようになり、ひいては外装ケース1の内側面に貼り付けられたグラファイトシート5表面を発熱電子部品3に当接させることも可能となる。
【0023】
この場合、発熱電子部品3から生じる熱はグラファイトシート5による熱分散効果と、直上領域においても貫通孔6を設けることにより生じた空間によりその部分における温度上昇の抑制効果を得ることが出来るとともに、発熱電子部品3がグラファイトシート5と接していることからこの発熱電子部品3の放熱効果の向上が期待できるものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、電子機器における表面温度分布の調節方法に関し、電子機器における表面温度の局所的な上昇を抑制するという効果を有し、特にモバイル用途の電子機器に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態における電子機器の模式図
【図2】同電子機器に用いられるグラファイトシートの構造を示す模式図
【図3】同電子機器の表面温度分布を示す図
【図4】同電子機器の表面温度分布の調整方法を示す図
【図5】他の調整方法を示す図
【符号の説明】
【0026】
1 外装ケース
3 発熱電子部品
5 グラファイトシート
6 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の外装ケースと、この外装ケース内に納められた発熱電子部品と、外装ケースの内側に設けられ前記発熱電子部品から発する局所的な熱を所定範囲に分散させるグラファイトシートからなり、前記発熱電子部品と対峙する前記グラファイトシート領域に貫通孔を設けるとともに、この貫通孔の孔径を調節することを特徴とした電子機器における表面温度分布の調節方法。
【請求項2】
貫通孔を複数設け、前記貫通孔の配置および孔径を調節することを特徴とした請求項1に記載の電子機器における表面温度分布の調節方法。
【請求項3】
グラファイトシートに設けられた貫通孔周辺を発熱電子部品に当接させたことを特徴とする請求項1に記載の電子機器における表面温度分布の調節方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−203018(P2006−203018A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−13640(P2005−13640)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】