説明

電子機器の冷却構造

【課題】密閉構造の電子機器筐体内で発生する熱量全体を高効率に筐体外部へ放熱する電子機器の冷却構造を提供する。
【解決手段】軸流ファン9から放出された空気は基板取付金具2に設けた風穴b21より侵入し、発熱部品c7に接合された放熱フィン8に沿って矢印24のように流れる。そのときの風圧によって、メイン基板4に実装された発熱部品b6付近の空気が引っ張られて、風穴a20より空気が取り込まれ、対流が生じて発熱部品b6が冷却されるようになる。これらの空気はメイン基板4とエンコーダ基板3の間を通り、メイン基板4、エンコーダ基板3の発熱部品a5等の熱を吸収し暖められ、基板取付金具2に設けた風穴d23より排出され、表示制御基板11に突き当たる。突き当たった空気は筐体1の側面左右方向二手に分かれ、筐体側面部を介して筐体外部と熱交換し冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に電力増幅部、電源ユニットおよび電子部品を実装した複数のプリント基板が収納された電子機器の冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、FPU(Field Pickup Unit)等の放送用無線中継装置は屋外での使用が大半であるため防雨構造が必須であり、密閉構造を採用してきた。また、可搬型であるがゆえに小型軽量化が求められており、また、近年は他の電子機器と同様に電子回路のディジタル化が進み、多機能化および高性能化が図られている。
当然のことながら、機器の消費電力が増加した上で密閉筐体を小型化するため、内部温度上昇が高くなり、電子機器の寿命低下および性能劣化を招く要因となっている。このような背景のもと、FPU等の放送用無線中継装置には高効率な放熱構造を適用する必要がある。
【0003】
そこで、従来技術の一例として、特許文献1には、密閉筐体の外部に強制空冷を行うための冷却装置を取り付けた電子機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−096230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1における放熱構造では、電子機器1の筐体内部に配置された電力増幅部や電源ユニット等の発熱部品3から発生した熱は、筐体下部に位置するフィン型ヒートシンク4を介して筐体外部へ高効率に放熱されるが、筐体カバー2内に実装された電子回路部からの発熱は筐体内部での自然対流のみで放熱するしかない。
しかし、背景技術で述べたように、近年はディジタル化の促進によりプリント基板上に搭載した集積回路からの発熱量が多くなってきたことと、筐体の小型化によりフィン型ヒートシンク4の上面に電子部品を密着取り付けするスペースが狭くなっているため、フィン型ヒートシンク4からの放熱だけでは密閉筐体内で発熱する熱量全体を高効率に筐体外部へ放熱することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の事情に鑑みなされたものであり、密閉構造の電子機器筐体内で発生する熱量全体を高効率に筐体外部へ放熱する電子機器の冷却構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の請求項1に係る発明は、密閉構造の筐体と、当該筐体内部を冷却するファンとを備えた電子機器の冷却構造において、発熱部品を実装する2枚の回路基板を有し、前記2枚の回路基板の発熱部品実装面が互いに対向すると共に、ダクトの一部となるよう配置し、前記ファンから前記ダクトの中に冷却風を送風することを特徴とする。
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の請求項2に係る発明は、請求項1記載の電子機器の冷却構造において、前記ファンからの冷却風が前記回路基板に実装された発熱部品に直接当たるように、前記ファンを傾斜させて設置することを特徴とする。
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の電子機器の冷却構造において、前記ファンからの送風ルートにガイドを設けることにより、前記ファンの送風のショートパスを防止し、発熱部品によって温度上昇した空気を前記筐体に熱伝達した後、前記ファンにもどすようにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、対向配置した発熱部品実装基板間にファンから送風することにより、冷却風の熱伝達量を増加させることができるという効果がある。また、最も発熱する部品にファンから直接冷却風をぶつけることにより、冷却効果が増大し、発熱部品の温度上昇を抑えることができるという効果がある。また、ガイド板を用いて空気の漏れを防ぐことにより、ファンからの送風のショートパスが防止でき、温度上昇した空気を筐体に熱伝達させた後、ファンにもどすことによって、内部の温度上昇を抑制することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る電子機器の冷却構造を採用した放送用無線中継装置の垂直断面図である。
【図2】図1のA部詳細図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電子機器の冷却構造を採用した放送用無線中継装置の水平断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る電子機器の冷却構造を採用した放送用無線中継装置の内部基板実装箇所の分解斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る電子機器の冷却構造を採用した放送用無線中継装置の送信・受信系統図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る電子機器の冷却構造を採用した放送用無線中継装置の制御部と高周波部を一体化した場合の送信・受信系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態に係る電子機器の冷却構造を採用した放送用無線中継装置について、図1から図6を参照しながら説明する。
放送用無線中継装置は、テレビジョン放送素材をマイクロ波回線で伝送するものである。一般的には、図5に示すように、送信制御部101と送信高周波部102から成る送信側装置と、受信高周波部201と受信制御部202から成る受信側装置で構成され、送信高周波部102と受信高周波部201との間でディジタル信号をマイクロ波で搬送して送受信を行う。また、送信高周波部102及び受信高周波部201は、中継の際に屋外で使用することが多いため、筐体構造はそれぞれ防滴構造となっている。
また、高周波部と制御部を一体化し、高周波部内部に制御機能(画像/音声信号圧縮機能、ディジタル変調機能)を備えた放送用無線中継装置がある。このような放送用無線中継装置は、特に、ヘリコプター等の移動体に搭載して使用される。また、図6に示すように、送信装置100と受信装置200で構成され、送信装置100と受信装置200との間でディジタル信号をマイクロ波で搬送し送受信が行われる。
【0013】
そこで、本発明の実施の形態に係る電子機器の冷却構造を採用した放送用無線中継装置が、上記した高周波部と制御部を一体化した送信装置100である場合について、図1から図4を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る電子機器の冷却構造を採用した放送用無線中継装置の垂直断面図であり、図2は、図1のA部詳細図である。また、図3は、本発明の実施の形態に係る電子機器の冷却構造を採用した放送用無線中継装置の水平断面図である。また、図4は、本発明の実施の形態に係る電子機器の冷却構造を採用した放送用無線中継装置の内部基板実装箇所の分解斜視図である。
【0014】
放送用無線中継装置の内部には、マイクロ波周波数を発生する部分と搬送電力を増幅する電力増幅部(以下、PAという)14及びDC電源(以下、PSという)15があり、PA14とPS15は送信出力に応じて発熱量が増加する。また、放送用無線中継装置は屋外で使用することが多く、筐体1の構造は防滴仕様の密閉構造である。そのため、図1に示すように、PA14及びPS15で発生した熱は筐体1の底部に配置した放熱器13から放熱している。PA14内部の発熱デバイスの温度上昇をメーカの保証温度内に抑えるため、放熱器13の横に遠心ファン12を設け、遠心ファン12から放熱器13に形成されたフィンに沿って冷却風を送り、放熱器13の熱抵抗を下げるようにしている。
【0015】
一方、放送用無線中継装置は可搬型のため、装置の容積が小さく、PA14やPS15以外の発熱デバイスから発生する熱を効率よく筐体1から放熱させるために、装置内部に軸流ファン9を搭載し内部の空気を攪拌させ、発熱デバイスの温度上昇を下げる必要がある。
そこで、矢印を使って空気の流れを示すと、図1、図2のように、軸流ファン9から放出された空気は基板取付金具2に設けた風穴b21より侵入し、発熱部品c7に接合された放熱フィン8に沿って矢印24のように流れる。そのときの風圧によって、メイン基板4に実装された発熱部品b6付近の空気が引っ張られて、風穴a20より空気が取り込まれ、対流が生じて発熱部品b6が冷却されるようになる。
これらの空気はメイン基板4とエンコーダ基板3の間を通り、メイン基板4、エンコーダ基板3の発熱部品a5等の熱を吸収し暖められ、基板取付金具2に設けた風穴d23より排出され、表示制御基板11に突き当たる。
【0016】
次に、図3に示すように、表示制御基板11に突き当たった空気は筐体1の側面左右方向二手に分かれ、マザー基板16と筐体側面部a18との間、カゼガイドb17と筐体側面部b19との間を通過する。その際に、暖められた空気は筐体側面部a18または筐体側面部b19を介して筐体外部と熱交換し、冷却される。冷却された空気は再び軸流ファン9に吸入される。このような空気の循環を繰り返すことによって効率良く筐体内部の冷却が行われる。
【0017】
ここで、図4を基に、放送用無線中継装置の内部基板実装箇所の構成について説明する。
筐体1に固定された基板取付金具2にマザー基板16をネジa25にて取り付け、これにメイン基板4、エンコーダ基板3をガイドレールに沿ってスライドし、マザー基板16のコネクタ27に嵌合させる。その後、カゼガイドb17を基板取付金具2にネジb26にて取付ける。これにより、上面メイン基板4、下面エンコーダ基板3、側面カゼガイドb17、マザー基板16、入口風穴b21、出口風穴d23としたダクト構造となる。また、メイン基板4、エンコーダ基板3の部品面を対向するように取付けることで、ダクト構造内部に発熱部品が集中し、そこに冷却風を流すことで放熱効率を向上させる構造としている。
【0018】
以上説明したように、本発明により、対向配置した発熱部品実装基板間にファンから送風することにより、冷却風の熱伝達量を増加させることができる。また、最も発熱する部品にファンから直接冷却風をぶつけることにより、冷却効果が増大し、発熱部品の温度上昇を抑えることができる。また、ガイド板を用いて空気の漏れを防ぐことにより、ファンからの送風のショートパスが防止でき、温度上昇した空気を筐体に熱伝達させた後、ファンにもどすことによって、内部の温度上昇を抑制することができる。
【符号の説明】
【0019】
1:筐体、2:基板取付金具、3:エンコーダ基板、4:メイン基板、5:発熱部品a、6:発熱部品b、7:発熱部品c、8:放熱フィン、9:軸流ファン、10:カゼガイドa、11:表示制御基板、12:遠心ファン、13:放熱器、14:PA、15:PS、16:マザー基板、17:カゼガイドb、18:筐体側面部a、19:筐体側面部b、20:風穴a、21:風穴b、22:風穴c、23:風穴d、24:空気の流れ、25:ネジa、26:ネジb、27:コネクタ、100:送信装置、101:送信制御部、102:送信高周波部、200:受信装置、201:受信高周波部、202:受信制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉構造の筐体と、当該筐体内部を冷却するファンとを備えた電子機器の冷却構造において、
発熱部品を実装する2枚の回路基板を有し、前記2枚の回路基板の発熱部品実装面が互いに対向すると共に、ダクトの一部となるよう配置し、前記ファンから前記ダクトの中に冷却風を送風することを特徴とする電子機器の冷却構造。
【請求項2】
請求項1記載の電子機器の冷却構造において、前記ファンからの冷却風が前記回路基板に実装された発熱部品に直接当たるように、前記ファンを傾斜させて設置することを特徴とする電子機器の冷却構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の電子機器の冷却構造において、前記ファンからの送風ルートにガイドを設けることにより、前記ファンの送風のショートパスを防止し、発熱部品によって温度上昇した空気を前記筐体に熱伝達した後、前記ファンにもどすようにすることを特徴とする電子機器の冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−79978(P2012−79978A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225049(P2010−225049)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】