説明

電子機器の制御方法、電子機器の制御プログラム、電子機器、および記録装置

【課題】簡単な操作でユーザモードと異なる第2のモード、たとえば工場モードを起動でき、第2モードのプログラムをプログラムメモリから排除し、プログラムメモリの容量を低減できるようにする。
【解決手段】ユーザモードでは、スチルイメージクラスのUSBデバイス、デジタルカメラ301の接続に用いるUSBコネクタ108にマス・ストレージクラスのUSBメモリ401が接続された時、このデバイス接続操作を第1の動作モードと異なる第2の動作モードの起動指令とみなして、USBメモリ401から第2の動作モードを制御する第2の制御プログラムを読み出し、第2の制御プログラムをRAM103に記憶させ、実行することにより第2の動作モードを起動する。第2の動作モードとしては、製造/検査/修理のような、ベンダやサービスマンが取り扱う工場モードを実行することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の制御プログラムにより制御される第1の動作モードにおいて、第1のデバイスクラスのUSBデバイスの接続に用いられるUSBインターフェースを有する電子機器の制御方法、電子機器の制御プログラム、電子機器、および記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、CPUと制御プログラムによって制御される電子機器では、機器の通常動作を制御するアプリケーション用の制御プログラムの他に製造工程用の制御プログラムを用いる技術が知られている。
【0003】
このうち、アプリケーション用の制御プログラムは、電子機器のユーザに提供され、ユーザの環境下で、すなわちユーザモードで動作し、機器本来の動作を制御するものである。
【0004】
一方、工場モードの制御プログラムは、たとえば、製造、検査、検品、あるいは修理などの工程において、いわゆる工場モードで動作させ、機器のハードウェア/ソフトウェアの状態を検査するなどの目的に使用される。また、このような工場モードの制御プログラムは、それ自体で機器のハードウェア/ソフトウェアのチェックを実行したり、あるいは作業者の操作を支援する機能を有し、製造工程を簡潔にかつ確実に進めるために利用される。
【0005】
このように、従来より、電子機器では第1の動作モードであるユーザモードの他に製造、検査、検品、あるいは修理などの用途で用いられる第2のモードを実装する構成が知られている。なお、このうち、第2のモードは、機器本来の動作を実行する第1モードと異なるものである、と捉えれば、上記の用途に限らず、たとえば、パワーユーザのための隠しコマンドを実行するモードなども含まれることになる。
【0006】
これら第1モードおよび第2モードの制御プログラムは、両者ともにROM等に代表されるプログラムメモリに記憶させ、そのまま出荷する構成が知られている。たとえば、インクジェットプリンタのような機器においてもこのような構成が取られている。
【特許文献1】特開平09−305839号公報
【特許文献2】特開平11−242596号公報
【特許文献3】特開2000−155675号公報
【特許文献4】特開平6−105039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここでは、第1および第2モードの制御プログラムが上記のユーザモードの制御プログラムと工場モードの制御プログラムである場合につき考察する。
【0008】
上記のようにユーザモードの制御プログラムと工場モードの制御プログラムの双方をROM化して製品に塔載する構成では、工場モードは一般ユーザには開放せず、特別な操作を行なわない限り起動しないような構成とするのが普通である。たとえば、誤まってユーザが実行してしまう可能性が低い極めて特殊な(かつ通常ユーザには知らせない)操作によってのみ工場モードを起動するような仕様とする必要があり、工場モードの起動操作が複雑になると言う欠点がある。これにより、時間短縮が求められる製造工程において、この種のモードの実装目的に反して操作に時間がかかってしまう、という問題が発生する。
【0009】
さらに、ユーザ/工場モードの制御プログラムを一緒に格納する構成では、ユーザには必要のない工場モードの制御プログラムの分だけ余計にプログラムメモリの容量が必要であり、装置のコストアップに繋がるという欠点がある。また、当然ながら、製造工程に変更があって工場モードプログラムが変更になる場合も、たとえユーザモードに変更が無くても制御プログラム全体を作り直さなければならず、当然ROMも作り直しになる、という問題がある。
【0010】
ここで、メモリ容量の問題に限れば、たとえばプログラムメモリに書き替え可能な不揮発性メモリ(フラッシュメモリ等)を用いて、製造工程では工場モードプログラムで動作させ、出荷時にユーザモードプログラムに書き替えるような構成により、メモリ容量を最小限に抑えることは可能である。
【0011】
これについては、外部から制御プログラムのバージョンアップを行なう技術思想は既に存在し、PCの周辺機器であれば、最も一般的な方法として、USB等のPCインターフェースを介して、PCから新しい制御プログラムをダウンロードする方法が知られている。
【0012】
しかし、この方法はそもそもPCが必要なため、制御プログラムを書き換えるためのシステムが高価になり、操作も複雑になるばかりでなく、書き換え動作に時間がかかってしまうため、製造工程には不向きである。
【0013】
一方、PCを用いないで制御プログラムをバージョンアップする方法も提案されていて、たとえばメモリカードを用いて制御プログラムをバージョンアップする構成が上記の特許文献1〜3で提案されている。しかしながら、これらの従来構成では、そもそもコストの高いフラッシュメモリのような書き換え可能な不揮発性メモリを使用することが前提となるという問題がある。また、メモリカードを使用する場合は、外部から制御プログラムを供給するためにはメモリカードインターフェースを設けなければならないという問題がある。
【0014】
また、上記の特許文献4では、多種のアプリケーションをメモリカードに記憶しておき、必要なアプリケーションをそこから選択して装置内のRAMにダウンロードして動作させることが提案されているが、この場合もメモリカードインターフェースが必要となるし、メモリカードに記憶された多種のアプリケーションから必要なアプリケーションを選択するための手段および操作が必要となるという問題がある。
【0015】
以上のように、従来技術によると、プログラムデータの入出力のためだけにメモリカード等のインターフェースを設ける無駄が生じる。また、たとえメモリカードを他の用途でも使用できるとしてもカード内のファイルの識別手段および選択手段、選択操作等が必要になるという問題がある。
【0016】
以上では、第1および第2モードの制御プログラムがユーザモードおよび工場モードの制御プログラムの場合につき考察したが、たとえば、操作性やメモリ容量に関する問題などは第2モードが他の用途のモードである電子機器であっても共通するものである。
【0017】
本発明の課題は、上記の問題を解決し、簡単な操作でユーザモードと異なる第2のモード、たとえば工場モードを起動でき、これにより電子機器の製造/検査/修理のような工程を迅速に実施でき、第2モードのプログラムをプログラムメモリから排除し、プログラムメモリの容量を低減できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明においては、第1の制御プログラムにより制御される第1の動作モードにおいて、第1のデバイスクラスのUSBデバイスの接続に用いられるUSBインターフェースを有する電子機器の制御方法、電子機器の制御プログラム、電子機器、および記録装置において、前記USBインターフェースに前記第1のデバイスクラスと異なる第2のデバイスクラスのUSBデバイスが接続された時、このデバイス接続操作を前記第1の動作モードと異なる第2の動作モードの起動指令とみなして、前記USBデバイスから第2の動作モードを制御する第2の制御プログラムを読み出し、前記第2の制御プログラムを記憶手段に記憶させ、実行することにより前記第2の動作モードを起動する構成を採用した。
【発明の効果】
【0019】
上記構成によれば、USBインターフェースへの第1のデバイスクラス(たとえばスチルイメージクラス)と異なる第2のデバイスクラス(たとえばマス・ストレージクラス)のUSBデバイスの接続を第2の動作モードの起動指令として取り扱うようにしているので、極めて簡単な操作でユーザモードと異なる第2のモードを起動することができる。これにより、第2のモードとして、たとえば工場モードを容易に起動でき、電子機器の製造/検査/修理のような工程を迅速に実施できる。また、第2モードのプログラムを記憶手段に格納しておく必要がないので、記憶手段の容量を大きく低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の最良な実施の形態を、図面に示す実施例を用いて詳細に説明する。以下では、インクジェット記録装置に関する実施例を示す。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明を採用したインクジェット記録装置の要部の構成を示している。図1において符号101はインクジェット記録装置本体、102はインクジェット記録装置を制御するCPUである。
【0022】
CPU102には、システムバス107を介して、RAM103、ROM(不揮発メモリ、あるいはフラッシュROM)104、USBホストコントローラ105、USBデバイスコントローラ106が接続されている。
【0023】
これらのうち、RAM103は記録すべき画像データの記憶領域や、記録処理のために使用されるメモリである。
【0024】
ROM104は不揮発性メモリ、特にフラッシュROMのように書き変え可能なROM素子から構成され、インクジェット記録装置全体を制御するための制御プログラムを記憶させるために用いる。
【0025】
CPU102はROM104に記憶された、ユーザモードの制御プログラム(あるいは後述のUSBメモリ401に格納された工場モードの制御プログラム)にしたがってインクジェット記録装置全体を制御する。これにより、CPU102はインクジェット記録装置に接続されたPC201、あるいはデジタルカメラ301から送られてくる画像データを不図示の記録部により記録する記録動作を制御する。
【0026】
USBホストコントローラ105はUSBホストとして動作し、USBコネクタ(type−A)108に接続されたUSBデバイスと通信してデータの授受を行なう。
【0027】
図1では、USBコネクタ108に接続されるUSBデバイスとしてデジタルカメラ301、およびUSBメモリ401を例示してある。
【0028】
通常、この種のデジタルカメラ301からダイレクトプリント可能なプリンタでは、USBコネクタ108〜USBホストコントローラ105に関しては、ドライバはスチルイメージクラスのみを実装しておけばよい。
【0029】
しかし、本実施例ではデジタルカメラ301に加え、USBメモリ401を接続できるようにする。このため、USBホストコントローラ105のドライバとしては、スチルイメージクラス、およびマス・ストレージクラスに対応するドライバを実装しておく。
【0030】
スチルイメージクラスのドライバは、ピクトブリッジ(http://www.cipa.jp/pictbridge/)規格を満足し、DPS(Digital Photo Solution)およびPTP(Picture Transfer Protocol)レイヤから構成される。マス・ストレージクラスのドライバは、後述の工場モードのプログラムを入出力するために用いられ、たとえばSCSIなどのサブクラスが実装される。
【0031】
すなわち、USBコネクタ108〜USBホストコントローラ105はピクトブリッジインターフェースとして構成するとともに、マス・ストレージクラスも接続できるUSBインターフェースを構成する。
【0032】
以上の構成において、USBメモリ401には工場モードの制御プログラムを記憶させ、USBコネクタ108にUSBメモリ401を装着することにより、自動的に工場モードへの切り換えを行ない、CPU102にUSBメモリ401に格納された工場モード制御プログラムを実行する。
【0033】
すなわち、本実施例においては、USBインターフェースに第1のデバイスクラスであるスチルイメージクラスと異なる第2のデバイスクラス、マス・ストレージクラスのUSBデバイス、USBメモリ401を接続することができる。そして、USBメモリ401の接続操作を第1の動作モードと異なる第2の動作モードの起動指令とみなして、USBメモリ401から第2の動作モード、工場モードを制御する制御プログラムを読み出して実行することができる。
【0034】
なお、上記のピクトブリッジ(http://www.cipa.jp/pictbridge/)は記録装置とデジタルカメラのような機器を接続するインターフェース規格である。ピクトブリッジ規格はPC(パーソナルコンピュータ)のようなホスト機器を用いずに記録装置とデジタルカメラをUSBインターフェースを介して直接接続し、画像の印刷などを行なうためのものである。
【0035】
一方、USBデバイスコントローラ106は、USBケーブル202を介してUSBコネクタ(Type−B)109に接続されたPC201とUSB通信してデータの授受を行なう。
【0036】
図2は工場モード時のRAM103のメモリ空間の使用例を示している。図2の例では、RAM103の容量が8Mバイトで、工場モードプログラムのデータ容量が2Mバイトとなっていて、USBメモリ401に記憶されたプログラムコードは、100000h番地から2FFFFFh番地に展開される。
【0037】
なお、ROM104に格納されたユーザモードの制御プログラムは、ROM104のメモリ空間で実行するか、あるいは工場モードの制御プログラムと同様にRAM103のメモリ空間にロードされた上、実行される。
【0038】
図1のインクジェット記録装置は、ROM104に記憶されたユーザモードの制御プログラムによって動作中も、USBコネクタ108へのUSBデバイスの装着を検出している。USB機器では、このように、いわゆるホットスワップ操作に対応できなければならない。
【0039】
そして、USBデバイスとしてマス・ストレージクラスのUSBメモリ401が挿入されると、CPU102はUSBメモリ401に記憶されたプログラムデータを読み出しRAM103に展開する。RAM103へのプログラムデータ展開が終了すると、RAM103に展開したプログラムエリアにジャンプして、RAM103に記憶したプログラムコード、すなわち工場モードプログラムにしたがって動作する。
【0040】
次に、上記のような工場モードへの移行制御を図3のフローチャートに沿って説明する。図3の制御手順は、装置のファームウェアとしてROM104に格納しておくことができる。
【0041】
以上では、便宜上、「ユーザモードの…」と、「工場モードの…」という修飾により、本来の動作を制御する第1モードの制御プログラムと、それ以外の製造/検査/修理工程の動作モードのようにベンダやサービスマンが取り扱う第2モードの制御プログラムを区別した。
【0042】
しかしながら、これら「ユーザモード」、「工場モード」といった修飾により本発明の範囲が必要以上に限定的に解釈されるのを防ぐため、以下では上記のモードはそれぞれ第1のモード、および第2のモードとも記すことにする。たとえば、第2モードの制御プログラムは、必ずしもベンダやサービスマンのためのモードである必要はなく、ユーザが実行させる拡張モードの制御プログラムであってもよい。
【0043】
まず、図3のステップS101でUSBコネクタ108に何らかのUSBデバイスが接続されると、ステップS102およびS104においてバスエニュメレーションによって、接続されたUSBデバイスのデバイスクラスを確認する。
【0044】
ステップS102において、検出されたUSBデバイスのデバイスクラスがスチルイメージクラスであれば、デジタルカメラ(301)と判定してステップS103に進み、第1モードの動作として、ピクトブリッジモードの処理を行なう。ステップS103では、たとえばデジタルカメラに記憶された画像データの記録処理などが行なわれる。
【0045】
また、検出されたUSBデバイスのデバイスクラスがスチルイメージクラスでなければ、ステップS104でマス・ストレージクラスか否かを確認する。ここでデバイスがマス・ストレージクラスでなければ想定外のデバイスが接続されたことを意味するので、ステップS113でたとえばエラー表示を行って終了する。
【0046】
ステップS104で、マス・ストレージクラスのUSBデバイスを検出していれば、第2のモード、すなわち工場モードを実行するための操作と判定して、ステップS105において第2モードへの切り換えを行なう。
【0047】
ステップS106では、USBメモリ401に記憶された第2モード(工場モード)のプログラムファイルを読み出し、RAM103の所定のエリア(図2)にプログラムコードとして展開する。図2の例では、RAM103の100000h番地から順次プログラムコードが記憶される。
【0048】
なお、USBメモリ401に格納しておくプログラムファイルは、既にプログラムコードに展開されたテキストデータ形式のファイルでもよいし、msxファイル形式のCRCチェックデータが付加されたパケット形式のものでもよい。その場合は、ROM104に用意しておいたプログラムによって、単純なプログラムコードに戻してRAMに展開する。
【0049】
ステップS107ではRAM103に展開したデータが、正当なプログラムコードであるか否かを確認する。
【0050】
このための手法としては、ROM104に所定のアドレスに、所定のID値をあらかじめ設定しておき、ステップS106でRAM103に展開したデータの所定のアドレスに書き込まれた値と比較して、その値が所定のID値と一致すれば、プログラムコードであると判断する。
【0051】
たとえば、図2のメモリマップにおいて、2FFFFEh番地と2FFFFFh番地をロードしたプログラムの確認用データアドレスとしておく。そして、正当な第2モードのプログラムの確認用データとしてはそれぞれ「3B」、「4F」の値を2FFFFEh番地と2FFFFFh番地に格納する、という規約にしておく。
【0052】
したがって、ステップS107でこれらアドレスの値がそれぞれ「3B」、「4F」であればプログラムコードと判断して工場モードを実行するが、違った値だった場合はエラー終了する。
【0053】
このように、RAM103上に展開されるID値を照合する処理によれば、極めて容易に制御プログラムの正当性を判定することができる。
【0054】
あるいは(さらに)、USBメモリ401からロードしたプログラムが実行して良い正当なものかどうか確実に判断するため、正当なプログラムコード全体のチェックサムやMD5値を算出し、あらかじめROM104に格納しておいた値と比較するようにしてもよい。
【0055】
なお、実行してよい正当なプログラムコードは単数である必要はなく、複数の種類であってよい。たとえば検品用、メンテナンス用、パワーユーザ用などに複数の第2モードの制御プログラムを用意し、これらの実行を許可するには、上記のようなID値、チェックサムやMD5値は対応するプログラムごとに複数ROM104に記憶させておけばよい。
【0056】
ステップS107で、USBメモリ401からロードしたプログラムが実行すべき(実行してよい)第2モードのプログラムコードであると判断した場合は、ステップS108に進む。ステップS108では、第2モードのプログラムを起動するため、RAM103に展開したプログラムコードの所定のアドレスにジャンプする。この後、インクジェット記憶装置はRAM103に展開された第2モードのプログラムコードにしたがって動作する。
【0057】
ステップS107でプログラムファイルが有効でなければ、間違ったファイルと判断してステップS113に進んでエラー表示を行ない、工場モードには移行せずに終了する。
【0058】
なお、ステップS107でプログラムファイルが有効でない場合は、ステップS113のエラー処理に移行するかわりに単にUSBメモリ401をマス・ストレージデバイスとして、アクセスする処理を行なうようにしてもよい。
【0059】
ただし、単にUSBメモリ401をユーザ用のメモリデバイスとしてインクジェット記憶装置に取り扱わせたい、という目的であれば、USBメモリ401をスチルイメージクラスで実装すればよい。この場合はステップS102〜S103の第1モード(ピクトブリッジモード)でUSBメモリ401を取り扱うことができる。
【0060】
ステップS109では、第2モードの制御プログラムが実行され、これに応じてたとえば作業者によって製造工程に必要な操作が行なわれ、製造工程が進められる。
【0061】
ステップS110では、第2モードの制御プログラムの処理を終了(たとえば全ての製造工程を終了)させるか否かを判断し、インクジェット記録装置は所定の操作によって、ステップS111に進み、第2モードの制御プログラムの終了状態(出荷状態)に移行する。
【0062】
ステップS110の終了検出は、操作部への所定のキー入力の検出により行なってもよいし、あるいは実行すべき作業がすべて終了した時点で自動的に移行するように構成してもよい。また、USBメモリがUSBコネクタ108から抜かれたことを契機として、この終了検出を行なってもよい。
【0063】
第2モードが終了(たとえばインクジェット記録装置の出荷セッティングが完了)したら、ステップS112で電源を遮断する。第2モードが製造工程のものであれば、これにより、装置は直ちに梱包待ちの状態になる。
【0064】
以上のようにして、マス・ストレージデバイスとして実装され、所定の第2モードの制御プログラムを格納したUSBメモリ401を挿入するだけで、他の操作を一切行なうことなく、極めて簡単に第2モードの制御プログラムを実行させることができる。
【0065】
すなわち、ピクトブリッジのためのUSBインターフェースにマス・ストレージデバイス実装のUSBメモリを接続するだけで、他の操作を一切行なうことなく、極めて簡単に電子機器を第2モードに移行させることができる。
【0066】
したがって、たとえば第2モードが工場モードの制御プログラムであるならば、特殊な操作により第2モードを起動する必要がなく、製造工程の作業(あるいは検査/修理の作業)は極めて容易になる。
【0067】
本実施例によれば、ROM104中に第2モードの制御プログラムを格納しておく必要がないから、この分、ROM104のメモリ容量を節減でき、製造コストを低減できる。
【0068】
なお、上記実施例ではUSBメモリに記憶したデータがプログラムコードであるか否かを判定するために、ステップS107ではRAMに展開したデータの所定のアドレスデータを確認した。しかし、ステップS106でUSBメモリからファイルを読み出す前に、USBメモリに記憶されたファイル形式が、プログラムコードを記憶したファイル形式か否かで判定するようにしてもよい。多くの実行形式のプログラムファイルはその先頭部分などが、ある一定の形式で構成されている(たとえば所定のマジックデータを含む、など)ため、このような構成により実行してよい正当なプログラムか否かを判定してもよい。
【0069】
また、本実施例では、ピクトブリッジのためのUSBインターフェースにマス・ストレージデバイス実装のUSBメモリを接続すること自体が工場モードへの移行指令を意味している。このため、ユーザ環境で他の用途のマス・ストレージデバイスの接続を一切想定しなくてよい、という製品仕様であればステップS107の確認シーケンスを省略してしまう構成も考えられる。すなわち、本実施例ではUSB通信上必須な情報のみを用いて極めて容易に工場モードへの移行を決定することができる。
【0070】
さらに、本実施例では、USBインターフェース(USBホストコントローラ105〜USBコネクタ108)に関して実装しておくUSB通信ドライバも、スチルイメージクラスとマス・ストレージクラスのみに対応すればよいので、USBドライバソフトウェアが簡単になる。
【0071】
さらに、第2モード(たとえば工場モード)の制御プログラムに変更があったとしても、ユーザモードのプログラムメモリに影響を及ぼすことなく、第2モードの制御プログラムだけを変更できる。
【0072】
また、第2モードの制御プログラムはRAM103に展開されるので、電源を遮断すればRAM103から自動的に消去されるためユーザモードには全く影響しない。
【0073】
なお、本実施例では、ピクトブリッジモードか工場モードかの判定を、デバイスクラスによって行っているが、デバイスディスクリプタの他の情報、たとえばデバイスタイプによって判定してもよい。
【0074】
また、上記の実施例では、第2モードは工場モードに限って説明してきたが、第2モードはユーザモードとは異なる動作をさせる場合にはすべてにおいて有効で、たとえば装置の保守点検用の制御プログラムを用意してUSBメモリに記憶させておけば、市場においてサービスマンが簡単に保守点検を行なうことができるし、保守点検に必要なプログラムもユーザモードプログラムから削除することができる。もちろん、第2モードはパワーユーザのための拡張プログラムにより制御される動作モードであってもよい。
【0075】
また、USBメモリ401に格納しておく第2モードの制御プログラムを用いて、図3に示した制御手順を含みROM104に格納された機器のファームウェアをアップデートできるように構成することもできる。
【0076】
このためには、図3の制御手順を含む機器のファームウェアのバイナリイメージと、このバイナリイメージをROM(当然この場合フラッシュメモリから構成する)104の所定領域に書き込む書き込みプログラムから第2モードの制御プログラムを構成し、USBメモリ401を装着した時、上記書き込みプログラムを第2モードの制御プログラムとして起動することにより、ROM104に格納された機器のファームウェアをアップデートすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は電子機器製品の名称などによって限定を受けることなく、第1の制御プログラムにより制御される第1の動作モードにおいて、第1のデバイスクラスのUSBデバイスの接続に用いられるUSBインターフェースを有する電子機器において実施することができる。本発明の制御プログラム、特に図3の制御プログラムは前述のようにファームウェアとしてROMに格納しておく他、電子機器がネットワークインターフェースを有していれば、任意のサーバからネットワーク経由で供給することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明を採用したインクジェット記録装置の要部構成を示したブロック図である。
【図2】図1のRAMのプログラム展開領域の例を示したメモリマップ図である。
【図3】図1のインクジェット記録装置の制御手順を示したフローチャート図である。
【符号の説明】
【0079】
101 インクジェット記録装置
102 CPU
103 RAM
104 ROM(不揮発性メモリ/フラッシュメモリ)
105 USBホストコントローラ
106 USBデバイスコントローラ
107 システムバス
108 USBコネクタ(Type−A、ピクトブリッジインターフェース)
109 USBコネクタ(Type−B)
201 PC
202 USBケーブル
301 デジタルカメラ
401 USBメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の制御プログラムにより制御される第1の動作モードにおいて、第1のデバイスクラスのUSBデバイスの接続に用いられるUSBインターフェースを有する電子機器の制御方法において、
前記USBインターフェースに前記第1のデバイスクラスと異なる第2のデバイスクラスのUSBデバイスが接続された時、このデバイス接続操作を前記第1の動作モードと異なる第2の動作モードの起動指令とみなして、前記USBデバイスから第2の動作モードを制御する第2の制御プログラムを読み出し、前記第2の制御プログラムを記憶手段に記憶させ、実行することにより前記第2の動作モードを起動することを特徴とする電子機器の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器の制御方法において、前記第1のデバイスクラスがスチルイメージクラス、前記第2のデバイスクラスがマス・ストレージクラスであることを特徴とする電子機器の制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の電子機器の制御方法において、前記USBデバイスに記憶された制御プログラムが正当な第2の制御プログラムであるか否かを照合する手段を有し、前記USBデバイスに記憶された制御プログラムが正当な第2の制御プログラムである場合のみ前記USBデバイスに記憶された制御プログラムを第2の制御プログラムとして記憶手段に記憶させ、実行することを特徴とする電子機器の制御方法。
【請求項4】
請求項1に記載の電子機器の制御方法において、前記第1の動作モードが機器本来の動作を実行するユーザモードであり、前記第2の動作モードが製造、検査、検品、あるいは修理工程において作業者を支援する工場モードであることを特徴とする電子機器の制御方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電子機器の制御方法を実施する制御ソフトウェアを含むことを特徴とする電子機器の制御プログラム。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電子機器の制御方法を実施するハードウェアを含むことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電子機器の制御方法を実施するハードウェアとして、前記第1の動作モードにおいてスチルイメージクラスのUSBデバイスが接続され、前記第2の動作モードにおいてマス・ストレージクラスのUSBメモリが接続される前記USBインターフェースを有し、前記第1の動作モードにおいて接続されたUSBデバイス中の画像データを記録出力することを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−172391(P2007−172391A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−370735(P2005−370735)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】