説明

電子機器及びナビゲーション方法

【課題】 撮影したい訪問場所を巡る複数のコース(撮影コース)が予め分かっている場合には、その訪問場所とISPの通信エリアを考慮した、撮影に適した撮影コースを求める電子機器及びナビゲーション方法を提供する。
【解決手段】 所定の通信手段による通信が可能な範囲を示す通信エリア情報を取得し、順路内の前後の地点を結ぶそれぞれの経路が、通信エリア情報が示す通信エリアの範囲内に含まれるか否かに基づいて通信が可能となる順路毎の期待度を求め、この期待度に基づき複数の順路を順位付けして表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持ち運びが可能な撮像機能を備えた電子機器に関し、特に撮影済みの情報を、ネットワークを介して外部の装置に記録する電子機器及び撮影コースについてのナビゲーションにかかる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子技術の進歩により、小型、軽量で旅先でもプライベートな動画像を手軽に撮影できる機器が市販されている。また、映像記録の方式が高圧縮されたデジタル信号化されることで、ビデオテープや磁気ディスク装置(HDD)といった稼動部を持たない耐衝撃性の高い半導体メモリに置き換えることさえ可能となってきている。
【0003】
半導体メモリとしては不揮発性のフラッシュメモリを使用することが考えられる。反面、記憶容量あたりの単価は従来の記憶装置よりはまだまだ高価であり、搭載できる記憶容量に制限がある。
【0004】
このため、従来では内蔵する記憶媒体の残容量を確保するべく外部のサーバと通信できるときには撮影済みのデータをそのサーバに転送するようにしたデジタルビデオカメラが提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−67916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
撮影済みのデータを外部のサーバに転送することで内蔵する記憶媒体の残容量を確保することができるが、旅先などの移動を伴う場合には常に外部のサーバにアクセスできるとは限らない。一般利用者に提供されている、たとえばインターネットといったネットワークへの接続は、インターネット接続サービスを提供する通信事業者(ISP:Internet Service Provider)の無線接続サービスを活用しても、未だ接続不可能な地域が存在するためである。通信ができない時間が長引けば、撮影したいときに残容量不足を引き起こす可能性が高まる。他方で、ISPなどが提供するインターネット接続サービスの場合には、接続可能な地域(通信エリア)が予め公表されていることが多い。
【0007】
本願発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、撮影したい訪問場所を巡る複数のコース(撮影コース)が予め分かっている場合には、その訪問場所とISPの通信エリアを考慮した、撮影に適した撮影コースを求める電子機器及びナビゲーション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明にかかる電子機器とすれば、
出発地点から到着地点に至る経路内において、所定の通信手段によって通信できる期待度を求める電子機器であって、記憶手段と、前記記憶手段に記憶された、前記通信手段による通信が可能な範囲を示す通信エリア情報を含む通信可能エリア情報テーブルと、前記記憶手段に記憶された、前記出発地点及び前記到着地点の座標と、その経路内における経由地の座標を1つの順路として記憶する地点情報テーブルと、前記通信可能エリア情報テーブルに記憶された通信エリア情報と、前記地点情報テーブルに記憶された座標情報から、前記順路内の前後の地点を結ぶそれぞれの経路が前記通信エリアの範囲内に含まれるか否かに基づいて、前記通信手段による通信が可能となる前記順路の期待度を求める評価手段とを備えることを特徴とする電子機器が提供される。
【0009】
また、本願発明にかかるナビゲーション方法は、
所定の通信手段を用いるとき、出発地点から経由地を経て到着地点に至る複数の順路について順位付けする方法であって、前記通信手段による通信が可能な範囲を示す通信エリア情報を取得し、前記順路における該順路内の前後の地点を結ぶそれぞれの経路が、前記通信エリア情報が示す通信エリアの範囲内に含まれるか否かに基づいて、前記通信手段による通信が可能となる前記順路の期待度を求め、前記期待度に基づき、前記複数の順路を順位付けすることを特徴とする
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、撮影したい訪問場所を巡る複数の撮影コースの中から、その訪問場所とISPの通信エリアを考慮した、撮影に適した撮影コースを求める電子機器及びナビゲーション方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態にかかる撮影システムの一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる電子機器のブロック構成図の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる通信可能エリア管理テーブルの一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる撮影地点管理テーブルの一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態にかかる座標データの一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態にかかる現在地表示画面の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態にかかる撮影コースの地点セットの一例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態にかかる交差条件の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態にかかる撮影コースの評価値計算処理フローの一例を示す図である。
【図10】本発明の実施形態にかかる撮影コースの評価計算処理フローの一例を示す図である。
【図11】本発明の実施形態にかかるコース評価値表示の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる撮影システムの詳細について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態にかかる撮影システムの一例を示す図である。図1には、電子機器100、基地局101a、101b、インターネット102及びサーバ103が示されている。
【0014】
電子機器100は、たとえばデジタルビデオカメラ(DVC)であり、内蔵する撮像素子とマイクによって映像と音声を取得し、デジタル化した動画像を記録することができる。また、ネットワークを介して他の電子機器と通信する機能も備えている。本実施例では電子機器100をデジタルビデオカメラとして以降説明するが、ネットワークを介して他の電子機器とデータを送受信可能な電子機器であれば本発明を適応可能である。
【0015】
基地局101a、及び101bは、電波を通信媒体とし電子機器100と通信する通信事業者が設置した中継局群である。通常、無線を通信媒体とするISPは各所に基地局101を設置し、その基地局101の周囲に利用者が使用できる通信エリアを提供する。しかしながらさまざまな事情により基地局101によって形成される通信エリアに含まれない地域も少なからず存在する。たとえば自然が豊富な景勝地などは、人里から離れた山奥で人口が少なく基地局101を設置しても投資効果が薄いことや、また山がちな地形により基地局101が建設できず通信エリアが設け難いことが多い。
【0016】
本実施形態では常に移動しながらデータ通信することを考慮して広範囲をカバーする無線を通信媒体とした通信を想定している。あるいは旅先で通信のために所定の場所に立ち寄ることが可能であるならば、たとえばインターネット利用が可能な有線ネットワークであって、その接続ポートが設置された地点を中心とした通信エリアを想定しても良いし、Bluetooth(登録商標)のような近距離通信を媒体とした狭い範囲を通信エリアとしても良い。
【0017】
インターネット102は、基地局101を設置したISPが電子機器100を接続する世界的に構築された公衆ネットワークを示す。
【0018】
サーバ103は、ISPあるいはそれ以外が提供するファイルサーバであり電子機器100から転送されるデジタル化された撮影データを記録する機能を有する。
【0019】
図2は、本発明の実施形態にかかる電子機器100のブロック構成図の一例を示す図である。図2には、撮像素子200、マイク201、AD変換部202、映像音声処理部203、制御部204、測位部205、記憶部206、地図生成部207、表示部208、タッチセンサ209、入力部210、撮影地点編集部211、評価部212、評価結果作成部213、バス214、アンテナ215及び通信部216が示されている。
【0020】
撮像素子200は、たとえばCCDが考えられる。入射した光を電気信号に変換する機能を有する。
【0021】
マイク201は、周囲の音声を拾い電気信号に変換する機能を有する。
【0022】
AD変換部202は、撮像素子200やマイク201の電気信号をデジタルデータに変換する機能を有する。
【0023】
映像音声処理部203は、AD変換部202で変換されたデジタルデータの圧縮や符号化をする機能を有する。ここでの圧縮、符号化とは、動画像の記録に一般的に使用される、たとえばMPEG-2、MPEG-4といった形式への変換を想定している。
【0024】
制御部204は、電子機器100を構成する各構成部を統括的に制御する機能を有する。一例として、CPU(Central Processing Unit)、処理プログラムを記録したROM(Read Only Memory)、及び一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)などから構成される。
【0025】
測位部205は、たとえばGPS(全地球測位システム:Global Positioning System)を用いて電子機器100の置かれた場所を取得する機能を有する。GPSで取得できる位置情報は一般に北緯と東経で得られるが、本実施形態では簡略化のためXY座標系で表現することとする。測位部205による位置の特定にはGPS以外にも携帯電話の基地局情報やITS(高度道路交通システム)などから取得するようにしても良い。
【0026】
記憶部206は、フラッシュメモリといった不揮発性の半導体メモリにより構成される。たとえばHDDとの置き換えが容易なSSD(Solid State Drive)を用いることができ、これはHDDなどと比較してディスクやヘッドの稼動部を持たず耐衝撃性に優れるうえ消費電力も低く抑えることができる。こういった性質から持ち運びを前提とした機器には有利である反面、容量あたりの単価はHDDなどよりも高価であり大容量化は難しい一面がある。記憶部206には撮像素子200やマイク201で取得しAD変換部202、映像音声処理部203を経て符号化された撮影データが記録される。動画像の撮影データは比較的大容量のデータであるから、記憶容量が大きいほうが記録時間を長時間確保する上では望ましい。
【0027】
さらに記憶部206には、地図データ、通信可能エリア管理テーブル及び撮影地点管理テーブルも格納される。各テーブルの詳細については後述する。
【0028】
地図生成部207は、記憶部206に記憶された地図データを基に一定範囲の地図画像を生成する機能を有する。生成する地図の範囲は測位部205で取得した現在位置や、利用者が指定した地点、縮尺、及びスクロールの指示によって決定される。なお、地図画像の生成に要する地図データは、全てが記憶部206に格納されている必要は無く、必要に応じてISPが提供する通信サービスを介して外部のサーバから適宜取得するように構成しても良い。このように構成すると、記憶部206の記憶済み容量を削減し、より長時間にわたって撮影することができる。
【0029】
表示部208は、電子機器100の外部に向かって露出するように載置され、利用者に対し撮影中の画像や地図画像及びGUI(Graphic User Interface)といったさまざまな情報を表示する機能を有する。本実施形態においては、低消費電力、薄型化に有利な、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)で構成される。
【0030】
タッチセンサ209は、表示部208の表面に載置された接触検出型の透明なフィルム状のセンサーである。利用者は表示部208の画面を見ながら、そこに表示されたGUI画像を指で触れることで種々の指示を入力することができる。
【0031】
入力部210は、タッチセンサ209で検出した利用者の接触した位置の情報を取得し、表示部208に表示された画像と対応させることで利用者の操作を判定し、それを制御部204に伝送する機能を有する。
【0032】
撮影地点編集部211は、景勝地など撮影したいと思う地点を記憶した撮影地点管理テーブルの内容を編集する機能を有する。撮影地点管理テーブルの地点情報の入力は表示部208上に表示した地図画像の所望の場所を指で触れることで指定できる。また、すでに記憶済みの撮影コースを呼び出したり、コースの一部に撮影地点を追加、削除、あるいは置き換えるGUIも提供する。
【0033】
評価部212は、記憶部206の撮影地点管理テーブルに記憶した各撮影コースについて、同じく記憶部206に記憶した通信エリア管理テーブルの情報からそれぞれの評価値を求める機能を有する。ここでいう評価値とは、それぞれの撮影コースを回るときにサーバ103とどれだけ通信可能状態が確保できるかを示すデータ転送期待値のことである。この評価値が高いほど記憶部206に記憶済みの撮影データをサーバ103に転送する機会がより多く得られると判断することができる。評価値が高いということは、記憶部206の残容量が少なくなった場合でも適宜サーバ103をアクセスして撮影データを転送し、次の撮影地点で記憶部206の記憶容量を超える(オーバーフロー)ことが無いように備えることができることを意味する。評価値の求め方については後述する。
【0034】
評価結果作成部213は、評価部212で求めた評価値に基づいて、評価値の高い撮影コース順に並べた表示用フォーマットを作成する機能を有する。作成したフォーマットは表示部208上に表示される。
【0035】
バス214は、電子機器100の各構成部を接続する共通バスである。各構成部間で入出力データやアドレス情報及びさまざまな制御情報をやり取りする機能を有する。
【0036】
アンテナ215は、基地局101と通信するためのアンテナである。
【0037】
通信部216は、アンテナ215を介して基地局101と通信するとともに、サーバ103に対し撮影データを送信する機能を有している。通信部216は適宜、あるいは制御部204の指示によりサーバ103とのアクセス状況を検知し、制御部204の指示により記憶部206に記憶済みの撮影データを転送する。無事に転送された撮影データは、記憶部206の残容量を確保するために、制御部204により削除される。
【0038】
図3は、本発明の実施形態にかかる通信可能エリア管理テーブルの一例を示す図である。通信可能エリア管理テーブル300は記憶部206に格納されているテーブルであり、予め利用者により入力、あるいはISPを介してインターネット上のサーバから取得する。
【0039】
本実施形態では無線を通信媒体とした通信エリアを想定しているため、このテーブルは基地局の識別(アンテナID)に対する中心座標R、及び基地局の座標を中心とした通信半径を示す半径rによって表される。中心座標RはXY座標系で表現され、それぞれα、βとして記録される。図3では、(α、β)がそれぞれ(9.0、5.0)、(2.0、4.0)の位置に設置された2つの基地局の例を示している。
【0040】
図4は、本発明の実施形態にかかる撮影地点管理テーブルの一例を示す図である。撮影地点管理テーブル400は記憶部206に格納されているテーブルであり、利用者が表示部208に表示されたGUIを操作することで撮影地点編集部211により編集される。
【0041】
縦軸には撮影コースの識別を示すコースID、横軸にはそれぞれのコースIDに対する評価値EcT、及び撮影地点のXY座標系で表された撮影地点座標Px(x=0,1,2,…)が記録される。撮影コースの撮影地点が増えると、横軸方向に拡張してゆく。図4では2つの撮影コースと、それぞれ3つの撮影地点から構成されている例が示されている。
【0042】
図5は、本発明の実施形態にかかる座標データの一例を示す図である。図5では、記憶部206に記憶された地図データの地図画像イメージと、図3に例示した通信可能エリア管理テーブル300の座標情報、及び図4に例示した撮影地点管理テーブル400の座標情報を1つのXY座標系にプロットしたイメージを示している。図5に図示するように、基地局がカバーする通信エリア(アンテナ#0、#1)が、それぞれの撮影コースの移動ルートに対し限定された時間しかサーバ103にアクセスすることができないことがわかる。このような状況の下で、どちらの撮影コースがオーバーフローを起こす危険が少なく回れるかをデータ転送期待値という評価値に基づいてナビゲーションするのが本発明の主な課題である。
【0043】
図6は、本発明の実施形態にかかる現在地表示画面の一例を示す図である。この画面イメージは、現在いる地点を基にナビゲーション用の初期画面を構成するときの、表示部208の表示内容の一例を示している。
【0044】
まず表示部208に表示されたGUIの[現在地表示ボタン]を指で触ると、制御部204は測位部205から現在地(lx、ly)を測位する。本実施形態では(3.0、1.0)とする。
【0045】
次に、制御部204は(lx、ly)と地図作成エリア設定(xsize、ysize)情報を地図生成部207へ送り該当する範囲の地図画像を生成する。(lx、ly)を基点とした表示部208に表示する周辺地図を生成する際には、記憶部206に記憶されている通信エリア管理テーブル300から基地局情報を読み出し、地図上に併せて合成する。なお、利用者の便宜上、周辺地図はスクロールバーでスクロール可能に表示される。また、地図生成時には利用者が縮尺を指定できるようにしても良い。
【0046】
図7は、本発明の実施形態にかかる撮影コースの地点セットの一例を示す図である。図7(a)、(b)はぞれぞれ図5に示すコース#0、#1の入力に対応している。
【0047】
地点入力は撮影地点編集部211が行う。表示部208に表示された周辺地図上で撮影したい地点を指で触ると、マーク(○)が出現し、それが所望の地点であれば[地点セットボタン]を押す。初回の地点登録時には、撮影地点管理テーブル400が作成され、現在地点(3.0、1.0)が自動的に登録される。[地点セットボタン]を押すことにより、撮影地点管理テーブル400に撮影地点(6.0、1.0)が1つ追加登録される。周辺地図の上で、引き続き撮影地点(12.0、6.0)を地点登録した後、[コースセットボタン]を押すと、撮影コース(ここではコースID=0)が1つ登録されたことになる。
【0048】
再び[コースセットボタン]を押すとコースIDがインクリメントされ、以降の地点登録は2番目の撮影コース(コースID=1)の地点登録となる。
【0049】
図8は、本発明の実施形態にかかる交差条件の一例を示す図である。図8では2つの交差条件が示されている。ここで言う交差条件とは、ある撮影コースについて、ある基地局と通信可能か否かを期待値として判定するための条件を指す。
【0050】
1つの基地局に関する撮影コースの評価は撮影地点を結ぶ線分(パスと呼ぶ)が、基地局の通信エリアを示す円周R(半径r)で切り取られた線分の長さ(距離)RLに重み係数Wを乗じた結果の総和で計算する。
【0051】

各撮影コースの評価値(基地局毎) Ec = Σ Wn * RLn … nは各コースを構成するパスの番号(n=0,1,2,3…)

なお、一般に撮影コースは、複数の基地局の通信エリアを横切るので、各撮影コース全体の評価値EcTは、全部の基地局について、Ecを加算したものである。評価値EcTは撮影地点管理テーブル400の評価値EcT欄に記憶する。
【0052】
ただし、本実施形態では簡単のため、2つの撮影地点(始点Pと終点Q)を結ぶ線分と、通信エリアの中心座標Rとの距離Dの差L(=r-D、D>rのときはゼロ)でRLを代用する。また、簡単のため、始点Pと終点Qは共に各基地局の通信エリア内には存在しないものとする。また本実施形態では、同じく簡単のため、各パスの重みWnは一律“1”とする。
【0053】
すなわち、

各撮影コースの評価値(個別基地局) Ec = Σ Ln … nは各コースを構成するパスの番号(n=0,1,2,3…)

とする。
【0054】
パスnに対するLnの計算は2段階の交差判定の後に行う。パスPQ(線分)と円周Rが交差するためには、△QPRの角度θ1と△PQRの角度θ2が共に90°よりも鋭角でなければならない(交差条件1)。この条件を満足したときに、PQを通る直線とRの距離Dを計算して、Dがrよりも小さくなければならない(交差条件2)。交差条件1と2が共に成立したときに、r−Dを計算してLとする。(L=r-D)逆にDがrよりも大きいときは、パスPQが円周Rの外部にある、すなわち、パスnは通信エリア内を通らないものとしてL=0とする。
【0055】
パスの始点をP(x1,y1)、パスの終点をQ(x2,y2)、通信エリアの中心座標をR(α,β)とすれば、交差条件1は「PQベクトルとPRベクトルの内積>0かつQPベクトルとQRベクトルの内積>0」となり、具体的には、

(x2-x1)(α-x1)+(y2-y1)(β-y1)>0
(x1-x2)(α-x2)+(y1-y2)(β-y2)>0

を満足すればよい。
【0056】
もしも交差条件1を満足したら、次に、交差条件2を求める。まず、2点PQを通る直線をax+by+c=0の方程式で表現すると、

a=(y2-y1) b=(x1-x2) c=(x2y1-x1y2)

となる。次に円の中心と上記直線の距離Dは

Dn=ABS(a*α+b*β+c)/SQRT(a^2+b^2) …ABS()は絶対値を求める関数、SQRT()は平方根を求める関数

で求まる。
【0057】
距離Dが求まれば、Lは以下の式で求まる。
【0058】

Ln=r-D … D<=rの場合
Ln=0 … D>rの場合

以上の計算で、全ての基地局について、各撮影コース(全部のパス)について、Lnを求めて加算すれば、EcTを求めることができる。
【0059】
図9及び図10は、本発明の実施形態にかかる撮影コースの評価値計算処理フローの一例を示す図である。
【0060】
まず、評価部212は通信可能エリア管理テーブル300から最初の基地局の情報を取得する(ステップS01)。つぎに撮影地点管理テーブル400から最初の撮影コースの情報を取得する(ステップS02)。さらに取得した撮影コースの最初の撮影地点と次の撮影地点間の線分(パス)を取得し(ステップS03)、そのパスの始点P、終点Qの座標を取得する(ステップS04)。
【0061】
次に、求めたP、Q及び基地局の座標(α、β)を基にそれぞれのベクトルの内積PR1、PR2を計算する(ステップS05)。
【0062】
内積PR1及び内積PR2が共にゼロ以上か否かを判定し(ステップS06)、どちらかでもゼロであればこのパスは通信エリアを通らないと判断し、次のパスを取得する(ステップS03)。共にゼロ以上の場合には、ステップS07を処理する。
【0063】
ステップS07では、直線PQと基地局Rの中心座標(α、β)からの距離Dを計算し、これを用いてその基地局の半径rとの差分(L = r - D)を計算する(ステップS08)。求めたLがゼロより大きい場合には撮影地点管理テーブル400の該当する撮影コースの評価値EcTに差分Lを加算する(ステップS10)。
【0064】
次にパスが残っていたら次のパスを取得する(ステップS11)が、これが最後のパスであり、かつ次の撮影コースがあれば次の撮影コースを取得する(ステップS12)のだが、さらにこれが最後の撮影コースであり、かつ次の基地局がある場合には次の基地局を取得する(ステップS13)。
【0065】
全ての基地局情報について評価値を計算したならば一連の処理を終了する。
【0066】
図11は、本発明の実施形態にかかるコース評価値表示の一例を示す図である。図11では、各撮影コースが1つの周辺地図画面に表示されると共に、コースIDと、評価部212で求めた評価値と、評価値から判定したお勧め順位などの情報を含む表示用フォーマットが合成された周辺画像を示している。この画像は評価結果作成部213が作成する。
【0067】
評価結果作成部213は制御部204から評価結果作成指示を受けると、撮影地点管理テーブル400からコースIDとその評価値EcTを読み出す。次に評価値EcTの高い順にコースIDを並び替えて、コースIDと評価値を含むお勧めテーブルを作成する。本実施形態ではコースID=0が一番高く、次がID=1であるため、お勧めの1番目はコースID=0の撮影コース、次がID=1の撮影コースとなる。
【0068】
このように構成すると、利用者はこのお勧め情報を参照することで内蔵メモリのオーバーフローを避けるべく、メモリの残容量に対する負荷が少ない撮影コースを選択することが可能となる。
【0069】
本実施形態では、簡単のため、評価値計算時の重み付けWnを一律“1”として説明したが、撮影コースの何番目のパスに通信可能領域があるかによって重み付けを変えても良い。たとえば、撮影コースのパスの1箇所のみに通信可能領域であった場合、撮影コースの最初にあれば撮影の後半でオーバーフローが起きる可能性があり、また、後半であれば通信可能領域に到達する前にオーバーフローが起きる可能性がある。このことから、撮影コースの中盤に通信可能領域があるほうが望ましい。すなわち、撮影の中盤の重みが高く、前半と後半になるほど重みが低くなるようにWnを分散させることが考えられる。また、たとえば、撮影コースのパスの複数個所に通信可能領域があった場合、集中するよりも、撮影コース全体に分散して存在するほうが、オーバーフローが起きる可能性が低いと考えられる。そこで、撮影コースにおける通信可能領域の分散度合いに応じてWnを決定しても良い。さらに、上記を組み合わせてWnを計算してもかまわない。
【0070】
さらに本実施形態では、簡単のため、通信エリアを円、撮影コースも直線で表現したが、通信エリアを球面、コースを3次元の自由曲線という3次元の要素に拡張してもかまわない。その際には、地形や建造物の電波妨害を考慮するようにしても良い。
【0071】
また本実施形態では、評価値Ecを、通信エリアの中心座標からパスを示す線分までの距離を基に計算したが、徒歩や自動車といった移動手段を指定して、利用者が入力した撮影コースを移動した場合の通信エリアの通過時間を予測して、評価値を計算してもよい。
【0072】
また本実施形態では、撮影機能を有するモバイルデジタル機器への適用を例示して説明したが、撮像機能を有する携帯電話のようなその他機器への適用も考えられる。
【0073】
また本実施形態では、簡単のため、通信インターフェースは1つの規格のネットワークしか使用しない例で説明したが、たとえば、複数の通信エリアと通信速度が異なる2つ以上のネットワークが利用可能な場合には、どちらのネットワークを使用するかを含め総合的に評価値を計算し、撮影コースを評価するようにしてもよい。
【0074】
また本実施形態では、撮影地点を最短コース、すなわち直線コースで結んだが、広く公知の技術であるナビゲーションシステムを利用して、移動可能な実際の道路や線路をパスと見なして、評価値を計算することも考えられる。
【0075】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0076】
100・・・電子機器、101・・・基地局、102・・・インターネット、103・・・サーバ、200・・・撮像素子、201・・・マイク、202・・・AD変換部、203・・・映像音声処理部、204・・・制御部、205・・・測位部、206・・・記憶部、207・・・地図生成部、208・・・表示部、209・・・タッチセンサ、210・・・入力部、211・・・撮影地点編集部、212・・・評価部、213・・・評価結果作成部、214・・・バス、215・・・アンテナ、216・・・通信部、300・・・通信可能エリア管理テーブル、400・・・撮影地点管理テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発地点から到着地点に至る経路内において、所定の通信手段によって通信できる期待度を求める電子機器であって、
記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された、前記通信手段による通信が可能な範囲を示す通信エリア情報を含む通信可能エリア情報テーブルと、
前記記憶手段に記憶された、前記出発地点及び前記到着地点の座標と、その経路内における経由地の座標を1つの順路として記憶する地点情報テーブルと、
前記通信可能エリア情報テーブルに記憶された通信エリア情報と、前記地点情報テーブルに記憶された座標情報から、前記順路内の前後の地点を結ぶそれぞれの経路が前記通信エリアの範囲内に含まれるか否かに基づいて、前記通信手段による通信が可能となる前記順路の期待度を求める評価手段と
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記電子機器はさらに、
前記地点情報テーブルに含まれる複数の順路について、前記評価手段で求めた期待度の高い順に並べた評価結果を作成する評価結果作成手段を
備えることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記評価手段は、前記期待度を求めるとき、前記経路と前記通信エリアの中心との距離が近いほど高い期待度を与えることを特徴とする、請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記評価手段は、前記経路に対し、その経路が含まれる前記順路の状況に応じて評価重みを変更することを特徴とする、請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
所定の通信手段を用いるとき、出発地点から経由地を経て到着地点に至る複数の順路について順位付けする方法であって、
前記通信手段による通信が可能な範囲を示す通信エリア情報を取得し、
前記順路における該順路内の前後の地点を結ぶそれぞれの経路が、前記通信エリア情報が示す通信エリアの範囲内に含まれるか否かに基づいて、前記通信手段による通信が可能となる前記順路の期待度を求め、
前記期待度に基づき、前記複数の順路を順位付けする
ことを特徴とするナビゲーション方法。
【請求項6】
前記期待度を求める際、前記経路と前記通信エリアの中心との距離が近いほど高い期待度を与えることを特徴とする、請求項5に記載のナビゲーション方法。
【請求項7】
前記期待度を求める際、前記経路に対し、その経路が含まれる前記順路の状況に応じて評価重みを変更することを特徴とする、請求項5に記載のナビゲーション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−215033(P2011−215033A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84359(P2010−84359)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】