説明

電子機器及び配線の製造方法

【課題】筐体の小型化を図りつつ、筐体内部を防水する。
【解決手段】基板50,52を内部に有する筐体10,20と、筐体の外部から引き込まれ、基板に接続される樹脂シースケーブル42と、筐体の内部と外部との境界部分において、筐体と樹脂シースケーブルとの間を埋めるように設けられるパッキン46a,46bと、を備え、樹脂シースケーブルは、導体部と当該導体部を被覆する常用耐熱温度が第1の温度である樹脂絶縁部とを有する複数本の電線44と、常用耐熱温度が第1の温度よりも低い第2の温度であり、複数本の電線を束ねた状態で被覆する熱可塑性樹脂材料45と、を有しており、樹脂シースケーブルの、筐体の内部と外部との境界部分に位置する部分が、断面偏平形状となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、電子機器及び配線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などの情報端末においては、携帯性、操作性、表示の見やすさなどの理由から、ディスプレイ部を有する筐体を、キーボード部を有する筐体に対してスライド及び/又は回転可能とする技術が出現してきている。このような情報端末として、特許文献1のような情報端末が挙げられる。
【0003】
このような位置・姿勢が相対的に変化する2つの筐体間を電気的に接続する場合、ケーブル(複数本の細い電線を束ねたもの)や、フレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuits)が比較的多く用いられる。
【0004】
FPCは、一般的に動きの自由度が小さいため、2つの筐体の位置・姿勢変化が複雑な場合には、採用できない可能性が高い。したがって、複雑な動きをする携帯端末では、2つの筐体をケーブルで接続することが多い。
【0005】
最近では、情報端末に防水機能が設けられることが多く、上記のような複雑な動きをする情報端末にも防水機能が設けられつつある。従来において、筐体内部に外部からケーブルを導入する場合、ケーブルを管状のチューブに通し、当該チューブの外周部の、筐体への導入部分にOリング付きカラー(collar)部品を設けることで、筐体内とケーブルを防水していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−65465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記防水方法を採用した場合、ケーブルをチューブに通し、かつチューブの外周部にOリング付きカラー部品を設けるため、カラー部品の径が大きくなり、結果的に、情報端末が大型化するおそれがあった。
【0008】
一方、最近では、管状チューブとカラー部品を用いる防水方法に代えて、複数本(例えば14本)の電線(直径0.2mm程度)を樹脂で被覆した樹脂シースケーブルを用いる防水方法も提案されている。この方法では、樹脂シースケーブルが筐体に導入される部分において、樹脂シースケーブルと筐体との間の隙間をパッキンで防水する方法が採用される。この場合のパッキンとしては、例えば、樹脂シースケーブルを挟む板状の樹脂を用いることができる。
【0009】
しかるに、樹脂シースケーブルとパッキンを用いる方法であっても、パッキンがないものに比べてパッキンの分だけ筐体の厚さが増加してしまう。また、厚みを減少させるためにパッキンを強く押さえると、パッキンとして軟質のパッキンを用いた場合には、外力によりパッキンが損傷するおそれがある。また、パッキンとして硬質のパッキンを用いた場合には、パッキンの損傷は防げるものの、樹脂シースケーブルが有する電線が外力のために変形や損傷してしまうおそれがある。
【0010】
そこで本件は上記の課題に鑑みてなされたものであり、筐体の小型化を図りつつ筐体内部を防水することが可能な電子機器、及び断線や電気的特性の変化の少ない配線を製造することが可能な配線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書に記載の電子機器は、電子部品を内部に有する筐体と、前記筐体の外部から引き込まれ、前記筐体の内部に設けられた電子部品に接続される配線と、前記筐体の内部と外部との境界部分において、前記筐体と前記配線との間を埋めるように設けられるパッキンと、を備え、前記配線は、導体部と当該導体部を被覆する常用耐熱温度が第1の温度である絶縁部とを有する複数本の電線と、常用耐熱温度が前記第1の温度よりも低い第2の温度であり、前記複数本の電線を束ねた状態で被覆する被覆部と、を有しており、前記配線の、前記筐体の内部と外部との境界部分に位置する部分が、断面偏平形状である電子機器である。
【0012】
本明細書に記載の配線の製造方法は、導体部と当該導体部を被覆する常用耐熱温度が第1の温度である絶縁部とを有する複数本の電線と、常用耐熱温度が前記第1の温度よりも低い第2の温度であり、前記複数本の電線を束ねた状態で被覆する被覆部と、を有する配線材料を用意する工程と、前記配線材料の少なくとも一部を、前記第2の温度よりも高く、前記第1の温度よりも低い温度で加熱する工程と、前記加熱した部分を加圧して前記配線材料の少なくとも一部を断面偏平形状とする工程と、を含む配線の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本明細書に記載の電子機器は、筐体の小型化を図りつつ筐体内部を防水することができるという効果を奏する。また、本明細書に記載の配線の製造方法は、断線や電気的特性の変化が抑制された配線を製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態に係る携帯電話を概略的に示す斜視図である。
【図2】図2(a)〜図2(c)は、第2筐体の動きを説明するための図である。
【図3】第1筐体と第2筐体とを接続する配線群を示す図である。
【図4】配線群の構成、及び配線群の第1筐体及び第2筐体への導入状態を模式的に示す図である。
【図5】熱可塑性樹脂材料及び樹脂絶縁材料と、各材料の常用耐熱温度を示す表である。
【図6】配線群の他端部近傍を模式的に示す斜視図である。
【図7】図6の分解斜視図である。
【図8】図8(a)は、樹脂シースケーブル42の断面円形の部分を拡大して示す図であり、図8(b)は、樹脂シースケーブル42の断面偏平の部分を拡大して示す図であり、図8(c)は、比較例を示す図である。
【図9】図9(a)、図9(b)は、長円つぶし率について説明するための図である。
【図10】図10(a)、図10(b)は、一実施形態の作用効果を説明するための図であり、図10(c)、図10(d)は、比較例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、電子機器の一実施形態について、図1〜図10に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1には、電子機器としての携帯電話100が斜視図にて示されている。図1に示すように、携帯電話100は、第1筐体10と、第2筐体20と、ヒンジ部30と、を備える。
【0017】
第1筐体10は、操作ボタン12を有している。第1筐体10の内部には、電子部品としての基板50(図4参照)が設けられている。
【0018】
第2筐体20は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示画面22を有する。第2筐体20の内部には、電子部品としての基板52(図4参照)が設けられている。第1筐体10側の基板50と、第2筐体20側の基板52とは、後述する配線群40により接続されている。
【0019】
ヒンジ部30は、第1筐体10と第2筐体20とを接続し、一方の筐体の他方の筐体に対する起伏回動(図1の矢印A方向の動き)を可能にする。また、ヒンジ部30は、第2筐体20を不図示の回転ユニットにて保持しており、図2(a)〜図2(c)に示すような第2筐体20の動きも可能にする。具体的には、図2(a)に示すような状態から、矢印B方向の外力が加えられると、回転軸AXを中心とした第2筐体20の回転が開始される。この場合、第2筐体20は、回転軸AXを図2(b)に示すように上方にずらしながら(回転軸AX’参照)、回転する。このように回転軸AXがずれるのは、第2筐体20が、角部220をヒンジ部30の面30bに常時接触させながら回転するようにするためである。そして、第2筐体20が、図2(a)の状態から90°回転すると、図2(c)に示す状態となる。
【0020】
図3には、第1筐体10と第2筐体20とを接続する配線群40が示されている。配線群40の一端は第1筐体10の内部に導入されており、配線群40の他端は、ヒンジ部30の内部を経由して、第2筐体20の内部に導入されている。なお、図3に示す貫通孔30aは、ヒンジ部30に形成されており、当該貫通孔30aを介して、配線群40が、ヒンジ部30の内部から外部に導出されている。
【0021】
図4には、配線群40の構成、及び配線群40の第1筐体10及び第2筐体20への導入状態が模式的に示されている。図4に示すように、配線群40は、複数本(図4では3本)の配線としての樹脂シースケーブル42を有している。樹脂シースケーブル42は、図8(a)等を参照するとわかるように、複数本(例えば14本)の電線(ここでは同軸ケーブル)44を束ねて、被覆部としての熱可塑性樹脂材料45にて被覆したものである。熱可塑性樹脂材料45としては、図5の表に示すように、ポリプロピレン、ナイロン6、ウレタン、及び硬質ポリ塩化ビニルなどの樹脂材料を用いることができる。
【0022】
電線44は、図8(a)等を参照するとわかるように、導体部44aが絶縁部としての樹脂絶縁材料44bにより被覆されたものである。樹脂絶縁材料44bとしては、図5の表に示すように、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化))やPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などを用いることができる。ここで、樹脂絶縁材料44bの常用耐熱温度(第1の温度)は、熱可塑性樹脂材料45の常用耐熱温度(第2の温度)よりも高くなっている。
【0023】
図4に戻り、配線群40の一端は、第1筐体10に形成された貫通孔10bを介して第1筐体10の内部空間10a内に導入され、端子50aにおいて、基板50に接続されている。配線群40の、第1筐体10内外の境界に位置する部分には、配線群40と貫通孔10bとの隙間を埋めるように、パッキン46aが設けられている。
【0024】
また、配線群40の他端は、第2筐体20に形成された貫通孔20bを介して、第2筐体20の内部空間20aに導入され、端子52aにおいて基板52に接続されている。配線群40の、第2筐体20内外の境界に位置する部分には、配線群40と貫通孔20bとの隙間を埋めるように、パッキン46bが設けられている。
【0025】
ここで、第2筐体20側を用いて、配線群40が導入されている部分についてより詳細に説明する。図6には、配線群40の他端部近傍の斜視図が模式的に示され、図7には、図6の分解斜視図が示されている。なお、これらの図では、第2筐体20の構造を簡略化して示している。
【0026】
これら図6、図7に示すように、第2筐体20は、2つの部分筐体120a、120bを有しており、これら2つの部分筐体120a、120bが重ね合わされることで、第2筐体20を形成する。部分筐体120bには、内部空間20a(図6参照)を形成する凹部120e(図7参照)と、貫通孔20b(図6参照)を形成する凹溝120d(図7参照)とが設けられている。また、部分筐体120aには、図7に示すように、内部空間20aを形成する凹部120fと、貫通孔20bを形成する凹溝120cとが設けられている。
【0027】
貫通孔20bを通って第2筐体20の外部から内部空間20a内に導入されている配線群40は、貫通孔20b内で、パッキン46bを構成する2枚の樹脂板146a、146bにより、挟まれた状態となっている(図7参照)。ここで、2枚の樹脂板146a、146bは、柔軟樹脂(例えば、シリコンゲルなどのゲル状の樹脂)を材料としている。これにより、第2筐体20とパッキン46bとの間、及びパッキン46bと樹脂シースケーブル42との間が隙間なく密着する。すなわち、パッキン46bは、第2筐体20の内部空間20aと外部との境界部分において、第2筐体20と配線群40との間を埋めるように設けられている。これにより、内部空間20a内が防水されるようになっている。
【0028】
ここで、本実施形態の樹脂シースケーブル42は、多くの部分が断面円形である一方、パッキン46bにより挟まれる部分の断面形状が、図7に示すように、偏平形状となっている。この点について、以下、詳細に説明する。
【0029】
図8(a)は、樹脂シースケーブル42の断面円形の部分を拡大して示す図であり、図8(b)は、樹脂シースケーブル42の断面偏平の部分を拡大して示す図である。これらの図に示すように、図8(a)の断面円形の部分においても、図8(b)の断面偏平の部分においても、電線44は、断面円形を維持している。すなわち、断面偏平の部分の電線は、図8(c)(比較例)に示すように、電線44が断面偏平とはなっていない。なお、図8(c)のように、電線44が変形すると、断線や電気的特性の変化が生じるおそれがある。
【0030】
次に、樹脂シースケーブル42に断面偏平の部分を形成する方法について説明する。なお、前提として、本実施形態では、樹脂絶縁材料44bとして、PTFE(常用耐熱温度(第1の温度):260℃)を採用しているものとする。また、熱可塑性樹脂材料45として、ウレタン(常用耐熱温度(第2の温度):80℃)を採用しているものとする。
【0031】
まず、全体が断面円形の樹脂シースケーブル(断面偏平形状の部分が存在していない配線材料ともいえる)を樹脂絶縁材料44bの常用耐熱温度(第1の温度)260℃よりも低く、熱可塑性樹脂材料45の常用耐熱温度(第2の温度)80℃よりも高い温度とするため、熱湯(100℃)に浸す。ここで、樹脂は、常用耐熱温度を超えると軟化する性質を有している。したがって、上記のように熱湯に浸すことで、樹脂絶縁材料44bと熱可塑性樹脂材料45のうちの、熱可塑性樹脂材料45のみを軟化させることができる。
【0032】
次いで、熱湯から取り出した樹脂シースケーブル42のうち、断面偏平にする部分を加圧する。この場合、熱湯の温度(100℃)は、樹脂絶縁材料44bの常用耐熱温度260℃よりも低いため、樹脂絶縁材料44bは軟化しておらず、変形することはほとんどない。しかしながら、過度に加圧してしまうと、樹脂絶縁材料44bが破損する可能性もあるので、適切な加圧を行うことが好ましい。
【0033】
ここで、図9(a)に示すように、断面が円形の時の直径を1とした場合の長円のつぶし量(すなわち、長円つぶし率)をaとする。この場合、電線44(樹脂絶縁材料44b)がつぶれないようにするためには、熱可塑性樹脂材料45を偏平にしたときの、熱可塑性樹脂材料45の内部空間の断面積減少量が、もともと熱可塑性樹脂材料45内に存在していた隙間の断面積以下となる必要がある。換言すれば、断面円形の部分の断面積と断面偏平の部分の断面積との差が、断面円形の部分における電線44が存在していない隙間部分の断面積以下となるようにする必要がある。
【0034】
このような考えの下、面積率(熱可塑性樹脂材料45が断面円形の場合の、熱可塑性樹脂材料45内部の空間の断面積に対する、電線44が占める面積の割合)に対する、長円つぶし率aの最大値を計算した結果が、図9(b)に示されている。なお、この計算では、熱可塑性樹脂材料45の内周の長さが一定であると仮定している。また、熱可塑性樹脂材料45は、偏平な状態では、熱可塑性樹脂材料45の内部空間の断面が長方形と2つの半円の組み合わせから成るものと仮定している。
【0035】
図9(b)からは、例えば、面積率が90%(断面円形のときに隙間が10%)であれば、長円つぶし率aは0.3(30%)程度とすることが好ましいことがわかる。したがって、例えば、面積率が90%であれば、30%程度偏平になるように、樹脂シースケーブル42を加圧する。これにより、熱可塑性樹脂材料45の内部空間の断面積の減少量が、円形断面時の熱可塑性樹脂材料45内の隙間の断面積を越えない範囲で偏平化することができる。この場合、偏平化する途中で、電線44それぞれが熱可塑性樹脂材料45内部で移動するので、電線44に過度な力がかからず、変形や損傷を抑制することができる。
【0036】
上記のようにして、適切な長円つぶし率となるように加圧した後は、樹脂シースケーブル42を冷水に浸して冷却する。これにより、パッキン46bにより挟まれる部分を、内部の電線44を破損させることなく、偏平形状にすることができる。
【0037】
図10(a)には、本実施形態の樹脂シースケーブル42及びパッキン46bを、偏平部分の長軸方向から見た状態が示されている。また、図10(b)には、図10(a)のD−D線断面の外形図、及びE−E線断面の外形図が示されている。これらの図に示すように、本実施形態のように樹脂シースケーブル42に偏平の部分を設けることで、図10(c)、図10(d)の比較例(樹脂シースケーブル42に偏平の部分を設けない場合)に比べて、当該部分に設けられるパッキン46bの厚さを薄くすることができる。なお、図10(b)の例では、樹脂シースケーブル42の断面円形の部分の径と、パッキン46bの厚さとが、ほぼ同等の寸法となっている。このように、パッキン46bの厚さを薄くすることで、第2筐体20の薄型化、ひいては携帯電話100の薄型化、小型化を図ることが可能となる。
【0038】
なお、上記においては、第2筐体20側(配線群40の他端側)について説明したが、第1筐体10側(配線群40の一端側)についても、同様である。
【0039】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、樹脂シースケーブル42が、第1、第2筐体10、20の外部から引き込まれ、第1、第2筐体10、20の内部に設けられた基板50、52に接続され、パッキン46a、46bが、第1、第2筐体10、20の内部と外部との境界部分において、筐体と樹脂シースケーブル42との間を埋めるように設けられている。そして、樹脂シースケーブル42の、第1、第2筐体10、20の内部と外部との境界部分に位置する部分が断面偏平形状とされている。これにより、パッキン46a、46bが設けられる樹脂シースケーブル42の一部の厚さを薄くすることができるので、パッキン46a、46bの厚さも薄くすることができる。したがって、パッキン46a,46bの厚さ低減、ひいては、携帯電話100の厚さ低減及び小型化を図りつつ、第1、第2筐体10、20内の防水を図ることができる。また、本実施形態では、樹脂シースケーブル42を、導体部44aと導体部44aを被覆する常用耐熱温度が第1の温度(例えば、150℃以上)である樹脂絶縁材料44bとを有する複数本の電線44と、常用耐熱温度が第1の温度よりも低い第2の温度(例えば、100℃前後)であり、複数本の電線44を束ねた状態で被覆する熱可塑性樹脂材料45と、を有している。したがって、第2の温度よりも高く第1の温度よりも低い温度で樹脂シースケーブル42を加熱した後に、加圧するという工程を経て断面偏平の部分を形成することで、電線の変形又は破損を抑制し、断線や電気的特性の変化が生じるのを抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態では、樹脂シースケーブル42の、断面円形部分の断面積と断面偏平部分の断面積との差が、断面円形の部分における電線44が存在していない隙間部分の断面積以下となるような長円つぶし率aを採用している。これにより、電線44に過度な力がかからないため、加圧による電線44の変形や破損を抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態では、パッキン46a、46bが、2枚の樹脂板とされているので、樹脂シースケーブル42をパッキン46a、46bで挟むのみで、第1、第2筐体10、20の内部空間内を簡易に防水することができる。
【0042】
また、本実施形態では、熱可塑性樹脂材料45の常用耐熱温度(第2の温度)を、100℃以下とし、樹脂絶縁材料44bの常用耐熱温度(第1の温度)を例えば150℃以上としている。これにより、樹脂シースケーブル42の加熱に、熱湯(100℃)を用いることができる。このように、加熱に沸騰状態の熱湯を用いることとすることで、温度管理が簡易になり、結果的に、樹脂シースケーブル42における断面偏平の部分の形成を簡易に行うことが可能となる。
【0043】
なお、上記実施形態では、第2の温度を100℃以下、第1の温度を150℃以上にした場合について説明したが、これに限られるものではない。第2の温度が第1の温度よりも低ければ、その他の温度を採用することも可能である。この場合において、第2の温度が100℃以上であれば、樹脂シースケーブル42の加熱に熱湯以外の液体(例えば油など)を用いることとしてもよい。
【0044】
なお、上記実施形態では、樹脂シースケーブル42のパッキン46a、46bにより挟まれる部分のみを、断面偏平形状とする場合について説明したが、これに限られるものではない。すなわち、樹脂シースケーブル42のパッキン46a、46bにより挟まれる部分以外の部分も断面偏平形状としてもよい。この場合、樹脂シースケーブル42のすべてが断面偏平形状であってもよい。
【0045】
なお、上記実施形態では、パッキンとして、柔軟樹脂を材料とする樹脂板を用いる場合について説明したが、これに限らず、パッキンとしては、その他の材料を用いたパッキンを採用することとしても良い。
【0046】
なお、上記実施形態では、電子機器として、携帯電話を採用した場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、スマートフォン、PHS(Personal Handy-phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯端末を電子機器として採用することができる。また、電子機器としては、携帯型のテレビ、携帯型のゲーム機、POS(Point of sale system)端末などの装置を採用することもできる。
【0047】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 第1筐体(筐体)
20 第2筐体(筐体)
42 樹脂シースケーブル(配線)
44 電線
44a 導体部
44b 樹脂絶縁材料(絶縁部)
45 熱可塑性樹脂材料(被覆部)
46a、46b パッキン
50、52 基板(電子部品)
100 携帯電話(電子機器)
146a、146b 樹脂板(板状の柔軟樹脂)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を内部に有する筐体と、
前記筐体の外部から引き込まれ、前記筐体の内部に設けられた電子部品に接続される配線と、
前記筐体の内部と外部との境界部分において、前記筐体と前記配線との間を埋めるように設けられるパッキンと、を備え、
前記配線は、導体部と当該導体部を被覆する常用耐熱温度が第1の温度である絶縁部とを有する複数本の電線と、常用耐熱温度が前記第1の温度よりも低い第2の温度であり、前記複数本の電線を束ねた状態で被覆する被覆部と、を有しており、
前記配線の、前記筐体の内部と外部との境界部分に位置する部分が、断面偏平形状であることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記配線は、前記断面偏平形状の部分と、断面円形の部分とを有しており、前記断面円形の部分の断面積と前記断面偏平形状と部分の断面積との差が、前記断面円形の部分における前記電線が存在していない隙間部分の断面積以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記配線の断面偏平形状の部分は、前記第2の温度よりも高く、前記第1の温度よりも低い温度での加熱、及び当該加熱された部分の加圧により、形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記パッキンは、前記配線を挟む、2枚の板状の柔軟樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記第2の温度は、100℃以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項6】
導体部と当該導体部を被覆する常用耐熱温度が第1の温度である絶縁部とを有する複数本の電線と、常用耐熱温度が前記第1の温度よりも低い第2の温度であり、前記複数本の電線を束ねた状態で被覆する被覆部と、を有する配線材料を用意する工程と、
前記配線材料の少なくとも一部を、前記第2の温度よりも高く、前記第1の温度よりも低い温度で加熱する工程と、
前記加熱した部分を加圧して前記配線材料の少なくとも一部を断面偏平形状とする工程と、を含む配線の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−54437(P2012−54437A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196357(P2010−196357)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】