説明

電子機器

【課題】 筐体内に流れ込む静電気が筐体内のLEDや光センサー、あるいは静電気の侵入をきらう他の電気部品・電子部品への流れ込みを確実に防止できるようにして、静電気による実装部品のダメージを回避し得る電子機器を提供する。
【解決手段】 LEDカバー14を有底筒状に形成し、LEDカバー14の封止端側を筐体10の開口部12側に向けて配置する。LEDカバー14の開口端側を保持する絶縁性の弾性ホルダー15を設ける。LEDカバー14の開口端を、弾性ホルダー15を介して回路基板10の前面に非接触状態にして配置する。回路基板10のグランド用の導体配線22を少なくともLEDカバー14の開口端の直下位置まで延ばし、LEDカバー14からグランド用の導体配線22までの最短距離をLEDカバー14からLED13までの最短距離よりも短く設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯電話機や、PDA(Personal Digital Assistants)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、パーソナルコンピュータ等の電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機や、PDA、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、パーソナルコンピュータ等の電子機器には、着信や警告等を光によりユーザーに知らせる報知手段としてLED(発光ダイオード)が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−98927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この種の電子機器のユーザーが帯電した状態で筐体に触れると、筐体とLEDカバーとの隙間からその静電気が筐体内に流れ込むことがある。そして、筐体内に流れ込んだ静電気は最も近くにある導体に流れ易く、例えば、流れ込んだ先が回路基板上のグランド用の導体パターン(導体配線)である場合には問題は生じないが、静電気がLEDに流れ込んだ場合には、LEDや、このLEDと電気的に接続された他の電気部品や電子部品に高電圧の電流が流れ、LEDや他の電気部品や電子部品が破損するといった課題があった。
【0004】
そこで、この発明は、筐体内に流れ込む静電気が筐体内のLEDや光センサー、あるいは静電気の侵入を嫌う他の電気/電子部品への流れ込みを確実に防止できるようにして、静電気による実装部品のダメージを回避し得る電子機器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明は、開口部を有する筐体と、該筐体内に設けられたグランド用の導体配線を有する回路基板と、前記開口部と対峙する前記回路基板上に実装された電子部品と、前記開口部を塞ぐ閉塞部材を備える電子機器において、前記閉塞部材は有底筒状体をなし、その開口を前記電子部品側に向けると共に、前記有底筒状体の開口側を前記回路基板と隙間を設けて配置してなり、前記有底筒状体の外周開口側周縁から前記導体配線までの最短距離を、前記有底筒状体の外周開口側周縁から前記電子部品までの最短距離よりも短くなるようにした。
【0006】
前記閉塞部材は透光性を有し、前記電子部品は発光ダイオードであっても良い。
また、前記閉塞部材は透光性を有し、前記電子部品は光センサであっても良い。
【0007】
また、前記閉塞部材を前記回路基板上に隙間を設けて配置する弾性ホルダーを設けるようにしても良い。
【0008】
前記閉塞部材を前記回路基板上に隙間を設けて配置する弾性ホルダーを設け、該弾性ホルダーは、光を吸収する色を呈するようにしても良い。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、筐体の開口部を塞ぐ閉塞部材を有底筒状体とし、該有底筒状体の外周開口側周縁から筐体内の回路基板上に形成されたグランド用の導体配線までの最短距離を、前記有底筒状体の外周開口側周縁から前記開口部に対峙する回路基板上に実装された電子部品までの最短距離よりも短くしたことから、筐体と閉塞部材の間より流れ込んだ静電気をグランド用の導体配線に逃がし、静電気が前記電子部品に流れ込むことを確実に防止することができる。そのため、前記電子部品や回路基板上に実装される他の電子部品が破損することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。この発明にかかる電子機器は、携帯電話機や簡易型携帯電話機、PDA等の携帯可能な種々の電子機器を含むものであるが、以下の実施形態はこの発明を携帯電話機に適用したものである。
【0011】
この実施形態の携帯電話機は、図1〜図5に示すように筐体1が縦長の略矩形状に形成されたストレートタイブと呼ばれる筐体構造を有する電話機であり、筐体1は、厚み方向でほぼ半割りとされたフロントケース2とリヤケース3が相互に結合された構造となっている。
【0012】
フロントケース2の前面には、その中央に数字の入力を行う数字キー4a、オフフックボタンとしての通話キー4b、オンフックボタンとしての終話キー4cから成る操作キー群が配置されると共に、上端部と下端部に受話部5と送話部6が配置され、さらに下端部の送話部6の近傍には電波状況とバッテリーの残状況を知らせるためのLEDによる発光インジケータ部7及び電源のオン、オフのためのスライドスイッチ18が配置されている。一方、リヤケース3の背面には、その略下半領域にバッテリー交換用の蓋8が開閉可能に設けられると共に、上端部の左側(フロントケース2の前面から向かって見た場合。)に偏奇した位置にアンテナ収容部9が外側に円弧状に膨出して形成されており、そのアンテナ収容部9にアンテナ15が収容されている。
【0013】
筐体1の内部には、図4,図5に示すようにフロントケース2とリヤケース3に挟み込まれるかたちで、複数の電気/電子部品を実装する回路基板10が取り付けられると共に、この回路基板10の下面側(リヤケース3側)の中央付近に略矩形状のバッテリー11が収納されている。また、筐体1内には、この回路基板10とバッテリー11の他、受話用スピーカと送話用マイクロフォン(いずれも図示せず)が収納されている。なお、受話用スピーカーは報知用スピーカとしても機能するようになっている。
【0014】
ここで、前記発光インジケータ部7は、フロントケース2の下端前面に形成された略楕円状の2つの開口部12に夫々嵌入されたLEDカバー14(閉塞部材)と、回路基板10上の各LEDカバー14に対峙する位置に実装された2つのLED13(電子部品)とを備えている。
【0015】
LEDカバー14は、図6〜図9に示すように有底筒状に形成され、その封止端側が照射窓になっている。LEDカバー14は、より具体的には、封止端側が開口部12とほぼ合致する略楕円状の断面形状とされると共に、開口端側が封止端側よりも一回り大きい略D字状の断面形状に形成されている。以下、封止端側の略楕円状の断面部を先端部14aと呼び、開口端側の略D字状の断面部分を台座部14bと呼ぶものとする。
【0016】
また、LEDカバー14は透光性を有するプラスチック、樹脂、セラミックス、単結晶体のいずれかの絶縁性材料により形成してある。
【0017】
LEDカバー14は、図7,図8に示すように2つ一組とされ、これらの各台座部14bが、黒色のゴム材から成る絶縁性の弾性ホルダー15に保持されている。この弾性ホルダー15は、全体がほぼ矩形の板状に形成され、その板状のベース部に、各LEDカバー14の先端部が挿入される貫通孔16を有すると共に、各貫通孔16の孔縁にLEDカバー14の台座部14bが嵌合される略D字状の窪み部17が形成されている。また、この窪み部17の周壁には、図10に示すように凹部17aが形成され、この凹部17aに台座部14b周縁のフランジ部18が嵌合されるようになっている。
【0018】
ここで、窪み部17の高さは台座部14bの高さよりも高く設定されており、窪み部17に台座部14bを嵌合した状態において、図9,図10に示すように台座部14bの裏面が弾性ホルダー15の背面から一段窪むようになっている。したがって、弾性ホルダー15の背面が回路基板10に当接した状態においては、LEDカバー14の台座部14bと回路基板10が非接触状態に維持される。
【0019】
また、弾性ホルダー15の略中央には長孔状の係合孔19が形成され、フロントケース2の背面の開口部12に近接した位置には、弾性ホルダー15の係合孔19が嵌合される舌片状の係止突起20が形成されている。
【0020】
2つのLEDカバー14は、図7,図8に示すように予め弾性ホルダー15に組み付けて組立体を形成し、その状態でLEDカバー14の先端部14aを開口部12に嵌合し、かつ、弾性ホルダー15の係合孔19にフロントケース2の係合突起20を嵌合することによって、図4,図9,図10に示すようにフロントケース2に固定される。
【0021】
一方、回路基板10の開口部12に対応する位置には、図9に示すようにランド部21が形成され、そのランド部21にLED13がはんだ結合されている。前述のようにフロントケース2に固定された各LEDカバー14は、フロントケース2を回路基板10に結合したときにLED13の前方を覆うこととなるが、このとき、弾性ホルダー15の窪み部17の周縁部が各LED13の周域に密接するようになる。ここで、弾性ホルダー15は黒色のゴム材によって形成されているため、このときLED13の周域からの光の漏れはこの弾性ホルダー15によって阻止される。
【0022】
また、図9に示すように回路基板10のLED13の配置される側の面にはグランド用の導体配線22が設けられている。この導体配線22は、少なくとも各LEDカバー14の台座部14bの直下位置を横切るように設けられている。この状態において、LEDカバー14の外周開口側周縁から導体配線22までの最短距離d1はLEDカバー14の外周開口側周縁からLED13までの最短距離d2よりも短くなるように設定されている。
また、回路基板10上のLED13用のランド部21と導体配線22の間にはレジスト膜23が設けられ、LED13をランド部21にはんだ結合する際に、はんだクリームが導体配線22に流れ出すのをそのレジスト膜23によって阻止し得るようになっている。
【0023】
この携帯電話機は以上のような構成であるため、着信等によってLED13が点灯すると、そのLED13の発した光がLEDカバー14の照射窓を通して前方に照射される。このときLEDカバー14の内周は球面状に湾曲して形成されているため、LEDカバー14の内面に当たった光は多用な方向に拡散し、ムラのない均一な光が前方に照射される。また、この携帯電話機においては、LEDカバー14の台座部14bの周囲が、黒色ゴムから成る弾性ホルダー15によって囲繞され、LED13の周囲からの光の漏れが確実に防止されているため、照射窓からのみ光を照射することができる。
【0024】
また、ユーザーが帯電した手で筐体1に触れ、静電気が筐体2とLEDカバー14の隙間に流れ込むと、静電気はLEDカバー14の外周面を流れ、台座部14bから回路基板10上のグランド用の導体配線22上に流れる。つまり、LEDカバー14の台座部14bからグランド用の導体配線22までの最短距離d1をLED13までの最短距離d2よりも短く設定してあるため、LEDカバー14の台座部14bに達した静電気はLED13側には流れず、グランド用の導体配線22側に確実に逃がすことができる。
【0025】
また、この携帯電話機の場合、LEDカバー14が、回路基板10との間に隙間ができるように弾性ホルダー15に保持されているため、仮に,筐体1の外部からLEDカバー14に回路基板10方向の押圧力が作用しても、このとき回路基板10に作用する応力を弾性ホルダー15による緩衝機能によって大きく緩和することができる。したがって、回路基板10に局部的な応力が作用することによる実装部品の剥離を未然に防止することができる。
【0026】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、筐体2の開口部12に対峙する回路基板10上に実装されるこの発明における電子部品は、発光ダイオード(LED)だけに限らず、光センサ等の静電気を嫌う他の電子部品にも適用できる。
また、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の一実施形態を示す携帯電話機を正面側から見た斜視図。
【図2】同実施形態の携帯電話機を裏面側から見た斜視図。
【図3】同実施形態の携帯電話機の正面図。
【図4】同実施形態の携帯電話機を示す図3のA−A断面に対応する断面図。
【図5】同実施形態の携帯電話機の分解斜視図。
【図6】同実施形態の携帯電話機に備えるLEDカバーを示す斜視図。
【図7】同実施形態の携帯電話機に備えるLEDカバーと弾性ホルダーとを組み付けた状態を示す正面側から見た斜視図。
【図8】同実施形態の携帯電話機に備えるLEDカバーと弾性ホルダーとを組み付けた状態を示す裏面側から見た斜視図。
【図9】同実施形態の発光インジケータ部を示す図4のB部の拡大断面図。
【図10】同実施形態の発光インジケータ部を示すものであり、図3のA−A断面線から若干ずれた位置で切った図9と同様の拡大断面図。
【符号の説明】
【0028】
1 筐体
10 回路基板
12 開口部
13 LED(電子部品)
14 LEDカバー(閉塞部材)
15 弾性ホルダー
21 ランド部
22 導体配線
23 レジスト膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する筐体と、
該筐体内に設けられたグランド用の導体配線を有する回路基板と、
前記開口部と対峙する前記回路基板上に実装された電子部品と、
前記開口部を塞ぐ閉塞部材を備える電子機器において、
前記閉塞部材は有底筒状体をなし、その開口を前記電子部品側に向けると共に、前記有底筒状体の開口側を前記回路基板と隙間を設けて配置してなり、前記有底筒状体の外周開口側周縁から前記導体配線までの最短距離を、前記有底筒状体の外周開口側周縁から前記電子部品までの最短距離よりも短くなるようにしたことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記閉塞部材は透光性を有すると共に、前記電子部品は発光ダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記閉塞部材は透光性を有すると共に、前記電子部品は光センサであることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記閉塞部材を前記回路基板上に隙間を設けて配置する弾性ホルダーを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記閉塞部材を前記回路基板上に隙間を設けて配置する弾性ホルダーを有すると共に、該弾性ホルダーは光を吸収する色を呈していることを特徴とする請求項2に記載の電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−114790(P2006−114790A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302346(P2004−302346)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】