説明

電子機器

【課題】 金属製の平板にスリットを設け、スリットで囲まれた部分を押圧するスイッチ構成において、安全でかつ、押圧される部分がめくれあがる変形をしにくい構造を提供する。
【解決手段】 スイッチを有する電子機器であって、押圧部を囲むようにスリットが形成される第1の外装部材と、第1の外装部材が貼られる第2の外装部材と、スイッチと当接するピン部が形成され、第1の外装部材の押圧部に貼られる押し子部材と、押し子部材を第2の外装部材に対して弾性的に支持する弾性部材とを有し、弾性部材に第1の外装部材のスリットから突出するリブ部を形成するとともに、押圧部のリブ部に対向する端面よりも押し子部材のリブ部に対向する端面がリブに向けて突出するように、押し子部材を押圧部に貼る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器のスイッチ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器のスイッチ構造において、金属製の平板にスリットを設け、スリットで囲まれた部分を押圧することで、金属製の平板の内面に具備されたタクトスイッチの操作するスイッチ構造が知られている。(特許文献1)
【特許文献1】特開2006−228545公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述のスリットはプレス加工、エッチング加工、レーザー加工によって形成されることが多く、スリットのエッジ部分は非常に鋭利な状態となっている。したがって、このようなスイッチ機構を採用すると、使用者はその端面が鋭利な部分を押圧することになってしまう。また、押圧される部分は片持ち支持となるので、その端面がなにかに引っかかった場合には、押圧される部分がめくれあがって塑性変形しまうという問題があった。
【0004】
本発明は、このようなスイッチ構造を有する電子機器において、安全かつ押圧される部分がめくれあがるという変形を起しにくい電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電子機器は、スイッチを有する電子機器であって、押圧部を囲むようにスリットが形成される第1の外装部材と、前記第1の外装部材が貼られる第2の外装部材と、前記スイッチと当接するピン部が形成され、前記第1の外装部材の前記押圧部に貼られる押し子部材と、前記押し子部材を前記第2の外装部材に対して弾性的に支持する弾性部材とを有し、前記弾性部材に前記第1の外装部材の前記スリットから突出するリブ部を形成するとともに、前記押圧部の前記リブ部に対向する端面よりも前記押し子部材の前記リブ部に対向する端面が前記リブに向けて突出するように、前記押し子部材を前記押圧部に貼ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、安全でありながら押圧部がめくれあがる変形の少ない電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1〜7に基づいて本発明の実施形態であるデジタルカメラのスイッチ構造について説明する。なお、本発明はデジタルカメラに限定されるものではなく、スイッチを備えた電子機器全般に適用可能である。
【0008】
図1は本発明の実施形態であるデジタルカメラ10の外観を説明する図である。デジタルカメラ10の背面を外装カバー13(第2の外装部材)が覆う構成になっている。外装カバー13の表面に金属製の化粧板11(第1の外装部材)が貼着される。
【0009】
図2はデジタルカメラ10の要部分解斜視図である。化粧板11は両面テープ14にて外装カバー13に貼られている。図2中の符号11bは化粧板11に形成されたスリットであって、スリット11bにて囲まれる符号11aの領域が押圧部として機能する。押圧部11aは両面テープ14(貼着部材)にて硬質樹脂で形成された押し子部材15に貼られている。弾性部材16によって押し子部材15は外装カバー13に対してに弾性的に支持されている。すなわち、弾性部材16を介して外装カバー13に取り付けられる押し子部材15に押圧部11aが貼られている。そして、デジタルカメラ10の内部にはスイッチ12が配置され、押し子部材15のピン部15bがスイッチ12に当接するように、押し子部材15は外装カバー13に対して位置が決められている。このような構成によって、化粧板11の押圧部11aを外装カバー13に対して押し込むことで、スイッチ12をオンすることができる。
【0010】
図3はデジタルカメラ10のスイッチ構造の拡大図であって、図4は図3のA−A断面図である。図3に示すように、弾性部材16には化粧板11のスリット11bに遊嵌するリブ部16aが形成されている。図4に示すように、リブ部16aは化粧板11の表面から寸法αだけ突出している。したがって、リブ部16aは押圧部11aの端面に向かい合う位置で化粧板11の表面よりも突出しているので、デジタルカメラ10の使用者が押圧部11aの端面に触れるというリスクを少なくすることができる。
【0011】
また、図3および4に示すように、押し子部材15の端面15aが押圧部11aの端面よりも寸法βだけリブ部16aに対向する方向に突出するように、押し子部材15は押圧部11aに貼られている。このように構成することで、押圧部11aを押した場合にも、外部から力を加えられてリブ部16aが変形した場合にも、押圧部11aの端面とリブ部16aとが接触することがない。仮にこの寸法βが0に設定されると、押圧部11aを押したときに押圧部11aの端面がリブ部16aに引っかかって押圧感が低下したり、押圧部11aが押されたまま復帰しなくなるという問題がある。これに対して、押し子部材15は表面が滑らかな硬質樹脂で形成されているので、リブ部16aに接触したとしても引っかかることがない。
【0012】
さらに、弾性部材16は図4に示しように外周部16bが化粧板11に密着しているので、リブ部16aと押し子部材15の端面との隙間から水滴や異物が侵入したとしても、デジタルカメラ10の内部に影響を与える可能性を低くすることができる。
【0013】
図5は図3のB−B断面図である。図5に示すように、導光部材17が押し子部材15に接着され、デジタルカメラ10の内部に配置される発光素子20からの光を押圧部11aの表面に導くように構成されている。導光部材17の位置に対応する弾性部材16には穴16cが形成され、発光素子20からの光を遮ることがない。
【0014】
図6は化粧板11を裏面、すなわち両面テープ14が貼られる面から見た図である。符号11cは化粧板11の厚みを部分的に薄くする溝部である。溝部11c、11d、11eを形成することで、化粧板11の板厚が厚くした場合にも押圧部11aを撓みやすくすることができる。一般的にこのような化粧板の板厚を厚くすると押圧部を撓ませるためには大きな力を要するので、操作性が悪くなってしまう。一方、化粧板の板厚を薄くすると簡単に塑性変形を起してしまう。特に爪を立てて押圧部を押されることによって生じる爪傷などが問題になる。
【0015】
本実施形態では、溝部11c〜11eの厚みは0.15mmに設定され、化粧板11の厚み0.2mmに対して0.05mmだけ薄くなっている。溝部11cの加工はエッチング処理により加工されている。エッチング処理による加工とすることで、化粧板11の外観面に傷・打痕等の影響が少なく、寸法のばらつきも少ないというメリットがある。
【0016】
また、本実施形態では溝部11cの溝幅よりも溝部11dの溝幅が大きい。また、溝部11dの近傍に溝部11eが並んで設けられている。これは化粧板11の外縁部からの距離によって押圧部11aの撓みやすさが異なるからである。それぞれに同一の溝部を設けた場合、化粧板11の外縁部からの距離が短い図6における左側の押圧部11aは、化粧板11の外縁部からの距離が長い図6における右側の押圧部11aよりも撓みやすくなる。
【0017】
したがって、押圧部11aの場所によって必要な押圧力などの操作感が変わってしまう。本実施形態では、化粧板11の外縁部からの距離が長い押圧部11aに対応する溝部は、化粧板11の外縁部からの距離が短い押圧部11aに対応する溝部よりも溝の幅や数を増やすことで、同一の操作感を実現している。本実施形態では溝部11c〜11eの深さは均一であるが、押圧部11aの化粧板11の外縁部からの距離が長いほど溝部の深さを深くしても同様の効果を奏することができる。
【0018】
図7は化粧板11に両面テープ14を貼った状態を示している。図7から明らかなように、溝部11cには両面テープ14が貼られ、溝部11d、11eには両面テープ14が貼られていない。したがって、両面テープ14の厚み分だけ押圧部11aの押圧方向の撓み代が確保でき、操作力の差を更に低減させることが可能となる。このように、本実施形態では両面テープ14を貼るか、貼らないかによっても、押圧部11aの操作感を調整している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態であるデジタルカメラの外観図
【図2】本発明の実施形態であるデジタルカメラの要部分解斜視図
【図3】スイッチ構造の拡大図
【図4】スイッチ構造のA−A断面図
【図5】スイッチ構造のB−B断面図
【図6】化粧板の裏面形状を説明する図
【図7】両面テープが貼られた化粧板11を説明する図
【符号の説明】
【0020】
10 デジタルカメラ
11 金属製の化粧板
11a 押圧部
11b スリット
11c〜11e 溝部
13 外装カバー
15 押し子部材
15a 端面
15b 打鍵部
16 弾性部材
16a リブ部
16b 外周部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチを有する電子機器であって、
押圧部を囲むようにスリットが形成される第1の外装部材と、
前記第1の外装部材が貼られる第2の外装部材と、
前記スイッチと当接するピン部が形成され、前記第1の外装部材の前記押圧部に貼られる押し子部材と、
前記押し子部材を前記第2の外装部材に対して弾性的に支持する弾性部材とを有し、
前記弾性部材に前記第1の外装部材の前記スリットから突出するリブ部を形成するとともに、前記押圧部の前記リブ部に対向する端面よりも前記押し子部材の前記リブ部に対向する端面が前記リブに向けて突出するように、前記押し子部材を前記押圧部に貼ることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記弾性部材は前記第1の外装部材に密着する外周部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記電子機器は発光素子と、前記押し子部材の少なくとも一部が前記発光素子の光を導光するとともに、前記弾性部材には前記発光素子からの光を通過させる部分が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−212048(P2009−212048A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56496(P2008−56496)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】