説明

電子機器

【課題】減電検出回路の構成にかかるコストをできるだけ抑える。
【解決手段】一次側電圧をトランスを介して変換して二次側から出力する電源回路と、一次側電圧に基づいて減電状態を検出可能な減電検出回路とを備える電子機器であって、電源回路は、トランスの一次巻線を含む一次側回路とトランスの二次巻線を含み一次側回路と所定距離離れた二次側回路とを備え、減電検出回路は、一次側回路に搭載された、一次側電圧をアノードから入力して発光可能な赤外線LEDと、二次側回路に搭載された、赤外線LEDとは離間した別部品としてのフォトトランジスタと、フォトトランジスタのオン・オフに応じてリセット信号の出力を制御するリセットICとを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減電状態を検出する機能を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧異常から回路を保護するために電源回路に減電検出回路を備えることが知られている。関連技術として、AC電源電圧に基づく一次側電圧をトランスを介して所定の電圧に変換して二次側から出力する電源回路において、第1のトランジスタがオンすることで通電させられるように第1のトランジスタのコレクタに接続された第1の発光ダイオードと、第1の発光ダイオードの通電時にオンさせられることで第2のトランジスタをオンするように第2のトランジスタが接続された第1のフォトトランジスタとで構成される第1のフォトカプラを有し、一次側電圧が所定値以下であると第1のトランジスタがオフさせられ、第1のトランジスタがオフさせられることにより第2のトランジスタがオフさせられて減電状態検出信号としてロー信号を出力する構成が知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
また、電流量に応じて発光する第1の発光ダイオードとその発光により入力端と出力端を短絡する第1のフォトトランジスタとからなる第1のフォトカプラを備え、第1の発光ダイオードの電流の大きさにより入力電源の停電および電圧低下を検出する停電検出回路が知られている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008‐219658号公報
【特許文献2】特開2005‐17111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記各文献では、減電検出回路の構成の一部に、発光ダイオードとフォトダイオードとを組み合わせた一つの部品としてのフォトカプラが採用されている。また、文献1においては、減電検出回路にさらにツェナーダイオードを含んでいる。ここで、減電検出回路を構成するにあたっては、部品にかかるコストをできるだけ抑えることで電子機器全体のコストダウンに貢献することが求められている。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、従来よりもコストを抑え且つ的確に減電状態を検出して必要な制御を行なうことが可能な電子機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様の一つは、AC電源電圧に基づく一次側電圧をトランスを介して所定の電圧に変換して二次側から出力する電源回路と、一次側電圧に基づいて減電状態を検出可能な減電検出回路とを備える電子機器であって、上記電源回路は、トランスの一次巻線を含む一次側回路とトランスの二次巻線を含み一次側回路と所定距離離れた二次側回路とを備え、上記減電検出回路は、一次側回路に搭載された、一次側電圧をアノードから入力して発光可能な赤外線LEDと、二次側回路に搭載された、上記赤外線LEDとは離間した別部品としてのフォトトランジスタと、フォトトランジスタのオン・オフに応じてリセット信号の出力を制御するリセットIC(Integrated Circuit)と、を備え、上記一次側電圧が所定値以下となった場合に赤外線LEDが発光を停止し、当該発光の停止に伴ってフォトトランジスタがオフ状態となり、フォトトランジスタがオフ状態となった場合にリセットICはリセット信号を電子機器が搭載するマイクロコンピュータへ出力することにより電子機器をスタンバイモードへ遷移させる構成としてある。
【0008】
当該構成においては、電源回路の一次側回路に赤外線LEDを搭載し、電源回路の二次側回路に赤外線LEDとは離間した別部品としてのフォトトランジスタを搭載している。つまり、フォトカプラという一体型の部品ではなく、別々の部品である赤外線LEDとフォトトランジスタとを採用することで、減電検出のための回路に要するコストを従来よりも低減させている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】電子機器の概略構成の一例を示す図である。
【図2】電源回路の一部および減電検出回路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態として、AC電源電圧に基づく一次側電圧をトランスを介して所定の電圧に変換して二次側から出力する電源回路と、一次側電圧に基づいて減電状態を検出可能な減電検出回路とを備える電子機器であって、上記電源回路は、AC電源電圧を整流ブリッジにて全波整流しコンデンサにて平滑化して一次側電圧を出力する整流回路とトランスの一次巻線とを含む一次側回路と、トランスの二次巻線を含み一次側回路と所定距離離れた二次側回路とを備え、上記減電検出回路は、一次側回路に搭載された、一端を整流回路の出力側に接続させ他端をグラウンドに接続させた分圧回路であって第1の抵抗と第2の抵抗とを直列接続した分圧回路と、分圧回路により分圧された一次側電圧をアノードから入力して発光可能な赤外線LEDと、二次側回路に搭載された、上記赤外線LEDとは離間した別部品としてのフォトトランジスタであってコレクタを所定の信号電圧源に接続させエミッタをグラウンドに接続させたフォトトランジスタと、コレクタを所定の信号電圧源に接続させエミッタをグラウンドに接続させベースを上記フォトトランジスタのコレクタに接続させた第2のトランジスタと、第2のトランジスタのコレクタに対して接続して第2のトランジスタのオン・オフに応じてリセット信号の出力を制御するリセットICとを備え、上記一次側電圧が所定値以下となった場合に赤外線LEDが発光を停止し、当該発光の停止に伴ってフォトトランジスタがオフ状態となり、フォトトランジスタのオフ状態への切り替わりに伴って第2のトランジスタがオン状態となり、第2のトランジスタがオン状態となった場合にリセットICは所定のローレベル信号を検出し、リセットICは当該ローレベル信号を検出した場合に電子機器が搭載するマイクロコンピュータへリセット信号を出力することにより電子機器をスタンバイモードへ遷移させる構成としてもよい。
【0011】
上記では、電子機器としての発明を説明したが、電子機器に含まれる上記減電検出回路を一つの発明として抽出することも可能である。
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明が適用される電子機器10の概略構成の一例を示す図である。電子機器10は、例えば、液晶テレビジョンである。ただし、本発明が適用される電子機器としては、電源回路を搭載する製品(プレーヤ、レコーダ、モニター等)であればあらゆる製品が該当する。液晶テレビジョンとしての電子機器10は、本体の動作を制御するマイクロコンピュータ(マイコン)11と、アンテナ12で受信されるテレビジョン放送信号から選択されているチャンネルのテレビジョン放送信号を抽出して出力するチューナ13と、チューナ13が出力したテレビジョン放送信号に基づく映像を液晶パネル14に表示させる映像処理部15と、チューナ13が出力したテレビジョン放送信号に基づく音声をスピーカ16から出力する音声処理部17と、外部のリモートコントロール装置(リモコン)18から送信されてきた操作コマンドを受信するリモコン受信部19と、各部へ動作電源を供給する電源回路20とを備えている。
【0013】
マイコン11は、電源回路20が備える減電検出回路20cからの減電状態検出信号に基づいて電源回路20のオン・オフを含めた動作を指令する制御信号を電源回路20へ出力する。また、マイコン11は、リモコン受信部19で受信したコマンドに基づいてチャンネルの切換え、音量のアップ/ダウン等を制御する。
【0014】
図2は、電源回路20の一部および減電検出回路20cを例示する図である。当該図では、電源回路20の構成のうち本発明の説明に必要な構成を抜粋して記載しており、他の構成については適宜省略している。電源回路20は、概略、互いに所定距離離れた一次側回路20aと二次側回路20bとからなる。一次側回路20aは、外部の商用AC電源に接続する。当該AC電源は、例えば100Vの交流であるが、一時的に80V程度に低下する減電が発生し得る。一次側回路20aは、当該AC電源を整流ブリッジ21によって全波整流し、コンデンサC1によって平滑化して一次側電圧を出力する整流回路を備える。整流回路から出力された一次側電圧は、一次側回路20aにおいて、トランス23の一次巻線3aに入力される。
【0015】
トランス23は、絶縁された一次側回路20aと二次側回路20bとの間に跨って設置されている。トランス23では、一次側電圧を二次側回路20bにおいて夫々所定の巻数比となった各二次巻線3b,3c,3d…にて複数種類の所定の電圧に変換し、ダイオードDb,Dc,Dd…を経て、電子機器10各部のための電源電圧Vb,Vc,Vd…を出力する。その他、電源回路20は、二次側で取り出された電圧を一次側にフィードバックするフィードバック回路(不図示)や、フィードバック回路からのフィードバック信号により一次側電圧をPWM(パルス幅変調)制御するスイッチング(SW)回路22等、公知の構成を備える。
【0016】
次に、減電検出回路20cの構成について説明する。減電検出回路20cは、一次側回路20a、二次側回路20bのそれぞれに一部が搭載されている。具体的には、一次側回路20aにおいては、一端を整流回路の出力側に接続させ他端をグラウンドに接続(接地)させた分圧回路であって抵抗R1(第1の抵抗)と抵抗R2(第2の抵抗)とを直列接続した分圧回路が形成されている。また、分圧回路の分圧点(抵抗R1と抵抗R2との間)に対しては赤外線LED(D1)のアノードが接続されている。赤外線LED(D1)は、カソードを抵抗R3を介してグラウンドに接続しており、分圧回路の抵抗分圧比で分圧された後の一次側電圧をアノードから入力し、当該入力した電圧が所定のしきい値より高い場合に発光(赤外線を放出)する特性を有している。当該しきい値は、整流回路から出力された一次側電圧が、減電状態と認められるほど低い値(電源回路20の設計時に予め決められた“所定値”)以下であるときに上記分圧点に表れる電圧値の上限を意味する。つまり本実施形態では、整流回路から出力される一次側電圧が減電状態に対応する上記所定値以下である場合には赤外線LED(D1)は発光しなくなる。
【0017】
一方、二次側回路20bにおいては、減電検出回路20cは、赤外線LED(D1)とはある距離(2.6ミリ以上4.0ミリ未満)離れた位置に、赤外線LED(D1)とは別部品としてのフォトトランジスタQ1を備える。つまり、赤外線LED(D1)とフォトトランジスタQ1は、フォトカプラとして一体化された一つの部品ではなく、それぞれ単独の部品である。フォトトランジスタQ1は、コレクタを抵抗R4を介して所定の信号電圧源Vccに接続させ、エミッタをグラウンドに接続させている。また、フォトトランジスタQ1のコレクタと抵抗R4との間に対し、トランジスタQ2(第2のトランジスタ)のベースが接続されている。
【0018】
トランジスタQ2は、コレクタを抵抗R5を介して所定の信号電圧源Vccに接続させ、エミッタをグラウンドに接続させている。さらに、フォトトランジスタQ2のコレクタと抵抗R5との間に対し、リセットIC30が接続されている。リセットIC30は、トランジスタQ2がオフ状態のときは、抵抗R5を介して接続している信号電圧源Vccによりプルアップされた電位(ハイレベル信号)を常時検出している。リセットIC30は、トランジスタQ2のオン・オフに応じてリセット信号の出力を制御する。なお、後述するようにトランジスタQ2のオン・オフは、フォトトランジスタQ1のオフ・オンに応じて切り替わるものであるから、リセットIC30は、フォトトランジスタQ1のオン・オフに応じてリセット信号の出力を制御するとも言える。
【0019】
このような減電検出回路20cでは、一次側回路20aにおいて、整流回路から出力された一次側電圧が上記所定値以下となった場合に、赤外線LED(D1)が発光を停止する。二次側回路20bにおいては、当該発光の停止に伴って、フォトトランジスタQ1がオフ状態(コレクタ‐エミッタ間が非導通)となる。フォトトランジスタQ1のオフ状態への切り替わりに伴い、フォトトランジスタQ1が抵抗R4を介して接続している信号電圧源Vccに基づく電圧がトランジスタQ2のベースに印加され、トランジスタQ2がオン状態(コレクタ‐エミッタ間が導通)となる。トランジスタQ2がオン状態となると、リセットIC30は、トランジスタQ2のコレクタと接続する点において検出する電位がトランジスタQ2がオフ状態のときの値(ハイレベル信号)と比べて低下する(リセットIC30は所定のローレベル信号を検出する)。
【0020】
リセットIC30は、上記ローレベル信号を検出した場合に、マイコン11へリセット信号(減電状態検出信号)を出力する。マイコン11は、リセットIC30によりリセット信号を受信したときは、電子機器10の状態を、それまでの稼働状態からスタンバイモードへ遷移させる。具体的には、マイコン11は、電源回路20に対して制御信号を送信し、電子機器10を構成する一部の回路(例えば、マイコン11やリモコン受信部19)を除く各回路への電源電圧の出力を停止させる。また、マイコン11は自身をリセット状態(初期化された状態)とするとしてもよい。これにより、減電状態が発生した場合、電子機器10を確実かつ安全にスタンバイモードにすることができる。また、本実施形態によれば、電源回路20の一次側回路20aにおける一次側電圧の変動に基づいて減電状態であるか否かを判定できるため、電源回路の二次側における電圧の変動に基づいて減電状態を検出する構成と比較して、減電が起きたときにより早く当該減電を検出することができ安全性が向上した。
【0021】
また本実施形態では、減電検出回路20cの構成として、コストの高いフォトカプラを採用せず、赤外線LED(D1)とフォトトランジスタQ1という個別の部品を採用するようにし、さらに従来採用されていたツェナーダイオードを採用することなくより簡易な構成としている。そのため、減電検出回路20cの製造に要するコストをできるだけ抑え、電子機器10全体のコストダウンに貢献している。
【符号の説明】
【0022】
10…電子機器、11…マイコン、20…電源回路、20a…一次側回路、20b…二次側回路、20c…減電検出回路、21…整流ブリッジ、23…トランス、30…リセットIC、D1…赤外線LED、Q1…フォトトランジスタ、Q2…トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AC電源電圧に基づく一次側電圧をトランスを介して所定の電圧に変換して二次側から出力する電源回路と、一次側電圧に基づいて減電状態を検出可能な減電検出回路とを備える電子機器であって、
上記電源回路は、トランスの一次巻線を含む一次側回路とトランスの二次巻線を含み一次側回路と所定距離離れた二次側回路とを備え、
上記減電検出回路は、
一次側回路に搭載された、一次側電圧をアノードから入力して発光可能な赤外線LEDと、
二次側回路に搭載された、上記赤外線LEDとは離間した別部品としてのフォトトランジスタと、フォトトランジスタのオン・オフに応じてリセット信号の出力を制御するリセットICと、を備え、
上記一次側電圧が所定値以下となった場合に赤外線LEDが発光を停止し、当該発光の停止に伴ってフォトトランジスタがオフ状態となり、フォトトランジスタがオフ状態となった場合にリセットICはリセット信号を電子機器が搭載するマイクロコンピュータへ出力することにより電子機器をスタンバイモードへ遷移させる、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
AC電源電圧に基づく一次側電圧をトランスを介して所定の電圧に変換して二次側から出力する電源回路と、一次側電圧に基づいて減電状態を検出可能な減電検出回路とを備える電子機器であって、
上記電源回路は、AC電源電圧を整流ブリッジにて全波整流しコンデンサにて平滑化して一次側電圧を出力する整流回路とトランスの一次巻線とを含む一次側回路と、トランスの二次巻線を含み一次側回路と所定距離離れた二次側回路と、を備え、
上記減電検出回路は、
一次側回路に搭載された、一端を整流回路の出力側に接続させ他端をグラウンドに接続させた分圧回路であって第1の抵抗と第2の抵抗とを直列接続した分圧回路と、分圧回路により分圧された一次側電圧をアノードから入力して発光可能な赤外線LEDと、
二次側回路に搭載された、上記赤外線LEDとは離間した別部品としてのフォトトランジスタであってコレクタを所定の信号電圧源に接続させエミッタをグラウンドに接続させたフォトトランジスタと、コレクタを所定の信号電圧源に接続させエミッタをグラウンドに接続させベースを上記フォトトランジスタのコレクタに接続させた第2のトランジスタと、第2のトランジスタのコレクタに対して接続して第2のトランジスタのオン・オフに応じてリセット信号の出力を制御するリセットICと、を備え、
上記一次側電圧が所定値以下となった場合に赤外線LEDが発光を停止し、当該発光の停止に伴ってフォトトランジスタがオフ状態となり、フォトトランジスタのオフ状態への切り替わりに伴って第2のトランジスタがオン状態となり、第2のトランジスタがオン状態となった場合にリセットICは所定のローレベル信号を検出し、リセットICは当該ローレベル信号を検出した場合に電子機器が搭載するマイクロコンピュータへリセット信号を出力することにより電子機器をスタンバイモードへ遷移させる、
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−238993(P2012−238993A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105999(P2011−105999)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】