説明

電子機器

【課題】筺体と電子部品との固定の信頼性を向上することのできる電子機器を提供することを課題とする。
【解決手段】
電子機器は、筐体(4)と、前記筐体の内面である第1の面(14)に設けられた信号配線(20)と、前記筐体に収容され、前記筐体の前記第1の面と対向する面(13)に、前記信号配線と電気的導通をとるための導電性部材(12)が設けられた電子部品(10)であって、導電性を有する導電性接着剤(23)によって、前記導電性部材が前記信号配線と電気的導通をとるように、前記筐体の第1の面と固定されており、さらに、前記導電性接着剤より高い接着力を有する補強用接着剤(24)によって、前記筐体の第1の面と固定された電子部品とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばポータブルコンピュータのような携帯性を重視する電子機器では、その外郭となる筐体を薄くコンパクトに形成したいという要求がある。
【0003】
この筐体の薄型化を実現するため、筐体の内面に導電性接着剤を印刷することで配線パターンを筺体と一体に形成し、この配線パターンのランド部にコネクタのような回路部品を接着することが行われている。
【0004】
この構成によれば、配線パターンを形成する導電性接着剤を利用して、配線パターンと回路部品との間を電気的に接続することができる。よって、筐体の小型化および省スペース化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−268521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
筺体内部に、筺体と一体として形成された配線パターンと、コネクタのような電子部品におけるこの配線パターンと電気的接続を行う導電性部材とは、導電性接着剤によって電気的に接続され、物理的に固定されることとなる。
【0007】
しかし、導電性接着剤は接着力が弱く、筺体と電子部品とを導電性接着剤のみで固定する場合には、固定の信頼性は低いものとなってしまう可能性があった。
【0008】
本発明な上記問題に鑑みてなされたもので、筺体と電子部品との固定の信頼性を向上することのできる電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施の形態にかかる電子機器は、筐体と、前記筐体の内面である第1の面に設けられた信号配線と、前記筐体に収容され、前記筐体の前記第1の面と対向する面に、前記信号配線と電気的導通をとるための導電性部材が設けられた電子部品であって、導電性を有する導電性接着剤によって、前記導電性部材が前記信号配線と電気的導通をとるように、前記筐体の第1の面と固定されており、さらに、前記導電性接着剤より高い接着力を有する補強用接着剤によって、前記筐体の第1の面と固定された電子部品とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るポータブルコンピュータの斜視図。
【図2】本発明の第1の実施の形態において、複数の信号配線および複数の接着剤充填部が設けられた筐体と、接続端子を有するコネクタとの位置関係を分解して示す斜視図。
【図3】本発明の第1の実施の形態において、筐体のコネクタ実装領域にコネクタを接着した状態を示す断面図。
【図4】本発明の第1の実施の形態において、信号配線および接着剤充填部が設けられた筐体とコネクタとの位置関係を示す断面図。
【図5】本発明の第2の実施の形態において、筐体にコネクタを接着した状態を示す断面図。
【図6】本発明の第2の実施の形態の変形例において、信筐体にコネクタを接着した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明の実施の形態を図1ないし図6に基づいて説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、電子機器の一例であるポータブルコンピュータ1を開示している。ポータブルコンピュータ1は、コンピュータ本体2とディスプレイモジュール3とで構成されている。
【0013】
コンピュータ本体2は、筐体4を備えている。筐体4は、例えば合成樹脂材料により成形されて、電気絶縁性を有している。筐体4は、底壁4a、上壁4bおよび側壁4cを有する偏平な箱状をなしている。筐体4の上壁4bは、キーボード5を支持している。側壁4cは、底壁4aの側縁から起立している。四角い開口部6が筐体4の側壁4cに設けられている。
【0014】
図1に示すように、ディスプレイモジュール3は、ディスプレイ筐体7と、このディスプレイ筐体7に収容された液晶ディスプレイパネル8とを備えている。ディスプレイ筐体7は、コンピュータ本体2と略同じ大きさを有する偏平な箱状をなしている。液晶ディスプレイパネル8は、画像情報や文字情報を表示するスクリーン8aを有している。スクリーン8aは、ディスプレイ筐体7の前面からディスプレイ筐体7の外に露出されている。
【0015】
ディスプレイモジュール3は、コンピュータ本体2の後端部に図示しないヒンジを介して支持されている。そのため、ディスプレイモジュール3は、キーボード5を覆うようにコンピュータ本体2の上に横たわると閉じ位置と、キーボード5およびスクリーン8aを露出させるようにコンピュータ本体2の後端部から起立する開き位置との間で回動可能となっている。
【0016】
図1および図2に示すように、側壁4cの開口部6にコネクタ10が配置されている。コネクタ10は、例えば外部モニタのような周辺機器(図示せず)を接続するための電子部品である。コネクタ10は、複数の接続端子12および補強ピン18を有している。接続端子12および補強ピン18は、コネクタ10のフラットな下面13にマトリクス状に配列されている。接続端子12はコネクタ10より突出しており、導電性部材として信号配線20と電気的接続が行われている。補強ピン18はコネクタ10より突出しており、コネクタ10と筐体4との固定を補強している。補強ピン18は、筺体4内部に配置されているコネクタ10において接続端子12より開口部6に近い側に設けられている。
【0017】
コネクタ10は、筐体4の底壁4aの第1の面である内面14の上に支持されている。筐体4の内面14は、コネクタ実装領域15を有している。コネクタ実装領域15は、前記コネクタ10を筐体4に固定するための領域であって、前記開口部6に隣接されている。
【0018】
図2ないし図4に示すように、複数の接着剤充填部16がコネクタ実装領域15に設けられている。接着剤充填部16は、コネクタ10の接続端子12および補強ピン18に対応するように隔壁17によって格子状に区画されている。隔壁17は、底壁4aの内面14から筐体4の内側に向かって突出するリブ状をなしており、各接着剤充填部16を取り囲んでいる。各接着剤充填部16は、底壁4aの上方に向けて開放されているとともに、コネクタ10の各接続端子12および補強ピン18よりも大きな形状を有している。
【0019】
隔壁17は、複数の配線導入部19を備えている。配線導入部19は、コネクタ10の各接続端子12と対応する接着剤充填部16に開口するスリット状をなしている。配線導入部19に対応する位置では、底壁4aの内面14が露出されている。
【0020】
図2に示すように、底壁4aの内面14に複数の信号配線20が一体的に設けられている。信号配線20は、底壁4aの内面14に導電性接着剤をライン状に塗布することにより構成されている。信号配線20は、筐体4の幅方向に延びているとともに、互いに間隔を存して平行に配置されている。底壁4aの内面14に導電性接着剤を塗布する方法としては、例えばスクリーン印刷法又はディスペンス法を用いることができる。
【0021】
信号配線20の一端は、個々に隔壁17の配線導入部19からコネクタ10の各接続端子12が収容される接着剤充填部16に入り込んでいる。信号配線20の一端に図3に示すようなランド21が設けられている。ランド21は、コネクタ10の各接続端子12に対応する接着剤充填部16の底に位置されている。
【0022】
図3および図4に示すように、コネクタ10は、隔壁17の上に重ね合わされている。コネクタ13の下面14は、接着剤充填部16の開放端を上方から塞いでいる。これにより、コネクタ10の接続端子12は接着剤充填部16に入り込んで、ランド21の上に積層されている。また、補強ピン18も接着剤充填部16に入り込こみ、接続剤充填部16における底壁4aの内面14と接触するよう位置されている。
【0023】
コネクタ10の接続端子12が入り込んでいる接着剤充填部16には導電性接着剤23が充填されており、コネクタ10の補強ピン18が入り込んでいる接着剤充填部16には補強用接着剤24が充填されている。導電性接着剤23は補強用接着剤24よりも高い導電性を有する接着剤であって、例えばエポキシ系の接着剤に銀等の金属が混ぜ込まれた接着剤である。本実施形態では導電性接着剤23をエポキシ系の接着剤であると例示するが、他にもアクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤等が考えられ、これに限定されない。補強用接着剤24は導電性接着剤23より強い接着力を有する接着剤であって、本実施形態ではエポキシ系の接着剤であるものと例示する。一般的なコネクタの固定としては、接続端子も補強ピンも全てはんだで接続されている場合が多いが、本実施の形態では接続端子、補強ピンはそれぞれの用途に応じた異なる材料によって接合されている。
【0024】
導電性接着剤23は、接続端子12およびランド21を一体的に覆った状態で硬化されおり、補強用接着剤24は補強ピン18および内面14を一体的に覆った状態で硬化されている。隣り合う接着剤充填部16に充填された導電性接着剤23は、隔壁17によって電気的に絶縁された状態に保たれている。そのため、コネクタ10は、導電性接着剤23を介して筐体4のコネクタ実装領域15に固定されて、コネクタ10の接続端子12が信号配線20のランド21に電気的に接続された状態に保たれている。また、コネクタ10は補強用接着剤24を介して筺体4と高い接着力で接着されている。
【0025】
図2に示すように、信号配線20のランド21とは反対側の他端は、コネクタ実装領域15から遠ざかる方向に導かれるとともに、底壁4aの内面14の上で互いに間隔を存して一列に並んでいる。
【0026】
さらに、筐体4の内部にプリント回路板25が収容されている。プリント回路板25は、回路基板26と、この回路基板26の下面の一端に形成された複数のパッド(図示しない)とを有している。このパッドは、プリント回路板25の導体パターンに電気的に導通された端子部の一例であり、信号配線20の他端に対応するように間隔を存して一列に並んでいる。
【0027】
回路基板26の一端は、底壁4aの内面14から突出する一対のボス部28a,28bの上に固定具としてのねじ29を介して固定されており、回路基板26は、底壁4aの内面14と平行に配置される。
【0028】
回路基板26のパッドは、信号配線20の他端と向かい合っており、パッドと信号配線20の他端との間は、電気的に接続されている。
【0029】
次に、筺体4とコネクタ10とを接続する手順について説明する。
【0030】
まず、コネクタ10の接続端子12とランド21に導電性接着剤23を印刷またはディスペンサで供給する。
【0031】
次に、コネクタ10の補強ピン18と接続剤充填部16における底壁4aの内面14に補強用接着剤24を印刷またはディスペンサで供給する。
【0032】
導電性接着剤23および補強用接着剤24の供給後、コネクタ10を筺体4内の対応する位置に設置(マウントする)。
【0033】
設置後には、導電性接着剤23および補強用接着剤24を常温または加熱により、同時に硬化させる。
【0034】
この手順によって、コネクタ10が筺体4に固定される。
【0035】
また、必要に応じて、底壁4aの内面14に導電性接着剤をライン状に塗布することにより構成されている信号配線20上に絶縁層や導電層などの保護膜を形成させてもよい。
【0036】
コネクタ10があらかじめ機械的に筐体4に機械的に組み込まれているような場合であっても、補強用接着剤24を用いて補強接着を行うとしてもよい。この場合であっても、補強用接着剤24によってコネクタ10と筐体4との接着が行われるため、固定の信頼性が向上する。さらに、この場合にコネクタ10が導電性接着剤23によって筐体4に固定されていたとしても、補強用接着剤24を用いて補強接着を行うことで、より信頼性の高い固定を実現することができる。
【0037】
本実施の形態ではコネクタ10に補強ピン18を設け、補強用接着剤24によって補強ピン18と筐体4とを接着することで、コネクタ10の接続端子12が、筐体4と導電性接着剤23のみで接続されている場合よりも、コネクタ10と筐体4との信頼性の高い固定を行うことができる。
【0038】
次に第2の実施の形態について説明する。
【0039】
(第2の実施形態)
図5は第2の実施の形態を開示している。第2の実施の形態ではコネクタ10の下面13に接続端子12および補強ピン18が設けられておらず、接続電極51が設けられている点、および筐体4の底壁4aの内面14に隔壁17が設けられていない点が第1の実施形態と異なる。これ以外のポータブルコンピュータ1の基本的な構成は第1の実施形態とほぼ同様である。このため、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成部分には同一の参照符号を附して、その説明を省略する。
【0040】
接続電極51はコネクタ10の下面13にフラットに設けられており、下面13から突出していない。接続電極51は筐体4の内面14と導電性接着剤23によって直接接着されており、導電性部材として信号配線20と電気的接続が行われている。
【0041】
コネクタ10は、下面13の接続電極51が存在しない領域で、底壁4aの内面14と補強用接着剤24によって固定されている。
【0042】
このような構成によれば、コネクタ10から電気的接続または物理的な固定を行うための端部が突出していないような場合でも、コネクタ10と信号配線20との電気的な接続を行いつつ、コネクタ10と筐体4との信頼線の高い固定を行うことができる。
【0043】
この場合、第1の実施の形態にて説明した接続手順とほぼ同様な手順によって、筐体4とコネクタ10との接続を行うことができる。つまり、コネクタ10を筐体4内の対応する位置に設置する前に、導電性接着剤23および補強用接着剤24を供給しておくことで、常温または加熱により導電性接着剤23および補強用接着剤24とを同時に硬化させることが可能である。電気的導通の効果の大きい導電性接着剤23と、固定補強用の補強用接着剤24との硬化条件を合わせる事で、それぞれの接着剤を供給後、常温または加熱による硬化作業を同時に行うことが可能となり、製造工数を削減させることができる。また、導電性接着剤23のみによって固定を行った場合と、ほぼ同様の硬化時間によって導電性接着剤23のみで固定を行った場合より信頼線の高い固定を行うことができる。
【0044】
(第2の実施形態の変形例)
図6は第2の実施の形態の変形例を開示している。第2の実施の形態の変形例と、第2の実施の形態との異なる点は、補強用接着剤24の位置である。
【0045】
本変形例では、補強用接着剤24はコネクタ10の下面13と内面14との間に塗布されておらず、コネクタ10の側面61に塗布されている。このように補強用接着剤24はコネクタ10の側面61と内面14とを固定するように塗布されてもよい。
【0046】
例えば、導電性接着剤23によってコネクタ10と筐体4とが先に固定されている場合においても、補強用接着剤24を側面13と内面14との位置関係を固定するように塗布することで、固定の信頼性を向上させることができる。
【0047】
前記第1の実施の形態では、筐体を合成樹脂製としたが、例えばマグネシウムやアルミニウムのような金属製としてもよい。筐体を金属製とした場合、例えば筐体の内面に絶縁層をコーティングすることで筐体に電気絶縁性を付与するとともに、この絶縁層の上に信号配線を設ければよい。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具現化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0049】
4…筐体、10…コネクタ、20…信号配線、26…回路基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内面である第1の面に設けられた信号配線と、
前記筐体に収容され、前記筐体の前記第1の面と対向する面に、前記信号配線と電気的導通をとるための導電性部材が設けられた電子部品であって、
導電性を有する導電性接着剤によって、前記導電性部材が前記信号配線と電気的導通をとるように、前記筐体の第1の面と固定されており、さらに、前記導電性接着剤より高い接着力を有する補強用接着剤によって、前記筐体の第1の面と固定された電子部品と
を具備する電子機器。
【請求項2】
前記電子部品は、
前記電子部品の前記筐体の前記第1の面と対向する面より突出した前記導電性部材と、
前記電子部品の前記筐体の前記第1の面と対向する面の前記導電性部材が突出した位置とは異なる位置から突出した補強ピンを有し、
前記補強ピンと、前記筐体の前記第1の面とが前記補強用接着剤によって固定された請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記筐体には、前記導電性部材と前記補強ピンとをそれぞれ囲った、リブ状の突出部が設けられており、
前記導電性接着剤は前記突出部で囲われた領域であり、前記導電性部材が囲われた領域に充填さており、前記補強用接着剤は前記突出部で囲われた領域であり、前記補強ピンが囲われた領域に充填された請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記電子部品は、前記筐体の第1の面と対向する面とは異なる面を有し、この面と前記筐体の第1の面とが前記補強用接着剤によって固定された請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記電子部品はコネクタである請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
筐体と、
前記筐体の内面である第1の面に設けられた信号配線と、
前記筐体に収容され、前記筐体の前記第1の面と対向する面に、前記信号配線と電気的導通をとるための導電性部材が設けられた電子部品であって、
第1の接着剤によって、前記導電性部材が前記信号配線と電気的導通をとるように、前記筐体の第1の面と固定されており、さらに、前記第1の接着剤と異なる特性を有する第2の接着剤によって、前記筐体の第1の面と固定された電子部品と
を具備する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−33765(P2012−33765A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172736(P2010−172736)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【特許番号】特許第4865067号(P4865067)
【特許公報発行日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】