説明

電子機器

【課題】2個の画面の点灯時間に差が生じた場合でも適切に輝度補正を行うことができる電子機器を提供する。
【解決手段】本発明は、駆動電流を受けて点灯する2個のディスプレイと、各ディスプレイに駆動電流を供給する駆動部と、前記各ディスプレイの累計点灯時間を計測する計測部と、前記各ディスプレイの累計点灯時間の差に応じて、前記駆動部から各ディスプレイに供給される駆動電流の値を決定する制御部とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイの輝度制御に関し、特に、複数のディスプレイを搭載した電子機器における各ディスプレイ間の輝度制御に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイは、使用時間に応じて輝度が劣化する場合がある。そこで、ディスプレイの輝度補正を行う技術が特許文献1に開示されている。この技術では、有機ELディスプレイの点灯時間を累計しておき、輝度減衰曲線と点灯時間の累計値とからディスプレイの輝度を予測し、基準の輝度に近付くようにディプレイに供給する電流量を調整するものである。
【0003】
ところで、近年、ディスプレイを2個搭載した電子機器が多く出回るようになってきた。このような電子機器では、2個のディスプレイを同時に使用する場合と、一方のディスプレイのみを使用する場合の2パターンの使用方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−295821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような電子機器において、一方のディスプレイのみ長時間使用し続けると、両ディスプレイにおいて輝度の劣化度合いに差が生じる場合もある。そこで、一方のディスプレイのみ長時間使用し、その後、2個のディスプレイを同時に使用すると、2個のディスプレイで輝度差が生じ、ユーザに違和感を与えるという問題がある。
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、2個のディスプレイを搭載した電子機器において、2個のディスプレイの点灯時間に差が生じた場合でも適切に輝度補正を行うことによって課題解決することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の電子機器は、駆動電流を受けて点灯する2個のディスプレイと、各ディスプレイに駆動電流を供給する駆動部と、各ディスプレイの累計点灯時間を計測する計測部と、両ディスプレイの累計点灯時間の差に応じて、前記駆動部から各ディスプレイに供給される駆動電流の値を決定する制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成により、2個の画面の点灯時間に差が生じた場合でも適切に輝度補正を行うことができる電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】電子機器1の機能ブロック図である。
【図2】輝度補正制御部106が保持する輝度劣化曲線120を示す図である。
【図3】輝度−電流特性130、140、150を示す図である。
【図4】補正輝度値の決定方法を説明するための図である。
【図5】補正輝度値の決定方法を説明するための図である。
【図6】補正輝度値の決定方法を説明するための図である。
【図7】補正輝度値の決定方法を説明するための図である。
【図8】電子機器1による輝度補正の動作を示すフローチャートである。
【図9】累積点灯時間差dTから駆動電流を決定するために用いるテーブル200のデータ構成を示す図である。
【図10】電子機器1を備えた携帯電話機300のブロック図である。
【図11】携帯電話機300の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本発明に係る電子機器の一つの実施形態である電子機器1について、図面を参照しながら説明する。
<構成>
図1は、電子機器1の構成を機能的に示す機能ブロック図である。
同図に示すように、電子機器1は、ディスプレイユニット101、ディスプレイユニット102、ドライバ103、ドライバ104、制御部105、輝度補正制御部106および駆動電流制御部107から構成される。電子機器1は、具体的には、プロセッサ、ROM、RAMなどを備えたコンピュータシステムである。制御部105、補正輝度制御部106および駆動電流制御部107は、ROMに記録されているコンピュータプログラムをプロセッサが実行することによりその機能を実現する。
【0010】
ディスプレイユニット101は、表示デバイスであるLCD(Liquid Crystal Display)111と、光源であるLED(Light Emitting Diode)バックライト112とから構成される。LCD111は、制御部105から出力される各種の画面を表示する。LEDバックライト112は、LCD111の背面に位置し、駆動電流の供給を受けて発光することによりLCD111を点灯させる。
【0011】
ディスプレイユニット102は、ディスプレイユニット101と同様に、LCD121とLEDバックライト122とから構成される。LCD121は、制御部105から出力される各種の画面を表示する。LEDバックライト122は、LCD121の背面に位置し、駆動電流の供給を受けて発光することによりLCD121を点灯させる。
駆動電流の電流値が増加した場合、LEDバックライト112および122は、明るく発光し(輝度が増加し)、駆動電流の電流値が減少した場合、LEDバックライト112および122は、暗く発光する(輝度が低下する)。
【0012】
ドライバ103は、ディスプレイユニット101のLEDバックライト112に駆動電流を供給する可変定電流回路である。ドライバ103は、駆動電流制御部109から入力される電流制御信号に応じた駆動電流を、LEDバックライト112に供給する。
ドライバ104は、ディスプレイユニット102のLEDバックライト122に駆動電流を供給する可変定電流回路である。ドライバ104は、駆動電流制御部109から入力される電流制御信号に応じた駆動電流を、LEDバックライト122に供給する。
【0013】
制御部105は、電子機器1の各機能ブロックと接続されており、電子機器1の全体を制御する。ここでは、ディスプレイの輝度制御についてのみ説明する。
制御部105は、図1に示すように、点灯フラグ151、点灯フラグ152、カウンタ153、カウンタ154、記憶部155、記憶部156、比較部157、および比較部158を含む。
【0014】
点灯フラグ151は、ディスプレイユニット101のLCD111が点灯しているか否かを示すフラグである。制御部105は、ドライバ103を監視し、ドライバ103からディスプレイユニット101へ駆動電流が供給されている間は、点灯フラグ151を「1」を設定し、駆動電流が供給されていない間は、点灯フラグ151を「0」に設定する。
点灯フラグ152は、ディスプレイユニット102のLCD121が点灯しているか否かを示すフラグである。制御部105は、ドライバ104を監視し、ドライバ104からディスプレイユニット102へ駆動電流が供給されている間は、点灯フラグ152を「1」に設定し、駆動電流が供給されていない間は、点灯フラグ152を「0」に設定する。
【0015】
カウンタ153は、点灯フラグ151に「1」が設定されている時間を計測する。
カウンタ154は、点灯フラグ152に「1」が設定されている時間を計測する。
カウンタ153および154は、計測している時間を、所定時間毎に記憶部156に書き込む。なお、カウンタ153および154は、必ずしも秒精度で時間を計測する必要はなく、少なくとも1時間〜数時間オーダーで時間を計測できればよい。
【0016】
記憶部155は、カウンタ153から出力された時間を記憶する。記憶部155は、カウンタ153から出力された値を蓄積して記憶してもよいし、常に新しい値を上書きして記憶してもよい。記憶部155が記憶している最新の時間を「累積点灯時間T」と記載する。
記憶部156は、カウンタ154から出力された時間を記憶する。記憶部156は、カウンタ154から出力された値を蓄積して記憶してもよいし、常に新しい値を上書きして記憶してもよい。記憶部156が記憶している最新の時間を「累積点灯時間をT」と記載する。
【0017】
比較部157は、記憶部155に記憶されている累積点灯時間Tと、記憶部156に記憶されている累積点灯時間Tとを定期的に比較し、TとTの差分である累積点灯時間差dTを、比較部158に出力する。
比較部158は、比較部157から累積点灯時間差dTを受け取ると、予め保持している基準時間Tと、累積点灯時間差dTとを比較する。累積点灯時間差dTが、基準時間T以上であれば、制御部105は、輝度補正制御部106へ補正指示を出力する。このとき、制御部105から輝度補正制御部106へ、ディスプレイユニット101の累積点灯時間Tと、ディスプレイユニット102の累積点灯時間Tとが通知される。なお、基準時間Tは、一例として1000時間である。
【0018】
輝度補正制御部106は、図2に示す輝度劣化曲線120を記憶している。ここでは説明の便宜上グラフを用いて説明するが、実際には、輝度補正制御部106は、輝度劣化曲線120を示す数式を記憶している。
輝度劣化曲線120は、ディスプレイユニット101および102について、累積点灯時間と輝度劣化度との関係を表している。なお、本実施形態では、ディスプレイユニット101および102は、同一構造であり、同一の輝度劣化特性を有するものと仮定する。
【0019】
図2に示すように、累積点灯時間が0のとき、すなわち、電子機器1の使用が開始された初期状態の輝度をLとすると、累積点灯時間が5000時間のとき、輝度はLから10%低下してLとなる。さらに時間が経過し、累積点灯時間が7500時間のとき、輝度はLから15%低下してLとなる。
輝度補正制御部106は、初期状態の輝度の値Lを記憶している。
【0020】
輝度補正制御部106は、制御部105から補正指示と共に累積点灯時間Tおよび累積点灯時間Tを受け取ると、輝度L、累積点灯時間T、および輝度劣化曲線120を用いて、ディスプレイユニット101の現在の輝度を予測する。同様に、輝度補正制御部106は、輝度L、累積点灯時間T、および輝度劣化曲線120を用いて、ディスプレイユニット102の現在の輝度を予測する。例えば、T=5000時間の場合、ディスプレイユニット101の輝度はLに劣化したと予測できる。また、T=7500時間の場合、ディスプレイユニット102の輝度はLに劣化したと予測できる。
【0021】
なお、本実施形態では、ディスプレイユニット101および102は、同一構造であり、同一の輝度劣化特性を有するものと仮定しているので、輝度劣化曲線120を用いて、両ディスプレイの劣化後の輝度を予測することが可能である。各ディスプレイユニットが異なる特性を有する場合には、各ディスプレイそれぞれに対応する輝度劣化曲線を保持しておく必要がある。
【0022】
輝度補正制御部106は、予測された各ディスプレイの劣化後の輝度の値を基に、補正輝度Lの値を決定する。ここでは一例として、補正輝度Lは、LとLとの中間の値とする(L=(L+L)/2)。
輝度補正制御部106は、ディスプレイユニット101の輝度Lとディスプレイユニット102の輝度Lと補正輝度Lとを、駆動電流制御部107へ出力する。また、輝度補正制御部106は、次回の補正のために、補正輝度Lの値を内部の記憶しておく。
【0023】
駆動電流制御部107は、初期状態の駆動電流の値である初期電流値Iを記憶している。
駆動電流制御部107は、初期電流値Iと、ディスプレイユニット101の劣化後の輝度Lとを用いて、ディスプレイユニット101の劣化後の輝度−電流特性140を生成する。同様に、駆動電流制御部107は、初期電流値Iと、ディスプレイユニット102の劣化後の輝度Lとを用いて、ディスプレイユニット102の劣化後の輝度−電流特性150を生成する。
【0024】
図3は、ディスプレイユニット101および102の初期状態の輝度−電流特性130と、ディスプレイユニット101の劣化後の輝度−電流特性140と、ディスプレイユニット102の劣化後の輝度−電流特性150とを表している。ディスプレイユニット101および102の輝度は、駆動電流に対してほぼ線形的に変化するので、輝度−電流特性140は、輝度=(L/I)×駆動電流と表すことができる。同様に、輝度−電流特性150は、輝度=(L/I)×駆動電流と表すことができる。
【0025】
駆動電流制御部107は、輝度−電流特性140と補正輝度の値Lとを用いて、ディスプレイユニット101に供給すべき駆動電流の値を算出し、輝度−電流特性150と補正輝度の値Lとを用いて、ディスプレイユニット102に供給すべき駆動電流の値を算出する。
図4を用いて説明すると、ディスプレイユニット101については、現在の輝度Lを、補正輝度Lまで下げる必要がある。そのため、駆動電流の値を現在のIからI(1)へ減少させる必要がある。一方、ディスプレイユニット102については、現在の輝度Lを、補正輝度Lまで上げる必要がある。そのため、駆動電流の値を現在のIからI(1)へ増加させる必要がある。
【0026】
駆動電流制御部107は、ディスプレイユニット101に供給する駆動電流の値I(1)を算出すると、ドライバ103に対して、I(1)を示す電流制御信号を出力する。同様に、駆動電流制御部107は、ディスプレイユニット102に供給する駆動電流の値I(1)を算出すると、ドライバ104に対して、I(1)を示す電流制御信号を出力する。また、駆動電流制御部107は、次回の補正のために、I(1)およびI(1)の値を内部に記憶しておく。
【0027】
なお、2個のディスプレイユニットの輝度差を改善するという本発明の趣旨を鑑みれば、補正輝度Lの値はLとLとの中間の値に限定されないのは勿論である。補正輝度Lとして任意の値を用いることができる。
ただし、輝度補正のために消費電流量が大幅に増加するのは好ましくない。二次電池により駆動する携帯型端末は、二次電池の持ち時間および寿命の長期化に対する要望が強い。輝度補正のために消費電流量が大幅に増加すると、二次電池の持ち時間および寿命に影響を与えるため、電子機器1が携帯型端末の場合には特に好ましくない。
【0028】
そこで、図5に示すように、ディスプレイユニット101の劣化後の輝度Lおよびディスプレイユニット102の劣化後の輝度Lのうち、低い輝度であるLの値を、補正輝度Lとしてもよい。
この場合、ディスプレイユニット101に供給する駆動電流の値はI(1)に補正する必要があるが、ディスプレイユニット102に供給する駆動電流の値はIのままでよい。また、この場合、I(1)+I(1)=I(1)+I>2Iとなり、輝度補正の前後において、消費電流量を低減させることができる。
【0029】
更に時間が経過して、ディスプレイユニット101および102の累積点灯時間に再度差が生じた場合にも、制御部105、輝度補正制御部106、および駆動電流制御部107は、上記の処理を繰り返すことにより輝度補正を行う。
簡単に説明すると、輝度補正制御部106は、輝度劣化曲線120および前回の補正輝度Lと、各ディスプレイユニットの累積点灯時間とを用いて、各ディスプレイユニットの現在の輝度LおよびLを予測する。そして、輝度補正制御部106は、補正輝度L(=(L+L)/2)を決定する。
【0030】
駆動電流制御部107は、図6に示すように、ディスプレイユニット101について、現在の輝度Lと、現在の駆動電流I(1)とから新たな輝度−電流特性160を生成する。同様に、ディスプレイユニット102について、現在の輝度Lと、現在の駆動電流I(1)とから新たな輝度−電流特性170を生成する。
そして、駆動電流制御部107は、輝度−電流特性160と補正輝度の値Lとを用いて、ディスプレイユニット101に供給する駆動電流の値I(2)を算出し、輝度−電流特性170と補正輝度Lとを用いて、ディスプレイユニット102に供給する駆動電流の値I(2)を算出する。
【0031】
また、ディスプレイユニット101の劣化後の輝度Lおよびディスプレイユニット102の劣化後の輝度Lのうち、低い輝度であるLの値を、補正輝度Lとする場合には、図7に示すように、駆動電流制御部107は、ディスプレイユニット101に供給する駆動電流の値I(2)を算出するが、ディスプレイユニット102に供給する駆動電流の値I(2)を算出する必要は無く、I(1)を用いればよい。
<動作>
ここでは、図8に示すフローチャートを用いて、電子機器1による輝度補正の動作について説明する。
【0032】
比較部157は、記憶部155から累積点灯時間Tを取得し、記憶部156から累積点灯時間Tを取得する(ステップS1)。比較部157は、TおよびTを比較し、その差分である累積点灯時間差dTを、比較部158に出力する。
比較部158は、累積点灯時間差dTと基準時間Tとを比較する。累積点灯時間差dTが、基準時間T未満であれば(ステップS2でNO)、電子機器1は、ステップS1に戻り処理を続ける。累積点灯時間差dTが、基準時間T以上であれば(ステップS2でYES)、制御部105は、輝度補正制御部106へ補正指示を出力する。
【0033】
輝度補正制御部106は、輝度劣化曲線120を用いて、ディスプレイユニット101およびディスプレイユニット102の現在の輝度値LおよびLを取得する(ステップS3)。そして、LおよびLから、補正輝度値Lを決定する(ステップS4)。
駆動電流制御部107は、現在の駆動電流の値I(n)およびI(n)を取得する(ステップS5)。上述したように、駆動電流制御部107は現在の駆動電流の値I(n)およびI(n)を内部に記憶していることとしたが、例えば、制御部105が、ドライバ103およびドライバ104から駆動電流の値を取得して、駆動電流制御部107に通知するとしてもよい。
【0034】
駆動電流制御部107は、現在の輝度値Lと駆動電流の値I(n)とから、ディスプレイユニット101の輝度−電流特性を生成する(ステップS6)。さらに、駆動電流制御部107は、ステップS6で生成した輝度−電流特性と補正輝度値Lとを用いて、駆動電流I(n+1)を算出する(ステップS7)。
駆動電流制御部107は、現在の輝度値Lと駆動電流の値I(n)とから、ディスプレイユニット102の輝度−電流特性を生成する(ステップS8)。さらに、駆動電流制御部107は、ステップS8で生成した輝度−電流特性と補正輝度値Lとを用いて、駆動電流I(n+1)を算出する(ステップS9)。
【0035】
駆動電流制御部107は、ドライバ103へ駆動電流I(n+1)を示す電流制御信号を出力し、ドライバ104へ駆動電流I(n+1)を示す電流制御信号を出力する(ステップS10)。
ドライバ103およびドライバ104は、それぞれ、電流制御信号が示す駆動電流をディスプレイユニット101およびディスプレイユニット102に供給する(ステップS11)。
【0036】
ディスプレイユニット101のLEDバックライト112およびディスプレイユニット102のLEDバックライト122は、駆動電流を受けて発光することにより、LCD111およびLCD121を点灯させる(ステップS12)。
その後、電子機器1は、ステップS1に戻り処理を続ける。
<変形例>
以上、本発明に係る電子機器の輝度制御の実施形態を説明したが、例示した電子機器1を以下のように変形することも可能であり、本発明が上述の実施形態で示したとおりの電子機器1に限られないことは勿論である。
(1)上記の実施形態では、ディスプレイユニット101および102は、輝度の値が駆動電流の値に比例して大きくなる特性を有していた。しかし、本発明に用いられるディスプレイはこの構成に限定されない。輝度の値が駆動電流の値に比例しない特性を有するディスプレイを用いてもよい。その場合、駆動電流制御部107は、輝度−電流特性を示すテーブル若しくは数式を予め保持しておき、これらを用いて、補正後の駆動電流の値を算出するとしてもよい。
【0037】
また、各ディスプレイの輝度−電流特性が異なる場合にも、駆動電流制御部107は、ディスプレイ毎に輝度−電流特性を示すテーブル若しくは数式を予め保持しておき、これらを用いて、補正後の駆動電流の値を決定するとしてもよい。この構成により、電子機器1は用途に応じた各種のディスプレイを搭載することができる。
(2)上記の実施形態では、2個のディスプレイは同一の輝度劣化特性を有していた。しかし、本発明に用いられるディスプレイはこの構成に限定されない。各ディスプレイが異なる輝度劣化特性を有する場合には、輝度補正制御部106は、各ディスプレイそれぞれに対応する輝度劣化曲線を予め保持しておき、これを用いて劣化後の輝度の値を算出するとしてもよい。この構成により、電子機器1は用途に応じた各種のディスプレイを搭載することができる。
(3)補正輝度の決定方法は、上記の実施形態に限定されない。例えば、図4を用いて説明した輝度Lおよび輝度Lの間のいずれかの値を補正輝度Lとしてもよい。この構成によると、輝度補正の前後において急激に両ディスプレイの輝度が変化することが無いので、補正時にユーザに与える違和感を低減することができる。
【0038】
また、ドライバ103およびドライバ104から各ディスプレイユニットに供給される駆動電流の合計値が初期状態の電流量(2I)から変化しないような輝度値を補正輝度Lとしてもよい。この構成によると、輝度補正の前後でディスプレイ点灯のための電流量が変化しない範囲で最も明るい輝度に補正することができる。これにより、電子機器1が、内部に二次電池を有する携帯電話機などの場合であっても二次電池の持ち時間や寿命に影響を与えず、また、可能な限りディスプレイの見易さを損なわずに輝度補正を行うことができる。
(4)2個のディスプレイユニットの使用形態が予め定まっている場合には、電子機器1は、ディスプレイユニット101および102の累積点灯時間差dTから、各ディスプレイユニットに供給する駆動電流の値を決定してもよい。
【0039】
例えば、2個のディスプレイユニットが独立して点灯するのではなく、ディスプレイユニット102のみ単独で点灯可能であり、ディスプレイユニット101は、ディスプレイユニット102が点灯しているときにディスプレイユニット102に付随して点灯するような場合が想定される。
このような場合に、制御部105は、図9に示すテーブル200を予め内部に記憶しておく。比較部157から出力される累積点灯時間差dTが2000時間になると、制御部105は、累積点灯時間の短いディスプレイユニット101に対しては、駆動電流I(1)を供給するように、対応するドライバ103に電流制御信号を出力し、累積点灯時間の長いディスプレイユニット102に対しては、駆動電流I(1)を供給するように、対応するドライバ104に電流制御信号を出力する。
【0040】
同様に、比較部157から出力される累積点灯時間差dTが4000時間になると、制御部105は、累積点灯時間の短いディスプレイユニット101に対しては、駆動電流I(2)を供給するように、対応するドライバ103に電流制御信号を出力し、累積点灯時間の長いディスプレイユニット102に対しては、駆動電流I(2)を供給するように、対応するドライバ104に電流制御信号を出力する。
【0041】
この構成により、ディスプレイの使用形態が予め定まっている場合、テーブルを記憶しておくことにより簡便に輝度補正を行うことができる。
(5)本発明は、電子機器1を備えた携帯電話機であってもよい。例えば、図10に示すように、本発明に係る携帯電話機300は、上記の実施形態に係る電子機器1と、アンテナ301、無線通信部302、信号処理部303、レシーバ304、スピーカ305、マイク306および操作入力部307とから構成される。図11は、携帯電話機300の外観図である。図11に示すように、携帯電話機300は、2個のディスプレイユニット101および102を備える。ディスプレイユニット101および102は、タッチパネルを有し、操作入力部307の機能を備えていてもよい。
【0042】
また、電子機器1を備えた携帯電話機に限定されず、電子機器1を備えたPDA(PersonalDigital Assistant)、携帯型ゲーム機、携帯型音楽プレーヤなど各種の情報端末も本発明に含まれる。
(6)上記の実施形態では、LCDとLEDバックライトとから構成されるディスプレイユニットを用いていた。しかし、本発明に係るディスプレイはこの構成に限定されず、有機ELディスプレイを用いてもよい。
【0043】
また、上記の実施形態では、LCDの光源はLEDバックライトに限定されず、サイドライト、フロントライト等、バックライト以外の周辺光で実現してもよい。
また、ディスプレイユニット101および102は、タッチパネルを含み、操作入力部としての機能を備えていてもよい。
(7)上記の実施形態および上記の変形例を適宜組み合わせてもよい。
<補足>
以下、更に本発明の一実施形態としての電子機器の構成およびその変形例と効果について説明する。
(a)本発明の一実施形態に係る電子機器は、駆動電流を受けて点灯する2個のディスプレイと、各ディスプレイに駆動電流を供給する駆動部と、前記各ディスプレイの累計点灯時間を計測する計測部と、前記各ディスプレイの累計点灯時間の差に応じて、前記駆動部から各ディスプレイに供給される駆動電流の値を決定する制御部とを備えることを特徴とする。
【0044】
この構成によると、点灯時間の差に応じて各ディスプレイの駆動電流を決定するので、2個のディスプレイを同時に使用したり、一方のディスプレイのみを使用したりすることにより、2個のディスプレイの点灯時間に差が生じた場合でも、適切に輝度補正を行うことができる。
(b)前記電子機器において、前記制御部は、前記各ディスプレイの累計点灯時間から各ディスプレイの輝度差を予測し、前記輝度差が小さくなるように、前記各ディスプレイに供給される駆動電流の値を決定することを特徴とする。
【0045】
この構成によると、2個のディスプレイの点灯時間に差による輝度差が生じた場合でも、適切に輝度補正を行うことができる。
(c)前記電子機器において、前記制御部は、各ディスプレイの累積点灯時間から、各ディスプレイの輝度値を予測する輝度予測部と、予測された2個の輝度値のうち、高い輝度値を上限値とし、かつ、低い輝度値を下限値とする補正輝度値を決定する補正輝度決定部と、各ディプレイが前記補正輝度値で点灯するように、各ディスプレイに供給される駆動電流の値を決定する駆動電流決定部とを備えることを特徴とする。
【0046】
この構成によると、輝度補正の前後において、各ディスプレイに供給される駆動電流および各ディスプレイの輝度が急激に変化することがないので、機器の動作に与えるインパクトを低減し、かつ、ユーザに与える違和感も低減することができる。
(d)前記電子機器において、前記補正輝度決定部は、前記上限値および前記下限値の中間の値を前記補正輝度値とすることを特徴とする。
【0047】
この構成によると、補正後の各ディスプレイの輝度は、補正前の各ディスプレイ輝度の中間の輝度になるので、ユーザに与える違和感を最小限に抑えることができる。
(e)前記電子機器において、前記補正輝度決定部は、前記下限値を前記補正輝度値とすることを特徴とする。
携帯電話機等、二次電池を内蔵した携帯型端末は、二次電池の持ち時間および寿命の長期化に対するユーザの要望が強い。輝度補正のために消費電流量が大幅に増加すると、二次電池の持ち時間や寿命に影響を与えるため、輝度補正によって消費電流量が大幅に増加することは携帯電話機のユーザにとっては特に好ましくない。
【0048】
そこで、上記の構成によると、輝度補正の前後において、ディスプレイの点灯に関する消費電流量の変動を低減させることができるので、充電池の持ち時間および寿命への影響を抑制することができる。
(f)前記電子機器において、前記補正輝度決定部は、前記2個のディスプレイに供給される駆動電流の合計値が増加しないように前記補正輝度値を決定することを特徴とする。
【0049】
この構成によると、輝度補正の前後でディスプレイ点灯のための電流量が変化しない範囲で最も明るい輝度に補正することができる。これにより、内部に二次電池を有する携帯電話機などに当該電子機器を用いる場合であっても、二次電池の持ち時間や寿命に影響を与えず、また、可能な限りディスプレイの見易さを損なわずに輝度補正を行うことができる。
(g)前記電子機器において、前記輝度予測部は、ディスプレイの累積点灯時間と予測される輝度値との対応付けを示す輝度劣化情報を記憶しており、前記輝度劣化情報を用いて、前記各ディスプレイの輝度値を予測し、前記駆動電流決定部は、予測された輝度値と前記各ディスプレイに供給されている現在の駆動電流の値とから輝度−電流特性情報を生成し、生成した前記輝度−電流特性情報と前記補正輝度値とを用いて、各ディスプレイに供給する駆動電流の値を決定することを特徴とする。
【0050】
この構成によると、電子機器は、予め内部に輝度劣化情報のみ記憶しておけば、累積点灯時間を測定するだけで劣化後の輝度の予測および駆動電流量の決定を行うことができる。
(h)前記電子機器において、前記制御部は、前記2個のディスプレイの累計点灯時間の差が所定時間を超える毎に処理を行うことを特徴とする。
【0051】
通常、ディスプレイの輝度差がユーザに違和感を与えるのは、各ディスプレイの累積点灯時間の差が1000時間を超えている場合が多い。そのため、輝度補正を頻繁に実行する必要は無い。
上記の構成によると、制御部は、ディスプレイの輝度差がユーザに違和感を与えるような所定時間を超える毎に輝度補正を行うことができる。
(i)本発明の一実施形態に係る携帯電話機は、駆動電流を受けて点灯する2個のディスプレイと、各ディスプレイに駆動電流を供給する駆動部と、前記各ディスプレイの累計点灯時間を計測する計測部と、前記各ディスプレイの累計点灯時間の差に応じて、前記駆動部から各ディスプレイに供給される駆動電流の値を決定する制御部とを備えることを特徴とする。
【0052】
この構成によると、点灯時間の差に応じて各ディスプレイの駆動電流を決定するので、2個のディスプレイを同時に使用したり、一方のディスプレイのみを使用したりすることにより、2個のディスプレイの点灯時間に差が生じた場合でも、適切に輝度補正を行うことができる。

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は2個のディスプレイユニットを備える電子機器を製造および販売する産業において、各ディスプレイの輝度補正を行う仕組みとして利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 電子機器
101 ディスプレイユニット
102 ディスプレイユニット
103 ドライバ
104 ドライバ
105 制御部
106 輝度補正制御部
107 駆動電流制御部
111 LCD
112 LEDバックライト
121 LCD
122 LEDバックライト
151 点灯フラグ
152 点灯フラグ
153 カウンタ
154 カウンタ
155 記憶部
156 記憶部
157 比較部
158 比較部
300 携帯電話機
301 アンテナ
302 無線通信部
303 信号処理部
304 レシーバ
305 スピーカ
306 マイク
307 操作入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動電流を受けて点灯する2個のディスプレイと、
各ディスプレイに駆動電流を供給する駆動部と、
各ディスプレイの累計点灯時間を計測する計測部と、
両ディスプレイの累計点灯時間の差に応じて、前記駆動部から各ディスプレイに供給される駆動電流の値を決定する制御部と
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記制御部は、
各ディスプレイの累計点灯時間から各ディスプレイの輝度差を予測し、前記輝度差が小さくなるように、前記各ディスプレイに供給される駆動電流の値を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記制御部は、
各ディスプレイの累積点灯時間から、各ディスプレイの輝度値を予測する輝度予測部と、
予測された2個の輝度値のうち、高い輝度値を上限値とし、かつ、低い輝度値を下限値とする補正輝度値を決定する補正輝度決定部と、
各ディプレイが前記補正輝度値で点灯するように、各ディスプレイに供給される駆動電流の値を決定する駆動電流決定部と
を備えることを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記補正輝度決定部は、
前記上限値および前記下限値の中間の値を前記補正輝度値とする
ことを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記補正輝度決定部は、
前記下限値を前記補正輝度値とする
ことを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項6】
前記補正輝度決定部は、
前記2個のディスプレイに供給される駆動電流の合計値が増加しないように前記補正輝度値を決定する
ことを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項7】
前記輝度予測部は、
ディスプレイの累積点灯時間と予測される輝度値との対応付けを示す輝度劣化情報を記憶しており、前記輝度劣化情報を用いて、前記各ディスプレイの輝度値を予測し、
前記駆動電流決定部は、
予測された輝度値と前記各ディスプレイに供給されている現在の駆動電流の値とから輝度−電流特性情報を生成し、生成した前記輝度−電流特性情報と前記補正輝度値とを用いて、各ディスプレイに供給する駆動電流の値を決定する
ことを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項8】
前記制御部は、
前記2個のディスプレイの累計点灯時間の差が所定時間を超える毎に処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項9】
請求項1に記載の電子機器を備えた携帯電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−3179(P2013−3179A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130852(P2011−130852)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】