電子注入層としてアゾメチン−リチウム−錯体を使用するエレクトロルミネッセンス素子
OLEDにおいて、とりわけ、電子注入層を形成することのできる式(I)の新規な化合物(R1は、1以上のC1-C4アルキル、アルコキシ或いはシアノで置換されてもよい、1〜5環アリール(ポリ環状を含む)、アラルキル若しくはヘテロアリール基であり;R2とR3は、一緒になって、C1-C4アルキル、アルコキシ或いはシアノで置換されてもよい1〜5環アリール(ポリ環状を含む)、アラルキル若しくはヘテロアリール基を形成し;R4は、水素、C1-C4アルキル或いはアリールであり;及びArは、1以上のC1-C4アルキル或いはアルコキシ基で置換されてもよい、単環状、二環状或いは三環状アリール若しくはヘテロアリールである。)または、そのオリゴマーによって、改善された効率が得られる。
【化1】
【化1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、前記化合物と1以上のドーパントを含むもの及びそれらの電子光学或いは光学電子光学素子での、特に、光発光素子での、例えば、電子注入層での使用に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、アルミニウム陰極とアルミニウムキノレート電子輸送層との間の、例えば、薄い(0.1〜1.0mm)LiF層を基礎とするOLEDのための二層陰極は、著しく改善されたI−V特性とEL効率を示すことを開示している。OLEDにおいては、そのより高い移動度とより低い注入バリヤの結果、大部分のキャリアは正孔であると、彼らは説明している。したがって、電子注入へのバリヤ高さを低めることは、電子及び正孔流のより良いバランスを生じ、固定バイアス電圧での輝度の劇的な増加をもたらすことから、特別に重要である。LiFのCsF若しくはアルカリ土類フッ化物での置き代えも、検討されている。
【0003】
特許文献1は、OLEDの製造中に、リチウムの超薄層上に有機電子注入層を堆積することによるか、有機電子注入層上にリチウムの超薄層を堆積することによるかの何れかにより、有機電子注入層が金属でドープされ得ることを開示しており、有機材料は、例えば、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(BCP或いはバソクプロイン)である。金属ドープ電子注入層の使用は、また、特許文献2に開示され、前記層の有機成分は、例えば、以下に示される化合物である:
【化1】
【0004】
特許文献3は、エレクトロルミネッセンス層中若しくは電子輸送層中のホスト材料として、二重へテロ構造OLED中での金属シッフ塩基錯体の使用を開示している。錯体は、アルミニウム、スカンジウム、イットリウム或いは希土類金属系であり、シッフ塩基配位子は、二価であり、例えば、下式である。
【化2】
【0005】
しかしながら、OLEDのための電子注入材料としての金属シッフ塩基錯体の使用は、Herron et al.には開示されていないし、示唆されてもいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US-A-6885149 (Parthasarathy et al.., Princeton University)
【特許文献2】US-A-7114638
【特許文献3】US-A-20060040139 (Herron et al., Du Pont)
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Hung et al.,「分子有機エレクトロルミネッセンス材料及び素子の最近の進歩」 Materials Science and Engineering, R 39 (2002), 143-222
【発明の概要】
【0008】
本発明が関心のある課題は、改善された性能のOLEDを提供することである。本発明が関心のある更なる課題は、OLEDの層材料或いは組成物、例えば、電子注入材料として有益な有機材料を提供することである。
【0009】
一つの面で、本発明は、下記式の化合物または、それらのオリゴマーを提供する。
【化3】
【0010】
ここで、
R1は、1以上のC1-C4アルキル(例えば、メチル)、アルコキシ(例えば、メトキシ)或いはシアノで置換されてよい、1〜5環アリール(ポリ環状を含む)、アラルキル若しくはヘテロアリール基であり、
R2とR3は、一緒になって、C1-C4アルキル(例えば、メチル)、アルコキシ或いはシアノで置換されてよい1〜5環アリール(ポリ環状を含む)、アラルキル若しくはヘテロアリール基を形成し、
R4は、水素、C1-C4アルキル(例えば、メチル)、アリール(フェニル或いはナフチル)或いはヘテロアリールであり、及び
Arは、1以上のC1-C4アルキル或いはアルコキシ基で置換されてよい、単環状、二環状或いは三環状アリール若しくはヘテロアリールである。
【0011】
R4が水素である上記式の化合物は、芳香族若しくは複素環式芳香族一級アミンを、芳香族若しくは複素環式芳香族アルデヒドと反応させてシッフ塩基を生成し、続いてシッフ塩基とリチウム化合物、例えば、リチウムアルコキシド、例えば、リチウムt-ブトキシドと反応させることにより、製造され得る。R4がアルキル、アリール若しくはヘテロアリールである上記式の化合物は、同様に、芳香族若しくは複素環式芳香族二級アミンから出発して製造され得る。
【0012】
上記式の化合物は、電子注入層として使用されると、LiFと同等の性能を与え、いくつかの具体例では、より良好な性能を与えるが、LiFに付随する過酷な堆積条件を必要としないという利点を有する。化合物の具体例は、空気中で取り扱うことができ、LiFのために必要とされるよりも顕著に低い温度(図13)、例えば、約250℃未満で真空昇華により堆積することができる。真空昇華に加えて、化合物の具体例は、特に、Universal Display Corporationにより説明された有機蒸気相堆積(OVPD)プロセスにより堆積することができ、そこでは、有機フィルムは、加熱された壁と低圧(典型的には、0.1〜1Torr)の室内で有機材料のフィルムを冷却された基板上に移送するために、不活性キャリアガスを使用して堆積される。プロセスは、真空昇華と比べて比較的高い堆積速度を達成し、画素のアレーを形成するためのより良好なシャドーマスクパターンニングを可能とし、比較的大きなサイズの基板のために有益であると述べられている。それらは、有機材料とキャリアガスの平行蒸気ジェットを生成し、冷却された基板にジェットを当てる有機蒸気ジェット印刷(OVJP)により、堆積されることができ、十分に規定された堆積、例えば、個々の画素を生成する。Shtein et al.「有機蒸気ジェット印刷を使用する分子状有機半導体の直接的マスク不用パターン形成」DJ. Appl. Phys., 2004, 96(8), 4500 及び WO 2005/043641 (Shtein et al.).参照。上記化合物の具体例は、有機溶媒中に溶解し、また堆積されることができ、溶液被覆、例えば、スピンコートにより若しくはインクジェット印刷により層若しくは画素を形成するが(その内容が、ここで参照により組み込まれる、WO 03/067679及び Bharathan et al.,「インクジェット印刷により製造されるポリマーエレクトロルミネッセンス素子」Alppl Phys. Lett., (1998) 72(21), 2660参照。)、良好な溶液加工特性は、電導性ポリマー、例えば、PEDOTを基礎とする素子、例えば、ポリマーOELDの素子の製造において、顕著に有利である。単純な有機溶媒、例えば、アルコール或いはクロロホルムを使用するインクジェット印刷が報告されている。好ましいインクジェット印刷は、圧電変形を使用しており、適切な溶媒は、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、キシレン、N-メチルピロリドン、ジオキサン及び他の高沸点エーテル、ジクロロベンゼン並びにポリヒドロキシ化合物である。同様の溶媒が、スピンコートで使用することができる。いくつかの具体例では、上記記載の化合物は、電子注入層として使用されると、LiFのような無機電子注入体の使用と比べて減少したドリフト電圧と増加した素子寿命を生じる。
【0013】
その式が上記で提示される化合物は、MS測定から、クラスター化合物若しくは、上に提示される式の2〜8分子が結合するオリゴマーを、例えば、三量体、四量体、六量体、十量体オリゴマーを形成することのできると考えられる。本発明は、この理論の正確性に依存するものではないが、本発明の化合物は、いくつかの具体例では、六員環中に交互にLiとO原子を有するコア構造を有する三量体単位で結合し、これら三量体単位が、更に、対になって結合し得ると考えられる。リチウムキノレート中のこのような構造の存在は、結晶学により検出されてきた。その内容が、ここで参照により組み込まれる、Begley et al., ヘキサキス(μ-キノリン-8-オレート)ヘキサリチウム(I):中央対称二重畳み込み三量体, Acta Cryst. (2006), E62, m1200-m1202,参照。再度、本発明は、この理論の正確性に依存するものではないが、この型のオリゴマー構造の形成は、真空昇華により比較的低温度で堆積することを可能とする本発明の多くの化合物の揮発性の原因であり得るLi-O結合に、より大きな共有結合的性格を付与すると考えられる。しかしながら、他の構造、例えば、球状構造もまた可能であり得る。
【0014】
更なる面では、本発明は、上記定義されるとおりの化合物を含む層を有する電子光学或いは光電子工学素子を提供する。このような素子は、OLED、また、例えば、有機光トランジスタ、有機光セル、有機光検出器、二安定有機分子を基礎とする電子貯蔵素子と静電潜像生成のための光伝導性画像処理要素を含む。
【0015】
なお更なる面では、本発明は、第1の電極と、上記提示されるとおりの化合物を含む層と第2の電極とを有する光発光ダイオード素子を提供する。層は、具体例では陰極上に位置し、電子注入層である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図2】図2は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図3】図3は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図4】図4は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図5】図5は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図6】図6は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図7】図7は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図8】図8は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図9】図9は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図10】図10は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図11】図11は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図12】図12は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図13】図13は、本発明の化合物のための及びフッ化リチウムのための温度の関数としての真空昇華速度を示すグラフである。
【0017】
好ましい特徴の説明
ドープ材料
その式が上で提示される化合物は、一連の目的のために、一連の材料で、ドープされてよい。
【0018】
電子注入層として機能すべきところでは、それらは、低い仕事関数の金属、例えば、Li、Cs、K、Ca、Ba若しくはそれらの錯体により、例えば、化合物がドープされることを望まれる金属の蒸気への真空中での曝露により、ドープされてよい。例えば、US-A-2006/0079004(Werner et al,その記載は、ここで参照により組み込まれる。)は、Csドープ有機半導体は比較的高い安定性を示すが故に、Csが通常使用されると説明している。Csへの有機半導体の曝露によるドーピングは、GaCs合金、例えば、Ga7Cs11を使用して約300℃の穏やかな温度で実行することができる。それらは、錯体、例えば、キノレートで混合され或いはドープされてよい。
【0019】
その式が上で提示された化合物は、他の電子輸送材料と混合されてよい。Kulkarni et al., Chem. Mater. 2004, 16, 4556-4573(その内容は、参照により、ここに組み込まれる。)は、有機発光ダイオード(OLED)の性能を向上するために使用される電子輸送材料(ETM)に関する文献を概説している。本発明の化合物が混合されることのできる非常に多くの有機材料に加えて、彼らは、アルミニウムキノレートを含む本発明の化合物が追加的にまたは代替として混合されてもよい金属キレート化合物を検討しており、かれらは、高いEA(〜−3.0eV;本出願人により−2.9eVとして測定された)とIP(〜−5.95eV;本出願人により−5.7eVと測定された)、良好な熱的安定性(Tg〜172℃)と真空蒸発によるピンホールのない薄膜の容易な堆積のようなその優れた特性に基づいて依然として最も広範に研究されていると説明している。アルミニウムキノレートは、依然として、エレクトロルミネッセンス層を与えるために種々の蛍光材料でドープされるホスト材料としての使用のためと電子輸送層としての使用のための双方の好適な材料である。更に最近では、ジルコニウム及びハフニウムキノレートが、電子輸送材料として開示されてきたが、その内容が、ここで参照により組み込まれるPCT/GB2007/050737 (Kathirgamanathan et al.)を参照すると、その式が上で提示される化合物は、ジルコニウム或いはハフニウムキノレートと混合されてもよい。例えば、2-(4-ビフェニルイル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(PBD)と3-(4-ビフェニルイル)-4-フェニル-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(PBD)のようなアゾール化合物;4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(DPA)と2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(DDPA)のようなフェナントロリン及びそれらの混合物が使用されてもよい。
【0020】
エレクトロルミネッセンス層に組み込まれると、上に提示される式の化合物は、ホスト材料として機能し得、蛍光材料と或いは燐光材料と混合或いはドープされ得る。このような材料は、エレクトロルミネッセンス層と関連して以下に概観される。
【0021】
セル構造
本発明のOLEDは、とりわけ、フラットパネルディスプレーに有益であり、陽極と陰極とその間に挟まれた、エレクトロルミネッセンス層、電子注入層及び/又は輸送層、正孔注入及び/又は輸送層及び随意に補助的層を含む多様な薄層を典型的には含む。層は典型的には連続的真空気相堆積操作により構築されるが、1以上の層、例えば、正孔注入及び正孔輸送層を他の方法、例えば、スピンコート或いはインクジェット印刷により形成することが都合がよいかもしれない。
【0022】
典型的な素子は、その上に陽極層、正孔注入(バッファー)層、正孔輸送層、エレクトロルミネッセンス層、電子輸送層、電子注入層と第2の透明基板が同様に積層されてもよい陽極層が連続的に形成される透明基板を含む。頂部発光OLEDは、ITO層、正孔注入層、正孔輸送層、エレクトロルミネッセンス層、電子輸送層、電子注入層とITO層或いは他の透明陰極を保持するアルミニウム若しくは他の金属基板でも可能であり、光は陰極を通じて放出される。更なる可能性は、アルミニウム或いは低い仕事関数の金属で合金化されたアルミニウム合金の陰極が、連続的に、電子注入層、電子輸送層、エレクトロルミネッセンス層、正孔輸送層、正孔注入層と、ITO層或いは他の透明導電性陽極を保持する逆OLEDであり、発光は陽極を通じてである。所望により、正孔障壁層が、例えば、エレクトロルミネッセンスと電子輸送層との間に挿入されてもよい。反射率に影響する材料、例えば、銅キノレート、バナジウムオキシキノレート或いはバナジウムテトラフェノキシフタロシアニン(例えば、WO 2007/052083 (Kathirgamanathan et al.)に記載され、その内容は、ここで参照により組み込まれる。)の層が組み込まれてもよい。
【0023】
本発明のOLEDは、小分子OLED、ポリマー発光ダイオード(p-OLED)、蛍光により発光するOLED、燐光により発光するOLED(PHOLED)、イオン蛍光(希土類錯体)により発光するOLEDを含み、また単色或いは多色アクティブ若しくはパッシィブマトリックスディスプレーを含む。
【0024】
OLEDの前板及び/又は後板は、マイクロレンズ或いはマイクロレンズアレー、例えば、OLED基板或いは板、例えば、OLEDの前板を形成するための基板或いは板に印刷された有機ポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート)のマイクロレンズアレーを有する前板及び/又は後板上に用意されてもよく、Sun et al.「平版印刷により製造されたマイクロレンズを介する向上されたアウトカップリングを有する有機発光素子」J. Appl. Phys. 100, 073106 (2006)及びWO 2003/007663 (Moler et al., Princeton)を参照されたい。プリズム状及びレンズ状フィルムは、Microsharp Corporation Limited of Watchfield, Oxfordshireから入手可能であり、マイクロレンズ状及びプリズム状シート材料は、3M Corporationから入手可能である。
【0025】
電導性基板:ITO/ガラス、透明金属被覆/ガラス、ATO、InZnO/ガラスがプラスチック基板上で使用されてもよい。伝導性ポリマー被覆プラスチック及びガラスが、例えば、陽極として使用されてよい。
【0026】
陽極
多くの具体例で、陽極はガラス或いは他の透明基板上に被覆された錫酸化物或いはインジウム錫酸化物の層により形成される。使用されてもよい他の材料は、アンチモン錫酸化物及びインジウム亜鉛酸化物を含む。基板に関しては、硬質或いは軟質透明プラスチック材料、好ましくは、寸法的に安定で、比較的高いTgの水(水蒸気を含む)不透過性である材料が使用されてもよい。PENが好ましい材料であるが、使用されてもよい他の材料は、PES、PEEKとPETを含む。プラスチックは電導性フィルムで被覆されてよく、耐湿性を改善し、それゆえ使用寿命を改善するためにバリヤ被覆を有してもよい。
【0027】
正孔注入材料
単一層が、陽極とエレクトロルミネッセンス材料との間に設けられてよいが、多くの具体例では、少なくとも二つの層が存在し、一つは、正孔注入層(バッファー層)であり、もう一つは、正孔輸送層であり、二つの層構造は、いくつかの具体例では、改善された安定性と素子寿命を与える(US-A-4720432 (VanSlyke et al., Kodak)参照。)。正孔注入層は、引き続く有機層の膜形成特性を改善し、正孔輸送層中への正孔の注入を容易にすることに役立ち得る。
【0028】
材料とセルの型に依存して、例えば、0.1〜200nmの厚さであり得る正孔注入層のための適切な材料は、正孔注入ポルフィリン化合物、例えば、亜鉛フタロシアニン銅フタロシアニンとその式が以下に提示されるZnTpTPを含む(US-A-4356429 (Tang, Eastman Kodak)参照。)。
【化4】
【0029】
特に良好な素子効率、ターンオン電圧及び/又は寿命は、エレクトロルミネッセンス層のためのホスト材料が、有機錯体、例えば、アルミニウムキノレートのような金属キノレートであるとき、また、ホスト材料が有機小分子材料であるときの両方で、正孔注入層がZnTpTPであるところで得られ得る。
【0030】
正孔注入層は、フルオロカーボンガスのプラズマ重合により形成されるフルオロカーボン系電導性ポリマー(US-A-6208075 (Hung et al; Eastman Kodak参照。)、トリアリールアミンポリマー(EP-A-0891121 (Inoue et al., TDK Corporation)参照。)若しくはフェニレンジアミン誘導体(EP-A- 1029909 (Kawamura et al., Idemitsu)参照。)であってもよい。
【0031】
正孔輸送材料
使用され得る正孔輸送層は、好ましくは、20〜200nmの厚さを有する。
【0032】
正孔輸送材料の一つのクラスは、スピンコートにより層として堆積され得るポリマー材料を含む。このようなポリマー正孔輸送材料は、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロールとポリアニリンを含む。他の正孔輸送材料は、共役ポリマー、例えば、ポリ(フェニレンビニレン)(PPV)とPPVを含むコポリマーである。他の好ましいポリマーは、ポリ(2,5-ジアルコキシフェニレンビニレン)、例えば、ポリ(2-メトキシ-5-(2-メトキシペンチルオキシ-1.4-フェニレンビニレン)、ポリ(2-メトキシペンチルオキシ)-1.4-フェニレンビニレン)、ポリ(2メトキシ-5-(2-ドデシルオキシ-1.4-フェニレンビニレン)と少なくともその一方が長鎖可溶性アルコキシ基である他のポリ(2,5-ジアルコキシフェニレンビニレン);ポリフルオレン及びオリゴフルオレン;ポリフェニレン及びオリゴフェニレン;ポリアントラセン及びオリゴアントラセン;並びにポリチオフェン及びオリゴチオフェンである。
【0033】
正孔輸送材料の更なるクラスは、昇華可能な小分子を含む。例えば、芳香族三級アミンが、好ましい正孔輸送材料のクラスを提供し、例えば、少なくとも二つの芳香族三級アミン部分を含む芳香族三級アミン(例えば、ビフェニルジアミン系のもの或いは「スターバースト」立体配置のもの)であるが、以下が代表である。
【化5】
【0034】
それは、更に、芳香族アミンであるスピロ結合分子、例えば、スピロ-TAD(2,2’,7,7’-テトラキス-(ジフェニルアミノ)-スピロ-9,9’-ビフルオレンン)を含む。
【0035】
小分子正孔輸送材料の更なるクラスは、WO 2006/061594 (Kathirgamanathan et al)に開示されており、ジアミノジアントラセン系である。典型的な化合物は、
9-(10-(N-(ナフタレン-1-イル)-N-フェニルアミノ)アントラセン-9-イル)-N-(ナフタレン-1-イル)-N-フェニルアントラセン-10-アミン;
9-(10-(N-(ビフェニル-N-2-m-トリルアミノ)アントラセン-9-イル)-N-ビフェニル-N-2-m-トリルアミノ-アントラセン-10-アミン;及び
9-(10-(N-(フェニル-N-m-トリルアミノ)アントラセン-9-イル)-N-フェニル-N-m-トリルアントラセン-10-アミン
を含む。
【0036】
エレクトロルミネッセンス材料
原則として、任意のエレクトロルミネッセンス材料が使用されてよく、蛍光染料、例えば、ペリレン染料、金属錯体、例えば、Alq3、Ir(III)L3、希土類キレート、例えば、Tb(III)錯体、デンドリマー及びオリゴマー、例えば、セクシチオフェン若しくはポリマー放出材料であり得る分子性固体を含む。エレクトロルミネッセンス層は、ルミネッセンス材料として、金属キノレート、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム或いは白金錯体、ホウ素錯体若しくは希土類錯体を含んでもよい。
【0037】
エレクトロルミネッセンス材料の一つの好ましいクラスは、蛍光性、燐光性若しくはイオン燐光性(希土類)であり得る染料でドープされたホスト材料を含む。用語「エレクトロルミネッセンス素子」は、電子燐光性素子を含む。
【0038】
好ましくは、ホストは、ドーパントとしての微量の、好ましくは、ドープ混合物の0.01〜25重量%の蛍光材料でドープされる。その内容が参照により含まれるUS-A-4769292 (Tang et al., Kodak)で検討されるとおり、蛍光材料の存在は、広範囲な幅の発光波長からの選択を許容する。特に、US-A-4769292に開示されるとおり、正孔-電子再結合に応じて発光することのできる微量の蛍光材料を有機金属錯体と混合することにより、ルミネッセントゾーンから放出された光の色合いを改変することができる。理論的には、正孔-電子再結合のための正確に同じ親和性を有するホスト材料と蛍光材料が、混合のために見出され得るならば、各材料はルミネッセントゾーンでの正孔と電子の注入後発光するはずである。知覚される発光の色合いは、両発光の視覚的統合であるだろう。しかしながら、ホスト材料と蛍光材料のこのようなバランスを課すことは、制限されることから、発光のために有利なサイトを提供するように、蛍光材料を選択することが好ましい。発光のために有利なサイトを提供する蛍光材料のほんの少量が存在すると、ホスト材料に典型的なピーク強度波長発光は、蛍光材料に起因しうる新たなピーク強度波長発光を優先して完全に排除され得る。
【0039】
この効果を達成するに十分な蛍光材料の最小割合は変動し、ホスト材料を基礎として約10モル%を超える蛍光材料を使用する必要はなく、1モル%を超える蛍光材料を使用する必要は全くない。他方、存在する蛍光材料を極端に少量に、典型的には、ホスト材料を基礎として10−3モルパーセント未満に制限することは、ホスト材料に特有な波長での発光を保持することを生じ得る。したがって、発光のために有利なサイトを提供することのできる蛍光材料の割合を選択することにより、発光波長の完全なまたは部分的なシフトを実現することができる。これは、EL素子のスペクトル発光を、使用される用途に適するように選択しバランスさせることを可能とする。蛍光染料の場合には、典型的な量は、0.01〜5重量%、例えば、2〜3重量%である。燐光染料の場合には、典型的な量は、0.1〜15重量%である。イオン燐光材料の場合には、典型的な量は、0.01〜25重量%または100重量%までである。
【0040】
発光のために有利なサイトを提供することのできる蛍光材料を選択することは、ホスト材料の特性と蛍光材料の特性とを関連付けることを必然的に含む。ホストは、発光のための分子サイトを提供する蛍光材料と共に、注入された正孔と電子のための集電体とみなすことができる。ホスト中に存在するときに、発光色の色合いを改変することのできる蛍光材料を選択するための一つの重要な関係は、二つの材料の還元ポテンシャルの比較である。発光波長をシフトすることが実証された蛍光材料は、ホストよりも負の還元ポテンシャルを呈した。電子ボルトで測定された還元ポテンチャルは、それらの測定のための種々な技術と共に広く文献で報告されてきた。望まれるのは、その絶対値よりもむしろ還元ポテンチャルの比較であるから、蛍光とホストの還元ポテンチャルが同様に測定されているならば、還元ポテンチャル測定のための任意の受容される技術を使用することができることは明らかである。好ましい酸化還元ポテンチャル測定技術は、R. J. Cox, Photographic Sensitivity, Academic Press, 1973, Chapter 15に報告されている。
【0041】
ホスト材料に存在するときに、発光色の色合いを改変することのできる蛍光材料を選択するための第二の重要な関係は、二つの材料のバンドギャップポテンシャルの比較である。発光波長をシフトすることを実証された蛍光材料は、ホストよりも低いバンドギャップポテンシャルを呈した。分子のバンドギャップポテンシャルは、その基底状態と第一の単項状態とを隔てる電子ボルト(eV)でのポテンシャル差とみなされる。バンドギャップポテンシャルとそれらの測定のための技術は、広く文献で報告されてきた。ここで報告されたバンドギャップポテンシャルは、吸収ピークに深色性で、吸収ピークの大きさの10分の1の大きさである吸収波長で、電子ボルト(eV)で測定されたものである。望まれるのは、その絶対値よりもむしろバンドギャップポテンシャルの比較であるから、蛍光とホストのバンドギャップポテンチャルが同様に測定されているならば、バンドギャップポテンチャル測定のための任意の受容される技術を使用することができることは明らかである。一つの実証的測定技術は、F. Gutman and L. E. Lyons, Organic Semiconductors, Wiley, 1967, Chapter 5.に開示されている。
【0042】
蛍光材料がなくともそれ自体発光することができるホスト材料と共に、ホスト単独の発光特性の波長での発光の抑制と蛍光材料の波長特性での発光の向上が、ホストと蛍光材料のスペクトルカップリングが達成されるときに生じることが観察された。「スペクトルカップリング」によって、ホスト単独の発光特性の波長とホストがないときの蛍光材料の光の吸収波長との間に、重複が存在することが意味されている。最適なスペクトルカップリングは、ホストの発光波長が蛍光材料単独の最大吸収波長の±25nm以内であるときに生じる。実際に有利なスペクトルカップリングは、ピークの幅と浅色及び深色勾配に依存して、100nm或いはそれ以上まで異なるピーク発光及び吸収波長で生じることができる。ホストと蛍光材料との間で最適とはいえないスペクトルカップリングが考えられるところでは、深色性は、蛍光材料の浅色変位と比べると、より効率的な結果を生じる。
【0043】
有益な蛍光材料は、ホストと調合され、本発明のEL素子のルミネッセントゾーンを形成する上記記載の厚さ範囲を満足する薄膜に製造することができるものである。結晶性有機金属錯体は、それ自体薄膜形成に向いていないが、ホストに存在する限定された量の蛍光材料は、単独で薄膜を形成することのできない蛍光材料の使用を許容する。好ましい蛍光材料は、ホストと共通の相を形成するものである。蛍光染料は、染料がそれ自身分子レベルでホストでの分配に向いていることから、蛍光材料の好ましいクラスを構成する。ホストに蛍光染料を分散するための任意の都合のよい技術を使用することができるが、好ましい蛍光染料は、ホスト材料と共に真空気相堆積することのできるものである。
【0044】
ホスト材料の一つのクラスは、特許出願WO 2004/058913に開示されたとおりの蛍光材料若しくは染料でドープされてよい金属錯体、例えば、リチウムキノレート、アルミニウムキノレート、チタンキノレート、ジルコニウムキノレート或いはハフニウムキノレートのような金属キノレートを含む。
【0045】
キノレート、例えば、アルミニウムキノレートの場合:
(a)以下の化合物は、例えば、赤色ドーパントとして機能することができる:
【化6】
【0046】
(b)以下の化合物は、例えば、緑色ドーパントとして機能することができる:
【化7】
【0047】
ここで、Rは、C1-C4アルキル、単環状アリール、二環状アリール、単環状ヘテロアリール、二環状ヘテロアリール、アラルキル若しくはチエニルであり、好ましくは、フェニルである;及び
(c)ビフェニルオキシアルミニウムビス-キノレート(BAlQ2)若しくはアルミニウムキノレートのためには、化合物ぺリレンと9-(10-(N-(ナフタレン-8-イル)-N-フェニルアミノ)アントラセン-9-イル)-N-(ナフタレン-8-イル)-N-フェニルアントラセン-10-アミンが、青色ドーパントとして機能することができる。
【0048】
ホストのもう一つの好ましいクラスは、共役芳香族構造を組み込んだ小分子、例えば、置換基、例えば、アルキル(特に、メチル)、アルコキシ及びフッ素を有してもよく、蛍光材料或いは染料でドープされてもよい4〜10アリール若しくはヘテロアリール環である。
【0049】
上記種類の構造の例は、ホストとしての以下の化合物(化合物H)及びドーパントとしてのペリレン或いは9-(10-(N-(ナフタレン-8-イル)-N-フェニルアミノ)アントラセン-9-イル)-N-(ナフタレン-8-イル)-N-フェニルアントラセン-10-アミンを基礎とする青色発光材料である。
【化8】
【0050】
小芳香族分子であるホスト材料の更なる例は、以下に示される:
【化9】
【0051】
上に説明したとおりの、2,9-ビス(2-チオフェン-2-イル-ビニル)-[1,10]フェナントロリンは、ホストとしてエレクトロルミネッセンス層に使用されてよいし、或いはそれ自身で存在してよい。
【0052】
青色発光材料は、有機ホスト(例えば、上に示したとおりの共役芳香族化合物)とドーパントとしてのWO 2006/090098 (Kathirgamanathan et al.)に開示されたジアリーリアミンアントラセン化合物を基礎とし得る。例えば、CBPは、青色発光置換アントラセンとりわけ
9.10-ビス-(-4-メチルベンジル)-アントラセン、
9.10-ビス-(2,4-ジメチルベンジル)-アントラセン、
9.10-ビス-(2,5-ジメチルベンジル)-アントラセン、
1,4-ビス-(2,3,5,6-テトラメチルベンジル)-アントラセン、
9.10-ビス-(4-メトキシベンジル)-アントラセン、
9.10-ビス-(9H-フルオレン-9-イル)-アントラセン
2,6-ジ-t-ブチルアントラセン、
2,6-ジ-t-ブチル-9.10-ビス-(2,5-ジメチルベンジル)-アントラセン、
2,6-ジ-t-ブチル-9.10-ビス-(ナフタレン-1-イルメチル)-アントラセン、
でドープされてよい。
【0053】
更なる青色燐光材料は、ホストとしてTCTAを使用してよく、以下に提示される青色燐光材料でドープされてよい(WO 2005/080526 (Kathirgamanathan et al.):参照。):
青色燐光材料
【化10】
【0054】
CBP或いはTAZと共に使用され得る緑色燐光材料の例は、以下に提示される(WO 2005/080526参照。):
緑色燐光材料
【化11】
【0055】
CBP或いはTAZと共に使用され得る赤色燐光材料の例は以下に提示される(WO 2005/080526参照。):
赤色燐光材料
【化12】
【0056】
更なるドーパントとして、蛍光レーザー染料は、本発明の有機EL素子での使用のための特に有益な蛍光材料であると認識されている。使用することのできるドーパントは、ジフェニルアクリジン、クマリン、ペリレンとそれらの誘導体を含む。有益な蛍光ドーパントは、US 4769292に開示されている、好ましいドーパントの一つのクラスはクマリンである。次のものは、レーザー染料として有益であることが知られた、例となる蛍光クマリン染料である。
【0057】
FD-1 7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン、
FD-2 4,6-ジメチル-7-エチルアミノクマリン、
FD-3 4-メチルウンベリフェロン、
FD-4 3-(2’-ベンゾチアゾリル)-7-ジエチルアミノクマリン、
FD-5 3-(2’-ベンズイミダゾリル)-7-N,N-ジエチルアミノクマリン、
FD-6 7-アミノ-3-フェニルクマリン、
FD-7 3-(2’-N-メチルベンズイミダゾリル)-7-N,N-ジエチルアミノクマリン、
FD-8 7-ジエチルアミノ-4-トリフルオロメチルクマリン、
FD-9 2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロ-8-メチルキノラジノ[9,9a,1-gh]クマリン、
FD-10 シクロペンタ[c]ユロリンジノ[9,10-3]-11H-ピラン-11-オン、
FD-11 7-アミノ-4-メチルクマリン、
FD-12 7-ジメチルアミノ-シクロペンタ[c]クマリン、
FD-13 7-アミノ-4-トリフルオロメチルクマリン、
FD-14 7-ジメチルアミノ-4-トリフルオロメチルクマリン、
FD-15 1,2,4,5,3H,6H,10H-テトラヒドロ-8-トリフルオロメチル[1]ベンゾピラノ[9,9a,1-gh]キノリジン-10-オン、
FD-16 4-メチル-7-(スルホメチルアミノ)クマリンナトリウム塩、
FD-17 7-エチルアミノ-6-メチル-4-トリフルオロメチルクマリン、
FD-18 7-ジメチルアミノ-4-メチルクマリン、
FD-19 1,2,4,5,3H,6H,10H-テトラヒドロ-カルベトキシ[1]ベンゾピラノ[9,9a,1-gh]キノリジノ-10-オン、
FD-20 9-アセチル-1,2,4,5,3H,6H,10H-テトラヒドロ[1]ベンゾピラノ[9,9a,1-gh]キノリジノ-10-オン、
FD-21 9-シアノ-1,2,4,5,3H,6H,10H-テトラヒドロ[1]ベンゾピラノ[9,9a,1-gh]キノリジノ-10-オン、
FD-22 9-(t-ブトキシカルボニル)-1,2,4,5,3H,6H,10H-テトラヒドロ[1]ベンゾピラノ[9,9a,1-gh]キノリジノ-10-オン、
FD-23 4-メチルピペリジノ[3,2-g]クマリン、
FD-24 4-トリフルオロメチルピペリジノ[3,2-g]クマリン、
FD-25 9-カルボキシ-1,2,4,5,3H,6H,10H-テトラヒドロ[1]ベンゾピラノ[9,9a,1-gh]キノリジノ-10-オン、
FD-26 N-エチル-4-トリフルオロメチルピペリジノ[3,2-g]クマリン。
【0058】
他のドーパントは、
【化13】
【0059】
のようなビスベンゼンスルホン酸塩(昇華よりむしろスピンコートによる堆積を必要とする)とペリレン並びにペリレン誘導体とドーパントを含む。他のドーパントは、蛍光4-ジシアノメチレン-4H-ピランと4-ジシアノメチレン-4H-チオピランのような染料、例えば、蛍光ジシアノメチレンピラン及びチオピラン染料である。有益な蛍光染料は、既知のポリメチン染料の中から選択されることもでき、シアニン、錯体シアニン及びメロシアニン(すなわち、トリ-、テトラ-及びポリ-核シアニン及びメロシアニン)、オキソノール、ヘミオキソノール、スチリル、メロスチリル並びにストレプトシアニンである。シアニン染料は、メチン結合により結合され、アゾリウム或いはアジニウム核、例えば、ピリジニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、オキサゾリウム、チアゾリウム、セレナゾリウム、インダゾリウム、ピラゾリウム、ピロリウム、インドリウム、3H-インドリウム、イミダゾリウム、オキサジアゾリウム、チアジオキサゾリウム、ベンゾオキサゾリウム、ベンゾチアゾリウム、ベンゾセレナゾリウム、ベンゾテルラゾリウム、ベンズイミダゾリウム、3H-或いは1H-ベンゾインドリウム、ナフトキサゾリウム、ナフトチアゾリウム、ナフトセレナゾリウム、ナフトテルラゾリウム、カルボゾリウム、ピロロピリジニウム、フェナントロチアゾリウム及びアセナフトチアゾリウム四級塩からの誘導体のような2個の塩基性ヘテロ環核を含む。他の有益な蛍光染料のクラスは、4-オキソ-4H-ベンズ-[d,e]アントラセンとピリリウム、チアピリリウム、セレナピリリウム及びテルロピリリウム染料である。
【0060】
更なる青色発光材料は、次の特許出願及び公報に開示されており、その内容は、ここで参照により組み込まれる。
【0061】
US-A-5141671 (Bryan, Kodak)-フェノレート配位子と2個の8-キノリノレート配位子を含むアルミニウムキレート。
【0062】
WO 00/32717 (Kathirgamanathan)-真空堆積可能であるリチウムキノレートと、置換基が、同一であるか異なり、2、3、5、6及び7位に存在してよく、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、スルホン酸、エステル、カルボン酸、アミノ及びアミド基から選択されるか若しくは芳香族、ポリ環状或いはヘテロ環状基である他の置換リチウムキノレート。
【0063】
US 2006/0003089 (Kathirgamanathan)- リチウムアルキル或いはアルコキシドをアセトニトリル中で8-ヒドロキシキノリンと反応させることにより製造されたリチウムキノレート。
【0064】
Misra,http://www.ursi.org/Proceedings/ProcGA05/pdf/D04.5(01720).pdf 青色有機エレクトロルミネッセンス材料 1×10−5Torrで真空堆積可能なビス-(2-メチル 8-キノリノラート)(トリフェニルシロキシ)アルミニウム(III)。
【0065】
WO 03/006573 (Kathirgamanathan et al)-金属ピラゾロン。
【0066】
WO 2004/084325 (Kathirgamanathan et al)-ホウ素錯体。
【0067】
WO 2005/080526 (Kathitgamanathan et al)-青色燐光イリジウム系錯体。
【0068】
Ma et al., Chem. Comm. 1998, 2491-2492 架橋配位子として7-アザインドレートを有する四核亜鉛(II)化合物[Zn4O(AlD)6]の結晶構造と調製。とりわけ、薄い均質なフィルムを形成するためにインジウム-錫酸化物で被覆されたガラス基板上へのこの化合物の真空堆積(<200℃、2×10−6Torr)による単層LEDの製造が報告されている。
【0069】
使用することのできる更なるエレクトロルミネッセンス材料は、アルミニウムキノレート、リチウムキノレート、チタンキノレート、ジルコニウムキノレート、ハフニウムキノレート等のような金属キノレートを含む。
【0070】
使用され得る多くの更なるエレクトロルミネッセンス材料が、WO 2004/050793 (ピラゾロン)、WO 2004/058783 (ジイリジウム金属錯体)、WO 2006/016193 (ジベンゾチオフェニル金属錯体)及びWO 2006/024878 (チアントレン金属錯体)に記載されており、その内容がここで参照により組み込まれるWO 2006/ 040593も参照されたい。希土類キレートは、特に、緑色及び赤色エミッターとして使用され得る。更に、以下に示されるとおりの電導性ポリマー、例えば、ポリアニリン、フェニレンビニレンポリマー、フルオレンホモポリマー及びコポリマー、フェニレンポリマーが、エレクトロルミネッセンス材料として使用され得る。
【0071】
電導性ポリマー
【化14】
【0072】
電子輸送材料
例えば、キノレートを含む既知の電子輸送材料が使用され得る。
【0073】
アルミニウムキノレートは、熱的及び形態学的に安定に薄膜内に蒸発され、容易に合成され、純化され、また、比較的低い移動度、バンドギャップ及び昇華中の灰化傾向にもかかわらず、広く使用されている。2006年12月22日付の特許出願GB 0625541.8に開示されたとおり、改善された電子輸送材料は、ジルコニウム或いはハフニウムキノレートから成るか、または含み、ジルコニウムキノレートが多くの具体例のために好ましい。
【0074】
ジルコニウムキノレートは、電子輸送材料としての使用のための特に有利な特性の組み合わせを有し、電子輸送材料としての使用のためのアルミニウムキノレートについての顕著な改善であると確認している。それは、高い電子移動度を有する。その融点(388℃)は、アルミニウムキノレートの融点(414℃)より低い。それは、昇華により純化することができ、アルミニウムキノレートとは異なり残留物もなく再昇華化し、その結果、アルミニウムキノレートより更に使用しやすい。その最低空分子軌道(LUMO)は、−2.9eVであり、その最高被占分子軌道(HOMO)は、−5.6eVであり、アルミニウムキノレートの値と類似する。更に、予期し得ないことに、電荷輸送層に組み込まれると、それは、素子が駆動される時間の増加(すなわち、素子寿命を増加する)と共に、所与の電流でOLED素子の輝度の損失を遅らせるか、所与の適用電圧に対する光出力、所与の輝度に対する電流効率及び/又は所与の輝度に対する電力効率を増加することが見出された。電子輸送材料がジルコニウムキノレートであるセルの具体例は、減少したターンオン電圧と電子輸送材料がアルミニウムキノレートであるセルの4倍までの寿命を示すことができる。それは、アルミニウムキノレートがOLEDのエレクトロルミネッセンス層でのホストとして使用されるときのアルミニウムキノレートと互換性があり、それゆえに、ほんの少しの技術と設備の変更により、多くのOLED製造者により使用されることができる。それは、また、無機電子注入層。例えば、LiF層と良好な電気的及び機械的インターフェースを形成し、例えば、層剥離による失敗の可能性は低い。もちろん、ジルコニウムキノレートは、エレクトロルミネッセンス層のホストとしても電子輸送層としても両方で使用することができる。ハフニウムキノレートの特性は、ジルコニウムキノレートの特性と一般的には類似している。
【0075】
ジルコニウム或いはハフニウムキノレートは、電子輸送層の全部或いは実質的に全部であってよい。主としてジルコニウムキノレートである共堆積材料の混合物であってよい。ジルコニウム或いはハフニウムキノレートは、その内容がここで参照により組み込まれる2006年7月26日に出願されたGB 06 14847.2に記載のとおり、ドープされてもよい。適切なドーパントは、例えば、エレクトロルミネッセンス層に関連して上記記載されたとおりの蛍光或いは燐光染料若しくはイオン蛍光材料を、例えば、ドープされた混合物の重量を基礎として0.01〜25重量%含む。他のドーパントは、低電圧で高輝度を与えることができる材料を含む。追加的に或いは代替として、ジルコニウム或いはハフニウムキノレートは、もう一つの電子輸送材料と共に前混合物中に使用され得る。このような材料は、電子移動度それゆえの電導性を更に増加するべき三価或いは五価状態での金属錯体を含んでもよい。ジルコニウム及びハフニウムキノレートは、周期律表の1、2、3、13、或いは14族の金属キノレート、例えば、リチウムキノレート或いは亜鉛キノレートと混合されてもよい。好ましくは、ジルコニウム或いはハフニウムキノレートは、電子輸送層の少なくとも30重量%、より好ましくは、少なくとも50重量%を含む。
【0076】
電子注入材料
電子注入層は陰極上に直接堆積され、単独または、もう一つの電子注入材料、例えば、リチウム或いはジルコニウムキノレートのようなキノレートと組み合わせて使用され得る上に言及された式の一つのシッフ塩基を含む。シッフ塩基は、好ましくは、電子注入層の少なくとも30重量%、より好ましくは、少なくとも50重量%を含む。
【0077】
上に提示された式において、R1は、ポリ環状アリール、例えば、ナフチル、アントラセニル、テトラセニル、ペンタセニル若しくはペリレン或いはピレン化合物であってよく、鎖中に配置された5個までの芳香族環、例えば、ビフェニルを有してもよい。好ましくは、フェニル或いは置換フェニルである。R2とR3は、一緒になって、R1と同じ基を形成してもよく、好ましくは、フェニル或いは置換フェニルである。置換基が存在するところでは、それらは、メチル、エチル、プロピル若しくはt-ブチル置換基を含むブチルであってよく、または、メトキシ、エトキシ、プロポキシ若しくはt-ブトキシ置換基を含むブトキシであってよい。特別な化合物は、
【化15】
【0078】
を含む。
【0079】
化合物の好ましい基は、式
【化16】
【0080】
であり、ここで、R1は、フェニル若しくは1以上のC1-C4アルキル基、例えば、メチル基で置換されたフェニルであり、R2とR3は、一緒になって、フェニル若しくはC1-C4アルキル基、例えば、メチル基で置換されたフェニルを形成する。六員環中にN-Li-Oを有するこれら化合物は、特に、メチル置換基が存在するときには、比較的低い真空昇華温度を有することが見出された。同様の性能は、下記式の化合物に期待される。
【化17】
【0081】
ここで、以前のとおり、R1は、フェニル若しくは1以上のC1-C4アルキル基、例えば、メチル基で置換されたフェニルであり、R2とR3は、一緒になって、フェニル若しくはC1-C4アルキル基、例えば、メチル基で置換されたフェニルを形成する。
【0082】
陰極
多くの具体例では、アルミニウムが、それのみか、マグネシウム或いは銀のような元素で合金化され、陰極として使用されるが、いくつかの具体例では、他の陰極金属、例えば、カルシウムが使用されてもよい。一つの具体例では、陰極は、電子注入層或いは電子輸送層に、より近接する第一の合金層、例えば、Li-Ag、Mg-Ag或いはAl-Mgと電子注入層或いは電子輸送層から更に離れた純粋なアルミニウムの第2層を含み得る。陰極材料は、ガラスから成り得るか、硬質或いは軟質であり得、また随意に透明であってよいプラスチックから成り得る透明板状材料上に存在してもい。プラスチック基板については、硬質或いは軟質透明プラスチック材料、好ましくは、比較的高いTgを有する寸法的に安定で、水(水蒸気を含む)不透過性である材料が使用され得る。PENが好ましい材料であるが、使用されてもよい他の材料は、PES、PEEKとPETを含む。プラスチックは電導性フィルムで被覆されてよく、作業条件下で遭遇し得る湿気、例えば、雰囲気水蒸気に対する抵抗性を改善するためにバリヤ被覆を有してもよい。
【0083】
本発明が如何に実行され得るかは、以下の例を参照して、今や説明されるだろう。
【0084】
調製方法
ジルコニウムテトラキス(8-ヒドロキシキノレート)(Zrq4)
【化18】
【0085】
エタノール(300mL、95%)中の8-ヒドロキシキノリン(20.0g、138ミリモル)の溶液に、エタノール(50mL)中の塩化ジルコニウム(IV)(8.03g、34ミリモル)が添加された。溶液のpHは、黄色の沈殿物が形成されるまで、ピペリジン(合計〜15mL、150ミリモル)の滴下により増加された。懸濁液は、約60℃まで1時間加熱され、室温まで冷却され、沈殿物はブフナー漏斗上に収集された。これはエタノール(3×100mL、95%)で十分に洗浄され、真空乾燥された。初期純化が、1-4ジオキサンで、ソクスレー抽出により24時間なされた。1-4ジオキサンの濃縮は、黄色の沈殿物を生じ、ブフナー漏斗上に収集され、エタノール(100mL、95%)で洗浄された。この試料は真空オーブン中で80℃で4時間乾燥された。最終純化が昇華により達成された。収率−昇華前で75%(2時間昇華後で60%)、昇華(390℃、10−6Torr)、m.p.383℃。
【0086】
ハフニウムテトラキス(8-ヒドロキシキノレート)(Hfq4)
【化19】
【0087】
エタノール(200mL、95%)中の8-ヒドロキシキノリン(5.44g、37.5ミリモル)の溶液に、エタノール(100mL)中の塩化ハフニウム(IV)(3.0g、9.37ミリモル)が添加され、引き続き、更なる300mLの水が添加された。溶液のpHは、黄色の沈殿物が形成されるまで、ピペリジンの滴下により増加された。得られた黄色の沈殿物は収集され、エタノール(100mL、95%)、水(200mL)、最後に、エタノール(100mL、95%)で洗浄された。試料は、更なる重量減が検出されなくなるまで、80℃で真空乾燥された。昇華(400℃、10−6Torr)、得られた分析試料(4.5g、64%)、m.p.398℃。
【0088】
1a N-サリチリデンアニリンの合成
【化20】
【0089】
サリチルアルデヒド(40mL、45.84g、375.37ミリモル)とアニリン(22mL、31.72g、374.66ミリモル)の混合物に、エタノール(90mL)、8滴の濃塩酸と水(10mL)が添加された。この反応混合物は、1時間還流され、室温まで冷却され、週末中冷蔵庫に残された。大量のオレンジ色の固形物が、2時間後冷蔵庫に形成された。それは、ろ過され、エタノールで洗浄された。エタノールからの再結晶化は、31.53gの生成物をもたらした。
【0090】
1b リチウム2-フェニルイミノメチルフェノレート(化合物A)の合成
【化21】
【0091】
リチウムイソプロポキシド(300mL、20.7g、66.03ミリモル)が、窒素雰囲気下、無水アセトニトリル(200mL)中のN-サリチリデンアニリン(61.83g、66.03ミリモル)に、ゆっくりと添加された。薄黄色の沈殿物が形成され、一晩中攪拌されるままにされた。それは、ろ過され、アセトニトリルで十分に洗浄され、真空オーブン中で8時間80℃で乾燥された。61.6gの生成物(97%収率)を与える。昇華(260℃、10−6Torr)、得られた分析試料(29.2gからの25.1g)。
【0092】
2a N-サリチリデン-2-メチルアニリン、N-サリチリデン-3-メチルアニリン及びN-サリチリデン-4-メチルアニリンの合成
【化22】
【0093】
サリチルアルデヒド(15.00mL、17.16g、140.76ミリモル)とo-トルイジン(15.00mL、15.06g、140.54ミリモル)の混合物に、エタノール(30mL)、8滴の濃塩酸と水(10mL)が添加された。この反応混合物は、2時間還流され、室温で週末中激しく攪拌されるままにされた。黄色の結晶固形物が、ろ過により収集され、エタノールから再結晶化され、エタノールで十分に洗浄され、真空オーブン中で8時間を超えて、>40℃で乾燥され、17.24gの生成物(58%収率)を与えた。それは、明るい黄色の蛍光を与えた。N-サリチリデン-3-メチルアニリン及びN-サリチリデン-4-メチルアニリンは、m-トルイジンとp-トルイジンから夫々出発して上記記載の手順を使用して合成された。
【0094】
2b N-サリチリデン-2-メチルアニリンリチウム錯体と対応する3-メチルアニリン及び4-メチルアニリン錯体の合成
【化23】
【0095】
無水アセトニトリル(80mL)中のN-サリチリデン-2-メチルアニリン(11.00g、52.07ミリモル)の攪拌された溶液に、リチウムイソプロポキシド(52.00mL、3.58g、54.34ミリモル)が、添加された。少量の白色の沈殿物が、15分の攪拌後、ゆっくりと形成された。この反応混合物は、一晩中室温で激しく攪拌されるままにされた。白色の固形物が、ろ過により収集され、アセトニトリルで十分に洗浄され、真空オーブン中で8時間を超えて、80℃で乾燥された。10.47gの生成物(93%収率)を与えた。昇華(235℃、10−6Torr)、得られた分析試料(10.2gからの6.5g)
対応する3-メチルアニリン及び4-メチルアニリン化合物は、N-サリチリデン-3-メチルアニリンとN-サリチリデン-4-メチルアニリンと夫々出発して上記記載の手順を使用して合成された。
【0096】
3a N-サリチリデン-2,3-ジメチルアニリン、N-サリチリデン-2,4-ジメチルアニリン及びN-サリチリデン-2,5-ジメチルアニリンの合成
【化24】
【0097】
サリチルアルデヒド(15.00mL、17.16g、140.76ミリモル)と2,3-ジメチルアニリン(17.20mL、17.08g、140.94ミリモル)の混合物に、エタノール(30mL)、8滴の濃塩酸と水(10mL)が添加された。この反応混合物は、2時間還流され、室温で一晩中激しく攪拌されるままにされた。生じた黄色の結晶固形物が、ろ過により収集され、エタノールから再結晶化され、エタノールで十分に洗浄され、真空オーブン中で8時間を超えて、>40℃で乾燥され、29.98gの生成物(95%収率)を与えた。
【0098】
N-サリチリデン-2,4-ジメチルアニリン及びN-サリチリデン-2,5-ジメチルアニリンは、同様の手順を使用して、2,4-ジメチルアニリンと2,5-ジメチルアニリンを夫々出発物質として使用して、合成された。
【0099】
3b N-サリチリデン-2,3-ジメチルアニリンリチウム錯体、N-サリチリデン-2,4-ジメチルアニリンリチウム錯体及びN-サリチリデン-2,5-ジメチルアニリンリチウム錯体の合成
【化25】
【0100】
無水アセトニトリル(30mL)中のN-サリチリデン-2,3-ジメチルアニリン(6.00g、26.63ミリモル)の攪拌された溶液に、リチウムイソプロポキシド(25.50mL、1.76g、26.65ミリモル)が、添加された。黄色の沈殿物が、直ぐに形成され、反応混合物は、一晩中室温で激しく攪拌されるままにされた。黄色の固形物は、ろ過により収集され、アセトニトリルで十分に洗浄され、真空オーブン中で8時間を超えて80℃で乾燥され、4.94gの生成物(80%収率)を与えた。昇華(250℃、10−6Torr)、得られた分析試料(3.0gからの2.2g)。
【0101】
対応する2,4-ジメチル及び2,5-ジメチル錯体は、上記記載の手順を使用して、N-サリチリデン-2,4-ジメチルアニリン及びN-サリチリデン-2,5-ジメチルアニリンを夫々出発物質と使用して、合成された。
【0102】
4a N-サリチリデン-2-シアノアニリン、N-サリチリデン-3-シアノアニリン及びN-サリチリデン-4-シアノアニリンの合成
【化26】
【0103】
サリチルアルデヒド(13.5mL、15.47g、126.61ミリモル)とアントラニロニトリル(15.00g、126.97ミリモル)の混合物に、エタノール(30mL)、8滴の濃塩酸と水(10mL)が添加された。この反応混合物は、2時間還流され、室温で一晩中激しく攪拌されるままにされた。黄色の沈殿物が、ろ過され、エタノールで洗浄された。黄色の沈殿物は、エタノールから再結晶化され、真空オーブン中で乾燥されるままにされ、19.49gの生成物(69%収率)を与えた。
【0104】
N-サリチリデン-3-シアノアニリン及びN-サリチリデン-4-シアノアニリンは、同様の手順を使用して、3-アミノベンゾニトリルと4-アミノベンゾニトリルを夫々出発物質として使用して、合成された。
【0105】
4b N-サリチリデン-2-シアノアニリンリチウム錯体、N-サリチリデン-3-シアノアニリンリチウム錯体及びN-サリチリデン-4-シアノアニリンリチウム錯体の合成
【化27】
【0106】
リチウムイソプロポキシド(44mL、3.04g、45.98ミリモル)が、無水アセトニトリル(40mL)中のN-サリチリデン-2-シアノアニリン(10.00g、45.00ミリモル)の溶液に、窒素雰囲気下ゆっくりと添加された。黄色の沈殿物が、ゆっくりと形成され、一晩中激しく攪拌された。黄色の沈殿物は、ろ過され、アセトニトリルで十分に洗浄され、真空オーブン中で8時間80℃で乾燥され、10.40gの生成物(100%収率)を与えた。
【0107】
対応する3-シアノ及び4-シアノ錯体は、同じ手順を使用して、N-サリチリデン-3-シアノアニリン及びN-サリチリデン-4-シアノ2,5-ジメチルアニリンを夫々使用して、合成された。
【0108】
5a N-ベンジリデン-2-ヒドロキシアニリンの合成
【化28】
【0109】
エタノール(40mL)中の2-アミノフェノール(28.55g、261.61ミリモル)の溶液に、ベンズアルデヒド(30mL、31.32g、295.14ミリモル)が添加され、この反応混合物は、2時間還流され、一晩中室温で攪拌されるままにされた。クリーム状の白色の沈殿物が、ろ過され、エタノールで洗浄され、真空オーブン中で4時間80℃で乾燥され、40.27gの生成物(78%収率)を与えた。
【0110】
5b N-ベンジリデン-2-ヒドロキシアニリンリチウム錯体の合成
【化29】
【0111】
リチウムイソプロポキシド(50mL、3.45g、52.25ミリモル)が、窒素雰囲気下、無水アセトニトリル(40mL)中のN-ベンジリシリデン-2-ヒドロキシアニリン(10.25g、52.24ミリモル)にゆっくりと添加された。黄色の沈殿物が形成され、週末中激しく攪拌された。黄色の沈殿物は、ろ過され、アセトニトリルで十分に洗浄され、真空オーブン中で8時間80℃で乾燥され、10.55gの生成物(100収率)を与えた。
【0112】
6a N-ナフタリデン-2-ヒドロキシアニリンの合成
【化30】
【0113】
エタノール(30mL)中の2-アミノフェノール(14.46g、132.54ミリモル)の攪拌された溶液に、1-ナフトアルデヒド(18mL、20.7g、132.54ミリモル)が、添加された。この反応混合物は、3時間還流され、一晩中攪拌されるままにされた。生成した黄褐色の沈殿物が、ろ過され、エタノールで洗浄され、真空オーブン中で8時間60℃で乾燥され、24.34gの生成物(74%収率)を与えた。
【0114】
6b N-ナフタリデン-2-ヒドロキシアニリンリチウム錯体の合成
【化31】
【0115】
リチウムイソプロポキシド(20mL、1.38g、20.90ミリモル)が、窒素雰囲気下、無水アセトニトリル(35mL)中のN-ナフタリデン-2-ヒドロキシアニリン(5.17g、20.91ミリモル)にゆっくりと添加された。この反応混合物は、一晩中攪拌されるままにされた。オレンジ色の沈殿物が、ろ過により収集され、5.12gの生成物(97%収率)を与えた。
【0116】
7 N-,N’-ジサリチリデン-1,2-フェニレンジアミノリチウム錯体の合成
【化32】
【0117】
リチウムイソプロポキシド(50mL、3.45g、52.25ミリモル)が、窒素雰囲気下、無水アセトニトリル(70mL)中のN-,N’-ジサリチリデン-1,2-フェニレンジアミン(8.26g、26.11ミリモル)にゆっくりと添加された。薄黄色の沈殿物が生成され、2時間攪拌されるままにされた。黄色の固形物は、ろ過され、アセトニトリルで十分に洗浄され、真空オーブン中で8時間80℃で乾燥され、2.4gの生成物(71%収率)を与えた。昇華(340℃、10−6Torr)、得られた分析試料(2.3gからの1.3g)。
【0118】
8a 4-アミノフェノールとチオフェン-2-カルボキシアルデヒドのシッフ塩基[(E)-2-((チオフェン-2-イル)メチレンアミノ)フェノール]の合成
【化33】
【0119】
4-アミノフェノール(10.0g、92ミリモル)とエタノール(50ml)が、窒素下乾燥フラスコに満たされた。これに、攪拌されながら、チオフェン-2カルボキシアルデヒド(11.3g、9.4ml、0.1ミリモル)が添加された。混合物は、2.5時間還流加熱(90℃)され、引き続き冷却されおかれた。次いで、溶媒が反応混合物から除去され、生成した暗褐色の液体が得られ、1時間超フリンジに置かれ、石油エーテル(40〜60℃)で満たされ、固化されおかれた。褐色の固形物は、ろ過され、次いで、エタノール-ペットエーテル混合物(2:8)でスラリー化された。最後に、固形物は再度ろ過され、ペットエーテルで洗浄され、18時間真空乾燥された。(粗)生成物の収量:15.0g(78%)。
【0120】
8b (E)-2-((チオフェン-2-イル)メチレンアミノ)フェノールのリチウム錯体の合成
【化34】
【0121】
シッフ塩基(4.0g、20ミリモル)と無水アセトニトリル(50ml)が、窒素下乾燥フラスコに満たされた。これに、攪拌されながら、リチウムイソプロポキシド(1.0M)(1.4g、22ml、22ミリモル)が、ゆっくりと添加された。混合物は、激しく攪拌されながら、一晩中室温に置かれた。黄色の固形物は、ろ過され、次いで、アセトニトリル(30ml)でスラリー化された。最後に、固形物は再度吸引ろ過され、18時間真空乾燥された。(粗)生成物の収量:3.8g(90%)。
【0122】
9a 4-アミノフェノールとビフェニル-4-カルボキシアルデヒドのシッフ塩基[2-ビフェニル-4-イル-メチレンアミノ)フェノール]の合成
【化35】
【0123】
4-アミノフェノール(5.0g、46ミリモル)とエタノール(50ml)が、窒素下乾燥フラスコに満たされた。これに、攪拌されながら、ビフェニル-4-カルボキシアルデヒド(8.4g、46ミリモル)が添加された。混合物は、2.5時間還流加熱(90℃)され、引き続き冷却されおかれた。ろ過は、黄色の固形物を与え、次いで、エタノール-ペットエーテル混合物(1:1)でスラリー化された。最後に、固形物は再度ろ過され、ペットエーテルで洗浄され、18時間真空乾燥された。(粗)生成物の収量:10.3g(80%)。
【0124】
9b サリチルアルデヒドとの2-アミノチアゾールのシッフ塩基のリチウム錯体の合成
【化36】
【0125】
シッフ塩基(4.0g、20ミリモル)とアセトニトリル(50ml)が、窒素下乾燥フラスコに満たされた。これに、攪拌されながら、リチウムイソプロポキシド(1.0M)(1.4g、22ml、22ミリモル)がゆっくりと注入された。混合物は、激しく攪拌されながら、一晩中室温に置かれた。褐色の固形物は、ろ過され、次いで、アセトニトリル(30ml)でスラリー化された。最後に、固形物は再度吸引ろ過され、18時間真空乾燥された。(粗)生成物の収量:3.7g(85%)。
【0126】
10a サリチルアルデヒドと2-アミノチアゾールのシッフ塩基(2-[(E)-2-((チアゾール-2-イルアミノ)メチル)フェノール]の合成
【化37】
【0127】
2-アミノチアゾール(5.0g、50ミリモル)とエタノール(50ml)が、窒素下乾燥フラスコに満たされた。これに、攪拌されながら、サリチルアルデヒド(6.1g、5.3ml、50モル)が添加された。混合物は、2.5時間還流加熱(90℃)され、引き続き冷却されおかれた。次いで、溶媒が反応混合物から除去され、暗褐色の液体が得られ、1時間超フリンジに残され、石油エーテル(40〜60℃)で満たされ、緑黄色固形物が生成された後、ろ過され、次いで、エタノール-ペットエーテル混合物(2:8)でスラリー化された。最後に、固形物は再度ろ過され、ペットエーテルで洗浄され、18時間真空乾燥された。(粗)生成物の収量:6.0g(60%)。
【0128】
10b サリチルアルデヒドと2-アミノチアゾールのシッフ塩基のリチウム錯体の合成
【化38】
【0129】
シッフ塩基(4.0g、20ミリモル)とアセトニトリル(50ml)が、窒素下乾燥フラスコに満たされた。これに、攪拌されながら、リチウムイソプロポキシド(1.0M)(1.4g、22ml、22ミリモル)がゆっくりと注入された。混合物は、激しく攪拌されながら、一晩中室温に置かれた。褐色の固形物は、ろ過され、次いで、アセトニトリル(30ml)でスラリー化された。最後に、固形物は再度吸引ろ過され、18時間真空乾燥された。(粗)生成物の収量:3.7g(85%)。
【0130】
上記記載されたとおりに合成されたリチウム錯体の特性が、付属する表で与えられる。化合物のいくつかの真空昇華温度が、図13に示される。試験された全ての化合物は、LiFが、>550℃の真空昇華温度を示すのに対して、<250℃の真空昇華温度を示すことが注意されるだろう。本発明の化合物のいくつかの、その電子注入特性と結び付けけられた低い真空昇華温度は、既に堆積された層上の熱の作用が減じられることから、素子製造において顕著な意義を有する。
【表1−1】
【表1−2】
【0131】
素子の構成
予めエッチングされたITO被覆ガラス片(10×10cm2)が使用された。素子はSolciet Machine, ULVAC Ltd. Chigacki,日本を使用する真空蒸着により、ITO上に連続的に層を形成することにより製造された。各画素の活性領域は、3mm×3mmであった。被覆された電極は、ガラス背板を使用してUV硬化接着剤で不活性雰囲気(窒素)中で封入された。エレクトロルミネッセンスの調査が、正端子に常に接続したITO電極により実行された。電流対電圧の調査が、コンピューター制御されたKeithly 2400 source meterにより実行された。
【0132】
例1
陽極層、バッファー層、正孔輸送層、エレクトロルミネッセンス層(ドープされた金属錯体)、電子輸送層、電子注入層と陰極層から成る緑色エミッターを有する素子が、上記方法により形成された。膜厚は、nmである。
【0133】
ITO/ZnTpTP(20)/α-NBP(50)/Alq3:DPQA(40:0.1)/Zrq4(20)/EIL(0.5)/Al、ここで、DPQAは、ジフェニルキナクリドンで、EILは、電子注入層であり、LiFであるか化合物Aである。
【化39】
【0134】
EILがLiFであったセルと比べて、化合物Aを使用するセルは、所与の輝度に対するより大きな輝度、より大きな電流及び電力効率ならびに所与の適用電圧に対するより大きな電流密度を示した(図1〜4)。緑色発光OLEDにおいて化合物Aは、また、電子注入層として使用されると、リチウムキノレートより良好な結果を生じ、300℃未満で蒸発する。
【0135】
例2
電子注入層が上記記載のとおりの化合物である更なる素子が製造され、LiFを注入層として使用して製造された同様の素子に対して評価された。性能の結果は、図5〜12に示される。いくつかの試験でエレクトロルミネッセンス層に使用された化合物HとCz1は、以下に示される。
【化40】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、前記化合物と1以上のドーパントを含むもの及びそれらの電子光学或いは光学電子光学素子での、特に、光発光素子での、例えば、電子注入層での使用に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、アルミニウム陰極とアルミニウムキノレート電子輸送層との間の、例えば、薄い(0.1〜1.0mm)LiF層を基礎とするOLEDのための二層陰極は、著しく改善されたI−V特性とEL効率を示すことを開示している。OLEDにおいては、そのより高い移動度とより低い注入バリヤの結果、大部分のキャリアは正孔であると、彼らは説明している。したがって、電子注入へのバリヤ高さを低めることは、電子及び正孔流のより良いバランスを生じ、固定バイアス電圧での輝度の劇的な増加をもたらすことから、特別に重要である。LiFのCsF若しくはアルカリ土類フッ化物での置き代えも、検討されている。
【0003】
特許文献1は、OLEDの製造中に、リチウムの超薄層上に有機電子注入層を堆積することによるか、有機電子注入層上にリチウムの超薄層を堆積することによるかの何れかにより、有機電子注入層が金属でドープされ得ることを開示しており、有機材料は、例えば、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(BCP或いはバソクプロイン)である。金属ドープ電子注入層の使用は、また、特許文献2に開示され、前記層の有機成分は、例えば、以下に示される化合物である:
【化1】
【0004】
特許文献3は、エレクトロルミネッセンス層中若しくは電子輸送層中のホスト材料として、二重へテロ構造OLED中での金属シッフ塩基錯体の使用を開示している。錯体は、アルミニウム、スカンジウム、イットリウム或いは希土類金属系であり、シッフ塩基配位子は、二価であり、例えば、下式である。
【化2】
【0005】
しかしながら、OLEDのための電子注入材料としての金属シッフ塩基錯体の使用は、Herron et al.には開示されていないし、示唆されてもいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US-A-6885149 (Parthasarathy et al.., Princeton University)
【特許文献2】US-A-7114638
【特許文献3】US-A-20060040139 (Herron et al., Du Pont)
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Hung et al.,「分子有機エレクトロルミネッセンス材料及び素子の最近の進歩」 Materials Science and Engineering, R 39 (2002), 143-222
【発明の概要】
【0008】
本発明が関心のある課題は、改善された性能のOLEDを提供することである。本発明が関心のある更なる課題は、OLEDの層材料或いは組成物、例えば、電子注入材料として有益な有機材料を提供することである。
【0009】
一つの面で、本発明は、下記式の化合物または、それらのオリゴマーを提供する。
【化3】
【0010】
ここで、
R1は、1以上のC1-C4アルキル(例えば、メチル)、アルコキシ(例えば、メトキシ)或いはシアノで置換されてよい、1〜5環アリール(ポリ環状を含む)、アラルキル若しくはヘテロアリール基であり、
R2とR3は、一緒になって、C1-C4アルキル(例えば、メチル)、アルコキシ或いはシアノで置換されてよい1〜5環アリール(ポリ環状を含む)、アラルキル若しくはヘテロアリール基を形成し、
R4は、水素、C1-C4アルキル(例えば、メチル)、アリール(フェニル或いはナフチル)或いはヘテロアリールであり、及び
Arは、1以上のC1-C4アルキル或いはアルコキシ基で置換されてよい、単環状、二環状或いは三環状アリール若しくはヘテロアリールである。
【0011】
R4が水素である上記式の化合物は、芳香族若しくは複素環式芳香族一級アミンを、芳香族若しくは複素環式芳香族アルデヒドと反応させてシッフ塩基を生成し、続いてシッフ塩基とリチウム化合物、例えば、リチウムアルコキシド、例えば、リチウムt-ブトキシドと反応させることにより、製造され得る。R4がアルキル、アリール若しくはヘテロアリールである上記式の化合物は、同様に、芳香族若しくは複素環式芳香族二級アミンから出発して製造され得る。
【0012】
上記式の化合物は、電子注入層として使用されると、LiFと同等の性能を与え、いくつかの具体例では、より良好な性能を与えるが、LiFに付随する過酷な堆積条件を必要としないという利点を有する。化合物の具体例は、空気中で取り扱うことができ、LiFのために必要とされるよりも顕著に低い温度(図13)、例えば、約250℃未満で真空昇華により堆積することができる。真空昇華に加えて、化合物の具体例は、特に、Universal Display Corporationにより説明された有機蒸気相堆積(OVPD)プロセスにより堆積することができ、そこでは、有機フィルムは、加熱された壁と低圧(典型的には、0.1〜1Torr)の室内で有機材料のフィルムを冷却された基板上に移送するために、不活性キャリアガスを使用して堆積される。プロセスは、真空昇華と比べて比較的高い堆積速度を達成し、画素のアレーを形成するためのより良好なシャドーマスクパターンニングを可能とし、比較的大きなサイズの基板のために有益であると述べられている。それらは、有機材料とキャリアガスの平行蒸気ジェットを生成し、冷却された基板にジェットを当てる有機蒸気ジェット印刷(OVJP)により、堆積されることができ、十分に規定された堆積、例えば、個々の画素を生成する。Shtein et al.「有機蒸気ジェット印刷を使用する分子状有機半導体の直接的マスク不用パターン形成」DJ. Appl. Phys., 2004, 96(8), 4500 及び WO 2005/043641 (Shtein et al.).参照。上記化合物の具体例は、有機溶媒中に溶解し、また堆積されることができ、溶液被覆、例えば、スピンコートにより若しくはインクジェット印刷により層若しくは画素を形成するが(その内容が、ここで参照により組み込まれる、WO 03/067679及び Bharathan et al.,「インクジェット印刷により製造されるポリマーエレクトロルミネッセンス素子」Alppl Phys. Lett., (1998) 72(21), 2660参照。)、良好な溶液加工特性は、電導性ポリマー、例えば、PEDOTを基礎とする素子、例えば、ポリマーOELDの素子の製造において、顕著に有利である。単純な有機溶媒、例えば、アルコール或いはクロロホルムを使用するインクジェット印刷が報告されている。好ましいインクジェット印刷は、圧電変形を使用しており、適切な溶媒は、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、キシレン、N-メチルピロリドン、ジオキサン及び他の高沸点エーテル、ジクロロベンゼン並びにポリヒドロキシ化合物である。同様の溶媒が、スピンコートで使用することができる。いくつかの具体例では、上記記載の化合物は、電子注入層として使用されると、LiFのような無機電子注入体の使用と比べて減少したドリフト電圧と増加した素子寿命を生じる。
【0013】
その式が上記で提示される化合物は、MS測定から、クラスター化合物若しくは、上に提示される式の2〜8分子が結合するオリゴマーを、例えば、三量体、四量体、六量体、十量体オリゴマーを形成することのできると考えられる。本発明は、この理論の正確性に依存するものではないが、本発明の化合物は、いくつかの具体例では、六員環中に交互にLiとO原子を有するコア構造を有する三量体単位で結合し、これら三量体単位が、更に、対になって結合し得ると考えられる。リチウムキノレート中のこのような構造の存在は、結晶学により検出されてきた。その内容が、ここで参照により組み込まれる、Begley et al., ヘキサキス(μ-キノリン-8-オレート)ヘキサリチウム(I):中央対称二重畳み込み三量体, Acta Cryst. (2006), E62, m1200-m1202,参照。再度、本発明は、この理論の正確性に依存するものではないが、この型のオリゴマー構造の形成は、真空昇華により比較的低温度で堆積することを可能とする本発明の多くの化合物の揮発性の原因であり得るLi-O結合に、より大きな共有結合的性格を付与すると考えられる。しかしながら、他の構造、例えば、球状構造もまた可能であり得る。
【0014】
更なる面では、本発明は、上記定義されるとおりの化合物を含む層を有する電子光学或いは光電子工学素子を提供する。このような素子は、OLED、また、例えば、有機光トランジスタ、有機光セル、有機光検出器、二安定有機分子を基礎とする電子貯蔵素子と静電潜像生成のための光伝導性画像処理要素を含む。
【0015】
なお更なる面では、本発明は、第1の電極と、上記提示されるとおりの化合物を含む層と第2の電極とを有する光発光ダイオード素子を提供する。層は、具体例では陰極上に位置し、電子注入層である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図2】図2は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図3】図3は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図4】図4は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図5】図5は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図6】図6は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図7】図7は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図8】図8は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図9】図9は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図10】図10は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図11】図11は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図12】図12は、示された構造のOLED素子のための性能データを示すグラフである。
【図13】図13は、本発明の化合物のための及びフッ化リチウムのための温度の関数としての真空昇華速度を示すグラフである。
【0017】
好ましい特徴の説明
ドープ材料
その式が上で提示される化合物は、一連の目的のために、一連の材料で、ドープされてよい。
【0018】
電子注入層として機能すべきところでは、それらは、低い仕事関数の金属、例えば、Li、Cs、K、Ca、Ba若しくはそれらの錯体により、例えば、化合物がドープされることを望まれる金属の蒸気への真空中での曝露により、ドープされてよい。例えば、US-A-2006/0079004(Werner et al,その記載は、ここで参照により組み込まれる。)は、Csドープ有機半導体は比較的高い安定性を示すが故に、Csが通常使用されると説明している。Csへの有機半導体の曝露によるドーピングは、GaCs合金、例えば、Ga7Cs11を使用して約300℃の穏やかな温度で実行することができる。それらは、錯体、例えば、キノレートで混合され或いはドープされてよい。
【0019】
その式が上で提示された化合物は、他の電子輸送材料と混合されてよい。Kulkarni et al., Chem. Mater. 2004, 16, 4556-4573(その内容は、参照により、ここに組み込まれる。)は、有機発光ダイオード(OLED)の性能を向上するために使用される電子輸送材料(ETM)に関する文献を概説している。本発明の化合物が混合されることのできる非常に多くの有機材料に加えて、彼らは、アルミニウムキノレートを含む本発明の化合物が追加的にまたは代替として混合されてもよい金属キレート化合物を検討しており、かれらは、高いEA(〜−3.0eV;本出願人により−2.9eVとして測定された)とIP(〜−5.95eV;本出願人により−5.7eVと測定された)、良好な熱的安定性(Tg〜172℃)と真空蒸発によるピンホールのない薄膜の容易な堆積のようなその優れた特性に基づいて依然として最も広範に研究されていると説明している。アルミニウムキノレートは、依然として、エレクトロルミネッセンス層を与えるために種々の蛍光材料でドープされるホスト材料としての使用のためと電子輸送層としての使用のための双方の好適な材料である。更に最近では、ジルコニウム及びハフニウムキノレートが、電子輸送材料として開示されてきたが、その内容が、ここで参照により組み込まれるPCT/GB2007/050737 (Kathirgamanathan et al.)を参照すると、その式が上で提示される化合物は、ジルコニウム或いはハフニウムキノレートと混合されてもよい。例えば、2-(4-ビフェニルイル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(PBD)と3-(4-ビフェニルイル)-4-フェニル-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(PBD)のようなアゾール化合物;4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(DPA)と2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(DDPA)のようなフェナントロリン及びそれらの混合物が使用されてもよい。
【0020】
エレクトロルミネッセンス層に組み込まれると、上に提示される式の化合物は、ホスト材料として機能し得、蛍光材料と或いは燐光材料と混合或いはドープされ得る。このような材料は、エレクトロルミネッセンス層と関連して以下に概観される。
【0021】
セル構造
本発明のOLEDは、とりわけ、フラットパネルディスプレーに有益であり、陽極と陰極とその間に挟まれた、エレクトロルミネッセンス層、電子注入層及び/又は輸送層、正孔注入及び/又は輸送層及び随意に補助的層を含む多様な薄層を典型的には含む。層は典型的には連続的真空気相堆積操作により構築されるが、1以上の層、例えば、正孔注入及び正孔輸送層を他の方法、例えば、スピンコート或いはインクジェット印刷により形成することが都合がよいかもしれない。
【0022】
典型的な素子は、その上に陽極層、正孔注入(バッファー)層、正孔輸送層、エレクトロルミネッセンス層、電子輸送層、電子注入層と第2の透明基板が同様に積層されてもよい陽極層が連続的に形成される透明基板を含む。頂部発光OLEDは、ITO層、正孔注入層、正孔輸送層、エレクトロルミネッセンス層、電子輸送層、電子注入層とITO層或いは他の透明陰極を保持するアルミニウム若しくは他の金属基板でも可能であり、光は陰極を通じて放出される。更なる可能性は、アルミニウム或いは低い仕事関数の金属で合金化されたアルミニウム合金の陰極が、連続的に、電子注入層、電子輸送層、エレクトロルミネッセンス層、正孔輸送層、正孔注入層と、ITO層或いは他の透明導電性陽極を保持する逆OLEDであり、発光は陽極を通じてである。所望により、正孔障壁層が、例えば、エレクトロルミネッセンスと電子輸送層との間に挿入されてもよい。反射率に影響する材料、例えば、銅キノレート、バナジウムオキシキノレート或いはバナジウムテトラフェノキシフタロシアニン(例えば、WO 2007/052083 (Kathirgamanathan et al.)に記載され、その内容は、ここで参照により組み込まれる。)の層が組み込まれてもよい。
【0023】
本発明のOLEDは、小分子OLED、ポリマー発光ダイオード(p-OLED)、蛍光により発光するOLED、燐光により発光するOLED(PHOLED)、イオン蛍光(希土類錯体)により発光するOLEDを含み、また単色或いは多色アクティブ若しくはパッシィブマトリックスディスプレーを含む。
【0024】
OLEDの前板及び/又は後板は、マイクロレンズ或いはマイクロレンズアレー、例えば、OLED基板或いは板、例えば、OLEDの前板を形成するための基板或いは板に印刷された有機ポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート)のマイクロレンズアレーを有する前板及び/又は後板上に用意されてもよく、Sun et al.「平版印刷により製造されたマイクロレンズを介する向上されたアウトカップリングを有する有機発光素子」J. Appl. Phys. 100, 073106 (2006)及びWO 2003/007663 (Moler et al., Princeton)を参照されたい。プリズム状及びレンズ状フィルムは、Microsharp Corporation Limited of Watchfield, Oxfordshireから入手可能であり、マイクロレンズ状及びプリズム状シート材料は、3M Corporationから入手可能である。
【0025】
電導性基板:ITO/ガラス、透明金属被覆/ガラス、ATO、InZnO/ガラスがプラスチック基板上で使用されてもよい。伝導性ポリマー被覆プラスチック及びガラスが、例えば、陽極として使用されてよい。
【0026】
陽極
多くの具体例で、陽極はガラス或いは他の透明基板上に被覆された錫酸化物或いはインジウム錫酸化物の層により形成される。使用されてもよい他の材料は、アンチモン錫酸化物及びインジウム亜鉛酸化物を含む。基板に関しては、硬質或いは軟質透明プラスチック材料、好ましくは、寸法的に安定で、比較的高いTgの水(水蒸気を含む)不透過性である材料が使用されてもよい。PENが好ましい材料であるが、使用されてもよい他の材料は、PES、PEEKとPETを含む。プラスチックは電導性フィルムで被覆されてよく、耐湿性を改善し、それゆえ使用寿命を改善するためにバリヤ被覆を有してもよい。
【0027】
正孔注入材料
単一層が、陽極とエレクトロルミネッセンス材料との間に設けられてよいが、多くの具体例では、少なくとも二つの層が存在し、一つは、正孔注入層(バッファー層)であり、もう一つは、正孔輸送層であり、二つの層構造は、いくつかの具体例では、改善された安定性と素子寿命を与える(US-A-4720432 (VanSlyke et al., Kodak)参照。)。正孔注入層は、引き続く有機層の膜形成特性を改善し、正孔輸送層中への正孔の注入を容易にすることに役立ち得る。
【0028】
材料とセルの型に依存して、例えば、0.1〜200nmの厚さであり得る正孔注入層のための適切な材料は、正孔注入ポルフィリン化合物、例えば、亜鉛フタロシアニン銅フタロシアニンとその式が以下に提示されるZnTpTPを含む(US-A-4356429 (Tang, Eastman Kodak)参照。)。
【化4】
【0029】
特に良好な素子効率、ターンオン電圧及び/又は寿命は、エレクトロルミネッセンス層のためのホスト材料が、有機錯体、例えば、アルミニウムキノレートのような金属キノレートであるとき、また、ホスト材料が有機小分子材料であるときの両方で、正孔注入層がZnTpTPであるところで得られ得る。
【0030】
正孔注入層は、フルオロカーボンガスのプラズマ重合により形成されるフルオロカーボン系電導性ポリマー(US-A-6208075 (Hung et al; Eastman Kodak参照。)、トリアリールアミンポリマー(EP-A-0891121 (Inoue et al., TDK Corporation)参照。)若しくはフェニレンジアミン誘導体(EP-A- 1029909 (Kawamura et al., Idemitsu)参照。)であってもよい。
【0031】
正孔輸送材料
使用され得る正孔輸送層は、好ましくは、20〜200nmの厚さを有する。
【0032】
正孔輸送材料の一つのクラスは、スピンコートにより層として堆積され得るポリマー材料を含む。このようなポリマー正孔輸送材料は、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロールとポリアニリンを含む。他の正孔輸送材料は、共役ポリマー、例えば、ポリ(フェニレンビニレン)(PPV)とPPVを含むコポリマーである。他の好ましいポリマーは、ポリ(2,5-ジアルコキシフェニレンビニレン)、例えば、ポリ(2-メトキシ-5-(2-メトキシペンチルオキシ-1.4-フェニレンビニレン)、ポリ(2-メトキシペンチルオキシ)-1.4-フェニレンビニレン)、ポリ(2メトキシ-5-(2-ドデシルオキシ-1.4-フェニレンビニレン)と少なくともその一方が長鎖可溶性アルコキシ基である他のポリ(2,5-ジアルコキシフェニレンビニレン);ポリフルオレン及びオリゴフルオレン;ポリフェニレン及びオリゴフェニレン;ポリアントラセン及びオリゴアントラセン;並びにポリチオフェン及びオリゴチオフェンである。
【0033】
正孔輸送材料の更なるクラスは、昇華可能な小分子を含む。例えば、芳香族三級アミンが、好ましい正孔輸送材料のクラスを提供し、例えば、少なくとも二つの芳香族三級アミン部分を含む芳香族三級アミン(例えば、ビフェニルジアミン系のもの或いは「スターバースト」立体配置のもの)であるが、以下が代表である。
【化5】
【0034】
それは、更に、芳香族アミンであるスピロ結合分子、例えば、スピロ-TAD(2,2’,7,7’-テトラキス-(ジフェニルアミノ)-スピロ-9,9’-ビフルオレンン)を含む。
【0035】
小分子正孔輸送材料の更なるクラスは、WO 2006/061594 (Kathirgamanathan et al)に開示されており、ジアミノジアントラセン系である。典型的な化合物は、
9-(10-(N-(ナフタレン-1-イル)-N-フェニルアミノ)アントラセン-9-イル)-N-(ナフタレン-1-イル)-N-フェニルアントラセン-10-アミン;
9-(10-(N-(ビフェニル-N-2-m-トリルアミノ)アントラセン-9-イル)-N-ビフェニル-N-2-m-トリルアミノ-アントラセン-10-アミン;及び
9-(10-(N-(フェニル-N-m-トリルアミノ)アントラセン-9-イル)-N-フェニル-N-m-トリルアントラセン-10-アミン
を含む。
【0036】
エレクトロルミネッセンス材料
原則として、任意のエレクトロルミネッセンス材料が使用されてよく、蛍光染料、例えば、ペリレン染料、金属錯体、例えば、Alq3、Ir(III)L3、希土類キレート、例えば、Tb(III)錯体、デンドリマー及びオリゴマー、例えば、セクシチオフェン若しくはポリマー放出材料であり得る分子性固体を含む。エレクトロルミネッセンス層は、ルミネッセンス材料として、金属キノレート、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム或いは白金錯体、ホウ素錯体若しくは希土類錯体を含んでもよい。
【0037】
エレクトロルミネッセンス材料の一つの好ましいクラスは、蛍光性、燐光性若しくはイオン燐光性(希土類)であり得る染料でドープされたホスト材料を含む。用語「エレクトロルミネッセンス素子」は、電子燐光性素子を含む。
【0038】
好ましくは、ホストは、ドーパントとしての微量の、好ましくは、ドープ混合物の0.01〜25重量%の蛍光材料でドープされる。その内容が参照により含まれるUS-A-4769292 (Tang et al., Kodak)で検討されるとおり、蛍光材料の存在は、広範囲な幅の発光波長からの選択を許容する。特に、US-A-4769292に開示されるとおり、正孔-電子再結合に応じて発光することのできる微量の蛍光材料を有機金属錯体と混合することにより、ルミネッセントゾーンから放出された光の色合いを改変することができる。理論的には、正孔-電子再結合のための正確に同じ親和性を有するホスト材料と蛍光材料が、混合のために見出され得るならば、各材料はルミネッセントゾーンでの正孔と電子の注入後発光するはずである。知覚される発光の色合いは、両発光の視覚的統合であるだろう。しかしながら、ホスト材料と蛍光材料のこのようなバランスを課すことは、制限されることから、発光のために有利なサイトを提供するように、蛍光材料を選択することが好ましい。発光のために有利なサイトを提供する蛍光材料のほんの少量が存在すると、ホスト材料に典型的なピーク強度波長発光は、蛍光材料に起因しうる新たなピーク強度波長発光を優先して完全に排除され得る。
【0039】
この効果を達成するに十分な蛍光材料の最小割合は変動し、ホスト材料を基礎として約10モル%を超える蛍光材料を使用する必要はなく、1モル%を超える蛍光材料を使用する必要は全くない。他方、存在する蛍光材料を極端に少量に、典型的には、ホスト材料を基礎として10−3モルパーセント未満に制限することは、ホスト材料に特有な波長での発光を保持することを生じ得る。したがって、発光のために有利なサイトを提供することのできる蛍光材料の割合を選択することにより、発光波長の完全なまたは部分的なシフトを実現することができる。これは、EL素子のスペクトル発光を、使用される用途に適するように選択しバランスさせることを可能とする。蛍光染料の場合には、典型的な量は、0.01〜5重量%、例えば、2〜3重量%である。燐光染料の場合には、典型的な量は、0.1〜15重量%である。イオン燐光材料の場合には、典型的な量は、0.01〜25重量%または100重量%までである。
【0040】
発光のために有利なサイトを提供することのできる蛍光材料を選択することは、ホスト材料の特性と蛍光材料の特性とを関連付けることを必然的に含む。ホストは、発光のための分子サイトを提供する蛍光材料と共に、注入された正孔と電子のための集電体とみなすことができる。ホスト中に存在するときに、発光色の色合いを改変することのできる蛍光材料を選択するための一つの重要な関係は、二つの材料の還元ポテンシャルの比較である。発光波長をシフトすることが実証された蛍光材料は、ホストよりも負の還元ポテンシャルを呈した。電子ボルトで測定された還元ポテンチャルは、それらの測定のための種々な技術と共に広く文献で報告されてきた。望まれるのは、その絶対値よりもむしろ還元ポテンチャルの比較であるから、蛍光とホストの還元ポテンチャルが同様に測定されているならば、還元ポテンチャル測定のための任意の受容される技術を使用することができることは明らかである。好ましい酸化還元ポテンチャル測定技術は、R. J. Cox, Photographic Sensitivity, Academic Press, 1973, Chapter 15に報告されている。
【0041】
ホスト材料に存在するときに、発光色の色合いを改変することのできる蛍光材料を選択するための第二の重要な関係は、二つの材料のバンドギャップポテンシャルの比較である。発光波長をシフトすることを実証された蛍光材料は、ホストよりも低いバンドギャップポテンシャルを呈した。分子のバンドギャップポテンシャルは、その基底状態と第一の単項状態とを隔てる電子ボルト(eV)でのポテンシャル差とみなされる。バンドギャップポテンシャルとそれらの測定のための技術は、広く文献で報告されてきた。ここで報告されたバンドギャップポテンシャルは、吸収ピークに深色性で、吸収ピークの大きさの10分の1の大きさである吸収波長で、電子ボルト(eV)で測定されたものである。望まれるのは、その絶対値よりもむしろバンドギャップポテンシャルの比較であるから、蛍光とホストのバンドギャップポテンチャルが同様に測定されているならば、バンドギャップポテンチャル測定のための任意の受容される技術を使用することができることは明らかである。一つの実証的測定技術は、F. Gutman and L. E. Lyons, Organic Semiconductors, Wiley, 1967, Chapter 5.に開示されている。
【0042】
蛍光材料がなくともそれ自体発光することができるホスト材料と共に、ホスト単独の発光特性の波長での発光の抑制と蛍光材料の波長特性での発光の向上が、ホストと蛍光材料のスペクトルカップリングが達成されるときに生じることが観察された。「スペクトルカップリング」によって、ホスト単独の発光特性の波長とホストがないときの蛍光材料の光の吸収波長との間に、重複が存在することが意味されている。最適なスペクトルカップリングは、ホストの発光波長が蛍光材料単独の最大吸収波長の±25nm以内であるときに生じる。実際に有利なスペクトルカップリングは、ピークの幅と浅色及び深色勾配に依存して、100nm或いはそれ以上まで異なるピーク発光及び吸収波長で生じることができる。ホストと蛍光材料との間で最適とはいえないスペクトルカップリングが考えられるところでは、深色性は、蛍光材料の浅色変位と比べると、より効率的な結果を生じる。
【0043】
有益な蛍光材料は、ホストと調合され、本発明のEL素子のルミネッセントゾーンを形成する上記記載の厚さ範囲を満足する薄膜に製造することができるものである。結晶性有機金属錯体は、それ自体薄膜形成に向いていないが、ホストに存在する限定された量の蛍光材料は、単独で薄膜を形成することのできない蛍光材料の使用を許容する。好ましい蛍光材料は、ホストと共通の相を形成するものである。蛍光染料は、染料がそれ自身分子レベルでホストでの分配に向いていることから、蛍光材料の好ましいクラスを構成する。ホストに蛍光染料を分散するための任意の都合のよい技術を使用することができるが、好ましい蛍光染料は、ホスト材料と共に真空気相堆積することのできるものである。
【0044】
ホスト材料の一つのクラスは、特許出願WO 2004/058913に開示されたとおりの蛍光材料若しくは染料でドープされてよい金属錯体、例えば、リチウムキノレート、アルミニウムキノレート、チタンキノレート、ジルコニウムキノレート或いはハフニウムキノレートのような金属キノレートを含む。
【0045】
キノレート、例えば、アルミニウムキノレートの場合:
(a)以下の化合物は、例えば、赤色ドーパントとして機能することができる:
【化6】
【0046】
(b)以下の化合物は、例えば、緑色ドーパントとして機能することができる:
【化7】
【0047】
ここで、Rは、C1-C4アルキル、単環状アリール、二環状アリール、単環状ヘテロアリール、二環状ヘテロアリール、アラルキル若しくはチエニルであり、好ましくは、フェニルである;及び
(c)ビフェニルオキシアルミニウムビス-キノレート(BAlQ2)若しくはアルミニウムキノレートのためには、化合物ぺリレンと9-(10-(N-(ナフタレン-8-イル)-N-フェニルアミノ)アントラセン-9-イル)-N-(ナフタレン-8-イル)-N-フェニルアントラセン-10-アミンが、青色ドーパントとして機能することができる。
【0048】
ホストのもう一つの好ましいクラスは、共役芳香族構造を組み込んだ小分子、例えば、置換基、例えば、アルキル(特に、メチル)、アルコキシ及びフッ素を有してもよく、蛍光材料或いは染料でドープされてもよい4〜10アリール若しくはヘテロアリール環である。
【0049】
上記種類の構造の例は、ホストとしての以下の化合物(化合物H)及びドーパントとしてのペリレン或いは9-(10-(N-(ナフタレン-8-イル)-N-フェニルアミノ)アントラセン-9-イル)-N-(ナフタレン-8-イル)-N-フェニルアントラセン-10-アミンを基礎とする青色発光材料である。
【化8】
【0050】
小芳香族分子であるホスト材料の更なる例は、以下に示される:
【化9】
【0051】
上に説明したとおりの、2,9-ビス(2-チオフェン-2-イル-ビニル)-[1,10]フェナントロリンは、ホストとしてエレクトロルミネッセンス層に使用されてよいし、或いはそれ自身で存在してよい。
【0052】
青色発光材料は、有機ホスト(例えば、上に示したとおりの共役芳香族化合物)とドーパントとしてのWO 2006/090098 (Kathirgamanathan et al.)に開示されたジアリーリアミンアントラセン化合物を基礎とし得る。例えば、CBPは、青色発光置換アントラセンとりわけ
9.10-ビス-(-4-メチルベンジル)-アントラセン、
9.10-ビス-(2,4-ジメチルベンジル)-アントラセン、
9.10-ビス-(2,5-ジメチルベンジル)-アントラセン、
1,4-ビス-(2,3,5,6-テトラメチルベンジル)-アントラセン、
9.10-ビス-(4-メトキシベンジル)-アントラセン、
9.10-ビス-(9H-フルオレン-9-イル)-アントラセン
2,6-ジ-t-ブチルアントラセン、
2,6-ジ-t-ブチル-9.10-ビス-(2,5-ジメチルベンジル)-アントラセン、
2,6-ジ-t-ブチル-9.10-ビス-(ナフタレン-1-イルメチル)-アントラセン、
でドープされてよい。
【0053】
更なる青色燐光材料は、ホストとしてTCTAを使用してよく、以下に提示される青色燐光材料でドープされてよい(WO 2005/080526 (Kathirgamanathan et al.):参照。):
青色燐光材料
【化10】
【0054】
CBP或いはTAZと共に使用され得る緑色燐光材料の例は、以下に提示される(WO 2005/080526参照。):
緑色燐光材料
【化11】
【0055】
CBP或いはTAZと共に使用され得る赤色燐光材料の例は以下に提示される(WO 2005/080526参照。):
赤色燐光材料
【化12】
【0056】
更なるドーパントとして、蛍光レーザー染料は、本発明の有機EL素子での使用のための特に有益な蛍光材料であると認識されている。使用することのできるドーパントは、ジフェニルアクリジン、クマリン、ペリレンとそれらの誘導体を含む。有益な蛍光ドーパントは、US 4769292に開示されている、好ましいドーパントの一つのクラスはクマリンである。次のものは、レーザー染料として有益であることが知られた、例となる蛍光クマリン染料である。
【0057】
FD-1 7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン、
FD-2 4,6-ジメチル-7-エチルアミノクマリン、
FD-3 4-メチルウンベリフェロン、
FD-4 3-(2’-ベンゾチアゾリル)-7-ジエチルアミノクマリン、
FD-5 3-(2’-ベンズイミダゾリル)-7-N,N-ジエチルアミノクマリン、
FD-6 7-アミノ-3-フェニルクマリン、
FD-7 3-(2’-N-メチルベンズイミダゾリル)-7-N,N-ジエチルアミノクマリン、
FD-8 7-ジエチルアミノ-4-トリフルオロメチルクマリン、
FD-9 2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロ-8-メチルキノラジノ[9,9a,1-gh]クマリン、
FD-10 シクロペンタ[c]ユロリンジノ[9,10-3]-11H-ピラン-11-オン、
FD-11 7-アミノ-4-メチルクマリン、
FD-12 7-ジメチルアミノ-シクロペンタ[c]クマリン、
FD-13 7-アミノ-4-トリフルオロメチルクマリン、
FD-14 7-ジメチルアミノ-4-トリフルオロメチルクマリン、
FD-15 1,2,4,5,3H,6H,10H-テトラヒドロ-8-トリフルオロメチル[1]ベンゾピラノ[9,9a,1-gh]キノリジン-10-オン、
FD-16 4-メチル-7-(スルホメチルアミノ)クマリンナトリウム塩、
FD-17 7-エチルアミノ-6-メチル-4-トリフルオロメチルクマリン、
FD-18 7-ジメチルアミノ-4-メチルクマリン、
FD-19 1,2,4,5,3H,6H,10H-テトラヒドロ-カルベトキシ[1]ベンゾピラノ[9,9a,1-gh]キノリジノ-10-オン、
FD-20 9-アセチル-1,2,4,5,3H,6H,10H-テトラヒドロ[1]ベンゾピラノ[9,9a,1-gh]キノリジノ-10-オン、
FD-21 9-シアノ-1,2,4,5,3H,6H,10H-テトラヒドロ[1]ベンゾピラノ[9,9a,1-gh]キノリジノ-10-オン、
FD-22 9-(t-ブトキシカルボニル)-1,2,4,5,3H,6H,10H-テトラヒドロ[1]ベンゾピラノ[9,9a,1-gh]キノリジノ-10-オン、
FD-23 4-メチルピペリジノ[3,2-g]クマリン、
FD-24 4-トリフルオロメチルピペリジノ[3,2-g]クマリン、
FD-25 9-カルボキシ-1,2,4,5,3H,6H,10H-テトラヒドロ[1]ベンゾピラノ[9,9a,1-gh]キノリジノ-10-オン、
FD-26 N-エチル-4-トリフルオロメチルピペリジノ[3,2-g]クマリン。
【0058】
他のドーパントは、
【化13】
【0059】
のようなビスベンゼンスルホン酸塩(昇華よりむしろスピンコートによる堆積を必要とする)とペリレン並びにペリレン誘導体とドーパントを含む。他のドーパントは、蛍光4-ジシアノメチレン-4H-ピランと4-ジシアノメチレン-4H-チオピランのような染料、例えば、蛍光ジシアノメチレンピラン及びチオピラン染料である。有益な蛍光染料は、既知のポリメチン染料の中から選択されることもでき、シアニン、錯体シアニン及びメロシアニン(すなわち、トリ-、テトラ-及びポリ-核シアニン及びメロシアニン)、オキソノール、ヘミオキソノール、スチリル、メロスチリル並びにストレプトシアニンである。シアニン染料は、メチン結合により結合され、アゾリウム或いはアジニウム核、例えば、ピリジニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、オキサゾリウム、チアゾリウム、セレナゾリウム、インダゾリウム、ピラゾリウム、ピロリウム、インドリウム、3H-インドリウム、イミダゾリウム、オキサジアゾリウム、チアジオキサゾリウム、ベンゾオキサゾリウム、ベンゾチアゾリウム、ベンゾセレナゾリウム、ベンゾテルラゾリウム、ベンズイミダゾリウム、3H-或いは1H-ベンゾインドリウム、ナフトキサゾリウム、ナフトチアゾリウム、ナフトセレナゾリウム、ナフトテルラゾリウム、カルボゾリウム、ピロロピリジニウム、フェナントロチアゾリウム及びアセナフトチアゾリウム四級塩からの誘導体のような2個の塩基性ヘテロ環核を含む。他の有益な蛍光染料のクラスは、4-オキソ-4H-ベンズ-[d,e]アントラセンとピリリウム、チアピリリウム、セレナピリリウム及びテルロピリリウム染料である。
【0060】
更なる青色発光材料は、次の特許出願及び公報に開示されており、その内容は、ここで参照により組み込まれる。
【0061】
US-A-5141671 (Bryan, Kodak)-フェノレート配位子と2個の8-キノリノレート配位子を含むアルミニウムキレート。
【0062】
WO 00/32717 (Kathirgamanathan)-真空堆積可能であるリチウムキノレートと、置換基が、同一であるか異なり、2、3、5、6及び7位に存在してよく、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、スルホン酸、エステル、カルボン酸、アミノ及びアミド基から選択されるか若しくは芳香族、ポリ環状或いはヘテロ環状基である他の置換リチウムキノレート。
【0063】
US 2006/0003089 (Kathirgamanathan)- リチウムアルキル或いはアルコキシドをアセトニトリル中で8-ヒドロキシキノリンと反応させることにより製造されたリチウムキノレート。
【0064】
Misra,http://www.ursi.org/Proceedings/ProcGA05/pdf/D04.5(01720).pdf 青色有機エレクトロルミネッセンス材料 1×10−5Torrで真空堆積可能なビス-(2-メチル 8-キノリノラート)(トリフェニルシロキシ)アルミニウム(III)。
【0065】
WO 03/006573 (Kathirgamanathan et al)-金属ピラゾロン。
【0066】
WO 2004/084325 (Kathirgamanathan et al)-ホウ素錯体。
【0067】
WO 2005/080526 (Kathitgamanathan et al)-青色燐光イリジウム系錯体。
【0068】
Ma et al., Chem. Comm. 1998, 2491-2492 架橋配位子として7-アザインドレートを有する四核亜鉛(II)化合物[Zn4O(AlD)6]の結晶構造と調製。とりわけ、薄い均質なフィルムを形成するためにインジウム-錫酸化物で被覆されたガラス基板上へのこの化合物の真空堆積(<200℃、2×10−6Torr)による単層LEDの製造が報告されている。
【0069】
使用することのできる更なるエレクトロルミネッセンス材料は、アルミニウムキノレート、リチウムキノレート、チタンキノレート、ジルコニウムキノレート、ハフニウムキノレート等のような金属キノレートを含む。
【0070】
使用され得る多くの更なるエレクトロルミネッセンス材料が、WO 2004/050793 (ピラゾロン)、WO 2004/058783 (ジイリジウム金属錯体)、WO 2006/016193 (ジベンゾチオフェニル金属錯体)及びWO 2006/024878 (チアントレン金属錯体)に記載されており、その内容がここで参照により組み込まれるWO 2006/ 040593も参照されたい。希土類キレートは、特に、緑色及び赤色エミッターとして使用され得る。更に、以下に示されるとおりの電導性ポリマー、例えば、ポリアニリン、フェニレンビニレンポリマー、フルオレンホモポリマー及びコポリマー、フェニレンポリマーが、エレクトロルミネッセンス材料として使用され得る。
【0071】
電導性ポリマー
【化14】
【0072】
電子輸送材料
例えば、キノレートを含む既知の電子輸送材料が使用され得る。
【0073】
アルミニウムキノレートは、熱的及び形態学的に安定に薄膜内に蒸発され、容易に合成され、純化され、また、比較的低い移動度、バンドギャップ及び昇華中の灰化傾向にもかかわらず、広く使用されている。2006年12月22日付の特許出願GB 0625541.8に開示されたとおり、改善された電子輸送材料は、ジルコニウム或いはハフニウムキノレートから成るか、または含み、ジルコニウムキノレートが多くの具体例のために好ましい。
【0074】
ジルコニウムキノレートは、電子輸送材料としての使用のための特に有利な特性の組み合わせを有し、電子輸送材料としての使用のためのアルミニウムキノレートについての顕著な改善であると確認している。それは、高い電子移動度を有する。その融点(388℃)は、アルミニウムキノレートの融点(414℃)より低い。それは、昇華により純化することができ、アルミニウムキノレートとは異なり残留物もなく再昇華化し、その結果、アルミニウムキノレートより更に使用しやすい。その最低空分子軌道(LUMO)は、−2.9eVであり、その最高被占分子軌道(HOMO)は、−5.6eVであり、アルミニウムキノレートの値と類似する。更に、予期し得ないことに、電荷輸送層に組み込まれると、それは、素子が駆動される時間の増加(すなわち、素子寿命を増加する)と共に、所与の電流でOLED素子の輝度の損失を遅らせるか、所与の適用電圧に対する光出力、所与の輝度に対する電流効率及び/又は所与の輝度に対する電力効率を増加することが見出された。電子輸送材料がジルコニウムキノレートであるセルの具体例は、減少したターンオン電圧と電子輸送材料がアルミニウムキノレートであるセルの4倍までの寿命を示すことができる。それは、アルミニウムキノレートがOLEDのエレクトロルミネッセンス層でのホストとして使用されるときのアルミニウムキノレートと互換性があり、それゆえに、ほんの少しの技術と設備の変更により、多くのOLED製造者により使用されることができる。それは、また、無機電子注入層。例えば、LiF層と良好な電気的及び機械的インターフェースを形成し、例えば、層剥離による失敗の可能性は低い。もちろん、ジルコニウムキノレートは、エレクトロルミネッセンス層のホストとしても電子輸送層としても両方で使用することができる。ハフニウムキノレートの特性は、ジルコニウムキノレートの特性と一般的には類似している。
【0075】
ジルコニウム或いはハフニウムキノレートは、電子輸送層の全部或いは実質的に全部であってよい。主としてジルコニウムキノレートである共堆積材料の混合物であってよい。ジルコニウム或いはハフニウムキノレートは、その内容がここで参照により組み込まれる2006年7月26日に出願されたGB 06 14847.2に記載のとおり、ドープされてもよい。適切なドーパントは、例えば、エレクトロルミネッセンス層に関連して上記記載されたとおりの蛍光或いは燐光染料若しくはイオン蛍光材料を、例えば、ドープされた混合物の重量を基礎として0.01〜25重量%含む。他のドーパントは、低電圧で高輝度を与えることができる材料を含む。追加的に或いは代替として、ジルコニウム或いはハフニウムキノレートは、もう一つの電子輸送材料と共に前混合物中に使用され得る。このような材料は、電子移動度それゆえの電導性を更に増加するべき三価或いは五価状態での金属錯体を含んでもよい。ジルコニウム及びハフニウムキノレートは、周期律表の1、2、3、13、或いは14族の金属キノレート、例えば、リチウムキノレート或いは亜鉛キノレートと混合されてもよい。好ましくは、ジルコニウム或いはハフニウムキノレートは、電子輸送層の少なくとも30重量%、より好ましくは、少なくとも50重量%を含む。
【0076】
電子注入材料
電子注入層は陰極上に直接堆積され、単独または、もう一つの電子注入材料、例えば、リチウム或いはジルコニウムキノレートのようなキノレートと組み合わせて使用され得る上に言及された式の一つのシッフ塩基を含む。シッフ塩基は、好ましくは、電子注入層の少なくとも30重量%、より好ましくは、少なくとも50重量%を含む。
【0077】
上に提示された式において、R1は、ポリ環状アリール、例えば、ナフチル、アントラセニル、テトラセニル、ペンタセニル若しくはペリレン或いはピレン化合物であってよく、鎖中に配置された5個までの芳香族環、例えば、ビフェニルを有してもよい。好ましくは、フェニル或いは置換フェニルである。R2とR3は、一緒になって、R1と同じ基を形成してもよく、好ましくは、フェニル或いは置換フェニルである。置換基が存在するところでは、それらは、メチル、エチル、プロピル若しくはt-ブチル置換基を含むブチルであってよく、または、メトキシ、エトキシ、プロポキシ若しくはt-ブトキシ置換基を含むブトキシであってよい。特別な化合物は、
【化15】
【0078】
を含む。
【0079】
化合物の好ましい基は、式
【化16】
【0080】
であり、ここで、R1は、フェニル若しくは1以上のC1-C4アルキル基、例えば、メチル基で置換されたフェニルであり、R2とR3は、一緒になって、フェニル若しくはC1-C4アルキル基、例えば、メチル基で置換されたフェニルを形成する。六員環中にN-Li-Oを有するこれら化合物は、特に、メチル置換基が存在するときには、比較的低い真空昇華温度を有することが見出された。同様の性能は、下記式の化合物に期待される。
【化17】
【0081】
ここで、以前のとおり、R1は、フェニル若しくは1以上のC1-C4アルキル基、例えば、メチル基で置換されたフェニルであり、R2とR3は、一緒になって、フェニル若しくはC1-C4アルキル基、例えば、メチル基で置換されたフェニルを形成する。
【0082】
陰極
多くの具体例では、アルミニウムが、それのみか、マグネシウム或いは銀のような元素で合金化され、陰極として使用されるが、いくつかの具体例では、他の陰極金属、例えば、カルシウムが使用されてもよい。一つの具体例では、陰極は、電子注入層或いは電子輸送層に、より近接する第一の合金層、例えば、Li-Ag、Mg-Ag或いはAl-Mgと電子注入層或いは電子輸送層から更に離れた純粋なアルミニウムの第2層を含み得る。陰極材料は、ガラスから成り得るか、硬質或いは軟質であり得、また随意に透明であってよいプラスチックから成り得る透明板状材料上に存在してもい。プラスチック基板については、硬質或いは軟質透明プラスチック材料、好ましくは、比較的高いTgを有する寸法的に安定で、水(水蒸気を含む)不透過性である材料が使用され得る。PENが好ましい材料であるが、使用されてもよい他の材料は、PES、PEEKとPETを含む。プラスチックは電導性フィルムで被覆されてよく、作業条件下で遭遇し得る湿気、例えば、雰囲気水蒸気に対する抵抗性を改善するためにバリヤ被覆を有してもよい。
【0083】
本発明が如何に実行され得るかは、以下の例を参照して、今や説明されるだろう。
【0084】
調製方法
ジルコニウムテトラキス(8-ヒドロキシキノレート)(Zrq4)
【化18】
【0085】
エタノール(300mL、95%)中の8-ヒドロキシキノリン(20.0g、138ミリモル)の溶液に、エタノール(50mL)中の塩化ジルコニウム(IV)(8.03g、34ミリモル)が添加された。溶液のpHは、黄色の沈殿物が形成されるまで、ピペリジン(合計〜15mL、150ミリモル)の滴下により増加された。懸濁液は、約60℃まで1時間加熱され、室温まで冷却され、沈殿物はブフナー漏斗上に収集された。これはエタノール(3×100mL、95%)で十分に洗浄され、真空乾燥された。初期純化が、1-4ジオキサンで、ソクスレー抽出により24時間なされた。1-4ジオキサンの濃縮は、黄色の沈殿物を生じ、ブフナー漏斗上に収集され、エタノール(100mL、95%)で洗浄された。この試料は真空オーブン中で80℃で4時間乾燥された。最終純化が昇華により達成された。収率−昇華前で75%(2時間昇華後で60%)、昇華(390℃、10−6Torr)、m.p.383℃。
【0086】
ハフニウムテトラキス(8-ヒドロキシキノレート)(Hfq4)
【化19】
【0087】
エタノール(200mL、95%)中の8-ヒドロキシキノリン(5.44g、37.5ミリモル)の溶液に、エタノール(100mL)中の塩化ハフニウム(IV)(3.0g、9.37ミリモル)が添加され、引き続き、更なる300mLの水が添加された。溶液のpHは、黄色の沈殿物が形成されるまで、ピペリジンの滴下により増加された。得られた黄色の沈殿物は収集され、エタノール(100mL、95%)、水(200mL)、最後に、エタノール(100mL、95%)で洗浄された。試料は、更なる重量減が検出されなくなるまで、80℃で真空乾燥された。昇華(400℃、10−6Torr)、得られた分析試料(4.5g、64%)、m.p.398℃。
【0088】
1a N-サリチリデンアニリンの合成
【化20】
【0089】
サリチルアルデヒド(40mL、45.84g、375.37ミリモル)とアニリン(22mL、31.72g、374.66ミリモル)の混合物に、エタノール(90mL)、8滴の濃塩酸と水(10mL)が添加された。この反応混合物は、1時間還流され、室温まで冷却され、週末中冷蔵庫に残された。大量のオレンジ色の固形物が、2時間後冷蔵庫に形成された。それは、ろ過され、エタノールで洗浄された。エタノールからの再結晶化は、31.53gの生成物をもたらした。
【0090】
1b リチウム2-フェニルイミノメチルフェノレート(化合物A)の合成
【化21】
【0091】
リチウムイソプロポキシド(300mL、20.7g、66.03ミリモル)が、窒素雰囲気下、無水アセトニトリル(200mL)中のN-サリチリデンアニリン(61.83g、66.03ミリモル)に、ゆっくりと添加された。薄黄色の沈殿物が形成され、一晩中攪拌されるままにされた。それは、ろ過され、アセトニトリルで十分に洗浄され、真空オーブン中で8時間80℃で乾燥された。61.6gの生成物(97%収率)を与える。昇華(260℃、10−6Torr)、得られた分析試料(29.2gからの25.1g)。
【0092】
2a N-サリチリデン-2-メチルアニリン、N-サリチリデン-3-メチルアニリン及びN-サリチリデン-4-メチルアニリンの合成
【化22】
【0093】
サリチルアルデヒド(15.00mL、17.16g、140.76ミリモル)とo-トルイジン(15.00mL、15.06g、140.54ミリモル)の混合物に、エタノール(30mL)、8滴の濃塩酸と水(10mL)が添加された。この反応混合物は、2時間還流され、室温で週末中激しく攪拌されるままにされた。黄色の結晶固形物が、ろ過により収集され、エタノールから再結晶化され、エタノールで十分に洗浄され、真空オーブン中で8時間を超えて、>40℃で乾燥され、17.24gの生成物(58%収率)を与えた。それは、明るい黄色の蛍光を与えた。N-サリチリデン-3-メチルアニリン及びN-サリチリデン-4-メチルアニリンは、m-トルイジンとp-トルイジンから夫々出発して上記記載の手順を使用して合成された。
【0094】
2b N-サリチリデン-2-メチルアニリンリチウム錯体と対応する3-メチルアニリン及び4-メチルアニリン錯体の合成
【化23】
【0095】
無水アセトニトリル(80mL)中のN-サリチリデン-2-メチルアニリン(11.00g、52.07ミリモル)の攪拌された溶液に、リチウムイソプロポキシド(52.00mL、3.58g、54.34ミリモル)が、添加された。少量の白色の沈殿物が、15分の攪拌後、ゆっくりと形成された。この反応混合物は、一晩中室温で激しく攪拌されるままにされた。白色の固形物が、ろ過により収集され、アセトニトリルで十分に洗浄され、真空オーブン中で8時間を超えて、80℃で乾燥された。10.47gの生成物(93%収率)を与えた。昇華(235℃、10−6Torr)、得られた分析試料(10.2gからの6.5g)
対応する3-メチルアニリン及び4-メチルアニリン化合物は、N-サリチリデン-3-メチルアニリンとN-サリチリデン-4-メチルアニリンと夫々出発して上記記載の手順を使用して合成された。
【0096】
3a N-サリチリデン-2,3-ジメチルアニリン、N-サリチリデン-2,4-ジメチルアニリン及びN-サリチリデン-2,5-ジメチルアニリンの合成
【化24】
【0097】
サリチルアルデヒド(15.00mL、17.16g、140.76ミリモル)と2,3-ジメチルアニリン(17.20mL、17.08g、140.94ミリモル)の混合物に、エタノール(30mL)、8滴の濃塩酸と水(10mL)が添加された。この反応混合物は、2時間還流され、室温で一晩中激しく攪拌されるままにされた。生じた黄色の結晶固形物が、ろ過により収集され、エタノールから再結晶化され、エタノールで十分に洗浄され、真空オーブン中で8時間を超えて、>40℃で乾燥され、29.98gの生成物(95%収率)を与えた。
【0098】
N-サリチリデン-2,4-ジメチルアニリン及びN-サリチリデン-2,5-ジメチルアニリンは、同様の手順を使用して、2,4-ジメチルアニリンと2,5-ジメチルアニリンを夫々出発物質として使用して、合成された。
【0099】
3b N-サリチリデン-2,3-ジメチルアニリンリチウム錯体、N-サリチリデン-2,4-ジメチルアニリンリチウム錯体及びN-サリチリデン-2,5-ジメチルアニリンリチウム錯体の合成
【化25】
【0100】
無水アセトニトリル(30mL)中のN-サリチリデン-2,3-ジメチルアニリン(6.00g、26.63ミリモル)の攪拌された溶液に、リチウムイソプロポキシド(25.50mL、1.76g、26.65ミリモル)が、添加された。黄色の沈殿物が、直ぐに形成され、反応混合物は、一晩中室温で激しく攪拌されるままにされた。黄色の固形物は、ろ過により収集され、アセトニトリルで十分に洗浄され、真空オーブン中で8時間を超えて80℃で乾燥され、4.94gの生成物(80%収率)を与えた。昇華(250℃、10−6Torr)、得られた分析試料(3.0gからの2.2g)。
【0101】
対応する2,4-ジメチル及び2,5-ジメチル錯体は、上記記載の手順を使用して、N-サリチリデン-2,4-ジメチルアニリン及びN-サリチリデン-2,5-ジメチルアニリンを夫々出発物質と使用して、合成された。
【0102】
4a N-サリチリデン-2-シアノアニリン、N-サリチリデン-3-シアノアニリン及びN-サリチリデン-4-シアノアニリンの合成
【化26】
【0103】
サリチルアルデヒド(13.5mL、15.47g、126.61ミリモル)とアントラニロニトリル(15.00g、126.97ミリモル)の混合物に、エタノール(30mL)、8滴の濃塩酸と水(10mL)が添加された。この反応混合物は、2時間還流され、室温で一晩中激しく攪拌されるままにされた。黄色の沈殿物が、ろ過され、エタノールで洗浄された。黄色の沈殿物は、エタノールから再結晶化され、真空オーブン中で乾燥されるままにされ、19.49gの生成物(69%収率)を与えた。
【0104】
N-サリチリデン-3-シアノアニリン及びN-サリチリデン-4-シアノアニリンは、同様の手順を使用して、3-アミノベンゾニトリルと4-アミノベンゾニトリルを夫々出発物質として使用して、合成された。
【0105】
4b N-サリチリデン-2-シアノアニリンリチウム錯体、N-サリチリデン-3-シアノアニリンリチウム錯体及びN-サリチリデン-4-シアノアニリンリチウム錯体の合成
【化27】
【0106】
リチウムイソプロポキシド(44mL、3.04g、45.98ミリモル)が、無水アセトニトリル(40mL)中のN-サリチリデン-2-シアノアニリン(10.00g、45.00ミリモル)の溶液に、窒素雰囲気下ゆっくりと添加された。黄色の沈殿物が、ゆっくりと形成され、一晩中激しく攪拌された。黄色の沈殿物は、ろ過され、アセトニトリルで十分に洗浄され、真空オーブン中で8時間80℃で乾燥され、10.40gの生成物(100%収率)を与えた。
【0107】
対応する3-シアノ及び4-シアノ錯体は、同じ手順を使用して、N-サリチリデン-3-シアノアニリン及びN-サリチリデン-4-シアノ2,5-ジメチルアニリンを夫々使用して、合成された。
【0108】
5a N-ベンジリデン-2-ヒドロキシアニリンの合成
【化28】
【0109】
エタノール(40mL)中の2-アミノフェノール(28.55g、261.61ミリモル)の溶液に、ベンズアルデヒド(30mL、31.32g、295.14ミリモル)が添加され、この反応混合物は、2時間還流され、一晩中室温で攪拌されるままにされた。クリーム状の白色の沈殿物が、ろ過され、エタノールで洗浄され、真空オーブン中で4時間80℃で乾燥され、40.27gの生成物(78%収率)を与えた。
【0110】
5b N-ベンジリデン-2-ヒドロキシアニリンリチウム錯体の合成
【化29】
【0111】
リチウムイソプロポキシド(50mL、3.45g、52.25ミリモル)が、窒素雰囲気下、無水アセトニトリル(40mL)中のN-ベンジリシリデン-2-ヒドロキシアニリン(10.25g、52.24ミリモル)にゆっくりと添加された。黄色の沈殿物が形成され、週末中激しく攪拌された。黄色の沈殿物は、ろ過され、アセトニトリルで十分に洗浄され、真空オーブン中で8時間80℃で乾燥され、10.55gの生成物(100収率)を与えた。
【0112】
6a N-ナフタリデン-2-ヒドロキシアニリンの合成
【化30】
【0113】
エタノール(30mL)中の2-アミノフェノール(14.46g、132.54ミリモル)の攪拌された溶液に、1-ナフトアルデヒド(18mL、20.7g、132.54ミリモル)が、添加された。この反応混合物は、3時間還流され、一晩中攪拌されるままにされた。生成した黄褐色の沈殿物が、ろ過され、エタノールで洗浄され、真空オーブン中で8時間60℃で乾燥され、24.34gの生成物(74%収率)を与えた。
【0114】
6b N-ナフタリデン-2-ヒドロキシアニリンリチウム錯体の合成
【化31】
【0115】
リチウムイソプロポキシド(20mL、1.38g、20.90ミリモル)が、窒素雰囲気下、無水アセトニトリル(35mL)中のN-ナフタリデン-2-ヒドロキシアニリン(5.17g、20.91ミリモル)にゆっくりと添加された。この反応混合物は、一晩中攪拌されるままにされた。オレンジ色の沈殿物が、ろ過により収集され、5.12gの生成物(97%収率)を与えた。
【0116】
7 N-,N’-ジサリチリデン-1,2-フェニレンジアミノリチウム錯体の合成
【化32】
【0117】
リチウムイソプロポキシド(50mL、3.45g、52.25ミリモル)が、窒素雰囲気下、無水アセトニトリル(70mL)中のN-,N’-ジサリチリデン-1,2-フェニレンジアミン(8.26g、26.11ミリモル)にゆっくりと添加された。薄黄色の沈殿物が生成され、2時間攪拌されるままにされた。黄色の固形物は、ろ過され、アセトニトリルで十分に洗浄され、真空オーブン中で8時間80℃で乾燥され、2.4gの生成物(71%収率)を与えた。昇華(340℃、10−6Torr)、得られた分析試料(2.3gからの1.3g)。
【0118】
8a 4-アミノフェノールとチオフェン-2-カルボキシアルデヒドのシッフ塩基[(E)-2-((チオフェン-2-イル)メチレンアミノ)フェノール]の合成
【化33】
【0119】
4-アミノフェノール(10.0g、92ミリモル)とエタノール(50ml)が、窒素下乾燥フラスコに満たされた。これに、攪拌されながら、チオフェン-2カルボキシアルデヒド(11.3g、9.4ml、0.1ミリモル)が添加された。混合物は、2.5時間還流加熱(90℃)され、引き続き冷却されおかれた。次いで、溶媒が反応混合物から除去され、生成した暗褐色の液体が得られ、1時間超フリンジに置かれ、石油エーテル(40〜60℃)で満たされ、固化されおかれた。褐色の固形物は、ろ過され、次いで、エタノール-ペットエーテル混合物(2:8)でスラリー化された。最後に、固形物は再度ろ過され、ペットエーテルで洗浄され、18時間真空乾燥された。(粗)生成物の収量:15.0g(78%)。
【0120】
8b (E)-2-((チオフェン-2-イル)メチレンアミノ)フェノールのリチウム錯体の合成
【化34】
【0121】
シッフ塩基(4.0g、20ミリモル)と無水アセトニトリル(50ml)が、窒素下乾燥フラスコに満たされた。これに、攪拌されながら、リチウムイソプロポキシド(1.0M)(1.4g、22ml、22ミリモル)が、ゆっくりと添加された。混合物は、激しく攪拌されながら、一晩中室温に置かれた。黄色の固形物は、ろ過され、次いで、アセトニトリル(30ml)でスラリー化された。最後に、固形物は再度吸引ろ過され、18時間真空乾燥された。(粗)生成物の収量:3.8g(90%)。
【0122】
9a 4-アミノフェノールとビフェニル-4-カルボキシアルデヒドのシッフ塩基[2-ビフェニル-4-イル-メチレンアミノ)フェノール]の合成
【化35】
【0123】
4-アミノフェノール(5.0g、46ミリモル)とエタノール(50ml)が、窒素下乾燥フラスコに満たされた。これに、攪拌されながら、ビフェニル-4-カルボキシアルデヒド(8.4g、46ミリモル)が添加された。混合物は、2.5時間還流加熱(90℃)され、引き続き冷却されおかれた。ろ過は、黄色の固形物を与え、次いで、エタノール-ペットエーテル混合物(1:1)でスラリー化された。最後に、固形物は再度ろ過され、ペットエーテルで洗浄され、18時間真空乾燥された。(粗)生成物の収量:10.3g(80%)。
【0124】
9b サリチルアルデヒドとの2-アミノチアゾールのシッフ塩基のリチウム錯体の合成
【化36】
【0125】
シッフ塩基(4.0g、20ミリモル)とアセトニトリル(50ml)が、窒素下乾燥フラスコに満たされた。これに、攪拌されながら、リチウムイソプロポキシド(1.0M)(1.4g、22ml、22ミリモル)がゆっくりと注入された。混合物は、激しく攪拌されながら、一晩中室温に置かれた。褐色の固形物は、ろ過され、次いで、アセトニトリル(30ml)でスラリー化された。最後に、固形物は再度吸引ろ過され、18時間真空乾燥された。(粗)生成物の収量:3.7g(85%)。
【0126】
10a サリチルアルデヒドと2-アミノチアゾールのシッフ塩基(2-[(E)-2-((チアゾール-2-イルアミノ)メチル)フェノール]の合成
【化37】
【0127】
2-アミノチアゾール(5.0g、50ミリモル)とエタノール(50ml)が、窒素下乾燥フラスコに満たされた。これに、攪拌されながら、サリチルアルデヒド(6.1g、5.3ml、50モル)が添加された。混合物は、2.5時間還流加熱(90℃)され、引き続き冷却されおかれた。次いで、溶媒が反応混合物から除去され、暗褐色の液体が得られ、1時間超フリンジに残され、石油エーテル(40〜60℃)で満たされ、緑黄色固形物が生成された後、ろ過され、次いで、エタノール-ペットエーテル混合物(2:8)でスラリー化された。最後に、固形物は再度ろ過され、ペットエーテルで洗浄され、18時間真空乾燥された。(粗)生成物の収量:6.0g(60%)。
【0128】
10b サリチルアルデヒドと2-アミノチアゾールのシッフ塩基のリチウム錯体の合成
【化38】
【0129】
シッフ塩基(4.0g、20ミリモル)とアセトニトリル(50ml)が、窒素下乾燥フラスコに満たされた。これに、攪拌されながら、リチウムイソプロポキシド(1.0M)(1.4g、22ml、22ミリモル)がゆっくりと注入された。混合物は、激しく攪拌されながら、一晩中室温に置かれた。褐色の固形物は、ろ過され、次いで、アセトニトリル(30ml)でスラリー化された。最後に、固形物は再度吸引ろ過され、18時間真空乾燥された。(粗)生成物の収量:3.7g(85%)。
【0130】
上記記載されたとおりに合成されたリチウム錯体の特性が、付属する表で与えられる。化合物のいくつかの真空昇華温度が、図13に示される。試験された全ての化合物は、LiFが、>550℃の真空昇華温度を示すのに対して、<250℃の真空昇華温度を示すことが注意されるだろう。本発明の化合物のいくつかの、その電子注入特性と結び付けけられた低い真空昇華温度は、既に堆積された層上の熱の作用が減じられることから、素子製造において顕著な意義を有する。
【表1−1】
【表1−2】
【0131】
素子の構成
予めエッチングされたITO被覆ガラス片(10×10cm2)が使用された。素子はSolciet Machine, ULVAC Ltd. Chigacki,日本を使用する真空蒸着により、ITO上に連続的に層を形成することにより製造された。各画素の活性領域は、3mm×3mmであった。被覆された電極は、ガラス背板を使用してUV硬化接着剤で不活性雰囲気(窒素)中で封入された。エレクトロルミネッセンスの調査が、正端子に常に接続したITO電極により実行された。電流対電圧の調査が、コンピューター制御されたKeithly 2400 source meterにより実行された。
【0132】
例1
陽極層、バッファー層、正孔輸送層、エレクトロルミネッセンス層(ドープされた金属錯体)、電子輸送層、電子注入層と陰極層から成る緑色エミッターを有する素子が、上記方法により形成された。膜厚は、nmである。
【0133】
ITO/ZnTpTP(20)/α-NBP(50)/Alq3:DPQA(40:0.1)/Zrq4(20)/EIL(0.5)/Al、ここで、DPQAは、ジフェニルキナクリドンで、EILは、電子注入層であり、LiFであるか化合物Aである。
【化39】
【0134】
EILがLiFであったセルと比べて、化合物Aを使用するセルは、所与の輝度に対するより大きな輝度、より大きな電流及び電力効率ならびに所与の適用電圧に対するより大きな電流密度を示した(図1〜4)。緑色発光OLEDにおいて化合物Aは、また、電子注入層として使用されると、リチウムキノレートより良好な結果を生じ、300℃未満で蒸発する。
【0135】
例2
電子注入層が上記記載のとおりの化合物である更なる素子が製造され、LiFを注入層として使用して製造された同様の素子に対して評価された。性能の結果は、図5〜12に示される。いくつかの試験でエレクトロルミネッセンス層に使用された化合物HとCz1は、以下に示される。
【化40】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式の化合物または、そのオリゴマー。
【化1】
(ここで、
R1は、1以上のC1-C4アルキル、アルコキシ或いはシアノで置換されてよい、1〜5環アリール(ポリ環状を含む)、アラルキル若しくはヘテロアリール基であり、
R2とR3は、一緒になって、C1-C4アルキル、アルコキシ或いはシアノで置換されてよい1〜5環アリール(ポリ環状を含む)、アラルキル若しくはヘテロアリール基を形成し、
R4は、水素、C1-C4アルキル或いはアリールであり、及び
Arは、1以上のC1-C4アルキル或いはアルコキシ基で置換されてよい、単環状、二環状或いは三環状アリール若しくはヘテロアリールである。)
【請求項2】
R1は、フェニル若しくは置換されたフェニルであり、R2とR3は、一緒になって、フェニル若しくは置換されたフェニルを形成する、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
式
【化2】
である請求項1記載の化合物。
(ここで、
R1は、フェニル若しくは1以上のC1-C4アルキル基で置換されたフェニルであり、R2とR3は、一緒になって、フェニル若しくはC1-C4アルキル基で置換されたフェニルを形成する。)
【請求項4】
R1及び/又はR2及びR3は、1以上のメチル基で置換されたフェニルを表す、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
以下から選択される化合物。
【化3】
【請求項6】
以下から選択される化合物。
【化4】
【請求項7】
以下から選択される化合物。
【化5】
【請求項8】
以下の化合物。
【化6】
【請求項9】
第一の電極、請求項1〜8何れか1項記載の化合物を含む層及び第二の電極を有する光発光ダイオード素子。
【請求項10】
第二の電極が陰極であり、前記層が、前記陰極上に位置する電子注入層である、請求項9記載の素子。
【請求項11】
電子注入層とエレクトロルミネッセンス層との間に電子輸送層を更に含み、前記エレクトロルミネッセンス層が金属錯体を含む、請求項10記載の素子。
【請求項12】
エレクトロルミネッセンス層が、ドーパントでドープされたホスト材料として、リチウム、ジルコニウム或いはハフニウムキノレートを含む、請求項11記載の素子。
【請求項13】
エレクトロルミネッセンス層が、ドーパントでドープされたホスト材料として、アルミニウムキノレートを含む、請求項11記載の素子。
【請求項14】
エレクトロルミネッセンス層が、ドーパントでドープされたホスト材料として、芳香族三級アミンを含む、請求項11記載の素子。
【請求項15】
エレクトロルミネッセンス層が、金属或いはメタロイド錯体である発光材料を含む、請求項11記載の素子。
【請求項16】
エレクトロルミネッセンス層が、ルミネッセンス材料として、金属キノレート、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム或いは白金錯体、ホウ素錯体若しくは希土類錯体または前記金属錯体のデンドリマーを含む、請求項11記載の素子。
【請求項17】
エレクトロルミネッセンス層が、エレクトロルミネッセンス材料として、リチウムキノレート或いはアルミニウムキノレートを含む、請求項15記載の素子。
【請求項18】
エレクトロルミネッセンス層が、発光共役ポリマー或いはコポリマー或いはデンドリマーを含む、請求項11記載の素子。
【請求項19】
正孔注入層が、ZnTpTPを含む、請求項11〜18何れか1項記載の素子。
【請求項20】
正孔輸送層が、α-NBPを含む、請求項11〜19何れか1項記載の素子。
【請求項21】
下記式の化合物または、そのオリゴマーを含む層を有する、電子光学或いは光電子工学素子。
【化7】
(ここで、
R1は、1以上のC1-C4アルキル、アルコキシ或いはシアノで置換されもよい、1〜5環アリール(ポリ環状を含む)、アラルキル若しくはヘテロアリール基であり、
R2とR3は、一緒になって、C1-C4アルキル、アルコキシ或いはシアノで置換されてよい1〜5環アリール(ポリ環状を含む)、アラルキル若しくはヘテロアリール基を形成し、及び
Arは、1以上のC1-C4アルキル或いはアルコキシ基で置換されてよい、単環状、二環状或いは三環状アリール若しくはヘテロアリールである。)
【請求項22】
フラットパネルディスプレーである請求項21記載の素子。
【請求項23】
静電潜像の生成のための画像処理要素である請求項21記載の素子。
【請求項24】
請求項1〜8何れか1項記載の化合物及びもう一つの有機半導体材料或いは金属を含む(OLED若しくは他の電子光学素子中の層を含む。)組成物。
【請求項25】
請求項1〜8何れか1項記載の化合物が、金属でドープされた、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
請求項1〜8何れか1項記載の化合物が、電子輸送材料と混合された、請求項24記載の組成物。
【請求項27】
電子輸送材料が、金属キノレート或いは置換キノレートである、請求項26記載の組成物。
【請求項28】
請求項1〜8何れか1項記載の化合物が、蛍光ドーパントでドープされた、請求項24記載の組成物。
【請求項29】
請求項1〜8何れか1項記載の化合物が、燐光ドーパントでドープされた、請求項24記載の組成物。
【請求項30】
請求項1〜8何れか1項記載の化合物が、希土類キレートでドープされた、請求項24記載の組成物。
【請求項31】
下記式の化合物または、そのオリゴマー。
【化8】
(ここで、
R1は、1以上のC1-C4アルキル、アルコキシ或いはシアノで置換されてよい、1〜5環アリール(ポリ環状を含む)、アラルキル若しくはヘテロアリール基であり、
R2とR3は、一緒になって、C1-C4アルキル、アルコキシ或いはシアノで置換されてもよい1〜5環アリール(ポリ環状を含む)、アラルキル若しくはヘテロアリール基を形成し、
R4は、水素、C1-C4アルキル或いはアリールであり、及び
Arは、1以上のC1-C4アルキル或いはアルコキシ基で置換されてもよい、単環状、二環状或いは三環状アリール若しくはヘテロアリールであり、前記化合物は、真空昇華可能、OVPDにより堆積可能であり及び/又はOVJPにより堆積可能である化合物。)
【請求項32】
下記式の化合物または、そのオリゴマーと有機溶媒を含む組成物。
【化9】
(ここで、
R1は、1以上のC1-C4アルキル、アルコキシ或いはシアノで置換されてよい、1〜5環アリール(ポリ環状を含む)、アラルキル若しくはヘテロアリール基であり、
R2とR3は、一緒になって、C1-C4アルキル、アルコキシ或いはシアノで置換されてよい1〜5環アリール(ポリ環状を含む)、アラルキル若しくはヘテロアリール基を形成し、
R4は、水素、C1-C4アルキル或いはアリールであり、及び
Arは、1以上のC1-C4アルキル或いはアルコキシ基で置換されてよい、単環状、二環状或いは三環状アリール若しくはヘテロアリールである。)
【請求項1】
下記式の化合物または、そのオリゴマー。
【化1】
(ここで、
R1は、1以上のC1-C4アルキル、アルコキシ或いはシアノで置換されてよい、1〜5環アリール(ポリ環状を含む)、アラルキル若しくはヘテロアリール基であり、
R2とR3は、一緒になって、C1-C4アルキル、アルコキシ或いはシアノで置換されてよい1〜5環アリール(ポリ環状を含む)、アラルキル若しくはヘテロアリール基を形成し、
R4は、水素、C1-C4アルキル或いはアリールであり、及び
Arは、1以上のC1-C4アルキル或いはアルコキシ基で置換されてよい、単環状、二環状或いは三環状アリール若しくはヘテロアリールである。)
【請求項2】
R1は、フェニル若しくは置換されたフェニルであり、R2とR3は、一緒になって、フェニル若しくは置換されたフェニルを形成する、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
式
【化2】
である請求項1記載の化合物。
(ここで、
R1は、フェニル若しくは1以上のC1-C4アルキル基で置換されたフェニルであり、R2とR3は、一緒になって、フェニル若しくはC1-C4アルキル基で置換されたフェニルを形成する。)
【請求項4】
R1及び/又はR2及びR3は、1以上のメチル基で置換されたフェニルを表す、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
以下から選択される化合物。
【化3】
【請求項6】
以下から選択される化合物。
【化4】
【請求項7】
以下から選択される化合物。
【化5】
【請求項8】
以下の化合物。
【化6】
【請求項9】
第一の電極、請求項1〜8何れか1項記載の化合物を含む層及び第二の電極を有する光発光ダイオード素子。
【請求項10】
第二の電極が陰極であり、前記層が、前記陰極上に位置する電子注入層である、請求項9記載の素子。
【請求項11】
電子注入層とエレクトロルミネッセンス層との間に電子輸送層を更に含み、前記エレクトロルミネッセンス層が金属錯体を含む、請求項10記載の素子。
【請求項12】
エレクトロルミネッセンス層が、ドーパントでドープされたホスト材料として、リチウム、ジルコニウム或いはハフニウムキノレートを含む、請求項11記載の素子。
【請求項13】
エレクトロルミネッセンス層が、ドーパントでドープされたホスト材料として、アルミニウムキノレートを含む、請求項11記載の素子。
【請求項14】
エレクトロルミネッセンス層が、ドーパントでドープされたホスト材料として、芳香族三級アミンを含む、請求項11記載の素子。
【請求項15】
エレクトロルミネッセンス層が、金属或いはメタロイド錯体である発光材料を含む、請求項11記載の素子。
【請求項16】
エレクトロルミネッセンス層が、ルミネッセンス材料として、金属キノレート、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム或いは白金錯体、ホウ素錯体若しくは希土類錯体または前記金属錯体のデンドリマーを含む、請求項11記載の素子。
【請求項17】
エレクトロルミネッセンス層が、エレクトロルミネッセンス材料として、リチウムキノレート或いはアルミニウムキノレートを含む、請求項15記載の素子。
【請求項18】
エレクトロルミネッセンス層が、発光共役ポリマー或いはコポリマー或いはデンドリマーを含む、請求項11記載の素子。
【請求項19】
正孔注入層が、ZnTpTPを含む、請求項11〜18何れか1項記載の素子。
【請求項20】
正孔輸送層が、α-NBPを含む、請求項11〜19何れか1項記載の素子。
【請求項21】
下記式の化合物または、そのオリゴマーを含む層を有する、電子光学或いは光電子工学素子。
【化7】
(ここで、
R1は、1以上のC1-C4アルキル、アルコキシ或いはシアノで置換されもよい、1〜5環アリール(ポリ環状を含む)、アラルキル若しくはヘテロアリール基であり、
R2とR3は、一緒になって、C1-C4アルキル、アルコキシ或いはシアノで置換されてよい1〜5環アリール(ポリ環状を含む)、アラルキル若しくはヘテロアリール基を形成し、及び
Arは、1以上のC1-C4アルキル或いはアルコキシ基で置換されてよい、単環状、二環状或いは三環状アリール若しくはヘテロアリールである。)
【請求項22】
フラットパネルディスプレーである請求項21記載の素子。
【請求項23】
静電潜像の生成のための画像処理要素である請求項21記載の素子。
【請求項24】
請求項1〜8何れか1項記載の化合物及びもう一つの有機半導体材料或いは金属を含む(OLED若しくは他の電子光学素子中の層を含む。)組成物。
【請求項25】
請求項1〜8何れか1項記載の化合物が、金属でドープされた、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
請求項1〜8何れか1項記載の化合物が、電子輸送材料と混合された、請求項24記載の組成物。
【請求項27】
電子輸送材料が、金属キノレート或いは置換キノレートである、請求項26記載の組成物。
【請求項28】
請求項1〜8何れか1項記載の化合物が、蛍光ドーパントでドープされた、請求項24記載の組成物。
【請求項29】
請求項1〜8何れか1項記載の化合物が、燐光ドーパントでドープされた、請求項24記載の組成物。
【請求項30】
請求項1〜8何れか1項記載の化合物が、希土類キレートでドープされた、請求項24記載の組成物。
【請求項31】
下記式の化合物または、そのオリゴマー。
【化8】
(ここで、
R1は、1以上のC1-C4アルキル、アルコキシ或いはシアノで置換されてよい、1〜5環アリール(ポリ環状を含む)、アラルキル若しくはヘテロアリール基であり、
R2とR3は、一緒になって、C1-C4アルキル、アルコキシ或いはシアノで置換されてもよい1〜5環アリール(ポリ環状を含む)、アラルキル若しくはヘテロアリール基を形成し、
R4は、水素、C1-C4アルキル或いはアリールであり、及び
Arは、1以上のC1-C4アルキル或いはアルコキシ基で置換されてもよい、単環状、二環状或いは三環状アリール若しくはヘテロアリールであり、前記化合物は、真空昇華可能、OVPDにより堆積可能であり及び/又はOVJPにより堆積可能である化合物。)
【請求項32】
下記式の化合物または、そのオリゴマーと有機溶媒を含む組成物。
【化9】
(ここで、
R1は、1以上のC1-C4アルキル、アルコキシ或いはシアノで置換されてよい、1〜5環アリール(ポリ環状を含む)、アラルキル若しくはヘテロアリール基であり、
R2とR3は、一緒になって、C1-C4アルキル、アルコキシ或いはシアノで置換されてよい1〜5環アリール(ポリ環状を含む)、アラルキル若しくはヘテロアリール基を形成し、
R4は、水素、C1-C4アルキル或いはアリールであり、及び
Arは、1以上のC1-C4アルキル或いはアルコキシ基で置換されてよい、単環状、二環状或いは三環状アリール若しくはヘテロアリールである。)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2010−514749(P2010−514749A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543518(P2009−543518)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050769
【国際公開番号】WO2008/081178
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050769
【国際公開番号】WO2008/081178
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】
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