説明

電子白板装置

【課題】表示内容の消去のための操作を格別に行うことなく、以前より表示されている表示内容を消去して、タッチペンの軌跡等を表示部の画面に表示することが可能な電子白板装置を提供する。
【解決手段】第1描き込み消去動作モードでは、画面SCにタッチペン3のペン先の移動軌跡を表示して、画面SCにおけるタッチペン3のペン先を中心とする一定の消去範囲の以前より表示されている表示内容を消去する。更に、第2描き込み消去動作モードでは、画面SCにタッチペン3のペン先の移動軌跡を表示して、ペン先の移動軌跡を包含する矩形状の消去範囲を求め、矩形状の消去範囲の以前より表示されている表示内容を消去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示部の画面におけるタッチペンで指示された座標位置を検出し、この検出された表示部の画面の座標位置にタッチペンの軌跡等を表示する電子白板装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電子白板装置では、表示部と、表示部の画面におけるタッチペンで指示された座標位置を検出する2次元入力部とを備え、タッチペンが表示部の画面に接触した状態で移動されると、2次元入力部により表示部の画面上のタッチペンの軌跡が検出され、このタッチペンの軌跡が表示部の画面に表示される。このようなタッチペンの軌跡を表示する機能を、ペン機能などと称している。
【0003】
また、消しゴム機能などと称される機能を設けており、この消しゴム機能により表示部の画面の表示内容を消去することができる。
【0004】
例えば、特許文献1では、消しゴムツールにより表示部の画面の表示内容を消去することができるようにしており、また消しゴムツールを選択してドラッグ動作を行い、このドラッグ長さが一定長さを超えると、このドラッグ操作により指定された範囲の表示内容を一括消去して、消去の操作を簡略化している。
【0005】
また、特許文献2では、表示部の画面上で一時消去アイコンを選択指示すると、手書きペンパッドを消去し、一定時間後に手書きペンパッドを再表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−92256号公報
【特許文献2】特開平11−353071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の電子白板装置では、タッチペンにより画面に描き込みを行うときと、画面の表示内容を消去するときとでは、ペン機能と消しゴム機能等の切り替え操作を必要とし、この切り替え操作が煩わしかった。
【0008】
特許文献1では、ドラッグ操作により指定された範囲の表示内容を一括消去することができるが、そのようなペン機能と消しゴム機能の切り替え操作を必要とすることに変わりはない。また、特許文献2では、一時消去アイコンの指示だけで手書きペンパッドを消去することができるが、消去の対象が手書きペンパッドに特定されている。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、表示内容の消去のための操作を格別に行うことなく、以前より表示されている表示内容を消去して、タッチペンの軌跡等を表示部の画面に表示することが可能な電子白板装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の電子白板装置は、表示部と、前記表示部の画面において指示された座標位置を検出する2次元入力部とを備え、前記2次元入力部によって検出された前記表示部の画面の座標位置に対する描き込み処理を行う電子白板装置において、
前記2次元入力部によって前記表示部の画面の座標位置が検出されると、前記座標位置周囲の所定の消去範囲を求め、前記消去範囲の以前より表示されている表示内容を消去して、前記座標位置に対する描き込み処理を行う制御部を備えている。
【0011】
このような本発明では、2次元入力部によって表示部の画面の座標位置が検出されると、座標位置周囲の所定の消去範囲の以前より表示されている表示内容が消去されて、座標位置に対する描き込み処理が行われる。このため、表示部の画面の座標位置を指示するだけで、座標位置周囲の消去範囲の以前より表示されている表示内容を消去しかつ座標位置に対する描き込み処理を行うことができ、表示内容の消去のための操作を行う必要がなく、装置の操作が簡略化される。
【0012】
また、本発明の電子白板装置においては、前記消去範囲のサイズを設定する消去範囲サイズ設定部を備えている。
【0013】
これにより、消去範囲のサイズを調節することができる。
【0014】
更に、本発明の電子白板装置においては、前記制御部は、前記消去範囲の以前より表示されている表示内容を消去すると同時に、前記座標位置に対する描き込み処理を行っている。
【0015】
この場合は、座標位置周囲の消去範囲の以前より表示されている表示内容の消去と、座標位置に対する描き込み処理とが並行して進められる。
【0016】
また、本発明の電子白板装置においては、前記2次元入力部は、前記表示部の画面の座標位置の検出を継続して行い、前記制御部は、前記継続して検出された座標位置の軌跡に沿って消去範囲を求め、前記継続して検出された座標位置に対する描き込み処理による表示内容を残して、前記消去範囲の以前より表示されている表示内容を消去している。
【0017】
この場合は、座標位置の軌跡に沿った帯状の消去範囲の以前より表示されている表示内容が消去される。
【0018】
更に、本発明の電子白板装置においては、前記2次元入力部は、前記表示部の画面の座標位置の検出を継続して行い、前記制御部は、前記継続して検出された座標位置の軌跡を包含する消去範囲を求め、前記継続して検出された座標位置に対する描き込み処理による表示内容を残して、前記消去範囲の以前より表示されている表示内容を消去している。
【0019】
この場合は、座標位置の軌跡を包含する消去範囲の以前より表示されている表示内容が消去される。
【発明の効果】
【0020】
このような本発明では、2次元入力部によって表示部の画面の座標位置が検出されると、座標位置周囲の所定の消去範囲の以前より表示されている表示内容が消去されて、座標位置に対する描き込み処理が行われる。このため、表示部の画面の座標位置を指示するだけで、座標位置周囲の消去範囲の以前より表示されている表示内容を消去しかつ座標位置に対する描き込み処理を行うことができ、表示内容の消去のための操作を行う必要がなく、装置の操作が簡略化される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の電子白板装置の一実施形態を概略的に示す平面図である。
【図2】図1の電子白板装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図2のタッチペンの構成を示すブロック図である。
【図4】図2の2次元入力部の構成を示すブロック図である。
【図5】(a)は通常描き込み動作モードにより画面に描き込まれた移動軌跡を例示する図であり、(b)は第1描き込み消去動作モードにより画面に描き込まれた移動軌跡と移動軌跡に沿った帯状の消去範囲を例示する図であり、(c)は第2描き込み消去動作モードにより画面に描き込まれた移動軌跡と移動軌跡を含む矩形状の消去範囲を例示する図である。
【図6】(a)、(b)は、描き込み動作モードの種類に応じたそれぞれの値が書き込まれる各テーブルを例示する図である。
【図7】(a)は消去範囲の半径が書き込まれるテーブルを例示する図であり、また(b)は消去範囲のX軸方向の最小値と最大値、及び消去範囲のY軸方向の最小値と最大値が書き込まれるテーブルを例示する図である。
【図8】通常描き込み動作モード、第1及び第2描き込み消去動作モードのいずれかを選択して実施するための手順を示すフローチャートである。
【図9】図8のステップS106の第1描き込み消去動作モードの処理手順を詳しく示すフローチャートである。
【図10】図9のステップS203の処理手順、つまりペン先を中心とする半径の消去範囲を求めて、この消去範囲の各画素に対応するメモリ領域の各画素の値を初期化する処理手順を詳しく示すフローチャートである。
【図11】図8のステップS107の第2描き込み消去動作モードの処理手順を詳しく示すフローチャートである。
【図12】図11のステップS417の処理手順、つまりペン先の移動軌跡を含む矩形状の消去範囲を求め、この矩形状の消去範囲の各画素に対応するメモリ領域の各画素の値を初期化する処理手順を詳しく示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の電子白板装置の一実施形態を概略的に示す平面図である。本実施形態の電子白板装置1は、ディスプレイ装置2と、タッチペン3と、ディスプレイ装置2の画面SCに設けられ、この画面SCにおけるタッチペン3のペン先で指示された座標位置を検出する2次元入力部4と、2次元入力部4によって検出された画面SCの座標位置を入力し、ディスプレイ装置2を駆動制御して、画面SCの座標位置に対する描き込み処理等を行うパーソナルコンピュータ(以下PCと称す)5とを備えている。
【0024】
図2は、電子白板装置1の構成を示すブロック図である。図2において、ディスプレイ装置2は、例えば液晶ディスプレイ装置であり、液晶パネルからなる表示部21と、各種のデータを記憶するメモリ22と、表示部21の画面SCに表示される画像(ラスタイメージ)を示す画像データを記憶する画像メモリ23と、PC5からの画像データ等を受信入力する受信入力部24と、受信入力部24に入力された画像データを画像メモリ23に記憶したり、表示部21を駆動制御して、画像メモリ23内の画像データによって示される画像を表示部21の画面SCに表示したりする制御部25と、ディスプレイ装置2の動作電力を供給する電源部26とを備えている。
【0025】
2次元入力部4は、ディスプレイ装置2に一体的に設けられたものであり、表示部11の画面SCにおいてタッチペン3のペン先で指示された座標位置を検出し、この座標位置を示す座標データをPC5に出力する。
【0026】
PC5は、2次元入力部4からの座標データを受信入力する受信入力部51と、各種のプログラム等を記憶するHDD等の記憶デバイス52と、RAM53と、画像(ラスタイメージ)を示す画像データを記憶する画像メモリ54と、画像メモリ54内の画像データ等を送信出力する送信出力部55と、各種のプログラムを実行するCPU56と、キーボード等からなる操作部59と、PC5の動作電力を供給する電源57とを備えている。
【0027】
図3は、タッチペン3の構成を示すブロック図である。このタッチペン3は、ペン先31が表示部21の画面SCに接触しているか否かを検出する接触検出スイッチ32と、タッチペン3による描き込み動作モードを切り替えるために操作される操作スイッチ33とを有している。送信出力部34は、接触検出スイッチ32による検出結果、つまりペン先31が表示部21の画面SCに接触しているか否かを示す接触データ、及び操作スイッチ33の操作により切り替え設定された描き込み動作モードを示す動作モードデータを2次元入力部4に送信出力する。電源スイッチ35は、電源部36からタッチペン3への動作電力の供給をオンオフするために操作される。
【0028】
図4は、2次元入力部4の構成を示すブロック図である。この2次元入力部4は、赤外線を出射する発光素子(発光ダイオード)と赤外線を受光して光電変換する受光素子(フォトダイオード)とを用いた赤外線方式のものであり、複数の発光素子を横方向(X軸方向)1列に配列した横方向赤外線発光素子アレイ41と、複数の受光素子を横方向(X軸方向)1列に配列した横方向赤外線受光素子アレイ42と、複数の発光素子を縦方向(Y軸方向)1列に配列した縦方向赤外線発光素子アレイ43と、複数の受光素子を縦方向(Y軸方向)1列に配列した縦方向赤外線受光素子アレイ44とを有している。
【0029】
横方向赤外線発光素子アレイ41と横方向赤外線受光素子アレイ42とは、表示部21の画面SCの上下対向2辺に配置されており、横方向赤外線発光素子アレイ41の各発光素子の発光面と横方向赤外線受光素子アレイ42の各受光素子の受光面とが画面SCを介して互いに向き合っている。
【0030】
また、縦方向赤外線発光素子アレイ43と縦方向赤外線受光素子アレイ44とは、表示部21の画面SCの左右対向2辺に配置されており、縦方向赤外線発光素子アレイ43の各発光素子の発光面と縦方向赤外線受光素子アレイ44の各受光素子の受光面とが画面SCを介して互いに向き合っている。
【0031】
発光制御回路45は、横方向赤外線発光素子アレイ41の各発光素子を順次点灯させると共に、縦方向赤外線発光素子アレイ43の各発光素子を順次点灯させる。
【0032】
この横方向赤外線発光素子アレイ41の各発光素子の順次点灯に伴い、横方向赤外線受光素子アレイ42の各受光素子により赤外線が受光され、同様に縦方向赤外線発光素子アレイ43の各発光素子の順次点灯に伴い、縦方向赤外線受光素子アレイ44の各受光素子により赤外線が受光され、横方向赤外線受光素子アレイ42の各受光素子の受光出力及び縦方向赤外線受光素子アレイ44の各受光素子の受光出力が受光制御回路46に入力される。
【0033】
このとき、表示部21の画面SCに対してタッチペン3のペン先が接触していなかった場合は、横方向赤外線受光素子アレイ42の各受光素子の全てにより赤外線が受光されて、横方向の各受光素子の全てから略一定の受光出力が出力され、同様に縦方向赤外線受光素子アレイ44の各受光素子の全てにより赤外線が受光されて、縦方向の各受光素子の全てから略一定の受光出力が出力される。
【0034】
また、表示部21の画面SCに対してタッチペン3のペン先が接触していた場合は、タッチペン3のペン先により、横方向赤外線発光素子アレイ41の各発光素子の少なくとも1つの赤外線及び横方向赤外線発光素子アレイ41の各発光素子の少なくとも1つの赤外線が遮断もしくは散乱されて、横方向赤外線受光素子アレイ42におけるタッチペン3のペン先と同一のX軸方向位置にある少なくとも1つの受光素子の受光量が変化して、この受光素子の受光出力が変化し、また縦方向赤外線受光素子アレイ44におけるタッチペン3のペン先と同一のY軸方向位置にある少なくとも1つの受光素子の受光量が変化して、この受光素子の受光出力が変化する。
【0035】
受光制御回路46は、横方向赤外線受光素子アレイ42の各受光素子の受光出力の変化及び縦方向赤外線受光素子アレイ44の各受光素子の受光出力の変化を判定し、この判定結果を座標生成部47に出力する。座標生成部47は、受光制御回路46の判定結果に基づき、横方向赤外線受光素子アレイ42における受光出力が変化した受光素子のX軸方向位置及び縦方向赤外線受光素子アレイ44における受光出力が変化した受光素子のY軸方向位置を求め、表示部21の画面SCにおけるタッチペン3のペン先のX軸方向位置及びY軸方向位置(座標位置)を生成して制御部48に出力する。
【0036】
また、受信入力部61は、タッチペン3のペン先が表示部21の画面SCに接触しているか否かを示す接触データ、及びタッチペン3の描き込み動作モードを示す動作モードデータをタッチペン3から受信入力して、これらの接触データ及び動作モードデータを制御部48に出力する。
【0037】
制御部48は、タッチペン3からの接触データを入力すると、この接触データに基づきタッチペン3のペン先が表示部21の画面SCに接触しているか否かを判定し、ペン先が画面SCに接触しているときにだけ、座標生成部47から入力したタッチペン3のペン先の座標位置を有効とみなして、このペン先の座標位置を送信出力部49からPC5へと出力する。また、制御部48は、タッチペン3からの動作モードデータを入力すると、この動作モードデータを送信出力部49からPC5へと送信出力する。尚、電源スイッチ62は、電源部63からの2次元入力部4の動作電力の供給をオンオフするために操作される。
【0038】
このような構成の電子白板装置1において、例えばPC5のCPU56は、画像(ラスタイメージ)を示す画像データを画像メモリ54から読み出して、この画像データを送信出力部55からディスプレイ装置2へと送信出力する。ディスプレイ装置2では、画像データを受信入力部24で受信入力して、画像データを制御部25を通じて画像メモリ23に記憶する。制御部25は、表示部21を駆動制御して、画像メモリ23内の画像データによって示される画像を表示部21の画面SCに表示する。
【0039】
従って、PC5の画像メモリ54に所望の画像を示す画像データを記憶して、この画像データをPC5からディスプレイ装置2へと送受すれば、この画像データによって示される画像をディスプレイ装置2の画面SCに表示することができる。
【0040】
また、2次元入力部4では、タッチペン3のペン先がディスプレイ装置2の画面SCに接触した状態で移動されると、座標生成部47は、画面SCにおけるタッチペン3のペン先の座標位置を一定周期で繰り返し生成して制御部48に出力する。このとき、タッチペン3では、接触検出スイッチ32によりペン先が画面SCに接触していることを検出し、ペン先31が画面SCに接触していることを示す接触データを送信出力部34から2次元入力部4に送信出力する。2次元入力部4では、ペン先が画面SCに接触していることを示す接触データを受信入力部61で受信して制御部48に入力し、制御部48は、接触データに基づきタッチペン3のペン先が表示部21の画面SCに接触していると判定して、座標生成部47から一定周期で繰り返し入力しているタッチペン3のペン先の座標位置を有効とみなして、ペン先の座標位置を送信出力部49からPC5へと一定周期で逐次送信出力する。
【0041】
PC5では、ペン先の座標位置を受信入力部51で一定周期で逐一受信してCPU56に入力する。CPU56は、一定周期で繰り返し入力したペン先の各座標位置に基づき、ディスプレイ装置2の画面SCにおけるペン先の移動軌跡を求め、このペン先の移動軌跡(ラスタイメージ)を示す画像データを画像メモリ54に書き込み、このペン先の移動軌跡を示す画像データを送信出力部55からディスプレイ装置2へと送信出力する。ディスプレイ装置2では、画像データを受信入力部24で受信入力して、画像データを制御部25を通じて画像メモリ23に記憶する。制御部25は、表示部21を駆動制御して、画像メモリ23内の画像データによって示される画像、つまりディスプレイ装置2の画面SCにおけるペン先の移動軌跡を表示部21の画面SCに表示する。
【0042】
従って、タッチペン3のペン先をディスプレイ装置2の画面SCに接触させて移動させると、2次元入力部4により画面SCにおけるタッチペン3のペン先の座標位置が一定周期で繰り返し検出されて、PC5により画面SCにおけるタッチペン3のペン先の移動軌跡が求められ、ディスプレイ装置2の画面SCにタッチペン3のペン先の移動軌跡が表示される。このため、例えばタッチペン3のペン先によりディスプレイ装置2の画面SC上に文字を描くと、この文字が画面SCに表示される。
【0043】
また、PC5では、画像データが画像メモリ54に既に記憶されている場合に、ペン先の移動軌跡を示す画像データを画像メモリ54内の画像データに上書きして、ペン先の移動軌跡を画像メモリ54内の画像データによって示される画像に重ねて描き込み、この移動軌跡が描き込まれた画像を示す画像データをディスプレイ装置2へと送信出力する。ディスプレイ装置2では、この画像データを受信入力して画像メモリ23に記憶し、この画像データによって示される移動軌跡が描き込まれた画像を表示部21の画面SCに表示する。例えば、図5(a)に示すように画面SC上で画像Wに移動軌跡Jが重ねて表示される。
【0044】
更に、PC5では、操作部59の操作により表示内容(画像や移動軌跡)の消去が指示されると、CPU56は、表示内容の消去を示す制御データを送信出力部55からディスプレイ装置2へと送信出力する。ディスプレイ装置2では、制御データを受信入力部24で受信して制御部25に入力し、これに応答して制御部25は、画像メモリ23内の画像データを消去し、ディスプレイ装置2の画面SCの表示内容を消去する。
【0045】
ところで、PC5の操作部59の操作により表示内容の消去を指示してから、タッチペン3のペン先によりディスプレイ装置2の画面SCに移動軌跡を描き込む場合は、表示内容を消去するための操作と、タッチペン3のペン先により移動軌跡を描き込むための操作とを行う必要があって、操作が煩雑になる。
【0046】
そこで、本実施形態の電子白板装置1では、タッチペン3のペン先をディスプレイ装置2の画面SCに接触させて移動させるだけで、画面SCにおけるタッチペン3のペン先を中心とする所定の消去範囲の以前より表示されている表示内容を消去して、画面SCにタッチペン3のペン先の移動軌跡を表示することができるようにしている。すなわち、表示内容の消去のための操作を行わずに、以前より表示されている表示内容の消去とタッチペン3のペン先の移動軌跡の表示とを同時に行うことができるようにしている。
【0047】
次に、そのようなタッチペン3のペン先を中心とする所定の消去範囲の以前より表示されている表示内容の消去とタッチペン3のペン先の移動軌跡の表示とを同時に行うための処理について詳しく説明する。
【0048】
まず、本実施形態では、ディスプレイ装置2の画面SCにタッチペン3のペン先の移動軌跡を表示するだけの通常描き込み動作モードと、ペン先の移動軌跡の表示と以前より表示されている表示内容の消去とを同時に行うことが可能な2種類の第1及び第2描き込み消去動作モードとのいずれかを選択的に設定することができるようにしている。
【0049】
通常描き込み動作モードでは、図5(a)に示すように画面SC上で画像Wに移動軌跡Jを重ねて表示する。また、第1描き込み消去動作モードでは、図5(b)に示すように画面SCにタッチペン3のペン先の移動軌跡Jを表示して、タッチペン3のペン先を中心とする一定の消去範囲Kにおいて以前より表示されている画像W(表示内容)を消去する。更に、第2描き込み消去動作モードでは、図5(c)に示すように画面SCにタッチペン3のペン先の移動軌跡Jを表示して、ペン先の移動軌跡を包含する矩形状の消去範囲Hを求め、矩形状の消去範囲Hにおいて以前より表示されている画像W(表示内容)を消去する。
【0050】
このような通常描き込み動作モード、第1及び第2描き込み消去動作モードは、タッチペン3による描き込みの前に選択される。また、第1描き込み消去動作モードについては、一定の消去範囲のサイズを予め設定する必要がある。
【0051】
ここで、通常描き込み動作モード、第1及び第2描き込み消去動作モードのいずれかの選択は、タッチペン3の操作スイッチ33の操作により行われる。タッチペン3では、操作スイッチ33の操作により選択された動作モードを示す動作モードデータを送信出力部34から2次元入力部4に送信出力する。2次元入力部4では、動作モードデータを受信入力部61で受信入力して、動作モードデータを送信出力部49からPC5へと送信出力する。PC5では、動作モードデータを受信入力部51で受信してCPU56に入力し、CPU56は、入力した動作モードデータに対応する2つの値を図6(a)、(b)に示すような記憶デバイス52内の各テーブルDT1、DT2に書き込む。図6(a)のテーブルDT1には、通常描き込み動作モードが選択設定されたときにEM値「0」が書き込まれ、また第1及び第2描き込み消去動作モードのいずれかが選択設定されたときにEM値「1」が書き込まれる。また、図6(b)のテーブルDT2には、第1描き込み消去動作モードが選択設定されたときにEE値「0」が書き込まれ、また第2描き込み消去動作モードが選択設定されたときにEE値「1」が書き込まれる。従って、各テーブルDT1、DT2のEM値及びEE値を参照することにより、通常描き込み動作モード、第1及び第2描き込み消去動作モードのいずれが予め選択されたかを判定することができる。
【0052】
また、第1描き込み消去動作モードにおける消去範囲のサイズは、PC5の操作部59の操作により設定される。例えば、図7(a)に示すようなテーブルDT3を記憶デバイス52に作成して、操作部59の操作により消去範囲の半径EMr(ラスタイメージにおける画素数)をテーブルDT3に書き込んでいる。
【0053】
更に、第1及び第2描き込み消去動作モードでは、後で述べるように消去範囲のX軸方向の最小値EMx1と最大値EMx2、及び消去範囲のY軸方向の最小値EMy1と最大値EMy2を求めて用いるので、これらの値を記憶するための図7(b)に示すようテーブルDT4を記憶デバイス52に作成している。
【0054】
このようにして通常描き込み動作モード、第1及び第2描き込み消去動作モードのいずれかが選択設定され、また第1描き込み消去動作モードにおける消去範囲の半径EMrが設定される。
【0055】
次に、図8のフローチャートを参照しつつ、通常描き込み動作モード、第1及び第2描き込み消去動作モードのいずれかを選択して実施するための手順を説明する。
【0056】
まず、PC5のCPU56は、記憶デバイス52に記憶されている図6(a)のテーブルDT1のEM値を参照して(ステップS101)、EM値が「0」であるか否かを判定し(ステップS102)、EM値が「0」であれば(ステップS102で「Yes」)、通常描き込み動作モードを選択設定する(ステップS103)。この場合は、図5(a)に示すようにディスプレイ装置2の画面SCにタッチペン3のペン先の移動軌跡Jを表示するだけであって、以前より表示されている画像W(表示内容)を自動的に消去することはない。
【0057】
また、EM値が「1」であれば(ステップS102で「No」)、PC5のCPU56は、記憶デバイス52に記憶されている図6(b)のテーブルDT2のEE値を参照して(ステップS104)、EE値が「0」であるか否かを判定し(ステップS105)、EE値が「0」であれば(ステップS105で「Yes」)、第1描き込み消去動作モードを選択設定する(ステップS106)。この場合は、図5(b)に示すようにディスプレイ装置2の画面SCにタッチペン3のペン先の移動軌跡Jを表示して、タッチペン3のペン先を中心とする一定の消去範囲Kにおいて以前より表示されている画像W(表示内容)を消去する。
【0058】
更に、EE値が「1」であれば(ステップS105で「No」)、第2描き込み消去動作モードを選択設定する(ステップS107)。この場合は、図5(c)に示すようにディスプレイ装置2の画面SCにタッチペン3のペン先の移動軌跡Jを表示して、ペン先の移動軌跡を包含する矩形状の消去範囲Hを求め、矩形状の消去範囲Hにおいて以前より表示されている画像W(表示内容)を消去する。
【0059】
このように各テーブルDT1、DT2のEM値及びEE値に基づき、通常描き込み動作モード、第1及び第2描き込み消去動作モードのいずれが選択設定される。
【0060】
次に、図8のステップS106の第1描き込み消去動作モードの処理手順を、図9のフローチャートを参照しつつ詳しく説明する。
【0061】
まず、図4に示すディスプレイ装置2の画面SCにおいて、横方向をX軸方向とし、縦方向をY軸方向とし、左上角の原点の座標位置を(0,0)とし、右下角の座標位置を(Xmax,Ymax)とし、任意画素の座標位置を(x,y)とし、2次元入力部4により検出されたタッチペン3のペン先の画素の座標位置を(px,py)とする。また、PC5の画像メモリ54には、画面SCの座標(0,0)〜(Xmax,Ymax)に対応するメモリ領域があって、画面SCの画素の座標位置に対応するメモリ領域の座標位置を(Gx,Gy)とする。そして、メモリ領域の座標位置(Gx,Gy)には、画面SCにおける座標位置(x,y)の任意画素の値(例えば色度を示す値)として、「2〜65535」が書き込まれる。また、メモリ領域の座標位置(Gx,Gy)に「0」が書き込まれている場合は、任意画素の値が初期化されて設定されていないものとし、更に座標位置(Gx,Gy)に「1」が書き込まれている場合は、任意画素にタッチペン3のペン先が接触もしくは摺接したものとする。
【0062】
さて、このような前提のもとに、2次元入力部4では、タッチペン3のペン先がディスプレイ装置2の画面SCに接触した状態で移動されて、タッチペン3のペン先による描き込みが行われると、画面SCにおけるタッチペン3のペン先の座標位置(px,py)を一定周期で繰り返し生成し、ペン先の座標位置(px,py)をPC5へと一定周期で逐次送信出力する。
【0063】
PC5では、ペン先の座標位置(px,py)を一定周期で逐一受信する度に、ペン先の座標位置(px,py)をCPU56に入力する(ステップS201)。そして、CPU56は、ペン先の座標位置(px,py)を入力すると、ペン先の座標位置(px,py)に対応するメモリ領域の座標位置(Gx,Gy)の任意画素の値を、タッチペン3のペン先が接触もしくは摺接したことを示す「1」に書き換える(ステップS202)。そして、CPU56は、記憶デバイス52のテーブルDT3から半径EMrを読み出して、ペン先の座標位置(px,py)を中心とする半径EMrの消去範囲を求め、この消去範囲の各画素に対応するメモリ領域の各画素の値「0又は2〜65535」を「0」に書き換えて初期化する(ステップS203)。ただし、ステップS203においては、ペン先の座標位置(px,py)に対応するメモリ領域の座標位置(Gx,Gy)の任意画素の値「1」を「0」に書き換えずにそのまま残す。
【0064】
引き続いて、CPU56は、タッチペン3のペン先の座標位置(px,py)の一定周期の受信が継続しているか否かを判定し(ステップS204)、継続しているならば(ステップS204で「Yes」)、タッチペン3のペン先による描き込みが継続しているので、ステップS201〜S203を繰り返して、ペン先の座標位置(px,py)を入力し、ペン先の座標位置(px,py)に対応するメモリ領域の座標位置(Gx,Gy)の任意画素の値を「1」に書き換え、ペン先の座標位置(px,py)を中心とする半径EMrの消去範囲の各画素に対応するメモリ領域の各画素の値「0又は2〜65535」を「0」に書き換えて初期化する。
【0065】
こうしてタッチペン3のペン先による描き込みが継続されている限り、ステップS201〜S203が繰り返されて、ペン先の座標位置(px,py)に対応するメモリ領域の座標位置(Gx,Gy)の任意画素の値が「1」に書き換えられ、ペン先の座標位置(px,py)を中心とする半径EMrの消去範囲の各画素に対応するメモリ領域の各画素の値「0又は2〜65535」が「0」に書き換えて初期化される。この結果、画面SCにおけるペン先の移動軌跡上の各画素に対応するメモリ領域の各画素の値が「1」に書き換えられ、移動軌跡に沿った帯状の消去範囲が形成され、この消去範囲の各画素に対応するメモリ領域の各画素の値「0又は2〜65535」が「0」に書き換えられて初期化される。
【0066】
そして、CPU56は、タッチペン3のペン先の座標位置(px,py)の一定周期の受信が停止すると(ステップS204で「No」)、タッチペン3のペン先による描き込みが終了したので、メモリ領域における値「1」の各画素を選択して、これらの画素の値を、タッチペン3のペン先の移動軌跡を示す予め設定された値Pc(「2〜65535」の範囲の値)に書き換える(ステップS205)。
【0067】
この後、CPU56は、画像メモリ54のメモリ領域の画像データを読出して、この画像データを送信出力部55からディスプレイ装置2へと送信出力する。ディスプレイ装置2では、画像データを受信入力部24で受信入力して画像メモリ23に記憶し、制御部25は、表示部21を駆動制御して、画像メモリ23内の画像データによって示される画像を表示部21の画面SCに表示する(ステップS206)。これにより、表示部21の画面SCには、タッチペン3のペン先の移動軌跡が表示され、かつ移動軌跡に沿った帯状の消去範囲の表示内容が消去される。
【0068】
例えば、図5(b)に示すように画面SC上で移動軌跡Jが表示され、移動軌跡Jに沿った帯状の消去範囲Kにおいて以前より表示されている画像W(表示内容)が消去される。
【0069】
次に、図9のステップS203の処理手順、つまりペン先を中心とする半径EMrの消去範囲を求めて、この消去範囲の各画素に対応するメモリ領域の各画素の値を「0」に書き換えて初期化する処理手順を、図10のフローチャートを参照しつつ詳しく説明する。
【0070】
まず、CPU56は、ディスプレイ装置2の画面SCにおけるタッチペン3のペン先の座標位置(px,py)と消去範囲の半径EMrを用いて、消去範囲のX軸方向の最小値EMx1(=px−EMr)を求めて、最小値EMx1を記憶デバイス52のテーブルDT4に書き込み(ステップS301)、消去範囲のX軸方向の最小値EMx1がディスプレイ装置2の画面SCのX軸方向の最小値「0」よりも小さいか否か、つまり消去範囲が画面SCからはみ出すか否かを判定し(ステップS302)、はみ出なければ(ステップS302で「No」)、消去範囲のX軸方向の最小値EMx1(=px−EMr)を維持し、またはみ出せば(ステップS302で「Yes」)、消去範囲のX軸方向の最小値EMx1を「0」に更新する(ステップS303)。
【0071】
また、消去範囲のX軸方向の最大値EMx2(=px+EMr)を求めて、最大値EMx2を記憶デバイス52のテーブルDT4に書き込み(ステップS304)、消去範囲のX軸方向の最大値EMx2がディスプレイ装置2の画面SCの最大値「Xmax」よりも大きいか否か、つまり消去範囲が画面SCからはみ出すか否かを判定し(ステップS305)、はみ出なければ(ステップS305で「No」)、消去範囲のX軸方向の最大値EMx2(=px+EMr)を維持し、またはみ出せば(ステップS305で「Yes」)、消去範囲のX軸方向の最大値EMx2を「Xmax」に更新する(ステップS306)。
【0072】
同様に、CPU56は、消去範囲のY軸方向の最小値EMy1(=py−EMr)を求め、最小値EMy1を記憶デバイス52のテーブルDT4に書き込み(ステップS307)、消去範囲のY軸方向の最小値EMy1が画面SCのY軸方向の最小値「0」よりも小さいか否か、つまり消去範囲が画面SCからはみ出すか否かを判定し(ステップS308)、はみ出なければ(ステップS308で「No」)、消去範囲のY軸方向の最小値EMy1(=py−EMr)を維持し、またはみ出せば(ステップS308で「Yes」)、消去範囲のY軸方向の最小値EMy1を「0」に更新する(ステップS309)。
【0073】
また、消去範囲のY軸方向の最大値EMy2(=py+EMr)を求めて、最大値EMy2を記憶デバイス52のテーブルDT4に書き込み(ステップS310)、消去範囲のY軸方向の最大値EMy2がディスプレイ装置2の画面SCの最大値「Ymax」よりも大きいか否か、つまり消去範囲が画面SCからはみ出すか否かを判定し(ステップS311)、はみ出なければ(ステップS311で「No」)、消去範囲のY軸方向の最大値EMy2(=py+EMr)を維持し、またはみ出せば(ステップS311で「Yes」)、消去範囲のY軸方向の最大値EMy2を「Ymax」に更新する(ステップS312)。
【0074】
このようなステップS301〜S312の処理により、タッチペン3のペン先を中心とする半径EMrの消去範囲であって、かつディスプレイ装置2の画面SCからはみ出さない消去範囲が求められる。
【0075】
引き続いて、CPU56は、値iを消去範囲のX軸方向の最小値EMx1に設定すると共に、値jを消去範囲のY軸方向の最小値EMy1に設定し(ステップS313、S314)、タッチペン3のペン先の座標位置(px,py)と座標位置(i、j)間のX軸方向の距離dx(=|px−i|)及びY軸方向の距離dy(=|py−i|)を求めて(ステップS315)、タッチペン3のペン先の座標位置(px,py)と座標位置(i、j)間の直線距離dd(=√(dx2+dy2))を求め(ステップS316)、この直線距離ddが半径EMr以下であるか否かを判定する(ステップS317)。すなわち、座標位置(i、j)がペン先を中心とする半径EMrの消去範囲に入るか否かを判定する。
【0076】
そして、CPU56は、座標位置(i、j)がペン先を中心とする半径EMrの消去範囲に入れば(ステップS317で「Yes」)、画面SCの座標位置(i、j)に対応する画像メモリ54のメモリ領域の座標位置の値が「1」であるか否か判定し(ステップS318)、つまり画面SCの座標位置(i、j)の画素がタッチペン3のペン先の移動軌跡上にあるか否かを判定し、メモリ領域の座標位置の値が「1」でなく(ステップS318で「No」)、画面SCの座標位置(i、j)の画素がタッチペン3のペン先の移動軌跡上になければ、メモリ領域の座標位置の値「0又は2〜65535」を「0」に初期化する(ステップS319)。
【0077】
また、座標位置(i、j)がペン先を中心とする半径EMrの消去範囲に入らなければ(ステップS317で「No」)、座標位置(i、j)の画素の値を消去する必用がないことから、座標位置(i、j)に対応するメモリ領域の座標位置の値を書き換えずにそのまま残す。更に、座標位置(i、j)に対応するメモリ領域の座標位置の値が「1」であって(ステップS318で「Yes」)、座標位置(i、j)の画素がタッチペン3のペン先の移動軌跡上にあれば、メモリ領域の座標位置の値「1」を書き換えずにそのまま残す。
【0078】
この後、値jが消去範囲のY軸方向の最大値EMy2未満であることを確認してから(ステップS320で「Yes」)、値jを歩進し(ステップS321)、ステップS315〜S319を繰り返す。以降同様に、値iを消去範囲のX軸方向の最小値EMx1に維持したまま、値jが消去範囲のY軸方向の最大値EMy2に達するまで値jを歩進して、その度に、ステップS315〜S319を繰り返す。
【0079】
更に、値jが消去範囲のY軸方向の最大値EMy2に達すると(ステップS320で「No」)、値iが消去範囲のX軸方向の最大値EMx2未満であることを確認してから(ステップS322で「Yes」)、値iを歩進し(ステップS323)、ステップS314に戻って、値jを消去範囲のY軸方向の最小値EMy1に再設定し、ステップS315〜S321を繰り返す。
【0080】
そして、値iが消去範囲のX軸方向の最大値EMx2に達すると(ステップS322で「No」)、ステップS313〜S323の処理を終了する。
【0081】
このようなステップS313〜S323の処理により、画面SCにおけるペン先の移動軌跡上の各画素に対応するメモリ領域の各画素の値「1」が残され、移動軌跡に沿った帯状の消去範囲の各画素に対応するメモリ領域の各画素の値「0又は2〜65535」が値「0」に書き換えられて初期化される(ステップS324)。
【0082】
次に、図8のステップS107の第2描き込み消去動作モードの処理手順を、図11のフローチャートを参照しつつ詳しく説明する。
【0083】
ここでも、図4に示すディスプレイ装置2の画面SCにおいて、横方向をX軸方向とし、縦方向をY軸方向とし、左上角の原点の座標位置を(0,0)とし、右下角の座標位置を(Xmax,Ymax)とし、任意画素の座標位置を(x,y)とし、2次元入力部4による検出されたタッチペン3のペン先の画素の座標位置を(px,py)とする。また、PC5の画像メモリ54には、画面SCの座標(0,0)〜(Xmax,Ymax)に対応するメモリ領域があって、画面SCの画素の座標位置に対応するメモリ領域の座標位置を(Gx,Gy)とする。そして、メモリ領域の座標位置(Gx,Gy)には、画面SCにおける座標位置(x,y)の任意画素の値(例えば色度を示す値)として、「2〜65535」が書き込まれる。また、メモリ領域の座標位置(Gx,Gy)に「0」が書き込まれている場合は、任意画素の値が初期化されて設定されていないものとし、更に座標位置(Gx,Gy)に「1」が書き込まれている場合は、任意画素にタッチペン3のペン先が接触もしくは摺接したものとする。
【0084】
このような前提のもとに、2次元入力部4では、タッチペン3のペン先がディスプレイ装置2の画面SCに接触した状態で移動されて、タッチペン3のペン先による描き込みが行われると、画面SCにおけるタッチペン3のペン先の座標位置(px,py)を一定周期で繰り返し生成し、ペン先の座標位置(px,py)をPC5へと一定周期で逐次送信出力する。
【0085】
PC5では、ペン先の座標位置(px,py)を一定周期で逐一受信する度に、ペン先の座標位置(px,py)をCPU56に入力する(ステップS401)。そして、CPU56は、ペン先の座標位置(px,py)を入力すると、ディスプレイ装置2の画面SCにおける矩形領域のX軸方向の最小値EMx1と最大値EMx2を値pxに初期設定すると共に、矩形領域のY軸方向の最小値EMy1と最大値EMy2を値pyに初期設定する(ステップS402)また、CPU56は、ペン先の座標位置(px,py)に対応するメモリ領域の座標位置(Gx,Gy)の任意画素の値を、タッチペン3のペン先が接触もしくは摺接したことを示す「1」に書き換える(ステップS403)。
【0086】
引き続いて、CPU56は、ペン先の座標位置(px,py)をCPU56に再度入力し(ステップS404)、ペン先の座標位置(px,py)に対応するメモリ領域の座標位置(Gx,Gy)の任意画素の値を、タッチペン3のペン先が接触もしくは摺接したことを示す「1」に書き換える(ステップS405)。そして、CPU56は、矩形領域のX軸方向の最小値EMx1及び最大値EMx2を値pxと比較し(ステップS406)、値pxが最小値EMx1よりも小さければ(ステップS407で「Yes」)、最小値EMx1を値pxに更新し(ステップS408)、また値pxが最小値EMx1よりも小さくなければ(ステップS407で「No」)、最小値EMx1を更新せずに維持する。また、値pxが最大値EMx2よりも大きければ(ステップS409で「Yes」)、最大値EMx2を値pxに更新し(ステップS410)、また値pxが最大値EMx2よりも大きくなければ(ステップS409で「No」)、最大値EMx2を更新せずに維持する。
【0087】
同様に、CPU56は、矩形領域のY軸方向の最小値EMy1及び最大値EMy2を値pyと比較し(ステップS411)、値pyが最小値EMy1よりも小さければ(ステップS412で「Yes」)、最小値EMy1を値pyに更新し(ステップS413)、また値pyが最小値EMy1よりも小さくなければ(ステップS412で「No」)、最小値EMy1を更新せずに維持する。また、値pyが最大値EMy2よりも大きければ(ステップS414で「Yes」)、最大値EMy2を値pyに更新し(ステップS415)、また値pyが最大値EMy2よりも大きくなければ(ステップS414で「No」)、最大値EMy2を更新せずに維持する。
【0088】
引き続いて、CPU56は、タッチペン3のペン先の座標位置(px,py)の一定周期の受信が継続しているか否かを判定し(ステップS416)、継続しているならば(ステップS416で「Yes」)、タッチペン3のペン先による描き込みが継続しているので、ステップS404〜S415を繰り返して、ペン先の座標位置(px,py)を入力し、値pxに応じて矩形領域のX軸方向の最小値EMx1と最大値EMx2を更新すると共に、値pyに応じて矩形領域のY軸方向の最小値EMy1と最大値EMy2を更新する。
【0089】
こうしてタッチペン3のペン先による描き込みが継続されている限り、ステップS404〜S416が繰り返されて、ペン先の各座標位置(px,py)からなる移動軌跡が入力され、X軸方向の最小値EMx1と最大値EMx2及びY軸方向の最小値EMy1と最大値EMy2で規定される矩形領域、すなわちタッチペン3のペン先の移動軌跡を包含する最小の矩形領域が求められる。
【0090】
そして、CPU56は、タッチペン3のペン先の座標位置(px,py)の一定周期の受信が停止すると(ステップS416で「No」)、タッチペン3のペン先による描き込みが終了したので、記憶デバイス52のテーブルDT3から半径EMrを読み出して、矩形領域を左右方向及び上下方向のいずれにも半径EMrだけ拡大した矩形状の消去範囲を求め、この矩形状の消去範囲の各画素に対応するメモリ領域の各画素の値「0又は2〜65535」を「0」に書き換えて初期化する(ステップS417)。ただし、ステップS417においては、ペン先の座標位置(px,py)に対応するメモリ領域の座標位置(Gx,Gy)の任意画素の値「1」を「0」に書き換えずにそのまま残す。
【0091】
更に、CPU56は、メモリ領域における値「1」の各画素を選択して、これらの画素の値を、タッチペン3のペン先の移動軌跡を示す予め設定された値Pc(「2〜65535」の範囲の値)に書き換える(ステップS418)。
【0092】
この後、PC5のCPU56は、画像メモリ54のメモリ領域の画像データを読出して、この画像データを送信出力部55からディスプレイ装置2へと送信出力する。ディスプレイ装置2では、画像データを受信入力部24で受信入力して画像メモリ23に記憶し、制御部25は、表示部21を駆動制御して、画像メモリ23内の画像データによって示される画像を表示部21の画面SCに表示する(ステップS419)。これにより、表示部21の画面SCには、タッチペン3のペン先の移動軌跡が表示され、かつ移動軌跡を含む矩形状の消去範囲の表示内容が消去される。
【0093】
例えば、図5(c)に示すように画面SC上で移動軌跡Jが表示され、移動軌跡Jを含む矩形状の消去範囲Hにおいて以前より表示されている画像W(表示内容)が消去される。
【0094】
次に、図11のステップS417の処理手順、つまりペン先の移動軌跡を含む最小の矩形領域を左右方向及び上下方向のいずれにも半径EMrだけ拡大した矩形状の消去範囲を求め、この矩形状の消去範囲の各画素に対応するメモリ領域の各画素の値を「0」に書き換えて初期化する処理手順を、図12のフローチャートを参照しつつ詳しく説明する。
【0095】
まず、CPU56は、記憶デバイス52のテーブルDT3から半径EMrを読み出し、半径EMrと図4のステップS404〜S416で求めたペン先の移動軌跡を包含する最小矩形領域のX軸方向の最小値EMx1とから、値(EMx1−EMr)を求めて、この値を矩形状の消去範囲のX軸方向の最小値EMx1として記憶デバイス52のテーブルDT4に書き込み(ステップS501)、この最小値EMx1がディスプレイ装置2の画面SCのX軸方向の最小値「0」よりも小さいか否か、つまり矩形状の消去範囲が画面SCからはみ出すか否かを判定し(ステップS502)、はみ出なければ(ステップS502で「No」)、この最小値EMx1を維持し、またはみ出せば(ステップS502で「Yes」)、この最小値EMx1を値「0」に更新する(ステップS503)。
【0096】
また、半径EMrと図4のステップS404〜S416で求めたペン先の移動軌跡を包含する最小矩形領域のX軸方向の最大値EMx2とから、値(EMx2+EMr)を求めて、この値を矩形状の消去範囲のX軸方向の最大値EMx2として記憶デバイス52のテーブルDT4に書き込み(ステップS504)、この最大値EMx2がディスプレイ装置2の画面SCの最大値「Xmax」よりも大きいか否か、つまり矩形状の消去範囲が画面SCからはみ出すか否かを判定し(ステップS505)、はみ出なければ(ステップS505で「No」)、この最大値EMx2を維持し、またはみ出せば(ステップS505で「Yes」)、この最大値EMx2を値「Xmax」に更新する(ステップS506)。
【0097】
同様に、CPU56は、半径EMrと図4のステップS404〜S416で求めたペン先の移動軌跡を包含する最小矩形領域のY軸方向の最小値EMy1とから、値(EMy1−EMr)を求めて、この値を矩形状の消去範囲のY軸方向の最小値EMy1として記憶デバイス52のテーブルDT4に書き込み(ステップS507)、この最小値EMy1が画面SCのY軸方向の最小値「0」よりも小さいか否か、つまり消去範囲が画面SCからはみ出すか否かを判定し(ステップS508)、はみ出なければ(ステップS508で「No」)、この最小値EMy1を維持し、またはみ出せば(ステップS508で「Yes」)、この最小値EMy1を値「0」に更新する(ステップS509)。
【0098】
また、半径EMrと図4のステップS404〜S416で求めたペン先の移動軌跡を包含する最小矩形領域のY軸方向の最大値EMy2とから、値(EMy2+EMr)を求めて、この値を矩形状の消去範囲のY軸方向の最大値EMy2として記憶デバイス52のテーブルDT4に書き込み(ステップS510)、この最大値EMy2がディスプレイ装置2の画面SCの最大値「Ymax」よりも大きいか否か、つまり消去範囲が画面SCからはみ出すか否かを判定し(ステップS511)、はみ出なければ(ステップS511で「No」)、この最大値EMy2を維持し、またはみ出せば(ステップS511で「Yes」)、この最大値EMy2を値「Ymax」に更新する(ステップS512)。
【0099】
このようなステップS501〜S512の処理により、タッチペン3のペン先の移動軌跡を包含する矩形状の消去範囲であって、かつディスプレイ装置2の画面SCからはみ出さない消去範囲が求められる。
【0100】
引き続いて、CPU56は、値iを消去範囲のX軸方向の最小値EMx1に設定すると共に、値jを消去範囲のY軸方向の最小値EMy1に設定し(ステップS513、S514)、画面SCの座標位置(i、j)に対応する画像メモリ54のメモリ領域の座標位置の値が「1」であるか否か判定し(ステップS515)、つまり画面SCの座標位置(i、j)の画素がタッチペン3のペン先の移動軌跡上にあるか否かを判定し、メモリ領域の座標位置の値が「1」でなく(ステップS515で「No」)、画面SCの座標位置(i、j)の画素がタッチペン3のペン先の移動軌跡上になければ、メモリ領域の座標位置の値「0又は2〜65535」を「0」に初期化する(ステップS516)。
【0101】
また、座標位置(i、j)に対応するメモリ領域の座標位置の値が「1」であって(ステップS515で「Yes」)、座標位置(i、j)の画素がタッチペン3のペン先の移動軌跡上にあれば、メモリ領域の座標位置の値「1」を書き換えずにそのまま残す。
【0102】
この後、値jが消去範囲のY軸方向の最大値EMy2未満であることを確認してから(ステップS517で「Yes」)、値jを歩進し(ステップS518)、ステップS515、S516を繰り返す。以降同様に、値iを消去範囲のX軸方向の最小値EMx1に維持したまま、値jが消去範囲のY軸方向の最大値EMy2に達するまで値jを歩進して、その度に、ステップS515、S516を繰り返す。
【0103】
更に、値jが消去範囲のY軸方向の最大値EMy2に達すると(ステップS517で「No」)、値iが消去範囲のX軸方向の最大値EMx2未満であることを確認してから(ステップS519で「Yes」)、値iを歩進し(ステップS520)、ステップS514に戻って、値jを消去範囲のY軸方向の最小値EMy1に再設定し、ステップS515、S516を繰り返す。
【0104】
そして、値iが消去範囲のX軸方向の最大値EMx2に達すると(ステップS519で「No」)、ステップS513〜S520の処理を終了する。
【0105】
このようなステップS513〜S520の処理により、画面SCにおけるペン先の移動軌跡上の各画素に対応するメモリ領域の各画素の値「1」が残され、移動軌跡を含む矩形状の消去範囲の各画素に対応するメモリ領域の各画素の値「0又は2〜65535」が値「0」に書き換えられて初期化される(ステップS521)。
【0106】
尚、上記実施形態では、2次元入力部4によりペン先の座標位置の検出が停止してから、ペン先の移動軌跡をディスプレイ装置2の画面SCに表示し、かつペン先の移動軌跡に沿った帯状の消去範囲の以前より表示されている表示内容を消去したり、ペン先の移動軌跡を含む矩形状の消去範囲の以前より表示されている表示内容を消去したりしているが、2次元入力部4により検出されたペン先の座標位置が更新される度に、ペン先の移動軌跡をディスプレイ装置2の画面SCに表示し、かつ消去範囲の以前より表示されている表示内容を消去しても構わない。
【0107】
また、ペン先を中心とする半径EMrの消去範囲を設定する代わりに、ペン先を中心とする矩形状の消去範囲を設定してもよい。あるいは、ペン先の移動軌跡を含む矩形状の消去範囲を設定する代わりに、ペン先の移動軌跡を含む円形状の消去範囲を設定しても構わない。
【0108】
更に、ペン先の移動軌跡をディスプレイ装置2の画面SCに表示しているが、ディスプレイ装置2の画面SCにおけるペン先の位置にコンテンツをコピーし、かつペン先を中心とする消去範囲の以前より表示されている表示内容を消去しても構わない。
【0109】
また、2次元入力部として、赤外線方式のものを例示しているが、多種多様な他の方式のものが提供されているので、他の方式のものを適用しても構わない。例えば、抵抗膜方式や静電容量方式のもの等がある。また、一点入力一点検出が可能なもの、多点入力多点検出が可能なもののいずれでも適用可能である。
【0110】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態及び変形例について説明したが、本発明は、係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと解される。
【符号の説明】
【0111】
1 電子白板装置
2 ディスプレイ装置
3 タッチペン
4 2次元入力部
5 パーソナルコンピュータ(PC)
21 表示部
22 メモリ
23、54 画像メモリ
24、51、61 受信入力部
25、48 制御部
26、36、63 電源部
31 ペン先
32 接触検出スイッチ
33 操作スイッチ
34、49、55 送信出力部
35、62 電源スイッチ
41 横方向赤外線発光素子アレイ
42 横方向赤外線受光素子アレイ
43 縦方向赤外線発光素子アレイ
44 縦方向赤外線受光素子アレイ
45 発光制御回路
46 受光制御回路
47 座標生成部
52 記憶デバイス
53 RAM
56 CPU(制御部)
59 操作部(消去範囲サイズ設定部)
SC 画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、前記表示部の画面において指示された座標位置を検出する2次元入力部とを備え、前記2次元入力部によって検出された前記表示部の画面の座標位置に対する描き込み処理を行う電子白板装置において、
前記2次元入力部によって前記表示部の画面の座標位置が検出されると、前記座標位置周囲の所定の消去範囲を求め、前記消去範囲の以前より表示されている表示内容を消去して、前記座標位置に対する描き込み処理を行う制御部を備えたことを特徴とする電子白板装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子白板装置であって、
前記消去範囲のサイズを設定する消去範囲サイズ設定部を備えたことを特徴とする電子白板装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子白板装置であって、
前記制御部は、前記消去範囲の以前より表示されている表示内容を消去すると同時に、前記座標位置に対する描き込み処理を行うことを特徴とする電子白板装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電子白板装置であって、
前記2次元入力部は、前記表示部の画面の座標位置の検出を継続して行い、
前記制御部は、前記継続して検出された座標位置の軌跡に沿って消去範囲を求め、前記継続して検出された座標位置に対する描き込み処理による表示内容を残して、前記消去範囲の以前より表示されている表示内容を消去することを特徴とする電子白板装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の電子白板装置であって、
前記2次元入力部は、前記表示部の画面の座標位置の検出を継続して行い、
前記制御部は、前記継続して検出された座標位置の軌跡を包含する消去範囲を求め、前記継続して検出された座標位置に対する描き込み処理による表示内容を残して、前記消去範囲の以前より表示されている表示内容を消去することを特徴とする電子白板装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−248167(P2012−248167A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121906(P2011−121906)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】