説明

電子管楽器

【課題】管楽器の特徴である、息を吹く強さと唇やリードの振動により音階をコントロールでき、実際の楽器に近い間隔で演奏できる電子管楽器を提供すること。
【解決手段】奏者が管11を吹いた際に発生する振動を計測し振動信号を出力する振動測定部2と、管11の中に流れている流体の流速を計測し流速信号を出力する流速測定部3とを備えたもので、測定した振動信号のレベルと、流速のレベルにより音階の判定をおこなうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、唇やリードの振動音と瞬時の流体流速を計測しその振動・流速の信号をもとに音階を出力する楽器に関するものであり、特に管楽器などの吹奏演奏を電子的に再現した楽器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電子楽器は人が吹奏する管内に流れる流量を測定し、その流量とキー操作部等の入力信号により音階を判定し、外部出力より出音している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載された従来の電子管楽器においては、音階判定部は流量入力部からの瞬間的に計測した流量信号とキー操作部の複数のキー入力信号から音階信号を出力し、音源発生部は楽器選択部の予め記憶した楽器の音色信号と音階信号から音源信号を出力し、外部出力部から音信号を出力している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−101790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際の管楽器では唇やリードを振動させた音やエッジに当てた風きり音を管で共鳴させて音を出しており、音階、音量はこの振動音や風きり音と吹く流速でコントロールしている。前記従来の構成では音階はキー操作部のみで判定しており、実際の楽器に近い演奏はできないという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、息を吹く強さと唇やリードの振動により音階をコントロールでき、実際の楽器に近い間隔で演奏できる電子管楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電子管楽器は、奏者が管を吹いた際に振動音を発生させる振動発生部と、前記振動発生部で発生する振動音を測定し振動信号を出力する振動測定部と、奏者が吹いた管の中に流れている空気の流速を計測し流速信号を出力する流速測定部と、前記振動測定部の振動信号と流速測定部の流速信号により音階信号を出力する音階判定部と、前記流速測定部の信号を受け取り音量信号を出力する音量判定部と、前記音階判定部より出力された信号より予め保存された音源からその音階にあった音源信号を出力する音源発生部と、前記音量判定部より出力された音量信号と音源発生部から出力された音源信号を外部出力信号に変換する外部出力部とを備えたもので、測定した振動信号のレベルと、流速のレベルにより音階の判定をおこなうことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電子管楽器は、管楽器の演奏原理であるマウスピースと唇の振動やリードの振動と、管を吹く強さをパラメータとすることで実際の楽器に近い感覚で演奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における電子管楽器の模式図
【図2】本発明の実施の形態1における電子管楽器のブロック図
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、奏者が管を吹いた際に振動音を発生させる振動発生部と、前記振動発生部で発生する振動音を測定し振動信号を出力する振動測定部と、奏者が吹いた管の中に流れている空気の流速を計測し流速信号を出力する流速測定部と、前記振動測定部の振動信号と流速測定部の流速信号により音階信号を出力する音階判定部と、前記流速測定部の信号を受け取り音量信号を出力する音量判定部と、前記音階判定部より出力された信号より予め保存された音源からその音階にあった音源信号を出力する音源発生部と、前記音量判定部より出力された音量信号と音源発生部から出力された音源信号を外部出力信号に変換する外部出力部とを備えたことにより、振動音と空気の流速とで音階と音量をコントロールし楽器として外部に音や信号を出力することができる。
【0011】
第2の発明は、特に、第1の発明において、奏者が意図した音階を入力し音階操作信号を出力する音階操作部を備え、音階判定部は、前記音階操作部の音階操作信号と振動測定部の振動信号と流速測定部の流速信号により音階信号を出力することにより、振動音と空気の流速と奏者の音階操作入力により音階をコントロールすることができる。
【0012】
第3の発明は、特に、第1または2の発明において、振動測定部は、取得した振動音を周波数に変換し、振動信号を振動周波数値として出力することにより、振動音をデジタル信号として変換することができる。
【0013】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明において、流速測定部は、超音波が管の中の空気を伝播する時間により流体の流速を計測することにより、流体の流速をデジタル信号として変換することができる。
【0014】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明において、外部出力部は、音源信号と音量信号より可聴音として出力するスピーカとしたことにより、演奏した音がその場で楽器から出力されより実際の楽器に近い感覚で演奏することができる。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、こと実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における電子管楽器の模式図を示すものである。
【0017】
図1において、振動発生部1はマウスピースで構成され、演奏者(図示せず)が実際の楽器のように口を付けて唇やリードを振動させることができる。振動発生部1で発生した振動音を適切にサンプリングできる場所に高感度マイク等を取り付け、測定した振動音を信号解析により周波数値として出力する振動測定部2を構成している。
【0018】
また、演奏者によって振動発生部1であるマウスピースより吹き出された息が管11を通っていき、管11の途中には、流速測定部3が取り付けられている。
【0019】
音階操作部5は、本体上部に取り付けられ、音階判定部6へ音階操作信号として出力している。
【0020】
そして、振動測定部2からの振動信号と流速測定部3からの流速信号と音階操作部5からの音階操作信号で音階を判定する音階判定部6と、音量を判定する音量判定部7と、音
階判定部6からの音階信号と音量判定部7からの音量信号とで音源を選定し音源信号出力する音源発生部8とで制御基板4を構成している。
【0021】
なお、流速測定部3は、管11内の空気の流れ方向に対して斜め方向に超音波センサ3a、3bが対向する様に配置されており、この間超音波センサ3a、3b間の超音波の伝播時間から流速を計測するように構成されている。
【0022】
音源発生部8からの音源信号はスピーカ(外部出力部)9により外部出力信号、即ち、音へ変換された後、ベル10から放出される。
【0023】
図2は、本発明の第1の実施の形態における電子管楽器のブロック図を示すものである。
【0024】
図2において、振動発生部1から振動音A、振動測定部2から振動信号B、流速測定部3から流速信号C、音階操作部5から音階操作信号D、音階判定部6から音階信号E、音量判定部7から音量信号F、音源発生部8からの音源信号Gを出力している。
【0025】
以上のように構成された電子管楽器について、以下その動作作用を説明する。
【0026】
まず、演奏者は実際の管楽器に使用する金管楽器用のマウスピースや木管楽器用のリード式マウスピース等の振動発生部1を吹いて唇やリードを振動させて管楽器の共鳴前の振動音Aを発生させる。
【0027】
振動測定部2では振動発生部1で発生した振動音Aを高感度マイク等で振動音Aを測定し、マイクロコンピュータ(図示せず)で高速フーリエ変換を行い周波数成分毎にデジタル信号へ変換し、振動信号Bとして出力させる。
【0028】
流速測定部3では演奏者から吹き出された息が管11を通っていく途中に取り付けられた一対の超音波センサ3a、3b間の超音波の伝播時間から管11の中を通る息の流速を演算し、流速信号Cとして出力させる。
【0029】
音階判定部6では振動信号Bの周波数と流速信号Cとを実際の管楽器でのサンプリング結果を保存したデータベースより、周波数と流速が一致した音階を判定する。どちらか一方がデータベースと一致しなければ音階として判定はせず、音は出ない。判定した音階を音階信号Eとして出力させる。
【0030】
音量判定部6では流速信号Cを実際の管楽器でのサンプリング結果を保存したデータべースより、流速が一致した音量を判定し、音量信号Fとして出力する。
【0031】
音源発生部8ではあらかじめ音源として保存された音階と音階信号Eが一致する信号音を出力し、音量信号Fによってアンプのゲインを調整し、音階信号Eと音量信号Fにあった音源信号Gを出力する。
【0032】
外部出力部9では音源信号Gを実際の音として出力する。
【0033】
また、音源発生部8は、ヘッドフォンなどに出力できる音声信号として出力するための出力端子(図示せず)を備えている。
【0034】
また、音階操作部5では音階判定部6で判定していた周波数と流速以外に音階操作部5により奏者が任意に変更したい音階を例えばプッシュボタンで入力し、その音階操作信号
Dによって、実際の管楽器でのサンプリング結果を保存したデータベースより、周波数と流速と操作入力された信号が一致した音階を判定し、音階を音階信号Eとして出力させる。
【0035】
以上のように、本実施の形態においては音階と音量を判定する構成を振動測定部2と流速測定部3とすることにより、実際の管楽器に使用するマウスピースを使用して擬似演奏することができ、夜間の練習や独奏のバリエーションを増やすことができる。
【0036】
また、本実施の形態の音階操作部5をスライド方式とすることにより、トロンボーンのような管楽器を模擬することができ、電子管楽器のバリエーションを増やすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明にかかる電子管楽器は、実際に管楽器を演奏しているように擬似体験をできるので、例えばゲームのコントローラとして利用することも可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 振動発生部
2 振動測定部
3 流速測定部
5 音階操作部
6 音階判定部
7 音量判定部
8 音源発生部
9 スピーカ(外部出力部)
11 管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
奏者が管を吹いた際に振動音を発生させる振動発生部と、前記振動発生部で発生する振動音を測定し振動信号を出力する振動測定部と、奏者が吹いた管の中に流れている空気の流速を計測し流速信号を出力する流速測定部と、前記振動測定部の振動信号と流速測定部の流速信号により音階信号を出力する音階判定部と、前記流速測定部の信号を受け取り音量信号を出力する音量判定部と、前記音階判定部より出力された信号より予め保存された音源からその音階にあった音源信号を出力する音源発生部と、前記音量判定部より出力された音量信号と音源発生部から出力された音源信号を外部出力信号に変換する外部出力部とを備えた電子管楽器。
【請求項2】
奏者が意図した音階を入力し音階操作信号を出力する音階操作部を備え、音階判定部は、前記音階操作部の音階操作信号と振動測定部の振動信号と流速測定部の流速信号により音階信号を出力する請求項1に記載の電子管楽器。
【請求項3】
振動測定部は、取得した振動音を周波数に変換し、振動信号を振動周波数値として出力する請求項1または2に記載の電子管楽器。
【請求項4】
流速測定部は、超音波が管の中の空気を伝播する時間により流体の流速を計測する請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子管楽器。
【請求項5】
外部出力部は、音源信号と音量信号より可聴音として出力するスピーカとした請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子管楽器。

【図2】
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【図1】
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