説明

電子素子のための材料

本発明は、式(I)の化合物、前記化合物とエミッター化合物との混合物、式(I)の化合物と前記混合物の電子素子での使用および一以上の式(I)の化合物および/または式(I)の化合物とエミッター化合物との混合物を含む電子素子に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子素子で、特に、有機エレクトロルミネセンス素子(OLED)でホスト材料として使用することができる一般式(I)の重水素化化合物に関する。本発明は、さらに、本発明による化合物とエミッター化合物との混合物と、本発明による化合物および/または上記混合物を含む電子素子に関する。
【0002】
本発明の化合物のような有機半導体は、電子産業における機能性材料として使用されることが多い。
【0003】
特に、それらは、有機エレクトロルミネセンス素子(OLED)に使用され、特に、US 4539507およびUS 5151629に記載されているその一般的構造は、多くの魅力的な特性、特に、低いエネルギー消費と同時に高度に達成可能なルミネセンスおよび良好なカラーコントラストの可能性を有し、カラーディスプレイとしてまた室内照明での光源として、将来重要な役割を果たすであろうことが期待されている。
【0004】
蛍光OLEDは、主に縮合芳香族化合物、特に、アントラセン誘導体が、たとえば、9,10-ビス(2-ナフチル)アントラセン(US 5935721)が、先行技術にしたがって、特別に、青色発光エレクトロルミネセンス素子のためのホスト材料として使用される。WO 03/095445およびCN 1362464は、OLEDでの使用のための9,10-ビス(1-ナフチル)アントラセン誘導体を開示する。さらなるアントラセン誘導体は、WO 01/076323、WO 01/021729、WO 04/013073、WO 04/018588、WO 03/087023、WO 04/01858、WO 07/021117、WO 08/145239 および WO 07/114358に開示されている。アリール置換ピレンおよびクリセン系のホスト材料は、出願WO 04/016575に記載されている。
【0005】
しかしながら、前記素子に使用することができ、好ましくは、素子の特性プロファイルでの、特に、以下の点での改善を生み出す新規な材料、特に、有機化合物に対する需要が引き続き存在する。
【0006】
−素子寿命の増加
−素子のパワー効率の増加、特に、低電流での光収率の増加と低い駆動電圧
−素子の色彩の正確性の改善、特に、青色発光素子の場合
さらに、加工特性の改善も、大量生産のために必要である。本発明の目的のために、これらは、特に、改善された熱安定性、改善された気相堆積特性、真空系製造プロセスのための低減された結晶性および溶液系製造プロセスのための改善された溶解性と改善されたフィルム形成性を意味するものと解される。
【0007】
したがって、技術的目的は、素子の特性プロファイル、特に、上記の点に正の作用を有する有機エレクトロルミネッセンス素子のための新規な材料を開発することである。
【0008】
この目的は、式(I)の重水素化化合物の提供と有機エレクトロルミネッセンス素子での、特に、蛍光エミッターのためのホスト材料としてのその使用による本発明によって達成される。
【0009】
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造においてさらに重要な側面は、使用される材料に必要とされる高い純度であり、多くの場合、昇華により達成することができるだけである。ごく少量の不純物でさえも、エレクトロルミネッセンス素子の寿命と効率をかなり減少し得る。
【0010】
さらに、化合物は、昇華により化合物を高純度で得るためには、昇華中に支配的な条件下で高い安定性を有さなければならないことから、高い昇華安定性を有する化合物を提供することが望ましい。
【0011】
これに関連するさらなる側面は、化合物の合成入手可能性である。問題となる化合物を最小の可能な工程で、良好な収率で進行させて、化合物を調製することが可能とならねばならない。さらに、出発材料は容易に入手可能でなければならない。
【0012】
先行技術は、その骨格上で一以上の重水素原子により置換された官能性材料としての、特に、蛍光エミッターとしての使用のための有機芳香族化合物を開示しており、たとえば、ピレン誘導体(US6852429)もしくはアントラセン誘導体(US2006/0115678およびKR10-2009-0086015)である。重水素化された有機、特に、ポリマー化合物のOLEDにおける使用は、出願WO02/47440に開示されている。
【0013】
驚くべきことに、骨格Zに結合する一以上の重水素化基Yを含む式(I)の化合物が、優秀な昇華特性を有することが今回見出された。それらは、分解することなく高い温度で昇華することができ、そのため、高純度で得ることができる。さらに、適用特性は、類似の非重水素化化合物と比べて、いくつかの面で改善されている。
【0014】
さらに、それらは、その分子構造Z-(Y)に基づいて容易に合成により入手可能である。
【0015】
本発明は、以下の一般式(I)の化合物に関する。
【化1】

【0016】
ここで、
Zは、1以上の基Rで置換されてよい15〜60個の芳香族環原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基であるか、または、1以上の基Rで置換されてよい18〜60個の芳香族環原子を有するオリゴアリーレンもしくはオリゴヘテロアリーレン基であって、ここで、オリゴアリーレンもしくはオリゴヘテロアリーレン基は、式(II)の芳香族環のみを含み、
【化2】

【0017】
ここで、式(II)中のXは、同一であるか異なり、CRかNのいずれかであり、ただし、二個を超えない隣接するXは、同時にNに対応し;ここで、式(II)の基上のさらなる基Rは、これら六員環に縮合する環を形成することはできず、
Yは、出現毎に同一であるか異なり、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルトリアジニル、ナフチル、メチル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、チオフェニル、フラニル、キノリニル、イソキノリニル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリルもしくはキナゾリニル基であって、夫々は、二個以上の重水素原子を有し、随意に、1以上の基Rで置換されてよく、ここで二個以上の基Yは、単結合を介してか、または、一以上の基Rを介してかのいずれかで互いに結合することができ、
nは、1〜15の値であることができ、
R、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、Si(R、NO、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接するもしくは隣接しないCH基は、-C≡C-、-RC=CR-、Si(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、S、C(=O)OもしくはC(=O)NRで置き代えられてよい。)、または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;ここで、Z上の2以上の置換基RもしくはRおよび/または一以上の基Yは、互いに結合して、随意に、モノ-あるいはポリ環状脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を形成してもよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、Dもしくは1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族炭化水素基であり、加えて、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよく;ここで、2個以上の隣接するもしくは隣接しない置換基Rは、互いに結合して、随意に、モノ-あるいはポリ環状、脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を形成してもよい。
【0018】
本発明の目的のために、重水素原子による置換は、重水素原子が化合物の関連する位置に、10〜100%、好ましくは、90〜100%の統計的確率で位置し、水素原子が化合物の関連する位置に、90〜0%、好ましくは、10〜0%の統計的確率で位置することを意味するものと解される。対応する状況は、たとえば、「二個以上の重水素原子を有する化合物」または「重水素により完全に置換された化合物」等の本出願で使用される用語に同様に適用される。
【0019】
したがって、自然発生または一般的に上記より、より低い濃縮度に対応する頻度でのみ重水素原子を含む化合物は、この定義には入らず、本発明の目的のための重水素置換とはみなされない。
【0020】
本発明の意味でのアリール基は、6〜60個のC原子を含むものとして定義され、本発明の意味でのヘテロアリール基は、1〜60個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子を含むが、但し、C原子とヘテロ原子の合計は少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、O、Si、B、PおよびSから選ばれる。
【0021】
ここで、アリール基もしくはヘテロアリール基は、単純な芳香族環、すなわち、ベンゼン、または単純な複素環式芳香族環、たとえば、ピリジン、ピリミジン、チオフェン等、または縮合芳香族もしくは複素環式芳香族多環、たとえば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール等または、たとえば、スピロビフルオレン、インデノフルオレンもしくはインデノカルバゾール等の一以上の非芳香族環原子を追加的に含む縮合芳香族もしくは複素環式芳香族多環を意味するものと解される。
【0022】
本発明の意味での縮合芳香族もしくは複素環式芳香族多環は、互いに縮合した二個以上の単純芳香族もしくは複素環式芳香族環を含むアリールもしくはヘテロアリール基を意味するものと解される。明確には示さないが、縮合芳香族もしくは複素環式芳香族多環は、非芳香族環原子をまったく含まない。非芳香族環原子を含むならば、一以上の非芳香族環原子を含む縮合芳香族もしくは複素環式芳香族多環と呼ばれる。
【0023】
上記定義されるアリール基中の非芳香族環原子は、その混成に基づいて、アリールもしくはヘテロアリール基の二重結合の共役構造の部分ではない環原子、たとえば、四個の置換基を有する炭素原子(sp混成炭素原子)または四個の置換基を有する珪素原子を意味するものと解される。上記言及した化合物、スピロビフルオレン、インデノフルオレンおよびインデノカルバゾール、たとえば、スピロビフルオレンのスピロ炭素原子、インデノフルオレンの五員環中のまたはインデノカルバゾールの五員環中のアルキレンブリッジは、この定義の意味での非芳香族環原子である。
【0024】
15〜60個の芳香族環原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基としての基Zの上記定義において、および類似する以下の定義において、上記定義のとおりの非芳香族環原子は、芳香族環原子として数えない。対応して、スピロビフルオレンは24個の芳香族環原子を含み、インデノフルオレンは18個の芳香族環原子を含み、およびインデノカルバゾールは19個の芳香族環原子を含む。
【0025】
上記定義のとおりの、アリールもしくはヘテロアリール基は、各場合に、上記した基RもしくはRにより置換されていてもよく、芳香族もしくは複素環式芳香族基上の任意の所望の位置を介して連結していてもよいが、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、ペリレン、フルオランセン、フルオレン、スピロビフルオレン、シス-もしくはトランス-インデノフルオレン、ベンズアントラセン、ベンゾフェナントレン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾピレン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、インドロカルバゾール、インデノカルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリジンイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、ピラジン、フェナジン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールに由来する基を意味するものと解される。
【0026】
本発明の意味でのオリゴアリーレンもしくはオリゴヘテロアリーレン基は、単結合を介してのみ互いに結合する三個以上の芳香族もしくは複素環式芳香族環を含む構造を意味するものと解される。ここで、芳香族もしくは複素環式芳香族環は、ベンゼン、ピリジン、ピリミジンもしくはチオフェン等の単純な芳香族もしくは複素環式芳香族環、たとえば、、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール等の縮合芳香族もしくは複素環式芳香族多環である。本定義にしたがうオリゴアリーレンもしくはオリゴヘテロアリーレンの例は、ターフェニル、ターピリジン、クオーターフェニルおよびジフェニルトリアジンである。
【0027】
本発明の意味での芳香族環構造は、環構造中に6〜60個のC原子を含む。本発明の意味での複素環式芳香族環構造基は、少なくともその1個がヘテロ原子である5〜60個の芳香族環原子を含む。ヘテロ原子は、好ましくは、N、O、Si、B、PおよびSから選ばれる。本発明の意味での芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、必ずしもアリールもしくはヘテロアリール基のみを含む構造ではなく、その代わりに、加えて、複数のアリールもしくはヘテロアリール基は、たとえば、sp混成のC、Si、NあるいはO原子、sp混成のCあるいはN原子、sp混成のC原子のような非芳香族単位(H以外の原子は、好ましくは、10%より少ない)により結合されていてもよい構造を意味するものと解される。したがって、二個以上のアリール基が、たとえば、直鎖あるいは環状アルキル、アルケニルもしくはアルキニル基またはシリル基により連結される構造であることから、例えば、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベン等のような構造も、本発明の意味での芳香族環構造を意味するものと解されることを意図されてもいる。さらに、たとえば、ビフェニル、ターフェニルもしくはジフェニルトリアジン等の二個以上のアリールもしくはヘテロアリール基が単結合を介して互いに結合する構造も、本発明の意味での芳香族もしくは複素環式芳香族環とも解される。
【0028】
5〜60個の芳香族環原子を含む芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、各場合に、上記定義した基により置換されていてもよく、芳香族もしくは複素環式芳香族基上の任意の所望の位置を介して連結していてもよいが、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ベンズアントラセン、フェナントレン、ベンズフェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランセン、ナフタセン、ペンタセン、ベンズピレン、ビフェニル、ビフェニレン、ターフェニル、ターフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス-もしくはトランス-インデノフルオレン、トルクセン、イソトルクセン、スピロトルクセン、スピロイソトルクセン、、フラン、ベンゾフラン、イソベンベンゾフラン、ジベンベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、インドロカルバゾール、インデノカルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリジンイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザアントラセン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン4,5-ジアザピレン、4,5,9,10-テトラアザピレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジン、ベンゾチアジアゾールまたはこれらの基の組み合わせに由来する基を意味するものと解される。
【0029】
本発明の目的のために、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル基、または3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基または2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基は、ここで、加えて、個々のH原子もしくはCH基は、上記した言及した基RもしくはRの定義で言及される基により置換されていてよく、好ましくは、基メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、シクロペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、ネオヘキシル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、シクロオクチル、2-エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルあるいはオクチニルを意味するものと解される。1〜40個のC原子を有するアルコキシもしくはチオアルキル基は、好ましくは、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、s-ペントキシ、2-メチルブトキシ、n-ヘキソキシ、シクロヘキシルオキシ、n-ヘプトキシ、シクロヘプチルオキシ、n-オクチルオキシ、シクロオクチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、ペンタフルオロエトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、i-プロピルチオ、n-ブチルチオ、i-ブチルチオ、s-ブチルチオ、t-ブチルチオ、n-ペンチルチオ、s-ペンチルチオ、n-ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、n-ヘプチチオル、シクロヘプチルチオ、n-オクチルチオ、シクロオクチルチオ、2-エチルヘキシルチオ、トリフルオロメチルチオ、ペンタフルオロエチルチオ、2,2,2-トリフルオロエチルチオ、エテニルチオ、プロペニルチオ、ブテニチオル、ペンテニルチオ、シクロペンテニルチオ、ヘキセニルチオ、シクロヘキセニルチオ、ヘプテニルチオ、シクロヘプテニルチオ、オクテニルチオ、シクロオクテニルチオ、エチニルチオ、プロピニルチオ、ブチニルチオ、ペンチニルチオ、ヘキシニルチオ、ヘプチニルチオもしくはオクチニルチオを意味するものと解される。
【0030】
本発明にしたがうと、基Zは、1以上の基Rで置換されてよい15〜40個の芳香族環原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基であるか、または、1以上の基Rで置換されてよい18〜36個の芳香族環原子を有するオリゴアリーレンもしくはオリゴヘテロアリーレン基であることが好ましく、ここで、オリゴアリーレンもしくはオリゴヘテロアリーレン基は、上記定義のとおりの式(II)の芳香族環のみを含む。
【0031】
基Zは、特に、好ましくは、1以上の基Rで置換されてよい15〜30個の芳香族環原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基である。
【0032】
基Zは、非常に、特に、好ましくは、1以上の基Rで置換されてよい15〜30個の芳香族環原子を有する縮合芳香族もしくは複素環式芳香族多環である。
【0033】
基Zは、特に、好ましくは、ターフェニル、ジフェニルトリアジン、テトラフェニレン、トリフェニルアミン、ピリジンビフェニル、フェニルビピリジン、フェニルカルバゾール、ベンゾフェナントレン、ピレン、ベンゾピレン、ペンタセン、ベンゾアントラセン、ナフタセン、クリセン、トリフェニレン、ジベンゾクリセン、ペリレン、スピロビジベンゾシロール、スピロビフルオレン、スピロフルオレンアンソロン、スピロフルオレンアクリジン、スピロフルオレンジベンゾシクロヘプタトリエン、インデノフルオレン、ベンゾカルバゾール、ジベンゾカルバゾール、ジインデノフルオレン、ベンズインデノフルオレン、ジベンズインデノフルオレン、ベンゾフェナントロリン、ベンズアクリジン、ベンズアクリドン、フルオランセン、ベンゾフルオランセン、ベンゾフェナトリジン、ベンゾフェナジン、ベンゾナフトフラン、ベンゾナフトチオフェン、アセフェナントリーレン、キナクリドン(リニアーもしくはアンギュラーであってよい)、ベンゾフルオランセン、ベンズイミダゾールキナゾリン、ジベンゾキノリン、ジベンゾキノキサリン、ジベンゾイソインドール、ジベンゾシンノリン、ジベンゾフタラジン、ジベンゾキナゾリンナフトキノリン、アセアントリーレン、インドロカルバゾール、インデノカルバゾール、フェナントロカルバゾール、フェナントロイミダゾール、ベンゾカルボリン、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、ピレニルトリアジン、ジベンゾアゼピン、トルクセン、トルクセノンおよびスマネンから選択され、夫々は、随意に、1以上の基で置換されてよい。
【0034】
基Zは、特に、好ましくは、ターフェニル、トリフェニレン、ベンゾカルバゾール、ベンゾナフトフラン、ベンゾフェナントレン、ピレン、ベンゾピレン、フルオランセン、ベンゾアントラセン、スピロジベンゾシロール、スピロビフルオレン、インデノフルオレン、ベンゾインデノフルオレン、インドロカルバゾール、インデノカルバゾール、キナクリドン(リニアーもしくはアンギュラーであってよい)、ジベンゾキノキサリン、ジベンゾシンノリン、ジベンゾフタラジン、ジベンゾキナゾリンおよびベンズアクリジンから選択され、前記基は、随意に、1以上の基Rで置換されてよい。
【0035】
Zであるヘテロアリール基もしくはオリゴアリーレンの複素環式芳香族環原子は、Si、N、O、S、PおよびBから、特に、好ましくは、N、OおよびSから選ばれるのが好ましい。
【0036】
基Rが、重水素原子ではない、すなわち、基Zはその骨格上で重水素化されていないことが、さらに好ましい。
【0037】
Yは、出現毎に同一であるか異なり、好ましくは、フェニル、トリル、ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルトリアジニル、ナフチル、ピリジニルもしくはメチル基である。本発明の好ましい具体例では、Yは、互いに結合せず、単結合、基Rによっても結合しない。
【0038】
基Yは、出現毎に同一であるか異なり、特に、好ましくは、フェニル、トリル、ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルトリアジニル、ナフチル、ピリジニルもしくはメチル基であり、夫々は、二個以上の重水素原子を有し、重水素と水素とは別のさらなる置換基を含まない。基Yは、出現毎に同一であるか異なり、特に、好ましくは、フェニル、トリル、ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルトリアジニル、ナフチル、ピリジニルもしくはメチル基であり、夫々は、重水素により完全に置換される。
【0039】
本発明の好ましい具体例は、以下の式(III)〜(XV)により表わされる。
【化3−1】

【化3−2】

【0040】
ここで、基Zと添え字nは、上記で定義されるとおりのものである。
【0041】
基Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CN、Si(R、1〜20個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接するもしくは隣接しないCH基は、-C≡C-、-RC=CR-、Si(R、C=O、C=NR、NR、O、S、C(=O)OもしくはC(=O)NRで置き代えられてよい。)、または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。
【0042】
さらに、基Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CN、Si(R、1〜20個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接するもしくは隣接しないCH基は、-C≡C-、-RC=CR-、Si(R、C=O、C=NR、NR、O、S、C(=O)OもしくはC(=O)NRで置き代えられてよい。)、または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基から、好ましくは、選ばれる。
【0043】
添え字nは、好ましくは1〜10の値、特に、好ましくは、1、2、3、4または5の値、非常に、特に、好ましくは、1、2または3の値を有する。
【0044】
本発明の式(I)の化合物の構成成分として式Z−1〜Z−50を有する、特に、好ましい骨格Zが、以下に示される。これらは、上記で定義されるとおり、一以上の基Yで置換され、さらに、一以上の基Rで芳香族もしくは複素環式芳香族骨格の自由な位置で置換されてよい。
【化4−1】

【化4−2】

【化4−3】

【化4−4】

【0045】
以下の表に挙げられる基Z(Z−a〜Z−u)およびY(Y1〜Y3)の組み合わせが、本発明の式(I)の化合物の特に好ましい具体例である。対応する基Z−a〜Z−uおよびY1〜Y3が、以下に示される。
【化5−1】

【化5−2】

【0046】
基Y1〜Y3に加えて、水素原子または任意の所望の他の基Rだけが、R〜Rで示される位置に結合してもよい。
【0047】
以下の表で示される化合物は、本発明の式(I)の特に好ましい具体例である。
【化6−1】

【化6−2】

【化6−3】

【化6−4】

【化6−5】

【化6−6】

【化6−7】

【化6−8】

【化6−9】

【化6−10】

【化6−11】

【化6−12】

【化6−13】

【化6−14】

【化6−15】

【化6−16】

【化6−17】

【化6−18】

【化6−19】

【化6−20】

【化6−21】

【化6−22】

【化6−23】

【化6−24】

【化6−25】

【化6−26】

【0048】
本発明による化合物は、当業者に知られる有機化学合成プロセスにより調製することができる。
【0049】
本発明による化合物のいくつかの重要な構造種を生じる例示的な合成経路が、以下に示される。しかしながら、当業者は、これらの例に縛られることなく、有機化学の他の反応によりおよび他の反応経路により、進歩性を要することなく、本発明による化合物を調製することもできる。
【0050】
スキーム1は、基Yとして過重水素化フェニルで置換された本発明の化合物の調製のための典型的な合成経路を示す。この経路は、d-ベンゼンから出発し、臭素化され、ボロン酸誘導体に変換され、引き続きクロスカップリング反応で基Z(ここでは、ベンズアントラセン)と反応する。
【0051】
スキーム1
【化7】

【0052】
重水素化フェニルに代えて、多くの他の重水素化基Yを同様の経路により導入することができる。例として、スキーム2は、種々の位置(ここで示されるのは2-および4-位)で臭素化することができる過重水素化ビフェニルの調製を示す。
【0053】
スキーム2
【化8】

【0054】
スキーム3は、ボロン酸置換d-ベンゼンから出発する部分重水素化ビフェニル誘導体の合成を示す。(スキーム1と類似する調製)
スキーム3
【化9】

【0055】
他の重水素化基、特に、重水素化複素環式芳香族基の合成は、たとえば、出願WO2009/096555に記載される。
【0056】
これらの基は、スキーム1の例により示されるとおり、Pd触媒で、有機金属クロスカップリング反応、たとえば、スズキカップリングにより、芳香族もしくは複素環式芳香族骨格Zと反応し、ここで、本発明による式(I)の化合物またはこれらの化合物の前駆体が得られる。
【0057】
本発明による式(I)の化合物の合成が、以下に示される(スキーム4と5)
スキーム4
【化10】

【0058】
スキーム4でのd-ベンゼンから出発し、まず、対応ボロン酸誘導体が調製され、スズキカップリングでブロモピレンと反応する。生成物は、ベンゼン環上で再臭素化され、引き続き、4-ベンズアントラセニルボロン酸と第2スズキカップリングで反応し、本発明による化合物を得る。
【0059】
スキーム5
【化11】

【0060】
スキーム5での部分重水素化2-ブロモビフェニルから出発して、部分重水素化スピロビフルオレン誘導体が、グリニャール反応と引き続く環化により調製される。この生成物が、過重水素化フェニルボロン酸とスズキカップリングで反応し、本発明による化合物を得る。
【0061】
ジ(過重水素化フェニル)トリアジンビルディングブロックを基礎とする本発明による化合物の合成は、以下のスキーム6と7に示される。
【0062】
スキーム6
【化12】

【0063】
過重水素化ブロモベンゼンから出発して、まず、ジ(過重水素化フェニル)トリアジンが、スキーム6でグルニャール反応により調製される。二段階シーケンスで、二級シンソンが、2-クロロアニリンとのハートウイッグ-ブッフバルト反応による2-ブロモジメチルフルオレンから、引き続く酸化カップリングにより調製される。この二級シンソンが、ジ(過重水素化フェニル)トリアジンとSn反応で反応して、本発明による化合物を得る。
【0064】
スキーム7
【化13】

【0065】
スキーム6でのようにグリニャール反応により同様に調製された過重水素化ジ(過重水素化フェニル)トリアジンが、スキーム7でスズキカップリングでスピロ-2-ボロン酸と反応して、本発明による化合物を得る。
【0066】
したがって、本発明は、一以上の基Yが、有機金属カップリング反応を介して基Zに結合することを特徴とする調製方法にも関する。合成で容易に入手可能な過重水素化または部分重水素化出発物質は、好ましくは、スキーム1〜3に示されたとおり、ここで使用される。ここで使用される出発材料は、特に、好ましくは、芳香族もしくは複素環式芳香族化合物d-ベンゼン、d-トルエンまたはd-ピリジンである。
【0067】
純粋化合物に加えて、本発明は、混合物にも関する。
【0068】
前記混合物は、式(I)の化合物と少なくとも一つのエミッター化合物を含む。
【化14】

【0069】
ここで、Z、Yおよびnは、上記定義されるとおりである。
【0070】
上記言及される具体例、特に、基Z、Y、添え字nおよび基RとRに関しては、エミッター化合物との混合物中の式(I)の化合物に適用される。
【0071】
式(I)の化合物は、好ましくは、混合物中でホスト材料である。
【0072】
ここで、式(I)の化合物は、混合物の50体積%超を、非常に、特に、好ましくは、混合物の85体積%超を構成することが特に好ましい。
【0073】
式(I)の化合物の例は、以下に示される。示された化合物は、エミッター化合物とともに、特に、好ましくは、ホスト材料として、好ましくは混合物中で使用される。
【化15−1】

【化15−2】

【化15−3】

【化15−4】

【化15−5】

【0074】
式(I)の化合物に加えて、本発明による混合物は、好ましくは、一以上の蛍光エミッター化合物(ド―パント)を含む。
【0075】
本発明の意味での蛍光化合物は、室温で励起一重項状態からルミネッセンスを呈する化合物である。本発明の目的のために、重い原子を含まない、すなわち、36を超える原子番号を有する原子を含まないすべてのルミネッセンス化合物が、蛍光化合物とみなされることになる。
【0076】
本発明による混合物は、特に、好ましくは、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である少なくとも一つの蛍光エミッター化合物を含み、ここで、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、N(R、N(Ar)、NO、Si(R、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接するもしくは隣接しないCH基は、-C≡C-、-RC=CR-、Si(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、S、C(=O)OもしくはC(=O)NRで置き代えられてよい。)であり;ここで、2以上の置換基Rは、互いに結合して、随意に、モノ-あるいはポリ環状脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を形成してもよく、および、さらに、
Arは、出現毎に同一であるか異なり、随意に、1以上の基Rにより置換されてよい、6〜60個のC原子を有する基であり、および
は、出現毎に同一であるか異なり、H、Dもしくは1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族有機基であり、加えて、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよく;ここで、2個以上の隣接するもしくは隣接しない置換基Rは、互いに結合して、随意に、モノ-あるいはポリ環状、脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を形成してもよい。
【0077】
ドーパントの芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、特に、好ましくは、少なくとも一つの式(A)の基で置換され、
【化16】

【0078】
ここで、破線は、基から芳香族もしくは複素環式芳香族環構造への結合であり、Arは上記定義のとおりである。
【0079】
前記蛍光ドーパントは、特に、好ましくは、縮合芳香族炭化水素、モノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミン、スチリルホスフィン、スチリルエーテル、アリールアミンおよび縮合アリール基を含むアリールアミンから選択される。モノスチリルアミンは、1個のスチリル基と少なくとも1個のアミン、好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味するものと解される。ジスチリルアミンは、2個のスチリル基と少なくとも1個のアミン、好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味するものと解される。トリスチリルアミンは、3個のスチリル基と少なくとも1個のアミン、好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味するものと解される。テトラスチリルアミンは、4個のスチリル基と少なくとも1つのアミン、好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味するものと解される。本発明の意味でのアリールアミンもしくは芳香族アミンは、窒素に直接結合した3個の芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を含み、その少なくとも1個は、好ましくは、少なくとも14個の芳香族環原子を有する縮合環構造である。スチリル基は、特に好ましくは、スチルベンであり、二重結合上または芳香族環構造上でさらに置換されていてもよい。この型のドーパントの例は、置換あるいは非置換トリスチルベンアミンまたは、たとえば、WO 06/000388、WO 06/058737、WO 06/000389、WO 07/065549およびWO 07/115610に記載されるさらなるドーパントである。WO 06/122630にしたがう化合物は、ドーパントとしてさらに好ましい。好ましいドーパントは、さらに、たとえば、WO08/006449 もしくはWO07/140847にしたがうモノベンゾインデノフルオレンアミンあるいはジベンゾインデノフルオレンのジアリールアミン誘導体もしくはビス(ジアリールアミン)誘導体、たとえば、WO07/140847にしたがうジベンゾインデノフルオレンアミンあるいはジベンゾインデノフルオレンジアミンである。好ましいドーパントは、再度さらに、出願WO2010/0123287に開示されたフルオレン誘導体である。
【0080】
本発明のさらなる具体例によれば、混合物は、本発明の化合物に加えて、一以上の燐光エミッター化合物を含む。
【0081】
本発明の意味での燐光エミッター化合物は、相対的に高いスピン多重度、すなわち、スピン多重度>1の励起状態から、特に、励起三重項状態から、室温でルミネッセンスを呈する化合物である。本発明の目的のために、すべてのルミネッセンスイリジウムおよび白金化合物が、特に、燐光化合物とみなされるべきである。
【0082】
燐光エミッター化合物は、好ましくは、クロム、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀および金から成る金属を含む少なくとも一つの金属-炭素結合を有する有機金属錯体を含む基から選ばれ、特に、好ましくは、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金および銅より選ばれ、非常に、特に、好ましくは、イリジウム、白金および銅より選ばれる。
【0083】
本発明の好ましい具体例によれば、燐光または蛍光エミッター化合物は、一以上の重水素原子を含む。エミッター化合物は、特に、好ましくは、一以上の重水素原子を有し、随意に一以上の基Rで置換されてよい一以上のフェニル、ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルトリアジニル、ナフチル、ピリジニルもしくはメチル基を含み、ここで、Rは、上記定義されるとおりのものである。上記フェニル、ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルトリアジニル、ナフチル、ピリジニルもしくはメチル基は、非常に、特に、好ましくは、一以上の重水素原子を有し、重水素と水素とは別のさらなる置換基を有さない。
【0084】
本発明のさらに、特に、好ましい具体例では、前記フェニル、ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルトリアジニル、ナフチル、ピリジニルもしくはメチル基は、完全に重水素原子で置換される。
【0085】
本発明による混合物中で特に、エミッターの特に好ましい具体例は、以下の化合物である。
【化17−1】

【化17−2】

【化17−3】

【化17−4】

【化17−5】

【化17−6】

【0086】
本発明は、さらに、少なくとも一つの本発明の式(I)の化合物または少なくとも一つの上記本発明の混合物と少なくとも一つの溶媒、好ましくは、少なくとも一つの有機溶媒を含む調合物に関する。
【0087】
本発明による化合物または本発明による混合物は、電子素子、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子に使用することができる。ここで、本発明による化合物は、好ましくは、一以上の発光層中に存在する。
【0088】
したがって、本発明は、層、好ましくは、上記定義されるとおりの式(I)の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層にも関する。
【0089】
したがって、本発明は、上記定義されるとおりの式(I)の化合物または本発明による混合物の一つの、電子素子、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子での使用にも関する。好ましい使用は、蛍光または燐光ドーパントのための、特に、好ましくは、蛍光ドーパントのためのホスト材料としての使用である。
【0090】
本発明のさらに好ましい具体例では、式(I)の化合物は、OLEDの発光層中でコホスト材料として使用される。この場合、化合物は、5〜95体積%の割合で、発光層中に好ましくは、存在する。
【0091】
マトリックス(=ホスト)とドーパント(=エミッター化合物)とを系中に含むホスト材料は、系中により高い割合で存在する成分を意味するものと解される。一つのマトリックス材料と複数のドーパント材料を含む系中では、マトリックス材料は、混合物中でその割合が最も高いものであるものを意味するものと解される。
【0092】
これらの場合に、ドーパント材料とホスト材料の混合物は、ドーパント材料とホスト材料を含む全混合物を基礎として、0.5〜40体積%、好ましくは、1〜30体積%、特に、好ましくは、2〜15体積%のドーパント材料を含む。対応して、混合物は、ドーパント材料とホスト材料を含む全混合物を基礎として、99.5〜60体積%、好ましくは、99〜70体積%、特に、好ましくは98〜85体積%のホスト材料を含む。
【0093】
本発明は、同様に、少なくとも一つの式(I)の化合物または式(I)の化合物の混合物と上記定義されるとおりのエミッター化合物の一つとを含む、有機電子素子、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機集積回路(O-IC)、有機太陽電池(O-SC)、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電子化学電池(LEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)もしくは有機光受容器に関する。
【0094】
有機電子素子は、好ましくは、本発明の化合物を、ホスト材料として、特に、好ましくは、一以上の置換基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を含む芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を含む蛍光ドーパントから、非常に、特に、好ましくは、選ばれる一以上のエミッター化合物とともに含み、ここで、Rは上記定義されるとおりのものである。本発明による化合物は、さらに、好ましくは、電子素子の発光層中に位置する。
【0095】
本発明による混合物のための上記定義されるとおりの好ましいエミッター化合物は、特に、そこに記載された好ましい具体例であり、非常に、特に、好ましくは、化合物47〜103である。
【0096】
有機エレクトロルミネセンス素子は、一個または複数の発光層を有する。複数の発光層が存在するならば、これらは、380nm〜750nm間に全体で複数の最大発光波長を有し、全体として、白色発光が生じるものであり、換言すれば、蛍光もしくは燐光を発することができる種々の発光化合物が、発光層に使用される。特に、好ましいものは、3層構造であり、すなわち、3個の発光層を有する構造であり、その3層は青色、緑色およびオレンジ色もしくは赤色発光を呈する(基本構造については、たとえば、WO 05/011013参照。)。
【0097】
カソード、アノードおよび少なくとも一つの発光層に加えて、本発明によるエレクトロルミネセンス素子は、さらなる層、たとえば、各場合に、1以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔障壁層、電子輸送層、電子注入層、励起子障壁層、電荷生成層(IDMC 2003, Taiwan; Session 21 OLED (5), T. Matsumoto, T. Nakada, J.Endo, K. Mori, N. Kawamura, A. Yokoi, J.Kido, Multiphoton Organic EL Device Having Charge Generation Layer)および/または有機あるいは無機p/n接合を含んでもよい。たとえば、励起子障壁機能を有する一以上の中間層を、二個の発光層の間に導入することも同様に可能である。しかしながら、これら層の夫々は、必ずしも存在する必要はないことが指摘されねばならない。上記言及した層は、上記定義されるとおりの式(I)の化合物を含んでもよい。
【0098】
さらに好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、昇華プロセスにより適用され、材料は、10−5mbar未満、好ましくは10−6mbar未満の初期圧力で、真空昇華ユニット中で気相堆積される。しかしながら、初期圧力が、たとえば、10−7mbar未満よりさらに低いことも可能である。
【0099】
同様に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、OVPD(有機気相堆積)プロセスもしくはキャリアガス昇華により適用され、材料は、10−5mbar〜1barの圧力で、適用されることを特徴とする。
【0100】
さらに、好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、溶液から、たとえば、スピンコーティングにより、もしくは、たとえばスクリーン印刷、フレキソ印刷あるいはオフセット印刷、特に、好ましくは、LITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)あるいはインクジェット印刷のような任意の所望の印刷プロセスにより製造されることを特徴とする。必要ならば、適切な置換により得られる可溶性の化合物が、この目的のためには必要である。これらの方法は、有機エレクトロルミネッセンス素子での本発明の化合物を含むオリゴマーおよびポリマーの使用のために、特に、適切でもある。
【0101】
さらに、好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、一以上の層を溶液から適用し、1以上の他の層が、OVPDによる気相堆積もしくはキャリアガス昇華により適用されるハイブリッドプロセスにより製造されることを特徴とする。
【0102】
有機エレクトロルミネッセンス素子製造のための前記プロセスは、当業者に一般的に知られており、当業者は、式(I)の化合物を含む素子を問題なく製造することができる。
【0103】
式(I)の化合物と一以上の式(I)の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子は、先行技術を凌駕する一以上の以下の優位性を有する:
1.本発明による化合物は、改善された昇華安定性を有し、そのため、純粋な形態で得ることができる。そのため、これら化合物を含む素子は、不純物をより少なく含むだけであり、その性能データに正の作用を有し、特に、その寿命を増加する。
【0104】
2.本発明による化合物は、蛍光および燐光エミッターのための、特に、蛍光エミッターのためのマトリックス材料としての使用のためにきわめて適切であり、エレクトロルミネッセンス素子の良好な効率、長い寿命および低い駆動電圧をもたらす。
【0105】
3.化合物は、高い分解安定性を有し、有機エレクトロルミネッセンス素子の特性プロファイルに、特に、その寿命に正の作用を有する。
【0106】
4.その分子構造に基づいて、化合物は、容易に合成により入手可能であり、重水素化された芳香族もしくは複素環式芳香族基Yの、骨格として機能するZへの有機金属カップリングにより経済的に調製することができる。
【0107】
以下の例は、本発明をより詳細に説明することを意図しているが、それにより限定することを望むものではない。特に、例が基礎とする定義された化合物についてここに記載された特徴と特性と優位性は、詳細には言及されない他の化合物にも関連するが、他に断らない限り、本特許請求の範囲内のものである。
【0108】

例1:5-ベンゾ[a]アントラセン-4-イル-12-過重水素化フェニルナフタセンの合成
【化18】

【0109】
第1工程
テトラセニルブロミド(500ミリモル、153.6g)、過重水素化フェニルボロン酸(590ミリモル、75.2g)と燐酸カリウム(1500ミリモル、318.4g)がまず導入される。900mlのトルエン、300mlのジオキサンと1000mlの水が、引き続き添加される。混合物は、脱気され、トリス-オルト-トリル-ホスフィン(6ミリモル、1.83g)が添加され、混合物は5分間撹拌される。酢酸パラジウム(1ミリモル、224.5g)が、ついで、添加され、混合物は、還流下、急速撹拌により加熱される。反応が終わると(TLCチェック)、混合物は、襞付ろ紙と引き続くアルミナ酸化物によりろ過され、ろ過物は蒸発される。得られた固形物はろ過され、EtOHで洗浄され、真空乾燥される(収率121.3g、78%)。
【0110】
第2工程
過重水素化フェニルテトラセン(392ミリモル、121.3g)がまず導入され、無水THF(1l)中に溶解される。溶液は脱気され、40℃まで暖められる。NBS(412ミリモル、73.5g)が20分かけて、6部に分けて添加される。混合物は、引き続き50℃の温度の油浴で3時間撹拌される。混合物は、ついで、引き続き真空蒸発され、MeOH(400ml)が添加される。混合物は、50℃で30分間、回転蒸発機中で蒸発され、MeOHで洗浄され、真空乾燥される。精製は、熱MeOH(400ml)中で撹拌により実行され、引き続き、混合物を冷却し、ろ過により固形物を単離し、真空乾燥し、138.2g(91%)を得る。
【0111】
第3工程
ブロモ過重水素化フェニルナフタセン(356ミリモル、138.2g)と4-ベンズアントラセンボロン酸(393ミリモル、106.9g)が、燐酸カリウム(757ミリモル、160.7g)とともにまず導入される。1200mlのトルエン、480mlのジオキサンと1200mlの水が、撹拌されながら、添加され、混合物は、アルゴン通過によって、脱気される。トリス-オルト-トリル-ホスフィン(21.4ミリモル、6.5g)が、引き続き添加され、混合物は2分間撹拌され、酢酸パラジウム(II)(3.6ミリモル、801mg)が、引き続き、添加される。混合物は、還流下、一晩加熱される。冷却後、生成した固形物は吸引ろ過され、トルエン、水/EtOH1:1および純粋EtOHで洗浄され、乾燥される。精製は、1,2-ジクロロベンゼンからの多段再結晶化により実行され、104.7g、対応する収率55%の生成物を得る。
【0112】
材料は、引き続き、1×10−6mbar、370℃で二度実行される。熱分解物は、解像度0.01%のHLPCでまったく発見されなかった。
【0113】
非重水素化材料(素子例の化合物H1参照)が、同様に調製され、精製された。昇華は同様の条件下で実行されたが、約5℃より高い温度が必要であった。二度の昇華後、約0.01〜0.02%の割合の熱分解生成物が、HPLC生成物中に検出された。
【0114】
したがって、重水素化材料は、非重水素化材料と比べて、改善された熱(昇華)安定性を有する。
【0115】
例2:10-(4,6-ジ過重水素化フェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-12,12-ジメチル-10,12-ジヒドロ-10-アザインデノ[2,1-b]フルオレンの合成
【化19】

【0116】
第1工程
マグネシウム(48.6g、2ミリモル)が、まず導入され、装置は、N下加熱により乾燥され、反応混合物はついで冷却される。d-ブロモベンゼン(324.0g、2モル)が1500mlのTHFと混合され、滴下漏斗を通じてゆっくりと滴下され、滴下点で局所的に加熱される(約1時間)。グリニャール試薬が、引き続き還流下さらに1時間撹拌され、ついで、室温まで冷却される。500mlのTHF中のシアヌル酸(122.8g、0.67モル)が、加熱により乾燥された第2のフラスコにまず導入され、0℃まで冷却される。グリニャール試薬は、ついで、内部温度が20℃を超えないような速度で、この温度でゆっくりと滴下される(約1時間)。混合物は、室温で一晩撹拌される。HClと水が混合され、反応混合物に導入される。層が分離され、水性相が500mlの酢酸エチルで2度抽出される。結合した有機相は、500mlの水で2度抽出される。最後に、有機相は、飽和NaHCO溶液で1度洗浄され、硫酸マグネシウムで乾燥され、回転蒸発機中で蒸発幹固される。500mlのエタノールが、固形物に添加され、混合物は、回転蒸発機中で60℃で撹拌され、固形物は吸引ろ過され、エタノールで洗浄される。固形物は、1000mlの沸騰エタノールで洗浄され、吸引ろ過され、少量のエタノールで洗浄され、ついで、乾燥キャビネット中で、真空乾燥され、71%の収率に対応する141.2g(91%)の生成物を得る。
【0117】
第2工程
クロロアニリン(84g、659ミリモル)と2-ブロモ-9,9-ジメチルフルオレン(150g、550ミリモル)が、2.4lのトルエン中に溶解され、フラスコに導入され、保護ガスで30分間飽和される。ついで、まずDPPF(4.5g、8.13ミリモル)と5分後にPd(acac)(1.48g、6.59ミリモル)と、ついで、固体状態のソジウムtert-ブトキシド(137.3g、1.43ミリモル)が迅速に添加され、混合物は、保護ガスによりさらに10分間脱気される。混合物は、還流下、18時間加熱され、変換はついでチェック(TLCチェック)される。約1lの水が、冷却された反応溶液に添加され、混合物は撹拌され、水相がついで、分離され、400mlのトルエンで2度抽出される。結合した有機相は、約700mlの水で2度、約500mlの飽和NaCl溶液で1度抽出され、トルエン相は、ついで、MgSOを使用して乾燥され、回転蒸発機中で蒸発幹固される。得られた残留物は、約1lの沸騰ヘプタンで洗浄され、混合物は、セライト/シリカゲルで充填されたフリットによりろ過され、ろ過物は真空中蒸発乾燥され、暗緑色の油状物が残る。127.4gの生成物が得られ、99%の収率に対応する。
【0118】
第3工程
炭酸カリウム(137.6g、995.85ミリモル)とピバリン酸(12.2g、119.50ミリモル)が、最初にフラスコに導入され、第2工程からの生成物(暗緑色の油状物)が、2リットルのNMP中に溶解され、添加される。混合物は、30分間Nを通じて脱気される。まず、トリ-tert-ブチルホスフィン(31.9ml、31.87ミリモル)、ついで、Pd(OAc)(4.7g、19.92ミリモル)が添加され、混合物は、内部温度130℃で、4時間加熱される(TLCチェック)。完全反応混合物は、温度95℃、1mbarの水浴で、回転蒸発機中で乾燥蒸発される。粗生成物は、約1000mlのトルエンと約500mlの水中に溶解される。相は、引き続き分離され、約200mlのトルエンで3度その度ごとに抽出され、結合した有機相は、約500mlの水で3度洗浄される。有機相は、硫酸マグネシウムで乾燥され、セライト/シリカゲルで充填されたフリットでトルエンにより溶出される。ろ過物は、回転蒸発機中で蒸発され、約1000mlのシクロヘキサンが添加され、混合物は、回転蒸発機中で1時間、50℃で撹拌される。固形物は吸引ろ過され、ろ過物が無色になるまでシクロヘキサンで洗浄され、ついで、乾燥キャビネット中で、真空乾燥し、43%の収率に対応する48.6gの生成物を得る。
【0119】
第4工程
鉱物油中の水素化ナトリウム(60%NaH、7.7g、193.99ミリモル)が、最初に34mlのDMF中に導入される。第3工程からの生成物(45g、161.16ミリモル)が、225mlのDMF中に溶解され、室温でゆっくりと滴下され、混合物は、さらに2時間撹拌される。d-ジフェニルクロロトリアジン(第1工程からの生成物、49.6g、177.27ミリモル)が、340mlのTH中に撹拌しながら溶解される。撹拌は、一晩RTで続けられ、ついで、変換はチェックされ(TLCチェック)、混合物は、働きかけられる。反応混合物は、0.8kgの氷が添加され、室温まで冷却され、沈殿した固形物は吸引ろ過され、メタノールで二度、ヘプタンで二度洗浄され、乾燥される。物質は、熱抽出機中で2時間トルエンによりで何度も抽出される。ついで、物質はヘプタン中に何度も懸濁され、すべてが溶解するまで、トルエンが沸点で添加される。混合物は室温まで冷却され、得られた固形物は吸引ろ過される。固形物は沸騰トルエンから何度も再結晶化され、ついで、ヘプタンで洗浄され、乾燥され、31%の収率に対応する25.7gの生成物を得る。
【0120】
物質は、引き続き、1×10−6mbar、290℃で二度昇華される。
【0121】
例3:2-ジ過重水素化フェニルトリアゼニル-9,9’-スピロビフルオレンの合成
【化20】

【0122】
第1工程
例2の第1工程に対応する。
【0123】
第2工程
-ジフェニルクロロトリアジン(93%、86.9g、313ミリモル)とスピロ-2-ボロン酸(95%、154.3g、406.9ミリモル、HanFine Chemicals, Koreaから商業的に購入)が、最初に、35.9g(338.9ミリモル)のNaCOとともに、2100mlのトルエン/ジオキサン/水(3:3:1)中に導入され、反応溶液中に保護ガスを通じることにより60分間装置中で脱気される。7.2g(6.3ミリモル)のテトラキストリフェニルホスフィノパラジウムが、ついで、添加され、混合物は、還流下、5時間加熱される。反応が終わると(TLC反応チェック)、相が分離され、有機相は洗浄され、NaSOを使用して乾燥され、1/3の体積まで蒸発される。沈殿した固形物は吸引ろ過され、水、エタノールおよびヘプタンで洗浄される。固形物は、熱抽出機中で24時間トルエンにより抽出され、沈殿した白色固形物は、吸引ろ過され、エタノールで洗浄され、乾燥される。
【0124】
固形物は、1500mlの沸騰ジオキサンから再結晶化される。混合物は、室温で一晩撹拌され、沈殿した固形物は、吸引ろ過され、エタノールで洗浄され、乾燥される。物質は、900mlの沸騰トルエンで撹拌洗浄され、冷却され、吸引ろ過され、127gの生成物が得られ、73%の収率に対応する。物質は、引き続き、5×10−6mbar、約310℃で二度昇華される。
【0125】
例4〜21:OLEDの製造
本発明によるOLEDと先行技術にしたがうOLEDが、WO 04/058911にしたがう一般的プロセスにより製造されるが、これは、ここで記載される状況(たとえば、層の厚さの変化、使用される材料)に適合される。
【0126】
種々のOLEDの結果が、以下の例(表1〜3参照。)で示される。厚さ150nmの構造化されたITO(インジウム錫酸化物)硝子板が、改善された加工のために、20nmのPEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシ-2,5-チオフェン)、水からスピンコート、H.C.Stack,Goslar独から購入。)で被覆される。これら被覆された硝子板は、OLEDが適用される基板を形成する。原則として、OLEDは、以下の層構造を有する:基板/正孔輸送層(HTL)/随意の中間層(IL)/電子障壁層(EBL)/発光層(EML)/随意の正孔障壁層(HBL)/電子輸送層(ETL)/随意の電子障壁層(EIL)および最後にカソード。カソードは、100nm厚さのAl層により形成される。OLEDの正確な構造は、表1に示される。OLEDの製造のために使用された材料は、表3に示される。
【0127】
すべての材料は、真空室での熱気相堆積により適用される。ここで、発光層は少なくとも一つのマトリックス材料(ホスト材料)と発光ドーパント(エミッター)とから常に成り、マトリックス材料は、共蒸発により、一定の体積割合で、混合される。ここで、H1:SEB1(95%:5%)等の表現は、材料H1が95体積%の割合で層に存在し、SEB1が5体積%の割合で層に存在することを意味する。同様に、電子輸送層も二個の材料の混合物から成ってよい。
【0128】
OLEDは、標準方法により特性決定される。この目的のために、電流/電圧/輝度特性線(IUL特性線)から計算した、輝度の関数としてのエレクトロルミネセンススペクトル、電流効率(cd/Aで測定)、パワー効率(Im/Wで測定)および外部量子効率(EQE、パーセントで測定)ならびに寿命が測定される。寿命は、輝度が一定の初期輝度Iから一定の割合で低下した時間として定義される。LD50という表現は、前記寿命が、初期輝度が0.5l(〜50%)、すなわち、6000cd/mから3000cd/mに低下した時間であることを意味する。LD80という表現は、寿命が、初期輝度の80%まで低下した時間であることを意味する。
【0129】
本発明の化合物は、特に、蛍光ドーパントのためのマトリックス材料(ホスト材料)として使用することができる。ここで、本発明による化合物H2が使用される(表3参照。)。化合物H1は、先行技術にしたがう比較例として使用される。赤色発光ドーパントSER1を含むOLEDが示される。OLEDの結果は、表2に要約される。例4〜7は、先行技術にしたがう非重水素化ホスト材料を含むOLEDを示し、比較例として役立つ。本発明によるOLED13〜16は、蛍光エミッターを含む素子における式(I)の化合物の使用に関する優位性を示す。
【0130】
本発明による重水素化化合物の使用は、先行技術と比べて素子の駆動寿において改善を達成することを可能とする。参照化合物と比べると、電気特性データは、すべての場合において、同等か、より良好である。その他の点では同一の構造を有するH2を使用する素子は、より増加したパワー効率と駆動電圧とともにより長い駆動寿命を呈する。
【0131】
燐光OLEDにおけるマトリックス材料としての使用について、式(I)の化合物は、同様に、先行技術と比べて、すべてのパラメーターにおいて、特に、寿命とパワー効率に関して、顕著な改善を生じる。使用された例は、本発明によるマトリックス材料H3とH6である(表3参照。)。例8〜12は、非重水素化ホスト材料と先行技術にしたがう燐光ドーパントを含むOLEDを示し、比較例として役立つ。本発明によるOLED17〜21は、燐光エミッターを含む素子における式(I)の化合物の使用に関する優位性を示す。特に、より高い効率とより長い寿命は、本発明による化合物の使用に関して測定される。
【0132】
表1:OLEDの構造
【表1】

【0133】
表2:OLEDの結果
【表2】

【0134】
*これら素子のために、寿命LD80が、4000cd/mから決定される。
【0135】
表3:使用される材料の構造式
【表3】

【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の化合物。
【化1】

(ここで、
Zは、1以上の基Rで置換されてよい15〜60個の芳香族環原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基であるか、または、1以上の基Rで置換されてよい18〜60個の芳香族環原子を有するオリゴアリーレンもしくはオリゴヘテロアリーレン基であって、ここで、オリゴアリーレンもしくはオリゴヘテロアリーレン基は、式(II)の芳香族環のみを含み、
【化2】

ここで、式(II)中のXは、同一であるか異なり、CRかNのいずれかであり、ただし、二個を超えない隣接するXは、同時にNに対応し;ここで、式(II)の基上のさらなる基Rは、これら六員環に縮合する環を形成することはできず、
Yは、出現毎に同一であるか異なり、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルトリアジニル、ナフチル、メチル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、チオフェニル、フラニル、キノリニル、イソキノリニル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリルもしくはキナゾリニル基であって、夫々は、二個以上の重水素原子を有し、随意に、1以上の基Rで置換されてよく、ここで二個以上の基Yは、単結合を介してか、一以上の基Rを介してかのいずれかで互いに結合することができ、
nは、1〜15の値であることができ、
R、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、Si(R、NO、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接するもしくは隣接しないCH基は、C≡C、-RC=CR-、Si(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、S、C(=O)OもしくはC(=O)NRで置き代えられてよい。)、または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;ここで、Z上の2以上の置換基RもしくはRおよび/または一以上の基Yは、互いに結合して、随意に、モノ-あるいはポリ環状脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を形成してもよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、Dもしくは1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族炭化水素基であり、加えて、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよく;ここで、2個以上の隣接するもしくは隣接しない置換基Rは、互いに結合して、随意に、モノ-あるいはポリ環状、脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を形成してもよい。)
【請求項2】
基Zは、1以上の基Rで置換されてよい15〜40個の芳香族環原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基であるか、または、1以上の基Rで置換されてよい18〜36個の芳香族環原子を有するオリゴアリーレンもしくはオリゴヘテロアリーレン基であって、ここで、オリゴアリーレンもしくはオリゴヘテロアリーレン基は、請求項1で定義されるとおりの式(II)の芳香族環のみを含むことを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Yは、出現毎に同一であるか異なり、フェニル、トリル、ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルトリアジニル、ナフチル、ピリジニルもしくはメチル基であって、夫々は、二個以上の重水素を有するか、または、重水素と水素とは別のさらなる置換基を含まず、ここで、基は、好ましくは、重水素により完全に置換されていることを特徴とする、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
化合物が以下の式であることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項記載の化合物。
【化3−1】

【化3−2】

(ここで、基Zと添え字nは、請求項1または2で定義されるとおりのものである。)
【請求項5】
Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CN、Si(R、1〜20個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接するもしくは隣接しないCH基は、-C≡C-、-RC=CR-、Si(R、C=O、C=NR、NR、O、S、C(=O)OもしくはC(=O)NRで置き代えられてよい。)、または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であることを特徴とする、請求項1〜4何れか1項記載の化合物。
【請求項6】
基Rは重水素原子ではないことを特徴とする、請求項1〜5何れか1項記載の化合物。
【請求項7】
基Zは、出現毎に同一であるか異なり、ターフェニル、トリフェニレン、ベンゾカルバゾール、ベンゾナフトフラン、ベンゾフェナントレン、ピレン、ベンゾピレン、フルオランセン、ベンゾアントラセン、スピロジベンゾシロール、スピロビフルオレン、インデノフルオレン、ベンゾインデノフルオレン、インドロカルバゾール、インデノカルバゾール、キナクリドン(リニアーもしくはアンギュラーであってよい)、ジベンゾキノキサリン、ジベンゾシノリン、ジベンゾフタラジン、ジベンゾキナゾリンおよびベンズアクリジンから選択され、前記基は、随意に、1以上の基Rで置換されてよいことを特徴とする、請求項1〜6何れか1項記載の化合物。
【請求項8】
一以上の基Yが、有機金属カップリング反応を介して基Zに結合することを特徴とする、請求項1〜7何れか1項記載の化合物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7何れか1項記載の式(1)の化合物と少なくとも一つのエミッター化合物とを含む混合物。
【請求項10】
少なくとも一つの蛍光エミッター化合物が存在し、好ましくは、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であることを特徴とする、請求項9記載の混合物であって、
式中、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、N(R、N(Ar)、NO、Si(R、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接するもしくは隣接しないCH基は、-C≡C-、-RC=CR-、Si(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、S、C(=O)OもしくはC(=O)NRで置き代えられてよい。)であり;ここで、2以上の置換基Rは、互いに結合して、随意に、モノ-あるいはポリ環状脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を形成してもよく、および、さらに、
Arは、出現毎に同一であるか異なり、随意に、1以上の置換基Rにより置換されてよい、6〜60個のC原子を有するアリール基であり、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、Dもしくは1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族有機基であり、加えて、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよく;ここで、2個以上の隣接するもしくは隣接しない基Rは、互いに結合して、随意に、モノ-あるいはポリ環状、脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を形成してもよい。
【請求項11】
少なくとも一つの燐光エミッター化合物が存在し、好ましくは、クロム、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀および金から成る群より選ばれる金属を含む少なくとも一つの金属-炭素結合を有する有機金属錯体から選ばれることを特徴とする、請求項9または10記載の混合物。
【請求項12】
請求項1〜7何れか1項記載の少なくとも一つの化合物または請求項9〜11何れか1項記載の少なくとも一つの混合物を含む調合物。
【請求項13】
請求項1〜7何れか1項記載の化合物および/または請求項9〜11何れか1項記載の混合物の、電子素子、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子での使用。
【請求項14】
請求項1〜7何れか1項記載の少なくとも一つの化合物または請求項9〜11何れか1項記載の少なくとも一つの混合物を含む、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機集積回路(O-IC)、有機太陽電池(O-SC)、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電子化学電池(LEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)もしくは有機光受容器から選ばれる有機電子素子。
【請求項15】
請求項1〜7何れか1項記載の一以上の化合物が、一以上のエミッター化合物とともに発光層でホスト材料として使用されることを特徴とする、請求項14記載の有機エレクトロルミネセンス素子。

【公表番号】特表2013−509363(P2013−509363A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535647(P2012−535647)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006015
【国際公開番号】WO2011/050888
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】