説明

電子線分析装置

【課題】 正確で明るい偏光像を取得できる電子線分析装置の提供。
【解決手段】 電子線源20と、落射光用光源部60と、透過光用光源部80と、可視光又は偏光光が検出面に入射して、試料表面上の分析位置を含む領域の光学像又は偏光像を取得する画像取得部51b、71と、落射光用光源部60からの可視光を所定方向に反射するとともに、所定方向と逆方向からの光を透過して画像取得部71の検出面に導くハーフミラー92とを備える電子線分析装置1であって、ハーフミラー92は、落射光用光源部60から可視光が出射された際には、落射光用光源部60からの可視光を所定方向に反射するとともに、所定方向と逆方向からの光を透過して画像取得部71の検出面に導く第一位置に配置され、一方、透過光用光源部80から偏光光が出射された際には、所定方向と逆方向からの光が通過しない第二位置に配置されるように移動可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料表面に電子線を照射し、それによって試料表面から放出された特性X線による信号を検出することが可能な電子線分析装置に関し、特に電子線の照射位置を試料表面上で移動させることで試料表面上の一次元範囲又は二次元範囲における元素分布等を示すX線画像を取得する電子線マイクロアナライザ(電子線分析装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
電子線を試料表面に照射し、そこから放出される種々の粒子やX線による信号を検出して画像化する電子線分析装置として、様々な種類の装置が実用化されている。例えば、電子線マイクロアナライザ(EPMA:「電子線プローブ微小部分析装置」ともいう)では、微小径に集束させた電子線を試料表面に照射する。電子線が照射された試料表面上の分析位置からは試料表面に含まれる元素に特有のエネルギーを有する特性X線や反射電子等が発生するため、この特性X線による信号を検出してそのエネルギー及び強度を分析することにより、試料表面上の分析位置に存在する元素の同定や定量を行ったり、この反射電子による信号を検出してその強度分布を分析することにより、試料表面上の凹凸形状の計測を行ったりしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、このようなEPMAは、試料表面の観察を行うための光学顕微鏡を備え、光学顕微鏡を用いて試料表面の光学像が観察されながら試料表面上における分析位置の決定等が行われている。例えば、ハロゲンランプ等の光源から試料表面上の分析位置を含む領域に可視光を照射して、試料表面上の分析位置を含む領域で反射した可視光をCCDカメラで検出することにより、検出された可視光に基づいて光学像が作成され表示されている。これにより、分析者は、光学像を観察しながら試料表面上の電子線の照射位置とX線分光結晶の焦点位置とが一致するようにしたり、試料表面上の分析範囲の位置(分析位置情報)を指定したりしている。
【0004】
図3及び図4は、従来のEPMAの要部の構成を示す構成図である。なお、図3は、光学像を取得する状態の構成図であり、一方、図4は、偏光像を取得する状態の構成図である。また、地面に水平な一方向をX方向とし、地面に水平でX方向と垂直な方向をY方向とし、X方向とY方向とに垂直な方向をZ方向とする。
EPMA201は、試料Sが載置される試料ステージ110と、電子線Eを試料S表面上の分析位置に照射する電子線源20と、試料S表面上の分析位置から放出された特性X線Pによる信号を検出するX線検出部30と、試料S表面上の分析位置を含む領域に可視光Lを照射する落射光用光源部60と、試料Sの分析位置を含む領域に偏光光L’を照射する透過光用光源部80と、可視光Lや偏光光L’を検出する検出面を有する画像取得装置170と、EPMA201全体の制御を行うコンピュータ250とを備える。なお、落射光用光源部60としては、ハロゲンランプの他、発光ダイオード等の光源が使用可能である。
【0005】
試料ステージ110は、移動体である試料台と、パルスモータを含むX方向駆動機構(図示せず)と、パルスモータを含むY方向駆動機構(図示せず)と、パルスモータを含むZ方向駆動機構(図示せず)とを備える。
試料台の上面には、試料Sを載せたり取り除いたりすることが可能となっている。このような試料台は、コンピュータ250の試料ステージ制御部51aによって駆動機構のパルスモータへ必要な駆動パルス信号が出力されることにより、所望のX方向とY方向とZ方向とに移動できるようになっている。
また、試料台には、開口が形成されており、偏光光L’が開口を通過するようになっている。
【0006】
電子線源20は、電子銃21と偏向コイル(図示せず)と対物レンズ22とを備える。そして、電子銃21は、出射面が下方(Z方向)を向くように試料ステージ110の上方(−Z方向)に配置されている。このような電子線源20によれば、電子銃21から放出された電子線Eは、偏向コイルを経て対物レンズ22によって集束され、試料ステージ110に載せられた試料S表面上の分析位置にZ方向から照射されるようになっている。
【0007】
X線検出部30は、波長分散型のX線検出器であり、試料S表面上の分析位置(焦点位置)から放出される特性X線Pを分光するX線分光結晶31と、X線分光結晶31で波長分散されたX線による信号を検出するX線検出器32とを備える。そして、X線分光結晶31は、回折面が試料Sからの特性X線Pを受けるように配置されるとともに、X線検出器32は、X線分光結晶31を向くように配置されている。これにより、試料S表面上の分析位置(焦点位置)から放出された特性X線PがX線分光結晶31の回折面で波長分散され、波長分散されたX線による信号を検出している。
【0008】
透過光用光源部80は、可視光Lを出射するハロゲンランプ81と、ハロゲンランプ81の前方(X方向)に配置され所定の直線偏光の光のみを通過させる偏光子82と、偏光子82を回転駆動(X方向を回転軸とする)する偏光子回転駆動機構(図示せず)と、偏光子82の前方(X方向)に配置された反射鏡83とを備える。
偏光子82は、コンピュータ250の画像取得制御部251bによって偏光子回転駆動機構へ必要な駆動信号が出力されることにより、任意の回転角度に回転駆動できるようになっている。
このような透過光用光源部80によれば、ハロゲンランプ81から出射された可視光Lは、偏光子82によって偏光光L’のみとされ、偏光光L’が反射鏡83で反射され試料ステージ110に載せられた試料Sの分析位置に−Z方向から照射されるようになっている。
【0009】
画像取得装置170は、可視光Lや偏光光L’を検出する検出面を有するCCDカメラ71と、CCDカメラ71の検出面の前方に配置されたリレーレンズ72と、所定の偏光光のみを透過させる検光子73と、検光子73を回転駆動(X方向を回転軸とする)させる検光子回転駆動機構(図示せず)と、検光子73及び検光子回転駆動機構を移動させる検光子移動機構(図示せず)とを備える。
検光子73は、コンピュータ250の画像取得制御部251bによって検光子回転駆動機構へ必要な駆動信号が出力されることにより、任意の回転角度に回転駆動できるようになっている。
また、検光子回転駆動機構とともに検光子73は、コンピュータ250の画像取得制御部251bによって検光子移動機構へ必要な駆動信号が出力されることにより、偏光光L’の光学系への導入又は退避ができるようになっている。
【0010】
ところで、試料S表面上の分析位置に同じZ方向から電子線Eや可視光Lを照射するために、試料ステージ110の上方(−Z方向)には、電子線Eが通過する孔部を有する有孔平面ミラー91が配置されている。
これにより、所定方向(X方向)に進行する可視光Lは有孔平面ミラー91によって進行方向を変え、試料S表面上の分析位置を含む領域にZ方向から照射され、試料S表面上の分析位置を含む領域で−Z方向に反射した可視光Lは有孔平面ミラー91によって進行方向を所定方向と逆方向(−X方向)に変えるようになっている。また、Z方向に進行する電子線Eは有孔平面ミラー91の孔部を通過し、試料S表面上の分析位置を含む領域にZ方向から照射されるようになっている。
【0011】
また、CCDカメラ71は、落射光用光源部60から出射された可視光Lと同じ光軸で可視光Lを検出するために、CCDカメラ71の前方(X方向)には、平板形状のハーフミラー292が配置されている。
これにより、Z方向に進行する可視光Lの50%がハーフミラー292によって進行方向をX方向に変えるようになっている。また、−X方向に進行する可視光Lの50%がハーフミラー292を透過し、CCDカメラ71の検出面にリレーレンズ72を介して導かれるようになっている。
【0012】
コンピュータ250は、CPU(制御部)251を備え、さらにモニタ(表示装置)53と操作部(入力装置)54とが連結されている。また、CPU251が処理する機能をブロック化して説明すると、試料ステージ110を制御する試料ステージ制御部51aと、CCDカメラ71から光学像や偏光像を取得してモニタ53に表示する画像取得制御部251bと、X線検出部30から試料S表面上の分析位置のX線画像(元素又は組成に関する情報)を取得する分析制御部51cとを有する。
【0013】
次に、EPMA201を用いて光学像を取得する光学像取得方法について説明する(図3参照)。
まず、分析者は、試料ステージ110の上面に試料Sを載置する。次に、分析者は、検光子移動機構を操作部54を用いて操作して検光子73を所定方向と逆方向(−X方向)からCCDカメラ71の検出面に向かう光が通過しない位置に退避させた後、落射光用光源部60の電源を入れる。これにより、落射光用光源部60からZ方向に出射された可視光Lが、ハーフミラー292によって進行方向をX方向に変える。そして、X方向に進行する可視光Lが、有孔平面ミラー91によって進行方向を変え、試料S表面上の分析位置を含む領域にZ方向から照射される。そして、試料S表面上の分析位置を含む領域で−Z方向に反射した可視光Lが有孔平面ミラー91によって進行方向を所定方向と逆方向(−X方向)に変える。−X方向に進行する可視光Lがハーフミラー292を透過し、CCDカメラ71の検出面にリレーレンズ72を介して導かれる。
その結果、画像取得制御部251bは、CCDカメラ71で検出された可視光Lに基づいて、試料Sの分析位置を含む領域の光学像をモニタ53に表示する。
【0014】
次に、EPMA201を用いて偏光像を取得する偏光像取得方法について説明する(図4参照)。
まず、分析者は、試料ステージ110の上面に試料Sを載置する。次に、分析者は、検光子移動機構を操作部54を用いて操作して検光子73を所定方向と逆方向(−X方向)からCCDカメラ71の検出面に向かう光が通過する光軸上に導入した後、透過光用光源部80の電源を入れる。このように透過光用光源部80の電源が入れられた際には、所定方向と逆方向(−X方向)からの光が通過する位置に検光子73が配置される。そして、透過光用光源部80からX方向に出射された偏光光L’が、反射鏡83によって進行方向を−Z方向に変える。そして、−Z方向に進行する偏光光L’が、試料S表面上の分析位置を含む領域に−Z方向から照射される。そして、試料S表面上の分析位置を含む領域を−Z方向に透過した偏光光L’が有孔平面ミラー91によって進行方向を所定方向と逆方向(−X方向)に変える。−X方向に進行する偏光光L’がハーフミラー292を透過し、さらに検光子73を透過し、CCDカメラ71の検出面にリレーレンズ72を介して導かれる。
その結果、画像取得制御部251bは、CCDカメラ71で検出された偏光光L’に基づいて、試料Sの分析位置を含む領域の偏光像をモニタ53に表示する。
なお、検光子移動機構は、上記のように分析者の操作によって検光子73を移動させる機構の他、落射光用光源部60や透過光用光源部80への電源投入を検知して自動的に検光子73を移動させる機構であってもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−058159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上述したようなEPMA201では、正確な偏光像を取得することができないという問題点が発生した。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本件発明者らは、上記課題を解決するために、EPMAで正確な偏光像を取得する偏光像取得方法について鋭意検討を行った。そこで、CCDカメラ71で検出される偏光光L’は、CCDカメラ71で検出される直前で、ハーフミラー292によって偏光されており、このハーフミラー292による偏光が、取得した偏光像に無視できない影響を及ぼしていることがわかった。よって、透過光用光源部80から偏光光L’が出射された際には、偏光光L’が通過しない位置にハーフミラー292を配置することを見出した。
【0018】
上記課題を解決するためになされた本発明の電子線分析装置は、試料表面上の分析位置に電子線を照射する電子線源と、前記試料表面上の分析位置を含む領域に可視光を照射する落射光用光源部と、前記試料の分析位置を含む領域に偏光光を照射する透過光用光源部と、前記試料表面上の分析位置を含む領域で反射した可視光、又は、前記試料の分析位置を含む領域を透過した偏光光が検出面に入射して、前記試料表面上の分析位置を含む領域の光学像又は偏光像を取得する画像取得部と、前記落射光用光源部からの可視光を所定方向に反射するとともに、前記所定方向と逆方向からの光を透過して前記画像取得部の検出面に導くことが可能なハーフミラーとを備える電子線分析装置であって、前記ハーフミラーは、前記落射光用光源部から可視光が出射された際には、前記落射光用光源部からの可視光を前記所定方向に反射するとともに、前記所定方向と逆方向からの可視光を透過して前記画像取得部の検出面に導く第一位置に配置され、一方、前記透過光用光源部から偏光光が出射された際には、前記所定方向と逆方向からの偏光光が通過しない第二位置に配置されるように移動可能となっているようにしている。
【0019】
ここで、「所定方向」とは、設計者等によって予め決められた任意の一方向であり、例えば、左方等となる。
本発明の電子線分析装置によれば、透過光用光源部から偏光光が出射された際には、所定方向と逆方向からの光が通過しない第二位置にハーフミラーが配置されるので、ハーフミラーによって影響を受けていない光が画像取得部の検出面に導かれる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明の電子線分析装置によれば、正確な偏光像を取得することができる。また、ハーフミラーを通過しない光が画像取得部の検出面に導かれるので、明るい偏光像を取得することができる。
【0021】
(他の課題を解決するための手段及び効果)
また、本発明の電子線分析装置において、前記試料表面上の分析位置から放出された特性X線による信号を検出するX線検出部を備え、前記試料表面上の一次元又は二次元範囲内で分析位置を走査させることにより、前記X線検出部で信号を収集し、前記信号の強度に基づいて試料表面上の一次元又は二次元範囲における元素又は組成に関する情報を求める制御部とを備えるようにしてもよい。
さらに、本発明の電子線分析装置において、前記落射光用光源部から可視光が出射された際には、前記ハーフミラーを第一位置に自動的に配置し、一方、前記透過光用光源部から偏光光が出射された際には、前記ハーフミラーを第二位置に自動的に配置する制御部を備えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るEPMAの要部の構成を示す構成図。
【図2】本発明の他の実施形態に係るEPMAの要部の構成を示す構成図。
【図3】従来のEPMAの要部の構成を示す構成図。
【図4】従来のEPMAの要部の構成を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれる。
【0024】
<第一実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係るEPMAの要部の構成を示す構成図である。なお、上述したEPMA201と同様のものについては、同じ符号を付している。
EPMA1は、試料Sが載置される試料ステージ110と、電子線Eを試料S表面上の分析位置に照射する電子線源20と、試料S表面上の分析位置から放出された特性X線Pによる信号を検出するX線検出部30と、試料S表面上の分析位置を含む領域に可視光Lを照射する落射光用光源部60と、試料Sの分析位置を含む領域に偏光光L’を照射する透過光用光源部80と、可視光Lや偏光光L’を検出する検出面を有する画像取得装置170と、EPMA1全体の制御を行うコンピュータ50とを備える。
【0025】
画像取得装置170は、可視光Lや偏光光L’を検出する検出面を有するCCDカメラ71と、CCDカメラ71の検出面の前方に配置されたリレーレンズ72と、所定の偏光光のみを透過させる検光子73と、検光子73を回転駆動(X方向を回転軸とする)させる検光子回転駆動機構(図示せず)と、検光子73及び検光子回転駆動機構を移動させる検光子移動機構(図示せず)と、ハーフミラー駆動機構(図示せず)とを備える。
ハーフミラー92は、コンピュータ50の画像取得制御部51bによってハーフミラー駆動機構へ必要な駆動信号が出力されることにより、第一位置か、第一位置より下方に位置する第二位置かのいずれかの位置に配置されるようになっている。
具体的には、ハーフミラー92は、落射光用光源部60から可視光Lが出射された際(透過光用光源部80から偏光光L’が出射されない際)には、落射光用光源部60からの可視光Lを所定方向(X方向)に反射するとともに、所定方向と逆方向(−X方向)からの光を透過してCCDカメラ71の検出面に導く第一位置に配置されるようになっている。一方、透過光用光源部80から偏光光L’が出射された際(落射光用光源部60から可視光Lが出射されない際)には、所定方向と逆方向(−X方向)からの光が通過しない第二位置に配置されるようになっている。
【0026】
コンピュータ50においては、CPU(制御部)51を備え、さらにモニタ(表示装置)53と操作部(入力装置)54とが連結されている。また、CPU51が処理する機能をブロック化して説明すると、試料ステージ110を制御する試料ステージ制御部51aと、CCDカメラ71から光学像や偏光像を取得してモニタ53に表示する画像取得制御部51bと、X線検出部30から試料S表面上の分析位置のX線画像(元素又は組成に関する情報)を取得する分析制御部51cとを有する。
【0027】
次に、EPMA1を用いて光学像を取得する光学像取得方法について説明する。
まず、分析者は、試料ステージ110の上面に試料Sを載置する。次に、分析者は、検光子移動機構を操作部54を用いて操作して検光子73を所定方向と逆方向(−X方向)からCCDカメラ71の検出面に向かう光が通過しない位置に退避させた後、落射光用光源部60の電源を入れる。これにより、落射光用光源部60からZ方向に出射された可視光Lが、第一位置に配置されたハーフミラー92によって進行方向をX方向に変える。そして、X方向に進行する可視光Lが、有孔平面ミラー91によって進行方向を変え、試料S表面上の分析位置を含む領域にZ方向から照射される。そして、試料S表面上の分析位置を含む領域で−Z方向に反射した可視光Lが有孔平面ミラー91によって進行方向を所定方向と逆方向(−X方向)に変える。−X方向に進行する可視光Lがハーフミラー92を透過し、CCDカメラ71の検出面にリレーレンズ72を介して導かれる。
その結果、画像取得制御部51bは、CCDカメラ71で検出された可視光Lに基づいて、試料Sの分析位置を含む領域の光学像をモニタ53に表示する。
【0028】
次に、EPMA1を用いて偏光像を取得する偏光像取得方法について説明する。
まず、分析者は、試料ステージ110の上面に試料Sを載置する。次に、分析者は、検光子移動機構を操作部54を用いて操作して検光子73を所定方向と逆方向(−X方向)からCCDカメラ71の検出面に向かう光が通過する光軸上に導入した後、透過光用光源部80の電源を入れる。そして、透過光用光源部80の電源を入れた際には、分析者は、ハーフミラー駆動機構を操作部54を用いて操作して所定方向と逆方向(−X方向)からの光が通過しない第二位置にハーフミラー92を配置する。これにより、透過光用光源部80からX方向に出射された偏光光L’が、反射鏡83によって進行方向を−Z方向に変える。そして、−Z方向に進行する偏光光L’が、試料S表面上の分析位置を含む領域に−Z方向から照射される。そして、試料S表面上の分析位置を含む領域で−Z方向に透過した偏光光L’が有孔平面ミラー91によって進行方向を所定方向と逆方向(−X方向)に変える。−X方向に進行する偏光光L’がハーフミラー92を透過せずに、検光子73を透過し、CCDカメラ71の検出面にリレーレンズ72を介して導かれる。
その結果、画像取得制御部51bは、CCDカメラ71で検出された偏光光L’に基づいて、試料Sの分析位置を含む領域の偏光像をモニタ53に表示する。
【0029】
以上のように、本発明のEPMA1によれば、透過光用光源部80から偏光光L’が出射された際には、所定方向と逆方向(−X方向)からの光が通過しない第二位置にハーフミラー92が配置されるので、ハーフミラー92によって影響を受けていない偏光光L’がCCDカメラ71の検出面に導かれるので、正確な偏光像を取得することができる。また、ハーフミラー92を通過しない光がCCDカメラ71の検出面に導かれるので、明るい偏光像を取得することができる。
【0030】
<第二実施形態>
上述したEPMA1では、ハーフミラー92が、第一位置か、第一位置より下方に位置する第二位置かのいずれかの位置に直線的な移動により配置されるような構成としたが、平板形状のハーフミラー192が、任意の軸を中心として回転させることによって、第一位置か、第二位置かのいずれかの位置に配置されるような構成としてもよい。図2は、第二実施形態に係るEPMA101の要部の構成を示す構成図であって、平板形状のハーフミラー192が、第一位置か、Y方向を軸として回転させてX方向と平行となる位置である第二位置かのいずれかの位置に配置されるような構成となっている。なお、上述したEPMA1と同様のものについては、同符号を付すことにより説明を省略する。
【0031】
コンピュータ150においては、CPU(制御部)151を備え、さらにモニタ(表示装置)53と操作部(入力装置)54とが連結されている。また、CPU151が処理する機能をブロック化して説明すると、試料ステージ110を制御する試料ステージ制御部51aと、CCDカメラ71から光学像や偏光像を取得してモニタ53に表示する画像取得制御部151bと、X線検出部30から試料S表面上の分析位置のX線画像(元素又は組成に関する情報)を取得する分析制御部51cとを有する。
【0032】
画像取得制御部151bは、落射光用光源部60や透過光用光源部80への電源投入を検知することにより、ハーフミラー192を移動させるとともに、CCDカメラ71から光学像や偏光像を取得してモニタ53に表示する制御を行う。
具体的には、画像取得制御部151bは、落射光用光源部60の電源が入れられたことを検知したときには、落射光用光源部60からの可視光Lを所定方向(X方向)に反射するとともに、所定方向と逆方向(−X方向)からの光を透過してCCDカメラ71の検出面に導く第一位置にハーフミラー192を回転移動する。そして、CCDカメラ71から光学像を取得してモニタ53に表示する。一方、画像取得制御部151bは、透過光用光源部80の電源が入れられたことを検知したときには、所定方向と逆方向(−X方向)からの光が通過しない第二位置にハーフミラー192を回転移動する。そして、CCDカメラ71から偏光像を取得してモニタ53に表示する。
【0033】
ここで、EPMA101を用いて偏光像を取得する偏光像取得方法について説明する。
まず、分析者は、試料ステージ110の上面に試料Sを載置する。次に、分析者は、検光子移動機構を操作部54を用いて操作して検光子73を所定方向と逆方向(−X方向)からCCDカメラ71の検出面に向かう光が通過する光軸上に導入した後、透過光用光源部80の電源を入れる。そして、透過光用光源部80の電源が入れられた際には、画像取得制御部151bは、所定方向と逆方向(−X方向)からの光が通過しない第二位置にハーフミラー92を自動的に配置する。これにより、透過光用光源部80からX方向に出射された偏光光L’が、反射鏡83によって進行方向を−Z方向に変える。そして、−Z方向に進行する偏光光L’が、試料S表面上の分析位置を含む領域に−Z方向から照射される。そして、試料S表面上の分析位置を含む領域で−Z方向に透過した偏光光L’が有孔平面ミラー91によって進行方向を所定方向と逆方向(−X方向)に変える。−X方向に進行する偏光光L’がハーフミラー92を透過せずに、検光子73を透過し、CCDカメラ71の検出面にリレーレンズ72を介して導かれる。
その結果、画像取得制御部151bは、CCDカメラ71で検出された偏光光L’に基づいて、試料Sの分析位置を含む領域の偏光像をモニタ53に表示する。
【0034】
以上のように、本発明のEPMA101によれば、透過光用光源部80から偏光光L’が出射された際には、所定方向と逆方向(−X方向)からの光が通過しない第二位置にハーフミラー192が配置されるので、ハーフミラー192によって影響を受けていない偏光光L’がCCDカメラ71の検出面に導かれるので、正確な偏光像を取得することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、試料表面に電子線を照射し、それによって試料表面から放出された特性X線による信号を検出することが可能な電子線分析装置等に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 電子線マイクロアナライザ(電子線分析装置)
20 電子線源
51 CPU(制御部)
51b 画像取得制御部(画像取得部)
60 落射光用光源部
71 CCDカメラ(画像取得部)
80 透過光用光源部
92 ハーフミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料表面上の分析位置に電子線を照射する電子線源と、
前記試料表面上の分析位置を含む領域に可視光を照射する落射光用光源部と、
前記試料の分析位置を含む領域に偏光光を照射する透過光用光源部と、
前記試料表面上の分析位置を含む領域で反射した可視光、又は、前記試料の分析位置を含む領域を透過した偏光光が検出面に入射して、前記試料表面上の分析位置を含む領域の光学像又は偏光像を取得する画像取得部と、
前記落射光用光源部からの可視光を所定方向に反射するとともに、前記所定方向と逆方向からの光を透過して前記画像取得部の検出面に導くことが可能なハーフミラーとを備える電子線分析装置であって、
前記ハーフミラーは、前記落射光用光源部から可視光が出射された際には、前記落射光用光源部からの可視光を前記所定方向に反射するとともに、前記所定方向と逆方向からの可視光を透過して前記画像取得部の検出面に導く第一位置に配置され、
一方、前記透過光用光源部から偏光光が出射された際には、前記所定方向と逆方向からの偏光光が通過しない第二位置に配置されるように移動可能となっていることを特徴とする電子線分析装置。
【請求項2】
前記試料表面上の分析位置から放出された特性X線による信号を検出するX線検出部を備え、
前記試料表面上の一次元又は二次元範囲内で分析位置を走査させることにより、前記X線検出部で信号を収集し、前記信号の強度に基づいて試料表面上の一次元又は二次元範囲における元素又は組成に関する情報を求める制御部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の電子線分析装置。
【請求項3】
前記落射光用光源部から可視光が出射された際には、前記ハーフミラーを第一位置に自動的に配置し、一方、前記透過光用光源部から偏光光が出射された際には、前記ハーフミラーを第二位置に自動的に配置する制御部を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子線分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−211771(P2012−211771A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76246(P2011−76246)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】