説明

電子装置

【課題】複数のコンテンツを同時に表示する電子装置において、各使用者が選択したコンテンツに対応する音声を、各使用者に対して再生する。
【解決手段】パラメトリックスピーカの変調波を出力する複数の発振装置10と、複数のコンテンツを同時に表示する表示部40と、複数の使用者の位置を認識する認識部と、コンテンツに応じた音声を再生するよう発振装置10を制御する制御部と、を備え、制御部は、認識部が認識した複数の使用者それぞれの位置に向けて、各使用者がそれぞれ選択したコンテンツに応じた音声を再生するよう発振装置10を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用した電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末装置等の電子装置に関する技術については様々な検討がなされている。例えば特許文献1に記載の技術は、携帯通信装置に搭載されたアンテナと頭部との距離を、超音波を用いて測定し、この距離に基づいて通信装置の整合回路の整合条件を変化させるというものである。また、特許文献2〜4には、携帯端末装置のスピーカに関する技術が記載されている。
【0003】
特許文献2に記載の技術は、撮像部により撮像した対象物との距離を求め、これに応じて音声を一定の空間に定位させるというものである。また、特許文献3に記載の技術は、聴取者とスピーカとの距離を測定し、これをデータベース化されている頭部伝達関数を用いてフィルタの係数に反映させるというものである。さらに、特許文献4には、音響信号を出力する複数の超指向性スピーカを備えた携帯端末装置に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−124723号公報
【特許文献2】特開2006−157558号公報
【特許文献3】特開2007−28134号公報
【特許文献4】特開2006−67386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のコンテンツを同時に表示する電子装置において、各コンテンツに対応した複数の音声を再生すると、これらの音声は混ざり合ってしまう。このため、複数の使用者がそれぞれ異なるコンテンツを見る場合、各使用者は自分が見ているコンテンツに対応した音声を認識することが困難となる。よって、複数のコンテンツを同時に表示する電子装置において、複数の使用者がそれぞれ異なるコンテンツを見る場合に、各使用者が選択したコンテンツに対応する音声を、各使用者に対して再生できるようにすることが求められている。
【0006】
本発明は、複数のコンテンツを同時に表示する電子装置において、各使用者が選択したコンテンツに対応する音声を、各使用者に対して再生することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、パラメトリックスピーカの変調波を出力する複数の発振装置と、
複数のコンテンツを同時に表示する表示部と、
複数の使用者の位置を認識する認識部と、
前記コンテンツに応じた音声を再生するよう前記発振装置を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記認識部が認識した前記複数の使用者それぞれの位置に向けて、各使用者がそれぞれ選択した前記コンテンツに応じた音声を再生するよう前記発振装置を制御する電子装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数のコンテンツを同時に表示する電子装置において、各使用者が選択したコンテンツに対応する音声を、各使用者に対して再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係る電子装置の動作方法を示す模式図である。
【図2】図1に示す電子装置を示すブロック図である。
【図3】図2に示す発振装置を示す平面図である。
【図4】図3に示す発振装置を示す断面図である。
【図5】図4に示す圧電振動子を示す断面図である。
【図6】図1に示す電子装置の動作方法を示すフロー図である。
【図7】第2の実施形態に係る電子装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
図1は、第1の実施形態に係る電子装置100の動作方法を示す模式図である。また図2は、図1に示す電子装置100を示すブロック図である。電子装置100は、複数の発振装置10と、表示部40と、認識部30と、制御部20と、を備えている。電子装置100は、例えばテレビ、デジタルサイネージでの表示、携帯端末装置等である。
【0012】
発振装置10は、超音波16を出力する。超音波16は、パラメトリックスピーカの変調波である。表示部40は、複数のコンテンツを同時に表示する。認識部30は、複数の使用者の位置を認識する。制御部20は、コンテンツに応じた音声を再生するよう発振装置10を制御する。そして、制御部20は、認識部30が認識した複数の使用者それぞれの位置に向けて、各使用者がそれぞれ選択したコンテンツに応じた音声を再生するよう発振装置10を制御する。以下、図1〜5を用いて、電子装置100の構成について詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、電子装置100は、例えば筐体90をさらに備えている。図2に示すように、発振装置10、制御部20、認識部30および表示部40は、例えば筐体90の内部に配置される。
【0014】
複数の発振装置10は、例えば制御部20によって別個に制御される。また、図2に示すように、発振装置10は、複数の発振装置12によって構成することができる。複数の発振装置12は、例えば制御部20によって別個に制御される。
【0015】
図1に示すように、表示部40は、例えば左右に分割して表示した二画面によって二つのコンテンツを同時に表示する。しかし、表示部40による複数コンテンツの表示の形態は、例えば使用者の操作等によって、如何様に変更することもできる。例えば、上下に分割した二画面によって二つのコンテンツを同時に表示することもでき、また四画面によって四つのコンテンツを同時に表示することもできる。
【0016】
認識部30は、撮像部32と判定部34とを有している。撮像部32は、複数の使用者を含む領域を撮像して画像データを生成する。判定部34は、画像データを処理することにより、各使用者の位置を判定する。各使用者の位置の判定は、例えば、各使用者を識別する特徴量をあらかじめ個別に記憶保存しておき、この特徴量と画像データとを照合させることにより行う。特徴量としては、例えば、両目の間隔の大きさ、または両目および鼻を結ぶ三角形の大きさおよび形状などが挙げられる。また、認識部30は、撮像部32が撮像する領域内において、使用者が移動した場合に、使用者を自動で追従して使用者の位置を判定する機能を有していてもよい。
【0017】
制御部20は、発振装置10、認識部30および表示部40と接続している。制御部20は、複数の使用者それぞれの位置に向けて、各使用者がそれぞれ選択したコンテンツに対応した音声を再生するよう、各発振装置10を制御する。これは、例えば次のように行われる。まず、使用者ごとに、各使用者の特徴量をIDに対応づけて登録しておく。次いで、各使用者が選択したコンテンツを、各使用者のIDと対応づける。次いで、特定のコンテンツに対応したIDを選択し、選択したIDに対応づけられた識別量を読み出す。そして読み出された識別量を有する使用者を画像処理によって選択し、当該コンテンツに応じた音声を当該使用者に対して再生する。
【0018】
図3は、図2に示す発振装置10を示す平面図である。発振装置10は、図3に示すように、例えば複数の発振装置12がアレイ状に配列して構成されている。
【0019】
図4は、図2に示す発振装置12を示す断面図である。発振装置12は、圧電振動子60と、振動部材62と、支持部材64と、を備えている。圧電振動子60は、振動部材62の一面に設けられている。支持部材64は、振動部材62の縁を支持している。
【0020】
制御部20は、信号生成部22を介して圧電振動子60と接続している。信号生成部22は、圧電振動子60に入力する電気信号を生成する。制御部20は、外部から入力された情報に基づいて信号生成部22を制御し、これにより発振装置12の発振を制御する。制御部20は信号生成部22を介して、パラメトリックスピーカとしての変調信号を入力する。このとき、圧電振動子60は、20kHz以上、例えば100kHzの音波を信号の輸送波として用いる。
【0021】
図5は、図4に示す圧電振動子60を示す断面図である。図4に示すように、圧電振動子60は、圧電体70、上部電極72および下部電極74からなる。また圧電振動子60は、例えば円形または楕円形を有する。圧電体70は、上部電極72と下部電極74に挟まれている。また、圧電体70は、その厚さ方向に分極している。圧電体70は、圧電効果を有する材料により構成され、例えば電気機械変換効率が高い材料としてジルコン酸チタン酸鉛(PZT)またはチタン酸バリウム(BaTiO)等により構成される。また、圧電体70の厚みは、10μm〜1mmであることが好ましい。厚みが10μm未満である場合、圧電体70は脆性材料により構成されるため、取り扱い時において破損等が生じやすい。一方、厚みが1mmを超える場合、圧電体70の電界強度が低減する。このため、エネルギー変換効率の低下を招く。
【0022】
上部電極72および下部電極74は、電気伝導性を有する材料によって構成され、例えば銀または銀/パラジウム合金等によって構成される。銀は、低抵抗な汎用材料であり、製造コストや製造プロセスの観点から優位である。また、銀/パラジウム合金は、耐酸化性に優れた低抵抗材料であり、信頼性に優れる。上部電極72および下部電極74の厚みは、1〜50μmであることが好ましい。厚みが1μm未満の場合、均一に成形することが難しくなる。一方、50μmを超える場合、上部電極72または下部電極74が圧電体70に対して拘束面となり、エネルギー変換効率の低下を招く。
【0023】
振動部材62は、金属や樹脂等、脆性材料であるセラミックに対して高い弾性率を持つ材料によって構成され、例えばリン青銅、又はステンレス等の汎用材料によって構成される。振動部材62の厚みは、5〜500μmであることが好ましい。また振動部材62の縦弾性係数は、1〜500GPaであることが好ましい。振動部材62の縦弾性係数が過度に低い、または高い場合、機械振動子としての特性や信頼性を損なうおそれがある。
【0024】
本実施形態では、パラメトリックスピーカの動作原理を利用して音響再生をする。パラメトリックスピーカの動作原理は次のようである。パラメトリックスピーカの動作原理は、AM変調やDSB変調、SSB変調、FM変調をかけた超音波を空気中に放射し、超音波が空気中に伝播する際の非線形特性により、可聴音が出現する原理で音響再生を行うというものである。ここでいう非線形とは、流れの慣性作用と粘性作用の比で示されるレイノルズ数が大きくなると、層流から乱流に推移することをいう。すなわち、音波は流体内で微少にじょう乱しているため、音波は非線形で伝播している。特に超音波を空気中に放射した場合に、非線形性に伴う高調波が顕著に発生する。また音波は、空気中の分子集団が濃淡に混在する疎密状態である。空気分子が圧縮よりも復元するのに時間が生じた場合、圧縮後に復元できない空気が、連続的に伝播する空気分子と衝突し、衝撃波が生じて可聴音が発生する。パラメトリックスピーカは、使用者の周囲にのみ音場を形成することができ、プライバシー保護という観点から優れる。
【0025】
次に、電子装置100の動作方法について説明する。図6は、図1に示す電子装置100の動作方法を示すフロー図である。まず、各使用者が、自分が見たいコンテンツを選択し、これを電子装置100に入力する(S10)。次に、表示部40は、各使用者が選択した複数のコンテンツを表示する(S11)。このとき、表示部40は、複数のコンテンツを同時に表示する。
【0026】
次いで、認識部30は、複数の使用者の位置を認識する(S12)。複数の使用者の位置は、判定部34によって撮像部32が生成した画像データを処理することで行われる。そして、制御部20は、認識部30が認識した複数の使用者それぞれの位置に向けて、各使用者がそれぞれ選択したコンテンツに応じた音声を再生するよう発振装置10を制御する(S13)。なお、認識部30が、使用者の位置を追従して認識する場合、制御部20は、認識部30が認識した使用者の位置に基づいて発振装置10が音声を再生する方向を随時制御することとしてもよい。
【0027】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態に係る電子装置100によれば、発振装置10が出力する超音波16によってコンテンツに対応した音声を再生する。そして、制御部20は、複数の使用者それぞれの位置に向けて、各使用者がそれぞれ選択したコンテンツに応じた音声を再生するよう発振装置10を制御する。コンテンツに対応した音声は、指向性の高い超音波によって再生されるため、各コンテンツに対応した複数の音声は互いに混ざり合わない。よって、複数のコンテンツを同時に表示する電子装置において、各使用者が選択したコンテンツに対応する音声を、各使用者に対して再生することができる。
【0028】
図7は、第2の実施形態に係る電子装置102を示すブロック図であり、第1の実施形態に係る図2に対応している。本実施形態に係る電子装置102は、複数の検出端末50を備えている点を除いて、第1の実施形態に係る電子装置100と同様である。
【0029】
複数の検出端末50は、複数の使用者のそれぞれによって保持される。そして、認識部30は、検出端末50の位置を認識することにより、使用者の位置を認識する。認識部30による検出端末50の位置の認識は、例えば検出端末50から発せられる電波を認識部30が受信することによって行われる。また、認識部30は、検出端末50を保持する使用者が移動した場合に、使用者を自動で追従して使用者の位置を判定する機能を有していてもよい。検出端末50は、例えばコンテンツを選択する機能や、超音波16によって再生される音声の音量を調節する機能を備えていてもよい。
【0030】
また、認識部30は、撮像部32および判定部34を有していてもよい。撮像部32が使用者を含む領域を撮像した画像データを生成し、判定部34がこの画像データを処理することにより、使用者の詳細な耳の位置等を特定することができる。このため、検出端末50を用いた位置検出と併用することにより、より正確に使用者の位置を認識することができる。
【0031】
本実施形態においても、制御部20は、複数の使用者それぞれの位置に向けて、各使用者がそれぞれ選択したコンテンツに対応した音声を再生するよう、各発振装置10を制御する。これは、例えば次のように行われる。まず、あらかじめ各検出端末50のIDを登録しておく。次いで、各使用者が選択したコンテンツを、各使用者が保持する検出端末50のIDと対応づける。次いで、各検出端末50から、各検出端末50を示すIDを送信する。認識部30は、IDが送信されてきた方向に基づいて、検出端末50の位置を認識する。そして、特定のコンテンツに対応したIDを有する検出端末50を保持する使用者へ、そのコンテンツに応じた音声を再生する。
また、各使用者が、自らが保持する検出端末50を操作してコンテンツを選択する場合には、当該検出端末50を有する使用者に向けて当該コンテンツに応じた音声を再生してもよい。
【0032】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0033】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0034】
10 発振装置
12 発振装置
16 超音波
20 制御部
22 信号生成部
30 認識部
32 撮像部
34 判定部
40 表示部
50 検出端末
60 圧電振動子
62 振動部材
64 支持部材
70 圧電体
72 上部電極
74 下部電極
90 筐体
100 電子装置
102 電子装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラメトリックスピーカの変調波を出力する複数の発振装置と、
複数のコンテンツを同時に表示する表示部と、
複数の使用者の位置を認識する認識部と、
前記コンテンツに応じた音声を再生するよう前記発振装置を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記認識部が認識した前記複数の使用者それぞれの位置に向けて、各使用者がそれぞれ選択した前記コンテンツに応じた音声を再生するよう前記発振装置を制御する電子装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置において、
前記複数の使用者それぞれに保持される複数の検出端末をさらに備え、
前記認識部は、前記検出端末の位置を認識することにより、前記使用者の位置を認識する電子装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子装置において、
前記認識部は、
前記使用者を含む領域を撮像して画像データを生成する撮像部と、
前記画像データを処理することにより前記使用者の位置を判定する判定部と、
を有する電子装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の電子装置において、
前記認識部は、前記使用者の位置を追従して認識し、
前記制御部は、前記認識部が認識した前記使用者の位置に基づいて、前記発振装置が音声を再生する方向を随時制御する電子装置。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1項に記載の電子装置において、
前記電子装置は、携帯端末装置である電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−160959(P2012−160959A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20032(P2011−20032)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【出願人】(303013763)NECエンジニアリング株式会社 (651)
【Fターム(参考)】