説明

電子透かし読取装置

【課題】 商品の表面印刷に埋め込まれた電子透かしからIDコードを読取るような電子透かし読取装置において、予め設定された利用者のみが電子透かしを読取れるよう、読み取りの対象範囲を限定できる電子透かし読取装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 暗号化した電子透かしを読み取り(S12)、電子透かし読取装置に装着したICカード内の暗号鍵で復号化し(S22)、かつ復号化したコードに含まれる判別コードをICカード内の判別鍵と照合し(S24)、「合」のときのみ復号化した結果を出力することにより(S25)、電子透かし読取装置が読み取る対象の範囲を自在に設定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像から電子透かしを読み取り、埋め込まれた情報を抽出する読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
商品管理や流通管理などの分野で、ハンディ端末により個々の商品のIDを読み取り、商品情報を一括管理するなどの手法は、既に広く行なわれている。商品のIDの代表的なものはバーコードである。また、このような用途で最近着目されてきたものに電子透かしがある。
電子透かしは、必要な情報を画像に埋め込むため、例えば商品のIDでは、商品の意匠を邪魔することなく、また購買者の目に触れることなく、情報を付加できることが大きな特徴である。
【0003】
このような特徴を活かす電子透かしと読取装置の用途は種々考えられており、IDカードの写真部の電子透かしを読み取ることによりカードのセキュリティの向上を図る例(特許文献1)、あるいは携帯電話の画像読み取りおよび通信機能と組み合せ、電子透かし読取機能を持つ通信端末を構成する例(特許文献2)などがある。
【特許文献1】特開2001−138673号公報
【特許文献2】特開2004−179783号公報
【0004】
例えば、特許文献2では、応用例として、携帯電話で電子透かし入り画像を読み取り、取り出されたIDをキーとして通信手段を介してID情報データベースにアクセスし、関連情報を利用者に提供する、などを挙げている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような用途では、不特定、広範なサービスのため、電子透かしに埋め込まれたID情報は隠すことなく読み取られてよいが、一方で、製品のシリアルのように、限られた範囲での読み取りが望まれる場合も多々ある。
本発明は、上記のような限定された範囲の読み取りのための電子透かし読取装置を提供しようとするものであり、小型で携帯可能な形で実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の電子透かし読取装置は、
暗号化された情報を電子透かしとして埋め込んだ画像から抽出した電子透かしデータを復号する復号処理部を備え、
暗号化された暗号化情報が電子透かしとして埋め込まれた画像を撮像してデジタルデータとして入力する入力手段と、前記入力手段で入力されたデジタルデータから電子透かしとなった暗号化情報を抽出する画像処理手段と、前記復号処理部に格納された鍵を用いて抽出した暗号化情報を復号した復号情報を生成し、更に前記復号処理部に格納された判別鍵と前記復号情報に含まれる判別データとを照合し、判別結果を判別情報として出力する判定処理手段と、前記判定処理手段から出力された前記判別情報に基づいて読み取り結果を表示する表示手段と、
を備えることにより、限定された利用者のみ読み取り可能なような電子透かし読取装置を実現する。
また、電子透かしデータを復号する復号処理には、ICカードを用い、ICカードが具備するセキュリティレベルの高さと、暗号処理能力を活用することにより、セキュリティ性の高い電子透かし読取装置とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、判別鍵により読み取り範囲を制限できるため、他者に盗み読まれることなく特定の利用者のみが読み取り可能な電子透かしを提供できる。また同じアルゴリズムを使った電子透かしを複数用途、利用者に提供するような運用も可能となる。
さらに、ICカードの交換により暗号ロジックの交換もできるため、利用者は暗号ロジックを切替ながら長期に渡って電子透かし読取装置(および関連システム)を使い続けることができ、システム全体のコスト低減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に、本発明の電子透かし読取装置の一形態を示す。
図2は同読取装置の機能ブロック図である。
図1の電子透かし読取装置は、商品管理のような用途を想定し携帯可能なハンディ型としており、読み取りの対象となる画像20に撮像部(図1には表れない)を向け操作ボタン12を操作することにより読み取りを行なう。
図2の入力手段5は、撮像部15から電子透かしを含む画像20を光学的に取り込み、画像データに変換する機能を持つ。
画像処理手段6は、CPUを核とする演算機能から成り、電子透かしの抽出などの画像処理に関する機能を始め、入出力や信号処理など、電子透かし読取装置10全体の制御を担う。
【0009】
画像処理手段6により抽出された電子透かしは後述の手順に従い、判定処理手段8により秘密鍵により復号されるとともに判別鍵と照合される。
表示手段7は、液晶画面などから成る表示部11を持ち、前記照合の結果や、その他電子透かし読取装置10の操作に必要な情報を表示部11に表示する。
操作ボタン12は利用者による操作指示を操作信号として情報処理部16に伝達するためのものである。
【0010】
なお、これらの機能は、画像処理手段6のCPUが、予め設定されたプログラムを実行することにより実現される。
また、図には示していないが、電子透かし読取装置10にBluetoothなどの通信手段を組み込むことは容易であり、外部のホストコンピュータなどと通信で結ぶことにより在庫管理などに展開できる。
【0011】
また、本発明の電子透かし読取装置10では、判定処理手段8としてICカードを用いることを特徴としており、さらにICカード13は、小型機器への装着に適し、差し替えも容易な小型のICカード(SIMと呼ばれる)としており、以降の説明もSIMを用いながら行なう。したがって、図1のICカード13の形態もSIMの形状で示しており、また、電子透かし読取装置10にはSIM形状のICカードを装着するためのICカード挿入口17が備えられている。
【0012】
図3(A)にSIMの外観を示す。
SIM(Subscriber Identity Module)は、一般的には、長辺L1が25mm程度、短辺L2が15mm程度に形成されている。厚みは、1.0mm以内で通常は0.76mmの均一な薄板状のものである。
【0013】
SIMの本来的目的は、携帯電話サービスの利用目的で開発されたが、クレジットカードサイズのICカードと同等の機能を持ち、例えばクレジット決済で扱う個人識別情報などを暗号化して登録することも可能となっている。なお、図3(A)に示すSIM31は、接触型であって、端子板33を有し、したがって電子透かし読取装置10内には端子板33に対向する接触用コンタクトピンが備わる。
SIMは通常のICカードと同様の工程により同様の製造装置で製造可能とするため、図3(B)に示すように、通常のICカードと同一サイズ、同一形状のICカード35上に形成され、SIM31の周囲に溝30mと折り線30kを形成して、必要によりICカード35から折り取りできるようにされている。なお、図3(B)では、接触端子板33はカードの裏面側に位置している。
【0014】
図4にSIMのブロック図を示す。一般に、SIMはSIM全体を制御するCPUと、不揮発性メモリであるROMと、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリであるEEPROMを備え、外部機器と情報を授受するために通信インターフェースを持つ。ROMにはCPUを動作させるプログラムやOSなど、また、EEPROMにはパラメータや鍵などが格納される。SIMに搭載される基本プログラムやOSは、高セキュリティ性や暗号処理に特化して構成されており、本発明の実施形態に適した特性を持つ。
【0015】
本発明の電子透かし読取装置に係わるSIM31では、復号処理381、判別処理382などのプログラム類がROM38に、また、秘密鍵391、判別鍵392など書き換える可能性のあるデータ類はEEPROM39に格納される。通信インターフェース37は、SIM31においては図3に示すように端子板33を持つ接触型となる。
【0016】
図5に本発明の電子透かし読取装置の動作フローを示す。
なお、ここでは読み取りの対象を製品IDと想定して処理手順を詳説する。
電子透かし読取装置10は、操作ボタン12が操作ボタンから読み取りの指示があると(S11)、撮像部15から画像を取り込み、画像データに変換する(S12)。
次に、取り込まれた画像データから画像処理手段6により電子透かしが抽出される。すなわち、電子透かしを含む画像データから、まず、予め定められたアルゴリズムで電子透かしが分離され(S13)、さらに、電子透かし画像からコード情報が復元される(S14)。ただし、復元されたコード情報は暗号化された状態(暗号化情報)である。
【0017】
暗号化情報は判定処理手段であるSIMに送られ(S15)、SIM内で復号化されるが、SIMには暗号化情報を解くための秘密鍵391が格納されており、この鍵とSIMの演算機能(復号処理381)とにより暗号化情報が復号化され(S22)、復号化情報が生成される。同復号化情報は、さらに、判別鍵392と照合され、復号化情報が読み取るべき対象であったか否かが判断される。
【0018】
図6は、前記復号化情報と判別鍵の関係を示したものであり、例えば、復号化情報が2バイト(16ビット)のデータで、予め、上位8ビットを製品ID、下位8ビットを判別データ(判別ID)393と定めてあるとすると(S23)、判別処理382にて下位8ビットと判別鍵392(8ビット)とが比較され、「一致」または「不一致」が判定される(S24)。
【0019】
図5のS24における判定結果が「一致」であれば、前記製品IDは「正当」として同IDがSIMから送信され(S25、S26)、また「不一致」であれば「不正」としてエラーコード等が送信される(S27、S26)。
以上の結果から、画像処理手段6は受信した(S16)コードから表示のための情報を生成し(S17)、表示手段7を駆動して表示する(S18)。
【0020】
このように、電子透かしに製品IDと判別IDを暗号化して埋め込み、ICカードで復号することにより、特定した利用者のみに読み取りが可能となる電子透かし読取装置を提供することができる。また、容易に交換可能なICカードは、鍵や暗号アルゴリズムの変更を容易にし、高いセキュリティ性や高い利便性の実現に有効である。
なお、上記動作フローでは説明のために電子透かしのデータ長を16ビットとしているが、データ長は暗号種類や暗号強度等の事情により種々設定できる。また、暗号鍵は秘密鍵方式に限らず、公開鍵方式でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】電子透かし読取装置の外観図
【図2】電子透かし読取装置の機能ブロック図
【図3】SIMの外観図
【図4】SIMのブロック図
【図5】電子透かし読取装置の動作フロー図
【図6】復号化情報および判別鍵の様態を示す図
【符号の説明】
【0022】
5 入力手段
6 画像処理手段
7 表示手段
8 判定処理手段
10 電子透かし読取装置
11 表示部
12 操作ボタン
13 ICカード
20 画像
31 SIM
33 端子板
35 ICカード
36 CPU
37 通信インターフェース
38 ROM
39 EEPROM
381 復号処理
382 判別処理
391 秘密鍵
392 判別鍵


【特許請求の範囲】
【請求項1】
暗号化された情報を電子透かしとして埋め込んだ画像から抽出した電子透かしデータを復号する復号処理部を備えた電子透かし読み取り装置であって
暗号化された暗号化情報が電子透かしとして埋め込まれた画像を撮像してデジタルデータとして入力する入力手段と、
前記入力手段で入力されたデジタルデータから電子透かしとなった暗号化情報を抽出する画像処理手段と、
前記復号処理部に格納された鍵を用いて抽出した暗号化情報を復号した復号情報を生成し、更に前記復号処理部に格納された判別鍵と前記復号情報に含まれる判別データとを照合し、判別結果を判別情報として出力する判定処理手段と、
前記判定処理手段から出力された前記判別情報に基づいて読み取り結果を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする電子透かし読み取り装置。
【請求項2】
前記復号処理部は、ICカードであることを特徴とする請求項1に記載の電子透かし読み取り装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−124355(P2010−124355A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297600(P2008−297600)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.EEPROM
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】