電子部品の製造方法
【課題】2つの電子部品を基板と垂直な方向に積み重ね、狭小なピッチで二次元的に配列されている配線要素同士を常温下で接続するための電極を備える電子部品を高いスループットで高精度に歩留まりよく製造する
【解決手段】本発明による電子部品の製造方法は、凹部が形成されているモールドの成形面上に導電膜を形成し、基板の接合面に備わる配線要素を前記導電膜に接合し、突端が前記導電膜からなる電極が前記基板から前記接合面に対して垂直方向に突出している電子部品を前記モールドから分離する、ことを含む。
【解決手段】本発明による電子部品の製造方法は、凹部が形成されているモールドの成形面上に導電膜を形成し、基板の接合面に備わる配線要素を前記導電膜に接合し、突端が前記導電膜からなる電極が前記基板から前記接合面に対して垂直方向に突出している電子部品を前記モールドから分離する、ことを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品の製造方法に関し、特に電子部品同士を接続するための電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの電子部品のそれぞれにおいて狭小な間隔で配列されている配線要素同士を接続するためのマイクロコネクタや先鋭な突起電極が知られている。マイクロコネクタや先鋭な突起電極を用いると、ACF(Anisotropic Conductive Film)もハンダも用いずに、狭小なピッチで配列されている配線要素同士を常温下において接続することが可能になる。特許文献1、2、3、4、5に開示されているマイクロコネクタは、接続時に必要な弾性を持つビーム部が基板の接合面に対して平行に延びる構成である。特許文献6、7、8には、基板の接合面に対して垂直な方向に突出する突起電極の製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開平10−189168号公報
【特許文献2】特開2006−40737号公報
【特許文献3】特開2003−45576号公報
【特許文献4】特開2002−246117号公報
【特許文献5】特開2001−3320144号公報
【特許文献6】特開平5−1520103号公報
【特許文献7】特開2001-267359号公報
【特許文献8】特開2004-363176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献2、3、4、5に開示されているようにビーム部が基板の接合面に対して平行な方向に直線的に延びる構成のマイクロコネクタの場合、ビーム部の軸と垂直な方向にはマイクロコネクタを狭小なピッチで配列できるものの、ビーム部の軸と平行な方向にはマイクロコネクタを狭小なピッチで配列することができず、2つの電子部品を基板に対して垂直な方向に積み重ねて結合することもできないという問題がある。また、特許文献1に開示されているようにマイクロコネクタのビーム部がC字形に湾曲しているマイクロコネクタは、特許文献2、3、4、5に開示されているマイクロコネクタに比べると狭小なピッチで二次元配列でき、基板の接合面に対して垂直な方向に積み重ねて2つの電子部品を結合することができるものの、基板の接合面に対して平行な方向に延びるビーム部を基板上に形成するために製造工程が複雑であり、磁石を組み込むためにマイクロコネクタの微細化が困難になるという問題がある。
【0004】
また、特許文献6、7に開示されているように突起電極を機械的に加工すると加工精度もスループットも歩留まりも低くなるという問題がある。また特許文献8に開示されているように薄膜の積層によって電極の突端部を段階的に細くする方法では、電極の先鋭度を高めることができない。
【0005】
本発明は、これらの問題を解決するために創作されたものであって、2つの電子部品を基板と垂直な方向に積み重ね、狭小なピッチで二次元的に配列されている配線要素同士を常温下で接続するための電極を備える電子部品を高いスループットで高精度に歩留まりよく製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するための電子部品の製造方法は、凹部が形成されているモールドの成形面上に導電膜を形成し、基板の接合面に備わる配線要素を前記導電膜に接合し、突端が前記導電膜からなる電極が前記基板から前記接合面に対して垂直方向に突出している電子部品を前記モールドから分離する、ことを含む。
【0007】
モールドの凹部上に導電膜を形成すると凹部の立体形状が導電膜の底面に転写される。このように形成された導電膜に基板と一体の配線要素を接合した状態で導電膜がモールドから分離されると、導電膜には接合面に対して垂直方向に基板から突出している突端部が現れる。モールドの凹部は、微細加工技術を用いることにより、底が点状になる先細りの形状に形成できるとともに、二次元的に狭小なピッチで配列することができ高精度に形成可能である。したがって本発明によると、導電膜の突端部を先鋭に形成するとともにその突端部を狭小なピッチで配列することができる。導電膜の突端部は、電子部品の基板と一体の電極の突端部となる。この電極は基板の接合面に対して垂直方向に突出しているため、2つの電子部品を基板と垂直な方向に積み重ねて2つの電子部品を結合することができる。そして突端部が先鋭であるため、ACFもハンダも用いずに2つの電子部品の配線要素同士を常温化において接続することが可能である。さらに、導電膜から分離されたモールドは再利用できるため、本発明によると、そのような電子部品を高いスループットで再現性よく製造することができる。したがって本発明によると、2つの電子部品の配線要素同士を常温化において接続することが可能であり狭小なピッチで配列された電極を備える電子部品を高精度に歩留まりよく製造することができる。
【0008】
(2)上記目的を達成するための電子部品の製造方法は、前記モールドの前記成形面上に犠牲膜を形成し、前記犠牲膜の表面上に前記導電膜を形成し、前記犠牲膜を除去することにより、先端が前記導電膜からなる前記電極から前記モールドを分離する、ことを含んでもよい。
導電膜からなる電極とモールドとの間にある犠牲膜を除去することにより、モールドから電極を分離するときに電極の変形が起こらないため、加工精度を高め、歩留まりを上げることができる。
【0009】
(3)上記目的を達成するための電子部品の製造方法は、前記モールドの材料としての単結晶シリコンウェハを結晶異方性エッチングすることにより錐体側面形状の前記凹部を形成する、ことを含んでもよい。
単結晶シリコンウェハの結晶異方性エッチングではシリコンの結晶方位によってエッチング速度が大きく異なる。このため本発明によると、先鋭な錐体側面形状の凹部を狭小なピッチで高精度に形成することができる。
【0010】
(4)上記目的を達成するための電子部品の製造方法は、単結晶シリコンウェハを結晶異方性エッチングすることにより錐体側面形状の前記凹部の下地となる領域を前記単結晶シリコンウェハの表面に形成し、前記単結晶シリコンウェハの表面の熱酸化により前記凹部を形成する、ことを含んでもよい。
【0011】
シリコンウェハを熱酸化するとウェハの表面上にシリコン酸化膜が堆積する。錐体側面形状の領域が表面に形成されたシリコンウェハを熱酸化すると、熱酸化によって堆積するシリコン酸化膜は、応力の集中した領域で酸化膜の成長速度が遅くなるため、錐体側面形状の領域の底付近において薄くその領域の縁付近において厚くなる。その結果、シリコンウェハに形成した錐体側面形状の領域に対応して形成されるシリコン酸化膜の表面の凹部の内側空間は、シリコンウェハに形成した錐体側面形状の領域に比べてより先鋭な形状になる。したがって本発明によると、電極の突端をより先鋭にすることができる。
【0012】
(5)上記目的を達成するための電子部品の製造方法は、前記導電膜の下層であり前記導電膜の突端部となる下層導電膜を形成し、前記導電膜の上層である上層導電膜からなり前記突端部とともに鏃形の前記電極を形成する軸部を前記突端部の上に形成する、ことを含んでもよい。
【0013】
ここで鏃形が突端部と軸部とからなるとすると、鏃形の電極の断面積は、突端部の先端から軸部に向かって大きくなり、突端部と軸部との境界で小さくなる。なお、これは鏃形の外形の説明であって鏃形の電極の内部構造の説明ではない。電極をこのような鏃形にすることにより電極同士の接合強度が向上する。突端部と軸部との境界における突端部の張り出しが電極を抜けにくくするからである。鏃形の電極を堆積膜によって形成するには、モールドの凹部の内側に形成する導電膜(下層導電膜)によって構成される突端部の上に少なくとも1層の導電膜(上層導電膜)を形成すればよい。すなわち、下層導電膜の上に上層導電膜を積層して電極の積層構造を形成すると、下層導電膜と上層導電膜の輪郭を変えることができるため、突端部の径よりも小さな径の軸部を形成することができる。したがって本発明によると、機械加工技術を用いずに、電極同士の接合強度が高い鏃形の電極を高精度に歩留まりよく高いスループットで形成することができる。
【0014】
(6)上記目的を達成するための電子部品の製造方法は、前記モールドは透光性材料からなり、前記突端部を形成した後に、前記モールド上にネガ型フォトレジスト膜を形成し、前記モールドと前記突端部とをマスクとして前記ネガ型フォトレジスト膜を露光し現像することにより、前記突端部に対応する開口を有するフォトレジストマスクを形成し、前記開口内に前記上層導電膜を形成し、前記フォトレジストマスクを除去した後に前記上層導電膜を等方的にエッチングすることにより前記軸部を形成する、ことを含んでもよい。
【0015】
モールドを透光性材料から形成することにより、モールドと突端部とをマスクとして、モールド上に形成したフォトレジスト膜を露光し現像することにより突端部に対応した開口を有するフォトレジストマスクを形成できる。この開口内に上層導電膜を形成すると、突端部の輪郭と上層導電膜の輪郭とを正確に一致させることができる。フォトレジストマスクを除去した後に上層導電膜を等方的にエッチングすると、突端部の最大径よりも小さな径の柱体形状の軸部を上層導電膜から形成することができる。したがって本発明によると、機械加工技術を用いずに、鏃形の電極を高精度に歩留まりよく高いスループットで形成することができる。
【0016】
(7)上記目的を達成するための電子部品の製造方法は、前記配線要素の上層からなり前記突端部とともに鏃形の前記電極を形成する軸部を前記配線要素の下層の上に形成する、ことを含んでもよい。
本発明では、モールドの凹部内に形成する突端部と基板上に形成する軸部とを接合することにより、鏃形の電極を形成する。すなわち、軸部は基板と一体の配線要素の上層であるから、基板の接合面に対して突出するように形成することができる。そして、このように形成する軸部の突端面を突端部の接合対象面よりも小さく設定する。さらに、突端部と軸部とを接合すると鏃形の電極を形成できる。すでに述べたとおり、電極を鏃形にすることにより電極同士の接合強度が向上する。また、機械加工技術を用いずに軸部を形成できるため、鏃形の電極を高精度に歩留まりよく高いスループットで形成することができる。
【0017】
(8)上記目的を達成するための電子部品の製造方法は、前記導電膜の前記配線要素と接合する層として金、錫またははんだからなる接合層を形成する、ことを含んでもよい。
Au、Sn、はんだなどからなる接合層を、モールド上に形成する導電膜の一部として形成することにより、モールド上に形成した導電膜と基板と一体の配線要素とを接合するために必要な温度や圧力を低減することができる。
【0018】
(9)上記目的を達成するための電子部品の製造方法は、前記配線要素の前記導電膜と接合する層として金、錫またははんだからなる接合層を形成する、ことを含んでもよい。
Au、Sn、はんだなどからなる接合層を基板と一体の配線要素の一部として形成することにより、モールド上に形成した導電膜と基板と一体の配線要素とを接合するために必要な温度や圧力を低減することができる。
【0019】
(10)上記目的を達成するための電子部品の製造方法は、前記配線要素を前記導電膜に接合する前に、前記導電膜の前記配線要素と接合する部分をイオンミリングにより先鋭化する、ことを含んでもよい。
モールド上に形成した導電膜の配線要素との接合部分を先鋭化してからモールド上の導電膜と、基板と一体の配線要素とを接合することにより、接合に必要な温度や圧力を低減することができる。さらに、導電膜の先鋭化にイオンミリングを用いることにより、同時に複数の部分を先鋭化することができ、また、再現性よく導電膜を先鋭化することができる。
【0020】
尚、請求項において「〜上に」というときは、技術的な阻害要因がない限りにおいて「上に中間物を介在させずに」と「〜上に中間物を介在させて」の両方を意味する。また、請求項に記載された動作の順序は、技術的な阻害要因がない限りにおいて記載順に限定されず、同時に実行されても良いし、記載順の逆順に実行されても良いし、連続した順序で実行されなくても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら以下の順に説明する。尚、各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
*************
1.第一実施形態
2.第二実施形態
3.第三実施形態
4.第四実施形態
5.第五実施形態
6.第六実施形態
7.他の実施形態
*************
【0022】
1.第一実施形態
図1から図8は、図9に示す電子部品1の製造工程を示す断面図である。
はじめに図1に示すように錐体側面形状の凹部10aを成形面に有するモールド10を形成する。たとえば、単結晶シリコンウェハである基板の表面(結晶方位100)に、開口11aを有する第一犠牲膜11を形成し、第一犠牲膜11をマスクとして用いて基板の結晶異方性エッチングを行う。その結果、開口11aの下方領域に錐体側面形状の凹部10aが形成され、第一犠牲膜11を除去すると、成形面に凹部10aを有するモールド10が完成する。第一犠牲膜11はたとえば次のように形成される。まず、基板の表面上にSiN膜を堆積させ、続いて、フォトレジスト膜を塗布する。フォトレジスト膜を所定形状に露光し現像することによりSiN膜のエッチングマスクを形成する。次にこのエッチングマスクを用いてSiN膜をエッチングすると、SiN膜からなる第一犠牲膜11を形成することができる。
【0023】
なお、モールド10に凹部を形成する工程において、多階調マスク(ハーフトーンマスクまたはグレートーンマスク)を用いて凹部を有するフォトレジスト膜を基板上に形成し、フォトレジスト膜もろともに基板を異方的にエッチングしてもよい。
【0024】
次に、図2に示すように、モールド10の成形面の上に第二犠牲膜12、導電膜13を順に形成する。第二犠牲膜12は、モールド10と導電膜13とに対して選択的にエッチングできる材料で形成され、導電膜13のめっきシード層としても機能する導電性の膜である。したがってたとえば、モールド10の成形面上にCrとCuを順にスパッタでそれぞれ0.03μm、0.3μmの厚さまで堆積することによって第二犠牲膜12を形成する。CrとCuに代えてTiとTiNとを第二犠牲膜12の材料に用いてもよい。続いて、第二犠牲膜12の表面上にNiを電解めっきによって3μmの厚さまで堆積し、Niからなる導電膜13を形成する。導電膜13は電極を構成する導電膜の下層に相当し、鏃形の突端部となる。導電膜13の膜厚はモールド10の凹部10aが埋まる範囲に設定される。なお、開口11aを有する第一犠牲膜11を除去することなく、第二犠牲膜12を形成してもよい。この場合、モールド10と導電膜13とを分離する後の工程において第一犠牲膜11を第二犠牲膜12とともに除去してもよいし、第一犠牲膜11をモールド10と一体に再利用してもよい。また、導電膜13はWのCVDによる成膜、CuWのMIM(Metal Injection Molding)による成膜など、他の材料と成膜法の組み合わせによって形成することもできる。
【0025】
次に、図3に示すように、モールド10の成形面が露出するとともに導電膜13および第二犠牲膜12がモールド10の凹部10a内に残存する範囲で導電膜13および第二犠牲膜12の表層を除去する。具体的には、研削、研磨、CMPのいずれかによって、またはこれらを組み合わせることによって導電膜13および第二犠牲膜12の表層を除去する。その結果、モールド10の凹部10a内に残存した導電膜13からなる突端部51がモールド10と一体に形成される。
【0026】
次に、図4に示すように、モールド10の上にフォトレジストマスク14を形成する。フォトレジストマスク14は、突端部51の表面を露出させ、突端部51の表面よりも小さな開口14aを有し、鏃形の電極の軸部を形成するための型として機能する。開口14aを突端部51の輪郭の内側に形成することにより、電極を鏃形に形成することができる。
【0027】
次に、図5に示すように、電極を構成する導電膜の上層としての導電膜15および導電膜16をフォトレジストマスク14の開口14aの内側において突端部51の表面上に順に形成する。導電膜15と導電膜16とはフォトレジストマスク14の開口14aの内側に形成されるため柱形状になる。フォトレジストマスク14を除去すると、導電膜15と導電膜16とからなる軸部61と、導電膜13からなる突端部51とからなる鏃形の電極が完成する。導電膜15の材料は抵抗率や剛性や接合強度を勘案して選択され、たとえばNiを電解めっきにより3μmの厚さまで堆積することにより導電膜15が形成される。導電膜16は、基板と一体の配線要素と、モールド上に形成される電極との接合層として機能する。このため、導電膜16の材料は主に接合強度を勘案して選択され、たとえばAuを電解めっきにより0.3μmの厚さまで堆積することにより導電膜16が形成される。
【0028】
図6は、モールド上に形成した鏃形の電極に接合される配線要素110と基板30を示している。基板30には図示しない素子が形成されている。配線要素110は基板30の接合面上に形成され、下層膜としての導電膜31と上層膜としての導電膜32とからなる。導電膜32は、モールド上に形成した電極との接合層として機能する。このため、導電膜32の材料は主に接合強度を勘案して選択され、たとえばAuの電解めっきにより導電膜32が形成される。
【0029】
次に、図7に示すように、基板30の接合面上に備わる配線要素110とモールド10上に形成されている鏃形の電極101とを加熱と加圧によって接合する。導電膜32と導電膜16の組み合わせがAuとSnである場合、共晶結合によって配線要素110と電極101とが接合される。はんだによって配線要素110と電極101とを接合してもよい。
【0030】
次に、図8に示すように、第二犠牲膜12を除去することにより電極101をモールド10から分離する。したがってモールド10は再利用することができる。すなわち、図2から図8について説明した工程を繰り返すことにより、1つのモールド10を用いて繰り返し電子部品1を製造することができる。モールド10を再利用することにより、鏃形の電極101を高いスループットで再現性よく形成することができる。第二犠牲膜12を除去することにより電極101をモールド10から分離すると、電極101が変形しないために加工精度を高め、歩留まりを上げることができる。
【0031】
その結果、図9に示すように、突端の突端部51が導電膜13からなり、軸部61が導電膜15と導電膜16とからなる鏃形の電極101が基板30から接合面に対して垂直方向に突出している電子部品1が完成する。モールド10の凹部10aはフォトリソグラフィ技術によって狭小なピッチで高精度に形成することができるため、本実施形態によると、電極101を狭小なピッチで二次元的に配列し、高精度に歩留まり良く形成することができる。
【0032】
この電子部品1は電極101が接合面に対して垂直方向に突出しているため、電子部品1と図10に示す他の電子部品9とは基板30に対して垂直な方向に積み重ねて結合することができる。そして、電子部品1の鏃形の電極101の先端は、他の電子部品9の電極の表層に絶縁膜92が形成されているとしても、絶縁膜92を突き破り他の電子部品9の電極である導電膜91に突き刺すことができる。したがって、電子部品1と他の電子部品9とは常温下において接続するすることができる。また、電子部品1の電極101は鏃形であるため他の電子部品9の電極91から抜けにくい。
【0033】
図11に示すように、電子部品1と他の電子部品9との間の空隙を樹脂99で埋めてもよい。これにより、電子部品1と他の電子部品9との結合強度を高めることができる。電子部品1と他の電子部品9との間の空隙を埋める樹脂99の材料としては、熱可塑性樹脂が望ましい。電子部品1と他の電子部品9との結合後に、これらを分解して再利用できるからである。
【0034】
2.第二実施形態
図12から図14は図15に示す電子部品2の製造工程を示す断面図である。
はじめに第一実施形態と同様にモールド10を形成し、モールド10の成形面の上に第二犠牲膜12と導電膜13とを形成する。
【0035】
次に図12に示すように、第二犠牲膜12が露出し、導電膜13がモールド10の凹部10aの内側に残存する範囲で導電膜13の表層を除去する。たとえば、ウェットエッチングによって導電膜13の表層を選択的に除去する。その結果、導電膜13からなる突端部52が形成される。
【0036】
図13は、モールド上に形成した突端部52に接合される配線要素111と基板30を示している。配線要素111は、その下層を構成する導電膜31および導電膜32と、その上層を構成する導電膜33とからなる。導電膜33は、基板30の接合面から垂直方向に突出しており、鏃形の電極の軸部62となる。したがって導電膜33の頂面が突端部52の輪郭の内側に収まるように導電膜33が形成される。このような導電膜33の外形は、フォトリソグラフィ技術を用いて形成することができる。導電膜33の材料は接合強度、剛性などを勘案して選択され、たとえばNiを電解めっきにより3μmの厚さまで堆積することにより導電膜33からなる軸部62が形成される。
【0037】
次に図14に示すように、モールド上に形成した突端部52に配線要素111の導電膜33の頂面を加熱と加圧によって接合する。接合を容易にし、接合強度を高めるために、突端部52と配線要素111とにそれぞれ導電性の接合層を形成しておいてもよい。すなわちたとえば、図12に示す状態でAu膜を導電膜13の表面上に形成するとともに、図13に示す導電膜33の頂面上にAu膜を形成しておいてもよい。
【0038】
次に第二犠牲膜12を除去すると、突端部52とモールド10とが分離する。その結果、図15に示すように、導電膜13からなる突端部52と、導電膜33からなる軸部62とからなる鏃形の電極102が基板30の接合面から垂直方向に突出している電子部品2が完成する。
【0039】
3.第三実施形態
図16から図18は図19に示す電子部品3の製造工程を示す断面図である。
はじめに第一実施形態と同様にモールド10を形成した後に第二犠牲膜12を形成する。第二犠牲膜12はたとえばCrをスパッタによって0.3μの厚さまで堆積させることにより形成する。
【0040】
次に図16に示すように、開口18aを有するフォトレジストマスク18を用いて導電膜13からなる突端部53を形成する。突端部53は、第二犠牲膜12との界面が錐体側面形状の凸面であり表面が錐体側面形状の凹面である。導電膜13は、たとえばNiを電解めっきによって1μmの厚さまで堆積することにより形成する。
【0041】
次に、第一実施形態と同様に突端部53が露出する開口を有するフォトレジストマスクを用い、図17に示すように、鏃型の電極を構成する導電膜の上層としての導電膜15と導電膜16とを突端部51の表面上に順に形成し、フォトレジストマスクを除去する。その結果、導電膜15と導電膜16とからなる軸部63と、導電膜13からなる突端部53とからなる鏃形の電極103が形成される。
【0042】
次に、図18に示すように基板40と一体の配線要素113と軸部63とを加熱と加圧によって接合する。図17では、配線要素113が貫通電極を構成するAlなどからなる導電膜41と接合層を構成するAuなどの導電膜42とから構成されている例を示している。このとき、軸部63の配線要素113に接合される部分が先鋭であるため、接合に要する圧力を第一実施形態に比べて低減することができる。
次に、第二犠牲膜12を除去すると、図19に示す電子部品3が完成する。
【0043】
4.第四実施形態
図20から図24は図25に示す電子部品4の製造工程を示す断面図である。
はじめに図20の実線で示すように、単結晶シリコンウェハからなる基板20の表面(結晶方位100)に錐体側面形状の領域20aを結晶異方性エッチングにより形成する。錐体側面形状の領域20aは、モールド23の凹部21aの下地に相当する領域である。
【0044】
次に図20の破線で示すように、基板20の表面を熱酸化することによりシリコン酸化膜21を形成する。応力が集中する領域において酸化膜の成長速度が遅くなるため、シリコン酸化膜21の表面には錐体側面形状の領域20aよりも先鋭な凹部21aが形成され、単結晶シリコンの基板20とシリコン酸化膜21とからなるモールド23が完成する。
【0045】
次に図21に示すように、モールド23の成形面上に犠牲膜22と導電膜13とを順に形成する。犠牲膜22はモールド23の離型処理に用いられるともにめっきシード層として機能する膜である。犠牲膜22はたとえばTiおよびTiNをスパッタ法によって順にそれぞれ0.03μm、0.3μmの厚さまで堆積することにより形成する。
【0046】
次に図22に示すように、導電膜13の表層を第一実施形態と同様にして除去した後に、導電膜13の表面上に導電膜27を形成する。その結果、導電膜13と導電膜27とからなる電極の突端部54がモールド23と一体に形成される。導電膜27は基板と一体の配線要素と、モールド上に形成される電極との接合層として機能する。このため、導電膜27の材料は主に接合強度を勘案して選択され、たとえばAuを無電解めっきにより0.5μmの厚さまで堆積することにより導電膜27が形成される。
【0047】
図23は、モールド上に形成された電極の突端部54に接合される配線要素114と基板30とを示している。配線要素114は基板30の接合面上に形成され、下層膜としての導電膜31と導電膜32と、上層膜としての導電膜64とからなる。導電膜64は、鏃形の電極の軸部になる。したがって導電膜64の頂面が突端部54の輪郭の内側に収まるように導電膜64を形成する。このような導電膜64の材料として、本実施形態でははんだを用いる。
【0048】
次に図24に示すように、モールド上に形成した電極の突端部54に導電膜64からなる電極の軸部の頂面を加熱と加圧によって接合する。
次に犠牲膜22を除去すると、図25に示すように突端部54とモールド23とが分離する。その結果、導電膜13と導電膜27とからなる突端部54と、導電膜64からなる軸部と、からなる鏃形の電極104が基板30の接合面から垂直方向に突出している電子部品4が完成する。
【0049】
本実施形態の製造方法によって得られる電子部品4の電極104の突端部54は他の実施形態の製造方法によって得られる電子部品の電極の突端部に比べて先鋭になる。このため、電子部品4と他の電子部品とを接合するために加える力が低減される。
【0050】
5.第五実施形態
図26から図30は図31に示す電子部品5の製造工程を示す断面図である。
はじめに第一実施形態において説明した図1から図4の工程を実施する。
次に図26に示すようにフォトレジストマスク14の開口14aから露出している導電膜13の表面上に、めっきによってフォトレジストマスク14よりも厚く導電膜15を形成し、導電膜15をフォトレジストマスク14の表面上にオーバーフローさせる。導電膜15のフォトレジストマスク14の表面上にオーバーフローした部分はドーム形状になる。
【0051】
次に導電膜15のフォトレジストマスク14の表面上にオーバーフローした部分をイオンミリングによって図27に示すように先鋭化する。突部に対するイオンミリングではイオンの突入方向に対して傾斜した方向においてエッチング速度が最大になるため、導電膜15のフォトレジストマスク14の表面上にオーバーフローした部分をイオンミリングによって錐体形状にすることができる。
【0052】
次に図28に示すようにフォトレジストマスク14を除去すると鏃形の導電膜15が現れる。すなわち、導電膜15はイオンミリングによって柱体部15bと錐体部15aとからなる鏃形に成形される。
【0053】
図29は、モールド上に形成された導電膜15に接合される配線要素115と基板43とを示している。図29に示す構造は、基板43に凹部43aを形成した後に凹部43aを含む領域に導電膜44と導電膜45とを順に成膜することによって形成される。その結果、導電膜45の表面に凹部45aが形成される。凹部45aの輪郭は導電膜15の柱体部15bの輪郭に内包されるように設定される。
【0054】
次に、モールド上に形成した導電膜15の錐体部15aを配線要素115の凹部45aに押し込み、図30に示すように、導電膜15と配線要素115とを加熱と加圧によって接合する。配線要素115の凹部45aに錐体部15aを押し込むことにより、小さな力で配線要素115に導電膜15を深く突き刺すことができるため、他の実施形態に比べ、配線要素115と導電膜15との接合強度を高めることができる。
【0055】
次に図31に示すように、第二犠牲膜12を除去すると、鏃形の電極105が基板43の接合面から突出している電子部品5とモールド10とが分離する。電子部品5において、導電膜15のうち配線要素115から突出している部分が鏃形の電極105の軸部65を構成し、導電膜13が鏃形の電極105の突端部55を構成する。
【0056】
6.第六実施形態
図32から図34は、第五実施形態において図28に示したモールド上の導電膜の鏃形の部分を他の方法で製造する工程を示す断面図である。
【0057】
本実施形態では、背面露光技術を用いるため、モールド10はフォトリソグラフィの露光工程において透明物質として振る舞うガラスなどの透光性材料から形成する。したがって本実施形態においては、単結晶シリコンの結晶異方性エッチングによってモールド10の成形面の凹部10aを形成することはできない。そこで本実施形態では、多階調マスク(ハーフトーンマスクまたはグレーントーンマスク)を用いてフォトレジスト膜に錐体側面形状の凹部を形成し、そのフォトレジスト膜もろともに透明基板を異方的にエッチングする。すると、フォトレジスト膜の凹部を透明基板に転写することができる。
【0058】
第一実施形態において説明した図2から図3の工程を実施した後に、ネガ型のフォトレジスト膜24をモールド10の成形面上に形成する。フォトレジスト膜24にはたとえば化学増幅型ネガレジストを用いる。続いて図32に示すように、モールド10、第二犠牲膜12および導電膜13をマスクとしてモールド10の背面(成形面の裏面)側からフォトレジスト膜24を露光する。
【0059】
次に、フォトレジスト膜24を現像し、未感光領域24aを除去する。
次に図33に示すように、フォトレジスト膜24の未感光領域24aの除去後に現れる開口24bから露出する導電膜13の表面上に導電膜25、導電膜26を順に形成する。導電膜25は導電膜26に対して選択的に等方性エッチングが可能な材料とする。また導電膜26の材料には導電膜25よりも硬度が高い材料を選択することが望ましい。たとえば導電膜15はCuのめっきによって形成し、導電膜26はNiのめっきによって形成する。
【0060】
次にフォトレジスト膜24の表層を除去して導電膜26をフォトレジスト膜24の表面から突出させる。
次に図34に示すようにフォトレジスト膜24の表面から突出している導電膜26をイオンミリングにより先鋭化する。
次にフォトレジスト膜24を完全に除去した後に、等方性エッチングによって導電膜25の側面の表層を除去すると、図35に示すように第五実施形態と同様の鏃形が導電膜26および導電膜25によって形成される。
【0061】
11.他の実施形態
尚、本発明の技術的範囲は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態で示した材質や寸法や成膜方法やパターン転写方法はあくまで例示であるし、当業者であれば自明である工程の追加や削除や工程順序の入れ替えについては説明が省略されている。例えば、上述した製造工程において、膜の組成、成膜方法、膜の輪郭形成方法、工程順序などは、突起電極に求められる機能に応じた膜材料の組み合わせや、膜厚や、要求される輪郭形状精度などに応じて適宜選択されるものであって、特に限定されない。また、上記実施形態において、電極は他の電子部品の電極に突き刺して使用される突起電極を例示して説明したが、本発明の電子部品の電極は他の電子部品の電極にスナップフィットするいわゆるマイクロコネクタとして使用される形態のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図2】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図3】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図4】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図5】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図6】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図7】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図8】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図9】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図10】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図11】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図12】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図13】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図14】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図15】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図16】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図17】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図18】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図19】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図20】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図21】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図22】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図23】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図24】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図25】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図26】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図27】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図28】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図29】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図30】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図31】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図32】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図33】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図34】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図35】本発明の実施形態にかかる断面図。
【符号の説明】
【0063】
1:電子部品、2:電子部品、3:電子部品、4:電子部品、5:電子部品、10:モールド、10a:凹部、11:第一犠牲膜、11a:開口、12:第二犠牲膜、13:導電膜、14:フォトレジストマスク、14a:開口、15:導電膜、15a:錐体部、15b:柱体部、16:導電膜、18:フォトレジストマスク、18a:開口、20:基板、20a:領域、21:シリコン酸化膜、21a:凹部、22:犠牲膜、23:モールド、24:フォトレジスト膜、24a:未感光領域、24b:開口、25:導電膜、26:導電膜、30:基板、31:導電膜、32:導電膜、33:導電膜、40:基板、41:導電膜、42:導電膜、43:基板、43a:凹部、44:導電膜、45:導電膜、45a:凹部、51:突端部、52:突端部、53:突端部、54:突端部、55:突端部、61:軸部、62:軸部、63:軸部、64:導電膜、65:軸部、91:電極、92:絶縁膜、99:樹脂、101:電極、102:電極、103:電極、104:電極、105:電極、110:配線要素、111:配線要素、112:配線要素、113:配線要素、114:配線要素、115:配線要素
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品の製造方法に関し、特に電子部品同士を接続するための電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの電子部品のそれぞれにおいて狭小な間隔で配列されている配線要素同士を接続するためのマイクロコネクタや先鋭な突起電極が知られている。マイクロコネクタや先鋭な突起電極を用いると、ACF(Anisotropic Conductive Film)もハンダも用いずに、狭小なピッチで配列されている配線要素同士を常温下において接続することが可能になる。特許文献1、2、3、4、5に開示されているマイクロコネクタは、接続時に必要な弾性を持つビーム部が基板の接合面に対して平行に延びる構成である。特許文献6、7、8には、基板の接合面に対して垂直な方向に突出する突起電極の製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開平10−189168号公報
【特許文献2】特開2006−40737号公報
【特許文献3】特開2003−45576号公報
【特許文献4】特開2002−246117号公報
【特許文献5】特開2001−3320144号公報
【特許文献6】特開平5−1520103号公報
【特許文献7】特開2001-267359号公報
【特許文献8】特開2004-363176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献2、3、4、5に開示されているようにビーム部が基板の接合面に対して平行な方向に直線的に延びる構成のマイクロコネクタの場合、ビーム部の軸と垂直な方向にはマイクロコネクタを狭小なピッチで配列できるものの、ビーム部の軸と平行な方向にはマイクロコネクタを狭小なピッチで配列することができず、2つの電子部品を基板に対して垂直な方向に積み重ねて結合することもできないという問題がある。また、特許文献1に開示されているようにマイクロコネクタのビーム部がC字形に湾曲しているマイクロコネクタは、特許文献2、3、4、5に開示されているマイクロコネクタに比べると狭小なピッチで二次元配列でき、基板の接合面に対して垂直な方向に積み重ねて2つの電子部品を結合することができるものの、基板の接合面に対して平行な方向に延びるビーム部を基板上に形成するために製造工程が複雑であり、磁石を組み込むためにマイクロコネクタの微細化が困難になるという問題がある。
【0004】
また、特許文献6、7に開示されているように突起電極を機械的に加工すると加工精度もスループットも歩留まりも低くなるという問題がある。また特許文献8に開示されているように薄膜の積層によって電極の突端部を段階的に細くする方法では、電極の先鋭度を高めることができない。
【0005】
本発明は、これらの問題を解決するために創作されたものであって、2つの電子部品を基板と垂直な方向に積み重ね、狭小なピッチで二次元的に配列されている配線要素同士を常温下で接続するための電極を備える電子部品を高いスループットで高精度に歩留まりよく製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するための電子部品の製造方法は、凹部が形成されているモールドの成形面上に導電膜を形成し、基板の接合面に備わる配線要素を前記導電膜に接合し、突端が前記導電膜からなる電極が前記基板から前記接合面に対して垂直方向に突出している電子部品を前記モールドから分離する、ことを含む。
【0007】
モールドの凹部上に導電膜を形成すると凹部の立体形状が導電膜の底面に転写される。このように形成された導電膜に基板と一体の配線要素を接合した状態で導電膜がモールドから分離されると、導電膜には接合面に対して垂直方向に基板から突出している突端部が現れる。モールドの凹部は、微細加工技術を用いることにより、底が点状になる先細りの形状に形成できるとともに、二次元的に狭小なピッチで配列することができ高精度に形成可能である。したがって本発明によると、導電膜の突端部を先鋭に形成するとともにその突端部を狭小なピッチで配列することができる。導電膜の突端部は、電子部品の基板と一体の電極の突端部となる。この電極は基板の接合面に対して垂直方向に突出しているため、2つの電子部品を基板と垂直な方向に積み重ねて2つの電子部品を結合することができる。そして突端部が先鋭であるため、ACFもハンダも用いずに2つの電子部品の配線要素同士を常温化において接続することが可能である。さらに、導電膜から分離されたモールドは再利用できるため、本発明によると、そのような電子部品を高いスループットで再現性よく製造することができる。したがって本発明によると、2つの電子部品の配線要素同士を常温化において接続することが可能であり狭小なピッチで配列された電極を備える電子部品を高精度に歩留まりよく製造することができる。
【0008】
(2)上記目的を達成するための電子部品の製造方法は、前記モールドの前記成形面上に犠牲膜を形成し、前記犠牲膜の表面上に前記導電膜を形成し、前記犠牲膜を除去することにより、先端が前記導電膜からなる前記電極から前記モールドを分離する、ことを含んでもよい。
導電膜からなる電極とモールドとの間にある犠牲膜を除去することにより、モールドから電極を分離するときに電極の変形が起こらないため、加工精度を高め、歩留まりを上げることができる。
【0009】
(3)上記目的を達成するための電子部品の製造方法は、前記モールドの材料としての単結晶シリコンウェハを結晶異方性エッチングすることにより錐体側面形状の前記凹部を形成する、ことを含んでもよい。
単結晶シリコンウェハの結晶異方性エッチングではシリコンの結晶方位によってエッチング速度が大きく異なる。このため本発明によると、先鋭な錐体側面形状の凹部を狭小なピッチで高精度に形成することができる。
【0010】
(4)上記目的を達成するための電子部品の製造方法は、単結晶シリコンウェハを結晶異方性エッチングすることにより錐体側面形状の前記凹部の下地となる領域を前記単結晶シリコンウェハの表面に形成し、前記単結晶シリコンウェハの表面の熱酸化により前記凹部を形成する、ことを含んでもよい。
【0011】
シリコンウェハを熱酸化するとウェハの表面上にシリコン酸化膜が堆積する。錐体側面形状の領域が表面に形成されたシリコンウェハを熱酸化すると、熱酸化によって堆積するシリコン酸化膜は、応力の集中した領域で酸化膜の成長速度が遅くなるため、錐体側面形状の領域の底付近において薄くその領域の縁付近において厚くなる。その結果、シリコンウェハに形成した錐体側面形状の領域に対応して形成されるシリコン酸化膜の表面の凹部の内側空間は、シリコンウェハに形成した錐体側面形状の領域に比べてより先鋭な形状になる。したがって本発明によると、電極の突端をより先鋭にすることができる。
【0012】
(5)上記目的を達成するための電子部品の製造方法は、前記導電膜の下層であり前記導電膜の突端部となる下層導電膜を形成し、前記導電膜の上層である上層導電膜からなり前記突端部とともに鏃形の前記電極を形成する軸部を前記突端部の上に形成する、ことを含んでもよい。
【0013】
ここで鏃形が突端部と軸部とからなるとすると、鏃形の電極の断面積は、突端部の先端から軸部に向かって大きくなり、突端部と軸部との境界で小さくなる。なお、これは鏃形の外形の説明であって鏃形の電極の内部構造の説明ではない。電極をこのような鏃形にすることにより電極同士の接合強度が向上する。突端部と軸部との境界における突端部の張り出しが電極を抜けにくくするからである。鏃形の電極を堆積膜によって形成するには、モールドの凹部の内側に形成する導電膜(下層導電膜)によって構成される突端部の上に少なくとも1層の導電膜(上層導電膜)を形成すればよい。すなわち、下層導電膜の上に上層導電膜を積層して電極の積層構造を形成すると、下層導電膜と上層導電膜の輪郭を変えることができるため、突端部の径よりも小さな径の軸部を形成することができる。したがって本発明によると、機械加工技術を用いずに、電極同士の接合強度が高い鏃形の電極を高精度に歩留まりよく高いスループットで形成することができる。
【0014】
(6)上記目的を達成するための電子部品の製造方法は、前記モールドは透光性材料からなり、前記突端部を形成した後に、前記モールド上にネガ型フォトレジスト膜を形成し、前記モールドと前記突端部とをマスクとして前記ネガ型フォトレジスト膜を露光し現像することにより、前記突端部に対応する開口を有するフォトレジストマスクを形成し、前記開口内に前記上層導電膜を形成し、前記フォトレジストマスクを除去した後に前記上層導電膜を等方的にエッチングすることにより前記軸部を形成する、ことを含んでもよい。
【0015】
モールドを透光性材料から形成することにより、モールドと突端部とをマスクとして、モールド上に形成したフォトレジスト膜を露光し現像することにより突端部に対応した開口を有するフォトレジストマスクを形成できる。この開口内に上層導電膜を形成すると、突端部の輪郭と上層導電膜の輪郭とを正確に一致させることができる。フォトレジストマスクを除去した後に上層導電膜を等方的にエッチングすると、突端部の最大径よりも小さな径の柱体形状の軸部を上層導電膜から形成することができる。したがって本発明によると、機械加工技術を用いずに、鏃形の電極を高精度に歩留まりよく高いスループットで形成することができる。
【0016】
(7)上記目的を達成するための電子部品の製造方法は、前記配線要素の上層からなり前記突端部とともに鏃形の前記電極を形成する軸部を前記配線要素の下層の上に形成する、ことを含んでもよい。
本発明では、モールドの凹部内に形成する突端部と基板上に形成する軸部とを接合することにより、鏃形の電極を形成する。すなわち、軸部は基板と一体の配線要素の上層であるから、基板の接合面に対して突出するように形成することができる。そして、このように形成する軸部の突端面を突端部の接合対象面よりも小さく設定する。さらに、突端部と軸部とを接合すると鏃形の電極を形成できる。すでに述べたとおり、電極を鏃形にすることにより電極同士の接合強度が向上する。また、機械加工技術を用いずに軸部を形成できるため、鏃形の電極を高精度に歩留まりよく高いスループットで形成することができる。
【0017】
(8)上記目的を達成するための電子部品の製造方法は、前記導電膜の前記配線要素と接合する層として金、錫またははんだからなる接合層を形成する、ことを含んでもよい。
Au、Sn、はんだなどからなる接合層を、モールド上に形成する導電膜の一部として形成することにより、モールド上に形成した導電膜と基板と一体の配線要素とを接合するために必要な温度や圧力を低減することができる。
【0018】
(9)上記目的を達成するための電子部品の製造方法は、前記配線要素の前記導電膜と接合する層として金、錫またははんだからなる接合層を形成する、ことを含んでもよい。
Au、Sn、はんだなどからなる接合層を基板と一体の配線要素の一部として形成することにより、モールド上に形成した導電膜と基板と一体の配線要素とを接合するために必要な温度や圧力を低減することができる。
【0019】
(10)上記目的を達成するための電子部品の製造方法は、前記配線要素を前記導電膜に接合する前に、前記導電膜の前記配線要素と接合する部分をイオンミリングにより先鋭化する、ことを含んでもよい。
モールド上に形成した導電膜の配線要素との接合部分を先鋭化してからモールド上の導電膜と、基板と一体の配線要素とを接合することにより、接合に必要な温度や圧力を低減することができる。さらに、導電膜の先鋭化にイオンミリングを用いることにより、同時に複数の部分を先鋭化することができ、また、再現性よく導電膜を先鋭化することができる。
【0020】
尚、請求項において「〜上に」というときは、技術的な阻害要因がない限りにおいて「上に中間物を介在させずに」と「〜上に中間物を介在させて」の両方を意味する。また、請求項に記載された動作の順序は、技術的な阻害要因がない限りにおいて記載順に限定されず、同時に実行されても良いし、記載順の逆順に実行されても良いし、連続した順序で実行されなくても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら以下の順に説明する。尚、各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
*************
1.第一実施形態
2.第二実施形態
3.第三実施形態
4.第四実施形態
5.第五実施形態
6.第六実施形態
7.他の実施形態
*************
【0022】
1.第一実施形態
図1から図8は、図9に示す電子部品1の製造工程を示す断面図である。
はじめに図1に示すように錐体側面形状の凹部10aを成形面に有するモールド10を形成する。たとえば、単結晶シリコンウェハである基板の表面(結晶方位100)に、開口11aを有する第一犠牲膜11を形成し、第一犠牲膜11をマスクとして用いて基板の結晶異方性エッチングを行う。その結果、開口11aの下方領域に錐体側面形状の凹部10aが形成され、第一犠牲膜11を除去すると、成形面に凹部10aを有するモールド10が完成する。第一犠牲膜11はたとえば次のように形成される。まず、基板の表面上にSiN膜を堆積させ、続いて、フォトレジスト膜を塗布する。フォトレジスト膜を所定形状に露光し現像することによりSiN膜のエッチングマスクを形成する。次にこのエッチングマスクを用いてSiN膜をエッチングすると、SiN膜からなる第一犠牲膜11を形成することができる。
【0023】
なお、モールド10に凹部を形成する工程において、多階調マスク(ハーフトーンマスクまたはグレートーンマスク)を用いて凹部を有するフォトレジスト膜を基板上に形成し、フォトレジスト膜もろともに基板を異方的にエッチングしてもよい。
【0024】
次に、図2に示すように、モールド10の成形面の上に第二犠牲膜12、導電膜13を順に形成する。第二犠牲膜12は、モールド10と導電膜13とに対して選択的にエッチングできる材料で形成され、導電膜13のめっきシード層としても機能する導電性の膜である。したがってたとえば、モールド10の成形面上にCrとCuを順にスパッタでそれぞれ0.03μm、0.3μmの厚さまで堆積することによって第二犠牲膜12を形成する。CrとCuに代えてTiとTiNとを第二犠牲膜12の材料に用いてもよい。続いて、第二犠牲膜12の表面上にNiを電解めっきによって3μmの厚さまで堆積し、Niからなる導電膜13を形成する。導電膜13は電極を構成する導電膜の下層に相当し、鏃形の突端部となる。導電膜13の膜厚はモールド10の凹部10aが埋まる範囲に設定される。なお、開口11aを有する第一犠牲膜11を除去することなく、第二犠牲膜12を形成してもよい。この場合、モールド10と導電膜13とを分離する後の工程において第一犠牲膜11を第二犠牲膜12とともに除去してもよいし、第一犠牲膜11をモールド10と一体に再利用してもよい。また、導電膜13はWのCVDによる成膜、CuWのMIM(Metal Injection Molding)による成膜など、他の材料と成膜法の組み合わせによって形成することもできる。
【0025】
次に、図3に示すように、モールド10の成形面が露出するとともに導電膜13および第二犠牲膜12がモールド10の凹部10a内に残存する範囲で導電膜13および第二犠牲膜12の表層を除去する。具体的には、研削、研磨、CMPのいずれかによって、またはこれらを組み合わせることによって導電膜13および第二犠牲膜12の表層を除去する。その結果、モールド10の凹部10a内に残存した導電膜13からなる突端部51がモールド10と一体に形成される。
【0026】
次に、図4に示すように、モールド10の上にフォトレジストマスク14を形成する。フォトレジストマスク14は、突端部51の表面を露出させ、突端部51の表面よりも小さな開口14aを有し、鏃形の電極の軸部を形成するための型として機能する。開口14aを突端部51の輪郭の内側に形成することにより、電極を鏃形に形成することができる。
【0027】
次に、図5に示すように、電極を構成する導電膜の上層としての導電膜15および導電膜16をフォトレジストマスク14の開口14aの内側において突端部51の表面上に順に形成する。導電膜15と導電膜16とはフォトレジストマスク14の開口14aの内側に形成されるため柱形状になる。フォトレジストマスク14を除去すると、導電膜15と導電膜16とからなる軸部61と、導電膜13からなる突端部51とからなる鏃形の電極が完成する。導電膜15の材料は抵抗率や剛性や接合強度を勘案して選択され、たとえばNiを電解めっきにより3μmの厚さまで堆積することにより導電膜15が形成される。導電膜16は、基板と一体の配線要素と、モールド上に形成される電極との接合層として機能する。このため、導電膜16の材料は主に接合強度を勘案して選択され、たとえばAuを電解めっきにより0.3μmの厚さまで堆積することにより導電膜16が形成される。
【0028】
図6は、モールド上に形成した鏃形の電極に接合される配線要素110と基板30を示している。基板30には図示しない素子が形成されている。配線要素110は基板30の接合面上に形成され、下層膜としての導電膜31と上層膜としての導電膜32とからなる。導電膜32は、モールド上に形成した電極との接合層として機能する。このため、導電膜32の材料は主に接合強度を勘案して選択され、たとえばAuの電解めっきにより導電膜32が形成される。
【0029】
次に、図7に示すように、基板30の接合面上に備わる配線要素110とモールド10上に形成されている鏃形の電極101とを加熱と加圧によって接合する。導電膜32と導電膜16の組み合わせがAuとSnである場合、共晶結合によって配線要素110と電極101とが接合される。はんだによって配線要素110と電極101とを接合してもよい。
【0030】
次に、図8に示すように、第二犠牲膜12を除去することにより電極101をモールド10から分離する。したがってモールド10は再利用することができる。すなわち、図2から図8について説明した工程を繰り返すことにより、1つのモールド10を用いて繰り返し電子部品1を製造することができる。モールド10を再利用することにより、鏃形の電極101を高いスループットで再現性よく形成することができる。第二犠牲膜12を除去することにより電極101をモールド10から分離すると、電極101が変形しないために加工精度を高め、歩留まりを上げることができる。
【0031】
その結果、図9に示すように、突端の突端部51が導電膜13からなり、軸部61が導電膜15と導電膜16とからなる鏃形の電極101が基板30から接合面に対して垂直方向に突出している電子部品1が完成する。モールド10の凹部10aはフォトリソグラフィ技術によって狭小なピッチで高精度に形成することができるため、本実施形態によると、電極101を狭小なピッチで二次元的に配列し、高精度に歩留まり良く形成することができる。
【0032】
この電子部品1は電極101が接合面に対して垂直方向に突出しているため、電子部品1と図10に示す他の電子部品9とは基板30に対して垂直な方向に積み重ねて結合することができる。そして、電子部品1の鏃形の電極101の先端は、他の電子部品9の電極の表層に絶縁膜92が形成されているとしても、絶縁膜92を突き破り他の電子部品9の電極である導電膜91に突き刺すことができる。したがって、電子部品1と他の電子部品9とは常温下において接続するすることができる。また、電子部品1の電極101は鏃形であるため他の電子部品9の電極91から抜けにくい。
【0033】
図11に示すように、電子部品1と他の電子部品9との間の空隙を樹脂99で埋めてもよい。これにより、電子部品1と他の電子部品9との結合強度を高めることができる。電子部品1と他の電子部品9との間の空隙を埋める樹脂99の材料としては、熱可塑性樹脂が望ましい。電子部品1と他の電子部品9との結合後に、これらを分解して再利用できるからである。
【0034】
2.第二実施形態
図12から図14は図15に示す電子部品2の製造工程を示す断面図である。
はじめに第一実施形態と同様にモールド10を形成し、モールド10の成形面の上に第二犠牲膜12と導電膜13とを形成する。
【0035】
次に図12に示すように、第二犠牲膜12が露出し、導電膜13がモールド10の凹部10aの内側に残存する範囲で導電膜13の表層を除去する。たとえば、ウェットエッチングによって導電膜13の表層を選択的に除去する。その結果、導電膜13からなる突端部52が形成される。
【0036】
図13は、モールド上に形成した突端部52に接合される配線要素111と基板30を示している。配線要素111は、その下層を構成する導電膜31および導電膜32と、その上層を構成する導電膜33とからなる。導電膜33は、基板30の接合面から垂直方向に突出しており、鏃形の電極の軸部62となる。したがって導電膜33の頂面が突端部52の輪郭の内側に収まるように導電膜33が形成される。このような導電膜33の外形は、フォトリソグラフィ技術を用いて形成することができる。導電膜33の材料は接合強度、剛性などを勘案して選択され、たとえばNiを電解めっきにより3μmの厚さまで堆積することにより導電膜33からなる軸部62が形成される。
【0037】
次に図14に示すように、モールド上に形成した突端部52に配線要素111の導電膜33の頂面を加熱と加圧によって接合する。接合を容易にし、接合強度を高めるために、突端部52と配線要素111とにそれぞれ導電性の接合層を形成しておいてもよい。すなわちたとえば、図12に示す状態でAu膜を導電膜13の表面上に形成するとともに、図13に示す導電膜33の頂面上にAu膜を形成しておいてもよい。
【0038】
次に第二犠牲膜12を除去すると、突端部52とモールド10とが分離する。その結果、図15に示すように、導電膜13からなる突端部52と、導電膜33からなる軸部62とからなる鏃形の電極102が基板30の接合面から垂直方向に突出している電子部品2が完成する。
【0039】
3.第三実施形態
図16から図18は図19に示す電子部品3の製造工程を示す断面図である。
はじめに第一実施形態と同様にモールド10を形成した後に第二犠牲膜12を形成する。第二犠牲膜12はたとえばCrをスパッタによって0.3μの厚さまで堆積させることにより形成する。
【0040】
次に図16に示すように、開口18aを有するフォトレジストマスク18を用いて導電膜13からなる突端部53を形成する。突端部53は、第二犠牲膜12との界面が錐体側面形状の凸面であり表面が錐体側面形状の凹面である。導電膜13は、たとえばNiを電解めっきによって1μmの厚さまで堆積することにより形成する。
【0041】
次に、第一実施形態と同様に突端部53が露出する開口を有するフォトレジストマスクを用い、図17に示すように、鏃型の電極を構成する導電膜の上層としての導電膜15と導電膜16とを突端部51の表面上に順に形成し、フォトレジストマスクを除去する。その結果、導電膜15と導電膜16とからなる軸部63と、導電膜13からなる突端部53とからなる鏃形の電極103が形成される。
【0042】
次に、図18に示すように基板40と一体の配線要素113と軸部63とを加熱と加圧によって接合する。図17では、配線要素113が貫通電極を構成するAlなどからなる導電膜41と接合層を構成するAuなどの導電膜42とから構成されている例を示している。このとき、軸部63の配線要素113に接合される部分が先鋭であるため、接合に要する圧力を第一実施形態に比べて低減することができる。
次に、第二犠牲膜12を除去すると、図19に示す電子部品3が完成する。
【0043】
4.第四実施形態
図20から図24は図25に示す電子部品4の製造工程を示す断面図である。
はじめに図20の実線で示すように、単結晶シリコンウェハからなる基板20の表面(結晶方位100)に錐体側面形状の領域20aを結晶異方性エッチングにより形成する。錐体側面形状の領域20aは、モールド23の凹部21aの下地に相当する領域である。
【0044】
次に図20の破線で示すように、基板20の表面を熱酸化することによりシリコン酸化膜21を形成する。応力が集中する領域において酸化膜の成長速度が遅くなるため、シリコン酸化膜21の表面には錐体側面形状の領域20aよりも先鋭な凹部21aが形成され、単結晶シリコンの基板20とシリコン酸化膜21とからなるモールド23が完成する。
【0045】
次に図21に示すように、モールド23の成形面上に犠牲膜22と導電膜13とを順に形成する。犠牲膜22はモールド23の離型処理に用いられるともにめっきシード層として機能する膜である。犠牲膜22はたとえばTiおよびTiNをスパッタ法によって順にそれぞれ0.03μm、0.3μmの厚さまで堆積することにより形成する。
【0046】
次に図22に示すように、導電膜13の表層を第一実施形態と同様にして除去した後に、導電膜13の表面上に導電膜27を形成する。その結果、導電膜13と導電膜27とからなる電極の突端部54がモールド23と一体に形成される。導電膜27は基板と一体の配線要素と、モールド上に形成される電極との接合層として機能する。このため、導電膜27の材料は主に接合強度を勘案して選択され、たとえばAuを無電解めっきにより0.5μmの厚さまで堆積することにより導電膜27が形成される。
【0047】
図23は、モールド上に形成された電極の突端部54に接合される配線要素114と基板30とを示している。配線要素114は基板30の接合面上に形成され、下層膜としての導電膜31と導電膜32と、上層膜としての導電膜64とからなる。導電膜64は、鏃形の電極の軸部になる。したがって導電膜64の頂面が突端部54の輪郭の内側に収まるように導電膜64を形成する。このような導電膜64の材料として、本実施形態でははんだを用いる。
【0048】
次に図24に示すように、モールド上に形成した電極の突端部54に導電膜64からなる電極の軸部の頂面を加熱と加圧によって接合する。
次に犠牲膜22を除去すると、図25に示すように突端部54とモールド23とが分離する。その結果、導電膜13と導電膜27とからなる突端部54と、導電膜64からなる軸部と、からなる鏃形の電極104が基板30の接合面から垂直方向に突出している電子部品4が完成する。
【0049】
本実施形態の製造方法によって得られる電子部品4の電極104の突端部54は他の実施形態の製造方法によって得られる電子部品の電極の突端部に比べて先鋭になる。このため、電子部品4と他の電子部品とを接合するために加える力が低減される。
【0050】
5.第五実施形態
図26から図30は図31に示す電子部品5の製造工程を示す断面図である。
はじめに第一実施形態において説明した図1から図4の工程を実施する。
次に図26に示すようにフォトレジストマスク14の開口14aから露出している導電膜13の表面上に、めっきによってフォトレジストマスク14よりも厚く導電膜15を形成し、導電膜15をフォトレジストマスク14の表面上にオーバーフローさせる。導電膜15のフォトレジストマスク14の表面上にオーバーフローした部分はドーム形状になる。
【0051】
次に導電膜15のフォトレジストマスク14の表面上にオーバーフローした部分をイオンミリングによって図27に示すように先鋭化する。突部に対するイオンミリングではイオンの突入方向に対して傾斜した方向においてエッチング速度が最大になるため、導電膜15のフォトレジストマスク14の表面上にオーバーフローした部分をイオンミリングによって錐体形状にすることができる。
【0052】
次に図28に示すようにフォトレジストマスク14を除去すると鏃形の導電膜15が現れる。すなわち、導電膜15はイオンミリングによって柱体部15bと錐体部15aとからなる鏃形に成形される。
【0053】
図29は、モールド上に形成された導電膜15に接合される配線要素115と基板43とを示している。図29に示す構造は、基板43に凹部43aを形成した後に凹部43aを含む領域に導電膜44と導電膜45とを順に成膜することによって形成される。その結果、導電膜45の表面に凹部45aが形成される。凹部45aの輪郭は導電膜15の柱体部15bの輪郭に内包されるように設定される。
【0054】
次に、モールド上に形成した導電膜15の錐体部15aを配線要素115の凹部45aに押し込み、図30に示すように、導電膜15と配線要素115とを加熱と加圧によって接合する。配線要素115の凹部45aに錐体部15aを押し込むことにより、小さな力で配線要素115に導電膜15を深く突き刺すことができるため、他の実施形態に比べ、配線要素115と導電膜15との接合強度を高めることができる。
【0055】
次に図31に示すように、第二犠牲膜12を除去すると、鏃形の電極105が基板43の接合面から突出している電子部品5とモールド10とが分離する。電子部品5において、導電膜15のうち配線要素115から突出している部分が鏃形の電極105の軸部65を構成し、導電膜13が鏃形の電極105の突端部55を構成する。
【0056】
6.第六実施形態
図32から図34は、第五実施形態において図28に示したモールド上の導電膜の鏃形の部分を他の方法で製造する工程を示す断面図である。
【0057】
本実施形態では、背面露光技術を用いるため、モールド10はフォトリソグラフィの露光工程において透明物質として振る舞うガラスなどの透光性材料から形成する。したがって本実施形態においては、単結晶シリコンの結晶異方性エッチングによってモールド10の成形面の凹部10aを形成することはできない。そこで本実施形態では、多階調マスク(ハーフトーンマスクまたはグレーントーンマスク)を用いてフォトレジスト膜に錐体側面形状の凹部を形成し、そのフォトレジスト膜もろともに透明基板を異方的にエッチングする。すると、フォトレジスト膜の凹部を透明基板に転写することができる。
【0058】
第一実施形態において説明した図2から図3の工程を実施した後に、ネガ型のフォトレジスト膜24をモールド10の成形面上に形成する。フォトレジスト膜24にはたとえば化学増幅型ネガレジストを用いる。続いて図32に示すように、モールド10、第二犠牲膜12および導電膜13をマスクとしてモールド10の背面(成形面の裏面)側からフォトレジスト膜24を露光する。
【0059】
次に、フォトレジスト膜24を現像し、未感光領域24aを除去する。
次に図33に示すように、フォトレジスト膜24の未感光領域24aの除去後に現れる開口24bから露出する導電膜13の表面上に導電膜25、導電膜26を順に形成する。導電膜25は導電膜26に対して選択的に等方性エッチングが可能な材料とする。また導電膜26の材料には導電膜25よりも硬度が高い材料を選択することが望ましい。たとえば導電膜15はCuのめっきによって形成し、導電膜26はNiのめっきによって形成する。
【0060】
次にフォトレジスト膜24の表層を除去して導電膜26をフォトレジスト膜24の表面から突出させる。
次に図34に示すようにフォトレジスト膜24の表面から突出している導電膜26をイオンミリングにより先鋭化する。
次にフォトレジスト膜24を完全に除去した後に、等方性エッチングによって導電膜25の側面の表層を除去すると、図35に示すように第五実施形態と同様の鏃形が導電膜26および導電膜25によって形成される。
【0061】
11.他の実施形態
尚、本発明の技術的範囲は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態で示した材質や寸法や成膜方法やパターン転写方法はあくまで例示であるし、当業者であれば自明である工程の追加や削除や工程順序の入れ替えについては説明が省略されている。例えば、上述した製造工程において、膜の組成、成膜方法、膜の輪郭形成方法、工程順序などは、突起電極に求められる機能に応じた膜材料の組み合わせや、膜厚や、要求される輪郭形状精度などに応じて適宜選択されるものであって、特に限定されない。また、上記実施形態において、電極は他の電子部品の電極に突き刺して使用される突起電極を例示して説明したが、本発明の電子部品の電極は他の電子部品の電極にスナップフィットするいわゆるマイクロコネクタとして使用される形態のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図2】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図3】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図4】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図5】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図6】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図7】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図8】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図9】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図10】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図11】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図12】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図13】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図14】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図15】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図16】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図17】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図18】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図19】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図20】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図21】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図22】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図23】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図24】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図25】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図26】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図27】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図28】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図29】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図30】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図31】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図32】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図33】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図34】本発明の実施形態にかかる断面図。
【図35】本発明の実施形態にかかる断面図。
【符号の説明】
【0063】
1:電子部品、2:電子部品、3:電子部品、4:電子部品、5:電子部品、10:モールド、10a:凹部、11:第一犠牲膜、11a:開口、12:第二犠牲膜、13:導電膜、14:フォトレジストマスク、14a:開口、15:導電膜、15a:錐体部、15b:柱体部、16:導電膜、18:フォトレジストマスク、18a:開口、20:基板、20a:領域、21:シリコン酸化膜、21a:凹部、22:犠牲膜、23:モールド、24:フォトレジスト膜、24a:未感光領域、24b:開口、25:導電膜、26:導電膜、30:基板、31:導電膜、32:導電膜、33:導電膜、40:基板、41:導電膜、42:導電膜、43:基板、43a:凹部、44:導電膜、45:導電膜、45a:凹部、51:突端部、52:突端部、53:突端部、54:突端部、55:突端部、61:軸部、62:軸部、63:軸部、64:導電膜、65:軸部、91:電極、92:絶縁膜、99:樹脂、101:電極、102:電極、103:電極、104:電極、105:電極、110:配線要素、111:配線要素、112:配線要素、113:配線要素、114:配線要素、115:配線要素
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部が形成されているモールドの成形面上に導電膜を形成し、
基板の接合面に備わる配線要素を前記導電膜に接合し、
突端が前記導電膜からなる電極が前記基板から前記接合面に対して垂直方向に突出している電子部品を前記モールドから分離する、
ことを含む電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記モールドの前記成形面上に犠牲膜を形成し、
前記犠牲膜の表面上に前記導電膜を形成し、
前記犠牲膜を除去することにより、先端が前記導電膜からなる前記電極から前記モールドを分離する、
ことを含む請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記モールドの材料としての単結晶シリコンウェハを結晶異方性エッチングすることにより錐体側面形状の前記凹部を形成する、
ことを含む請求項1または2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
単結晶シリコンウェハを結晶異方性エッチングすることにより錐体側面形状の前記凹部の下地となる領域を前記単結晶シリコンウェハの表面に形成し、
前記単結晶シリコンウェハの表面の熱酸化により前記凹部を形成する、
ことを含む請求項1または2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記導電膜の下層であり前記導電膜の突端部となる下層導電膜を形成し、
前記導電膜の上層である上層導電膜からなり前記突端部とともに鏃形の前記電極を形成する軸部を前記突端部の上に形成する、
ことを含む請求項1から4のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記モールドは透光性材料からなり、
前記突端部を形成した後に、前記モールド上にネガ型フォトレジスト膜を形成し、
前記モールドと前記突端部とをマスクとして前記ネガ型フォトレジスト膜を露光し現像することにより、前記突端部に対応する開口を有するフォトレジストマスクを形成し、
前記開口内に前記上層導電膜を形成し、
前記フォトレジストマスクを除去した後に前記上層導電膜を等方的にエッチングすることにより前記軸部を形成する、
ことを含む請求項5に記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記配線要素の上層からなり前記突端部とともに鏃形の前記電極を形成する軸部を前記配線要素の下層の上に形成する、
ことを含む請求項1から4のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記導電膜の前記配線要素と接合する層として金、錫またははんだからなる接合層を形成する、
ことを含む請求項1から7のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記配線要素の前記導電膜と接合する層として金、錫またははんだからなる接合層を形成する、
ことを含む請求項1から7のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項10】
前記配線要素を前記導電膜に接合する前に、前記導電膜の前記配線要素と接合する部分をイオンミリングにより先鋭化する、
ことを含む請求項1から6のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項1】
凹部が形成されているモールドの成形面上に導電膜を形成し、
基板の接合面に備わる配線要素を前記導電膜に接合し、
突端が前記導電膜からなる電極が前記基板から前記接合面に対して垂直方向に突出している電子部品を前記モールドから分離する、
ことを含む電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記モールドの前記成形面上に犠牲膜を形成し、
前記犠牲膜の表面上に前記導電膜を形成し、
前記犠牲膜を除去することにより、先端が前記導電膜からなる前記電極から前記モールドを分離する、
ことを含む請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記モールドの材料としての単結晶シリコンウェハを結晶異方性エッチングすることにより錐体側面形状の前記凹部を形成する、
ことを含む請求項1または2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
単結晶シリコンウェハを結晶異方性エッチングすることにより錐体側面形状の前記凹部の下地となる領域を前記単結晶シリコンウェハの表面に形成し、
前記単結晶シリコンウェハの表面の熱酸化により前記凹部を形成する、
ことを含む請求項1または2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記導電膜の下層であり前記導電膜の突端部となる下層導電膜を形成し、
前記導電膜の上層である上層導電膜からなり前記突端部とともに鏃形の前記電極を形成する軸部を前記突端部の上に形成する、
ことを含む請求項1から4のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記モールドは透光性材料からなり、
前記突端部を形成した後に、前記モールド上にネガ型フォトレジスト膜を形成し、
前記モールドと前記突端部とをマスクとして前記ネガ型フォトレジスト膜を露光し現像することにより、前記突端部に対応する開口を有するフォトレジストマスクを形成し、
前記開口内に前記上層導電膜を形成し、
前記フォトレジストマスクを除去した後に前記上層導電膜を等方的にエッチングすることにより前記軸部を形成する、
ことを含む請求項5に記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記配線要素の上層からなり前記突端部とともに鏃形の前記電極を形成する軸部を前記配線要素の下層の上に形成する、
ことを含む請求項1から4のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記導電膜の前記配線要素と接合する層として金、錫またははんだからなる接合層を形成する、
ことを含む請求項1から7のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記配線要素の前記導電膜と接合する層として金、錫またははんだからなる接合層を形成する、
ことを含む請求項1から7のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項10】
前記配線要素を前記導電膜に接合する前に、前記導電膜の前記配線要素と接合する部分をイオンミリングにより先鋭化する、
ことを含む請求項1から6のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【公開番号】特開2009−43891(P2009−43891A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206657(P2007−206657)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
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