説明

電子部品の製造方法

【課題】フォトリソグラフィ工法によって、識別性に優れた色の濃い方向識別マークを形成できる電子部品の製造方法を提供することである。
【解決手段】開口H1が設けられている絶縁体層116aを準備する。絶縁体層116aの裏面上及び開口H1内に感光性着色ペースト115を塗布する。感光性着色ペースト115の開口H1を包含する領域に対して露光を行う。感光性着色ペースト115を現像して絶縁体層116aに方向識別マーク15を形成する。絶縁体層116a〜116jが積層されてなるマザー積層体であって、絶縁体層116aがz軸方向の正方向側の端に積層されているマザー積層体を形成する。マザー積層体を個別の積層体にカットした後、積層体を焼成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法に関し、より特定的には、電子部品の方向を識別するための方向識別マークを備えている電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子部品の製造方法としては、例えば、特許文献1に記載の積層型電子部品の製造方法が知られている。特許文献1に記載の積層型電子部品の製造方法では、積層体の上面にフォトリソグラフィ工法により、積層型電子部品の方向を識別するためのマーカーを形成している。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の積層型電子部品の製造方法は、識別性に優れた色の濃いマーカーを形成することが困難であるという問題を有している。より詳細には、積層型電子部品の方向を正確に識別するためには、マーカーの色は濃い方が望ましい。マーカーの色を濃くする方法としては、マーカーの着色成分量を多くする、または、厚みを大きくすることが上げられる。ところが、マーカーの着色成分を多くする、または、厚みを大きくすると、フォトリソグラフィ工程の露光工程において、マーカーとなる感光性着色ペーストの底部まで十分に光が届かず、マーカーとなる感光性着色ペーストの底部が硬化しない。その結果、現像処理の際に、マーカーとなる感光性着色ペーストの底部が現像液によって溶かされてしまい、マーカーが土台から剥離してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−27351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、フォトリソグラフィ工法によって、識別性に優れた方向識別マークを形成できる電子部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る電子部品の製造方法は、第1の主面及び第2の主面を有し、かつ、開口が設けられている第1の絶縁体層を準備する第1の工程と、前記第1の絶縁体層の前記第1の主面上及び前記開口内にネガ型の感光性着色ペーストを塗布する第2の工程と、前記感光性着色ペーストの前記開口を包含する領域に対して露光を行う第3の工程と、前記感光性着色ペーストを現像して前記第1の絶縁体層に方向識別マークを形成する第4の工程と、前記第1の絶縁体層及び第2の絶縁体層が積層されてなる積層体であって、該第1の絶縁体層が積層方向の端に積層されている積層体を形成する第5の工程と、前記積層体を焼成する第6の工程と、を備えていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フォトリソグラフィ工法によって、識別性に優れた色の濃い方向識別マークを形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子部品の外観斜視図である。
【図2】一実施形態に係る電子部品の積層体の分解斜視図である。
【図3】図1のA−Aにおける断面構造図である。
【図4】電子部品の工程断面図である。
【図5】変形例に係る電子部品の断面構造図である。
【図6】変形例に係る電子部品の工程断面図である。
【図7】変形例に係る電子部品の工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態に係る電子部品の製造方法について説明する。
【0010】
(電子部品の構成)
本発明の一実施形態に係る電子部品の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電子部品10の外観斜視図である。図2は、一実施形態に係る電子部品10の積層体12の分解斜視図である。図3は、図1のA−Aにおける断面構造図である。
【0011】
以下、電子部品10の積層方向をz軸方向と定義し、電子部品10のz軸方向の正方向側の上面の2辺に沿った方向をx軸方向及びy軸方向と定義する。x軸方向とy軸方向とz軸方向とは直交している。
【0012】
電子部品10は、図1及び図2に示すように、積層体12、外部電極14(14a,14b)、方向識別マーク15及びコイルLを備えている。
【0013】
積層体12は、図1に示すように、直方体状をなしており、コイルLを内蔵している。以下では、積層体12のz軸方向の正方向側の面を上面と定義し、積層体12のz軸方向の負方向側の面を下面と定義する。また、積層体12のその他の面を側面と定義する。
【0014】
積層体12は、図2に示すように、絶縁体層16(16a〜16j)がz軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に並ぶように積層されることにより構成されている。以下では、絶縁体層16のz軸方向の正方向側の面を表面と称し、絶縁体層16のz軸方向の負方向側の面を裏面と称す。
【0015】
外部電極14aは、図1に示すように、積層体12のx軸方向の負方向側の側面を覆うように設けられている。外部電極14bは、図1に示すように、積層体12のx軸方向の正方向側の側面を覆うように設けられている。更に、外部電極14a,14bは、積層体12の上面及び下面、並びに、y軸方向の正方向側及び負方向側の積層体12の側面に対して折り返されている。外部電極14a,14bは、電子部品10外の回路とコイルLとを電気的に接続する接続端子として機能する。
【0016】
コイルLは、積層体12に内蔵され、図2に示すように、コイル導体18(18a〜18g)及びビアホール導体b1〜b6により構成されている。コイルLは、コイル導体18及びビアホール導体b1〜b6が接続されることにより螺旋状をなすように構成されている。
【0017】
コイル導体18a〜18gは、図2に示すように、絶縁体層16c〜16iの表面上に設けられており、z軸方向の正方向側から平面視したときに、時計回りに旋回するコ字型の線状導体層である。より詳細には、コイル導体18a〜18gは、3/4ターンのターン数を有しており、絶縁体層16c〜16iの三辺に沿っている。コイル導体18aは、絶縁体層16cにおいて、x軸方向の負方向側の短辺以外の三辺に沿って設けられている。また、コイル導体18aは、x軸方向の負方向側の短辺に引き出されており、外部電極14aと接続されている。コイル導体18bは、絶縁体層16dにおいて、y軸方向の負方向側の長辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体18cは、絶縁体層16eにおいて、x軸方向の正方向側の短辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体18dは、絶縁体層16fにおいて、y軸方向の正方向側の長辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体18eは、絶縁体層16gにおいて、x軸方向の負方向側の短辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体18fは、絶縁体層16hにおいて、y軸方向の負方向側の長辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体18gは、絶縁体層16iにおいて、x軸方向の正方向側の短辺以外の三辺に沿って設けられている。また、コイル導体18gは、x軸方向の正方向側の短辺に引き出されており、外部電極14bと接続されている。
【0018】
以下では、コイル導体18において、z軸方向の正方向側から平面視したときに、時計回りの上流側の端部を上流端とし、時計回りの下流側の端部を下流端とする。なお、コイル導体18のターン数は、3/4ターンに限らない。よって、コイル導体18のターン数は、例えば、1/2ターンであってもよいし、7/8ターンであってもよい。
【0019】
ビアホール導体b1〜b6は、図2に示すように、絶縁体層16c〜16hをz軸方向に貫通するように設けられている。より詳細には、ビアホール導体b1は、絶縁体層16cをz軸方向に貫通し、コイル導体18aの下流端及びコイル導体18bの上流端に接続されている。ビアホール導体b2は、絶縁体層16dをz軸方向に貫通し、コイル導体18bの下流端及びコイル導体18cの上流端に接続されている。ビアホール導体b3は、絶縁体層16eをz軸方向に貫通し、コイル導体18cの下流端及びコイル導体18dの上流端に接続されている。ビアホール導体b4は、絶縁体層16fをz軸方向に貫通し、コイル導体18dの下流端及びコイル導体18eの上流端に接続されている。ビアホール導体b5は、絶縁体層16gをz軸方向に貫通し、コイル導体18eの下流端及びコイル導体18fの上流端に接続されている。ビアホール導体b6は、絶縁体層16hをz軸方向に貫通し、コイル導体18fの下流端及びコイル導体18gの上流端に接続されている。
【0020】
方向識別マーク15は、図1及び図2に示すように、積層体12の上面に設けられている感光性着色ペーストであり、電子部品10の方向を識別する際に用いられる。よって、方向識別マーク15は、積層体12とは異なる色を有している。方向識別マーク15は、絶縁体層16a,16bに設けられており、図3に示すように、埋め込み部15a及び突出部15bを含んでいる。
【0021】
絶縁体層16aには、図3に示すように、円形の開口H1が設けられている。埋め込み部15aは、該開口H1内に設けられている。埋め込み部15aのz軸方向の正方向側の面(以下、埋め込み部15aの上面と称す)は、図1ないし図3に示すように、積層体12の上面において外部に露出している。突出部15bは、絶縁体層16aの裏面上に設けられており、z軸方向の負方向側から平面視したときに、開口H1を包含する円形を成している。これにより、突出部15bは、埋め込み部15aのz軸方向の負方向側の面(以下、埋め込み部15aの下面と称す)に接続されている。
【0022】
(電子部品の製造方法)
以下に、電子部品10の製造方法について図面を参照しながら説明する。図4は、電子部品10の工程断面図である。
【0023】
まず、図4(a)に示す絶縁体層16aとなるべき絶縁体層116aを準備する。具体的には、絶縁体層116aをフォトリソグラフィ工法により形成する。まず、ネガ型の感光性絶縁体ペーストを台100上に塗布する。感光性絶縁体ペーストは、光が照射されると硬化するペーストである。この感光性絶縁体ペースト上に、開口H1上に開口を有するマスクを介して、露光を行う。これにより、感光性絶縁体ペーストの開口H1以外の部分が硬化する。この後、現像液により、現像を行って、未硬化の開口H1の部分の感光性絶縁体ペーストを除去する。以上の工程により、図4(a)に示す絶縁体層116aが準備される。絶縁体層116aの厚みは、20μm〜25μmである。なお、以下では、絶縁体層116のz軸方向の正方向側を表面と称し、絶縁体層116のz軸方向の負方向側の面を裏面と称す。
【0024】
次に、以下に説明するフォトリソグラフィ工法により、方向識別マーク15を形成する。図4(b)に示すように、絶縁体層116aの裏面上及び開口H1内にネガ型の感光性着色ペースト115を塗布する。感光性着色ペースト115は、光が照射されると硬化する感光性着色ペーストである。本実施形態では、感光性着色ペースト115は、絶縁体層116aの裏面全面を覆っている。感光性着色ペースト115の塗布は、例えば、スピンコートにより行われる。
【0025】
次に、感光性着色ペースト115の開口H1を包含する領域に対して露光を行う。具体的には、図4(c)に示すように、z軸方向から平面視したときに、開口H1を包含する領域に開口H2が設けられているマスクMを、感光性着色ペースト115上にセットする。そして、図4(d)に示すように、マスクMを介して、感光性着色ペースト115に対して露光を行う。これにより、開口H2内の感光性着色ペースト115に光が照射され、開口H2内の感光性着色ペースト115が硬化する。
【0026】
次に、図4(e)に示すように、マスクMを除去し、感光性着色ペースト115を現像して絶縁体層116aに方向識別マーク15を形成する。具体的には、現像液により、方向識別マーク15以外の部分の未硬化の感光性着色ペースト115を溶かして除去する。ここで、開口H1内の感光性着色ペースト115(方向識別マーク15の埋め込み部15aに相当する部分)は、硬化していない。そのため、開口H1内の感光性絶縁体ペースト115は、現像液によって溶けるおそれがある。しかしながら、開口H1内の感光性着色ペースト115のz軸方向の正方向側の面(以下、上面と称す)は台100に覆われ、開口H1内の感光性着色ペーストのz軸方向の負方向側の面(以下、上面と称す)は突出部15bに覆われ、開口H1内の感光性着色ペースト115の側面は絶縁体層116aに覆われている。そのため、開口H1内の感光性着色ペースト115は、現像液にさらされないので、開口H1内に未硬化の状態で残留する。
【0027】
次に、以下に説明する工程により、z軸方向の負方向側の端に絶縁体層116aが積層されている未焼成のマザー積層体を形成する。具体的には、図4(f)に示すように、絶縁体層116aの裏面上に絶縁体層16bとなるべき絶縁体層116bを積層する。具体的には、フォトリソグラフィ工法により、絶縁体層116bを絶縁体層116aの裏面上に形成する。絶縁体層116bの形成工程は、絶縁体層116aの形成工程と同じであるので説明を省略する。ただし、絶縁体層116bの形成の際に行われる露光では、マスクを用いる必要はない。これは、絶縁体層116bには、ビアホール等が形成されないためである。
【0028】
次に、絶縁体層116bの裏面上にフォトリソグラフィ工程により、コイル導体18aを形成する。具体的には、ネガ型の感光性導電性ペーストを絶縁体層116bの裏面上に塗布し、マスクを介して露光する。感光性導電性ペーストは、Ag,Pd,Cu,Auやこれらの合金などの導電性材料を含有している。その後、現像液により現像を行って、未硬化の感光性導電性ペーストを除去する。これにより、コイル導体18aが形成される。
【0029】
この後、フォトリソグラフィ工程により、絶縁体層116bの裏面上に、絶縁体層16c〜16jとなるべき絶縁体層116c〜116j、コイル導体18b〜18g及びビアホール導体b1〜b6を形成する。絶縁体層116c〜116j及びコイル導体18b〜18gの形成工程については、絶縁体層116a,116b及びコイル導体18aの形成工程と同じであるので説明を省略する。以上の工程により、z軸方向の正方向側の端に絶縁体層116aが積層されている未焼成のマザー積層体を得る。
【0030】
次に、マザー積層体を個別の積層体12にカットする。これにより、未焼成の積層体12を得る。更に、未焼成の積層体12に焼成を施す。焼成は、例えば、850℃で4時間の条件で行う。焼成により、開口H1内の未硬化の感光性着色ペースト115が硬化し、埋め込み部15aとなる。この後、積層体12の表面に、バレル研磨処理を施して、面取りを行う。
【0031】
次に、Agを主成分とする導電性材料からなる電極ペーストを、積層体12のx軸方向の両端に位置する側面に塗布する。そして、塗布した電極ペーストを約800℃の温度で1時間の条件で焼き付ける。これにより、外部電極14となるべき銀電極を形成する。更に、外部電極14となるべき銀電極の表面に、Niめっき/Snめっきを施すことにより、外部電極14を形成する。以上の工程により、電子部品10が完成する。
【0032】
(効果)
以上のような電子部品10の製造方法によれば、フォトリソグラフィ工法によって、識別性に優れた色の濃い方向識別マーク15を形成できる。より詳細には、電子部品の方向を正確に識別するためには、方向識別マークの色は濃い方が望ましい。方向識別マークの色を濃くする方法としては、方向識別マークの厚みを大きくすることが上げられる。ところが、特許文献1に記載の積層型電子部品の製造方法では、マーカーの厚みを大きくすると、フォトリソグラフィ工程の露光工程において、マーカーとなる感光性着色ペーストの底部まで十分に光が届かず、マーカーとなる感光性着色ペーストの底部が硬化しない。その結果、現像処理の際に、マーカーとなる感光性着色ペーストの底部が現像液によって溶かされてしまい、マーカーが土台から剥離してしまう。
【0033】
一方、前記電子部品10の製造方法では、絶縁体層116aの裏面上及び開口H1内に感光性着色ペースト115を塗布し、感光性絶縁体ペースト115の開口H1を包含する領域に対して露光を行っている。方向識別マーク15に相当する感光性着色ペースト115の部分は、絶縁体層116aよりも大きな厚みを有している。そのため、開口H1内の感光性着色ペースト115には、十分な光が届かないおそれがある。すなわち、開口H1内の感光性着色ペースト115は、硬化していないおそれがある。
【0034】
しかしながら、電子部品10の製造方法では、開口H1内の感光性着色ペースト115の上面は台100に覆われ、開口H1内のネガ型の感光性着色ペーストの下面は突出部15bに覆われ、開口H1内の感光性着色ペースト115の側面は絶縁体層116aに覆われている。そのため、開口H1内の感光性着色ペースト115は、現像液にさらされないので、除去されることなく開口H1内に未硬化の状態で残留する。そして、開口H1内の感光性着色ペースト115は、焼成工程において硬化する。
【0035】
以上のように、電子部品10の製造方法では、絶縁体層116aの厚みよりも大きな厚みを有する方向識別マーク15を形成できる。すなわち、電子部品10の製造方法では、フォトリソグラフィ工法によって、識別性に優れた色の濃い方向識別マーク15を形成することが可能である。
【0036】
また、電子部品10の製造方法では、突出部15bを絶縁体層116aの裏面に設け、絶縁体層116aの裏面上に絶縁体層116bを積層している。そのため、方向識別マーク15は、積層体12の上面から突出しない。すなわち、積層体12の上面は平坦となる。その結果、電子部品10の実装時において、電子部品10の上面を吸着ノズルによってより確実に吸着できる。
【0037】
また、電子部品10の製造方法では、方向識別マーク15が積層体12の上面から突出していないので、積層体12の上面を平坦化するために、積層体12の上面を研磨する必要がない。
【0038】
(変形例)
以下に、変形例に係る電子部品の製造方法について説明する。まず、変形例に係る電子部品の構造について説明する。図5は、変形例に係る電子部品10'の断面構造図である。
【0039】
電子部品10では、図3に示すように、積層体12の上面に方向識別マーク15が設けられていたのに対して、電子部品10'では、図5に示すように、積層体12の下面に方向識別マーク15が設けられている。以下に、電子部品10と電子部品10'との相違点についてより詳細に説明する。
【0040】
電子部品10'では、図5に示すように、絶縁体層16jに方向識別マーク15が設けられている。方向識別マーク15は、埋め込み部15a及び突出部15bを含んでいる。埋め込み部15aは、絶縁体層16jに設けられている開口H1内に設けられている。突出部15bは、絶縁体層16jの裏面上に設けられている。ただし、絶縁体層16jは、z軸方向の最も負方向側に積層されている。そのため、突出部15bは、積層体12の下面から突出している。
【0041】
次に、電子部品10'の製造方法について説明する。図6及び図7は、変形例に係る電子部品10'の工程断面図である。
【0042】
電子部品10の製造方法では、まず、開口H1が設けられている絶縁体層116aを準備する工程(第1の工程)を行う。次に、絶縁体層116aの裏面上及び開口H1内に感光性着色ペースト115を塗布する工程(第2の工程)を行う。次に、感光性着色ペースト115の開口H1を包含する領域に対して露光を行う工程(第3の工程)を行う。次に、感光性着色ペースト115を現像して絶縁体層116aに方向識別マーク15を形成する工程(第4の工程)を行う。そして、第1の工程ないし第4の工程を行った後に、絶縁体層116a及び絶縁体層116b〜116jが積層されてなるマザー積層体であって、絶縁体層116aがz軸方向の端に積層されているマザー積層体を形成する工程(第5の工程)を行う。
【0043】
しかしながら、第1の工程ないし第5の工程をこの順に行う必要はない。以下に説明する電子部品10'の製造方法では、第5の工程において、絶縁体層116a〜116iを積層した後に、第1の工程で準備した絶縁体層116jを積層し、その後、第2の工程ないし第4の工程を行っている。
【0044】
まず、z軸方向の負方向側の端に絶縁体層116jが積層されている未焼成のマザー積層体を形成する。具体的には、絶縁体層116a〜116j及びコイル導体18a〜18gをフォトリソグラフィ工法により形成する。絶縁体層116a〜116j及びコイル導体18a〜18gを形成する工程は、前記実施形態に係る絶縁体層116a〜116j及びコイル導体18a〜18gを形成する工程と同じであるので説明を省略する。これにより、方向識別マーク15が形成される絶縁体層116jの表面が絶縁体層116iに接するようにマザー積層体を形成する。
【0045】
次に、以下に説明するフォトリソグラフィ工法により、方向識別マーク15を形成する。図6(b)に示すように、絶縁体層116jの裏面上及び開口H1内に感光性着色ペースト115を塗布する。感光性着色ペースト115は、光が照射されると硬化する樹脂である。本実施形態では、感光性着色ペースト115は、絶縁体層116jの裏面全面を覆っている。感光性絶縁体ペースト115の塗布は、例えば、スピンコートにより行う。
【0046】
次に、感光性着色ペースト115の開口H1を包含する領域に対して露光を行う。具体的には、図6(c)に示すように、z軸方向から平面視したときに、開口H1を包含する領域に開口H2が設けられているマスクMを、感光性着色ペースト115上にセットする。そして、図7(a)に示すように、マスクMを介して、感光性着色ペースト115に対して露光を行う。これにより、開口H2内の感光性着色ペースト115に光が照射され、開口H2内の感光性着色ペースト115が硬化する。これにより、突出部15bが形成される。ただし、光は、感光性着色ペースト内部の着色体にて吸収されるので、開口H1内の感光性着色ペースト115には殆ど到達しない。そのため、開口H1内の感光性着色ペースト115は、殆ど硬化しない。
【0047】
次に、図7(b)に示すように、マスクMを除去し、感光性着色ペースト115を現像して絶縁体層116jに方向識別マーク15を形成する。具体的には、現像液により、方向識別マーク15以外の部分の未硬化の感光性着色ペースト115を溶かして除去する。ここで、開口H1内の感光性着色ペースト115(方向識別マーク15の埋め込み部15aに相当する部分)は、硬化していない。そのため、開口H1内の感光性着色ペースト115は、現像液によって溶けるおそれがある。しかしながら、開口H1内の感光性着色ペースト115の上面は絶縁体層116iに覆われ、開口H1内の感光性着色ペーストの下面は突出部15bに覆われ、開口H1内の感光性着色ペースト115の側面は絶縁体層116jに覆われている。そのため、開口H1内の感光性着色ペースト115は、現像液にさらされないので、開口H1内に未硬化の状態で残留する。
【0048】
次に、マザー積層体を個別の積層体12にカットする。マザー積層体のカット工程以降の工程は、前記実施形態に係る電子部品10の製造方法におけるかかる工程と同じであるので説明を省略する。
【0049】
電子部品10'の製造方法においても、電子部品10の製造方法と同様に、フォトリソグラフィ工法によって、識別性に優れた色の濃い方向識別マーク15を形成できる。
【0050】
なお、本発明に係る電子部品の製造方法は、前記実施形態及び変形例に係る電子部品10,10'の製造方法に限らない。よって、電子部品10,10'を、前記に示した印刷法ではなく、セラミックグリーンシートを積層する逐次圧着法で形成してもよい。この場合には、例えば、絶縁体層116b〜116jを積層する。その後、図4(a)〜図4(e)に示す工程で作製した方向識別マーク15が設けられた絶縁体層116aを、台100から剥離して、絶縁体層116b上に積層してもよい。この際、絶縁体層116aの表面(突出部15bが設けられていない面)が絶縁体層116bに接してもよいし、絶縁体層116aの裏面(突出部15bが設けられている面)が絶縁体層116bに接してもよい。また、絶縁体層116aを絶縁体層116j上に積層してもよい。
【0051】
また、電子部品10,10'では、積層体12は、コイルLを内蔵している。しかしながら、積層体12が内蔵する回路素子は、コイルLに限らず、コンデンサや抵抗等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように、本発明は、電子部品の製造方法に有用であり、特に、フォトリソグラフィ工法によって、識別性に優れた色の濃い方向識別マークを形成できる点において優れている。
【符号の説明】
【0053】
H1,H2 開口
L コイル
M マスク
10,10' 電子部品
12 積層体
14a,14b 外部電極
15 方向識別マーク
15a 埋め込み部
15b 突出部
16a〜16j,116a〜116j 絶縁体層
18a〜18g コイル導体
100 台
115 感光性着色ペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面及び第2の主面を有し、かつ、開口が設けられている第1の絶縁体層を準備する第1の工程と、
前記第1の絶縁体層の前記第1の主面上及び前記開口内にネガ型の感光性着色ペーストを塗布する第2の工程と、
前記感光性着色ペーストの前記開口を包含する領域に対して露光を行う第3の工程と、
前記感光性着色ペーストを現像して前記第1の絶縁体層に方向識別マークを形成する第4の工程と、
前記第1の絶縁体層及び第2の絶縁体層が積層されてなる積層体であって、該第1の絶縁体層が積層方向の端に積層されている積層体を形成する第5の工程と、
前記積層体を焼成する第6の工程と、
を備えていること、
を特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記第5の工程では、前記第1の絶縁体層の前記第1の主面が前記第2の絶縁体層と接するように、前記積層体を形成すること、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記第1の工程ないし前記第4の工程を行った後に、前記第5の工程を行うこと、
を特徴とする請求項2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記第5の工程では、前記第1の絶縁体層の前記第2の主面が前記第2の絶縁体層と接するように、前記積層体を形成すること、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記第5の工程において、複数の前記第2の絶縁体層を積層した後に、前記第1の工程で準備した前記第1の絶縁体層を積層し、
前記第5の工程を行った後に、前記第2の工程ないし前記第4の工程を行うこと、
を特徴とする請求項4に記載の電子部品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−84623(P2012−84623A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228169(P2010−228169)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】