説明

電子部品用ソケット

【課題】 ICチップなどの電子部品が装着される電子部品用ソケットにおいて、端子に導通させる電子素子を小さなスペース内に配置できるようにした電子部品用ソケットを提供する。
【解決手段】 ハウジングに設けられた金属板の貫通穴に絶縁性の保持部材15の嵌合部15aが嵌着されており、保持部材15に複数の端子10が埋設されている。保持部材15の嵌合部15aに凹部15fが形成され、その内部にコンデンサなどの電子素子16が収納されている。電子素子16に設けられた2つの電極部16a,16aが、凹部15fの内部に現れた中間片11,11に半田付けされている。凹部15fを前記貫通穴の内部に位置させることで、電子素子16を配置するためのスペースが不要になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップなどの電子部品の電極部に接触する複数の端子を備えた電子部品用ソケットに係り、特に、前記端子にコンデンサなどの電子素子が接続された電子部品用ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1と特許文献2に、ICチップなどの電子部品を支持するソケットが開示されている。
【0003】
引用文献1に記載されたソケットは、半導体基板の表面にコンタクトが設けられ、半導体基板の上に設置されたICがコンタクトに接続されている。金属板が重ねられて形成されたデカップリングコンデンサが、ICの上に設置され、さらにデカップリングコンデンサの上にヒートシンクが載せられている。
【0004】
特許文献2に記載されたICソケットは、ICの端子部が差し込まれるものであるが、ICソケットにコンデンサが内蔵されるものとして説明されている。さらに、ICの端子が差し込まれるICソケットアダプタを有し、このICソケットアダプタの端子がICソケットに差し込まれる構造において、ICソケットアダプタに抵抗が内蔵される構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4050700号公報
【特許文献2】実願平3−75841号(実開平5−28048号)のCD−ROM
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたソケットは、デカップリングコンデンサがICの上に設置されているため、全体が大型になる。また、デカップリングコンデンサは金属板を重ねて形成されたものであるため、容量値を調整することなどが難しい。
【0007】
特許文献2に記載されたICソケットは、コンデンサがICソケットに内蔵されているため、ICソケット内でのコンデンサの配置や容量値に変更が生じたときは、ICソケット全体の構造を変更することが必要である。同様に、抵抗の配置や抵抗値の変更が必要となったときも、ICソケットアダプタの全体の構造を変更することが必要である。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、コンデンサなどの電子素子を組み込んでも構造が大型化せず、またコンデンサの設置場所や容量値の変更に対応できる構造の電子部品用ソケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電子部品が設置されるハウジングと、前記ハウジングに設けられて前記電子部品の底面に設けられた複数の部品電極部が接触する端子とが設けられた電子部品用ソケットにおいて、
前記ハウジングに貫通穴が形成され、絶縁材料で形成された保持部材が前記貫通穴に嵌合しており、
前記保持部材に、複数の前記端子が保持されているとともに、複数の前記端子に接続された電子素子が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の電子部品用ソケットは、ハウジングに取り付けられる保持部材に端子と共に電子素子が設けられているため、電子素子を取り付けてもソケットが極端に大型化することがない。また、電子素子を有する保持部材と電子素子が設けられていない保持部材を選択して、ハウジングに取り付けることにより、電子素子を接続すべき端子を自由に選択したり、変更することが可能になる。
【0011】
本発明は、前記保持部材に複数の前記端子を露出させる凹部が形成されており、前記電子素子の電極部が、前記凹部の内部において前記端子に接続されている構造とすることが好ましい。
【0012】
上記構造では、保持部材の凹部内に電子素子を装着して接続するという簡単な作業でコンデンサなどの電子素子を取り付けることが可能になる。なお、本明細書での電子素子とは、コンデンサ、抵抗、ダイオード、トランジスタ、などの素子であり、小型のチップ型のものが好ましく使用される。
【0013】
本発明は、前記端子は、前記保持部材から一方へ延び出て前記部品電極部が当たる弾性片と、前記保持部材から他方に延び出る基端片と、前記弾性片と前記基端片との間の部分であって前記凹部の内部に露出する中間片とを有しており、前記電子素子の電極部が前記中間片に接続されているものとして構成される。
【0014】
本発明は、前記凹部の深さ寸法が前記電子素子の厚さ寸法よりも深く、前記電子素子が前記凹部から突出しておらず、前記凹部が前記貫通穴の内部に位置しているものである。
上記構成では、保持部材と端子の高さを低くでき、薄型のソケットを構成しやすい。
【0015】
または、本発明は、前記凹部の深さ寸法が前記電子素子の厚さ寸法よりも浅く、前記電子素子が前記凹部から突出しており、前記凹部が前記貫通穴の外部に位置しているものである。
【0016】
上記構成では、保持部材の配置ピッチを狭くできるため、高密度配置のソケットを構成しやすくなる。
【0017】
本発明は、前記電子素子の電極部が前記端子に半田付けされ、且つ前記電子素子が前記凹部の内部に接着剤で固定されているものである。または、前記凹部内に、前記電子素子を保持する保持凸部が設けられているものである。
【0018】
保持部材に形成された凹部内に電子素子が収納されていると、端子が中継部材などに半田付けされるときの熱で電子素子を固定している半田が溶融しても、電子素子が凹部内から外れにくくなり、電子素子が脱落するのを防止しやすくなる。さらに前記接着剤や前記保持凸部を設けることで、さらに電子素子が脱落しにくくなる。
【0019】
本発明は、前記ハウジングの一部が金属板で形成され、この金属板に前記保持部材が嵌合する前記貫通穴が形成されているものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、端子を保持する保持部材に電子素子が設けられているため、電子部品を設けることでソケットが極端に大型化するのを防止しやすい。
【0021】
また、電子部品を有する保持部材と電子部品を設けていない保持部材の配置場所を変えることで、回路の変更に柔軟に対応することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態の電子部品用ソケットの斜視図、
【図2】本発明の第1の実施の形態の電子部品用ソケットと、中継部材を示すものであり、図1のII−II線の断面図、
【図3】本発明の第1の実施の形態の電子部品用ソケットに中継部材が装着された状態を示す断面図、
【図4】中継部材と3つの金属板を示す分解斜視図、
【図5】第1の金属板の平面図、
【図6】複数の端子を保持した保持部材と、保持部材が嵌合する貫通穴を示す分解斜視図、
【図7】貫通穴に嵌合した保持部材と端子の詳細を示す図2の一部分の拡大図、
【図8】電子部品の部品電極部が端子に接触した状態を示す拡大図、
【図9】保持部材の凹部に電子素子が収納された状態を示す側面図、
【図10】保持部材の凹部に電子素子が収納された状態の他の例を示す側面図、
【図11】凹部内に電子素子が縦向きに実装された例を示す側面図、
【図12】本発明の第2の実施の形態の電子部品用ソケットにおける嵌合穴と保持部材および端子を示す斜視図、
【図13】本発明の第3の実施の形態の電子部品用ソケットにおける保持部材と端子および電子素子の実装状態を示す側面図、
【図14】本発明の第3の実施の形態の電子部品用ソケットに電子部品が装着された状態を示す側面図、
【図15】本発明の第4の実施の形態の電子部品用ソケットにおける嵌合穴と保持部材および端子を示す斜視図、
【図16】本発明の第5の実施の形態の電子部品用ソケットを示す断面図、
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1ないし図3に示すように、本発明の実施の形態の電子部品用ソケット1は、ハウジング2を有しており、このハウジング2は第1の金属板3および第2の金属板4Aと第3の金属板4Bを含んでいる。すなわち、本明細書でのハウジング2は、合成樹脂で形成された部分と第1の金属板3および第2の金属板4Aと第3の金属板4Bとで構成されている。ハウジング2は、いわゆるインサート成型法によって合成樹脂と3つの金属板3,4A,4Bとが一体化されている。第1の金属板3と第2の金属板4Aおよび第3の金属板4Bとが合わされて金型のキャビティの内部に支持された状態で、キャビティ内に溶融樹脂が射出され、3つの金属板3,4A,4Bを埋設したハウジング2が成形される。
【0024】
図1ないし図3に示すように、ハウジング2の上部に支持側壁部2aが形成されており、この支持側壁部2aで4面が囲まれた上側凹部5が形成されている。4面の支持側壁部2aのそれぞれの内側面に段差底部2bが形成されており、上側凹部5は、段差底部2bよりも上側の部分が部品支持部5aとなり、段差底部2bよりも下側の部分が端子変形空間5bとなっている。第1の金属板3と第2の金属板4Aおよび第3の金属板4Bの一部は、上側凹部5の底部すなわち端子変形空間5bの底部に位置している。
【0025】
図2と図3に示すように、ハウジング2には、支持側壁部2aからさらに4方向の外側に張り出す天井壁部2cが形成され、天井壁部2cの周囲から下側に延びる装着側壁部2dが一体に形成されて、装着側壁部2dで4面が囲まれた下側凹部6が形成されている。下側凹部6は、天井壁部2cの下面2eよりも下側の部分が中継部材装着部6aとなり、前記下面2eよりも上側の部分が端子接続空間6bとなっている。ハウジング2は、中継部材装着部6aが部品支持部5aよりも外周側に張り出した構造である。
【0026】
ハウジング2の合成樹脂で形成された部分の内部は、上側凹部5と下側凹部6とが連通しており、上側凹部5と下側凹部6とが、第1の金属板3および第2の金属板4Aと第3の金属板4Bで仕切られた構造である。
【0027】
第1の金属板3と第2の金属板4Aおよび第3の金属板4Bは、鋼板などの比較的低抵抗の金属板で構成されている。
【0028】
図4と図5に示すように、第1の金属板3は、平面で見た形状が矩形状である。第1の金属板3の中央部に、小さな面積の矩形状の中央開口部3aが形成され、中央開口部3aを囲む矩形状の領域が、端子保持部3bとなっている。端子保持部3bである矩形状の領域の全域に、複数の貫通穴7が規則的に並んで設けられている。貫通穴7は、第1の金属板3を貫通する長方形の穴である。
【0029】
図4と図5に示すように、第1の金属板3には、端子保持部3bと同一面で且つ端子保持部3bから4方向の側方に延びる天井シールド面3dが設けられている。天井シールド面3dには貫通穴7が形成されていない。端子保持部3bから4方向の側方へ離れた位置に、天井シールド面3dからほぼ直角に折り曲げられた4面の側部シールド面3cが形成されている。
【0030】
図4に示すように、第2の金属板4Aと第3の金属板4Bは平板であり、この2つの金属板4A,4Bは同じ構造である。第2の金属板4Aと第3の金属板4Bは第1の金属板3から側部シールド面3cを削除したものと同じ形状で同じ大きさである。第2の金属板4Aと第3の金属板4Bは、中央部に矩形状の中央開口部4aが形成されている。中央開口部4aの周囲の矩形状の領域が端子保持部4bであり、その外周部に天井シールド面4dが一体に形成されている。中央開口部4aおよび端子保持部4bの形状と大きさは、第1の金属板3の中央開口部3aならびに端子保持部3bと同じである。
【0031】
図2と図3に示すように、第2の金属板4Aと第3の金属板4Bの端子保持部4bに複数の貫通穴8が形成されている。この貫通穴8の開口面積と形状、ならびに配列状態は、第1の金属板3の端子保持部3bに形成された貫通穴7と同じである。
【0032】
第2の金属板4Aおよび第3の金属板4Bは第1の金属板3の下面側に重ねられ、中央開口部3aと中央開口部4aとが一致し、複数の貫通穴7と複数の貫通穴8が個別に一致するように重ねられて、互いに電気的に導通された状態で、金型のキャビティ内に保持される。そして、キャビティ内に溶融樹脂が射出されてハウジング2が成型される。
【0033】
上記工程で成型された電子部品用ソケット1は、図1ないし図3に示すように、第1の金属板3の中央開口部3aおよび端子保持部3bと、第2の金属板4Aと第3の金属板4Bの中央開口部4aおよび端子保持部4bとが、上側凹部5と下側凹部6との境界部に位置している。
【0034】
第1の金属板3の天井シールド面3d、および第2の金属板4Aと第3の金属板4Bの天井シールド面4dは、ハウジング2の天井壁部2cの上に位置し、第1の金属板3の天井シールド面3dが天井壁部2cの最表面に現れる。また、第1の金属板3の側部シールド面3cが、装着側壁部2dの表面に現れる。部品支持部5aよりも周囲に張り出した形状の中継部材装着部6aは、天井部と4面の側部が全て金属板で覆われることになる。
【0035】
ハウジング2には、複数の端子10が設けられている。端子10は、端子保持部3bおよび端子保持部4bの領域の全域に配置されているが、図2と図3などでは、図示の都合上一部の端子10のみが示されている。
【0036】
図6に示すように、複数の端子10は、合成樹脂材料で形成された保持部材15に保持されている。
【0037】
保持部材15は、基部側に位置する嵌合部15aと、嵌合部15aから立ち上がる支持部15bとが一体に形成されている。嵌合部15aは、長手方向の寸法がW1であり、長手方向に間隔W2を空けて並んでいる。支持部15bは、長手方向に向けて連続して形成されており、3個の嵌合部15aが支持部15bで連結された構造である。支持部15bに、第1の金属板3の表面に対して垂直に立ち上がる平坦面の壁面15cが形成され、壁面15cの上端のエッジ部(ほぼ直角の角部)が中間支点部15dとなっている。
【0038】
保持部材15に保持されている複数の端子10は、長手方向へ一定のピッチで配列している。端子10はそれぞれの嵌合部15aに3個ずつ保持されている。複数の端子10と保持部材15は、インサート成型法で一体化されている。あるいは、複数の端子10が嵌合部15aに圧入されている。
【0039】
図6に示すように、第1の金属板3の端子保持部3bに形成された貫通穴7と、第2の金属板4Aと第3の金属板4Bの端子保持部4bに形成された貫通穴8とが一致して、3つの金属板を貫通する嵌合穴が形成されている。保持部材15のそれぞれの嵌合部15aがそれぞれの貫通穴に圧入されて、ハウジング2に保持部材15が固定される。端子保持部3bおよび端子保持部4bに形成された複数箇所の貫通穴7,8のそれぞれに嵌合部15aが嵌合することで、ハウジング2に多数の保持部材15が規則的に配列して保持され、それぞれの保持部材15に保持された複数の端子10が規則的に配列して設置される。
【0040】
それぞれの端子10は、リン青銅板などのばね性を有する材料で形成され、表面にニッケルメッキ層が形成され、さらにその表面に金メッキ層が形成されている。
【0041】
図7と図8に拡大して示すように、保持部材15の嵌合部15aに複数の端子10の中間片11が埋設されて保持されている。端子10には、中間片11と連続して上方に延びる弾性片12が設けられており、弾性片12が、保持部材15における嵌合部15aと支持部15bとの段差部である境界部15eから上方へ突出している。図7に示すように、複数の端子10に外力が作用していないとき、弾性片12の下部の少なくとも一部が保持部材15の壁面15cに当接している。
【0042】
図7と図8に示すように、複数の端子10には、嵌合部15aよりも下方へ突出する基端片13が一体に設けられ、基端片13の下端部が直角に折り曲げられて、導通片13aが形成されている。導通片13aは、ハウジング2の端子接続空間6bの内部に位置している。
【0043】
図6ないし図8に示すように、嵌合部15aには、第1の金属板3の表面から垂直に立ち上がる側壁面15gに開口して側壁面15gから厚み方向へ窪む凹部15fが一体に形成されている。凹部15fの内部に電子素子16が収納されている。図9に示すように、電子素子16はチップ型素子であり、両端部に電極部16a,16aが設けられている。電子素子16の電極部16a,16aは、凹部15fの底部に露出して隣り合う2つの端子10の中間片11のそれぞれに半田付けで接合されている。
【0044】
この電子素子16は、例えば所定の電圧が印加される電源用の端子10と、接地電位に設定される接地用端子10との間を繋ぐデカップリング用のコンデンサである。デカップリングコンデンサにより、電源電圧の変動が抑制される。または、電子素子16が、信号伝送用の端子10と接地電位に設定される接地の端子10とを繋ぐノイズ除去用のコンデンサであってもよい。
【0045】
また、電子素子16は、抵抗器、ダイオード、トランジスタなど、種々の目的のものを使用することが可能である。
【0046】
図6に示すように、全ての保持部材15の全ての嵌合部15aに凹部15fが形成されており、そのいずれかの凹部15fを選択して、必要に応じて電子素子16が実装される。複数の凹部15fのいずれかを選択して電子素子16を実装し、さらに電子素子16が実装された保持部材15と電子素子16が実装されていない保持部材15の配置場所を変更することで、どのような回路に対しても柔軟に対応することが可能である。
【0047】
図6と図9に示す例では、嵌合部15aに保持された3個の端子10のうちの2個の端子10の中間片11が凹部15fの底部に現れているが、凹部15fの開口面積を広くして、全ての端子10の中間片11が凹部15fの底部に現れるようにすることが好ましい。この構造では、多くの端子10の中から、電子素子16の電極部16aを半田付けすべき端子10を選択できるようになり、電子素子16を設置する選択幅を広げることができる。
【0048】
図7と図8に示すように、嵌合部15aの側壁面15gからの凹部15fの深さ寸法が、その内部に位置する電子素子16の厚さ寸法よりも十分に深く、電子素子16の電極部16aが、側壁面15gから外側に突出しない寸法関係となっている。図7と図8に示すように、凹部15fの少なくとも一部が、第1の金属板3と第2の金属板4Aおよび第3の金属板4Bの貫通穴7,8で形成された嵌合穴の内部に位置している。電子素子16の電極部16aが側壁面15gから突出していないので、電極部16aが、3つの金属板3,4A,4Bのいずれかに接触して短絡するのを防止できる。
【0049】
凹部15fとその内部の電子素子16の少なくとも一部が、3つの金属板3,4A,4Bの厚さ寸法の内部に位置し、すなわち嵌合穴の内部に位置しているため、嵌合部15aから上方へ向けて延び出る弾性片12を十分に長く確保でき、電子素子16を設けてもソケット1の厚さ寸法が大きくなるのを防止しやすくなる。
【0050】
また、接地電位に設定される複数の接地用端子10のうちの少なくとも1つが、3つの金属板3,4A,4Bのいずれかに接触して導通しており、3つの金属板3,4A,4Bが接地電位に設定されている。
【0051】
複数の端子10を組み付ける工程としては、先に第1の金属板3と第2の金属板4Aおよび第3の金属板4Bが重ねられて、貫通穴7,8,8に保持部材15の嵌合部15aが圧入された後に、保持部材15を保持した第1の金属板3と第2の金属板4Aおよび第3の金属板4Bが金型のキャビティ内に保持された状態で、溶融樹脂が射出されてハウジング2が形成される。あるいは、第1の金属板3と第2の金属板4Aおよび第3の金属板4Bが埋設されたハウジング2が成型された後の工程で、貫通穴7,8,8に、保持部材15の嵌合部15aが圧入されてもよい。
【0052】
図2と図3に示すように、電子部品用ソケット1の中継部材装着部6aに、中継部材20が保持される。
【0053】
中継部材20は、上面20aに複数の上部接続電極部21が配列し、下面20bに複数の下部接続電極部22が配列している。上部接続電極部21は、表面に球形状の半田層を有している。下部接続電極部22も表面に球形状の半田層を有している。
【0054】
図4に示すように、中継部材20の上面20aに、矩形状の電極配列領域20cが形成され、この電極配列領域20cに複数の上部接続電極部21が規則的に配列している。電極配列領域20cの形状および面積は、第1の金属板3の端子保持部3bおよび第2と第3の金属板4A,4Bの端子保持部4bの領域の形状ならびに面積と同等である。また、上部接続電極部21の配列状態が、端子10の配列状態と一致し、上部接続電極部21の配列ピッチP1が、端子10の配列ピッチP1と一致している。
【0055】
中継部材20はいわゆる多層基板であり、厚さ方向に重ねられた複数の絶縁層によって構成されている。図2に示すように、中継部材20の内部の各層の表面に内部配線層23がパターン形成されており、上部接続電極部21と下部接続電極部22とが、内部配線層23を介して一対一の関係で導通している。そして、下部接続電極部22の配列ピッチP2が、上部接続電極部21の配列ピッチP1よりも広く形成されている。
【0056】
図3に示すように、中継部材20は、ハウジング2の中継部材装着部6aの内部に挿入される。中継部材20を装着側壁部2dの内部に挿入し、天井壁部2cの下面2eに突き当てることで、ハウジング2に対して中継部材20が位置決めされ、それぞれの端子10の導通片13aと中継部材20の上部接続電極部21とが当接させられる。この状態で加熱炉に供給されると、上部接続電極部21の表面の半田層が溶融し、上部接続電極部21と端子10の導通片13aとが個別に半田付けされて、ハウジング2に中継部材20が保持される。
【0057】
または、導通片13aの上部接続電極部21と対向する部分に、予め球状の半田層が付着して設けられ、前記半田層と上部接続電極部21とを当接させた状態で加熱炉に供給し、半田層を溶融させて上部接続電極部21と導通片13aとが半田付けされてもよい。
【0058】
端子10の導通片13aと上部接続電極部21とが半田付けされるときに、半田の熱が、端子10の中間片11に伝達される。この熱により電子素子16の電極部16aを接続している半田が溶融する可能性があるが、電極部16aと中間片11とを接続している半田を所定の量以上に設定しておけば、溶融した半田の表面張力により、電子素子16が中間片11から離れて脱落するのを防止しやすい。また半田が溶融して電子素子16が重力で少し下方へ移動することがあったとしても、電子素子16が凹部15fの内部に収納されているため、電子素子16が長い距離を下降することがなく、よって中間片11に伝わる熱量が低下したときに、半田が硬化して、電子素子16の電極部16aと中間片11との導通接続を保つことが可能になる。
【0059】
なお、電子素子16の電極部16aを中間片11に半田付けするときに、電子素子16を凹部15fの底部や中間片11に固定するための接着剤を併用すると、端子10の導通片13aと上部接続電極部21とを半田付けする際の熱の伝達によって、電子素子16が脱落する不安をさらに解消することが可能である。この場合の接着剤は、熱硬化性接着剤を使用することが好ましい。
【0060】
また、図10に示すように、凹部15fの内部に、電子素子16を保持する保持凸部15h,15hを形成し、電子素子16を保持凸部15h,15hの間に圧入して、電極部16aと中間片11とを半田付けすることで、電子素子16の脱落をさらに確実に防止できるようになる。保持凸部15h,15hは、凹部15fの内壁から突出する微小な突起である。この保持凸部15h,15hを弾性変形できる構造にしてもよい。
【0061】
あるいは、図11に示すように、凹部15fの内部において、電子素子16が縦向きに設置されていてもよい。この場合に、電子素子16の電極部16a,16aが半田付けされる導通部11a,11aは、端子10の中間片11と一体に形成されている。または、中間片11と別体の金属片が凹部15fの底部に埋め込まれていてもよい。電子素子16が縦向きであると、2つの電極部16aを半田付けしている半田付け部が上下に並んで位置するため、半田が溶融したときに、上下2箇所において半田の表面張力で電子素子16を保持することができ、電子素子16が脱落しにくくなる。
【0062】
次に、上記電子部品用ソケット1の実装方法について説明する。
電子部品用ソケット1が実装されるメイン基板(マザーボード)は、その表面にメイン電極部を有しており、メイン電極部は、中継部材20の下部接続電極部22の配列ピッチP2と同じピッチで配置されている。中継部材20の下部接続電極部22と、メイン電極部とを個別に対面させ、下部接続電極部22の半田層を溶融させることで、下部接続電極部22とメイン電極部とが個別に半田付けされ、電子部品用ソケット1が中継部材20を介してメイン基板に実装される。
【0063】
複数の端子10の配列ピッチP1に対し、下部接続電極部22の配列ピッチP2が広いため、メイン基板のメイン電極部のピッチを広くでき、多層基板であるメイン基板の層の数を少なくして、メイン基板の製造コストを削減することが可能である。
【0064】
図3および図8に示すように、メイン基板に実装された電子部品用ソケット1に、電子部品30が装着される。電子部品30は、ICのベアチップ、あるいはICパッケージである。電子部品30の底面30aに、複数の部品電極部31が形成されている。部品電極部31は表面が平坦面の金属層で形成されている。電子部品30の底面30aにおける部品電極部31の配列領域は、複数の端子10が配列している領域と同じである。部品電極部31の配列ピッチP1は、複数の端子10の配列ピッチP1と同じである。
【0065】
電子部品30は、電子部品用ソケット1の部品支持部5aに挿入されて、支持側壁部2aで囲まれて平面方向へ動かないように位置決めされ、部品電極部31と端子10とが、上下に個別に対向する。そして、電子部品30が上方から図示しない押さえ部材で押さえられて固定される。
【0066】
電子部品30が部品支持部5aで位置決めされると、部品支持部5a内に突出している弾性片12の先部に電子部品30の部品電極部31が接触する。電子部品30が部品支持部5aの内部に押し込まれると、弾性片12に下向きの荷重Fが与えられ、弾性片12に対して、嵌合部15aと支持部15bとの境界部15eを第1の支点とするα方向への曲げモーメントが与えられる。
【0067】
この曲げモーメントによって、弾性片12がα方向へ曲げられるが、無荷重状態で弾性片12の基部が保持部材15の垂直な壁面15cに接触しているために、図8に示すように、弾性片12がα方向へ変形し始めると、すぐに支持部15bのエッジ部である中間支点部15dが弾性片12に当接する。その後、弾性片12が下向きに押されると、弾性片12の上部が、中間支点部15dとの接触部を第2の支点として、さらにα方向へ曲げられる。
【0068】
弾性片12は、境界部15eと中間支点部15dとの間で撓み変形するとともに、中間支点部15dから先部でも撓み変形する。この構造では、弾性片12の境界部15eからの自由長を長くできて弾性片12に過大な応力が作用するのを防止でき、しかもα方向への倒れ込み距離を短くでき、弾性片12の先端部と部品電極部31との位置ずれ量を最小に設定できる。
【0069】
電子部品用ソケット1では、接地電位に設定される複数の接地用の端子10のうちの少なくとも1つが3つの金属板3,4A,4Bのいずれかに導通しており、金属板3,4A,4Bがシールド板として機能している。複数の端子10が3つの金属板3,4A,4Bに形成された複数の貫通穴7,8の内部を貫通しているため、複数の端子10が相互にシールドされ、複数の端子10で伝送される信号に外部ノイズが重畳されにくくなる。
【0070】
中継部材20は、上面が3つの金属板3,4A,4Bで覆われ、4面の側部が側部シールド面3cで覆われる構造であるため、中継部材20の上部接続電極部21と端子10との導通部、および下部接続電極部22とメイン基板のメイン電極部との接続部、さらには内部配線層23をシールドすることができ、中継部材20を介して伝送される信号を外部ノイズから保護しやすくなる。
【0071】
図12に示す第2の実施の形態の電子部品用ソケット101は、第1の金属板103に形成された貫通穴107および第2と第3の金属板に形成された貫通穴の開口幅W3が図6に示した貫通穴7,8の開口幅よりも小さく、隣り合う貫通穴107のピッチPaも、図6に示した貫通穴7,8のピッチよりも短い。
【0072】
保持部材115は、嵌合部115aの上下寸法が図6に示した嵌合部15aよりも長く、嵌合部115aの下部が、貫通穴107の内部に嵌合されている。そして、嵌合部115aのうちの金属板103の表面から突出する部分に凹部115fが形成され、凹部115fの内部に電子素子16が収納されている。
【0073】
凹部115fの側壁面115gからの深さ寸法が、電子素子16の厚さ寸法よりも浅く、電子素子16の一部が、凹部115fから突出し、側壁面115gよりも外側に出ている。
【0074】
図12に示す電子部品用ソケット101では、凹部115fを第1の金属板103の表面よりも上側に配置することで、嵌合部115aの厚さ寸法を細くでき、その結果、貫通穴107の配置ピッチPa、すなわち端子10の配置ピッチPaを狭くして、複数の端子10の実装密度を高くすることが可能である。
【0075】
図13と図14に、第3の実施の形態の電子部品用ソケット201Aが示されている。
この電子部品用ソケット201Aは、ハウジング2の一部を構成する2つの金属板3,4が設けられ、2つの金属板3,4に形成された貫通穴7,8が重ねられて嵌合穴が形成されている。この嵌合穴に保持部材215が挿入されて保持されている。
【0076】
保持部材215に複数の端子210が保持されている。端子210は金属端子が2枚重ねられた構造であり、2枚の中間片211a,211bが密着した状態で保持部材215に埋設されて保持されている。保持部材215から2枚の弾性片212a,212bが上方へ延び出ており、保持部材215から2枚の基端片213a,213bが下方へ延び出ている。そして、それぞれの端子210の基端片213aが、中継部材20の上部接続電極部21に半田付けされている。
【0077】
保持部材215の貫通穴7,8の内部に挿入されている部分に凹部215fが形成され、凹部215fの内部に電子素子16が実装されている。電子素子16の電極部16a,16aが、隣り合う2つの中間片211a,211aに半田付けされている。
【0078】
この電子部品用ソケット201Aは、図13に示すように、端子210に外力が作用していないときに、2つの弾性片212a,212bが互いに離れている。図14に示すように、電子部品30が部品支持部5aに設置されるときに、部品電極部31で、一方の弾性片212aが押されて撓み変形し、その後に図14に示すように、2つの弾性片212a,212bが互いに当接して一緒に撓み変形する。
【0079】
電子部品30が設置されたときに端子210に作用する応力を2つの弾性片212a,212bで分担できるため、端子210の寿命を長くできる。
【0080】
図15に示す第4の実施の形態の電子部品用ソケット201Bは、保持部材215に、図13と図14に示したのと同じ2枚構造の端子210が保持されている。そして、図12に示した実施の形態と同様に、保持部材215の金属板3の表面から突出している部分に凹部215fが形成され、その中に電子素子16が収納されている。この実施の形態でも、電子素子16が凹部215fの開口部から少し突出しており、保持部材215の幅寸法が小さくその配列ピッチを短くすることが可能である。
【0081】
図16に示す第5の実施の形態の電子部品用ソケット301は、合成樹脂製のハウジング302に上側凹部305が形成され、その内部が部品支持部305aと端子変形空間305bとなっている。第1の金属板303と第2の金属板304Aおよび第3の金属板304Bが重ねられて、ハウジング102の底部に設置されて、3つの金属板303,104A,104Bがハウジング102の一部として一体に固定されている。第1の金属板303に貫通穴307が、第2と第3の金属板304A,304Bに貫通穴108が形成されて、両貫通穴307,308に保持部材15が保持されている。
【0082】
保持部材15に保持されている端子10の構造は図6ないし図8に示したものと同じであり、凹部15fに電子素子16が収納されている。また、端子10の下端に一体に形成された導通片13aが第1の金属板103から下側に突出している。
【0083】
図16に示す電子部品用ソケット301には、中継部材装着部6aが設けられておらず、第3の金属板304Bがソケットの底面に現れている。この電子部品用ソケット301は、中継部材20を使用せずに、メイン基板(マザーボード)の上に直接に設置され、前記導通片13aが、メイン基板に設けられたメイン電極部に個別に半田付けされる。
【0084】
また、本発明は、ハウジング2に3つの金属板3,4A,4Bが設けられておらず、合成樹脂製のハウジング2に形成された貫通穴(嵌合穴)に、端子10を保持する保持部材15および嵌合部15aが挿入されて保持されていてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1,101,201A,201B,301 電子部品用ソケット
2,102,302 ハウジング
3,103 第1の金属板
4A,304A 第2の金属板
4B,304B 第3の金属板
5a,305a 部品支持部
5b,305b 端子変形空間
6a 中継部材装着部
6b 端子接続空間
7,8,107,108,307,308 貫通穴
10,210 端子
11,211a,211b 中間片
12,212a,212b 弾性片
13,213a,213b 基端片
15,115,215 保持部材
15a 嵌合部
15b 支持部
15c 壁面
15d 中間支点部
15f 凹部
16 電子素子
16a 電極部
20 中継部材
20c 電極配列領域
21 上部接続電極部
22 下部接続電極部
23 内部配線層
30 電子部品
31 部品電極部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が設置されるハウジングと、前記ハウジングに設けられて前記電子部品の底面に設けられた複数の部品電極部が接触する端子とが設けられた電子部品用ソケットにおいて、
前記ハウジングに貫通穴が形成され、絶縁材料で形成された保持部材が前記貫通穴に嵌合しており、
前記保持部材に、複数の前記端子が保持されているとともに、複数の前記端子に接続された電子素子が設けられていることを特徴とする電子部品用ソケット。
【請求項2】
前記保持部材に複数の前記端子を露出させる凹部が形成されており、前記電子素子の電極部が、前記凹部の内部において前記端子に接続されている請求項1記載の電子部品用ソケット。
【請求項3】
前記端子は、前記保持部材から一方へ延び出て前記部品電極部が当たる弾性片と、前記保持部材から他方に延び出る基端片と、前記弾性片と前記基端片との間の部分であって前記凹部の内部に露出する中間片とを有しており、前記電子素子の電極部が前記中間片に接続されている請求項2記載の電子部品用ソケット。
【請求項4】
前記凹部の深さ寸法が前記電子素子の厚さ寸法よりも深く、前記電子素子が前記凹部から突出しておらず、前記凹部が前記貫通穴の内部に位置している請求項2または3記載の電子部品用ソケット。
【請求項5】
前記凹部の深さ寸法が前記電子素子の厚さ寸法よりも浅く、前記電子素子が前記凹部から突出しており、前記凹部が前記貫通穴の外部に位置している請求項2または3記載の電子部品用ソケット。
【請求項6】
前記電子素子の電極部が前記端子に半田付けされ、且つ前記電子素子が前記凹部の内部に接着剤で固定されている請求項2ないし5のいずれかに記載の電子部品用ソケット。
【請求項7】
前記凹部内に、前記電子素子を保持する保持凸部が設けられている請求項2ないし5のいずれかに記載の電子部品用ソケット。
【請求項8】
前記ハウジングの一部が金属板で形成され、この金属板に前記保持部材が嵌合する前記貫通穴が形成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の電子部品用ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−26160(P2013−26160A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162581(P2011−162581)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】