説明

電子部品製造工程用仮固定シート

【課題】セラミックシート等の切断工程ではセラミックシートをしっかり保持すると共に、高い切断精度を得ることができ、その後、所定温度以下に冷却することにより効率的に容易にチップを剥離することができる仮固定シートを、広い設計自由度の中でハンドリング性良く提供する。
【解決手段】支持基材1と少なくともその片面に設けられた仮固定層2からなる仮固定シートであって、その仮固定層2がウレタンポリマーとビニル系ポリマーとを含有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体を精度よく加工し、かつ効率的で容易に剥離できる電子部品製造工程用仮固定シートに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の加工に使用される粘着テープとして、ポリエステル系、ポリオレフィン系、塩化ビニル系、アクリル系、ポリウレタン系、ゴム系、フッ素系などの基材とアクリル系、ウレタン系、ゴム系、シリコン系などの粘着剤が積層した粘着テープから任意のものが選択・使用されてきた。その際には、ある時点においては十分な粘着性を備え、別の時点においては、加熱処理、冷却処理、光照射等の処理を施して、粘着性を有しないようにするための処理を行ってきた。
【0003】
近年の電子部品の分野では、部品自体の小型化や精密化が要求されるようになり、例えば、セラミック製電子部品の一つであるセラミックコンデンサやセラミック抵抗、セラミックインダクタでは「0603」や「0402」に代表される小型化や数百層を大きく超える高積層化による高容量化が顕著となってきている。
特にセラミックコンデンサの製造工程においては、小型化や精密化を達成するために高い加工精度が要求されるようになった。
セラミックコンデンサの製造工程の一例を挙げると、
(1)グリーンシートへの電極印刷工程
(2)積層工程
(3)プレス工程
(4)切断工程
(5)加熱剥離工程
(6)外部電極塗布・乾燥工程
などがあるが、工程(1)では電極印刷の精度など、工程(2)では電極位置の精度など、工程(3)では加圧によりグリーンシートが変形し、電極位置にずれが生じることによる電極位置のずれ防止精度など、工程(4)では切断による精度等の各種の精度が要求され、工程中一つでも精度が悪いと製品が不良となり、生産性が低下してしまう。
【0004】
特に上記(1)から(4)の工程は、PETフィルム上や粘着シート上で行うことが一般的であり、特に、切断工程でのグリーンシートの保持(固着)性の点から粘着シートを使用する製造方法が多く用いられており、このような用途に使用する粘着シートとして、種々の加熱剥離型粘着シートが提案されてきた。
【0005】
従来は上記(4)の切断工程は回転刃によるダイシング工法によりなされていたが、サイズの小型化にともなってダイシング工法よりも取れ高の多い押し切り工法が用いられるようになってきている。しかしながら、一部のセラミックシートでは、押し切り工法により発生するチップ再付着が問題となっている。これは、ダイシング工法とは異なり、押し切り工法では切断後のチップ間にほとんど隙間がないため、特に、加熱剥離工程での熱履歴によってセラミックシート自身が軟化し、粘着性を有し、再付着してしまうことが要因である。
【0006】
これを受けて近年では、加熱剥離工程でのチップ再付着を防止するため、約40℃〜100℃で実施する切断時にはセラミックシートをしっかり保持し、その後は加熱処理工程を経ずに、室温まで冷却することで粘着シートの粘着層の粘着性が低下しチップを剥離することができる、側鎖結晶化可能ポリマーを含有した仮固定シートが提案されている(例えば、特許文献1及び2)。このシートを用いれば切断後の加熱処理工程を省略することができるため、その工程に起因するチップ再付着を低減することができる。
【0007】
さらに、特許文献3に記載されているように、セラミックグリーンシートを積層したセラミック積層体を、多数の気泡を有する植物繊維からなる基材に粘着剤を塗布した粘着シート上に貼りつけ、これを吸着保持してセラミック積層体を押し切りする方法が知られている。
【0008】
【特許文献1】特許第3387497号公報
【特許文献2】特許第3485412号公報
【特許文献3】特開2002-208537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記加熱剥離テープによるセラミックコンデンサの製造方法によれば、上述のように加熱剥離工程によってチップの再付着が起りやすい。また、加熱剥離工程により電子部品への負荷がかかり、製品に悪影響を及ぼす場合がある。さらに、加熱工程が必要となるため、設備の増設が必要となる。
さらにチップの小型化に伴って、チップ再付着の防止とともに、(4)の切断工程ではより高い切断精度が求められるようになってきており、上記側鎖結晶化可能ポリマーを含有した仮固定シートでは高い切断精度を得ることができない。
【0010】
また、上記側鎖結晶化可能ポリマーを含有した仮固定シートは冷却により粘着力を消失させることが可能だが、粘着力を消失させるために結晶性の材料を多量に導入する必要があり、設計の自由度が失われる。また室温で剥離するためには、結晶性材料の結晶融解温度が室温以上である必要があり、粘着テープ作製時に材料の加温が必要となる等のハンドリング性が悪く、製造上の取り扱いが難しい。
本発明はこのような欠点を解決するものであり、その目的とするところは、セラミックシートの切断工程ではセラミックシートをしっかり保持すると共に、高い切断精度を得ることができ、その後、所定温度以下に冷却することにより効率的に容易にチップを剥離することができる仮固定シートを、広い設計自由度の中でハンドリング性良く提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ウレタンポリマー成分とビニル系ポリマーとを有効成分として含有する材料を利用することで、加温時の粘着力と室温冷却時の剥離性のバランスが良く、かつ加温時にも高弾性率を付与できることを見出した。
具体的には、
1.支持基材と少なくともその片面に設けられた仮固定層からなる仮固定シートであって、その仮固定層がウレタンポリマーとビニル系ポリマーとを含有することを特徴とした電子部品製造工程用仮固定シート。
2.該ビニル系ポリマーがカルボキシル基を含有することを特徴とする1記載の電子部品製造工程用仮固定シート。
3.該ウレタンポリマーの少なくとも一部がアクリロイル基末端ウレタンポリマーであることを特徴とする1又は2記載の電子部品製造工程用仮固定シート。
4.40℃以上の特定の温度において粘着力を発現し、その特定の温度以下では粘着力が消失することを特徴とする1〜3のいずれかに記載の電子部品製造工程用仮固定シート。
5.80℃雰囲気下での対PETフィルム粘着力が0.2 N/20mm以上であり、かつ25℃雰囲気下で測定した対PETフィルム粘着力が0.1 N/20mm以下であることを特徴とする1〜4のいずれかに記載の電子部品製造工程用仮固定シート。
6.80℃での貯蔵弾性率G’が105Pa以上であることを特徴とする1〜5のいずれかに記載の電子部品製造工程用仮固定シート。
7.電子部品切断用であることを特徴とする1〜6のいずれかに記載の電子部品製造工程用仮固定シート。
8.積層セラミックシート押し切り用であることを特徴とする7に記載の電子部品製造工程用仮固定シート。
【発明の効果】
【0012】
本発明の仮固定シートは、積層セラミック電子部品等の電子部品の加工用仮固定シートとして好適に使用できる。例えば、積層セラミックシートの高温雰囲気下での押し切り切断工程に使用した場合では、前記仮固定シートは高温雰囲気下で高い粘着性を有しているため、作業中のチップ剥がれを防止することができ、また仮固定層は切断温度域で高い貯蔵弾性率を有しているため、高い精度で切断することができる。さらに、加熱剥離できる仮固定シートではないので、加熱処理工程を経ずに単に室温まで冷却することでチップを剥離することができるため、加熱処理工程でのチップ再付着を防止することができる。
また、仮固定シートの仮固定層には結晶性材料を使用する必要がないため、シート作製時のハンドリング性も良好となり、生産性に優れ、加熱工程も必要ないため、簡便な方法で仮固定の効果を得ることができる。
よって、電子部品を精度よく加工し、かつ効率的で容易に回収できるという効果を発揮するものである。
また、本発明による電子部品製造工程用仮固定シートは延伸することにより伸ばすことができるため、切断工程後に延伸することにより、チップ間に隙間を生じさせることができ、チップの再付着をさらに低減させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の仮固定シートの一例を部分的に示す概略断面図である。
【図2】本発明の仮固定シートを使用して積層セラミックシートを押切りする工程の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の仮固定シートの構成を、必要に応じて図面を参照しつつ説明する。
図1中、1は支持基材、2は仮固定層、3は剥離層である。
なお、剥離層3は必要に応じて設けられる層であり、本発明の仮固定シートに必須の層ではない。
【0015】
また、本発明の仮固定シートは、支持基材1の両面に仮固定層を設けた両面タイプの仮固定シートとすることもできる。その際、仮固定層のうちいずれか一方がウレタンポリマーとビニル系ポリマーとを有効成分として含有することを特徴としていればよく、他方の仮固定層はどのような粘着剤で構成されていてもよい。なお、本発明において「フィルム」という場合には、シートを含み、「シート」という場合には、フィルムを含む概念とする。ここで、ウレタンポリマーとビニル系ポリマーとを有効成分として含有するとは、これらのポリマーがブレンドされていても良く、これらのポリマーが結合していてもよいことを意味する。
さらに、仮固定層と剥離層表面を保護するために、それぞれ剥離シートを積層させておくこともできる。
【0016】
(支持基材)
支持基材1は、仮固定層の支持母体となるもので、一般にはPET等のプラスチックフィルムやシートが用いられるが、例えば、紙、布、不織布、金属箔など、又はこれらとプラスチックとの積層体、プラスチックフィルム(又はシート)同士の積層体などの適宜な薄葉体を用いうる。支持基材1の厚さは、一般には500μm以下、好ましくは5〜250μm程度であるが、これらに限定されない。
支持基材1の表面は、隣接する層(この場合は、仮固定層2)との密着性を高めるため、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等が施されていてもよい。
【0017】
(ウレタンポリマー)
仮固定層2に用いられるウレタンポリマーは、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られる。ポリオールの水酸基とイソシアネートとの反応には、例えば、ジブチルすずジラウレート、オクトエ酸すず、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン等の、ウレタン反応において一般的に使用される触媒を用いてもよい。
【0018】
ポリオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を付加重合して得られるポリエーテルポリオール、あるいは上述の2価のアルコールとアジピン酸、アゼライン酸、セパチン酸等の2価の塩基酸との重縮合物からなるポリエステルポリオールや、アクリルポリオール、カーボネートポリオール、エポキシポリオール、カプロラクトンポリオール等が挙げられる。これらの中では、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)等のポリエーテルポリオール、非結晶性のポリエステルポリオール、非結晶性のポリカーボネートポリオール等が好ましく使用される。これらのポリオール類は単独あるいは併用して使用することができる。
【0019】
ジイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートなどが挙げられる。芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。これらのジイソシアネートは単独あるいは併用で使用することができる。ウレタン反応性、アクリルとの相溶性などの観点から、ポリイソシアネートの種類、組合せ等を適宜選択することができる。
【0020】
ウレタンポリマーを形成するための上記ポリオール成分と上記ジイソシアネート成分の使用量は特に限定されるものではないが、例えば、ポリオール成分の使用量は、ジイソシアネート成分に対し、NCO/OH(当量比)が1.0以上であることが好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。NCO/OHが1.0以上では、ウレタン分子鎖の末端官能基が水酸基となり、仮固定層の強度低下を防止できる。また、NCO/OHが2.0以下であれば、適度な伸びと強度を確保することができる。
【0021】
本発明におけるウレタンポリマー成分の分子量は用いるポリオールやジイソシアネートの種類、NCO/OH比によって適宜決定することができる。その分子量は特に限定されないが、好ましくは数平均分子量(Mw)が5000以上、さらに好ましくは10000以上である。
【0022】
上記ウレタンポリマーに対し、本発明中のビニル系ポリマーとは別に水酸基含有アクリルモノマーを添加することが望ましい。水酸基含有アクリルモノマーを添加することにより、ウレタンポリマーの分子内にアクリロイル基を導入することができ、アクリルモノマーとの共重合性を付与することができる。水酸基含有アクリルモノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等が用いられる。水酸基含有アクリルモノマーの使用量は、ウレタンポリマー100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが望ましく、さらに望ましくは0.1〜5重量部である。
【0023】
(ビニル系ポリマー)
本発明における仮固定層にて使用するビニル系ポリマーは、上記ウレタンポリマーと下記のビニル系ポリマーとのブレンドによって得ても良く、また、ウレタンポリマーとビニル系モノマーの混合物を調整し、次いでビニル系ポリマーを重合することにより得ても良い。
なかでも、使用できるモノマーの種類やシート化の加工性等の点から、ビニル系モノマー単独あるいは2種以上の混合物中で、ポリオールとイソシアネートとを反応させてウレタンポリマーを形成し、得られたウレタンポリマーとビニル系モノマーとを含む混合物を、基材上に塗布し、放射線を照射して硬化させて、形成されることが好ましい。またビニル系モノマーとしては(メタ)アクリル系モノマーが好ましい。
【0024】
さらに上記のように、水酸基含有アクリルモノマーを使用することによりウレタンポリマーにアクリロイル基を導入した後にビニル系モノマーを重合することにより、該アクリロイル基がビニル基と重合してなり、該ウレタンポリマーと該ビニル系ポリマーが結合してなる樹脂とすることも可能である。
【0025】
本発明におけるビニル系ポリマーはビニル系モノマーを重合してなるポリマーであり、そのビニル系モノマーとしては上記の通り(メタ)アクリル系モノマーが好ましく用いられ、その(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;シクロへキシル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート等の脂環式構造を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホプロピルアクリレート等のスルホン酸基含有モノマ−;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の燐酸含有モノマーなどがあげられる。また、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のN−置換(メタ)アクリルアミド等のアミド系モノマー、N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルボン酸アミド類、N−ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマ−;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマ−、(メタ)アクリル酸グリシジル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、2−メトキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル系モノマ−;メチル(メタ)アクリレートやオクタデシル(メタ)アクリレート等のモノマーを1種または2種以上を用いることができる。これらの(メタ)アクリル系モノマーは、ウレタンとの相溶性、放射線等の光硬化時の重合性や、得られる高分子量体の特性を考慮して、種類、組合せ、使用量等が適宜決定される。特に(メタ)アクリル酸などの極性基を持つモノマーを使用すると加温時と冷却剥離時の粘着力のバランスが良い。
【0026】
(メタ)アクリル酸の添加量としては好ましくはウレタンポリマーとビニル系ポリマーの全量を100重量部としたときに、5重量部以上80重量部未満であることが好ましく、さらに好ましくは10重量部以上70重量部未満である。5重量部以上とすることで加温時と冷却剥離時の粘着力のバランスが得られ易く、また80重量部未満にすると柔軟性を備えて加温時の粘着力が向上する。
【0027】
本発明においては、特性を損なわない範囲内で他の多官能モノマーを添加することもできる。多官能モノマーとしては、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。
【0028】
(仮固定層)
本発明における仮固定層はウレタンポリマーとビニル系ポリマーを有効成分として含有する。ウレタンポリマーとビニル系ポリマーの比率は特に限定されないが、ウレタンポリマーとビニル系ポリマーの合計量に対し、ウレタンポリマーの占める重量は10%以上90%未満が好ましく、さらに好ましくは20%以上80%未満である。ウレタンポリマーの割合が10%以上であると高温時の弾性率が低くならず十分な加工精度を得ることができる。また90%以下ではシート作製時のハンドリング性及び生産性が良好である。
【0029】
本発明の仮固定シートは、重合によりビニル系ポリマーを構成するビニル系モノマー単独あるいは2種以上の混合物中で、ポリオールとイソシアネートとを反応させてウレタンポリマーを形成し、ウレタンポリマーと該ビニル系モノマーとを含む混合物を、支持基材上に塗布し、光重合開始剤の種類等に応じてα線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線や紫外線等の放射線、可視光等を照射することにより、硬化させて得ることができる。
【0030】
また、上記水酸基含有アクリルモノマーを使用する場合には、重合によりビニル系ポリマーを構成するビニル系モノマー単独あるいは2種以上の混合物中で、ポリオールとイソシアネートとを反応させてウレタンポリマーを形成した後に、水酸基含有アクリルモノマーを添加してウレタンポリマーと反応させ、得られた混合物を、支持基材上に塗布し、光重合開始剤の種類等に応じてα線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線や紫外線等の放射線、可視光等を照射することにより、硬化させて得ることができる。
【0031】
具体的には、ポリオールをビニル系モノマーに溶解させた後、ジイソシアネート等を添加してポリオールと反応させて粘度調整を行い、これを支持基材等に塗工した後、低圧水銀ランプ等を用いて硬化させることにより、仮固定シートを得ることもできる。この方法では、ビニル系モノマーをウレタン合成中に一度に添加してもよいし、何回かに分割して添加してもよい。また、ジイソシアネートをビニル系モノマーに溶解させた後、ポリオールを反応させてもよい。この方法によれば、分子量が限定されるということはなく、高分子量のポリウレタンを生成することもできるので、最終的に得られるウレタンの分子量を任意の大きさに設計することができる。
【0032】
この際、酸素による重合阻害を避けるために、支持基材上に塗布したウレタンポリマーとビニル系モノマーとの混合物の上に、さらに剥離処理された基材をのせて、酸素を遮断してもよいし、不活性ガスを充填した容器内に剥離ライナーを入れて、酸素濃度を下げてもよい。
【0033】
また、塗工の粘度調整のため、少量の溶剤を加えてもよい。溶剤としては、通常使用される溶剤の中から適宜選択することができるが、例えば、酢酸エチル、トルエン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0034】
本発明において、放射線等の種類や照射に使用されるランプの種類等は適宜選択することができ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト、殺菌ランプ等の低圧ランプや、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等の高圧ランプなどを用いることができる。
紫外線などの照射量は、要求される仮固定層の特性に応じて、任意に設定することができる。一般的には、紫外線の照射量は、50〜5000 mJ/cm2、好ましくは100〜4000 mJ/cm2、更に好ましくは100〜3000 mJ/cm2である。紫外線の照射量が50〜5000 mJ/cm2の範囲であれば劣化せずに十分な重合率が得られる。
【0035】
ウレタンポリマーとビニル系モノマーとを主成分とする混合物には、光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどのベンゾインエーテル;アニソールメチルエーテルなどの置換ベンゾインエーテル;2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトンなどの置換アセトフェノン;2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノンなどの置換アルファーケトール;2−ナフタレンスルフォニルクロライドなどの芳香族スルフォニルクロライド;1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどの光活性オキシム;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイドなどがあげられる。
【0036】
本発明における仮固定層の厚みは、目的等に応じて適宜選択することができるが、一般的には5〜500 μm、好ましくは10〜50μm程度である。
本発明の仮固定シートは80℃雰囲気下での対PETフィルム粘着力が0.2 N/20mm以上であり、かつ25℃雰囲気下で測定した対PETフィルム粘着力が0.1 N/20mm以下であることが好ましい。近年、押し切り切断工程は切断精度を上げるために約80℃付近の温度下で行われることが多く、その温度下での粘着力が0.2N/20mm以上であると、切断時にセラミックシートをずれなく保持することができ、好ましくは0.4N/20mm以上であればより確実に保持することが可能である。またその後室温まで冷却したときに、対PETフィルム粘着力が0.1N/20mm未満、より好ましくは0.05N/20mm以下とすると、切断したチップを仮固定シートから容易に剥離することができる。
本発明において、40℃以上の特定の温度において粘着力を発現するとは、40℃以上のある温度において初めて粘着力を発現し、そのある温度未満では粘着力を発現しないことを意味し、結局少なくとも40℃未満の温度においては粘着力を示さないことを意味する。
本発明における仮固定層の80℃での貯蔵弾性率G’は105Pa以上であることが好ましい。貯蔵弾性率G’が105Pa以下だと、切断工程などにおいて高い加工精度が得られない。
【0037】
(剥離層)
本発明における剥離層としては、上記の仮固定層と同じ組成の層とすることが可能であるが、上記の仮固定層とは異なる組成の層であって、再剥離性を備えた層とすることができる。
そのような再剥離性を備えた層としては、公知の再剥離性粘着剤からなる層でよく、加熱、紫外線等のエネルギー線の照射等により粘着力が低下して剥離性を発揮するような層や、もともと粘着力がそれほど強力ではないために、その粘着力以上の剥離力を与えることによって、容易に剥離されるような層であってもよい。
【0038】
(仮固定シートの用途)
本発明の仮固定シートは、種々の被着体の仮固定用又は保管用、運搬用粘着シートとして使用でき、その用途は特に制限されないが、電子部品の加工時の仮固定材等としての使用に特に適している。
本発明の仮固定シートを使用して、例えば、積層セラミックコンデンサや積層セラミックバリスタ等のチップ状電子部品の製造を好適に行うことができる。
【0039】
以下に図面を参照して、本発明の仮固定シート及び該仮固定シートを使用した積層セラミックシートの切断方法を説明する。
図1は本発明の仮固定シートを示す。支持基材1の一方の面に仮固定層2を設け、他方の面に剥離層3を設けてなるものである。図示はしないが仮固定層と剥離層の表面に剥離シートを積層させておくこともできる。図1の1〜3は、図2における1〜3に同じである。4は台座を示し、5は積層セラミックシートを示す。6は積層セラミックシート5切断用の押切刃を示す。本発明の仮固定シートの仮固定用粘着層を台座に貼り合わせ、熱膨張性粘着層3を積層セラミックシート5に貼り合わせることにより被加工体である積層セラミックシート5をしっかりと固定する。
【0040】
積層セラミックシート5の切断工程は、切断精度の向上を目的として高温雰囲気下(例えば、60〜100℃)で行われる。本発明の仮固定シートにおいて、仮固定層2及び剥離層3の両層は常温及び高温雰囲気下での凝集力及び接着力に優れているため、切断工程の前後を通して積層セラミックシート5をしっかりと固定することができる。特に、仮固定層2は切断時の温度下でも浮きや変形を生じないので、切断時の押切刃6の入れ込みに伴う積層セラミックシート5の位置ズレを防止し、部品単位のチップ素体として、高精度に正確な切断ができる。
切断終了後は、仮固定層2から被加工体(切断後の積層セラミックシート5)を取り外すことができる。
切断後の積層セラミックシート5を適宜な方法により回収した後、引き剥がし等により本発明の仮固定シートの剥離層3と台座4とを剥離することができる。
また、剥離層を使用しなくてもよく、この場合には支持基材1が台座に吸着等の手段により固定されてもよい。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
(実施例1)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル系モノマーとして、イソボルニルアクリレート(IBXA)を50重量部、ポリオールとして、数平均分子量650のポリ(テトラメチレン)グリコール(PTMG、三菱化学(株)製)を72.8重量部投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI、三井化学ポリウレタン(株)製)を27.2重量部滴下し、65 ℃で10時間反応させ、ウレタンポリマー-アクリル系モノマー混合物を得た。その後、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を6.5重量部滴下してさらに3時間反応させた後、アクリル酸(AA)を50重量部と光重合開始剤として0.3重量部の2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1オン(IRGACURE 651、チバ・ジャパン(株)製)を加えた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
ウレタンポリマーとアクリル系モノマー混合物を、厚さ38 μmの剥離処理したPET上に、硬化後の厚みが100 μmになるように塗布した。この上に、剥離処理したPETフィルムを重ねて被覆した後、この被覆したPETフィルム面にブラックライトを用いて紫外線(照度5 mW/cm2, 光量1000 mJ/cm2)を照射して硬化させて、PETフィルム上にウレタン-アクリル複合フィルムを形成した。
【0042】
(実施例2)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル系モノマーとして、イソボルニルアクリレート(IBXA)を80重量部、ブチルアクリレート(BA)を20重量部、ポリオールとして、数平均分子量650のポリ(テトラメチレン)グリコール(PTMG、三菱化学(株)製)を72.8重量部投入し、攪拌しながら、HXDIを27.2重量部滴下し、65 ℃で10時間反応させ、ウレタンポリマー-アクリル系モノマー混合物を得た。その後、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を6.5重量部滴下してさらに3時間反応させた後、アクリル酸(AA)を30重量部と光重合開始剤として0.3重量部のIRGACURE 651を加えた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
ウレタンポリマーとアクリル系モノマー混合物を、厚さ38 μmの剥離処理したPET上に、硬化後の厚みが100 μmになるように塗布した。この上に、剥離処理したPETフィルムを重ねて被覆した後、この被覆したPETフィルム面にブラックライトを用いて紫外線(照度5 mW/cm2, 光量1000 mJ/cm2)を照射して硬化させて、PETフィルム上にウレタン-アクリル複合フィルムを形成した。
【0043】
(実施例3)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル系モノマーとして、イソボルニルアクリレート(IBXA)を100重量部、ポリオールとして、数平均分子量650のポリ(テトラメチレン)グリコール(PTMG、三菱化学(株)製)を72.8重量部投入し、攪拌しながら、HXDIを27.2重量部滴下し、65 ℃で10時間反応させ、ウレタンポリマー-アクリル系モノマー混合物を得た。その後、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を6.5重量部滴下してさらに3時間反応させた後、光重合開始剤として0.3重量部のIRGACURE 651を加えた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
ウレタンポリマーとアクリル系モノマー混合物を、厚さ38 μmの剥離処理したPET上に、硬化後の厚みが100 μmになるように塗布した。この上に、剥離処理したPETフィルムを重ねて被覆した後、この被覆したPETフィルム面にブラックライトを用いて紫外線(照度5 mW/cm2, 光量1000 mJ/cm2)を照射して硬化させて、PETフィルム上にウレタン-アクリル複合フィルムを形成した。
【0044】
(比較例1)
アクリル系共重合体(アクリル酸2−エチルヘキシル:アクリル酸エチル:アクリル酸2−ヒドロキシエチル=70重量部:30重量部:5重量部)100重量部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン(株)製:商品名『コローネートL』)3重量部をトルエンに溶解し、厚さ100μmのポリエステルフィルム上に、乾燥後の厚さが10μmとなるように塗布した。
【0045】
(比較例2)
アクリル系共重合体(アクリル酸2−エチルヘキシル:アクリル酸エチル:アクリル酸2−ヒドロキシエチル=70重量部:30重量部:5重量部)100重量部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン(株)製:商品名『コローネートL』)2重量部をトルエンに溶解し、厚さ100μmのポリエステルフィルム上に、乾燥後の厚さが15μmとなるように塗布し、有機弾性層1を形成した。また、アクリル系共重合体(アクリル酸2−エチルヘキシル:アクリル酸エチル:アクリル酸2−ヒドロキシエチル=70重量部:30重量部:5重量部)100重量部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン(株)製:商品名『コロネートL』)1.5重量部、テルペンフェノール樹脂(住友ベークライト(株)製:商品名『スミライトレジンPR−12603N』)10重量部、熱膨張性微小球(松本油脂製薬社製:商品名『マイクロスフェアーF50D』)30重量部をトルエンに均一に混合、溶解して塗工液を作製し、セパレータ上に乾燥後の厚みが40μmとなるように塗布し、熱剥離性粘着層1を形成した。その後、上記有機弾性層と熱剥離性粘着剤層とを貼り合わせ、熱剥離型粘着シートを得た。
【0046】
(比較例3)
セチルアクリレート85重量部、メチルアクリレート10重量部、アクリル酸5重量部、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン0.1重量部を4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下で紫外線に曝露して部分的に光重合させることによって、部分重合物(モノマーシロップ)を得た。この部分重合物100重量部に、架橋剤としてヘキサンジオールジアクリレートを0.1重量部添加した後、これらを均一に混合して光重合性組成物を調製した。
片面をシリコーンで剥離処理した厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離処理面に、上記光重合性組成物を厚み100μmになるように塗布し、更にその上に厚さ38μmの片面を剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを被せ、塗布層を形成した。このシートにブラックライト(15W/cm)を用いて光照度5mW/cm2(ピーク感度最大波350nmのトプコンUVR−T1で測定)の紫外線を1000mJ/cm2照射し、目的の粘着シートを得た。
【0047】
(評価)
実施例1〜3及び比較例1、2、3で得られたフィルムについて、以下に示す方法により粘着力、貯蔵弾性率、シート保持性、チップ剥離性、再付着率、チップ直角度について評価を行った。結果を表2及び3に示す。
【0048】
80℃粘着力の測定方法
実施例及び比較例で作成したフィルムを幅10mm、長さ140mmのテープ状に切断し、厚さ25μmのPETフィルム(幅20mm)に、JIS Z 0237に準拠して80℃ホットプレート上で貼り合わせた後、80℃のプレート台付き変角度ピール試験機にセットし、3分間放置した後、剥離速度300mm/min、引っ張り角度180°で引き剥がした際の荷重を測定した。
【0049】
25℃粘着力の測定方法
80℃粘着力測定と同様にPETフィルムを貼り合せ、80℃ホットプレート上で10分間放置した後、25℃まで冷却し、変角度ピール試験機にセットし、25℃にて剥離速度300mm/min、引っ張り角度180°で引き剥がした際の荷重を測定した。
【0050】
貯蔵弾性率G’ の測定方法
貯蔵弾性率(G’)は「ARES」(TAインスツルメンツ株式会社製)にて測定を行った。なお、測定は-60 ℃〜200 ℃の温度領域を、昇温速度5 ℃/min、周波数1 Hzの条件で行った。
【0051】
シート保持性の測定方法
実施例及び比較例で得られた粘着シートに、積層セラミックシート(*1)を貼り合わせ、80℃雰囲気下に5分間放置した後、0402(0.4mm×0.2mm)サイズのチップ状となるよう押し切り加工(*2)した。この際のセラミックシートの保持性を目視にて評価した。具体的には、切断時にセラミックシートや切断済みチップが剥がれたり、ズレたりせずに加工できた場合を「○」、切断済みチップのうち、ほんのわずかのチップが剥がれたりズレたりした場合を「△」、それ以外の場合を「×」とした。
【0052】
<*1積層セラミックシート作成方法>
チタン酸バリウム(堺化学工業(株)製:商品名『BT-03/高純度ペロブスカイト』)100重量部、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製:商品名(PVB))100重量部(プロピレングリコールモノエチレンエーテル溶解品、10%ベース)、フタル酸ビス((株)ジェイプラス製:商品名(DOP)6重量部、ジグリセリンオレエート(理研ビタミン(株)製:商品名(リケエール0-71-D(E)))2重量部、及びトルエンを80重量部を攪拌・混合して、セラミックシート作製用塗工液を調製した。ついで、片面にシリコーン離型剤が塗布されたセパレータ上に、乾燥後の厚みが約50μmとなるように、上記塗工液を塗布し、80℃×5分間の乾燥処理後、セパレータから剥離して、セラミックシートを得た。このセラミックシートを10枚積層し、300kg/cm2の圧力でプレスし、積層セラミックシートを得た。
【0053】
<*2押し切り条件>
切断装置メーカー:UHT(株)、切断温度:80℃、切断深さ(テーブル面からの残し量):約75um
切断刃:厚み/100μm、先端部角度/15°
【0054】
チップ剥離性
<実施例1〜3、比較例1、3のシート>
上記押し切り切断加工を行った後に、切断されたセラミックシートが貼り合わされた仮固定シートを温度25℃、湿度65%の条件下で冷却後、切断済みチップを仮固定シートから剥離することによりチップ剥離性を評価した。具体的には、チップの破損や変形を伴わずに容易に仮固定シートから剥離できた場合を「○」、それ以外の場合を「×」として評価した。
【0055】
<比較例2のシート>
上記押し切り切断加工を行った後に、乾燥機にて130℃×10分間の加熱処理を施した後、切断チップを熱剥離型粘着シートから剥離することによりチップ剥離性を評価した。評価基準は同一とした。
【0056】
チップ再付着率
切断したチップ全数に対して、隣り合う2つ以上のチップと融着してしまっているチップ数の割合から、チップ再付着率を算出した。
【0057】
チップ直角度
各シート上で押し切り切断したチップを各10個ずつ抜き取り、チップ切断面と底面の角度をマイクロスコープで観察しながら測定した。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
本発明の電子部品製造工程用仮固定シート(実施例1、2)は、80℃でのセラミックシートの切断工程では十分な粘着力によってセラミックシートをしっかり保持すると共に、高い切断精度を得ることができ、その後に所定温度以下に冷却することにより25℃粘着力で示される様に粘着力を低下させ、効率的で容易にチップを剥離することができた。また広い設計自由度の中でハンドリング性良く作製することができた。
【0062】
また実施例3の仮固定シートは、基本的には実施例1及び2の仮固定シートと同じであるが、80℃での粘着力が実施例1及び2の仮固定シートよりも小さいために、押し切り加工によるチップの切断時において、わずかながらチップの一部に剥がれたり、ズレたりするものがあった。
それに対して、比較例1のシートは押し切り切断時にシートがずれ、また切断後にチップがシートから剥離しなかった。また比較例2のシートは加熱処理工程を経るために多くのチップが再付着してしまい、また比較例3のシートは押し切り切断後のチップの加工精度(チップ直角度)が実施例1、2に比べて劣る結果となった。
【符号の説明】
【0063】
1・・・支持基材
2・・・仮固定層
3・・・剥離層
4・・・台座
5・・・積層セラミックシート
6・・・押切刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基材と少なくともその片面に設けられた仮固定層からなる仮固定シートであって、その仮固定層がウレタンポリマーとビニル系ポリマーとを含有することを特徴とした電子部品製造工程用仮固定シート。
【請求項2】
該ビニル系ポリマーがカルボキシル基を含有することを特徴とする請求項1記載の電子部品製造工程用仮固定シート。
【請求項3】
該ウレタンポリマーの少なくとも一部がアクリロイル基末端ウレタンポリマーであることを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品製造工程用仮固定シート。
【請求項4】
40℃以上の特定の温度において粘着力を発現し、その特定の温度以下では粘着力が消失することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子部品製造工程用仮固定シート。
【請求項5】
80℃雰囲気下での対PETフィルム粘着力が0.2 N/20mm以上であり、かつ25℃雰囲気下で測定した対PETフィルム粘着力が0.1 N/20mm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子部品製造工程用仮固定シート。
【請求項6】
80℃での貯蔵弾性率G’が105Pa以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子部品製造工程用仮固定シート。
【請求項7】
電子部品切断用であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電子部品製造工程用仮固定シート。
【請求項8】
積層セラミックシート押し切り用であることを特徴とする請求項7に記載の電子部品製造工程用仮固定シート

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−52038(P2012−52038A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196251(P2010−196251)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】