説明

電極パターン検査方法及び電極パターン検査装置

【課題】 短時間で電極パターンの絶縁不良部を検出する。
【解決手段】 電極パターンの絶縁部に沿ってレーザ光を前記電極パターンに対して相対的にスキャンし、電極パターンの絶縁部両側の電極間に電気を印加して漏れ電流を測定する。そして、漏れ電流の変化を検出すると電極パターンの絶縁部のうち絶縁不良が発生している部位であると特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工基板に形成された電極パターンを検査する電極パターン検査方法及び電極パターン検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電極(電気配線)パターンの絶縁不良部にレーザ光を照射して絶縁不良を解消する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、絶縁不良部を特定することが困難であり、又レーザ光が配線基板に与えるダメージについてあまり知られていなかったため、疑わしい所には多めにレーザ光を照射していた。
【0003】
一方、電気配線パターンを有する基板上前面に赤外レーザ光をラスタスキャン照射させ、レーザ光による温度上昇で配線パターンに流れる電流が変化するタイミングを捉えて、画面上のどの場所に電流が流れているかを検出する技術が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−68829号公報
【非特許文献1】浜松ホトニクス株式会社 IR−OBIRCH解析装置 μAMOS(登録商標)−200のパンフレット 全ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術では、基板上全面をラスタスキャンするため、画面上のどの場所に電流が流れているかを検出するのに非常に時間がかかっていた。また、電流が流れているかを検出することと同時に絶縁不良部を修復することはできなかった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、短時間で電極パターンの絶縁不良部を検出することができ、さらに、その検出した絶縁不良部を修復することができる電極パターン検査方法及び電極パターン検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の本発明は、電極パターンの絶縁部に沿ってレーザ光を電極パターンに対して相対的にスキャンするステップと、電極パターンの絶縁部両側の電極間に電気を印加して漏れ電流を測定するステップと、漏れ電流の変化を検出すると電極パターンの絶縁部のうち絶縁不良が発生している部位であると特定するステップとを具備することを特徴とする電極パターン検査方である。
【0007】
第2の本発明は、レーザ光を照射するレーザ光源と、電極パターンが形成された対象物にレーザ光源から照射されるレーザ光の光路に位置するレーザ光の波長を変換する波長変換手段と、対象物の電極パターンをレーザ光源から照射されるレーザ光を用いて相対的にスキャンするスキャン手段と、波長変換手段をレーザ光源の光路内と光路外との間で移動させる移動手段と、移動手段により光路外に波長変換手段を移動させて照射されるレーザ光源からのレーザ光と、移動手段により光路内に波長変換手段を移動させてレーザ光を波長変換させたレーザ光のうちいずれかを選択する選択手段と、選択手段で、レーザ光のいずれかを選択して、対象物に形成された電極パターンをスキャン手段でスキャンし、電極パターンの絶縁部両側の電極間に電気を印加して漏れ電流の変化を測定することにより電極パターンの絶縁部のうち絶縁不良が発生している部位を検出する検出手段とを具備する電極パターン検査装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、短時間で電極パターンの絶縁不良部を検出することができ、さらに、その検出した絶縁不良部を修復することができる電極パターン検査方法及び電極パターン検査装置を提供できる。
【0009】
また、確実な絶縁を得るためにレーザ光を多めに照射すると電極パターンが形成された基板にダメージを与え、例えば、基板が圧電材料であれば圧電特性が劣化するが、本発明によると、これらの問題を低減することができる。
【0010】
さらに、絶縁不良部位の特定に関し、従来は非常に困難であるか、又は時間が多くかかっていたが、本発明によると高速に絶縁不良部位を特定することができる。
【0011】
さらに、本発明によれば、加工用と検査用という波長の異なるレーザ光を簡単な構成で正確に同じ場所に照射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の電極パターン検査装置をレーザ光照射装置に適用した一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、レーザ光照射装置100を概略的に示す図である。レーザ光照射装置100は、レーザ光源であるYAGレーザ光出力装置1、波長変換手段である波長変換結晶2、コリーメータレンズ3、反射ミラー4、反射ミラー5、偏光手段であるガルバノメータ6、f−θレンズ7、可動ステージ8、制御装置9、操作装置10、表示装置11、電源12、電流モニタ13を有している。
【0014】
YAGレーザ光出力装置1からは1064nm(ナノメートル)の赤外光を出力する。なお、この赤外光の出力の大きさは例えば操作装置10の操作により可変できる。YAGレーザ光出力装置1から出力されるレーザ光は、コリーメータレンズ3、反射ミラー4、反射ミラー5を経て、ガルバノメータ6で偏光され、f−θレンズ7を介して可動ステージ8上に載置される被加工基板14の任意の場所に照射される。
【0015】
また、YAGレーザ光出力装置1とコリーメータレンズ3との間には、波長変換結晶2が制御装置9の制御の下でレーザ光の光路内又は光路外へ移動可能となるように配置されている(移動手段)。波長変換結晶2は、レーザ光照射装置100から照射された赤外光の波長を変換させるために用いられる。すなわち、波長変換結晶2が光路外に位置しているときはYAGレーザ光出力装置1から出力される赤外光が波長変換結晶2を通過せず、波長変換結晶2が光路内に位置しているときはYAGレーザ光出力装置1から出力される赤外光が通過して波長変換される。波長変換結晶2を通過しなかった場合のレーザ光の波長は上記1064nmの赤外光のままだが、波長変換結晶2を通過した場合のレーザ光の波長は532nmの可視光に波長変換される。
【0016】
制御装置9は、YAGレーザ光出力装置1、波長変換結晶2、可動ステージ8、ガルバノメータ6、操作装置10、表示装置11と電気的に接続されている。制御装置9は、CPU、ROM、RAMなどから構成され、ROMに記憶された例えば、後述する電極パターン形成制御プログラム、電極パターン検査制御プログラム等の制御プログラムを実行することにより、レーザ光照射装置100全体を総括的に制御する。
【0017】
表示装置11には制御装置9の制御の下、レーザ光照射装置100の操作者に必要な情報が表示される。また、操作装置10は操作者から指示を受付け、その指示内容を制御装置9に伝える。この表示装置11及び操作装置10は、レーザ光照射装置100の必須の構成ではなく、外部装置である表示装置11及び操作装置10と所定のインタフェースを介して接続するように構成しても良い。
【0018】
可動ステージ8上に載置された被加工基板14には、電源12及び電流モニタ13が接続されており、被加工基板14に形成される電極パターンの絶縁部を挟んだ両側の共通電極部に接続されている。また、電流モニタ13は、電極パターンの絶縁部を挟んだ共通電極部に接続された回路を流れる電流の大きさをモニタする。このモニタされた電流の大きさは、電流モニタから制御装置9に伝えられる。
【0019】
なお、被加工基板14は可動ステージ8上に置かれているので、ガルバノメータ6を使わず可動ステージ8を動かして被加工基板14の任意の場所に照射することも可能であり、その両方を併用することも可能である。すなわち、可動ステージ8、ガルバノメータ6がレーザ光照射時に相対的に動作すれば良い。
【0020】
次に、電極パターン形成制御プログラムについて説明する。図2は、制御装置9が実行する電極パターン形成処理の要部を示すフローチャートである。
【0021】
制御装置9は、先ず、波長変換結晶2を光路内へ移動させる(S11)。そして、ガルバノメータ6を駆動するとともにYAGレーザ光出力装置1から赤外光を照射する(S12)。すなわち、YAGレーザ光出力装置1から照射された波長1064nmの赤外光が波長変換結晶2を通過することにより波長532nmの可視光に変換され、コリーメータレンズ3、反射ミラー4、反射ミラー5、ガルバノメータ6で偏光され、f−θレンズ7を介して被加工基板14上に照射され、所定の電極パターンが被加工基板14上に形成されていく。
【0022】
このように所定の電極パターンの形成が開始されると、電極パターンが形成される絶縁部を挟んだ両側に電気を与え、その際に流れた電流の大きさを検出する(S13)。なお、この電流の大きさは上述のように電流モニタ13から制御装置9に伝えられる。この実施の形態では、電流モニタ13により電流の大きさ(電流値)をモニタする場合で説明するが、電流値に限るものではなく、印加電圧を電流で割った抵抗値をモニタしても良く、また、電源12のインピーダンスが高ければ電圧降下をモニタするようにしても良い。
【0023】
次に制御装置9は、電極パターンの形成が終了したか否かを判断する(S14)。電極パターンの形成が終了していないと判断すると(S14でNO)、ステップS12の処理へ戻り、電極パターンを形成するための処理(S12、S13)が続行され、電極パターンの形成が終了したと判断すると(S14でYES)、この処理を終了する。電極パターンの形成終了は、全てのスキャンが終了していれば良く、必ずしもモニタしている漏れ電流が0になる必要はない。次に、漏れ電流の検出と修復の工程があるからである。
【0024】
図3は、被加工基板14上に形成された電極パターンを説明するための図である。図3に示すように、レーザ光でスキャンされるカットラインの内側部分が完成した電極パターンに必要な機能の部分(この例では、インクジェットヘッドに用いられる圧電アクチュエータ)である。なお、カットラインの外側は、上述した電流モニタ13で電流をモニタする際に端子間に電極を印加することを容易にする目的で設けた共通電極部である。カットラインの切断は、後述する電極パターン検査処理が終了し、良品であることが確認されたら行なわれる。このカットラインで被加工基板14を切除してしまっても良いし、基板を残したまま例えばレーザ光照射装置100から照射されるレーザ光を用いて切除しても良い。
【0025】
次に、電極パターン検査制御プログラムについて説明する。図4は、制御装置9が実行する電極パターン検査処理の要部を示すフローチャートである。
【0026】
制御装置9は、先ず、波長変換結晶2を光路外へ移動する、すなわち赤外光が選択される(S21,選択手段)。続いて、ガルバノメータ6を駆動するとともにYAGレーザ光出力装置1を駆動して被加工基板14上に形成された絶縁部にレーザ光を照射する(S22,スキャン手段)。すなわち、YAGレーザ光出力装置1照射された波長1064nmの赤外光が波長変換結晶2を通過せずに赤外光のまま、コリーメータレンズ3、反射ミラー4、反射ミラー5、ガルバノメータ6で偏光され、f−θレンズ7を介して被加工基板14上の絶縁部に照射され、形成された電極パターンの絶縁部をスキャンしていく。この際、YAGレーザ光照射装置1から照射されるレーザ光の出力は、被加工基板14に形成された電極が加工されてしまわない程度に小さくしておく。
【0027】
このように電極パターンの絶縁部のスキャンが開始されると、絶縁部を挟んだ両側に電気を与え、その際に流れた電流の大きさを検出する(S23,検出手段)。なお、この電流の大きさは上述のように電流モニタ13から伝えられる。
【0028】
次制御装置9は、全ての絶縁部に対して、すなわち、被加工基板14上に形成された電極パターンに対してのスキャンが終了したか否かを判断する(S24)。全ての絶縁部に対してスキャンが終了した場合には(S24でYES)、この処理を終了する。全ての絶縁部に対してスキャンが終了していない場合には(S24でNO)、制御装置9は、電流モニタ13から伝えられる漏れ電流の変化、すなわち増加又は減少があったか否かを判断する(S25)。
【0029】
制御装置9は、漏れ電流の変化がないと判断すると(S25でNO)、ステップS22の処理へ戻り、電極パターンの絶縁部をスキャンするための処理が続行される。一方、漏れ電流の変化があったと判断すると(S25でYES)、制御装置9は漏れ電流の変化があった座標を制御装置9内のRAMの所定エリアに記憶する(S26,記憶手段)。
【0030】
このように座標を記憶すると、制御装置9はYAGレーザ光出力装置1からのレーザ光の照射を停止し(S27)、波長変換結晶2を光路内へ移動する(S28)。そして、制御装置9は、ガルバノメータ6を駆動するとともにYAGレーザ光出力装置1を駆動して、ステップS26で制御装置9内のRAMに記憶した座標に基づいて、レーザ光を被加工基板14へ照射する(S29,照射手段)。同時にYAGレーザ光出力装置1から出力されるレーザ光の出力は、被加工基板14上の電極を切除できる程度に大きくあげておく。すなわち、YAGレーザ光出力装置1から照射された波長1064nmの赤外光が波長変換結晶2を通過することにより波長532nmの可視光に変換され、その変換された可視光がコリーメータレンズ3、反射ミラー4、反射ミラー5、ガルバノメータ6で偏光され、f−θレンズ7を介して被加工基板14上の漏れ電流が検出された座標に照射される。
【0031】
このときレーザ光の照射は、漏れ電流を検出した1点だけでなくその周囲にも当てるようにすると、より確実に絶縁不良を解消できる。すなわち、ガルバノメータ6を被加工基板14上の絶縁部に沿って微動させながらレーザ光を照射すれば漏れ電流の発生場所が絶縁部に沿って長さを持っている場合にも対応でき、さらに、絶縁部と直行方向に微動させて絶縁部に沿った複数本の照射を行なえば、絶縁部を加工されにくい部位があったとしてもその周囲を加工して絶縁を保つことができる。
【0032】
このようにレーザ光を照射すると、制御装置9はYAGレーザ光出力装置1の赤外光の照射を停止する(S30)。そして、処理はステップS21へ戻り、記憶された座標を起点にしてそれ以降のスキャンを再開し、上述した処理がステップS24で全ての絶縁部に対してスキャンが終了したと判断されるまで繰り返される(再検出手段)。以上は、漏れ電流を検出した時点で逐次加工を行なう方法について説明したが、最初に全てのスキャンを完了し、全ての絶縁不良部位を記憶してから、波長変換結晶2を移動し、記憶した全ての絶縁不良部位を加工するようにしても良い。
【0033】
続いて、レーザ光照射装置100の電極パターン形成、漏れ電流検出と再加工の流れを詳細に説明する。ユーザは、可動ステージ8上に、電極パターンを形成したい被加工基板14(例えば、ニッケルのメッキ膜が形成された圧電材基板)を可動ステージ8上に載置し、操作装置10を用いて電極パターンを形成して所定の操作を行う。
【0034】
すると、波長変換結晶2がYAGレーザ光出力装置1から照射されるレーザ光の光路内に移動され、YAGレーザ光出力装置1から出力される赤外光が可視光に波長変換される。なお可視光の532nmは、ニッケルメッキ膜を切除するのに適度な波長である。そして、所望の電極(電気配線)パターンに従って、ガルバノメータ6が駆動されるとともに波長変換された可視光が被加工基板14上に照射されることにより、電極を切除し、電極パターンが被加工基板14上に形成される。この電極パターンを形成する際のレーザ光の出力は、被加工基板14上の電極切除が可能な出力に設定しておく必要がある。次いで、電極パターンの絶縁部を挟んだ両側の電極に電気が与えられると、その際流れた電流が電流モニタ13から制御装置9に伝えられる。
【0035】
このように電極パターンが形成された後、電極パターンの絶縁部がスキャンされ漏れ電流が生じるか否かが検査される。光路内に位置している波長変換結晶2が光路外へ移動され、YAGレーザ光出力装置1から照射される赤外光が波長変換されずに、被加工基板14上に形成された電極パターンの絶縁部がスキャンされる。この被加工基板14上に形成された電極パターンをスキャンするレーザ光の波長は、被加工基板14にダメージを与えない程度の出力に設定しおく必要がある。そして、ガルバノメータ6を駆動するとともにYAGレーザ光出力装置1から赤外光が被加工基板14上に形成された電極パターンをスキャンする際に、漏れ電流に増加又は減少があるかがモニタされる。赤外光が問題のない絶縁部に照射されている間は、漏れ電流がないため電流値は変化しない。ところが、赤外光が問題のある絶縁部(漏れ電流のある部位)に照射されると、当該部位の温度が赤外光により上昇するため、温度係数に従って漏れ電流の電流量が変化、すなわち増加、又は減少する。
【0036】
このように電極パターンのスキャン時に漏れ電流の変化を検出されると、その座標が記憶された後、YAGレーザ光出力装置1の赤外光の照射が停止され、波長変換結晶2が光路内へ移動した後、被加工基板14上の当該座標に波長変換された可視光が照射される。これにより、漏れ電流の生じた部位の電極が切除される。漏れ電流の生じた部位の電極の切除が終了すると、YAGレーザ光出力装置1の赤外光の照射が停止され、波長変換結晶2が光路外へ移動される。その後、再び被加工基板14上に形成された電極パターンの絶縁部がスキャンされる。
【0037】
電極パターンの絶縁部がスキャンされて再び漏れ電流が検出されたら、当該部位の電極を切除するための上述した処理が繰り返されるが、電極パターンの絶縁部を最後までスキャンしても漏れ電流の変化が検出されない場合には、漏れ電流のないことが確認され検査が終了される。
【0038】
このレーザ光照射装置100によると、被加工基板14上に電極パターンを形成するときは赤外光を波長変換した可視光を用い、被加工基板14上に形成された電極パターンをスキャンするときは赤外光を用いることにより、被加工基板14にダメージを与えることを防止でき、電極パターンの絶縁部をスキャンするときに電流モニタ13でモニタされる漏れ電流の変化を検出することにより、短時間で電極パターンの絶縁不良部を検出することができる。
【0039】
また、電極パターンの絶縁不良部を検出すると、その検出した部位を赤外光が波長変換された可視光を用いて直ちに修復することができる。
【0040】
さらに、被加工基板14上に形成された電極パターンをスキャンする際に、絶縁不良部を検出し、検出した絶縁不良部を修復する処理が、電極パターンの絶縁不良部が検出されなくなるまで行なわれるので、被加工基板14に電極パターンを形成するときの歩留まりを向上させることができる。
【0041】
この実施の形態では、被加工基板14に照射されるレーザ光の波長の変更を波長変換結晶2の光路内又は光路外への移動によって実現しているので、波長変換が容易かつ低コストで、また、波長変換結晶2の移動は照射位置に影響を与えないため2種類の波長のレーザ光を高精度で同じ位置に照射できるという利点を有している。
【0042】
なお、本案実施の形態では電極パターンが形成された被加工基板14の良否判定を絶縁部への赤外光によるスキャン後に行なっている。これは赤外光を当てない状態で検出できなかった漏れ電流が赤外光を当てたときに検出される場合があることを考慮してのものである。しかし、その確率は比較的低く、一方、スキャンにはある程度の時間を要する。したがって、本実施の形態の工程の歩留まりよりも電極パターンの絶縁部の絶縁不良部の検索時間の方が優先される場合には図2のフローチャートで電流モニタ13の値が十分に小さいときは電極パターンを検出する検出用レーザスキャンを省略し、良品として工程を終了することも可能である。その場合、レーザ光を当てずに想定することになるため漏れ電流の温度依存性を確認できないのでレーザ光照射装置100の被加工基板14の絶縁不良部の検出の精度は落ちるが、大半の良品基板はスキャンせずに工程を終了し、問題のある基板だけをスキャンして漏れ電流の発生部位特定と修復を行なうことにより工程の平均スループットを上げることができる。なお、このような場合でも温度依存性の大きな漏れ電流の検出率を上げるために被加工基板14を加熱して電流測定時の温度を上げるようにしても良い。
【0043】
また、本実施の形態では加工用に可視光、検査用に赤外光を用いているが、YAGレーザ光照射装置1から照射される赤外光の出力を下げて加工用の可視光のまま検査することも可能である。その場合検査精度は落ちるが、波長変換結晶2は不要となるので、レーザ光照射装置100はより簡単な構成となる。
【0044】
また、本実施の形態では加工用に可視光を用いたが、電極に金などを用いた場合には、紫外光の方が望ましい。その場合は、波長変換結晶2の種類を変え、すなわち、紫外光から可視光、又は、可視光から紫外光に波長変換できる波長変換結晶を用いればよい。
【0045】
さらに、被加工基板14は必ずしも上記実施の形態のレーザ光でパターニング加工しなくても良い。すなわち、フォトリソ法などにより予め加工されたものに上記実施の形態の電極パターン検査処理を適用し、レーザ光照射装置100では検査と修復のみを行なうようにしても良い。
【0046】
さらに、本実施の形態では、検査時と加工時で用いるレーザ光の波長を切り替えるために波長変換結晶2を移動しているが、別の方法として、例えば、図5に示すように、電極パターンの検査用に波長1300nmの赤外光出力装置15を用意し、電極パターンの加工用に波長355nmの紫外光出力装置16を容易して可動反射ミラー17を制御装置9で駆動するようにして、検査時と加工時でレーザ光を切り換えるようにしても良い。その際、予め各出力装置15,16のレーザ光の出力を設定しておけば、制御装置9による出力切替の制御を省略することができる。
【0047】
なお、本発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態におけるレーザ光照射装置の概略的な構成を示す図。
【図2】同実施の形態における電極パターン形成処理の要部を示すフローチャート。
【図3】同実施の形態における被加工基板に形成された電極パターンを説明するための図。
【図4】同実施の形態における電極パターン検査処理の要部を示すフローチャート。
【図5】本発明を適用した他のレーザ光照射装置の概略的な構成を示す図。
【符号の説明】
【0049】
1…YAGレーザ光出力装置、2…波長変換結晶、3…コリーメータレンズ、4,5…反射ミラー、6…ガルバノメータ、7…f−θレンズ、8…可動ステージ、9…制御装置、10…操作装置、11…表示装置、12…電源、13…電流モニタ、14…被加工基板、15…赤外光出力装置、16…紫外光出力装置、17…可動反射ミラー、100,101…レーザ光照射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極パターンの絶縁部に沿ってレーザ光を前記電極パターンに対して相対的にスキャンするステップと、
前記電極パターンの絶縁部両側の電極間に電気を印加して漏れ電流を測定するステップと、
前記漏れ電流の変化を検出すると前記電極パターンの絶縁部のうち絶縁不良が発生している部位であると特定するステップと、
前記漏れ電流の変化を検出した部位を記憶するステップとを具備することを特徴とする電極パターン検査方法。
【請求項2】
前記記憶した部位に前記スキャンするステップで前記電極パターンをスキャンしたときとは異なる波長のレーザ光を照射するステップとを具備することを特徴とする請求項1記載の電極パターン検査方法。
【請求項3】
前記照射するステップにより前記部位を照射した後、前記電極パターンの絶縁部のうち絶縁不良が発生している部位がなくなるまで上記各ステップを繰り返すことを特徴とする請求項2記載の電極パターン検査方法。
【請求項4】
前記レーザ光は前記対象物に電極パターンが加工されない出力であり、前記波長が異なるレーザ光は前記電極パターンが加工される出力であることを特徴とする請求項1又は2記載の電極パターン検査方法。
【請求項5】
前記レーザ光は赤外光、前記波長が異なるレーザ光は前記赤外光より短い波長のレーザ光であることを特徴とする請求項1又は2記載の電極パターン検査方法。
【請求項6】
前記スキャンするステップは、対象物を載置する載置台を移動させてスキャンするものであることを特徴とする請求項1又は2記載の電極パターン検査方法。
【請求項7】
前記スキャンするステップは、レーザ光を偏光させてスキャンするものであることを特徴とする請求項1又は2記載の電極パターン検査方法。
【請求項8】
レーザ光を照射するレーザ光源と、
電極パターンが形成された対象物に前記レーザ光源から照射されるレーザ光の光路に位置する前記レーザ光の波長を変換する波長変換手段と、
前記対象物の電極パターンを前記レーザ光源から照射されるレーザ光を用いて相対的にスキャンするスキャン手段と、
前記波長変換手段を前記レーザ光源の光路内と光路外との間で移動させる移動手段と、
前記移動手段により前記光路外に前記波長変換手段を移動させて照射される前記レーザ光源からのレーザ光と、前記移動手段により前記光路内に前記波長変換手段を移動させて前記レーザ光を波長変換させたレーザ光のうちいずれかを選択する選択手段と、
前記選択手段で、前記レーザ光のいずれかを選択して、前記対象物に形成された電極パターンの絶縁部を前記スキャン手段でスキャンし、前記電極パターンの絶縁部両側の電極間に電気を印加して漏れ電流の変化を測定することにより前記電極パターンの絶縁部のうち絶縁不良が発生している部位を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出した絶縁不良が発生した部位を記憶する記憶手段とを具備することを特徴とする電極パターン検査装置。
【請求項9】
前記記憶手段で記憶した部位に、前記検出手段で選択していないレーザ光を前記選択手段により選択して前記記憶手段で記憶された部位を照射する照射手段とを具備することを特徴とする請求項8記載の電極パターン検査装置。
【請求項10】
前記照射手段により前記部位を照射した後、前記検出手段により前記電極パターンの絶縁部のうち絶縁不良が発生している部位があるか否かを再び検出する再検出手段とを具備し、
この再検出手段で前記電極パターンの絶縁部のうち絶縁不良が発生している部位があることを検出した場合には、前記記憶手段で前記部位を記憶し、前記照射手段で前記部位を照射することを前記電極パターンの絶縁部のうち絶縁不良が発生している部位が前記検出手段で検出できなくなるまで行なうことを特徴とする請求項9記載の電極パターン検査装置。
【請求項11】
前記レーザ光は前記対象物に電極パターンが加工されない出力であり、前記波長変換されたレーザ光は前記電極パターンが加工される出力でることを特徴とする請求項8又は9記載の電極パターン検査装置。
【請求項12】
前記レーザ光は赤外光、前記波長変換されたレーザ光は前記赤外光より短い波長のレーザ光であることを特徴とする請求項8又は9記載の電極パターン検査装置。
【請求項13】
前記対象物を載置する載置台と、
この載置台を移動させる移動機構とを具備し、
前記スキャン手段は、前記移動機構により前記載置台を移動させてスキャンするものであることを特徴とする請求項8又は9記載の電極パターン検査装置。
【請求項14】
前記対象物を載置する載置台と、
前記光源から照射されるレーザ光に基づくレーザ光を偏光する偏光手段と、
前記スキャン手段、前記偏光手段により前記光源から照射されるレーザ光に基づくレーザ光を偏光させてスキャンするものであることを特徴とする請求項8又は9記載の電極パターン検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−27987(P2008−27987A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−195938(P2006−195938)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】