電極リード接続体及び電極リード接続アセンブリ
【課題】接合部分の腐食を抑制でき、電池モジュール製造作業を簡便にすることができる電極リード接続体及び電極リード接続アセンブリを提供する。
【解決手段】一方の電池セル11に設けられた正極リード12と、一方の電池セル11に隣接する他方の電池セル11に設けられ、正極リード12とは異なる金属からなる負極リード13と、を接続する電極リード接続体10において、正極リード12と同じ金属からなり、正極リード12に接続される正極接続部材14と、負極リード13と同じ金属からなり、負極リード13に接続される負極接続部材15と、を備え、正極接続部材14は、正極リード12との接続部分以外の部分で負極接続部材15と接合されており、正極接続部材14の負極接続部材15との接合部分16以外の部分の表面積が負極接続部材15の正極接続部材14との接合部分16以外の部分の表面積の2倍以上であるものである。
【解決手段】一方の電池セル11に設けられた正極リード12と、一方の電池セル11に隣接する他方の電池セル11に設けられ、正極リード12とは異なる金属からなる負極リード13と、を接続する電極リード接続体10において、正極リード12と同じ金属からなり、正極リード12に接続される正極接続部材14と、負極リード13と同じ金属からなり、負極リード13に接続される負極接続部材15と、を備え、正極接続部材14は、正極リード12との接続部分以外の部分で負極接続部材15と接合されており、正極接続部材14の負極接続部材15との接合部分16以外の部分の表面積が負極接続部材15の正極接続部材14との接合部分16以外の部分の表面積の2倍以上であるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の電池セルの正極リードと、隣接する他方の電池セルの正極リードとは異なる金属からなる負極リードと、を接続する電極リード接続体及び電極リード接続アセンブリに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池の実用化が進展している。非水電解質二次電池は鉛蓄電池など他の電池と比較して単位体積(単位質量)当たりのエネルギ出力が高いため、移動体通信機器、ノートパソコンを始め、電気自動車やハイブリッド自動車、更には太陽電池など再生可能エネルギを使用した電力の蓄電システムへの適用が進められている。
【0003】
こうした非水電解質二次電池の電池セルは、正極と負極との間にセパレータを配して積層構造とした電極群を作製し、これを外装体に収納した後、外装体内に電解液を封入することにより製造される。正極の基材にはAlが用いられ、負極の基材にはCuが用いられる。図13に示すように、電池セル130の正極には正極リード131が接続されると共に負極には負極リード132が接続され、この正負の電極リード131,132で他の電池セル130や制御装置と電気的に接続される。電極リード131,132の材質としては、正極リード131にはAlが用いられ、負極リード132にはCu又はNiが用いられている。
【0004】
このような非水電解質二次電池は移動体通信機器など一部の機器では電池セル130単体で用いられるが、電気自動車など大出力が必要な機器では電池セル130単体の出力では当然足りず、複数の電池セル130を直並列接続して所望の電気エネルギを得ることになる。この場合、正極リード131と負極リード132とを接続する必要があるが、前述のように正極リード131にはAlが用いられ、負極リードにはCu又はNiが用いられているため、異種金属同士の接合を行わなければならない。異種金属同士の接合では、金属のイオン化傾向の違いによる局部電池効果によって接合部分の腐食問題が懸念される。また、接合自体についても金属接合で一般的な抵抗溶接などではそれぞれの金属の持つ融点の違いにより、安定した接合強度を得るのは困難であるという課題がある。更に複数の電池セル130を組み合わせて効率良く充放電を行うためには、各電池セル130の状態、一般的には電圧を監視する必要があり、このための電圧監視用ケーブルの配線も各電池セル130間に行う必要がある。故に、電池モジュールの組立では、例えば、接続作業スペースに余裕のある電池セル130単体状態でAl材質である正極リード131とNi板とを超音波接合した後、Ni板と他の電池セル130のNi材質である負極リード132とを抵抗溶接することで電池モジュールを完成させ、その後、各電池セル130間に電圧監視用ケーブルを半田付けにより配線するといったような都合3種類の異なる接合方法で電池モジュールの組立を行っており煩雑である。
【0005】
また、例えば特許文献1には、正極又は負極と同様の金属、即ちAl又はCuで構成された第一部材と第二部材との重複箇所を冷間圧延により接合し、その重複箇所(接合部分)に耐食材を被覆したリード部材(電極リード)が開示されている。このリード部材によれば、機械的に十分な接合強度が得られ、且つ被覆による外気遮断で接合部分の腐食を防止することができるとされている。このリード部材を電池セルの正極リード又は負極リードに用いることで電池セル間の電極接続では同種金属同士の接合となるため、局部電池効果による腐食を原理的に発生させずに、例えば抵抗溶接のようなより簡便な方法を採用することが可能となる。
【0006】
その他、例えば特許文献2には、正極リード部材としてAl板にCu板をレーザ溶接などで接合し、接合部分を樹脂で被覆した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−108584号公報
【特許文献2】特開2005−19213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2では、耐食材などによる封止が行われているが、耐食材は必ずしも部材全面を覆うことができないため、その隙間部分から腐食が進行することがあった。また、耐食材による封止は樹脂による保護膜によりなされるため、経年、使用環境に起因する劣化、機械的な接触による損傷などで接合部分が露出してしまう可能性もある。
【0009】
特許文献2では、電池セルの製造後、電極リード部材に異種金属を接合、樹脂被覆する場合には接続終了後の組電池形態での樹脂被覆作業性が悪く、不良品となった場合の損失も大きく、リード部材だけでなく電池セル或いはそれ以上に影響を及ぼしてしまう。
【0010】
そこで、本発明の目的は、接合部分の腐食を抑制でき、電池モジュール製造作業を簡便にすることができる電極リード接続体及び電極リード接続アセンブリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために創案された本発明は、一方の電池セルに設けられた正極リードと、前記一方の電池セルに隣接する他方の電池セルに設けられ、前記正極リードとは異なる金属からなる負極リードと、を接続する電極リード接続体において、前記正極リードと同じ金属からなり、前記正極リードに接続される正極接続部材と、前記負極リードと同じ金属からなり、前記負極リードに接続される負極接続部材と、を備え、前記正極接続部材は、前記正極リードとの接続部分以外の部分で前記負極接続部材と接合されており、前記正極接続部材の前記負極接続部材との接合部分以外の部分の表面積が前記負極接続部材の前記正極接続部材との接合部分以外の部分の表面積の2倍以上である電極リード接続体である。
【0012】
前記接合部分は、前記正極接続部材の端面と前記負極接続部材の端面とが突き合わされて接合されていても良い。
【0013】
前記接合部分は、前記正極接続部材の一部と前記負極接続部材の一部とが重ね合わされて接合されていても良い。
【0014】
前記接合部分は、前記正極接続部材の一部と前記負極接続部材の一部とが重ね合わされ、前記正極接続部材の端面と前記負極接続部材の前記正極接続部材が重ね合わされた面、及び前記負極接続部材の端面と前記正極接続部材の前記負極接続部材が重ね合わされた面が各々接合されていても良い。
【0015】
前記接合部分は、前記正極接続部材及び前記負極接続部材の各端部が折り曲げられた折り曲げ部を有し、前記折り曲げ部同士を互いに咬み合わせるように前記正極接続部材と前記負極接続部材とが接合されていても良い。
【0016】
前記接合部分は、前記折り曲げ部が押圧されて接合されていても良い。
【0017】
前記正極接続部材はアルミニウムで構成され、前記負極接続部材は銅、銅合金、ニッケル、ニッケルめっきが施された銅のいずれか一種から選択された金属で構成されても良い。
【0018】
前記正極接続部材の表面にZnOからなる酸化膜が形成されても良い。
【0019】
前記負極接続部材に電圧監視用ケーブルが接続されても良い。
【0020】
また本発明は、前記電極リード接続体を複数備え、これら電極リード接続体の各々に電圧監視用ケーブルが接続されており、前記電圧監視用ケーブルが集合されてハーネスが形成された電極リード接続アセンブリである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、接合部分の腐食を抑制でき、電池モジュール製造作業を簡便にすることができる電極リード接続体及び電極リード接続アセンブリを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る電極リード接続体を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電極リード接続体を示す斜視図である。
【図3】図1の電極リード接続体を用いた電池セルの接続構造を示す斜視図である。
【図4】実施例で用いた電極リード接続体を示す断面図である。
【図5】実施例で用いた電極リード接続体を示す断面図である。
【図6】実施例で用いた電極リード接続体を示す上面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る電極リード接続体における接合部分を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る電極リード接続体における接合部分を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る電極リード接続体における接合部分を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る電極リード接続体における接合部分を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る電極リード接続体における接合部分を示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る電極リード接続アセンブリを示す斜視図である。
【図13】従来技術に係る電池セルの接続構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0024】
図1〜3に示すように、本実施の形態に係る電極リード接続体10は、一方の電池セル11に設けられた正極リード12と、一方の電池セル11に隣接する他方の電池セル11に設けられ、正極リード12とは異なる金属からなる負極リード13と、を接続するものであり、正極リード12と同じ金属からなり、正極リード12に接続される正極接続部材14と、負極リード13と同じ金属からなり、負極リード13に接続される負極接続部材15と、を備える。
【0025】
この電極リード接続体10は、複数の電池セル11間に配置してこれらを接続することで電池モジュール30を作製するためのものである。
【0026】
電池セル11の正極はアルミニウム(Al)からなり、負極は銅(Cu)からなる。また、正極リード12はAl又はその合金からなり、負極リード13はCu、ニッケル(Ni)又はNiめっきが施されたCuからなる。
【0027】
正極接続部材14と負極接続部材15は互いに金属が異なり、正極接続部材14は正極リード12と同種金属からなり、負極接続部材15は負極リード13と同種金属からなる。即ち、正極接続部材14はAlで構成され、負極接続部材15はCu、Cu合金、Ni、Niめっきが施されたCuのいずれか一種から選択された金属で構成される。負極接続部材15をCu合金、Ni、Niめっきが施されたCuで構成することができるのは、これら金属がCu(純Cu)と同等の腐食電位にあるためである。
【0028】
また、正極接続部材14の表面にZnOからなる酸化膜が形成されても良い。これにより、正極接続部材14の腐食の進展を抑止する効果を得られる。なお、正極接続部材14の表面に酸化膜を形成するためには、めっきや溶射などの工法を用いれば良い。
【0029】
正極接続部材14と負極接続部材15は、例えばはんだ接続、超音波溶接、又はレーザ溶接によって接合されて接合部分16が形成される。正極接続部材14と負極接続部材15とを接合する際にレーザ溶接を用いる場合は、融点の低い金属側(即ち、Alからなる正極接続部材14側)からレーザ光線を当てるようにすると良い。このような工法を採ることにより、例えば抵抗溶接などでは困難とされる異種金属の接合が高い接合強度で達成できる。
【0030】
なお、正極接続部材14と負極接続部材15との重ね代は製造する電池モジュールの大きさにより適宜変更することができる。また、レーザ光線の1点当たりの照射範囲は狭いので接合部分16のサイズによらず、所望の接合強度確保のために打点数を増やすことが可能である。
【0031】
更に、図2に示すように、負極接続部材15にその金属と同種の金属からなる導体を有する電圧監視用ケーブル17を接続しても良い。電極リード接続体10と電圧監視用ケーブル17を同種の金属で接続することで、より一般的で生産性が高い、例えば抵抗溶接を採用することができると同時に、局部電池効果による接続部の腐食現象の発生を抑制することができる。
【0032】
さて、本実施の形態に係る電極リード接続体10において、正極接続部材14は、正極リード12との接続部分以外の部分で負極接続部材15と接合されており、正極接続部材14の負極接続部材15との接合部分16以外の部分の表面積が負極接続部材15の正極接続部材14との接合部分16以外の部分の表面積の2倍以上である。即ち、負極接続部材15の正極接続部材14との接合部分16以外の部分の表面積に比べて、腐食電位がより低い金属からなる正極接続部材14の負極接続部材15との接合部分16以外の部分の表面積を大きくすることで腐食を抑制することができる電極リード接続体10を実現している。以下にそのメカニズムを述べる。
【0033】
異種金属が接触した状態での腐食量は、各金属が単独で存在するよりも多くなる。これは、金属が単独の状態で存在する場合には、大気又は水中の酸素量によって形成される酸化物の量が決定されるが、異種金属同士が接触すると局部電池効果によって腐食が促進されてしまうからである。
【0034】
局部電池効果の起電力は、接触している金属の接合部分16以外の部分の表面積で決まるものであるので、これら金属の体積を変えることで両者の電位を制御でき、それによって腐食量もコントロールすることが可能になる。
【0035】
海水がかかるような過酷な環境において、接続したCu(負極接続部材15)とAl(正極接続部材14)の接合部分16以外の部分の表面積の比が1:1の場合には、Alの腐食量はAlが単独で存在する場合に比べて20倍も多くなるが、これを1:5とすることで2倍程度にまで低減することができる。更に、1:20とすることで1.5倍程度にまで腐食量を低減することができるが、両部材の寸法が大幅に異なることになるため、接合などの作業性が低下する。逆に、1:0.1とAlのCuとの接合部分16以外の部分の表面積を低減すると腐食量は大幅に増加し、Al単独の場合の100倍にも達する。
【0036】
このような理由から、本実施の形態では、正極接続部材14の負極接続部材15との接合部分16以外の部分の表面積が負極接続部材15の正極接続部材14との接合部分16以外の部分の表面積の2倍以上であることとしている。なお、前述したように、あまりにも両者の大きさが異なるような比率にするのは作業性の観点から好ましくない。
【0037】
正極接続部材14と負極接続部材15の接合部分16以外の部分の表面積の比率を変更するためには、両者の長さをL1:L2にして異ならせたり(図4参照)、両者の厚さをt1:t2にして異ならせたり(図5参照)、両者の幅をW1:W2にして異ならせたり(図6参照)すれば良い。これらは配線部の制約により適宜選定することが可能である。
【0038】
この正極接続部材14と負極接続部材15との接合方法には様々な方法を採用することができる。
【0039】
例えば図7に示すように、接合部分16は、長さをL1:L2にして異ならせた正極接続部材14の端面と負極接続部材15の端面とが突き合わされて接合されていても良い。これはレーザ溶接、スポット抵抗溶接により接合したものであり、各種接合を行うことによって形成される溶接痕18,18に挟まれて正極接続部材14と負極接続部材15が接触している部分が接合部分16となる。この構造は、両者間に段差が生じないため、全体を小型化することが可能になる。
【0040】
また図8に示すように、接合部分16は、長さをL1:L2にして異ならせた正極接続部材14の一部と負極接続部材15の一部とが重ね合わされて接合されていても良い。これはレーザ溶接、スポット抵抗溶接、又は超音波溶接により接合したものであり、各種接合を行うことによって形成される溶接痕18,18に挟まれて正極接続部材14と負極接続部材15が接触している部分が接合部分16となる。この構造は、加工の自由度が高く、低コスト化に向いている。
【0041】
図9は図8の変形例であり、接合部分16は、長さをL1:L2にして異ならせた正極接続部材14の一部と負極接続部材15の一部とが重ね合わされ、正極接続部材14の端面と負極接続部材15の正極接続部材14が重ね合わされた面、及び負極接続部材15の端面と正極接続部材14の負極接続部材15が重ね合わされた面が各々接合されている。この場合には、前述した種々の溶接工法に加えてはんだ18’,18’を用いたはんだ接続を適用することが可能となる。このような各種接合を行うことによって形成される溶接痕18,18、又ははんだ18’、18’に挟まれて正極接続部材14と負極接続部材15が接触している部分が接合部分16となる。
【0042】
また図10に示すように、接合部分16は、長さをL1:L2にして異ならせた正極接続部材14及び負極接続部材15の各端部が折り曲げられた折り曲げ部19を有し、折り曲げ部19同士を互いに咬み合わせるように正極接続部材14と負極接続部材15とが接合されていても良い。これは、レーザ溶接、スポット抵抗溶接、又は超音波溶接により接合したものであり、各種接合を行うことによって形成される溶接痕18,18に挟まれて正極接続部材14と負極接続部材15が接触している部分が接合部分16となる。この構造は、厚みは増加するものの両者が多層となるため強度が向上する。
【0043】
図11は図10の変形例であり、接合部分16は、折り曲げ部19が押圧されて接合された後、その押圧成形部を溶接したものであり、更に強度を向上させることができる。なお、強度は低下するが、溶接をせずに押圧のみで接合しても良い。この構造では、押圧成形部において正極接続部材14と負極接続部材15が接触している部分が接合部分16となる。
【0044】
図10,11に示したように、機械的な工法を併用することで更に接合を強固にし、腐食の抑制効果を高めることができる。
【0045】
これまで説明した電極リード接続体10を電池セル11間の配線として用い、複数の電池セル11を接続することで図3に示した電池モジュール30を作製することができる。このとき、電極リード接続体10の正極接続部材14と電池セル11の正極リード12、及び電極リード接続体10の負極接続部材15と電池セル11の負極リード13を接合することで同種金属同士の接合とすることができる。
【0046】
異種金属同士の溶接では、融点が異なるために低融点金属が先に溶けて、高融点金属が未溶融状態となる。そのため、加工条件の選定が非常に難しくなり、電池セル11間の配線の際に異種金属同士の接合を実施するのが難しいことになる。それに対して本実施の形態によれば、予め電極リード接続体10を準備しておけば、現場でのその後の溶接が同種金属同士となるので、電池セル11間の配線加工においても作業効率が向上するメリットがある。
【0047】
更に、図2に示したように、特にリチウムイオン二次電池などで必要とされる電圧などを監視する機能を付与するための電圧監視用ケーブル17を予め接続しておくことで、電池セル11間の接続加工における作業が容易となる。
【0048】
一般に非水電解質二次電池の電池セル11は複数あるため、複数の電極リード接続体10を使用することになり、電極リード接続体10に接続される電圧監視用ケーブル17が煩雑になることが予想される。そのため、図12に示すように、電極リード接続体10を複数備え、これら電極リード接続体10の各々に電圧監視用ケーブル17が接続されており、電圧監視用ケーブル17が集合されてハーネス20が形成された電極リード接続アセンブリ120とすることで、作業の煩雑さを抑止する効果がある。
【0049】
これらは単独で実施することも可能であるが、相互に組み合わせることで各々の効果を発現することができる。
【0050】
以上要するに、本発明によれば、接合部分の腐食を抑制でき、電池モジュール製造作業を簡便にすることができる電極リード接続体及び電極リード接続アセンブリを提供することができる。
【0051】
更に、接合自体が困難な異種金属同士の接合を別工程とすることで、電池セルの電極間の接続が容易になる。また、電極リード接続体に予め電圧監視用ケーブルを接続したものとすることで、電極間接続後の狭い作業空間で接続を行うより接続加工の自由度を高めることができ、更に多くの配線を束ねた構造を採用することで加工の煩雑さを回避することが可能となる。
【実施例】
【0052】
以下、従来例、実施例、及び比較例について説明する。
【0053】
Cuからなる負極接続部材の正極接続部材との接合部分以外の部分の表面積とAlからなる正極接続部材の負極接続部材との接合部分以外の部分の表面積の比率と、Alの腐食量との関係について調査した。腐食環境は、海水に浸される過酷な状態を想定し、3%NaCl水溶液を用いた。両部材の寸法は、幅10mm、厚さ1mmとし、長さを変えたCuとAlの接続部材を数種類用意した。正極接続部材と負極接続部材は、正極接続部材の端面と負極接続部材の端面とを突き合わせて接合した。1000mlの3%NaCl水溶液の中に両部材を接合した電極リード接続体を浸漬して1週間放置した後に、Alの腐食量を測定した。腐食生成物としてAlの酸化物、塩化物があり、これらの重量増加分を測定して腐食量とした。腐食量の結果から、電極リード接続体として合格するものを○、特に優秀なものを◎とし、不合格を×とした。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示すように、Al単体の腐食量を1としたとき、従来例1のようにCuのAlとの接合部分以外の部分の表面積と、AlのCuとの接合部分以外の部分の表面積とが同じ1:1の場合には腐食量が20倍となった。それに対して1:2の実施例1は10倍、1:5の実施例2は2倍、1:20の実施例3は1.5倍、1:40の実施例4は1.3倍程度にまで低減した。
【0056】
比較例1としてAlのCuとの接合部分以外の部分の表面積がCuのAlとの接合部分以外の部分の表面積に比べて1:0.1と少ない場合を検討したが、Al単体の腐食量に対して、Cuを接合した際の腐食量が100倍と非常に大きくなった。
【0057】
更に、CuのAlとの接合部分以外の部分の表面積に対するAlのCuとの接合部分以外の部分の表面積を1:40より大きくした場合を検討したが、AlのCuとの接合部分以外の部分の表面積を大きくすることで腐食量は低減したものの接合加工が困難になるなどデメリットが大きくなるため、Cu:Alの接合部分以外の部分の表面積の比率は1:40程度までが好ましい。
【0058】
接合部分以外の部分の表面積の比率の変更は、図4〜6に示したようにして行ったが、いずれの方法でも実施例1〜4で示したものと同じ効果が得られた。
【0059】
このように本発明による電極リード接続体は、機械的に十分な接合強度を有すると同時に異種金属同士の接合による局部電池効果に起因する接合部分における腐食を効果的に抑制することができる。また、接続作業を簡便にすることが可能で、配線後の電圧監視用ケーブルの整列も容易に行える。
【符号の説明】
【0060】
10 電極リード接続体
11 電池セル
12 正極リード
13 負極リード
14 正極接続部材
15 負極接続部材
16 接合部分
17 電圧監視用ケーブル
18 溶接痕
18’ はんだ
19 折り曲げ部
20 ハーネス
30 電池モジュール
120 電極リード接続アセンブリ
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の電池セルの正極リードと、隣接する他方の電池セルの正極リードとは異なる金属からなる負極リードと、を接続する電極リード接続体及び電極リード接続アセンブリに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池の実用化が進展している。非水電解質二次電池は鉛蓄電池など他の電池と比較して単位体積(単位質量)当たりのエネルギ出力が高いため、移動体通信機器、ノートパソコンを始め、電気自動車やハイブリッド自動車、更には太陽電池など再生可能エネルギを使用した電力の蓄電システムへの適用が進められている。
【0003】
こうした非水電解質二次電池の電池セルは、正極と負極との間にセパレータを配して積層構造とした電極群を作製し、これを外装体に収納した後、外装体内に電解液を封入することにより製造される。正極の基材にはAlが用いられ、負極の基材にはCuが用いられる。図13に示すように、電池セル130の正極には正極リード131が接続されると共に負極には負極リード132が接続され、この正負の電極リード131,132で他の電池セル130や制御装置と電気的に接続される。電極リード131,132の材質としては、正極リード131にはAlが用いられ、負極リード132にはCu又はNiが用いられている。
【0004】
このような非水電解質二次電池は移動体通信機器など一部の機器では電池セル130単体で用いられるが、電気自動車など大出力が必要な機器では電池セル130単体の出力では当然足りず、複数の電池セル130を直並列接続して所望の電気エネルギを得ることになる。この場合、正極リード131と負極リード132とを接続する必要があるが、前述のように正極リード131にはAlが用いられ、負極リードにはCu又はNiが用いられているため、異種金属同士の接合を行わなければならない。異種金属同士の接合では、金属のイオン化傾向の違いによる局部電池効果によって接合部分の腐食問題が懸念される。また、接合自体についても金属接合で一般的な抵抗溶接などではそれぞれの金属の持つ融点の違いにより、安定した接合強度を得るのは困難であるという課題がある。更に複数の電池セル130を組み合わせて効率良く充放電を行うためには、各電池セル130の状態、一般的には電圧を監視する必要があり、このための電圧監視用ケーブルの配線も各電池セル130間に行う必要がある。故に、電池モジュールの組立では、例えば、接続作業スペースに余裕のある電池セル130単体状態でAl材質である正極リード131とNi板とを超音波接合した後、Ni板と他の電池セル130のNi材質である負極リード132とを抵抗溶接することで電池モジュールを完成させ、その後、各電池セル130間に電圧監視用ケーブルを半田付けにより配線するといったような都合3種類の異なる接合方法で電池モジュールの組立を行っており煩雑である。
【0005】
また、例えば特許文献1には、正極又は負極と同様の金属、即ちAl又はCuで構成された第一部材と第二部材との重複箇所を冷間圧延により接合し、その重複箇所(接合部分)に耐食材を被覆したリード部材(電極リード)が開示されている。このリード部材によれば、機械的に十分な接合強度が得られ、且つ被覆による外気遮断で接合部分の腐食を防止することができるとされている。このリード部材を電池セルの正極リード又は負極リードに用いることで電池セル間の電極接続では同種金属同士の接合となるため、局部電池効果による腐食を原理的に発生させずに、例えば抵抗溶接のようなより簡便な方法を採用することが可能となる。
【0006】
その他、例えば特許文献2には、正極リード部材としてAl板にCu板をレーザ溶接などで接合し、接合部分を樹脂で被覆した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−108584号公報
【特許文献2】特開2005−19213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2では、耐食材などによる封止が行われているが、耐食材は必ずしも部材全面を覆うことができないため、その隙間部分から腐食が進行することがあった。また、耐食材による封止は樹脂による保護膜によりなされるため、経年、使用環境に起因する劣化、機械的な接触による損傷などで接合部分が露出してしまう可能性もある。
【0009】
特許文献2では、電池セルの製造後、電極リード部材に異種金属を接合、樹脂被覆する場合には接続終了後の組電池形態での樹脂被覆作業性が悪く、不良品となった場合の損失も大きく、リード部材だけでなく電池セル或いはそれ以上に影響を及ぼしてしまう。
【0010】
そこで、本発明の目的は、接合部分の腐食を抑制でき、電池モジュール製造作業を簡便にすることができる電極リード接続体及び電極リード接続アセンブリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために創案された本発明は、一方の電池セルに設けられた正極リードと、前記一方の電池セルに隣接する他方の電池セルに設けられ、前記正極リードとは異なる金属からなる負極リードと、を接続する電極リード接続体において、前記正極リードと同じ金属からなり、前記正極リードに接続される正極接続部材と、前記負極リードと同じ金属からなり、前記負極リードに接続される負極接続部材と、を備え、前記正極接続部材は、前記正極リードとの接続部分以外の部分で前記負極接続部材と接合されており、前記正極接続部材の前記負極接続部材との接合部分以外の部分の表面積が前記負極接続部材の前記正極接続部材との接合部分以外の部分の表面積の2倍以上である電極リード接続体である。
【0012】
前記接合部分は、前記正極接続部材の端面と前記負極接続部材の端面とが突き合わされて接合されていても良い。
【0013】
前記接合部分は、前記正極接続部材の一部と前記負極接続部材の一部とが重ね合わされて接合されていても良い。
【0014】
前記接合部分は、前記正極接続部材の一部と前記負極接続部材の一部とが重ね合わされ、前記正極接続部材の端面と前記負極接続部材の前記正極接続部材が重ね合わされた面、及び前記負極接続部材の端面と前記正極接続部材の前記負極接続部材が重ね合わされた面が各々接合されていても良い。
【0015】
前記接合部分は、前記正極接続部材及び前記負極接続部材の各端部が折り曲げられた折り曲げ部を有し、前記折り曲げ部同士を互いに咬み合わせるように前記正極接続部材と前記負極接続部材とが接合されていても良い。
【0016】
前記接合部分は、前記折り曲げ部が押圧されて接合されていても良い。
【0017】
前記正極接続部材はアルミニウムで構成され、前記負極接続部材は銅、銅合金、ニッケル、ニッケルめっきが施された銅のいずれか一種から選択された金属で構成されても良い。
【0018】
前記正極接続部材の表面にZnOからなる酸化膜が形成されても良い。
【0019】
前記負極接続部材に電圧監視用ケーブルが接続されても良い。
【0020】
また本発明は、前記電極リード接続体を複数備え、これら電極リード接続体の各々に電圧監視用ケーブルが接続されており、前記電圧監視用ケーブルが集合されてハーネスが形成された電極リード接続アセンブリである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、接合部分の腐食を抑制でき、電池モジュール製造作業を簡便にすることができる電極リード接続体及び電極リード接続アセンブリを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る電極リード接続体を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電極リード接続体を示す斜視図である。
【図3】図1の電極リード接続体を用いた電池セルの接続構造を示す斜視図である。
【図4】実施例で用いた電極リード接続体を示す断面図である。
【図5】実施例で用いた電極リード接続体を示す断面図である。
【図6】実施例で用いた電極リード接続体を示す上面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る電極リード接続体における接合部分を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る電極リード接続体における接合部分を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る電極リード接続体における接合部分を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る電極リード接続体における接合部分を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る電極リード接続体における接合部分を示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る電極リード接続アセンブリを示す斜視図である。
【図13】従来技術に係る電池セルの接続構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0024】
図1〜3に示すように、本実施の形態に係る電極リード接続体10は、一方の電池セル11に設けられた正極リード12と、一方の電池セル11に隣接する他方の電池セル11に設けられ、正極リード12とは異なる金属からなる負極リード13と、を接続するものであり、正極リード12と同じ金属からなり、正極リード12に接続される正極接続部材14と、負極リード13と同じ金属からなり、負極リード13に接続される負極接続部材15と、を備える。
【0025】
この電極リード接続体10は、複数の電池セル11間に配置してこれらを接続することで電池モジュール30を作製するためのものである。
【0026】
電池セル11の正極はアルミニウム(Al)からなり、負極は銅(Cu)からなる。また、正極リード12はAl又はその合金からなり、負極リード13はCu、ニッケル(Ni)又はNiめっきが施されたCuからなる。
【0027】
正極接続部材14と負極接続部材15は互いに金属が異なり、正極接続部材14は正極リード12と同種金属からなり、負極接続部材15は負極リード13と同種金属からなる。即ち、正極接続部材14はAlで構成され、負極接続部材15はCu、Cu合金、Ni、Niめっきが施されたCuのいずれか一種から選択された金属で構成される。負極接続部材15をCu合金、Ni、Niめっきが施されたCuで構成することができるのは、これら金属がCu(純Cu)と同等の腐食電位にあるためである。
【0028】
また、正極接続部材14の表面にZnOからなる酸化膜が形成されても良い。これにより、正極接続部材14の腐食の進展を抑止する効果を得られる。なお、正極接続部材14の表面に酸化膜を形成するためには、めっきや溶射などの工法を用いれば良い。
【0029】
正極接続部材14と負極接続部材15は、例えばはんだ接続、超音波溶接、又はレーザ溶接によって接合されて接合部分16が形成される。正極接続部材14と負極接続部材15とを接合する際にレーザ溶接を用いる場合は、融点の低い金属側(即ち、Alからなる正極接続部材14側)からレーザ光線を当てるようにすると良い。このような工法を採ることにより、例えば抵抗溶接などでは困難とされる異種金属の接合が高い接合強度で達成できる。
【0030】
なお、正極接続部材14と負極接続部材15との重ね代は製造する電池モジュールの大きさにより適宜変更することができる。また、レーザ光線の1点当たりの照射範囲は狭いので接合部分16のサイズによらず、所望の接合強度確保のために打点数を増やすことが可能である。
【0031】
更に、図2に示すように、負極接続部材15にその金属と同種の金属からなる導体を有する電圧監視用ケーブル17を接続しても良い。電極リード接続体10と電圧監視用ケーブル17を同種の金属で接続することで、より一般的で生産性が高い、例えば抵抗溶接を採用することができると同時に、局部電池効果による接続部の腐食現象の発生を抑制することができる。
【0032】
さて、本実施の形態に係る電極リード接続体10において、正極接続部材14は、正極リード12との接続部分以外の部分で負極接続部材15と接合されており、正極接続部材14の負極接続部材15との接合部分16以外の部分の表面積が負極接続部材15の正極接続部材14との接合部分16以外の部分の表面積の2倍以上である。即ち、負極接続部材15の正極接続部材14との接合部分16以外の部分の表面積に比べて、腐食電位がより低い金属からなる正極接続部材14の負極接続部材15との接合部分16以外の部分の表面積を大きくすることで腐食を抑制することができる電極リード接続体10を実現している。以下にそのメカニズムを述べる。
【0033】
異種金属が接触した状態での腐食量は、各金属が単独で存在するよりも多くなる。これは、金属が単独の状態で存在する場合には、大気又は水中の酸素量によって形成される酸化物の量が決定されるが、異種金属同士が接触すると局部電池効果によって腐食が促進されてしまうからである。
【0034】
局部電池効果の起電力は、接触している金属の接合部分16以外の部分の表面積で決まるものであるので、これら金属の体積を変えることで両者の電位を制御でき、それによって腐食量もコントロールすることが可能になる。
【0035】
海水がかかるような過酷な環境において、接続したCu(負極接続部材15)とAl(正極接続部材14)の接合部分16以外の部分の表面積の比が1:1の場合には、Alの腐食量はAlが単独で存在する場合に比べて20倍も多くなるが、これを1:5とすることで2倍程度にまで低減することができる。更に、1:20とすることで1.5倍程度にまで腐食量を低減することができるが、両部材の寸法が大幅に異なることになるため、接合などの作業性が低下する。逆に、1:0.1とAlのCuとの接合部分16以外の部分の表面積を低減すると腐食量は大幅に増加し、Al単独の場合の100倍にも達する。
【0036】
このような理由から、本実施の形態では、正極接続部材14の負極接続部材15との接合部分16以外の部分の表面積が負極接続部材15の正極接続部材14との接合部分16以外の部分の表面積の2倍以上であることとしている。なお、前述したように、あまりにも両者の大きさが異なるような比率にするのは作業性の観点から好ましくない。
【0037】
正極接続部材14と負極接続部材15の接合部分16以外の部分の表面積の比率を変更するためには、両者の長さをL1:L2にして異ならせたり(図4参照)、両者の厚さをt1:t2にして異ならせたり(図5参照)、両者の幅をW1:W2にして異ならせたり(図6参照)すれば良い。これらは配線部の制約により適宜選定することが可能である。
【0038】
この正極接続部材14と負極接続部材15との接合方法には様々な方法を採用することができる。
【0039】
例えば図7に示すように、接合部分16は、長さをL1:L2にして異ならせた正極接続部材14の端面と負極接続部材15の端面とが突き合わされて接合されていても良い。これはレーザ溶接、スポット抵抗溶接により接合したものであり、各種接合を行うことによって形成される溶接痕18,18に挟まれて正極接続部材14と負極接続部材15が接触している部分が接合部分16となる。この構造は、両者間に段差が生じないため、全体を小型化することが可能になる。
【0040】
また図8に示すように、接合部分16は、長さをL1:L2にして異ならせた正極接続部材14の一部と負極接続部材15の一部とが重ね合わされて接合されていても良い。これはレーザ溶接、スポット抵抗溶接、又は超音波溶接により接合したものであり、各種接合を行うことによって形成される溶接痕18,18に挟まれて正極接続部材14と負極接続部材15が接触している部分が接合部分16となる。この構造は、加工の自由度が高く、低コスト化に向いている。
【0041】
図9は図8の変形例であり、接合部分16は、長さをL1:L2にして異ならせた正極接続部材14の一部と負極接続部材15の一部とが重ね合わされ、正極接続部材14の端面と負極接続部材15の正極接続部材14が重ね合わされた面、及び負極接続部材15の端面と正極接続部材14の負極接続部材15が重ね合わされた面が各々接合されている。この場合には、前述した種々の溶接工法に加えてはんだ18’,18’を用いたはんだ接続を適用することが可能となる。このような各種接合を行うことによって形成される溶接痕18,18、又ははんだ18’、18’に挟まれて正極接続部材14と負極接続部材15が接触している部分が接合部分16となる。
【0042】
また図10に示すように、接合部分16は、長さをL1:L2にして異ならせた正極接続部材14及び負極接続部材15の各端部が折り曲げられた折り曲げ部19を有し、折り曲げ部19同士を互いに咬み合わせるように正極接続部材14と負極接続部材15とが接合されていても良い。これは、レーザ溶接、スポット抵抗溶接、又は超音波溶接により接合したものであり、各種接合を行うことによって形成される溶接痕18,18に挟まれて正極接続部材14と負極接続部材15が接触している部分が接合部分16となる。この構造は、厚みは増加するものの両者が多層となるため強度が向上する。
【0043】
図11は図10の変形例であり、接合部分16は、折り曲げ部19が押圧されて接合された後、その押圧成形部を溶接したものであり、更に強度を向上させることができる。なお、強度は低下するが、溶接をせずに押圧のみで接合しても良い。この構造では、押圧成形部において正極接続部材14と負極接続部材15が接触している部分が接合部分16となる。
【0044】
図10,11に示したように、機械的な工法を併用することで更に接合を強固にし、腐食の抑制効果を高めることができる。
【0045】
これまで説明した電極リード接続体10を電池セル11間の配線として用い、複数の電池セル11を接続することで図3に示した電池モジュール30を作製することができる。このとき、電極リード接続体10の正極接続部材14と電池セル11の正極リード12、及び電極リード接続体10の負極接続部材15と電池セル11の負極リード13を接合することで同種金属同士の接合とすることができる。
【0046】
異種金属同士の溶接では、融点が異なるために低融点金属が先に溶けて、高融点金属が未溶融状態となる。そのため、加工条件の選定が非常に難しくなり、電池セル11間の配線の際に異種金属同士の接合を実施するのが難しいことになる。それに対して本実施の形態によれば、予め電極リード接続体10を準備しておけば、現場でのその後の溶接が同種金属同士となるので、電池セル11間の配線加工においても作業効率が向上するメリットがある。
【0047】
更に、図2に示したように、特にリチウムイオン二次電池などで必要とされる電圧などを監視する機能を付与するための電圧監視用ケーブル17を予め接続しておくことで、電池セル11間の接続加工における作業が容易となる。
【0048】
一般に非水電解質二次電池の電池セル11は複数あるため、複数の電極リード接続体10を使用することになり、電極リード接続体10に接続される電圧監視用ケーブル17が煩雑になることが予想される。そのため、図12に示すように、電極リード接続体10を複数備え、これら電極リード接続体10の各々に電圧監視用ケーブル17が接続されており、電圧監視用ケーブル17が集合されてハーネス20が形成された電極リード接続アセンブリ120とすることで、作業の煩雑さを抑止する効果がある。
【0049】
これらは単独で実施することも可能であるが、相互に組み合わせることで各々の効果を発現することができる。
【0050】
以上要するに、本発明によれば、接合部分の腐食を抑制でき、電池モジュール製造作業を簡便にすることができる電極リード接続体及び電極リード接続アセンブリを提供することができる。
【0051】
更に、接合自体が困難な異種金属同士の接合を別工程とすることで、電池セルの電極間の接続が容易になる。また、電極リード接続体に予め電圧監視用ケーブルを接続したものとすることで、電極間接続後の狭い作業空間で接続を行うより接続加工の自由度を高めることができ、更に多くの配線を束ねた構造を採用することで加工の煩雑さを回避することが可能となる。
【実施例】
【0052】
以下、従来例、実施例、及び比較例について説明する。
【0053】
Cuからなる負極接続部材の正極接続部材との接合部分以外の部分の表面積とAlからなる正極接続部材の負極接続部材との接合部分以外の部分の表面積の比率と、Alの腐食量との関係について調査した。腐食環境は、海水に浸される過酷な状態を想定し、3%NaCl水溶液を用いた。両部材の寸法は、幅10mm、厚さ1mmとし、長さを変えたCuとAlの接続部材を数種類用意した。正極接続部材と負極接続部材は、正極接続部材の端面と負極接続部材の端面とを突き合わせて接合した。1000mlの3%NaCl水溶液の中に両部材を接合した電極リード接続体を浸漬して1週間放置した後に、Alの腐食量を測定した。腐食生成物としてAlの酸化物、塩化物があり、これらの重量増加分を測定して腐食量とした。腐食量の結果から、電極リード接続体として合格するものを○、特に優秀なものを◎とし、不合格を×とした。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示すように、Al単体の腐食量を1としたとき、従来例1のようにCuのAlとの接合部分以外の部分の表面積と、AlのCuとの接合部分以外の部分の表面積とが同じ1:1の場合には腐食量が20倍となった。それに対して1:2の実施例1は10倍、1:5の実施例2は2倍、1:20の実施例3は1.5倍、1:40の実施例4は1.3倍程度にまで低減した。
【0056】
比較例1としてAlのCuとの接合部分以外の部分の表面積がCuのAlとの接合部分以外の部分の表面積に比べて1:0.1と少ない場合を検討したが、Al単体の腐食量に対して、Cuを接合した際の腐食量が100倍と非常に大きくなった。
【0057】
更に、CuのAlとの接合部分以外の部分の表面積に対するAlのCuとの接合部分以外の部分の表面積を1:40より大きくした場合を検討したが、AlのCuとの接合部分以外の部分の表面積を大きくすることで腐食量は低減したものの接合加工が困難になるなどデメリットが大きくなるため、Cu:Alの接合部分以外の部分の表面積の比率は1:40程度までが好ましい。
【0058】
接合部分以外の部分の表面積の比率の変更は、図4〜6に示したようにして行ったが、いずれの方法でも実施例1〜4で示したものと同じ効果が得られた。
【0059】
このように本発明による電極リード接続体は、機械的に十分な接合強度を有すると同時に異種金属同士の接合による局部電池効果に起因する接合部分における腐食を効果的に抑制することができる。また、接続作業を簡便にすることが可能で、配線後の電圧監視用ケーブルの整列も容易に行える。
【符号の説明】
【0060】
10 電極リード接続体
11 電池セル
12 正極リード
13 負極リード
14 正極接続部材
15 負極接続部材
16 接合部分
17 電圧監視用ケーブル
18 溶接痕
18’ はんだ
19 折り曲げ部
20 ハーネス
30 電池モジュール
120 電極リード接続アセンブリ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の電池セルに設けられた正極リードと、前記一方の電池セルに隣接する他方の電池セルに設けられ、前記正極リードとは異なる金属からなる負極リードと、を接続する電極リード接続体において、
前記正極リードと同じ金属からなり、前記正極リードに接続される正極接続部材と、
前記負極リードと同じ金属からなり、前記負極リードに接続される負極接続部材と、
を備え、
前記正極接続部材は、前記正極リードとの接続部分以外の部分で前記負極接続部材と接合されており、
前記正極接続部材の前記負極接続部材との接合部分以外の部分の表面積が前記負極接続部材の前記正極接続部材との接合部分以外の部分の表面積の2倍以上であることを特徴とする電極リード接続体。
【請求項2】
前記接合部分は、前記正極接続部材の端面と前記負極接続部材の端面とが突き合わされて接合されていることを特徴とする請求項1に記載の電極リード接続体。
【請求項3】
前記接合部分は、前記正極接続部材の一部と前記負極接続部材の一部とが重ね合わされて接合されていることを特徴とする請求項1に記載の電極リード接続体。
【請求項4】
前記接合部分は、前記正極接続部材の一部と前記負極接続部材の一部とが重ね合わされ、前記正極接続部材の端面と前記負極接続部材の前記正極接続部材が重ね合わされた面、及び前記負極接続部材の端面と前記正極接続部材の前記負極接続部材が重ね合わされた面が各々接合されていることを特徴とする請求項1に記載の電極リード接続体。
【請求項5】
前記接合部分は、前記正極接続部材及び前記負極接続部材の各端部が折り曲げられた折り曲げ部を有し、前記折り曲げ部同士を互いに咬み合わせるように前記正極接続部材と前記負極接続部材とが接合されていることを特徴とする請求項1に記載の電極リード接続体。
【請求項6】
前記接合部分は、前記折り曲げ部が押圧されて接合されていることを特徴とする請求項5に記載の電極リード接続体。
【請求項7】
前記正極接続部材はアルミニウムで構成され、
前記負極接続部材は銅、銅合金、ニッケル、ニッケルめっきが施された銅のいずれか一種から選択された金属で構成されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電極リード接続体。
【請求項8】
前記正極接続部材の表面にZnOからなる酸化膜が形成されたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電極リード接続体。
【請求項9】
前記負極接続部材に電圧監視用ケーブルが接続されたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電極リード接続体。
【請求項10】
請求項9に記載の電極リード接続体を複数備え、これら電極リード接続体の各々に電圧監視用ケーブルが接続されており、前記電圧監視用ケーブルが集合されてハーネスが形成されたことを特徴とする電極リード接続アセンブリ。
【請求項1】
一方の電池セルに設けられた正極リードと、前記一方の電池セルに隣接する他方の電池セルに設けられ、前記正極リードとは異なる金属からなる負極リードと、を接続する電極リード接続体において、
前記正極リードと同じ金属からなり、前記正極リードに接続される正極接続部材と、
前記負極リードと同じ金属からなり、前記負極リードに接続される負極接続部材と、
を備え、
前記正極接続部材は、前記正極リードとの接続部分以外の部分で前記負極接続部材と接合されており、
前記正極接続部材の前記負極接続部材との接合部分以外の部分の表面積が前記負極接続部材の前記正極接続部材との接合部分以外の部分の表面積の2倍以上であることを特徴とする電極リード接続体。
【請求項2】
前記接合部分は、前記正極接続部材の端面と前記負極接続部材の端面とが突き合わされて接合されていることを特徴とする請求項1に記載の電極リード接続体。
【請求項3】
前記接合部分は、前記正極接続部材の一部と前記負極接続部材の一部とが重ね合わされて接合されていることを特徴とする請求項1に記載の電極リード接続体。
【請求項4】
前記接合部分は、前記正極接続部材の一部と前記負極接続部材の一部とが重ね合わされ、前記正極接続部材の端面と前記負極接続部材の前記正極接続部材が重ね合わされた面、及び前記負極接続部材の端面と前記正極接続部材の前記負極接続部材が重ね合わされた面が各々接合されていることを特徴とする請求項1に記載の電極リード接続体。
【請求項5】
前記接合部分は、前記正極接続部材及び前記負極接続部材の各端部が折り曲げられた折り曲げ部を有し、前記折り曲げ部同士を互いに咬み合わせるように前記正極接続部材と前記負極接続部材とが接合されていることを特徴とする請求項1に記載の電極リード接続体。
【請求項6】
前記接合部分は、前記折り曲げ部が押圧されて接合されていることを特徴とする請求項5に記載の電極リード接続体。
【請求項7】
前記正極接続部材はアルミニウムで構成され、
前記負極接続部材は銅、銅合金、ニッケル、ニッケルめっきが施された銅のいずれか一種から選択された金属で構成されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電極リード接続体。
【請求項8】
前記正極接続部材の表面にZnOからなる酸化膜が形成されたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電極リード接続体。
【請求項9】
前記負極接続部材に電圧監視用ケーブルが接続されたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電極リード接続体。
【請求項10】
請求項9に記載の電極リード接続体を複数備え、これら電極リード接続体の各々に電圧監視用ケーブルが接続されており、前記電圧監視用ケーブルが集合されてハーネスが形成されたことを特徴とする電極リード接続アセンブリ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図11】
【図12】
【図13】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図11】
【図12】
【図13】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−97923(P2013−97923A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237690(P2011−237690)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
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