説明

電極保護膜形成剤

【課題】高電圧、高容量であり、充放電サイクル性能及び高温貯蔵特性に優れたリチウム二次電池用又はリチウムイオンキャパシタ用の電極保護膜形成剤を提供する。
【解決手段】脂肪族炭化水素の1個以上の水素原子がビニルオキシ基もしくは1−プロペニルオキシ基で置換された脂肪族化合物(A1)及び/又はビニルオキシ基もしくは1−プロペニルオキシ基を有する脂肪族エステル化合物(A2)、並びに2−メチル−2−プロペニル基を有する脂肪族炭化水素化合物(B1)及び/又は2−メチル−2−プロペニル基を有する脂肪族エステル化合物(B2)を含有してなる電極保護膜形成剤(C)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にリチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタに有用な電極保護膜形成剤、電極及び電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池等の非水電解液二次電池は、高電圧、高エネルギー密度という特徴を持つことから、携帯情報機器分野等において広く利用され、その需要が急速に拡大しており、現在、携帯電話、ノート型パソコンを始めとするモバイル情報化機器用の標準電池としてのポジションが確立されている。当然ながら、携帯機器等の高性能化と多機能化に伴い、その電源としての非水電解液二次電池に対しても更なる高性能化(例えば、高容量化と高エネルギー密度化)が求められている。この要求に応えるために種々の方法、例えば、電極の充填率の向上による高密度化、新規高容量の活物質の開発等が行われている。そして、現実に非水電解液二次電池がこれらの方法によって確実に高容量化されている。
【0003】
また、非水電解液二次電池の更なる高容量化を図るために、正極活物質の利用率の向上や高電圧材料の開発が求められている。この中で、特に充電電圧の上昇による正極活物質の利用深度の向上が注目されている。例えば、作動電圧が4.2V級の非水電解液二次電池の活物質であるコバルト複合酸化物(LiCoO)は、現在のLi基準で4.3Vまで充電すると充電容量が約155mAh/gであるのに対し、4.50Vまで充電すると約190mAh/g以上である。このように充電電圧の向上で正極活物質の利用率が大きくなる。
【0004】
しかし、電池の高電圧化に伴って、電池の容量やエネルギー密度が向上する一方で、充放電サイクル特性の低下や、高温貯蔵時における膨れ等の問題が発生する。
【0005】
従来、電池の充放電サイクルの低下や電池の膨れ等の問題を解決する技術は種々提案されている。例えば特許文献1及び特許文献2では、電解液に添加剤として硫黄元素含有化合物を加えることが提案されている。これらの硫黄化合物が正極表面に吸着することにより電解液の酸化分解を抑制することが記載されているが、これらの硫黄化合物を用いても、充放電サイクル特性や高温貯蔵特性は十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−320779号公報
【特許文献2】特開平10−64591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高電圧、高容量であり、充放電サイクル性能及び高温貯蔵特性に優れたリチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタを提供するための電極保護膜形成剤、該電極保護膜形成剤から形成された電極保護膜、該電極保護膜にて活物質を保護してなる電極、該電極保護膜形成剤を含有する電解液、及び該電極又は該電解液を含むリチウム二次電池並びにリチウムイオンキャパシタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、脂肪族炭化水素の1個以上の水素原子がビニルオキシ基もしくは1−プロペニルオキシ基で置換された脂肪族化合物(A1)及び/又はビニルオキシ基もしくは1−プロペニルオキシ基を有する脂肪族エステル化合物(A2)、並びに2−メチル−2−プロペニル基を有する脂肪族炭化水素化合物(B1)及び/又は2−メチル−2−プロペニル基を有する脂肪族エステル化合物(B2)を含有してなる電極保護膜形成剤(C)である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電極保護膜形成剤(C)は、高電圧下の電極表面での電解液の分解を抑制し、充放電サイクル特性及び高温貯蔵特性を向上させることができる。
本発明の電極保護膜形成剤(C)から形成された電極保護膜にて活物質を保護してなる電極、又は本発明の電極保護膜形成剤(C)を含有する電解液を使用することで、特に高電圧、高容量のリチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタが得られると共に、これらの高電圧下での充放電サイクル性能及び高温貯蔵特性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の電極保護膜形成剤(C)は脂肪族炭化水素の1個以上の水素原子がビニルオキシ基もしくは1−プロペニルオキシ基で置換された構造の脂肪族化合物(A1)[以下において、単に化合物(A1)と表記することがある]及び/又はビニルオキシ基もしくは1−プロペニルオキシ基を有する脂肪族エステル化合物(A2)[以下において、単に化合物(A2)と表記することがある]を含有している。以下において、化合物(A1)及び化合物(A2)を総称して化合物(A)とする。
【0011】
化合物(A)のビニルオキシ基もしくは1−プロペニルオキシ基の数は1〜5個が好ましく、反応性の観点から更に好ましくは2〜4であり、特に好ましくは2〜3である。
【0012】
化合物(A1)としては、炭素数2〜20の直鎖又は分岐のアルカン(エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、オクタデカン及びエイコサン等)の1個以上(好ましくは2個以上)の水素原子がビニルオキシ基もしくは1−プロペニルオキシ基で置換された構造の脂肪族化合物(A11)、炭素数2〜20の直鎖又は分岐のアルケン(エチレン、プロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、オクタデセン及びエイコセン等)の1個以上(好ましくは2個以上)の水素原子がビニルオキシ基もしくは1−プロペニルオキシ基で置換された構造の脂肪族化合物(A12)、並びに脂環式炭化水素(シクロペンタン骨格、シクロヘキサン骨格及びシクロヘプタン骨格を有する炭化水素等)の1個以上(好ましくは2個以上)の水素原子がビニルオキシ基又は1−プロペニルオキシ基で置換された構造の脂肪族化合物(A13)が挙げられる。
【0013】
化合物(A1)のうち、サイクル特性の観点から、好ましいのは脂環式炭化水素の2個以上の水素原子がビニルオキシ基又は1−プロペニルオキシ基で置換された構造の脂肪族化合物(A13)であり、(A13)のうち、サイクル特性の観点から、さらに好ましいのは前記脂環式炭化水素がシクロヘキサン骨格を有する脂肪族化合物(A131)である。
【0014】
前記脂肪族化合物(A131)としては、一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0015】
【化1】

【0016】
式(1)中、Rは水素原子又はメチル基、Rは直結又は炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐のアルキレン基であり、具体的にはメチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、1−エチルエチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、エチルメチルメチレン基、プロピルメチレン基、1−メチルテトラメチレン基、2−メチルテトラメチレン基、1,1−ジメチルトリメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基、1,2−ジメチルトリメチレン基、1,3−ジメチルトリメチレン基、1−エチルトリメチレン基、1,1,2−トリメチルエチレン基、ジエチルメチレン基、1−プロピルエチレン基及びブチルメチレン基等が挙げられる。これらのうち、サイクル特性の観点から好ましくは直結、メチレン基、エチレン基又はn−プロピレン基であり、さらに好ましくは直結、メチレン基又はエチレン基である。
【0017】
脂肪族化合物(A131)の具体例としては、1,2−ビス(1−プロペニルオキシメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(1−プロペニルオキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(1−プロペニルオキシメチル)シクロヘキサン、1,3,5−トリス(1−プロペニルオキシメチル)シクロヘキサン、1,2−ビス(ビニルオキシメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(ビニルオキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ビニルオキシメチル)シクロヘキサン及び1,3,5−トリス(ビニルオキシメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0018】
化合物(A)のうち、ビニルオキシ基もしくは1−プロペニルオキシ基を有する脂肪族エステル化合物(A2)としては、炭酸エステル化合物(A21)、カルボン酸エステル化合物(A22)、リン酸エステル化合物(A23)及びスルホン酸エステル化合物(A24)が挙げられる。
【0019】
脂肪族エステル化合物(A2)のうち、サイクル特性の観点から、好ましいのは炭酸エステル化合物(A21)であり、例えば下記一般式(2)で表される化合物等が挙げられる。
【0020】
【化2】

【0021】
一般式(2)におけるRは炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素基又は炭素数5〜12の環状構造を有する脂肪族炭化水素基であり、複数個あるRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。nは1〜10の数であり、サイクル特性の観点から1〜4が好ましく、更に好ましくは1又は2である。
【0022】
炭素数1〜6の直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素基としては、前記Rで挙げた炭素数1〜5のアルキレン基、n−ヘキサメチレン基、1−メチルペンタメチレン基及び1,1−ジメチルテトラメチレン基等が挙げられる。炭素数5〜12の環状構造を有する脂肪族炭化水素基としては1,2−シクロペンチレン基、1,2−シクロへキシレン基、1,3−シクロへキシレン基、1,4−シクロへキシレン基、1,3−シクロヘキサンジメタノールから2個の水酸基を除いた残基、1,4−シクロヘキサンジメタノールから2個の水酸基を除いた残基、1−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルシクロヘキサンから2個の水酸基を除いた残基、1−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルシクロヘキサンから2個の水酸基を除いた残基、1,4−シクロヘキサンジエタノールから2個の水酸基を除いた残基及び1,4−シクロヘキサンジプロパノールから2個の水酸基を除いた残基等が挙げられる。これらのうち、サイクル特性の観点から好ましいのは炭素数5〜12の環状構造を有する脂肪族炭化水素基であり、更に好ましいのは1,4−シクロヘキサンジメタノールから2個の水酸基を除いた残基である。
【0023】
一般式(2)におけるRは水素原子又はメチル基である。
【0024】
前記炭酸エステル化合物(A21)の具体例としては、ビス[{4−(1−プロペニルオキシメチル)シクロヘキシル}メチル]カーボネート、ビス[{3,4−ジ−(1−プロペニルオキシメチル)シクロヘキシル}メチル]カーボネート、ビス[{3,4,5−トリ−(1−プロペニルオキシメチル)シクロヘキシル}メチル]カーボネート、ビス[{2,3,4,5−テトラ−(1−プロペニルオキシメチル)シクロヘキシル}メチル]カーボネート、及びビス[{2,3,4,5,6−ペンタ−(1−プロペニルオキシメチル)シクロヘキシル}メチル]カーボネート等が挙げられる。
【0025】
前記カルボン酸エステル化合物(A22)の具体例としては、ビス(1−プロペニル)マロン酸、ビス(1−プロペニル)コハク酸、ビス(1−プロペニル)グルタル酸、ビス(1−プロペニル)アジピン酸、ビス(1−プロペニル)ピメリン酸、ビス{(1−プロペニルオキシ)メチル}コハク酸、ビス{2−(1−プロペニルオキシ)エチル}コハク酸、ビス{3−(1−プロペニルオキシ)プロピル}コハク酸、ビス{4−(1−プロペニルオキシ)ブチル}コハク酸及びビス{5−(1−プロペニルオキシ)ペンチル}コハク酸等が挙げられる。
【0026】
前記リン酸エステル化合物(A23)の具体例としては、トリス(1−プロペニル)ホスファイト、トリス{(1−プロペニル)メチル}ホスファイト、トリス{2−(1−プロペニル)エチル}ホスファイト、トリス{3−(1−プロペニル)プロピル}ホスファイト、トリス{4−(1−プロペニル)ブチル}ホスファイト及びトリス{5−(1−プロペニル)ペンチル}ホスファイト等が挙げられる。
【0027】
前記スルホン酸エステル化合物(A24)の具体例としては、ビス(1−プロペニル)スルファイト、ビス{(1−プロペニル)メチル}スルファイト、ビス{2−(1−プロペニル)エチル}スルファイト、ビス{3−(1−プロペニル)プロピル}スルファイト、ビス{4−(1−プロペニル)ブチル}スルファイト及びビス{5−(1−プロペニル)ペンチル}スルファイト等が挙げられる。
【0028】
本発明の電極保護膜形成剤(C)は、上記化合物(A)以外に、さらに2−メチル−2−プロペニル基を有する脂肪族炭化水素化合物(B1)[以下において、単に化合物(B1)と表記することがある]及び/又は2−メチル−2−プロペニル基を有する脂肪族エステル化合物(B2)[以下において、単に化合物(B1)と表記することがある]を含有することを必須要件とする。電極保護膜形成剤(C)は、化合物(A)と、化合物(B1)及び/又は化合物(B2)を併用することにより、優れたサイクル特性及び高温貯蔵特性を発揮する。なお、本願発明における前記化合物(B1)及び前記化合物(B2)において、「2−メチル−2−プロペニル基を有する」とは、「2−メチル−2−プロペニルの骨格を有する」ことを意味しており、化合物中に2−メチル−2−プロペニルとアルキレン基が連結した構造を有している場合も本願における(B1)及び(B2)に含まれる。以下において、前記脂肪族炭化水素化合物(B1)及び前記脂肪族エステル化合物(B2)を総称して化合物(B)とする。
【0029】
前記脂肪族炭化水素化合物(B1)はサイクル特性の観点から脂環式化合物であることが好ましく、一般式(3)で表される化合物がサイクル特性の観点から更に好ましい。
【0030】
【化3】

【0031】
式(3)中、Rは直結又は炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐のアルキレン基であり、具体的には前記Rで例示した基が挙げられ、好ましいものも同様である。
【0032】
脂肪族炭化水素化合物(B1)の具体例としてはビス(2−メチル−2−プロペニル)シクロヘキサン、ビス{(2−メチル−2−プロペニル)メチル}シクロヘキサン、ビス{2−(2−メチル−2−プロペニル)エチル}シクロヘキサン、ビス{3−(2−メチル−2−プロペニル)プロピル}シクロヘキサン、ビス{4−(2−メチル−2−プロペニル)ブチル}シクロヘキサン及びビス{5−(2−メチル−2−プロペニル)ペンチル}シクロヘキサン等が挙げられる。
【0033】
前記脂肪族エステル化合物(B2)としては、炭酸エステル化合物(B21)、カルボン酸エステル化合物(B22)、リン酸エステル化合物(B23)及びスルホン酸エステル化合物(B24)が挙げられる。
【0034】
炭酸エステル化合物(B21)としては、サイクル特性の観点から、一般式(4)で表される化合物が好ましい。
【0035】
【化4】

【0036】
式中、Rは直結又は炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐のアルキレン基であり、具体的には前記Rで例示した基が挙げられ、好ましいものも同様である。Rは前記Rで例示した炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素基又は炭素数5〜12の環状構造を有する脂肪族炭化水素基であり、複数個あるRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。mは0又は1〜10の数であり、サイクル特性の観点から0又は1〜4が好ましく、更に好ましくは0、1又は2である。
【0037】
炭酸エステル化合物(B21)の具体例としてはビス(2−メチル−2−プロペニル)カーボネート、ビス{(2−メチル−2−プロペニル)メチル}カーボネート、ビス{2−(2−メチル−2−プロペニル)エチル}カーボネート、ビス{3−(2−メチル−2−プロペニル)プロピル}カーボネート、ビス{4−(2−メチル−2−プロペニル)ブチル}カーボネート、ビス{5−(2−メチル−2−プロペニル)ペンチル}カーボネート及びビス(2−メチル−2−プロペニルオキシカルボニロキシメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0038】
カルボン酸エステル化合物(B22)としては、サイクル特性の観点から、一般式(5)で表される化合物が好ましい。
【0039】
【化5】

【0040】
式中、R及びRはそれぞれ独立に直結又は炭素数1〜5のアルキレン基であり、具体例としてはRと同様の基を挙げることができ、好ましい基も同様である。
【0041】
カルボン酸エステル化合物(B22)の具体例としてはビス(2−メチル−2−プロペニル)マロン酸、ビス(2−メチル−2−プロペニル)コハク酸、ビス(2−メチル−2−プロペニル)グルタル酸、ビス(2−メチル−2−プロペニル)アジピン酸、ビス(2−メチル−2−プロペニル)ピメリン酸、ビス{(2−メチル−2−プロペニル)メチル}コハク酸、ビス{2−(2−メチル−2−プロペニル)エチル}コハク酸、ビス{3−(2−メチル−2−プロペニル)プロピル}コハク酸、ビス{4−(2−メチル−2−プロペニル)ブチル}コハク酸及びビス{5−(2−メチル−2−プロペニル)ペンチル}コハク酸等が挙げられる。
【0042】
リン酸エステル化合物(B23)としては、サイクル特性の観点から、一般式(6)で表される化合物が好ましい。
【0043】
【化6】

【0044】
式中、R10はそれぞれ独立に直結又は炭素数1〜5のアルキレン基であり、具体例としてはRと同様の基を挙げることができ、好ましい基も同様である。
【0045】
リン酸エステル化合物(B23)の具体例としてはトリス(2−メチル−2−プロペニル)ホスファイト、トリス{(2−メチル−2−プロペニル)メチル}ホスファイト、トリス{2−(2−メチル−2−プロペニル)エチル}ホスファイト、トリス{3−(2−メチル−2−プロペニル)プロピル}ホスファイト、トリス{4−(2−メチル−2−プロペニル)ブチル}ホスファイト及びトリス{5−(2−メチル−2−プロペニル)ペンチル}ホスファイト等が挙げられる。
【0046】
前記スルホン酸エステル化合物(B24)としては、サイクル特性の観点から一般式(7)で表される化合物が好ましい。
【0047】
【化7】

【0048】
式中、R11はそれぞれ独立に直結又は炭素数1〜5のアルキレン基であり、具体例としてはRと同様の基を挙げることができ、好ましい基も同様である。
【0049】
スルホン酸エステル化合物(B24)の具体例としてはビス(2−メチル−2−プロペニル)スルファイト、ビス{(2−メチル−2−プロペニル)メチル}スルファイト、ビス{2−(2−メチル−2−プロペニル)エチル}スルファイト、ビス{3−(2−メチル−2−プロペニル)プロピル}スルファイト、ビス{4−(2−メチル−2−プロペニル)ブチル}スルファイト及びビス{5−(2−メチル−2−プロペニル)ペンチル}スルファイト等が挙げられる。
【0050】
化合物(A)及び化合物(B)の分子量範囲は特に限定されないが、化合物(A1)及び化合物(B1)は好ましくは100〜500であり、化合物(A2)及び(B2)は好ましくは200〜1200である。
【0051】
化合物(A)と化合物(B)の具体的な組合せとして好ましいのは、サイクル特性及び高温貯蔵特性の観点から(A2)と(B2)の組合せであり、さらに好ましくは(A2)と(B21)の組合せである。化合物(A)と化合物(B)の重量比は、サイクル特性及び高温貯蔵特性の観点から、好ましくは90/10〜10/90、さらに好ましくは30/70〜70/30である。
【0052】
本発明における化合物(A1)は市販品を購入するか、通常の方法、例えば塩基性触媒存在下、ビスハロアルキルシクロヘキサンとアリルアルコールのエーテル化反応を行った後、さらに塩基性触媒存在下で加熱し転移反応させることで合成することができる。塩基性触媒としては、金属ナトリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、金属カリウム、水酸化カリウム、カリウムメトキシド及びカリウムtert−ブトキシド等が挙げられる。ビスハロアルキルシクロヘキサンとしては1,2−ジクロロシクロヘキサン、1,3−ジクロロシクロヘキサン、1,4−ジクロロシクロヘキサン等が挙げられる。
【0053】
また、前記脂肪族エステル化合物(A2)は、通常の方法、例えば塩基性触媒存在下、ビニルオキシ基もしくは1−プロペニルオキシ基を有するモノアルコールと、鎖状カーボネートとのエステル交換反応により合成することができる。なお、あらかじめ鎖状カーボネートとジオールを反応させてオリゴカーボネートを合成して両末端をモノアルコールでキャップする方法で前記一般式(2)においてnが1〜10の化合物を製造することが出来る。塩基性触媒としては、前述のものが挙げられる。ビニルオキシ基もしくは1−プロペニルオキシ基を有するモノアルコールとしては、エチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールモノ−1−プロペニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、プロピレングリコールモノ−1−プロペニルエーテル、1−ヒドロキシメチル−4−(ビニルオキシメチル)シクロヘキサン及び1−ヒドロキシメチル−4−(1−プロペニルオキシメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。上記ジオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール及び1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0054】
本発明における脂肪族炭化水素化合物(B1)のうち、前記一般式(3)で表される脂環式化合物は、通常の方法、例えば塩基性触媒存在下、ビスハロアルキルシクロヘキサン等と一般式(8)で示される化合物との縮合反応により合成することができる。
【0055】
【化8】

【0056】
式中、Rは前記一般式(3)におけるRと同様の基であり、Xはハロゲン原子である。上記ビスハロアルキルシクロヘキサンとしては、1,4−ビス(ブロモメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ブロモエチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ブロモプロピル)シクロヘキサン等が挙げられる。上記一般式(8)で示されるハロゲン化物としては、2−メチル−2−プロペニルクロライド、2−メチル−2−プロペニル−メチルクロライド、2−(2−メチル−2−プロペニル)エチルクロライド、3−(2−メチル−2−プロペニル)プロピルブロマイド、4−(2−メチル−2−プロペニル)ブチルブロマイド及び5−(2−メチル−2−プロペニル)ペンチルブロマイド等が挙げられる。塩基性触媒としては、前述のものが挙げられる。
【0057】
本発明における炭酸エステル化合物(B21)は、通常の方法、例えば塩基性触媒存在下、ジクロロメタン中で2−メチル−2−プロペニルアルコール又は2−メチル−2−プロペニル−アルキルアルコールと炭酸塩の縮合反応により合成することができる。なお、あらかじめ鎖状カーボネートとジオールを反応させてオリゴカーボネートを合成して両末端をモノアルコールでキャップする方法で前記一般式(4)においてmが1〜10の化合物を製造することが出来る。塩基性触媒としては、前述のものが挙げられる。金属炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸タリウム等が挙げられる。上記2−メチル−2−プロペニル−アルキルアルコールとしては、2−メチル−2−プロペニル−メチルアルコール、2−メチル−2−プロペニル−エチルアルコール、2−メチル−2−プロペニル−プロピルアルコール、2−メチル−2−プロペニル−ブチルアルコール、2−メチル−2−プロペニル−ペンチルアルコール等が挙げられる。上記ジオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール及び1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0058】
本発明におけるカルボン酸エステル化合物(B22)は、通常の方法、例えば塩基性触媒存在下、脂肪族酸ハロゲン化物と2−メチル−2−プロペニルアルコール又は2−メチル−2−プロペニル−アルキルアルコールの縮合反応により合成することができる。塩基性触媒としては、前述のものが挙げられる。上記Rを有する脂肪族酸ハロゲン化物としては、例えば、オキサリルクロリド、フマリルクロリド、マロニルクロリド、ジメチルマロニルクロリド、スクシニルクロリド、グルタリルクロリド、アジポイルクロリド、セバコイルクロリド、及びシクロペンタンジカルボン酸ジクロリド等が挙げられる。上記Rを有する2−メチル−2−プロペニル−アルキルアルコールとしては、前記と同様のものが挙げられる。
【0059】
本発明におけるリン酸エステル化合物(B23)は、通常の方法、例えばDMF中で、金属リン酸塩とハロゲン化−2−メチル−2−プロペニル、又はハロゲン化−2−メチル−2−プロペニル−アルキルの反応により合成することができる。金属リン酸塩としては、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ルビジウム、リン酸セシウム、リン酸タリウム等が挙げられる。上記R10を有するハロゲン化−2−メチル−2−プロペニル−アルキルとしては、ハロゲン化−2−メチル−2−プロペニル−メチル、ハロゲン化−2−メチル−2−プロペニル−エチル、ハロゲン化−2−メチル−2−プロペニル−プロピル、ハロゲン化−2−メチル−2−プロペニル−ブチル及びハロゲン化−2−メチル−2−プロペニル−ペンチル等が挙げられる。
【0060】
本発明におけるスルホン酸エステル化合物(B24)は、通常の方法、例えばDMF中で、金属硫酸塩とハロゲン化−2−メチル−2−プロペニル又はハロゲン化−2−メチル−2−プロペニル−アルキルの反応により合成することができる。金属硫酸塩としては、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ルビジウム、硫酸セシウム、硫酸タリウム等が挙げられる。上記R11を有するハロゲン化−2−メチル−2−プロペニル−アルキルとしては、前記と同様のものが挙げられる。
【0061】
本発明の電極保護膜形成剤(C)は、(A)及び(B)に加え更に公知の負極保護膜形成剤である化合物(D)を含有することができる。化合物(D)を含有することにより、電極保護膜の安定性が向上し充放電サイクル特性を更に向上させることができる。
【0062】
化合物(D)は、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、エチレンサルファイト、プロピレンサルファイト及びα−ブロモ−γ−ブチロラクトンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。これらの内、サイクル特性の観点から好ましいのはビニレンカーボネートである。
【0063】
電極保護膜形成剤(C)における(A)と(B)の合計の含有量は、(C)の重量を基準として、10〜100重量%であることが好ましく、更に好ましくは50〜100重量%である。電極保護膜形成剤(C)における化合物(D)の含有量は、(C)の重量を基準として、0〜90重量%であることが好ましく、更に好ましくは0〜50重量%である。
【0064】
本発明の電極保護膜形成剤(C)は電極や電解液に含有させて、電極に電圧を印加することにより(C)が電極活物質表面で重合し被膜を形成する。この被膜が、電極表面での電解液の分解を抑制する保護膜となり、充放電サイクル特性及び高温保存特性を向上させる。本発明の電極保護膜形成剤(C)は、サイクル特性の観点から特に正極の保護膜形成剤として好ましく使用できる。リチウム二次電池やリチウムイオンキャパシタの電極又は電解液に(C)を含有させた場合、初回充電時に上記保護膜が形成されるが、リチウム二次電池やリチウムイオンキャパシタの電極として、別途電極表面(正極活物質表面)に(C)の重合被膜を形成させた電極を使用することもできる。
【0065】
本発明の電極保護膜は前記電極保護膜形成剤(C)から形成された保護膜であり、該保護膜を有することにより、サイクル特性や高温保存特性に優れたリチウム二次電池やリチウムイオンキャパシタを得ることができる。
【0066】
電極
本発明の電極は、前記電極保護膜にて活物質を保護してなる電極であり、リチウム二次電池用及びリチウムイオンキャパシタ用の電極である。本発明の電極は、特にリチウム二次電池用及びリチウムイオンキャパシタ用の正極用として好ましく用いられる。本発明の電極は、電極保護膜形成剤(C)、活物質(E)、結着剤(F)並びに必要によりルイス塩基(G)及び導電剤(H)を、水又は溶媒に30〜60重量%の濃度で分散してスラリー化したものを、集電体にバーコーター等の塗工装置で塗布後、乾燥して溶媒を除去して、必要によりプレス機でプレスすることにより得られる。
【0067】
活物質(E)としては負極活物質(E1)、リチウム二次電池用正極活物質(E2)及びリチウムイオンキャパシタ用正極活物質(E3)が挙げられる。活物質(E)としてリチウム二次電池用正極活物質(E2)を用いることによりリチウム二次電池用の正極が得られ、活物質(E)としてリチウムイオンキャパシタ用正極活物質(E3)を用いることによりリチウムイオンキャパシタ用の正極が得られる。また、活物質(E)として負極用活物質(E1)を用いることによりリチウム二次電池用の負極が得られ、リチウム二次電池用負極にリチウムをドーピングすることによりリチウムイオンキャパシタ用負極が得られる。
【0068】
負極活物質(E1)としては、黒鉛、アモルファス炭素、高分子化合物焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス)、炭素繊維、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール)、スズ、シリコン、及び金属合金(例えばリチウム−スズ合金、リチウム−シリコン合金、リチウム−アルミニウム合金及びリチウム−アルミニウム−マンガン合金等)等が挙げられる。
【0069】
リチウム二次電池用正極活物質(E2)としてはリチウムと遷移金属との複合酸化物(例えばLiCoO、LiNiO、LiMnO及びLiMn)、遷移金属酸化物(例えばMnO及びV)、遷移金属硫化物(例えばMoS及びTiS)、及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリフッ化ビニリデン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン及びポリカルバゾール)等が挙げられる。
【0070】
リチウムイオンキャパシタ用正極活物質(E3)としては活性炭、炭素繊維及び導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール)等が挙げられる。
【0071】
結着剤(F)としてはデンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフロオロエチレン、ポリエチレン及びポリプロピレン等の高分子化合物が挙げられる。
【0072】
必要により使用できるルイス塩基(G)としては、アザクラウンエーテル誘導体(G1)及びトリアゾール誘導体(G2)が挙げられる。ルイス塩基(G)を使用することにより化合物(A)及び(B)の保存安定性が向上する。
【0073】
アザクラウンエーテル誘導体(G1)としては、4−アザ−12−クラウン−4−エーテル、4−アザ−15−クラウン−5−エーテル、4−アザ−14−クラウン−4−エーテル、4−アザ−18−クラウン−6−エーテル、4,10−ジアザ−12−クラウン−4−エーテル、4,10−ジアザ−15−クラウン−5−エーテル、4,14−ジアザ−18−クラウン−6−エーテル、N−(2−ブテン酸メチル)−4−アザ−12−クラウン−4−エーテル、N,N−ジ−(2−ブテン酸メチル)−4,10−ジアザ−12−クラウン−4−エーテル、N−(2−ブテン酸メチル)−4−アザ−15−クラウン−5−エーテル、N,N−ジ−(2−ブテン酸メチル)−4,10−ジアザ−15−クラウン−5−エーテル、N−(シンナミル)−4−アザ−12−クラウン−4−エーテル、N,N−ジ−(シンナミル)−4,10−ジアザ−12−クラウン−4−エーテル、N−(シンナミル)−4−アザ−15−クラウン−5−エーテル、N,N−ジ−(シンナミル)−4,10−ジアザ−15−クラウン−5−エーテル、N−(4−ビニルベンジル)−4−アザ−12−クラウン−4−エーテル、N,N−ジ−(4−ビニルベンジル)−4,10−ジアザ−12−クラウン−4−エーテル、N−(4−ビニルベンジル)−4−アザ−15−クラウン−5−エーテル、N,N−ジ−(4−ビニルベンジル)−4,10−ジアザ−15−クラウン−5−エーテル、N,N−ジ−(1−アクリロイルオキシエチル)−4,10−ジアザ−15−クラウン−5−エーテル、N−(1−アクリロイルオキシエチル)−4−アザ−14−クラウン−4−エーテル、N−(2−ペンテン酸エチル)−4−アザ−18−クラウン−6−エーテル及びN,N−ジ−(2−ペンテン酸メチル)−4,14−ジアザ−18−クラウン−6−エーテル等が挙げられる。
【0074】
トリアゾール誘導体(G2)としては、1,2,3−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1,2,3−ベンゾトリアゾール、5,6−ジメチル−1,2,3−ベンゾトリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メチル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−エチル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−プロピル−1,2,4−トリアゾール及び3−アミノ−5−ブチル−1,2,4−トリアゾール等が挙げられる。これらは市販品を入手することが出来る。これらのうち、充放電サイクル特性の観点から好ましいのは、4−アザ−12−クラウン−4−エーテル(G1−1)と3−アミノ−1,2,4−トリアゾール(G2−1)である。
【0075】
必要により使用できる導電剤(H)としては黒鉛(例えば天然黒鉛及び人工黒鉛)、カーボンブラック類(例えばカーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック及びサーマルブラック)及び金属粉末(例えばアルミニウム粉及びニッケル粉)、導電性金属酸化物(例えば酸化亜鉛及び酸化チタン)等が挙げられる。
【0076】
本発明の電極作製時におけるスラリーにおいて、電極保護膜形成剤(C)、活物質(E)、結着剤(F)、ルイス塩基(G)及び導電剤(H)のそれぞれの好ましい含有量は(C)、(E)及び(F)の合計重量に基づいて以下の通りである。
【0077】
電極保護膜形成剤(C)の含有量は、充放電サイクル特性、電池容量及び高貯蔵特性の観点から、好ましくは0.5〜5重量%であり、更に好ましくは1〜3重量%である。活物質(E)の含有量は、充放電サイクル特性の観点から、好ましくは70〜98重量%であり、更に好ましくは90〜98重量%である。結着剤(F)の含有量は、充放電サイクル特性の観点から、好ましくは0.5〜29重量%であり、更に好ましくは1〜10重量%である。ルイス塩基(G)の含有量は、電池容量、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から、好ましくは0〜7.5重量%であり、更に好ましくは0.5〜3重量%である。 導電剤(H)の含有量は、電池出力の観点から、好ましくは0〜29重量%であり、更に好ましくは0〜10重量%である。
【0078】
スラリー化するための溶媒としては、例えば1−メチル−2−ピロリドン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0079】
スラリーを塗布する集電体としては、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子及び導電性ガラス等が挙げられる。
【0080】
電解液
本発明の電解液は、電極保護膜形成剤(C)、電解質(I)及び非水溶媒(J)を含有し、特にリチウム二次電池用及びリチウムイオンキャパシタ用の電解液として有用である。
【0081】
電解質(I)としては、通常の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF及びLiClO等の無機酸のリチウム塩、LiN(CFSO、LiN(CSO及びLiC(CFSO等の有機酸のリチウム塩が挙げられる。これらの内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのはLiPFである。
【0082】
非水溶媒(J)としては、通常の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等及びこれらの混合物を用いることができる。
【0083】
ラクトン化合物としては、5員環(γ−ブチロラクトン及びγ−バレロラクトン等)及び6員環のラクトン化合物(δ−バレロラクトン等)等を挙げることができる。
【0084】
環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及びブチレンカーボネート等が挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート及びジ−n−プロピルカーボネート等が挙げられる。
【0085】
鎖状カルボン酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及びプロピオン酸メチル等が挙げられる。環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン及び1,4−ジオキサン等が挙げられる。鎖状エーテルとしては、ジメトキシメタン及び1,2−ジメトキシエタン等が挙げられる。
【0086】
リン酸エステルとしては、トリメチルフォスファイト、トリエチルフォスファイト、エチルジメチルフォスファイト、ジエチルメチルフォスファイト、トリプロピルフォスファイト、トリブチルフォスファイト、トリ(トリフルオロメチル)フォスファイト、トリ(トリクロロメチル)フォスファイト、トリ(トリフルオロエチル)フォスファイト、トリ(トリパーフルオロエチル)フォスファイト、2−エトキシ−1,3,2−ジオキサホスホラン−2−オン、2−トリフルオロエトキシ−1,3,2−ジオキサホスホラン−2−オン及び2−メトキシエトキシ−1,3,2−ジオキサホスホラン−2−オン等が挙げられる。
ニトリル化合物としては、アセトニトリル等が挙げられる。アミド化合物としては、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。スルホンとしては、ジメチルスルホン及びジエチルスルホン等が挙げられる。非水溶媒(J)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0087】
非水溶媒(J)の内、電池出力及び充放電リサイクル特性の観点から好ましいのは、ラクトン化合物、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及びリン酸エステル、更に好ましいのはラクトン化合物、環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステル、最も好ましいのは環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルである。
【0088】
本発明の電解液は、更にルイス塩基(G)を含有することができる。(G)を含有することにより、化合物(A1)及び化合物(B1)もしくは化合物(B2)の保存安定性が向上する。ルイス塩基(G)としては、アザクラウンエーテル誘導体(G1)及びトリアゾール誘導体(G2)が挙げられ、具体的には前述のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0089】
本発明の電解液における電極保護膜形成剤(C)、電解質(I)、及び非水溶媒(J)のそれぞれ好ましい含有量又は濃度は必須成分(C)、(I)及び(J)の合計重量又は体積に基づいて以下の通りである。
【0090】
電極保護膜形成剤(C)の含有量は、充放電サイクル特性、電池容量及び高温貯蔵特性の観点から好ましくは0.01〜10重量%、更に好ましくは0.05〜1重量%である。
電解質(I)の含有量は、充放電サイクル特性、電池容量及び高温貯蔵特性の観点から好ましくは0.9〜50重量%、更に好ましくは0.9〜30重量%である。非水溶媒(J)の含有量は、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましくは70〜99重量%であり、更に好ましくは93〜99重量%である。なお、電解液中の電解質(I)の濃度は、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましくは0.01〜3mol/Lであり、更に好ましくは0.05〜1.5mol/Lである。
【0091】
ルイス塩基(G)の含有量は、電池容量、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましくは(C)、(I)及び(J)の合計重量に基づいて0〜10重量%、更に好ましくは0.01〜10重量%、特に好ましくは0.05〜1重量%である。
【0092】
本発明の電解液は、更に過充電防止剤、脱水剤及び容量安定化剤等の添加剤を含有してもよい。過充電防止剤としては、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン及びt−アミルベンゼン等の芳香族化合物等が挙げられる。過充電防止剤の使用量は、必須成分(C)、(I)及び(J)の合計重量に基づいて、通常0〜5重量%、好ましくは0〜3重量%である。脱水剤としては、ゼオライト、シリカゲル及び酸化カルシウム等が挙げられる。脱水剤の使用量は、必須成分(C)、(I)及び(J)の合計重量に基づいて、通常0〜5重量%、好ましくは0〜3重量%である。容量安定化剤としては、フルオロエチレンカーボネート、無水コハク酸、1−メチル−2−ピペリドン、ヘプタン及びフルオロベンゼン等が挙げられる。容量安定化剤の使用量は、必須成分(C)、(I)及び(J)の合計重量に基づいて、通常0〜5重量%、好ましくは0〜3重量%である。
【0093】
リチウム二次電池
本発明のリチウム二次電池は、正極、負極及びセパレータを収納した電池缶内に電解液を注入して電池缶を密封する際に、正極又は負極として本発明の電極を用いるか、電解液に本発明の電解液を用いるか、又はこれらの併用により得られる。
【0094】
リチウム二次電池におけるセパレータとしては、ポリエチレン又はポリプロピレン製フィルムの微多孔膜、多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンとの多層フィルム、ポリエステル繊維、アラミド繊維及びガラス繊維等からなる不織布並びにこれらの表面にシリカ、アルミナ及びチタニア等のセラミック微粒子を付着させたものが挙げられる。
【0095】
リチウム二次電池における電池缶としては、ステンレススチール、鉄、アルミニウム及びニッケルメッキスチール等の金属材料を用いることができるが、電池用途に応じてプラスチック材料を用いることもできる。また電池缶は、用途に応じて円筒型、コイン型、角型又はその他任意の形状にすることができる。
【0096】
リチウムイオンキャパシタ
本発明のリチウムイオンキャパシタは、本発明のリチウム二次電池の基本構成において、正極をリチウムイオンキャパシタ用の正極に代え、電池缶をキャパシタ缶に代えることにより得られる。キャパシタ缶の材質及び形状としては、電池缶で例示したものと同様のものが挙げられる。
【実施例】
【0097】
以下、製造例、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0098】
<製造例1>
1,4−ビス(1−プロペニルオキシメチル)シクロヘキサン(以下(A1−1)と記載)の合成;
撹拌機、温度計及び冷却管を取り付けたフラスコに、1,4−シクロヘキサンジメタノール[東京化成工業(株)製]1.0部(6.9mmol部)、塩化アリル[東京化成工業(株)製]1.1部(13.9mmol部)、水酸化ナトリウム0.6部(13.9mmol部)及びトルエン10部を仕込み、撹拌しながら均一に溶解させた後、室温で15分間撹拌後、テトラブチルアンモニウムブロマイド0.1部(0.2mmol部)を加えた。2時間かけて65℃まで昇温し更に4時間撹拌して、エーテル化反応及び転位反応を行った。放冷後、水20部を加え水層を分離した。更に有機層を水20部で洗浄した。トルエンを減圧(10mmHg)下に除去後、ヘキサンを溶剤としたアルミナカラム[150mesh、Brockman1,standard grade、アルドリッチ(株)製]によって反応物を精製し、(A1−1)1.2部(5.2mmol部)を得た(収率75%)。
【0099】
<製造例2>
1−ヒドロキメチル−4−(1−プロペニルオキシメチル)シクロヘキサンの合成;
撹拌機、温度計及び冷却管を取り付けたフラスコに、1,4−シクロヘキサンジメタノール[東京化成工業(株)製]1.0部(6.9mmol部)、塩化アリル[東京化成工業(株)製]0.5部(6.9mmol部)、水酸化ナトリウム0.3部(6.9mmol部)及びトルエン10部を仕込み、撹拌しながら均一に溶解させた後、室温で15分間撹拌後、テトラブチルアンモニウムブロマイド0.1部(0.2mmol部)を加えた。2時間かけて65℃まで昇温し更に4時間撹拌して、エーテル化反応及び転位反応を行った。放冷後、水20部を加え水層を分離した。更に有機層を水20部で洗浄した。トルエンを減圧(10mmHg)下に除去後、ヘキサンを溶剤としたアルミナカラム[150mesh、Brockman1,standard grade、アルドリッチ(株)製]によって反応物を精製し、1−ヒドロキメチル−4−(1−プロペニルオキシメチル)シクロヘキサン1.0部(4.4mmol部)を得た(収率64%)。
【0100】
<製造例3>
ビス[{4−(1−プロペニルオキシメチル)シクロヘキシル}メチル]カーボネート(以下(A2−1)と記載)の合成;
撹拌機、温度計及び冷却管を取り付けたフラスコに、上記1−ヒドロキメチル−4−(1−プロペニルオキシメチル)シクロヘキサン1.0部(4.5mmol部)、ジエチルカーボネート[東京化成工業(株)製]0.3部(2.2mmol部)、カリウムtert−ブトキシド0.01部(0.1mmol部)を仕込み、撹拌しながら均一に溶解させた後、100℃まで加熱し生成するエタノールを留去しながら5時間反応させた。残留したエタノールを減圧(10mmHg)下に除去後、ヘキサンを溶剤としたアルミナカラム[150mesh、Brockman1,standard grade、アルドリッチ(株)製]によって反応物を精製して 、化合物(A2−1)0.8部(2.0mmol部)を得た(収率89%)。
【0101】
<製造例4>
ビス(2−メチル−2−プロペニル)シクロヘキサン(以下(B1−1)と記載)の合成;
撹拌機、温度計及び冷却管を取り付けたフラスコに、上記1,4−ビス(ブロモメチル)シクロヘキサン1.0部(3.7mmol部)、2−メチル−2−プロペニルクロライド(3−クロロ−2−メチルプロペン)[東京化成工業(株)製]0.7部(7.4mmol部)、マグネシウム0.2部(7.4mmol部)をジエチルエーテル中に仕込み、撹拌しながら均一に溶解させた後、80℃まで加熱し5時間反応させた。ヘキサンを溶剤としたアルミナカラム[150mesh、Brockman1,standard grade、アルドリッチ(株)製]によって反応物を精製して、化合物(B1−1)0.04部(0.2mmol部)(収率5%)を得た。
【0102】
化合物(B2−1)は試薬[Alfa
Aesar(株)製]のビス(2−メチル−2−プロペニル)カーボネートを使用した。
【0103】
<製造例5>
ビス(2−メチル−2−プロペニル)コハク酸(以下(B2−2)と記載)の合成;
撹拌機、温度計及び冷却管を取り付けたフラスコに、2−メチル−2−プロペニルアルコール(2−メチルアリルアルコール)1.0部(13.9mmol部)、トリエチルアミン1.4部(13.9mmol部)、トルエン10部を入れた後、そこにスクシニルクロリド1.1部(6.9mol部)[東京化成工業(株)製]を1時間かけて滴下した。さらに室温で1時間攪拌し反応させた後、水20部を加え水層を分離した。更に有機層を水20部で洗浄した。トルエンを減圧(10mmHg)下に除去後、ヘキサンを溶剤としたアルミナカラム[150mesh、Brockman1,standard grade、アルドリッチ(株)製]によって反応物を精製し、化合物(B2−2)0.8部(3.7mmol部)(収率53%)を得た。
【0104】
<製造例6>
トリス(2−メチル−2−プロペニル)ホスファイト(以下(B2−3)と記載)の合成;
製造例5において、スクシニルクロリドをホスフォリックトリクロライド[アルドリッチ社製]0.7部(4.6mmol部)とした以外は、製造例5と同様な操作を行い、化合物(B2−3)0.8部(3.1mmol部)(収率67%)を得た。
【0105】
<製造例7>
ビス(2−メチル−2−プロペニル)スルファイト(以下(B2−4)と記載)の合成;
製造例5において、スクシニルクロリドをスルフォニルクロライド[東京化成工業(株)製]0.6部(4.6mmol部)とした以外は、製造例5と同様な操作を行い、化合物(B2−4)0.6部(2.7mmol部)(収率58%)を得た。
【0106】
<実施例1〜8>
電極保護膜形成剤(C)の調製
表1に示した重量割合で化合物(A)及び化合物(B)を配合し、実施例1〜8の電極保護膜形成剤(C−1)〜(C−8)を調製した。
【0107】
【表1】

【0108】
なお、表1中の化合物(A)及び化合物(B)の略号は下記の通りである。
(A1−1): 1,4−ビス(1−プロペニルオキシメチル)シクロヘキサン
(A2−1):ビス[{4−(1−プロペニルオキシメチル)シクロヘキシル}メチル]カーボネート
(B1−1):1,4−ビス(2−メチル−2−プロペニル)シクロヘキサン
(B2−1):ビス(2−メチル−2−プロペニル)カーボネート
(B2−2):ビス(2−メチル−2−プロペニル)コハク酸
(B2−3):トリス(2−メチル−2−プロペニル)ホスファイト
(B2−4):ビス(2−メチル−2−プロペニル)スルファイト
【0109】
<実施例9〜19>
リチウムイオン電池用の正極又は負極のいずれかに、本願発明の電極保護膜形成剤(C)を使用してリチウムイオン電池用電極を下記のように作製した。
[リチウムイオン電池用正極の作製]
表2に示した処方に基づいて電極保護膜形成剤(C)及び必要によりルイス塩基(G)を使用した正極を以下の方法で作製した。
LiCoO粉末90.0部、ケチェンブラック[アルドリッチ社製]5部、ポリフッ化ビニリデン[アルドリッチ社製]5部及び表2に示した部数の(C)及び(G)を乳鉢で十分に混合した後、1−メチル−2−ピロリドン[東京化成工業(株)製]70.0部を添加し、更に乳鉢で十分に混合してスラリーを得た。得られたスラリーを、大気中でワイヤーバーを用いて厚さ20μmのアルミニウム電解箔上の片面に塗布し、100℃で15分間乾燥させた後、更に減圧下(10mmHg)、80℃で5分間乾燥して、15.95mmφに打ち抜き、リチウムイオン電池用正極を作製した。なお、正極に電極保護膜形成剤(C)を使用しない場合は(C)を添加しないこと以外は上記と同様にして正極を作製した。
【0110】
[リチウムイオン電池用負極の作製]
表2に示した処方に基づいて電極保護膜形成剤(C)及び必要によりルイス塩基(G)を使用した負極を以下の方法で作製した。
平均粒子径約8〜12μmの黒鉛粉末92.5部、ポリフッ化ビニリデン7.5部、1−メチル−2−ピロリドン[東京化成工業(株)製]200部及び表2に示した部数の(C)及び(G)を乳鉢で十分に混合しスラリーを得た。得られたスラリーを、厚さ20μmの銅箔の片面に塗布し、100℃で15分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、16.15mmφに打ち抜き、プレス機で厚さ30μmにしてリチウムイオン電池用負極を作製した。なお、負極に電極保護膜形成剤(C)を使用しない場合は(C)を添加しないこと以外は上記と同様にして負極を作製した。
【0111】
<比較例1>
電極保護膜形成剤(C)の代わりに正極にジメチルスルホン1部を添加すること以外は実施例13と同様の方法で比較例1のリチウムイオン電池用負極及び正極を作製した。
【0112】
<比較例2>
電極保護膜形成剤(C)の代わりに正極に1,3―プロパンスルトン1部を添加すること以外は実施例13と同様の方法で比較例2のリチウムイオン電池用負極及び正極を作製した。
【0113】
<実施例20〜30>
リチウムイオンキャパシタ用の正極又は負極のいずれかに、本願発明の電極保護膜形成剤(C)を使用してリチウムイオンキャパシタ用電極を下記のように作製した。
[リチウムイオンキャパシタ用正極の作製]
表3に示した処方に基づいて電極保護膜形成剤(C)及び必要によりルイス塩基(G)を使用した正極を以下の方法で作製した。
活性炭粉末90.0部、ケチェンブラック[アルドリッチ社製]5.0部、ポリフッ化ビニリデン[アルドリッチ社製]5.0部、及び表3に示した部数の(C)及び(G)を乳鉢で十分に混合した後、1−メチル−2−ピロリドン[東京化成工業(株)製]70.0部、を添加し、更に乳鉢で十分に混合してスラリーを得た。得られたスラリーを、大気中でワイヤーバーを用いて厚さ20μmのアルミニウム電解箔上の片面に塗布し、100℃で15分間乾燥させた後、更に減圧下(10mmHg)、80℃で5分間乾燥して、15.95mmφに打ち抜き、リチウムイオンキャパシタ用正極を作製した。なお、正極に電極保護膜形成剤(C)を使用しない場合は(C)を添加しないこと以外は上記と同様にして正極を作製した。
【0114】
[リチウムイオンキャパシタ用負極の作製]
表3に示した処方に基づいて電極保護膜形成剤(C)及びルイス塩基(G)を添加した負極を以下の方法で作製した。
平均粒子径約8〜12μmの黒鉛粉末92.5部、ポリフッ化ビニリデン7.5部、1−メチル−2−ピロリドン[東京化成工業(株)製]200部及び表3に示した部数の(C)及び(G)を乳鉢で十分に混合しスラリーを得た。得られたスラリーを、厚さ20μmの銅箔の片面に塗布し、100℃で15分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、16.15mmφに打ち抜き、プレス機で厚さ30μmにした。得られた電極と、リチウム金属箔を、セパレータ(ポリプロピレン製不織布)で挟んでビーカーセルにセットし、負極理論容量の約75%のリチウムイオンを約10時間かけて負極に吸蔵させ、リチウムイオンキャパシタ用負極を作製した。なお、負極に電極保護膜形成剤(C)を使用しない場合は(C)を添加しないこと以外は上記と同様にして負極を作製した。
【0115】
<比較例3>
電極保護膜形成剤(C)の代わりに正極にジメチルスルホン1部を添加すること以外は実施例23と同様の方法で比較例3のリチウムイオンキャパシタ用負極及び正極を作製した。
【0116】
<比較例4>
電極保護膜形成剤(C)の代わりに1,3−プロパンスルトン1部を添加すること以外は実施例23と同様の方法で比較例4のリチウムイオンキャパシタ用負極及び正極を作製した。
【0117】
【表2】

【0118】
【表3】

【0119】
[評価]
電極の評価
(1)リチウム二次電池の作製
2032型コインセル内の両端に、実施例9〜19、比較例1及び2の正極及び負極をそれぞれの塗布面が向き合うように配置して、電極間にセパレータ(ポリプロピレン製不織布)を挿入し、二次電池用セルを作製した。エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合溶媒(体積比率1:1)に、LiPFを1mol/Lの割合で溶解させた電解液を作製したセルに注液密封し、以下の方法で高電圧充放電サイクル特性及び高温保存特性を評価した結果を表2に示す。
【0120】
<高電圧充放電サイクル特性の評価>
充放電測定装置「バッテリーアナライザー1470型」[東陽テクニカ(株)製]を用いて、0.1Cの電流で電圧4.5Vまで充電し、10分間の休止後、0.1Cの電流で電池電圧を3.5Vまで放電し、この充放電を繰り返した。この時の初回充電時の電池容量と50サイクル目充電時の電池容量を測定し、下記式から充放電サイクル特性を算出する。数値が大きい程、充放電サイクル特性が良好であることを示す。
高電圧充放電サイクル特性(%)=(50サイクル目充電時の電池容量/初回充電時の電池容量)×100
【0121】
<高温保存特性の評価>
充放電測定装置「バッテリーアナライザー1470型」[東陽テクニカ(株)製]を用いて、0.1Cの電流で電圧4.5Vまで充電し、10分間の休止後、0.1Cの電流で電圧3.5Vまで放電し容量を測定する(初回電池容量)。更に0.1Cの電流で電圧4.5Vまで充電し、85℃で7日間保存後、0.1Cの電流で3.5Vまで放電を行い電池容量を測定する(高温保存後電池容量)。下記式から高温保存特性を算出する。数値が大きいほど、高温保存特性が良好であることを示す。
高温保存特性(%)=(高温保存後電池容量/初回電池容量)×100
【0122】
(2)リチウムイオンキャパシタの作製
ポリプロピレンのアルミラミネートフィルムからなる収納ケースに、実施例20〜30、比較例3及び4の正極及び負極を、それぞれの塗布面が向き合うように配置して、電極間にセパレータ(ポリプロピレン製不織布)を挿入し、キャパシタ用セルを作製した。エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合溶媒(体積比率1:1)に、LiPFを1mol/Lの割合で溶解させた電解液を作製したセルに注液密封し、上記と同様の方法で高電圧充放電サイクル特性及び高温保存特性を評価した結果を表3に示す。
【0123】
<実施例31〜42>
[電解液の作成]
表4に示した重量割合で電極保護膜形成剤(C)、ルイス塩基(G)及び非水溶媒(F)を配合し、そこに1mol/Lの濃度になるように電解質としてのLiPFを溶解させ実施例31〜42の電解液を調製した。
【0124】
<比較例5>
電極保護膜形成剤(C)の代わりにジメチルスルホン1部を添加すること以外は実施例41と同様の方法で比較例5の電解液を調製した。
【0125】
<比較例6>
電極保護膜形成剤(C)の代わりに1,3−プロパンスルトン1部を添加すること以外は実施例41と同様の方法で比較例6の電解液を調製した。
【0126】
【表4】

【0127】
[リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタの作製]
(1)リチウムイオン電池の作製
(1−1)正極の作製
LiCoO粉末9.0部、ケチェンブラック[アルドリッチ社製]0.5部及びポリフッ化ビニリデン[アルドリッチ社製]0.5部を乳鉢で十分に混合した後、1−メチル−2−ピロリドン[東京化成工業(株)製]7.0部を添加し、更に乳鉢で十分に混合してスラリーを得た。得られたスラリーを、大気中でワイヤーバーを用いて厚さ20μmのアルミニウム電解箔上の片面に塗布し、100℃で15分間乾燥させた後、更に減圧下(10mmHg)、80℃で5分間乾燥して、15.95mmφに打ち抜き、膜厚30μmのリチウムイオン電池用の正極を作製した。
【0128】
(1−2)負極の作製
平均粒子径約8〜12μmの黒鉛粉末92.5部、ポリフッ化ビニリデン7.5部及び1−メチル−2−ピロリドン[東京化成工業(株)製]200部を乳鉢で十分に混合しスラリーを得た。得られたスラリーを、厚さ20μmの銅箔の片面に塗布し、100℃で15分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、16.15mmφに打ち抜き、プレス機で厚さ30μmにしてリチウムイオン電池用の負極を作製した。
【0129】
(1−3)二次電池用セルの作製
2032型コインセル内の両端に、上記正極及び負極を、それぞれの塗布面が向き合うように配置して、電極間にセパレータ(ポリプロピレン製不織布)を挿入し、二次電池用セルを作製した。
【0130】
(2)リチウムイオンキャパシタの作製
(2−1)正極の作製
正極活物質として、アルカリ賦活法によって得られた比表面積が約2200m/gである活性炭を用いた。活性炭粉末、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデンを、それぞれ重量比80:10:10の割合となるように混合し、この混合物を、溶媒であるN−メチルピロリドン中に添加し、撹拌混合してスラリーを得た。このスラリーを、厚さ30μmのアルミニウム箔の上にドクターブレード法で塗布し、仮乾燥した後、電極サイズが20mm×30mmとなるように切り取った。電極の厚みは約50μmであった。セルの組み立て前には、真空中で120℃、10時間乾燥しリチウムイオンキャパシタ用の正極を作製した。
【0131】
(2−2)負極の作製
平均粒子径約8〜12μmの黒鉛粉末80部、アセチレンブラック10部、及びポリフッ化ビニリデン10部を混合し、この混合物を溶媒であるN−メチルピロリドンに添加して撹拌混合し、スラリーを得た。このスラリーを、厚さ18μmの銅箔の上にドクターブレード法で塗布し、仮乾燥した後、電極サイズが20mm×30mmとなるように切り取った。電極の厚みは、約50μmであった。セルの組み立て前に、真空中で120℃、5時間乾燥しリチウムイオンキャパシタ用の負極を作製した。
【0132】
(2−3)負極へのリチウムのドーピング
上記のようにして得られた負極に、以下のようにしてリチウムをドーピングさせた。負極と、リチウム金属箔を、セパレータ(ポリプロピレン製不織布)で挟んでビーカーセルにセットし、所定量のリチウムイオンを約10時間かけて負極に吸蔵させた。リチウムのドープ量は、負極理論容量の約75%とした。
【0133】
(2−4)キャパシタセルの組み立て
上記のようにして得られた正極と負極の間に、セパレータ(ポリプロピレン製不織布)を挿入し、ポリプロピレンのアルミラミネートフィルムからなる収納ケースに入れて、リチウムイオンキャパシタセルを作製した。
【0134】
[電解液の評価]
実施例31〜42及び比較例5、6で調製した電解液を、それぞれ上記二次電池用セルに注液後密封し、前記の方法で出力特性を評価した結果と、キャパシタセルに注液後密封し、前記と同様の方法で出力特性を評価した結果を表5に示す。
【0135】
【表5】

【0136】
本発明の電極保護膜形成剤を用いて作製したリチウム二次電池は、充放電サイクル性能および高温貯蔵特性に優れている。充放電サイクル性能、高温貯蔵特性が向上する原因としては、正極表面で電極保護膜形成剤の高分子皮膜が形成され、電解液の酸化分解を抑制するためと考える。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の電極保護膜形成剤(C)を使用した電極及び電解液は高電圧下でのサイクル特性及び高温貯蔵安定性が優れているため、特にリチウム二次電池用又はリチウムイオンキャパシタ用の電極及び電解液として有用であり、電気自動車用として好適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族炭化水素の1個以上の水素原子がビニルオキシ基もしくは1−プロペニルオキシ基で置換された脂肪族化合物(A1)及び/又はビニルオキシ基もしくは1−プロペニルオキシ基を有する脂肪族エステル化合物(A2)、並びに2−メチル−2−プロペニル基を有する脂肪族炭化水素化合物(B1)及び/又は2−メチル−2−プロペニル基を有する脂肪族エステル化合物(B2)を含有してなる電極保護膜形成剤(C)。
【請求項2】
前記脂肪族化合物(A1)及び/又は前記脂肪族炭化水素化合物(B1)が脂環式化合物である請求項1に記載の電極保護膜形成剤(C)。
【請求項3】
前記脂肪族炭化水素化合物(B1)がシクロヘキサン環骨格を有する請求項1又は2に記載の電極保護膜形成剤(C)。
【請求項4】
前記脂肪族エステル化合物(A2)及び前記脂肪族エステル化合物(B2)が、炭酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、リン酸エステル化合物及びスルホン酸エステル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか記載の電極保護膜形成剤(C)。
【請求項5】
電池作成時及び/又は電池使用時に電極材料表面に保護膜として作用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の電極保護膜形成剤(C)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の電極保護膜形成剤(C)から形成された電極保護膜。
【請求項7】
請求項6に記載の電極保護膜にて活物質を保護してなる電極。
【請求項8】
リチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタの正極用である請求項7記載の電極。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の電極を有するリチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタ。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか記載の電極保護膜形成剤(C)を含有する電解液。
【請求項11】
リチウム二次電池用又はリチウムイオンキャパシタ用である請求項10に記載の電解液。
【請求項12】
請求項10又は11記載の電解液を含むリチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタ。

【公開番号】特開2013−26180(P2013−26180A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162959(P2011−162959)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】