説明

電極式漏洩検出装置

【課題】本発明の目的は、電極式漏洩検出装置の検出値に生じる誤差を低減することである。
【解決手段】測定対象の空間から流体をサンプリングするサンプリング配管と、該サンプリング配管によって導かれた流体が供給される電極式検出器と、該電極式検出器から送信される電流値,電圧値又は抵抗値に基づき警報の要否を判定する漏洩量判定器と、該漏洩量判定器の判定結果に基づき警報を表示する警報表示装置とを備えた電極式漏洩検出装置であって、前記電極式検出器が検出する電流値,電圧値又は抵抗値と液体漏洩量との関係を補正する補正量算出器を備えることを特徴とする。
【効果】本発明によれば、電極式漏洩検出装置の検出値に生じる誤差を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電極式漏洩検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、プラント内に配置され、容器や配管から漏洩した液体を検出する電極式漏洩検出装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−35696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術は、電極部分の劣化状態や、検査対象領域に流入する空気性状が考慮されていなかった。そのため、電極部分の劣化状態や、検査対象領域に流入する空気性状により、検出装置の検出値に誤差が生じるという課題があった。
【0005】
本発明の目的は、電極式漏洩検出装置の検出値に生じる誤差を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記電極式検出器が検出する電流値,電圧値又は抵抗値と液体漏洩量との関係を補正する補正量算出器を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電極式漏洩検出装置の検出値に生じる誤差を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】電極式漏洩検出装置の概要を示す。
【図2】液体漏洩量と電極で測定された電流値との関係式を表したものである。
【図3】電極の使用時間と補正量との関係を示した図である。
【図4】補正前後における液体漏洩量と電流値との関係式を示す(実施例1)。
【図5】補正前後における液体漏洩量と電流値との関係式を示す(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、各実施例を説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、電極式漏洩検出装置の概要を示す。電極式漏洩検出装置100は、サンプリング配管2,排風機3,サンプリング配管4,電極式検出器5,サンプリング配管6,漏洩量判定器8,警報表示装置10,補正量算出器60を備える。電極式検出器5は、電極15を備える。排風機3は、検査対象の空間1から空気を取り込み、下流側の電極式検出器5に空気を送風する装置である。
【0011】
検査対象の空間1内には、配管11が設置されている。また、空間1はダクト13とダクト14により、他の空間とつながれている。ダクト13とダクト14内の圧力は、常にダクト13側がダクト14より高く維持されている。そのため、ダクト13からダクト14側に向けて空気が緩やかに流れており、逆流しない。ダクト13には、ダクト13内の気体性状・状態を計測する電極21が設けられている。信号線22は、電極21の信号を関係式補正器50に伝送する系統である。
【0012】
配管11は、その内部に流体が流れている。漏洩量検出装置100は、配管11を流れていた流体が配管の亀裂12等により空間1内に漏洩した場合に検出する装置である。この漏洩量検出装置100は、配管11からの漏洩量が一定量以上になった場合、警報等により、プラントの運転員に流体が漏洩していることを伝える。
【0013】
電極式検出器5(電極15)と漏洩量判定器8との間、漏洩量判定器8と警報表示装置10との間は、それぞれ信号線7,9によって接続されている。
【0014】
プラント制御装置42は、補正量算出器60に電極15の使用時間値を送信する。信号線43は、プラント制御装置42から補正量決定器40に信号を送信する系統である。
【0015】
補正量算出器60は、電極15の使用時間に基づき補正量を算出する補正量決定器40,液体漏洩量と電極15に生じる電流値の関係を記憶するメモリ30,メモリ30と補正量決定器40からの信号に基づき関係式を補正する関係式補正器50を備える。信号線31,41,51はそれぞれ、メモリ30と関係式補正器50との間,補正量決定器40と関係式補正器50との間,関係式補正器50と漏洩量判定器8との間を接続する。
【0016】
排風機3は、サンプリング配管2を介して、空間1内の空気を吸い込み、サンプリング配管4を通して電極式検出器5に送風する。空間1内に配管11から液体が漏洩している場合、電極式検出器5は空気中の液体成分を検出する。電極式検出器5を通過した空気は、サンプリング配管6を介して再び空間1に戻される。
【0017】
液体漏洩量は、電極式検出器5内の気体中に挿入された電極15間を流れる電流の電流値,電流によって生じる電圧値又は抵抗値等により検出可能である。
【0018】
以下では電流値による検出を例に示す。
【0019】
電極15で検出された電流値は、信号線7を介して漏洩量判定器8に送られる。漏洩量判定器8は、液体漏洩量と電流値との関係、及び、一定量の液体が漏洩した場合に電極15に生じる電流値(しきい値)を記憶する。漏洩量判定器8は、電極15に生じる電流値がしきい値以上であった場合、液体漏洩が発生していると判断して、信号線9を介して警報表示装置10に信号を送信する。警報表示装置10は、この信号に基づき漏洩発生警報を発報する。運転員は、この警報の発報により、空間1内に漏洩が発生している事を知り、適切な対応操作を取る事が可能となる。
【0020】
次に、補正量算出器60の働きを説明する。
【0021】
メモリ30は、液体漏洩量と電極15の電流値の関係式を記憶する。補正量決定器40のメモリは、時間的劣化による電極の影響を算出するため、電極15の使用時間と補正量の関係式を記憶する。
【0022】
図2は、メモリ30内に記憶されている、液体漏洩量と電極15で測定された電流値との関係式を曲線で表したものである。漏洩量101は、警報を発報させる必要のある漏洩量を示す。漏洩量101に対応する電流値が電流値102(しきい値)である。この関係式を補正しない場合、漏洩量判定器8は、電極15が電流値102(しきい値)よりも大きな電流値を検出した場合、警報を発報する。
【0023】
図3は、補正量決定器40に記憶されている、電極15の使用時間と補正量との関係を曲線で示した図である。図3の例では、電極15の使用時間が103である場合、対応する補正量104だけ、液体漏洩量と電流値の関係式が補正される。
【0024】
図2,図3を用いて、関係式の補正方法を説明する。プラント制御装置42は、電極15の使用時間を補正量決定器40に入力する。図3に示すように、補正量決定器40は、電極15の使用時間と補正量の関係式に基づき、電極15の使用時間に対応した補正量を算出する。そして、補正量決定器40は、信号線41を介して関係式補正器50に補正量を送信する。
【0025】
また、関係式補正器50は、液体漏洩量と電極15で測定された電流値との関係式をメモリ30から取り込む。
【0026】
関係式補正器50は、メモリ30より入力された液体漏洩量と電流値との関係式(図2)を補正する。例えば図3において、電極15の使用時間が時間103である場合、補正量104となる。そこで、関係式補正器50は、液体漏洩量と電流値との関係式(図2)において、電流値に補正量104を加える。
【0027】
図4は、補正後の液体漏洩量と電流値との関係式を示す。図4において、曲線120が補正後の関係式、曲線121が元々の関係式となる。図4に示す補正後の関係式は、信号線51により、漏洩量判定器8が取り込む。漏洩量判定器8は、電極15で測定された電流値が電流値105(しきい値)より大きい場合、警報を発報する。
【0028】
なお、本実施例では液体漏洩量と電流との関係式を用いたが、電流によって生じる電圧値又は抵抗値と液体漏洩量との関係を用いた場合も同様の効果が得られる。
【0029】
このように、電極式検出器が検出する電流値,電圧値又は抵抗値と液体漏洩量との関係を補正する補正量算出器を備えることにより、電極式漏洩検出装置の電極の劣化に伴う液体漏洩量と電流値の関係式を補正し、漏洩検出装置が検出する値の誤差や、警報の誤動作及び誤不動作の発生を防止できる。特に、従来は、図4において、電極15の劣化により電流値102〜105間で発報していた誤警報が発報しなくなる。そして、電極の劣化状態に応じて補正された適切な電流値105以上の場合でのみ警報が発報することを可能としている。
【実施例2】
【0030】
図1を用いて、空間1内の空気性状や状態によってバックグラウンド値が変動した場合の影響を回避する方法を示す。
【0031】
空間1内の空気は、ダクト13から送られてくる。そのため、配管11から液体が漏洩した場合を除くと、空間1とダクト13内の空気性状や状態は同一となる。そこで、本実施例では、ダクト13内に設置した電極21が電流値を検出する。電極21は、信号線22を介して関係式補正器50にこの電流値を送信する。関係式補正器50は、取り込んだ電極21の電流量をバックグラウンドの上昇分とし、関係式(図2)を補正する。
【0032】
図5は、ダクト13の電極15がバックグラウンド値(15mA)を検出した場合に、関係式が示す電流値に15mAを加え、補正したものである。
【0033】
図5に示すように、液体漏洩量と電流値の関係が、バックグラウンド分だけ考慮された関係式(曲線122)となっており、バックグラウンド上昇による誤警報の発生が回避されている。このように、補正量算出器が、測定対象の空間より上流側のダクトに配置された第2の電極が検出する電流値に基づき補正量を算出することにより、バックグラウンド値の変動に起因する、漏洩検出器の検出値の誤差や、警報の誤動作及び誤不動作の発生を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明はプラントに設置される配管内を流れる液体の電極式漏洩検出装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 空間
2,4,6 サンプリング配管
3 排風機
5 電極式検出器
7,9,22,41,43,51 信号線
8 漏洩量判定器
10 警報表示装置
11 配管
12 配管の亀裂
13,14 ダクト
15,21 電極
30 メモリ
40 補正量決定器
42 プラント制御装置
50 関係式補正器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の空間から流体をサンプリングするサンプリング配管と、
該サンプリング配管によって導かれた流体が供給される電極式検出器と、
該電極式検出器から送信される電流値,電圧値又は抵抗値に基づき警報の要否を判定する漏洩量判定器と、
該漏洩量判定器の判定結果に基づき警報を表示する警報表示装置とを備えた電極式漏洩検出装置であって、
前記電極式検出器が検出する電流値,電圧値又は抵抗値と液体漏洩量との関係を補正する補正量算出器を備えることを特徴とする電極式漏洩検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の電極式漏洩検出装置であって、
前記補正量算出器は、前記電極式検出器に用いられる電極の使用時間に基づき補正することを特徴とする電極式漏洩検出装置。
【請求項3】
請求項1記載の電極式漏洩検出装置であって、
前記補正量算出器は、前記測定対象の空間より上流側のダクトに配置された第2の電極が検出する電流値に基づき補正することを特徴とする電極式漏洩検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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