説明

電極板構造体、高圧電気化学電池装置及びその製造方法

【課題】電気化学電池電極板構造体、高圧電気化学電池装置及びその装置を製造するための方法を提供する。
【解決手段】電極板構造体10は、その能動領域に渡ってより一様な開口部或いは流路を実現する穴あき板状構成要素からなる層状アセンブリを備える。層状アセンブリは、少なくとも1つの第1の板状構成要素及び少なくとも1つの第2の板状構成要素12,14を備え、そのアセンブリにおける各組の第1及び第2の板状構成要素12,14からなる複数の開口部が互いからオフセットされ、それにより前記組を通る複数の面積を低減した同一或いは概ね同一な開口部或いは流動空間を形成する。高圧電気化学電池装置は、穴あき板状構成要素及び最終的な電池組立中に用いられる高い圧縮力による典型的な材料の変形が生じない穴なし板状構成要素の両方から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気化学電池装置に関連し、より詳細には金属製ハードウェアを利用する高圧電気化学電池装置及びその製造方法に関連する
【背景技術】
【0002】
電気化学電池装置が知られている。これらの装置は典型的には、集合体或いは積重体状に配列された複数の電気化学電池からなり、基本的には電気分解により水或いは別の液体をその成分に分離するように動作するか(すなわち電気分解電池)、或いは水素或いは他のガス燃料及び酸素を触媒作用により結合するように動作するか(すなわち燃料電池)のいずれかであり、それぞれ電気を供給或いは発生する。
【0003】
各電気化学電池は、その使用目的に関わらず、陽極キャビティ及び電極板、陰極キャビティ及び電極板及び電極板の少なくとも能動領域間に配置される(イオン交換膜或いは多孔性マトリクス内に含まれる液体のような任意のイオン性の導電性材料である)電解質を含む。膜或いは多孔性マトリクスは典型的には、反対表面上に位置する触媒層を備え、電気化学反応を容易するか、或いは促進する。
【0004】
電気分解電池及び燃料電池のいずれに対しても好ましい積重配列或いは形状は、液体ヘッダ及びセルマニホールドにより液圧的に並列をなし、積重方向に沿った完全電気経路を設けることにより電気的に直列をなす。これらの電池が集合体或いは積重体状に配列される際、流体キャビティは一方では膜を、他方では固体セパレータシートを用いる電極/電極板インターフェイスにより画定される。二極アセンブリは、セパレータシートインターフェイスにおいて2つの相補的な流体キャビティを結合することにより可能となる。汎用二極アセンブリは典型的には、以下の構成要素、すなわち電解質、電極、電極板、セルマニホールドを備える流体キャビティ、セパレータ板、圧力パッド或いは補正用構成要素、セパレータ板、セルマニホールドを備える流体キャビティ、電極板、電極及び隣接電池の電解質である。各構成要素が寸法公差を有する場合、補正用構成要素がそのような多数構成要素ハードウェアアセンブリに対して有用である。ある一定の圧縮度により、接触状態の種々の構成要素或いは部品間の良好な導電性を確保することが望ましいことは当業者には周知である。これは積重体組立中に加えられる全圧縮力を調整することにより達成することができる。しかしながら、積重体動作条件が接触力と反対をなす際には、典型的には圧力パッドのような弾性構成要素を用いて、動作中に必要とされる最小限の接触圧を保持する。大抵の場合、圧力パッドは電池構成要素の寸法公差を補正する役割も果たす。
【0005】
電気化学電池アセンブリ或いは装置、特にイオン交換膜を利用する装置は、非常に高い過圧時に動作させるのに最も適している。外部均圧基準がその装置の動作中に用いられない時、電池内部及び電気化学電池装置の内側と外側との間の両方の合成差圧が、電池能動領域内の内部電池構成要素及び個々の電池の周辺部分に、著しい歪みをもたらすことは当業者には周知である。さらに装置及びそのインターフェイスの種々の構成要素の流体不透性について高い要求がなされる。均圧基準が典型的には、その装置の全体寸法及び重量を増加させるばかりでなく、装置の複雑性及びコストをも増す場合、その基準を使用することが適しているとは限らない。従って上記圧力パッドに加えて、電池内部のそのような高圧動作の要求を受入れる或いは満足するための手段が、「オーバーボード(overboard)」及び「クロス−セル(cross-cell)」高圧動作の両方の場合に開発されている。
【0006】
説明上電池自体が2つの流体キャビティを備えるため、その任意の1つ或いは両方を周囲圧力より高い圧力で動作させることができる。「オーバーボード」圧力性能は、両方の流体キャビティが周囲圧力より高い概ね同一の圧力を有する電池アセンブリに適用する。この動作モードでは、電解質電池構成要素に加わる応力が比較的小さく、多孔性マトリクス内に含まれる液状電解質を使用する電池にのみ用いることができる。逆に「クロス−セル」圧力性能は、1つの流体キャビティが他のキャビティより概ね高い圧力状態にある電池アセンブリに適用する。この動作モードでは、2つの流体キャビティ間にかかる差圧に比例して、応力が電解質電池構成要素間に及ぼされる。多孔性マトリクス電解質構造体の「クロス−セル」圧力性能は典型的には、1キロパスカル(kPa)の範囲にあり、一方適当に支持されたポリマ膜電解質構造体は現在、電池間で21メガパスカル(MPa)より高くすることができる。
【0007】
特にイオン交換膜を用いる高圧電気化学電池装置に関して、その装置の陽極及び陰極電極板は通常、少なくとも2枚の板状構成要素からなり、繊細なメッシュスクリーン並びにまた多孔性シートと共に用いられ、電極への材料の到達を容易にすると共に、膜に対して付加的な支持を与える。これらの高圧電池構成要素は基本的には、適切な形状及び大きさの固体の流体不透性フレーム及びそのフレームにより画定される流体浸透性中央部を含むように構成される。各構成要素のフレームは複数の貫通孔を備える。単電池からなるアセンブリの場合、そのような貫通孔は、集合的に流体供給及び排出流路或いはマニホールドを構成するように配列される。さらに電極板の板状構成要素のフレームは、貫通孔と流体浸透性中央部とを接続するための役割を果たす溝部を含む。
【0008】
Titterington等に付与された米国特許第5,316,644号は、参照して本明細書の一部としており、好適には少なくとも2枚の概ね同一な板状構成要素からなる改善された電気化学電池電極板を開示する。上記のように、各構成要素は流体浸透性中央部及び中央部周囲を包囲し、少なくとも1つの貫通孔を設けられた固体フレームを備える。またフレームは複数の分離スロットの列を設けられ、2つの構成要素のうちの1つのスロットが他の構成要素のスロットと部分的に重複し、貫通孔と中央部とを接続し、蛇行性経路を規定する通路を形成する(Col. 4, lines 21〜26を参照)。
【0009】
Titterington等の改善された電極板の各板状構成要素の流体浸透性中央部或いは能動領域は、菱形開口部の網目或いは網状部を構成する。板状構成要素は、菱形の長手部分が互いに対して90度の角度をなして積重される。しかしながらこの積重技術の結果として形成された大型の貫通孔は、領域内に実質的に支持されない隣接構成要素を残すことがわかっている。差圧が高い応用例の場合、これらの大型開口部は十分な流体流路を与えることができるが、その一方で電池アセンブリに破損をもたらす重要な電池構成要素の支持が不十分になる。
【0010】
高圧電気化学電池装置を製造する際に典型的には、結合材料が固体フレーム或いは事前処理されている電池構成要素の封止表面に加えられ、接着力を高めるようにする。その後その構成要素は組み立てられ、そのアセンブリは高温及び高圧をかけることにより一度に積層される。
【0011】
しかしながら、その積層されたアセンブリに添加された結合剤は、多くの微細な間隙を有する粒状被膜を形成することがわかっている。また積層中に用いられる高い圧縮力のために、電池構成要素が弱く、しかも支持されない領域において変形するということもわかっている。詳細には電極板のスロットパターンがその積層されたアセンブリにおいて明らかに視認可能となる。そのスロットが電池能動領域と流体マニホールドとを接続する場合、封止表面における機械的な欠陥により、高圧流体が、そのスロットの上側及び下側の封止領域に渡って低圧マニホールド内に漏出するようになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の主な目的は従来技術の上記不都合な点を回避することである。
【0013】
より詳細には、本発明の目的は、長期間に渡って、超高圧時に良好に動作可能な高圧電気化学電池装置を実現することである。
【0014】
本発明の別の目的は、その構成要素が高い強度要件を満足し、材料が変形することのない高圧電気化学電池装置を実現することである。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、電池構成要素間で改善された接着力を示す高圧電気化学電池装置を実現することである。
【0016】
本発明の別の目的は、電極板の能動領域間の流路のためのより一様な開口部を実現する高圧電気化学電池装置において用いるための電気化学電池電極板構造体を提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、高圧電気化学電池装置を製造するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
それゆえ本発明は少なくとも1組の少なくとも1つの第1の板状構成要素及び少なくとも1つの第2の板状構成要素からなる層状アセンブリを備える電気化学電池電極板構造体を実現する。各組の第1及び第2の板状構成要素は、複数の同一或いは概ね同一な開口部或いは流動空間を備える中央部及びその中央部と一体をなし、かつ完全に包囲し、さらに少なくとも1つの貫通孔及びその貫通孔と中央部との間に少なくとも1つの断続的な部分溝部を形成する複数のスロットを設けられた固体フレーム部或いは封止表面を備える。
【0019】
層状アセンブリにおける各組の第1及び第2の板状構成要素の貫通孔は、そのアセンブリを通る少なくとも1つの連続流動コンジットを形成するように配列される。
【0020】
そのアセンブリにおける各組の第1及び第2の板状構成要素の中央部の複数の開口部は互いからオフセットされ、それにより各組を通る複数の面積を低減した同一或いは概ね同一な開口部或いは流動空間を形成する。
【0021】
そのアセンブリにおける各組の第1及び第2の板状構成要素の断続的な部分溝部は互いに流通し、貫通孔とそのアセンブリにおける各組の構成要素の中央部により形成される複数の低減面積開口部との間に流通状態を確立する連続通路を形成する。
【0022】
また本発明は、高圧電気化学電池装置を製造するための方法及びその方法により製造される高圧電気化学電池装置の両方を提供する。その電気化学電池装置は、板状構成要素及び電解質からなる層状アセンブリを備える少なくとも1つの電池から構成され、第1のタイプの板状構成要素は、少なくとも1つの断続的なスロットの列を欠如する封止表面を備える。
【0023】
本発明の方法は、第1のタイプの穴なし構成要素を備える少なくとも1つの積層されたサブアセンブリを製造する過程と、その後最終的な電池アセンブリを製造する過程とを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の上記の及び他の特徴及び利点は以下の説明及び添付の図面からより明らかになるであろう。
【0025】
本発明の電極板構造体は、陽極或いは陰極電極板構造体の何れかとして機能するように構成或いは設計され、それゆえ電極板構造体に種々の電位を適用する際に、電気化学電池内の電気分解反応を実現及び支援するように機能することができ、同時に隣接或いは連続的な電池構成要素に対する一様で、かつ均等な支持を実現することができる。
【0026】
図1に詳細に示すように、参照番号1用いて、全般的に本発明の電極板構造体の好適な実施例を示す。電極板構造体10は基本的には、第1の組の第1及び第2の板状構成要素12、14からなる層状アセンブリを備える。第1及び第2の板状構成要素12、14はそれぞれ、複数の同一或いは概ね同一な菱形開口部或いは流動空間20、22を有する中央部16、18(第1A図に最も分かりやすく示される)及び中央部16、18と一体をなし、かつその周囲を包囲する固体フレーム部或いは封止領域24、26を備える。参照しやすくするため、固体フレーム部は第1の板状構成要素12を参照する場合にのみ記載されるであろう。固体フレーム部24は基本的に、各流体流のための1つの貫通孔、貫通孔を中央部16に接続するための(隣接する板状構成要素に含まれるスロットと協働する)少なくとも一列の断続的なスロット及び少なくとも2つの積重用配列ガイド或いはアセンブリ補助部を設けられる。より好適な実施例では、第1図に最も分かりやすく示されるように、固体フレーム部24は4つの貫通孔28A、B、30A、B及び二組の8つの断続的なスロット列32A、Bを設けられ、そのスロットが反対側をなす貫通孔28A、Bと中央部16との間に断続的な部分溝部を形成する。固体フレーム部24はさらに、少なくとも本発明の電極板構造体10の組立中及び最終的な電池の組立中に位置決めピン(図示せず)を受入れるように機能する4つの位置決め穴部34A、B、C、Dが設けられる。
【0027】
第1の板状構成要素12の貫通孔28A、B、30A、B及び第2の板状構成要素14の貫通孔は、電極板構造体10を通る連続的な流動コンジットを形成するように配列される。貫通孔30A、Bは、断続的なスロット列により中央部16、18は接続されず、電気化学電池膜の反対側の電池中央部或いは能動領域に対する流通状態を実現する。電気分解電池では、電池膜は流体セパレータとしても機能する。水電気分解の場合、一方は水及び水素を含み、他方は水及び酸素を含む。それゆえ一対の貫通孔28A、Bはその膜の一方から流体を供給/除去し、貫通孔30A、Bはその膜の他方から流体を供給/除去するであろう。多数電池アセンブリの場合、貫通孔28A、B、30A、Bは、積重方向に電池間を流通し、個々の流体流を一方に集める。個々の流体流はベース流体板に対して流動し、外部流体制御システムにより制御される。
【0028】
中央部16、18の複数の同一或いは概ね同一な菱形開口部或いは流動空間20、22は電極に対する流体通路を提供し、一方機械的支持及び電気的導電性経路が中央部16、18のストランド間の接触により実現される。流動空間20、22は構造体10において互いからオフセットされ、それにより電極板構造体10を通る複数の低減面積の同一或いは概ね同一な菱形開口部或いは流動空間を形成する。そのオフセットは、図1Aに最も分かりやすく示されるように、第1の板状構成要素12の菱形開口部20のパターンを、水平方向或いは垂直方向の中央線に対して、菱形開口部20の幅の1/4だけシフトすることにより達成することができることは当業者には容易に明らかになろう。また電極板構造体10が3つ以上の板状構成要素を備える場合、各構成要素の各中央部の開口部のパターンはその下側並びにまた上側をなす開口部のパターンに対してオフセットされるであろう。その結果電極板構造体10は隣接する電池構成要素に対して一様に、かつ均等に支持される。
【0029】
より好適な実施例では、図2に最も分かりやすく示されるように、電極板構造体10はオフセットされた「粗い菱形」パターンを有する第1の組の第1及び第2の板状構成要素12A、14A及びオフセットされた「細かい菱形」パターンを有する第2の組の第1及び第2の板状構成要素12B、14Bを備える。さらにより好適な実施例では、「細かい菱形」パターンは厳密に、「粗い菱形」パターンの寸法の1/4になる(すなわち4つの「細かい」菱形が1つの「粗い」菱形と全体寸法が同一になる)。「細かい菱形」パターン化された構成要素12B、14Bは電解膜を支持する役割を果たすが、一方電池は操作不可である。電池アセンブリにおける弾性構成要素(例えば圧力パッド、多孔性プレート)は、膜を板状構成要素12、14の中央或いはスクリーン部16、18に押込むための力を及ぼすということは当業者には容易に理解されよう。細かい及び粗いスクリーンパターンからなる系を用いることにより、膜支持構造体は、電池が押圧されていない場合に改善される。
【0030】
菱形開口部或いは流動空間が上で記載されてきたが、本発明はそれに限定されるわけではない。本発明の電極板構造体10に任意の形状の開口部が用いられてもよい。規則的に配列された多角形の開口部がストランド幅を一様にするために好ましく、菱形開口部が最も好ましい。開口部20、22の大きさは、構造体10を横方向及び軸方向に通る流体圧降下及び内部電池構成要素を十分に支持するために必要とされる最終的な電池構造体の最小限の強度のような要件により支配される。開口部20、22の大きさは、約0.05cm×0.10cm〜約0.31cm×0.61cmの範囲にあることが好ましい。
【0031】
図3に最も分かりやすく示されるように、第1の板状構成要素12の断続的なスロットの列32Aにより形成される断続的な部分溝部は、第2の板状構成要素14の断続的なスロットの列に部分的に重複し、板状構成要素12、14の貫通孔(例えば28A)と構造体10の中央部16、18により形成される複数の低減面積の菱形開口部との間に蛇行性の流通状態を確立する連続的な通路を形成する。第1及び第2の板状構成要素12、14からなる断続的な部分溝部により形成される連続通路のより詳細な説明は、米国特許第5,316,644号に記載されており、参照して本明細書の一部としている。
【0032】
本発明の電極板構造体10は、ある最低限の強度要件を満足し、電池組立中及び動作中に変形に耐えるようにしなければならない。電極板構造体10の組立において用いるのが適当と考えられる材料は、ニオブ、チタン、ジルコニウム及びステンレス鋼からなる集合体から選択される材料を含む。
【0033】
電極板構造体10は、約0.003cm〜約0.15cmの範囲の厚さを有する金属製シートをエッチングすることにより製造或いは組立てられることが好ましい。これらのエッチングされた金属製シートはPhotofabrication Engineering Inc. of Milford, MA and Newcut, Inc. of Newark, NYのような光化学エッチング供給業者から入手することができ、Photofabrication Engineering社はチタン、ジルコニウム及びニオブのような固体ポリマ電気分解電池構成材料を処理する能力を有する。最終的にエッチングされた金属、板状構成要素12、14はその後あらゆる表面酸化物層を除去するために蒸気噴霧されることが好ましい。その後蒸気噴霧された構成要素は能動領域或いは中央部16、18においてプラチナメッキされ、硬化性結合材料或いは接着剤からなる薄い層が封止領域或いは固体フレーム部24、26に添加される。
【0034】
電極板構造体10の板状構成要素12、14は約80〜約90℃の範囲の温度及び約30〜約60MPaの範囲の圧力で積層され、その条件は少なくとも4時間封止領域或いは固体フレーム部24、26にのみ加えられることが好ましい。
【0035】
上で示唆したように、高圧電気化学電池の各層或いは層の組合体は特定の目的を果たす。上記の目的或いは機能を達成するためにスクリーン或いはメッシュパターン、断続的なスロット列並びにまた流動貫通孔のような種々の機構がこれらの層内にエッチングされる。
【0036】
1つの電池或いは数個のみの電池を構成する全ての層(例えば電極板構造体10の第1及び第2の板状構成要素12、14)は、その内部にエッチングされる断続的なスロット列を備える必要があるということは当業者には周知である。その他の層は、その各機能に加えて、穴あき層の両側のスロットに対するカバーとしての役割を果たす。
【0037】
金属製ハードウェアを利用する高圧電気化学電池は典型的には、アセンブリ表面全体に渡って圧縮力を加え、組立てられた層を一度に積層することにより製造されるということは当業者に周知である。詳細には、結合材料が各金属層の封止表面に添加され、その後乾燥される。その後電池層は、アセンブリ取付具内に積重され、その積重された層を80〜90℃の範囲の温度まで加熱し、同時に積重された層の表面全体に渡って30〜60MPaの範囲の圧縮力を加えることにより積層化される。
【0038】
その電池の積層化に用いられる高い圧縮力により、スロット列を覆う穴なし層は、支持されていない領域において変形するようになる。そのスロットが電池能動領域或いは中央部と流動貫通孔により形成されるマニホールドとを接続するために、これらの機械的欠陥により、高圧流体がスロットの上側及び下側をなす領域に渡って低圧マニホールド内に漏出するようになる。
【0039】
高圧電気化学電池装置を製造するための本発明の方法はこの問題を処理する役割を果たす。本発明の方法は基本的に、最終積層化過程に先行して、層厚を増加することなく機械的により強い構成要素部品を与えるために、電池動作に必要とされる他の機能素子を含む穴なし層の少なくとも1つの積層されたサブアセンブリを製造する過程を有する。
【0040】
より詳細には本発明は、板状構成要素及び電解膜からなる層状アセンブリを備える少なくとも1つの電池から構成される高圧電気化学電池装置を製造するための方法を提供する。第1のタイプの板状構成要素は少なくとも1つの断続的なスロット列を欠如する封止表面を備え、第2のタイプの板状の構成要素はそのような機構を含む封止表面を備える。
【0041】
より詳細には本発明の方法は、第1のタイプの板状構成要素の封止表面を結合材料で塗着し、その塗着された構成要素を少なくとも1つのサブアセンブリに組み立てる過程と、選択的に少なくとも2つの第2のタイプの板状構成要素の封止表面を結合材料で塗着し、その塗着された構成要素を少なくとも2つのサブアセンブリに組み立てる過程と、圧力をその封止表面のみに加え、個別にそのサブアセンブリを積層する過程と、積層されたサブアセンブリ及び第2のタイプの板状構成要素の封止表面を結合材料で塗着し、塗着されたサブアセンブリ及び板状構成要素を最終的なアセンブリに組み立てる過程と、圧力をサブアセンブリの封止表面及び最終的なアセンブリの板状構成要素にのみ加え、最終的なアセンブリを積層する過程と、約10〜約60Mpaの範囲の圧力で平板間でその積層された最終的なアセンブリを押圧する過程と、さらに電解膜と、押圧され、積層された最終的なアセンブリを組み立て、少なくとも1つの電池を形成する過程とからなる。
【0042】
本発明の方法が第4図に示されており、最終的な塗着、積層化及び押圧過程に至る前の一般的な二極電池構造体が参照番号36により示される。二極構造体36は3つの穴なしサブアセンブリ38A、B、C及び2つの穴あきサブアセンブリ40A、Bから構成される。サブアセンブリ38A、B、C、40A、Bの積層中に、圧力は領域42にのみ加えられ、中央部或いは能動領域44A、B、C、D、Eが「弛緩」形状を呈するようにすることができる。
【0043】
板状構成要素の封止表面を塗着するために用いられる結合材料は、その構成要素封止表面に添加され、比較的滑らかな空隙のない薄膜を形成することができる任意の硬化性結合材料であってよい。そのような材料の例は、硬化性エラストマ、シリコーン、エポキシ或いは動作条件及び固体ポリマ電解膜を利用する動作中の電気分解電池に対する要件と両立可能な他の接着材料の溶液を含む。
【0044】
好適な実施例では、フッ素ゴム性材料が結合材料として用いられる。そのような材料の1つが、商品名FLUOROLAST fluoroelastomer coatingで、Lauren Manufacturing Co. of New Philadelphia, Ohioから市販されている。
【0045】
さらに以下の過程により構成要素封止表面にそのような好ましい結合材料を加えることが好ましい。それは脂肪族ケトン(例えばメチルイソブチルケトン)及び他の高分子量ケトンのような比較的低い揮発性を有する溶媒中にフッ素ゴム性材料を5:1の割合で希釈した溶液を製造する過程及び希釈されたフッ素ゴム性溶液を封止表面に噴霧する過程である。その結果生じた被膜は、約0.003〜約0.018mmの範囲の厚さを有することが好ましく、アセンブリ取付具内にその塗着された構成要素部品を積重する前に、少なくとも30分間空気中で乾燥させる。非常に薄く緻密な接着用被膜は、溶媒の揮発性を調整することにより得られる。乾燥時間を長くすることにより、その被膜は完全に表面に行き渡り、連続した薄膜を形成することができる。また好ましいフッ素ゴム性結合材料は、誘電性絶縁体としても機能する。
【0046】
結合材料を添加した後、穴なし層から構成される少なくとも1つのサブアセンブリ及び選択的に穴あき層から構成される少なくとも1つのサブアセンブリが製造され、積層化プロセスが実行され、その後サブアセンブリを高温及び高圧に個別に晒す。FLUOROLAST fluoroelastomer coatingを用いるサブアセンブリの場合、約80〜90℃の範囲の温度及び約30〜60Mpaの範囲の圧力が少なくとも4時間用いられ、積層することが好ましい。積層中に及ぼされる圧力或いは圧縮力は、封止表面上にのみ集中され、中央部或いは能動領域が自在に「弛緩」形状を呈することが好ましい。
【0047】
サブアセンブリが積層された後、サブアセンブリの封止表面及び残りの板状構成要素が結合材料で塗着され、乾燥される。最終的な電池アセンブリの電解質或いは膜の一方に配置される塗着された部品は、その後アセンブリ取付具に積重され、上記の条件下で積層化される。
【0048】
全ての層が互いに積層化された後、最終的な部品は約1〜2分間非常に平坦な平板間で押圧され、能動領域内の構成要素を完全に硬化する。最終的な押圧過程は、最終的な電池組立中に電解質或いは膜への過大応力を排除する役割を果たす。最終的な押圧過程は典型的には、電池アセンブリに対する耐圧要件の110%で行われ、それは通常、スクリーン層の変形をもたらす圧縮応力を十分に下回る。
【0049】
最終的な押圧過程が終了した後、膜は、積層及び押圧された最終部品と共に電池内に組み付けられる。
【0050】
本発明は詳細な実施例に関連して図示及び記載されてきたが、その形状及び細部における種々の変更が、請求される発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われることは当業者には理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1の組の第1及び第2の板状構成要素を備える本発明の電気化学電池電極板構造体の好適な実施例の平面図である。
【図1A】第1図の細部1Aの寸法を拡大した平面図である。
【図2】オフセットされた「粗い菱形」パターンを有する第1の組の第1及び第2の板状構成要素と、オフセットされた「細かい菱形」パターンを有する第2の組の第1及び第2の板状構成要素とを備える本発明の電気化学電池電極板構造体の別の好適な実施例の平面図である。
【図3】2つの第1及び1つの第2の板状構成要素を備える本発明の電極板構造体のさらに別の好適な実施例を示す、貫通孔或いは流体マニホールドポートから中央部或いは電池能動領域までの流動フィールドの拡大断面図である(菱形パターンは明確にするために第3図では中央部から省略されている)。
【図4】最終組立過程前に、5つの積層されたサブアセンブリを備える一般的な二極電解質電池アセンブリの模式図であり、それにより本発明の方法が示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状構成要素の層状アセンブリと電解質よりなる少なくとも1つの電池より構成される高圧電気化学電池装置を製造する方法であって、
前記板状構成要素が、
複数の開口部又は流動空間を有する中央部と、該中央部と一体をなし、該中央部周囲を完全に包囲する封止表面より成り、貫通孔と中央部の間に少なくとも1つの断続的な部分溝部を形成する少なくとも1つの断続的なスロット列を備えた一のタイプの板状構成要素と、
少なくとも1つの断続的なスロット列を欠如した封止表面を有する別のタイプの板状構成要素を含み、
前記方法が、
前記板状構成要素の最終層状アセンブリの製造の前に且つ第1と第2の両方のタイプよりなる前記最終層状アセンブリと前記電解質を組立てて少なくとも1つの電池を形成する前に、前記第1のタイプの前記板状構成要素よりなる少なくとも1つの積層されたサブアセンブリを製造する過程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
板状構成要素の層状アセンブリと電解膜より成る少なくとも1つの電池で構成され、第1のタイプの前記板状構成要素は、少なくとも1つの断続的なスロット列を欠如した封止表面を有し、第2のタイプの板状構成要素は、少なくとも1つの断続的なスロット列を含む封止表面を有する、高圧電気化学電池装置を製造する方法であって、
前記第1のタイプの前記板状構成要素の前記封止表面を結合材料で塗着してこれを少なくとも1つのサブアセンブリに組立てる過程と、
選択的に、少なくとも2つの前記第2のタイプの前記板状構成要素の前記封止表面を結合材料で塗着してこれを少なくとも1つのサブアセンブリに組立てる過程と、
前記サブアセンブリを個別に積層する過程であって、このとき、圧力は、前記板状構成要素の前記封止表面のみに加えられる該過程と、
前記積層されたサブアセンブリ及び前記第2のタイプの板状構成要素の前記封止表面を前記結合材料で塗着して前記塗着されたサブアセンブリと板状構成要素を最終アセンブリに組立てる過程と、
前記最終アセンブリを積層する過程であって、このとき、圧力は、前記サブアセンブリ及び前記板状構成要素の前記封止表面のみに加えられて最終アセンブリとする該過程と、
前記積層された最終アセンブリを、約10〜60MPaの範囲の圧力で、平板間で押圧する過程と、
前記電解膜と押圧され積層された最終アセンブリを組立てて少なくとも1つの電池を形成する過程とより成ることを特徴とする方法。
【請求項3】
前記第1及び前記第2の板状構成要素は、ニオブ、チタン、ジルコニウム及びステンレス鋼からなる集合体より選択される材料から製造されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記結合材料は、フッ素ゴム性材料、シリコーン及びエポキシから成る集合体より選択されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記結合材料がフッ素ゴム性材料であり、前記封止表面の塗着に脂肪族ケトン溶媒中に前記フッ素ゴム性材料を5:1の割合で希釈した溶液が使用されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記サブアセンブリ及び前記最終アセンブリが、約80〜90゜Cの範囲の温度で且つ約30〜60MPaの範囲の圧力で積層されることを特徴とする請求項5に記載の方法。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−79296(P2009−79296A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260483(P2008−260483)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【分割の表示】特願平10−526874の分割
【原出願日】平成9年11月25日(1997.11.25)
【出願人】(500050251)ユナイテッド・テクノロジーズ・コーポレイション (1)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】