説明

電気コントラバス

【課題】搬送時や収納するときなどの取扱性を向上させる。
【解決手段】複数本の弦が張設された楽器本体2に対してフレーム21を3つの止めねじ24,26,27によって着脱可能に取付ける。楽器本体2の一側面10がわに張り出したフレーム本体21Aと、このフレーム本体21Aの上端に折畳み自在に取付けられ楽器本体2の他側面22がわに張り出したヨーク部21Bとでフレーム21を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気弦楽器に関し、さらに詳しくは、電気コントラバス、電気チェロ等の大型の電気弦楽器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低音域を担当するチェロは、全長がバイオリンの倍(約120cm)ではあるが、横板の幅は4倍近くにも及ぶ。また、最低音域を担当するコントラバスは、チェロの2倍たらずで、約2m(弦長1m)に及ぶ長さと大きな共鳴胴を有している。このような大型弦楽器の演奏に際しては、胴尻に設けたエンドピン(脚棒)を床面に接触させ、共鳴胴や棹部を胸または肩で支えて演奏する。この場合、奏者は通常椅子に腰掛けて膝の間で演奏(座奏)するが、時には立って演奏(立奏)することもある。
【0003】
大型の弦楽器は広い音域を備え、特に音量が相対的に大きいために弱音器(金属ミュート)を装着したとしても音量をあまり下げることができず、住宅地では周囲に迷惑を及ぼすため練習時間や場所が著しく制約される。
【0004】
そこで、最近では音量を自由に調整することができ、また必要に応じて音を消しヘッドホンで消音演奏を楽しむことができるようにした電気チェロや電気コントラバスが提案されている。このような電気弦楽器においては、自然楽器に比べて音量を10分の1に、音のエネルギーを約100分の1(−20dB ;4弦の平均値)程度にまで低減することにより、人がささやく程度の音量で静かに演奏でき、時間帯や住環境を気にすることなく、いつでも練習することができる利点がある。
【0005】
図5および図6にこの種の電気コントラバスの従来例を示す。これらの図において、電気コントラバス1は、細長い楽器本体2と、この楽器本体2の前面に張設された4本の弦3と、楽器本体2の下面に取付けられた伸縮自在なエンドピン5と、楽器本体2の上端部、中間部および下端部にそれぞれ取付けられた上駒6、駒7およびテールピース8等を備えている。楽器本体2は、胴部2Aと、この胴部2Aの上端に接続された棹部2Bと、この棹部2Bの表面に取付けられた指板2Cとで構成されている。弦3は、前端側が棹部2Bの先端部に設けたペグ9にそれぞれ巻き付けられて係止され、このペグ9に近い部分が上駒6によって支持され、後端部がテールピース8に係止され、このテールピース8に近い部分が駒7によって支持されている。
【0006】
また、楽器本体2は図示しないピックアップ装置を内臓しており、これによって弦3の振動を検出し、電子回路(イコライザー)で音色を補正した後に、コントラバス独特の音を再現するようにしている。このとき、ヘッドホンを接続しておけば消音演奏を楽しむことができ、一方アンプを接続しておけば、スピーカをとおして演奏を聴くことができる。さらに、他の消音楽器やCDプレーヤー、電気楽器などと接続すれば合奏を楽しむことができる。
【0007】
上記した電気コントラバス1は、アコースティックなコントラバスと同様に演奏されるが、音色を電気的に処理して発音させているため共鳴胴を必要とせず、代わりに楽器本体2にフレーム4を設け、このフレーム4を肩や胸で支えたり、膝で押さえたりすることにより、コントラバスと同様な演奏、特に弓奏時にコントラバスの演奏に近い演奏姿勢をとることができるようにしている。このためフレーム4は、正面から見て通常共鳴胴の側部形状に近似した形状、具体的には数字の「3」に近い形状に形成され、楽器本体2の低音弦がわの側面10に張り出して取付けられ、上端部が反対側に張り出している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した従来の電気コントラバス1においては、楽器本体2自体が長く、またフレーム4が楽器本体2に取り外し不能に固定されているため、搬送時や収納するときなど、取扱性に欠けるという問題があった。
【0009】
そこで、フレーム自体を取り除いた電気コントラバスも提案されているが、このような電気コントラバスは、立奏時において楽器本体2を安定した状態で支持することが難しく、演奏性に難点があった。何故なら、立奏時においては膝で楽器本体2を挟み込むことができず、左右の手で楽器本体2を支え難い状態での演奏、例えばビブラートをかけたり、ボーイング動作を行うとき安定した状態で支持することができず、楽器本体2がエンドピン5を中心として回転してしまうからである。
【0010】
本発明は上記した従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、搬送時や収納するときなどの取扱性を向上させることができるようにした電気弦楽器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために第1の発明は、複数本の弦が張設された楽器本体と、この楽器本体に取付けられたフレームとを備えた電気弦楽器において、前記フレームを前記楽器本体に対して着脱可能に取付けたものである。
【0012】
第2の発明は、上記第1の発明において、楽器本体の一側がわに張り出したフレーム本体と、このフレーム本体の上端に設けられ前記楽器本体の他側がわに張り出したヨーク部とでフレームを構成したものである。
【0013】
第3の発明は、上記第2の発明において、ヨーク部をフレーム本体に対して折畳み自在に取付けたものである。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明においては、フレームが楽器本体に対して着脱可能に取付けられているので、楽器本体とフレームを分解して搬送したり、ケースに別々に収納することができる。特に、楽器本体は細長い形状で長さ自体は変わらないが、フレームを外すと突起部がなくなるため取扱い易い。
【0015】
第2の発明において、フレームは楽器本体の一側がわに張り出すフレーム本体と、他側がわに張り出すヨーク部を備えているので、フレーム本体とヨーク部を肩や胸で支持し、さらにフレーム本体を膝で押さえると、楽器を安定した状態で支持でき、自然な姿勢で演奏することができる。
【0016】
第3の発明においては、ヨーク部を折畳むと、フレームを持ち運び易い形状にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明を電気コントラバスに適用した一実施の形態を示す正面図、図2は背面図、図3はフレームの取り外し手順を説明するための図、図4はフレームを取り外した状態を示す図である。なお、図中従来技術の欄において示した構成部材と同一のものについては、同一符号をもって示し、その説明を適宜省略する。
【0018】
これらの図において、電気コントラバス20は、細長い楽器本体2と、この楽器本体2の前面に張設された4本の弦3と、楽器本体2の下面に取付けられた伸縮自在なエンドピン5と、楽器本体2の上端部、中間部および下端部にそれぞれ取付けられた上駒6、駒7およびテールピース8、ペグ9等を備えている。楽器本体2は、胴部2Aと、この胴部2Aの上端に接続された棹部2Bと、この棹部2Bの表面に取付けられた指板2C等で構成されている。なお、楽器の携帯性を重視した場合、楽器本体2を分割したり、折畳み自在に構成することも考えられるが、組立の簡便性や強度を考慮すると、弦3の張力の影響を受ける胴部2Aと棹部2Bは一体としておくことが好ましい。
【0019】
また、楽器本体2に内臓した図示しないピックアップ装置を備え、これによって弦3の振動を検出し、電子回路(イコライザー)で音色を補正した後に、コントラバス独特の音を再現するようにしている。このとき、ヘッドホンを接続しておけば消音演奏を楽しむことができ、一方アンプを接続しておけば、スピーカをとおして演奏を聴くことができる。さらに、他の消音楽器やCDプレーヤー、電気楽器などと接続すれば合奏を楽しむことができる。このような電気コントラバス20は図5および図6に示した従来の電気コントラバス1と全く同一である。
【0020】
さらに、電気コントラバス20は、フレーム21を備えている。このフレーム21は、演奏時に楽器を安定した状態で支持するために用いられるもので、正面から見てアコースティックなコントラバスの共鳴胴の側部形状に近似した形状、具体的には数字の「3」に近い形状に形成されたフレーム本体21Aと、このフレーム本体21の上端に図1において矢印方向に折畳み自在に連結されたヨーク部21Bとで構成されている。フレーム本体21Aは、金属部品、木製部品、プラスティック部品等の組合わせによって形成され、ヨーク部21Bは木材またはプラスティックによって形成されている。
【0021】
このようなフレーム21は、図5および図6に示した電気コントラバス1のフレーム4と略同一形状で、フレーム本体21Aが楽器本体2の低音弦がわの側面10に張り出し、ヨーク部21Bが高音弦がわの側面22に張り出すように取付けられている点で一致しているが、ヨーク部21Bをフレーム本体21Aに対して折畳み自在に取付けた点と、フレーム本体21Aを楽器本体2に対して着脱可能に取付けた点で相違している。
【0022】
前記フレーム21の着脱可能な取付構造について詳述すると、フレーム本体21Aの上端、言い換えればフレーム本体21Aとヨーク部21Bとの接続部を胴部2Aの裏面でネック付け根部分に止めねじ24によって固定し、中央部に連結片25を設け、この連結片25を胴部2Aの裏面中央部に止めねじ26によって固定し、下端を胴部2Aの下面に同じく止めねじ27によって固定している。止めねじ24,26,27は、工具を用いないで容易に締め付けたり緩めたりすることができるようにつまみを備えている。また、止めねじ24は、ヨーク部21Bを回動自在に枢支する軸を兼用している。前記連結片25は、細長い金属板によって形成され、一端がフレーム本体21Aの内面に連結ピン28によって回転自在に連結され、他端が前記止めねじ26によって胴部2Aに固定される。
【0023】
このような電気コントラバス20において、フレーム21を楽器本体2から取り外すには、先ず止めねじ26を手で緩めて連結片25を楽器本体2から外す。そして、この連結片25を図3に示すように回動させてフレーム本体21Aの内面に沿って収納する。次に、止めねじ27を緩めてフレーム21の下端を楽器本体2から外す。さらに、止めねじ24を緩めてフレーム21の上端を楽器本体2から外す。これによってフレーム21は楽器本体2から取り外される。そして、図4に示すように、ヨーク部21Bを折畳み、フレーム21を移動用に用意したケース等に収納する。同様に、楽器本体2も専用のケースに収納する。このように、楽器本体2とフレーム21を分解して専用のケースに収納すると、携行や収納が容易で、可搬性および収納性を向上させることができる。特に、楽器本体2はフレーム21を取り外すと、長さ自体は変わらないが、突起部分がなくなるので取扱い易い。また、フレーム21はヨーク部21Bが折畳まれるため、収納時の形状を小さくすることができる。
【0024】
使用に当たって電気コントラバス20を組立てる場合は、上記した手順とは反対の手順によってフレーム21を楽器本体2に取付ければよい。
【0025】
なお、上記した実施の形態においては、電気コントラバスに適用した例を示したが、本発明はこれに何等限定されるものではなく、電気チェロにも適用することができる。その場合、フレームの張り出す方向がコントラバスの例とは反転することもある。
【0026】
以上説明したように本発明に係る電気弦楽器は、楽器本体に対してフレームを着脱可能に取付けたので、フレームを取り外すと携行し易く、可搬性を向上させることができる。また、楽器本体はフレームを外すと突起部分がなくなるので、取扱いが容易である。また、楽器本体とフレームを分離して収納すると収納し易く、収納性を向上させることができ、特に電気コントラバス、電気チェロ等の大型の電気弦楽器に適用して好適である。
【0027】
また、本発明は、ヨーク部をフレーム本体に対して折畳み自在に取付けているので、収納時にフレームを小さくして収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を電気コントラバスに適用した一実施の形態を示す正面図である。
【図2】同コントラバスの背面図である。
【図3】フレームの取り外し手順を説明するための図である。
【図4】フレームを取り外した状態を示す図である。
【図5】電気コントラバスの従来例を示す正面図である。
【図6】同コントラバスの背面図である。
【符号の説明】
【0029】
2…楽器本体、2A…胴部、2B…棹部、2C…指板、3…弦、4…フレーム、5…エンドピン、6…上駒、7…駒、8…テールピース、9…ペグ、20…電気コントラバス、21…フレーム、21A…フレーム本体、21B…ヨーク部、24,26,27…止めねじ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の弦が張設された楽器本体と、この楽器本体に取付けられたフレームとを備えた電気弦楽器において、
前記フレームを前記楽器本体に対して着脱可能に取付けたことを特徴とする電気弦楽器。
【請求項2】
請求項1記載の電気弦楽器において、
楽器本体の一側がわに張り出したフレーム本体と、このフレーム本体の上端に設けられ前記楽器本体の他側がわに張り出したヨーク部とでフレームを構成したことを特徴とする電気弦楽器。
【請求項3】
請求項2記載の電気弦楽器において、
ヨーク部をフレーム本体に対して折畳み自在に取付けたことを特徴とする電気弦楽器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2004−272291(P2004−272291A)
【公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−157203(P2004−157203)
【出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【分割の表示】特願2000−110759(P2000−110759)の分割
【原出願日】平成12年4月12日(2000.4.12)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】