説明

電気デバイスモジュールの製造方法及び電気デバイスモジュール

【課題】 電極タブ同士の接続を作業性よく行うことができ、また、煩雑な作業を伴うことなく電蝕の問題に対策を講じることができる電気デバイスモジュールの製造方法等を提供する。
【解決手段】 ケース35上に配置された2つの電池セル20同士を電気的接続するため、本発明の一態様による製造方法は、ケース35に設けられたバー溝37にバスバー15を配置する工程と、電極タブ同士の接続部28を気密封止するシール部材の一部をなすシール剤12aをバスバー上面に塗布する工程と、電極タブの先端側同士がバスバー上面において重なるように電池セルを配置する工程と、バスバー上面に電極タブ同士の重ね合せ部を溶接接合する工程と、その後、他のシール剤12bを塗布する工程とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム外装電池等の電気デバイスが所定個数ずつケース内に収容された電気デバイスモジュール、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば電気自動車のモータ駆動用の電源として軽量かつ小型の電池の開発が進められており、そのうちの1つとして、薄型のフィルム外装電池(以下、「電池セル」ともいう)が複数集合した組電池が知られている。特許文献1には、複数の電池セルを集合させて1つの組電池を構成した例が示されている。以下、これについて図12を参照して説明する。
【0003】
図12に示すように、組電池101では、例えばリチウム二次電池として機能する4つの電池セル120が直列接続をなすようにして電気的に接続されている。各電池セル120は、所定の起電力を発生する電池要素(不図示)をラミネートフィルムで被包したものであり、フィルム外周部からは正極用及び負極用の電極タブ108a、108bが引き出されている。
【0004】
これらの電極タブ同士は、タブ接続部110において部分的に重ね合わせられ、例えば超音波溶接又はレーザ溶接等により接合されている。また、隣接する電池セル120同士は、バスバー112を利用して電気的に接続されており、こうした構成により、組電池101においては電池セル4つ分の起電力が得られるようになっている。
【特許文献1】特開2004−111098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電極タブ108a、108b同士を密着させて接合する場合(図13参照)、接続部における電極タブの腐食が生じないように何らかの対策を講じる必要がある。
【0006】
すなわち、電極タブ108a、108bの材質はその極性に応じて適宜選択されており、一般的には異なる材料で構成されている(例えば、正極用としてアルミニウム、負極用として銅)。そのため、図13に示すタブ接続部110のところでは、異金属同士が接触した状態となっている。このように異金属同士が接触する構成では、電極タブ同士の密着面に液体(例えば水)が入り込んだ状態で電流が流れると、電蝕現象が起き、電極タブが腐食する可能性があるためである。電極タブの腐食は、組電池の電気的性能の低下や短寿命化の原因となる。したがって、電極タブ同士の間への液体の浸入を防止することが、組電池の高信頼性化を実現するうえで重要である。
【0007】
なお、アルミニウム等に関して言えば、異金属同士でなくても、すなわち同種金属同士であっても電蝕が起こることもあるため、上記のような問題は電池セル同士を直列接続する場合に限らず、並列接続する場合にも同様に起こりうる問題である。そして、上記のような問題は、図12に示したようなフィルム外装電池に限らず、電極タブ同士の接続部のところで電蝕の問題が生じうる種々の電気デバイスに関して同様に起こり得る問題である。
【0008】
また、例えば溶接等により電極タブ同士を接合するにあたっては、当然ながらその接合が作業性よく行えることが好ましいし、また、電触の問題に対して何らかの対策を講じる際であっても、その対策を作業性よく行えることが好ましい。
【0009】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電極タブ同士の接続を作業性よく行うことができ、また、煩雑な作業を伴うことなく電蝕の問題に対策を講じることができる電気デバイスモジュールの製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記本発明の製造方法を好適に利用することができる構成を有した電気デバイスモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の電気デバイスモジュールの製造方法は、外周部からシート状の電極タブが引き出された電気デバイスが、互いの前記電極タブの先端側同士が重なるように平面的に並んだ状態でケース内に収容されると共に、前記電極タブ同士の重ね合せ部が前記電気デバイス同士の間に配置されたバスバーに接合されている電気デバイスモジュールを製造する方法であって、前記ケースに設けられたバー溝に前記バスバーを配置する工程と、前記重ね合せ部を気密封止するシール部材の一部をなす第1のシール剤を、前記バスバー上面の両側縁に沿って塗布する工程と、前記電極タブの先端側同士が前記バスバー上面において重なり合うように、前記電池デバイスを配置する工程と、前記バスバー上面に、前記電極タブ同士の前記重ね合せ部を溶接接合する工程と、その後、前記シール部材の残りの一部をなす第2のシール剤を、該第2のシール剤が前記電極タブの両側縁部近傍において前記第1のシール剤と接触するように、前記重ね合せ部を覆う領域に塗布する工程とを有する。
【0011】
このような本発明の製造方法によれば、電気デバイス同士の電気的接続、すなわち電極タブ同士の接続が、電気デバイスを平面的に並べた状態で行われるものであるため作業性よく行うことが可能となる。また、電蝕の問題を生じさせないように、電極タブ同士の重ね合せ部がシール部材により気密封止される構造とされているが、このシール部材の形成工程は、下記理由により効率的に実施されるようになっている。
【0012】
すなわち、重ね合せ部を気密するためには電極タブの上下両面にシール剤をまわり込ませる必要があるが、本発明のように2回の工程に分けてシール剤を塗布するものであればその作業は比較的容易である。また、本発明においては、最初に塗布される第1のシール剤はバスバーに接するように塗布されており、したがって、溶接時に生じた熱がバスバーを経由して上記第1のシール剤に伝達される。そのためこの熱を利用してシール剤の硬化などの促進が図られる。これにより例えば、シール剤を硬化させるためだけに実施されていた工程を省略することもできるようになる。
【0013】
上記本発明においては、前記第1のシール剤を塗布する前記工程では、前記第1のシール剤が、前記バスバーと前記ケースとの双方に接触するように塗布されるものであってもよい。これにより、第1のシール剤がバスバーをケースに固定する部材としても機能することとなる。また、第1及び第2のシール剤は、いずれも同一材料であって熱可塑性樹脂からなるものであってもよい。
【0014】
また、前記溶接接合する工程は、前記バスバー内に形成された流通路に冷媒を供給し、前記バスバー及び該バスバー上に配置された前記電極タブを冷却しながら行われるものであってもよい。
【0015】
上記本発明を適用して製造することができる本発明の電気デバイスモジュールは、外周部からシート状の電極タブが引き出された電気デバイスが、互いの前記電極タブの先端側同士が重なるように平面的に並んだ状態でケース内に収容されると共に、前記電極タブ同士の重ね合せ部が前記電気デバイス同士の間に配置されたバスバーに接合されている電気デバイスモジュールであって、前記重ね合せ部は、前記バスバー上面の両側縁に沿った状態で、前記電極タブの下面側に塗布された第1のシール剤と、前記電極タブの両側縁部近傍において前記第1のシール剤と接触する第2のシール剤とにより気密封止されている。
【0016】
ケースに収容される電気デバイスの数は限定されるものではなく、例えば、一方向に並べられた2以上の前記電気デバイスからなる電気デバイス群が、隣接して2列以上配置されていてもよく、この場合、前記バスバーは、一方の前記電気デバイス群の前記電極タブと、他方の前記電気デバイス群の前記電極タブとを相互に電気的接続していてもよい。また、前記バスバーには、冷媒を供給可能な流通路が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
上述したように本発明によれば、ケース上で電極タブ同士の接続がなされるため電極タブ同士の接続を作業性よく行うことができ、また、シール剤を2回に分けて塗布していること、及び、溶接時に生じる熱を利用してシール剤の硬化等の促進がなされるようになっていることから、作業性よく、かつ効率的に気密封止用のシール部材を形成できるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、電池セルを単体の状態で示す斜視図である。図2は、電池セルを2つ集合させた電池モジュールの分解斜視図であり、図3は、本実施形態に係る組電池の外観斜視図である。
【0019】
図1に示すように、電池セル20単体は、所定の起電力(例えば3.6V)を出力する薄型の電池要素22が外装フィルム24によって密封封止されたものであり、外装フィルム24の外周部にはフィルム同士を融着させた封止部23が形成されている。その封止部23の両側(各短辺)からは、いずれもシート状の、正極用の電極タブ25a及び負極用の電極タブ25bが引き出されている。
【0020】
電極タブ25a、25bについてより具体的に説明すると、いずれの電極タブもその厚さは例えば50μm〜300μm程度である。材質によっても異なるが、電極タブの厚さをこの程度に設定することで、電極タブ25a、25bが可撓性を備えることとなる。
【0021】
電極タブ25a、25bはいずれも内部の電池要素22に接続されるものであり、また、極性に応じてそれぞれの電極タブに適した材質が選択されている。すなわち、正極用の電極タブ25aの材質には、アルミニウム、アルミニウム合金、あるいは、それらにアルマイト処理又は樹脂コーティングを施したもののうちのいずれか(「アルミニウム系材料」という)が選択されている。一方、負極用の電極タブ25bの材質には、銅、銅合金、あるいは、それらに金属メッキ(例えばニッケルメッキ)を施したもののうちのいずれか(「銅系材料」という)が選択されている。
【0022】
図2に示すように、本実施形態の電池モジュール50は、1つのケース30内に2つの電池セル20を収容する構成となっている。また、こうしてモジュール化された電池モジュール50を複数段に重ねることで、図3に示すように最終的な組電池80が構成されるようになっている。
【0023】
ケース30(図2参照)は、1つの下側ケース35と、2つのフタ部材33A、33Bとからなり、いずれの部材も例えば樹脂材料で構成されている。下側ケース35は、それぞれに電池セル20が1つずつ配置される2つの収容部36A、36Bを有し、収容部36A、36B同士の間には1つのバー溝37が形成されている。このバー溝37には、後述するように、金属材料からなるバスバー15が配置されるようになっており、更にこのバスバー15の上面に電極タブ同士のタブ接続部28が位置する構成となっている。
【0024】
バスバー15は、このようにタブ接続部28に接続されることで、各電池セル20に対応した電圧取出し端子として機能する。すなわち、図示しないが、バスバーに対して所定の電気回路を接続することで、各電池セル20の電圧を管理したり、あるいは、仮に1つの電池セル20に異常が発生したとしても組電池80全体としての回路が損傷しないように、ヒューズを設けたりすることが可能となる。
【0025】
蓋部材33A、33Bはそれぞれ、収容部36A、36Bに対応する輪郭形状に形成されている。蓋部材を収容部に対して取り付けることで、両部材間に1つの内部空間が形成され、この内部空間に電池セルが配置されるようになっている。なお、図2等では特に示していないが、例えばウレタンフォーム等を利用して内部空間内における電池セルの固定を行うようにしてもよい。
【0026】
図4は、下側ケース35に2つの電池セル20及びバスバー15が配置された状態を示している。図示するように、2つの電池セルを配置するとケース中央部で電極タブの先端側同士が重なり合うようになっており、この重ね合せ部がタブ接続部28となっている。また、外側に位置する電極タブ25a、25bは、所定の長さだけケースから延出するようになっている。このようにしてケースから延出した電極タブ25a、25bは、図3に示すように、組電池の側面部で相互に接続されることとなる。
【0027】
図5は、タブ接続部28及びその周辺の構造を具体的に示す断面図である。図1〜図4では図示しなかったが、タブ接続部28は、最終的にはシール部材12によって包囲されるようになっており、これにより気密な状態とされ外部からの液体等の浸入が防止されている。シール部材12は、電極タブの下側に位置する下側シール剤12aと、電極タブの上側に位置する上側シール剤12bとに分けられ、これらは後述するようにそれぞれ異なる工程で塗布硬化させられたものである。
【0028】
シール剤12a、12bは、タブ接続部28を良好に気密できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、初期状態では固形状であり、加熱されることによって流動性を生じ、冷却されると再び固化するような物性のものであってもよい。あるいは、初期状態で所定の流動性を備え、加熱により硬化が促進されるようなものであってもよい。
【0029】
シール剤の材質は例えば、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、ポリエチレン、又は変性ポリエチレンのいずれかを主成分とする熱可塑性のものであってもよい。また、シール剤12a、12bをそれぞれ異なる材料とすることも可能であるが、本実施形態ではいずれも同一材料としている。
【0030】
なお、図3に示したように、組電池80は、ケース30を重ね合せて構成されるものであるため、重ね合せた際にケース30同士が相互に位置決めされるような工夫がなされている。すなわち、ケース30の下面には他の部位より突起した係合凸部38Aが形成されており、この係合凸部38Aが、溝上部側に設けられた係合凹部38Bに係合するようになっている。また、ケース30はいずれも、これら係合用の構造部38A、38Bを挟んで左右対称に形成されている。これにより、ケース30を、交互に異なる向き(一方のケースの電極タブ25aと他方のケースの電極タブ25bとが同じ側になるような向き)で積層したとしても、組電池80の最終的な外形形状は変わらないようになっている。
【0031】
次に、以上のような構成を有する本実施形態に係る組電池の製造方法について説明する。なお、本発明は、組電池の製造のうち、特に電極タブ同士を接続する工程に主たる特徴を有するものであるため、以下の説明ではこの工程を中心に述べるものとする。また、以下の説明ではレーザ溶接を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、以下の説明では、シール剤12a、12bとして初期状態で流動性のあるものを用いている。
【0032】
まず、図6(a)に示すように、予め用意した下側ケース35のバー溝37にバスバー15を配置する。そして、バスバー上面の両端部と、バー溝37の側壁の上端部との双方に接触するように下側のシール剤12aを塗布する。
【0033】
より詳細には図7に示すように、シール剤12aは、バスバー上面の両側縁に沿って塗布され、かつ、電極タブが配置される領域(図7中、破線のハッチングにて示す)よりも広い範囲にわたって塗布されている。このように塗布することで、電極タブをバスバー上に配置した際に、シール剤12aの一部が電極タブ側縁部近傍のそれぞれで、電極タブに覆われることなく露出することとなる。
【0034】
次いで、図6(b)に示すように、下側ケース35に2つの電池セル20を配置する。この状態では、電極タブ25a、25bの先端側同士は、バスバー15上で互いに重なり合っている。
【0035】
次いで、図6(c)に示すように、例えばジグ90を用いて2枚の電極タブをバスバー15側に押し当てながら、電極タブ同士の重ね合せ部に対してレーザビームを照射する。レーザビームが照射された部位では、2枚の電極タブの部材が局所的に溶融し合うこととなる。また、レーザビームのエネルギーはバスバー上面にも伝わり、これによりバスバーの上面も局所的に溶融することとなる。したがって、本実施形態においては、2枚の電極タブ25a、25bがバスバー上面に対して接合され、電気的にも相互に導通した状態となる。
【0036】
ところで、本工程においては溶接時にバスバー15等が加熱されることにより、それらに接していたシール剤12aも間接的に加熱され、流動性が向上することとなる。したがって、先の工程で塗布した際に、例えば図6(b)に示すように空隙部3が存在していたとしても、この空隙部3を充填するようにしてシール剤12aが流動することが期待される。もっとも、このような空隙部3がシール部材内に散在していたとしても、シール部材12全体として気密となっていれば、外部から液体等が入り込むことはないため弊害は生じない。
【0037】
レーザの照射が終了したら、次いで、図6(d)に示すように、下側ケース35上にフタ部材33A、33Bを取り付ける。その後、2枚の電極タブ上でシール剤12bを塗布硬化させる。これにより、最終的なシール部材12が形成されタブ接続部28が気密される。そして、このようにして作製された電池モジュール50を図3のように積層し、それぞれの電極タブ同士を接続していくことで最終的には組電池80が完成する。
【0038】
なお、図6(d)の工程において、レーザ溶接の際の熱がまだ電極タブに残っている状態でシール剤12bを塗布するようにすれば、その熱をシール剤12bの硬化等に利用できるため効率的である。また、タブ接合部28を気密とするためには、シール剤12bが、電極タブに覆われることなく露出した状態となっているシール材12aに接触するように、シール剤12bを塗布することが重要である。
【0039】
また、電池モジュール50から組電池80への組立ては、他にも例えば次のようなものであってもよい。すなわち、まず、3つの電池モジュール50を、互いの電極タブ同士が部分的に重なるようにして一列に並べる。次いで、この状態で電極タブ同士の重ね合せ部を順次レーザ溶接していき、3つの電池モジュール50を電気的に接続する。その後、各電池モジュール50を九十九折りの形態で交互に折り重ねていき、最終的な組電池80を得る方法である。
【0040】
以上に説明した本実施形態の組電池の製造方法では、電極タブ同士のタブ接合部28がシール部材12により封止されているため、電極タブ同士の間に液体等が浸入することが防止され、電蝕によるタブの腐食が生じにくくなる。
【0041】
また、図6(c)を参照して説明した通り、本製造方法においては、予め塗布されていた下側シール剤12aに対して、レーザ溶接時の熱が伝わるようになっている。使用するシール剤の材質にもよるが、このようにレーザ溶接時の熱が伝わるようになっていることにより、この熱を利用してシール剤12aの硬化等の促進を図ることが可能となる。つまり、レーザ溶接時に必然的に生じる熱を積極的に利用して、シール剤12aの硬化等が行われるようにしているため、シール剤を硬化させるためだけの特別な工程も不要となる。
【0042】
また、下側シール剤12aは、タブ接続部を気密する機能に加えて、バスバー15をケースに対して固定する部材としても機能している。したがって、バスバー15を固定するための特別な部材は不要である。
【0043】
なお、以上、レーザ溶接を用いて電極タブ同士を接続することについて説明したが、電極タブ同士を接続する方法としては他にも超音波溶接をはじめとする他の溶接も利用可能である。また、図6を参照して説明した方法はあくまで本発明の一例であって、必要に応じて適宜変更可能である。例えば、レーザ溶接を行う前の段階でフタ部材33A、33Bを取り付けておくようにしてもよい。
【0044】
また、図6(a)に示した工程では、下側シール剤12aを、バスバー15とケース35との双方に接するように塗布するものであったが、これに限られるものではなく、例えば、バスバー上面の両側縁部分にのみ塗布することも可能である。ただし、シール剤12aをバスバー15の固定用に利用するのであれば、シール剤12aがケース35に対しても接していることが必要である。この点に関し、仮に上記のようにシール剤がバスバー上面の両側部分にのみ(ケースには接触することなく)塗布される場合であっても、次の工程で電池セル20を配置した際に、電極タブ25a、25bによってシール剤がケース側に押し付けられ、これにより、シール剤がバスバー及びケースの双方に接するようになっていれば、同様の作用は得られる。
【0045】
また、バー溝37はケースの中央部のみではなく、図8に示すようにケース30Aの端部近傍に設けられていてもよい。このバー溝37A内には、上記同様、バスバー15が配置され、このバスバーの上面で電極タブ同士の接合が行われる。図8ではシール部材は図示していないが、上記と実質的に同様の工程で電極タブ同士の接合を行い、シール部材を塗布硬化させたら、図示矢印に示すようにケース30Aを折り返す。これにより、2つのケース30Aが積層された状態となる。
【0046】
次に、本発明においてケースに配置される電池セル20の数は特に限定されるものではない。例えば図9に示すように、一方向(図示横方向)に3つ並べられた電池セル20からなる電池セル群が、上下に隣接して2列に配置されていてもよい。図9の形態では、一方の電池セル群の電極タブと他方の電池セル群の電極タブとが、バスバーによって相互に電気的に接続され、2並列3直列の状態となっている。
【0047】
(第2の実施形態)
本発明は、上記に説明した形態の他にも例えば図10に示すようなものであってもよい。
【0048】
図10に示す電池モジュール51は、第1の実施形態における電池モジュール50のバスバー15を、中空部材からなるバスバー15’に変更したものである。その他の構造部については第1の実施形態と同様であるため、同一の構造部には図1〜図9と同じ符号を付して示しその説明は省略する。
【0049】
なお、本実施形態の電池モジュール51は、次のような問題点を解決しようとするものである。すなわち、図6(c)を参照して説明したようにレーザビームを用いて電極タブ25同士を溶接する場合、レーザビームの照射により電極タブ25が高温となる。電極タブ25が高温になれば、その熱の影響により封止部23(図10参照)における樹脂が軟化し、場合によっては、封止部23の気密性が損なわれる可能性もある。
【0050】
これを防止するための方策としては、電極タブの長さL25を長めに設定することが挙げられる。これにより、レーザビームが照射される部位から封止部23までの距離が長くなり、封止部23における電極タブ25の温度も上昇にくくなるめである。しかしながら、このように電極タブ25を長くすれば、当然ながら電池セル20同士の間隔が広くなり、ひいては、電池モジュール全体が大型化してしまう。そこで、本実施形態ではバスバー15’に通風路15aを設け、この通風路15aを利用して、レーザビーム照射時の電極タブの温度上昇を抑えるようにしている。
【0051】
まずバスバー15’について説明すると、バスバー15’は矩形断面を有する管状部材からなり、その内部に通風路15aが形成されている。通風路15a内には、不図示の送風手段により冷却風が供給されるようになっている。より具体的には、冷却風は、図10(a)に示すように、電極タブ同士にレーザビームを照射する際に、通風口15aに供給される。これにより、バスバー15’が冷却されるため、これに合わせてバスバー上に配置された電極タブ25も冷却され、封止部23における電極タブ25の温度上昇も抑えられることとなる。
【0052】
本実施形態では、このように、レーザビーム照射時の電極タブ25の温度上昇が抑えられるため、封止部23における樹脂の軟化等が発現しにくくなり、封止部23の気密性が損なわれる可能性も低減する。したがって、熱による封止部への悪影響を考慮して電極タブの長さL25を長く設定する必要がなくなり、その結果、電池モジュール全体の小型化も実現される。
【0053】
なお、レーザビームを照射した後の工程、すなわち、残りのシール剤12bを塗布硬化させる工程(図10(b)参照)は、第1の実施形態と同様にして実施可能である。また、電池モジュール51の使用時に、バスバー15’の通風路15a内に冷却風を流す構成とすれば、使用時における電極タブ25の温度上昇を抑制することも可能である。
【0054】
上記説明では、バスバー15’を管状部材として説明したが、バスバーはそれに限らず、例えば断面コ字型の部材であってもよい。断面コ字型のバスバーを、その開口側が下側ケース35に対向するように配置することで、バスバーとケース35との間に通風路が形成され、この通風路を利用して、上記同様の作用効果を得ることができるためである。
【0055】
特に限定されるものではないが、バスバーはより具体的には図11に示すようなものであってもよい。図11に示すバスバー15’’では、その断面形状の一部にR部19が形成されている。また、バスバー15’’の一方の端部(図示左方)には、電気回路(例えば接続用コード:不図示)を接続するための端子接合ネジ17が設けられている。接続用コードは、通風路15aを閉塞することなく端子接合ネジ17に取り付けることができるように構成されている。冷却風は、端子接合ネジ17が設けられた側の端部から導入されるようになっていてもよいし、それとは反対側の端部から導入されるようになっていてもよい。
【0056】
以上説明した第1及び第2の実施形態では、外包体が外装フィルム24である電池セル20を例に挙げて説明したが、電池セル(電気デバイス)としては、シート状の電極タブが引き出されたものであれば、例えば外装フィルムの代わりに缶などを用いて電池要素22(電気デバイス要素)を気密封止したものであってもよい。また、以上の説明では詳細に述べなかったが、電池セルに用いられる電池要素22は、リチウムイオン二次電池、具他的には、リチウム・マンガン複合酸化物、コバルト酸リチウム等の正極活物質をアルミニウム箔などの両面に塗布した正極板と、リチウムをドープ・脱ドープ可能な炭素材料を銅箔などの両面に塗布した負極板とを、セパレータを介して対向させ、それにリチウム塩を含む電解液が含浸されるものであってもよい。もっとも、電池要素はリチウムイオン二次電池の他にも、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、リチウムメタル一次電池あるいは二次電池、リチウムポリマー電池等、他の種類の化学電池の電池要素であってもよい。また、電池要素は積層型のものに限らず、帯状の正極側活電極と負極側活電極とをセパレータを介して重ねこれを捲回した後、扁平状に圧縮することによって正極側活電極と負極側活電極とが交互に積層された構造の捲回型であってもよい。更に、電気デバイス要素として、電気二重層キャパシタなどのキャパシタあるいは電解コンデンサなどに例示されるキャパシタ要素のような、電気エネルギーを貯留及び出力する(充放電する)ものを利用するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】電池セルを単体の状態で示す斜視図である。
【図2】電池セルを2つ集合させた電池モジュールの分解斜視図である。
【図3】本実施形態に係る組電池の外観斜視図である。
【図4】下側ケースに2つの電池セル及びバスバーが配置された状態を示す上面図である。
【図5】タブ接続部及びその周辺の構造を具体的に示す断面図である。
【図6】本発明の製造方法の一例を示す工程図である。
【図7】下側のシール剤の塗布領域を示す斜視図である。
【図8】ケースに関しての他の構成例、及びケース同士の重ね合せ工程について説明するための図である。
【図9】電池セルの他の配置例を模式的に示す上面図である。
【図10】第2の実施形態に係る電池モジュールの構成及びその製造方法を示す断面図である。
【図11】第2の実施形態に利用可能なバスバーの一例を示す図である。
【図12】従来の組電池の一例を示す斜視図である。
【図13】電極タブ同士の接続部における問題点について説明するための図である。
【符号の説明】
【0058】
3 空隙部
15、15’、15’’ バスバー
15a 通風路
17 端子接合ネジ
19 R部
20 電池セル
22 電池要素
23 封止部
24 外装フィルム
25a、25b 電極タブ
28 タブ接続部
30、30A ケース
33A、33B フタ部材
35 下側ケース
36A、36B 収容部
37、37A バー溝
38A 係合凸部
38B 係合凹部
50、51 電池モジュール
80 組電池
90 ジグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部からシート状の電極タブが引き出された電気デバイスが、互いの前記電極タブの先端側同士が重なるように平面的に並んだ状態でケース内に収容されると共に、前記電極タブ同士の重ね合せ部が前記電気デバイス同士の間に配置されたバスバーに接合されている電気デバイスモジュールを製造する方法であって、
前記ケースに設けられたバー溝に前記バスバーを配置する工程と、
前記重ね合せ部を気密封止するシール部材の一部をなす第1のシール剤を、前記バスバー上面の両側縁に沿って塗布する工程と、
前記電極タブの先端側同士が前記バスバー上面において重なり合うように、前記電池デバイスを配置する工程と、
前記バスバー上面に、前記電極タブ同士の前記重ね合せ部を溶接接合する工程と、
その後、前記シール部材の残りの一部をなす第2のシール剤を、該第2のシール剤が前記電極タブの両側縁部近傍において前記第1のシール剤と接触するように、前記重ね合せ部を覆う領域に塗布する工程とを有する、電気デバイスモジュールの製造方法。
【請求項2】
前記第1のシール剤を塗布する前記工程では、前記第1のシール剤が、前記バスバーと前記ケースとの双方に接触するように塗布される、請求項1に記載の電気デバイスモジュールの製造方法。
【請求項3】
前記第1及び第2のシール剤は、いずれも同一材料であって熱可塑性樹脂からなる、請求項1又は2に記載の電気デバイスモジュールの製造方法。
【請求項4】
前記溶接接合する工程は、前記バスバー内に形成された流通路に冷媒を供給し、前記バスバー及び該バスバー上に配置された前記電極タブを冷却しながら行われる、請求項1から3のいずれか1項に記載の電気デバイスモジュールの製造方法。
【請求項5】
前記溶接接合する工程はレーザ溶接を行う、請求項1から4のいずれか1項に記載の電気デバイスモジュールの製造方法。
【請求項6】
外周部からシート状の電極タブが引き出された電気デバイスが、互いの前記電極タブの先端側同士が重なるように平面的に並んだ状態でケース内に収容されると共に、前記電極タブ同士の重ね合せ部が前記電気デバイス同士の間に配置されたバスバーに接合されている電気デバイスモジュールであって、
前記重ね合せ部は、前記バスバー上面の両側縁に沿った状態で、前記電極タブの下面側に塗布された第1のシール剤と、前記電極タブの上面側に塗布され、前記電極タブの両側縁部近傍において前記第1のシール剤と接触する第2のシール剤とにより気密封止されている電気デバイスモジュール。
【請求項7】
前記第1及び第2のシール剤は、いずれも同一材料であって熱可塑性樹脂からなる、請求項6に記載の電気デバイスモジュール。
【請求項8】
前記ケースには、一方向に並べられた2以上の前記電気デバイスからなる電気デバイス群が、隣接して2列以上配置されており、
前記バスバーは、一方の前記電気デバイス群の前記電極タブと、他方の前記電気デバイス群の前記電極タブとを相互に電気的接続している、請求項6又は7に記載の電気デバイスモジュール。
【請求項9】
前記バスバーには、冷媒を供給可能な流通路が形成されている、請求項6から8のいずれか1項に記載の電気デバイスモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−344572(P2006−344572A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277599(P2005−277599)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(302036862)NECラミリオンエナジー株式会社 (37)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】