説明

電気二重層キャパシタおよび電池とそれらの製造方法

【課題】 従来の凹状容器を用いた電気二重層キャパシタおよび二次電池は集電体が電解腐食していた。電解腐食の少ないアルミニウムなどで保護することを検討されてきたが、薄い保護膜ではピンホールができ、下地の集電体の電解腐食が起こっていた。保護膜を厚くできれば電解腐食の影響が少なくなると考えられるが、厚く成膜するためには長時間かかり、高価なものとなる課題を有していた。
【解決手段】 集電体上に電解腐食のない導電性接着剤からなる保護層を形成する。これにより緻密な厚い膜を安価で形成できるようになり、かつ信頼性の高い電気二重層キャパシタおよび二次電池を提供できるようになった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装可能な電気二重層キャパシタおよび二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表面実装可能な電気二重層キャパシタおよび電池は、従来、時計機能のバックアップ電源や半導体メモリのバックアップ電源などに使用されている。小型の電気二重層キャパシタおよび電池は、半導体メモリの不揮発化、時計機能素子の低消費電力化により、大容量、大電流の必要性が減ってきており、むしろ電気二重層キャパシタおよび電池のニーズとしては、実装面積が小さく薄型でリフローハンダ付け(あらかじめプリント基板上のハンダ付を行う部分にハンダクリーム等を塗布しておきその部分に部品を載置するか、あるいは、部品を載置後ハンダ小球(ハンダバンプ)をハンダ付部分に供給し、ハンダ付部分がハンダの融点以上、例えば、200〜260℃となるように設定された高温雰囲気の炉内に部品を搭載したプリント基板を通過させることにより、ハンダを溶融させてハンダ付を行う方法)に対する要求が強くなっている。
【0003】
また、従来の電気二重層キャパシタおよび電池はコインやボタンのような丸い形状であるため、リフローハンダ付けを行うには端子等をケースにあらかじめ溶接しておく必要があり、部品点数の増加および製造工数の増加という点でコストアップとなっていた。また基板状に、端子のスペースを設ける必要があり小型化に限界があった。
【0004】
以上より、電極及び電解液を収納する外装体として凹状のセラミック容器を用い、かつ端子を具備した電気二重層キャパシタおよび電池が検討されるようになった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001-216952号公報(第2項から第3項、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図4に従来の凹状のセラミック容器を用いた電気二重層キャパシタおよび電池の断面図を示す。2枚のセラミックグリーンシート上にタングステン印刷し、1500℃以上の温度で焼結し容器底部1と容器壁部2からなる凹状容器と正極集電体7と負極集電体6を形成する。両方の集電体は基板とリフローハンダ付けしやすくするために、さらにニッケルや金メッキを施す。しかしながらタングステンやニッケルや金で形成された正極集電体7は凹状容器内部で電解液と接触し、かつ電圧がかかるため電解腐食により溶解し断線してしまう。従来から弁作用金属として知られるアルミニウムなどの電解腐食の少ない材料を集電体に用いれば良いが、アルミニウムは融点が600〜700℃と低くセラミック焼結時に溶けてしまい集電体パターンを形成できない。
【0006】
そのため本発明者らは、アルミニウムなどの弁作用金属を蒸着やスパッタなどで電解腐食しやすい正極集電体7上に厚さ1μm程度の薄い弁作用金属による層の形成を試みたが、表面が粗いセラミック上の正極集電体7は同様に表面が粗く、表面の凹凸が影となり保護層中に極微小なピンホールができてしまう。この極微小なピンホールから液体である電解液は時間と共に保護層表面から浸透し正極集電体7を電解腐食させ断線してしまう。アルミニウム金属層を厚くすれば、ピンホールの影響は少なくなると考えられるが、成膜に時間がかかり、高価なものとなってしまう。
【0007】
本発明は電解腐食しやすい材料を集電体に用いた電気二重層キャパシタおよび二次電池において、集電体を覆う緻密な保護層を安価に形成でき、かつ信頼性が高い電気二重層キャパシタおよび二次電池の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は正極と、負極と、電解液と、前記正極と前記負極と前記電解液を収納する凹状容器と、前記凹状容器の容器底部に配された集電体と、前記集電体上に設けられ、かつ導電性接着剤からなる保護層とを有する電気二重層キャパシタおよび二次電池である。これにより安価で信頼性の高い電気二重層キャパシタおよび二次電池を提供できる。
【0009】
主な導電性接着剤は導電フィラーと樹脂バインダーと溶剤の混合物である。硬化時に体積収縮し、粉末である導電フィラー同士が接続され電気導電性が発現される。導電フィラーの形状は球状、フレーク状など粒径の異なる様々な形状の粉末を混合して用いると、樹脂バインダー内に緻密に充填された硬化物を得ることができ、電気伝導が良く、かつピンホールが極めて少ない保護層が容易に形成できる。また溶剤の量によって粘度を調整でき、粘度を低くすることによって表面が粗いセラミック上の集電体の凸凹中にも短時間で浸透し、緻密で密着性のよい保護層を容易に形成することができる。
導電フィラーの材料は炭素、ニッケル、アルミニウム、金、銀、銅などがあるが、3V程度の電圧でも電解腐食の小さいグラファイトや活性炭などの炭素粉末やアルミニウム粉末が適している。
【0010】
樹脂バインダーはエポキシ、フェノール、ウレタン、シリコン、ポリイミドなどの熱硬化性樹脂や、アクリル、ポリアミド、メタクリル樹脂などの熱可塑性樹脂、または天然ゴム、ニトリルゴム、ブチルゴムなどのゴム系などがある。特に樹脂バインダーに熱硬化性樹脂を用いたものは、再加熱によっても樹脂が溶融しないため、リフローハンダ付け用の電気二重層キャパシタおよび二次電池に適している。また電解液などの耐薬品性に優れ、保護層の樹脂バインダーとして適している。
【0011】
本発明での導電性接着剤は、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性高分子も含む。
【0012】
導電性接着剤による保護層の厚みは5μm以上、かつ200μm以下がよい。導電フィラーの粒径が5μm以下のものを含んでいる導電性接着剤は電気伝導度が良い。しかし、保護層の厚みを5μm以下とするとピンホールとなってしまう。また200μm以上厚くすると正極や負極の厚みを薄くしなければならないため、電気二重層キャパシタや二次電池の容量が減ってしまう。
【0013】
また、本発明に係る電気二重層キャパシタおよび二次電池の製造方法は、凹状容器の容器底部に形成した集電体上に導電性接着剤を塗布し、加熱硬化させ保護層を形成する。形成する集電体の材料は電解腐食が激しいものであってもよい。電解腐食は電気二重層キャパシタおよび二次電池の電圧や使用する電解液の種類によって異なるが、集電体の材料は、例えばタングステン、モリブデン、ニッケル、アルミ、金、銀、銅、鉄、クロムや42alloyやステンレスなどの合金、またこれらを複数積層したもので構成できるが、これらに限定されない。集電体を凹状容器内部から外部へ貫通させるには、容器と集電体の密着性がよい材料同士を組み合わせると気密性に優れたものとなる。例えば容器の材料にセラミックを用いたものはセラミックの焼結温度に耐えるタングステンやモリブデンを用いる。また容器の材料にエポキシ系、ポリイミド系などの熱硬化性樹脂や、ポリスチレン系、ポリフェニレンサルファイド系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリエーテル系などの熱可塑性樹脂は熱膨張係数の小さい42alloyを用いると容器と集電体のリフロー時の熱によっても密着性がよい。これらの組み合わせで構成された電気二重層キャパシタおよび二次電池はリフロー炉を通過させても気密性の優れたものとすることができる。
硬化前の導電性接着剤は少なからず空気を含んでおり、ピンホールの原因となるため真空脱泡してから用いると良い。導電性接着剤を塗布する際はディスペンサーなどを用い、集電体を完全に覆うように塗布する。次に正極9を配置し、硬化させる。導電性接着剤の硬化は真空中で行うと、導電接着剤中の空気が抜け緻密な保護層を形成できる。
【0014】
図2に示すように、一度保護層11だけを形成し、その上に導電性接着剤を塗布し正極9を配置した後に硬化させて正極接着層13を形成し、保護層11と正極9を接着してもよい。ここで用いる導電性接着剤は保護層で用いたものと同じであっても異なってもよい。また蓋4上に導電性接着剤を塗布し負極8を置いた後に硬化させて負極接着層12を形成する。ここで用いる導電性接着剤も保護層11を形成するときに用いたものと同じであっても異なってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は電解腐食しやすい材料を集電体に用いた電気二重層キャパシタおよび二次電池において、集電体を覆う保護層を導電性接着剤によって形成することで、緻密で厚い膜を安価に形成でき、かつ信頼性の高い電気二重層キャパシタおよび電池を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る電気二重層キャパシタおよび二次電池を図1により説明する。
凹状容器は次のように作成する。2枚のセラミックグリーンシート上にタングステンペーストを印刷後焼結し、容器底部1と容器壁部2上に正極集電体7と負極集電体6を形成する。容器壁部2の上にセラミックと熱膨張係数が近いコバールを用いたシールリング3を銀ロウや金ロウなどのロウ材5で接合する。負極集電体6,正極集電体7の底面は回路基板とリフローハンダ付けされるため、ニッケルメッキ、金メッキを施すのがよい。電解メッキ浴による方法は正極集電体7と負極集電体6やロウ材5、シールリング3の表面全面にもメッキが施される。
【0017】
保護膜11は電解腐食が小さく、かつ電気導電性がよいグラファイト粉末とフェノール樹脂を混合した導電性接着剤がよい。保護膜11の膜厚は導電性接着剤の塗布量と粘度によって調整する。高粘度の導電性接着剤はディスペンサーで塗布すると形状が山のようになってしまい均一な膜厚が得られないため、溶剤で希釈してもよい。低粘度の導電性接着剤は塗布後の形状が平坦になり、均一な膜厚のものが得られる。塗布した導電性接着剤は硬化前に正極9を配置し接着しても、導電性接着剤を真空加熱などの方法により硬化後に正極9を配置してもよい。導電性接着剤を吸収しやすい正極9の場合は、図2に示すように、最初に導電性接着剤を塗布、硬化させ保護膜11を硬化させてから、次に保護膜11の上に導電性接着剤を塗布し正極9を配置してから硬化させ正極接着層13を形成させれば、保護膜11の導電性接着剤は正極9に吸収されないため、緻密な保護膜を形成できる。この方法は正極接着層13にムラがあってもピンホールがあっても保護膜に影響はない。
【0018】
また保護膜11の端部より電解液が浸透する可能性がある。そのため、図3に示すように凹状容器の底部に溝部15を形成し、溝部15中に導電性接着剤を埋め込み保護膜11を形成してもよい。これにより保護膜11の上端部から集電体7までの距離が長くなり電解液が浸透する可能性は確実に減少する。溝部15は、容器底部1と容器壁部2の間にセラミックシートからなるスペーサー14を追加して形成してもよい。
【0019】
電気二重層キャパシタに使用する正極9、負極8としては、おが屑、椰子殻、ピッチなどを賦活処理して得られる活性炭粉末を、適当なバインダーと一緒にプレス成型、または圧延ロールして用いることができる。また、フェノール系、レーヨン系、アクリル系、ピッチ系などの繊維を、不融化および炭化賦活処理して活性炭または活性炭繊維とし、これをフェルト状、繊維状、紙状、または焼結体状にして用いてもよい。またポリアニリン(PAN)やポリアセンなども利用できる。
【0020】
二次電池に使用する正極9としては、リチウム含有マンガン酸化物、リチウム含有コバルト酸化物、リチウム含有ニッケル酸化物、リチウム含有チタン酸化物、三酸化モリブデン、五酸化ニオブなど従来から知られている活物質に適当なバインダーと導電助剤であるグラファイトを混合し用いることができる。また二次電池に使用する負極8としては、炭素、リチウム−アルミなどのリチウム合金、シリコンやシリコン酸化物など従来から知られている活物質に適当なバインダーと導電助剤であるグラファイトを混合し用いることができる。
【0021】
セパレータ10は、大きなイオン透過度を有し、機械的強度を有する絶縁膜が用いられる。リフロー炉での実装と、蓋の溶接による熱影響を考慮するとガラス繊維が安定して用いることができるが、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチエンなどの樹脂を用いることができる。セパレータの孔径、厚みは特に限定されないが、使用機器の電流値に基づき決定する事項である。またセラミックの多孔質体を用いることもできる。
【0022】
本発明に係る電解液は、液体状、固体状、ゲル状のものを用いることができる。液体状及びゲル状の電解液に用いられる有機溶媒は、アセトニトリル、ジエチルエーテル、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボーネート、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、γ−ブチロラクトン(γBL)などを用いることができる。
【0023】
液状及びゲル状の電解液に含まれる電解質としては(C254 PBF4 、(C374 PBF4 、(CH3 )(C25 3 NBF4 、(C254 NBF4 、(C254 PPF6 、(C254 PCF3 SO4 、(C254 NPF6 、過塩素酸リチウム(LiClO4 )、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、ホウフッ化リチウム(LiBF4 )、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6 )、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF3 SO22 ]、チオシアン塩、アルミニウムフッ化塩、リチウム塩などを用いることができるが、これらに限定するものではない。
【0024】
ゲル状の電解液は、液体状の電解液にポリマーゲルに含浸させたものである。ポリマーゲルとしては、ポリエチレンオキシド、ポリメタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニリデンが適しているが、これらに限定するものではない。
また電解液はイオン性液体とも呼ばれる常温溶融塩も使用することができる。常温溶融塩に有機溶媒を混合し、常温や低温での電気伝導度を調整してもよい。常温溶融塩はカチオンとアニオンの組み合わせから成る。
【0025】
イミダゾリウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピロリウムカチオン、ピロリニウムカチオン、ピロリジニウムカチオンがキャパシタに用いる常温溶融塩として適している。中でも、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン(EMI+)は電気伝導率が特に高くキャパシタの電解液に適している。
【0026】
イミダゾリウムカチオンには、ジアルキルイミダゾリウムカチオンとトリアルキルイミダゾリウムカチオンが含まれる。具体的には、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン(DMI+)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン(EMI+)、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムカチオン(MEI+)、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムカチオン(MBI+)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン(BMI+)、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムカチオン(TMI+)、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムカチオン(DMEI+)、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン(DMPI+)、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン(BDMI+)などを用いることができるが、これらに限定されない。
【0027】
ピリジニウムカチオンとしては、N−エチルピリジニウムカチオン(EP+)、N−n−ブチルピリジニウムカチオン、N−s−ブチルピリジニウムカチオン、N−n−プロピルピリジニウムカチオン、1−エチル−2−メチルピリジニウムカチオン、1−n−ヘキシル−2−メチルピリジニウムカチオン、1−n−ブチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−n−ブチル−2,4−ジメチルピリジニウムカチオンなどを用いることができるが、これらに限定されない。
【0028】
ピラゾリウムカチオンとしては、1,2-ジメチルピラゾリウムカチオン、1-エチル-2-メチルピラゾリウムカチオン、1-プロピル-2-メチルピラゾリウムカチオン、1-ブチル-2-メチルピラゾリウムカチオンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
ピロリウムカチオンとしては、1,1-ジメチルピロリウムカチオン、1-エチル-1-メチルピロリウムカチオン、1-メチル-1-プロピルピロリウムカチオン、1-ブチル-1-メチルピロリウムカチオンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
ピロリニウムカチオンとしては、1,2-ジメチルピロリニウムカチオン、1-エチル-2-メチルピロリニウムカチオン、1-プロピル-2-メチルピロリニウムカチオン、1-ブチル-2-メチルピロリニウムカチオンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
ピロリジニウムカチオンとしては、1,1-ジメチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-メチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムカチオン、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムカチオンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
アニオンとしては、AlCl、AlCl、HF、NO、NO、BF、PF、AsF、SbF、NbF、TaF、CHCO、CFCO、CCO、CHSO、CFSO、CSO、N(CFSO、N(CSO、C(CFSO、N(CN)が用いられる。
【0033】
蓋4はコバールや42alloyなど熱膨張係数の小さい合金にニッケルメッキを施したものが用いられる。ニッケルメッキはシールリングと溶接するときの接合材となる。負極8と蓋4は正極側と同様に導電性接着剤で接着し負極接着層12を設ける。
蓋4とシールリング3は抵抗シーム溶接、レーザーシーム溶接、電子ビーム溶接などの方法で蓋4に施されたニッケルメッキを溶かし溶接すると、気密性に優れた電気二重層キャパシタまたは二次電池を作成することができる。
【0034】
凹状容器にエポキシ系、ポリアミド系などの熱硬化性樹脂や、ポリスチレン系、ポリフェニレンサルファイド系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリエーテル系などの熱可塑性樹脂を用い、ステンレス、42alloyなどの集電体をモールドしてもよい。この場合の凹状容器と蓋の接合は、接着剤による方法や超音波溶接などがある。
【実施例1】
【0035】
図1に示す長方形の電気二重層キャパシタを作成した。凹状容器はアルミナのセラミックとし、外形は5x3mm、容器底面から蓋上面までの厚みは1mmとした。セラミックからなる容器底部1と容器壁部2にタングステンを印刷し負極集電体6、正極集電体7を形成し焼結した。容器壁部2とコバールからなるシールリング3をロウ材5で接合した。これら金属が露出している部分をニッケルメッキ後、金メッキを施し、凹状容器を作成した。電極は市販の活性炭にグラファイトとポリテトラフルオロエチエンを9:1:1の割合で混合、圧延して厚み0.2mmの活性炭シートを得た。それを3.5x1.5mmの四角形に打ち抜き正極9と負極8とした。保護層11は、フェノール樹脂にグラファイトを分散させた導電性接着剤に溶剤を加え、真空脱泡した。これを集電体7上に塗布し、正極9を配置した後、150℃、真空中で硬化させた。硬化後の保護層11の厚みは約40μmである。
【0036】
次に厚さ0.1mmのコバールにニッケルメッキした板材を4.5x2.5mmに打ち抜き、蓋4を作成した。表面と裏面にはニッケルメッキが施されているが、側面はニッケルメッキがついていないものである。蓋4の上に保護層形成に使ったものと同じ導電性接着剤を塗布し、その上に負極8を置き、150℃真空中で硬化させ、負極接着層12を形成した。
【0037】
セパレータ10はガラス繊維製のものを正極9の上に配置させ、プロピレンカーボネ−ト(PC)に(CNBFを1mol/L溶かした電解液を3μL注入し、蓋4をシールリング3上に配置させ、蓋4上の2点をスポット抵抗溶接により仮止めした後、2つのローラー電極がある抵抗シーム溶接機で蓋4の全周を窒素雰囲気中で溶接し、電気二重層キャパシタを作成した。
【実施例2】
【0038】
正極9はLiMn12とグラファイトとポリテトラフルオロエチエンを9:1:1の割合で混合、圧延して厚み0.15mmのシートを得た。それを3.5x1.5mmの四角形に打ち抜いた。
【0039】
負極8はSiOとグラファイトとポリテトラフルオロエチエンを5:4:1の割合で混合、圧延して厚み0.15mmのシートを得た。それを3.5x1.5mmの四角形に打ち抜いた。蓋4の上に実施例1の保護層に使ったものと同じ導電性接着剤を塗布し、その上に負極8を置き、150℃真空中で硬化させ、負極接着層12を形成した。次に図示しない厚み0.1mmのリチウムシートを3.5x1.5mmの四角形に打ち抜いたものを負極8上に配置した。
【0040】
電解液はγBLとECの混合溶媒にLiBF4 を1mol/L溶かした電解液を用いた。これ以外は実施例1と同様に作成し、二次電池を作成した。
(比較例1)
【0041】
図4のように保護膜11の形成を行わないだけで、その他は実施例1と同様な電気二重層キャパシタを作成した。
(比較例2)
【0042】
図4のように保護膜11の形成を行わないだけで、その他は実施例2と同様な二次電池を作成した。
【0043】
出来上がった電気二重層キャパシタと、二次電池を、ピーク温度が260℃のリフロー炉を通し、リフローハンダ付けを行った。この後、交流1kHzの信号を用いて、それぞれの内部抵抗を測定し初期データとした。
【0044】
電気二重層キャパシタの通電試験は、70℃の恒温槽内で2.5Vを正極−負極間に加え続け、250時間、500時間後の内部抵抗を測定した。
【0045】
二次電池の通電試験は、70℃の恒温槽内で3.3Vを正極−負極間に加え続け、250時間、500時間後の内部抵抗を測定した。試験の結果を表1に示した。
【0046】
【表1】

実施例1、実施例2は500時間後でも良好な内部抵抗値を示した。比較例1、実施例2は250時間後に初期の20倍以上の内部抵抗値を示し、500時間後には無限大となってしまった。500時間後のサンプルを透過X線装置にて凹状容器内部の観察を行った。実施例1,2のサンプルは凹状容器内部に配置された集電体7は観察されたが、比較例1,比較例2のサンプルは、初期に凹状容器内部の電解液と接触する部分に配置された集電体7は、観察されなかった。通電試験中に凹状容器内部の集電体7は電解腐食により断線したことが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の電気二重層キャパシタおよび二次電池は、正極側の保護膜の検討することにより、高信頼性が得られるようになった。特に電圧を印加し続けた状態での保存に強いため、メモリーバックアップ等の使い方に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の電気二重層キャパシタおよび二次電池の断面図である。
【図2】本発明の電気二重層キャパシタおよび二次電池の断面図である。
【図3】本発明の溝部を形成した電気二重層キャパシタおよび二次電池の断面図である。
【図4】従来例の電気二重層キャパシタおよび二次電池の断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 容器底部
2 容器壁部
3 シールリング
4 蓋
5 ロウ材
6 負極集電体
7 正極集電体
8 負極
9 正極
10 セパレータ
11 保護層
12 負極接着層
13 正極接着層
14 スペーサー
15 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、電解液と、前記正極と前記負極と前記電解液を収納する凹状容器と、前記凹状容器の容器底部に配された集電体と、前記集電体上に設けられた導電性接着剤からなる保護層とを有する電気二重層キャパシタ。
【請求項2】
前記凹状容器の容器底部に溝部を形成し、前記溝部に前記集電体を配し、前記集電体上に前記保護層を設けた請求項1に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項3】
前記保護層の厚みが5μm以上、かつ200μm以下である請求項1に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項4】
前記導電性接着剤の導電性フィラーは炭素、ニッケル、アルミニウム、金、銀、銅からなる請求項1に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項5】
前記導電性接着剤が熱硬化性樹脂である請求項1に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項6】
前記導電性接着剤のバインダーがエポキシ、フェノール、アクリル、ウレタン、シリコン、ポリイミドのいずれかである請求項1に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項7】
前記凹状容器の材質はセラミックまたは熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂からなる請求項1に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項8】
前記電解液は非水溶媒とアンモニウム塩又は常温溶融塩からなる請求項1に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項9】
正極と、負極と、電解液と、前記正極と前記負極と前記電解液を収納する凹状容器と、前記凹状容器の容器底部に配された集電体と、前記集電体上に設けられた導電性接着剤からなる保護層とを有する二次電池。
【請求項10】
前記凹状容器の容器底部に溝部を形成し、前記溝部に前記集電体を配し、前記集電体上に前記保護層を設けた請求項9に記載の二次電池。
【請求項11】
前記保護層の厚みが5μm以上、かつ200μm以下である請求項9に記載の二次電池。
【請求項12】
前記導電性接着剤の導電性フィラーは炭素、ニッケル、アルミニウム、金、銀、銅からなる請求項9に記載の二次電池。
【請求項13】
前記導電性接着剤が熱硬化性樹脂である請求項9に記載の二次電池。
【請求項14】
前記導電性接着剤のバインダーがエポキシ、フェノール、アクリル、ウレタン、シリコン、ポリイミドのいずれかである請求項9に記載の二次電池。
【請求項15】
前記凹状容器の材質はセラミックまたは熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂からなる請求項9に記載の二次電池。
【請求項16】
前記電解液は非水溶媒とリチウム塩又は常温溶融塩からなる請求項9に記載の二次電池。
【請求項17】
凹状容器の容器底部に形成した集電体上に導電性接着剤を塗布し加熱硬化させ保護層を形成する工程と、前記保護層上に導電性接着剤を塗布し正極を置いた後に加熱硬化させて接着する工程と、蓋上に導電性接着剤を塗布し負極を置いた後に加熱硬化させて接着する工程と、セパレータを前記正極上に置く工程と、前記容器に電解液を注入する工程と、前記凹状容器と前記蓋を溶接し封止する工程からなる電気二重層キャパシタ又は二次電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−303381(P2006−303381A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126707(P2005−126707)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(595071852)株式会社エスアイアイ・マイクロパーツ (32)
【Fターム(参考)】