説明

電気光学装置および投射型表示装置

【課題】電気光学物質中のイオン性不純物を所定の位置に確実に保持しておくことができる電気光学装置、および投射型表示装置を提供すること。
【解決手段】電気光学装置100において、素子基板10には、シール材107の封止材108が設けられている辺107aと、画像表示領域10aとの間に凹状のイオン吸着部105が形成されている。イオン吸着部105において、凹部の内面はシリコン酸化膜からなる配向膜16からなり、かかる配向膜16は、クロマトグラフィーの担体としての機能を発揮し、イオン性不純物を吸着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の基板間に電気光学物質が保持された電気光学装置、および当該電気光学装置を備えた投射型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の電気光学装置のうち、液晶装置では、素子基板と対向基板とをシール材によって貼り合わせ、素子基板と対向基板との間のうち、シール材によって囲まれた領域内に電気光学物質としての液晶材料が保持されている。かかる液晶装置において、シール材からイオン性不純物が溶出すると、表示特性の劣化を招くことが知られている。そこで、素子基板の液晶層が位置する側の面に凸部を設けることにより、素子基板の表面にイオン吸着部として機能する凹凸を設けることが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−283693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術のように、素子基板に設けた凸部の外周面によってイオン性不純物を吸着する構成では、液晶材料等の電気光学物質に流動が起こった際、吸着状態が弱いイオン性不純物がイオン吸着部から容易に離脱する。このため、イオン性不純物をイオン吸着部に確実に吸着しておくことができないという問題点がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、電気光学物質中のイオン性不純物を所定の位置に確実に保持しておくことができる電気光学装置、および当該電気光学装置を備えた投射型表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る電気光学装置は、対向配置された一対の基板と、前記一対の基板を貼り合わせるシール材と、前記一対の基板の間において前記シール材で囲まれた領域内に設けられた電気光学物質と、を有する電気光学装置において、前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板は、前記電気光学物質と接する面に凹状のイオン吸着部を備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明における「電気光学装置」とは、電気信号によって光の透過状態や発光状態を切り替えることによって表示等を行う装置であって、液晶装置や電気泳動型表示装置等を例示することができる。また、電気光学物質とは、電気信号によって光の透過性や発光特性等が切り換えられる物質を意味する。
【0008】
本発明においては、一対の基板のうちの少なくとも一方の基板は、電気光学物質と接する面に凹状のイオン吸着部が設けられているため、電気光学物質中のイオン性不純物は、イオン吸着部に保持される。また、イオン吸着部は凹状であるため、表面積が広く、イオン性不純物を吸着する能力が高い。さらに、イオン吸着部は凹状であるため、イオン性不純物は、イオン吸着部の内面で保持される。従って、吸着状態が弱いイオン性不純物であっても、電気光学物質の流動等によってイオン吸着部から離脱するという事態が発生しにくいので、イオン性不純物をイオン吸着部に滞留させておきやすい。それ故、本発明によれば、イオン性不純物に起因する表示品位の低下等が発生しにくい。
【0009】
本発明において、前記一対の基板は、前記電気光学物質が位置する一方面側にスイッチング素子、画素電極および該画素電極の前記電気光学物質側の面側に設けられた無機配向膜を備えた素子基板と、前記電気光学物質が位置する一方面側に無機配向膜を備えた対向基板と、からなり、前記電気光学物質は、液晶材料であり、前記イオン吸着部の前記電気光学物質側の面は、前記一対の基板のうち、当該イオン吸着部が形成されている基板に設けられた前記無機配向膜からなることが好ましい。かかる構成によれば、イオン吸着部は、無機配向膜からなるため、ポリイミド等の有機配向膜と比較してイオン性不純物を吸着しやすい。それ故、イオン性不純物に起因する表示品位の低下等が発生しにくい。
【0010】
本発明において、前記イオン吸着部では、前記一対の基板のうち、当該イオン吸着部が形成されている基板に設けられた前記無機配向膜に対して前記電気光学物質と反対側に凹部が形成され、当該凹部は、当該無機配向膜の前記電気光学物質側の面に反映されていることが好ましい。かかる構成によれば、無機配向膜自身に凹部を形成しなくても、凹状のイオン吸着部の表面が無機配向膜からなる構成を容易に実現することができる。
【0011】
本発明において、前記凹部は、前記一対の基板のうち、当該凹部が形成されている基板に形成されている絶縁膜に形成されている構成を採用することができる。かかる構成によれば、比較的上層側に凹部を形成することができるので、無機配向膜を形成するまでの間に他の膜によって凹部が埋まることを防止することができるという利点がある。
【0012】
本発明において、前記凹部は、前記一対の基板のうち、当該凹部が形成されている基板の基板本体に形成されている構成を採用してもよい。かかる構成によれば、比較的容易に深い凹部を形成することができるという利点がある。
【0013】
本発明において、前記イオン吸着部は、少なくとも前記素子基板に設けられている構成を採用することができる。
【0014】
本発明において、前記イオン吸着部は、少なくとも前記対向基板に設けられている構成を採用してもよい。対向基板であれば、素子基板と違って、配線が形成されていないか、あるいは配線がたとえ形成されている場合でも、配線が極めて少ない。従って、対向基板であれば、配線の存在を気にせずに深い凹部を最適な領域に形成することができる。
【0015】
本発明において、前記イオン吸着部は、少なくとも、前記画素電極が設けられた画像表示領域と、前記シール材において液晶注入口が設けられた辺との間に設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、液晶注入口から液晶材料を注入する際、液晶材料に含まれているイオン性不純物をイオン吸着部によって吸着することができる。また、液晶材料を注入した後、液晶注入口を封止する封止材からイオン性不純物が溶出した場合でも、かかるイオン性不純物をイオン吸着部によって吸着することができる。ここで、イオン吸着部が凸状であると、液晶材料を注入する際の抵抗となるが、本発明では、イオン吸着部が凹状であるため、液晶材料をスムーズに注入することができる。
【0016】
本発明を適用した電気光学装置は、各種電子機器において直視型の表示装置として用いることができる他、例えば、投射型表示装置に適用することもできる。かかる投射型表示装置は、前記電気光学装置によって変調された光を投射する投射光学系を有している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の液晶パネルの説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る電気光学装置に用いた素子基板において隣り合う複数の画素の平面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る電気光学装置のF−F′断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る電気光学装置に設けたイオン吸着部の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る電気光学装置に設けたイオン吸着部の形状を模式的に示す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る電気光学装置に設けたイオン吸着部の形成方法を模式的に示す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る電気光学装置に設けたイオン吸着部の説明図である。
【図9】本発明を適用した電気光学装置を用いた投射型表示装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して、本発明の実施の形態として、各種の電気光学装置のうち、アクティブマトリクス型の液晶装置に本発明を適用した場合を中心に説明する。従って、本発明における一対の基板は、スイッチング素子、画素電極および配向膜が形成された素子基板と、配向膜が形成された対向基板とからなる。なお、以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。また、電界効果型トランジスターを流れる電流の方向が反転する場合、ソースとドレインとが入れ替わるが、以下の説明では、便宜上、画素電極が接続されている側をドレインとし、データ線が接続されている側をソースとして説明する。また、素子基板に形成される層を説明する際、上層側あるいは表面側とは素子基板の基板本体が位置する側とは反対側(対向基板が位置する側)を意味し、下層側とは素子基板の基板本体が位置する側を意味する。また、対向基板に形成される層を説明する際、上層側あるいは表面側とは対向基板の基板本体が位置する側とは反対側(素子基板が位置する側)を意味し、下層側とは対向基板の基板本体が位置する側を意味する。
【0019】
[実施の形態1]
(全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の電気的構成を示すブロック図である。図1において、本形態の電気光学装置100は、TN(Twisted Nematic)モードやVA(Vertical Alignment)モードの液晶パネル100pを有する液晶装置であり、かかる液晶パネル100pは、その中央領域に複数の画素100aがマトリクス状に配列された画像表示領域10a(画素配列領域/有効画素領域)を備えている。液晶パネル100pにおいて、後述する素子基板10(図2等を参照)では、画像表示領域10aの内側で複数本のデータ線6aおよび複数本の走査線3aが縦横に延びており、それらの交差部分に対応する位置に画素100aが構成されている。複数の画素100aの各々には、電界効果型トランジスター(スイッチング素子)からなる画素トランジスター30、および後述する画素電極9aが形成されている。画素トランジスター30のソースにはデータ線6aが電気的に接続され、画素トランジスター30のゲートには走査線3aが電気的に接続され、画素トランジスター30のドレインには、画素電極9aが電気的に接続されている。このようにして、電気光学装置100では、複数の画素100aの各々に対応して複数の画素電極9aおよび複数の画素トランジスター30が形成されている。
【0020】
素子基板10において、画像表示領域10aより外周側には走査線駆動回路104やデータ線駆動回路101が設けられている。データ線駆動回路101は各データ線6aに電気的に接続しており、画像処理回路から供給される画像信号を各データ線6aに順次供給する。走査線駆動回路104は、各走査線3aに電気的に接続しており、走査信号を各走査線3aに順次供給する。
【0021】
各画素100aにおいて、画素電極9aは、後述する対向基板20(図2等を参照)に形成された共通電極と液晶層を介して対向し、液晶容量50aを構成している。また、各画素100aには、液晶容量50aで保持される画像信号の変動を防ぐために、液晶容量50aと並列に蓄積容量55が付加されている。本形態では、蓄積容量55を構成するために、素子基板10には、複数の画素100aに跨って延在する容量線5bが形成されており、容量線5bは、共通電位Vcomが印加された定電位配線6sに導通している。
【0022】
(液晶パネル100pおよび素子基板10の構成)
図2は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置100の液晶パネル100pの説明図であり、図2(a)、(b)は各々、液晶パネル100pを各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図、およびそのH−H′断面図である。
【0023】
図2に示すように、液晶パネル100pでは、素子基板10と対向基板20とが所定の隙間を介してシール材107によって貼り合わされており、シール材107は対向基板20の外縁に沿うように枠状に設けられている。シール材107は、光硬化樹脂や熱硬化性樹脂等からなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバーあるいはガラスビーズ等のギャップ材107hが配合されている。液晶パネル100pにおいて、素子基板10と対向基板20との間のうち、シール材107によって囲まれた領域内には、各種液晶材料(電気光学物質)からなる液晶層50(電気光学物質層)が設けられている。本形態において、シール材107には、液晶注入口107gとして利用される途切れ部分が形成されており、かかる液晶注入口107gは、液晶材料の注入後、封止材108によって封止されている。
【0024】
かかる構成の液晶パネル100pにおいて、素子基板10および対向基板20はいずれも四角形であり、液晶パネル100pの略中央には、図1を参照して説明した画像表示領域10aが四角形の領域として設けられている。かかる形状に対応して、シール材107も略四角形に設けられ、画像表示領域10aの外側は、四角枠状の外周領域10cになっている。
【0025】
素子基板10において、外周領域10cでは、素子基板10の一辺に沿ってデータ線駆動回路101および複数の端子電極102が形成されており、この一辺に隣接する他の辺に沿って走査線駆動回路104が形成されている。なお、端子電極102には、フレキシブル配線基板(図示せず)が接続されており、素子基板10には、フレキシブル配線基板を介して各種電位や各種信号が入力される。
【0026】
図3および図4等を参照して詳しくは後述するが、素子基板10の一方面10sおよび他方面10tのうち、対向基板20と対向する一方面10sの側において、画像表示領域10aには、図1を参照して説明した画素トランジスター30、および画素トランジスター30に電気的に接続する画素電極9aがマトリクス状に形成されており、かかる画素電極9aの上層側には配向膜16が形成されている。
【0027】
また、素子基板10の一方面10sの側において、画像表示領域10aより外側の外周領域10cのうち、画像表示領域10aとシール材107とに挟まれた四角枠状の周辺領域10bには、画素電極9aと同時形成されたダミー画素電極9bが形成されている。ダミー画素電極9bは、隣り合うダミー画素電極9b同士が細幅の連結部(図示せず)で繋がっている。また、ダミー画素電極9bは、共通電位Vcomが印加されており、画像表示領域10aの外周側端部での液晶分子の配向の乱れを防止する。また、ダミー画素電極9bは、素子基板10において配向膜16が形成される面を研磨により平坦化する際、画像表示領域10aと周辺領域10bとの高さ位置の差を圧縮し、配向膜16が形成される面を平坦面にするのに寄与する。なお、ダミー画素電極9bに電位を印加せず、ダミー画素電極9bを電位的にフロート状態とする場合もあり、この場合でも、ダミー画素電極9bは、画像表示領域10aと周辺領域10bとの高さ位置の差を圧縮し、配向膜16が形成される面を平坦面にするのに寄与する。
【0028】
対向基板20の一方面20sおよび他方面20tのうち、素子基板10と対向する一方面20sの側には共通電極21が形成されている。共通電極21は、対向基板20の略全面あるいは複数の帯状電極として複数の画素100aに跨って形成されている。本形態において、共通電極21は、対向基板20の略全面に形成されている。
【0029】
また、対向基板20の一方面20sの側には、共通電極21の下層側に遮光層29が形成され、共通電極21の表面には配向膜26が積層されている。本形態において、遮光層29は、画像表示領域10aの外周縁に沿って延在する額縁部分29aとして形成されており、遮光層29の内周縁によって画像表示領域10aが規定されている。また、本形態において、遮光層29は、隣り合う画素電極9aにより挟まれた画素間領域10fに重なるブラックマトリクス部29bとしても形成されている。ここで、額縁部分29aはダミー画素電極9bと重なる位置に形成されており、額縁部分29aの外周縁は、シール材107の内周縁との間に隙間を隔てた位置にある。従って、額縁部分29aとシール材107とは重なっていない。
【0030】
液晶パネル100pにおいて、シール材107より外側には、対向基板20の一方面20sの側の4つの角部分に基板間導通用電極25が形成されており、素子基板10の一方面10sの側には、対向基板20の4つの角部分(基板間導通用電極25)と対向する位置に基板間導通用電極19が形成されている。本形態において、基板間導通用電極25は、共通電極21の一部からなる。基板間導通用電極19は、共通電位Vcomが印加された定電位配線6sに導通しており、定電位配線6sは、端子電極102のうち、共通電位印加用の端子電極102aに導通している。基板間導通用電極19と基板間導通用電極25との間には、導電粒子を含んだ基板間導通材109が配置されており、対向基板20の共通電極21は、基板間導通用電極19、基板間導通材109および基板間導通用電極25を介して、素子基板10側に電気的に接続されている。このため、共通電極21は、素子基板10の側から共通電位Vcomが印加されている。シール材107は、略同一の幅寸法をもって対向基板20の外周縁に沿って設けられている。このため、シール材107は、略四角形である。但し、シール材107は、対向基板20の角部分と重なる領域では基板間導通用電極19、25を避けて内側を通るように設けられており、シール材107の角部分は略円弧状である。
【0031】
図5等を参照して詳しくは後述するが、本形態の電気光学装置100では、素子基板10および対向基板20のうち、少なくとも一方において液晶層50と接する面には、凹状のイオン吸着部105が形成されており、本形態において、凹状のイオン吸着部105は、素子基板10の一方面10sにおいて、シール材107の各辺107a,107b,107c,107dのうち、封止材108が設けられている辺107aと、画像表示領域10aとの間に設けられている。
【0032】
かかる構成の電気光学装置100において、本形態では、画素電極9aおよび共通電極21がITO(Indium Tin Oxide)膜やIZO(Indium Zinc Oxide)膜等の透光性導電膜により形成されており、電気光学装置100は透過型の液晶装置である。かかる透過型の液晶装置(電気光学装置100)では、対向基板20の側から入射した光が素子基板10を透過して出射される間に変調されて画像を表示する。また、画素電極9aおよび共通電極21のうち、例えば、共通電極21を透光性導電膜により形成し、画素電極9aをアルミニウム膜等の反射性導電膜により形成する場合もあり、かかる構成によれば、電気光学装置100を反射型の液晶装置として構成することができる。かかる反射型の液晶装置(電気光学装置100)では、素子基板10および対向基板20のうち、対向基板20の側から入射した光が素子基板10で反射して出射される間に変調されて画像を表示する。
【0033】
電気光学装置100は、モバイルコンピューター、携帯電話機等といった電子機器のカラー表示装置として用いることができ、この場合、対向基板20あるいは素子基板10には、カラーフィルター(図示せず)が形成される。また、電気光学装置100は、電子ペーパーとして用いることできる。また、電気光学装置100では、使用する液晶層50の種類や、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光板等が液晶パネル100pに対して所定の向きに配置される。さらに、電気光学装置100は、後述する投射型表示装置(液晶プロジェクター)において、RGB用のライトバルブとして用いることができる。この場合、RGB用の各電気光学装置100の各々には、RGB色分解用のダイクロイックミラーを介して分解された各色の光が投射光として各々入射されることになるので、カラーフィルターは形成されない。
【0034】
本形態において、電気光学装置100が、後述する投射型表示装置においてRGB用のライトバルブとして用いられる透過型の液晶装置であって、対向基板20から入射した光が素子基板10を透過して出射される場合を中心に説明する。また、本形態において、電気光学装置100は、液晶層50として、誘電異方性が負のネマチック液晶化合物を用いたVAモードの液晶パネル100pを備えている場合を中心に説明する。
【0035】
(画素100pの具体的構成)
図3は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置100に用いた素子基板10において隣り合う複数の画素の平面図である。図4は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置100のF−F′断面図である。なお、図3では、各層を以下の線
下層側の遮光層8a=細くて長い破線
半導体層1a=細くて短い点線
走査線3a=太い実線
ドレイン電極4a=細い実線
データ線6aおよび中継電極6b=細い一点鎖線
容量線5b=太い一点鎖線
上層側の遮光層7aおよび中継電極7b=細い二点鎖線
画素電極9a=太い破線
で示してある。また、図3では、互いの端部が重なり合う層については、層の形状等が分かりやすいように、端部の位置をずらしてある。
【0036】
図3に示すように、素子基板10において対向基板20と対向する一方面10sには、複数の画素100aの各々に画素電極9aが形成されており、隣り合う画素電極9aにより挟まれた画素間領域10fに沿ってデータ線6aおよび走査線3aが形成されている。本形態において、画素間領域10fは縦横に延在しており、走査線3aは画素間領域10fのうち、X方向(第1方向)に延在する第1画素間領域10gに沿って直線的に延在し、データ線6aは、Y方向(第2方向)に延在する第2画素間領域10hに沿って直線的に延在している。また、データ線6aと走査線3aとの交差に対応して画素トランジスター30が形成されており、本形態において、画素トランジスター30は、データ線6aと走査線3aとの交差領域およびその付近を利用して形成されている。素子基板10には容量線5bが形成されており、かかる容量線5bには共通電位Vcomが印加されている。本形態において、容量線5bは、走査線3aおよびデータ線6aに重なるように延在して格子状に形成されている。画素トランジスター30の上層側には遮光層7aが形成されており、かかる遮光層7aは、データ線6aに重なるように延在している。画素トランジスター30の下層側には遮光層8aが形成されており、かかる遮光層8aは、走査線3aと重なるように直線的に延びた主線部分と、データ線6aと走査線3aとの交差部分でデータ線6aに重なるように延びた副線部分とを備えている。
【0037】
図4に示すように、素子基板10は、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体10wの液晶層50側の基板面(対向基板20と対向する一方面10s側)に形成された画素電極9a、画素スイッチング用の画素トランジスター30、および配向膜16を主体として構成されている。対向基板20は、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体20w、その液晶層50側の表面(素子基板10と対向する一方面20s)に形成された遮光層29、共通電極21、および配向膜26を主体として構成されている。
【0038】
素子基板10において、基板本体10wの一方面10s側には、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属化合物膜等の導電膜からなる下層側の遮光層8aが形成されている。本形態において、遮光層8aは、タングステンシリサイド(WSi)等の遮光膜からなり、電気光学装置100を透過した後の光が他の部材で反射した際、かかる反射光が半導体層1aに入射して画素トランジスター30で光電流に起因する誤動作が発生することを防止する。なお、遮光層8aを走査線として構成する場合もあり、この場合、後述するゲート電極3cと遮光層8aを導通させた構成とする。
【0039】
基板本体10wの一方面10s側において、遮光層8aの上層側には、透光性の絶縁膜12が形成されており、かかる絶縁膜12の表面側に、半導体層1aを備えた画素トランジスター30が形成されている。本形態において、絶縁膜12は、NSG(ノンシリケートガラス)、PSG(リンシリケートガラス)、BSG(ボロンシリケートガラス)、BPSG (ボロンリンシリケートガラス)等のシリコン酸化膜(シリケートガラスも含む。)や、シリコン窒化膜からなる。かかる絶縁膜12は、シランガス(SiH4)、2塩化シラン(SiCl22)、TEOS(テトラエトキシシラン/テトラ・エチル・オルソ・シリケート/Si(OC254)、TEB(テトラ・エチル・ボートレート)、TMOP(テトラ・メチル・オキシ・フォスレート)等を用いた常圧CVD法、減圧CVD法、あるいはプラズマCVD法等により形成される。
【0040】
画素トランジスター30は、データ線6aの延在方向に長辺方向を向けた半導体層1aと、半導体層1aの長さ方向と直交する方向に延在して半導体層1aの長さ方向の中央部分に重なるゲート電極3cとを備えており、本形態において、ゲート電極3cは走査線3aの一部からなる。画素トランジスター30は、半導体層1aとゲート電極3cとの間に透光性のゲート絶縁層2を有している。半導体層1aは、ゲート電極3cに対してゲート絶縁層2を介して対向するチャネル領域1gを備えているとともに、チャネル領域1gの両側にソース領域1bおよびドレイン領域1cを備えている。本形態において、画素トランジスター30は、LDD構造を有している。従って、ソース領域1bおよびドレイン領域1cは各々、チャネル領域1gの両側に低濃度領域を備え、低濃度領域に対してチャネル領域1gとは反対側で隣接する領域に高濃度領域を備えている。
【0041】
半導体層1aは、ポリシリコン膜(多結晶シリコン膜)等によって構成されている。ゲート絶縁層2は、半導体層1aを熱酸化したシリコン酸化膜からなる第1ゲート絶縁層2aと、温度が700〜900℃の高温条件での減圧CVD法により形成されたシリコン酸化膜からなる第2ゲート絶縁層2bとの2層構造からなる。ゲート電極3cおよび走査線3aは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属化合物膜等の導電膜からなる。本形態において、ゲート電極3cは、導電性のポリシリコン膜とタングステンシリサイド膜との2層構造を有している。
【0042】
ゲート電極3cの上層側には、NSG、PSG、BSG、BPSG等のシリコン酸化膜等からなる透光性の層間絶縁膜41が形成され、層間絶縁膜41の上層には、ドレイン電極4aが形成されている。本形態において、層間絶縁膜41は、シリコン酸化膜からなる。ドレイン電極4aは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属化合物膜等の導電膜からなる。本形態において、ドレイン電極4aはチタン窒化膜からなる。ドレイン電極4aは、半導体層1aのドレイン領域1c(画素電極側ソースドレイン領域)と一部が重なるように形成されており、層間絶縁膜41およびゲート絶縁層2を貫通するコンタクトホール41aを介してドレイン領域1cに導通している。
【0043】
ドレイン電極4aの上層側には、シリコン酸化膜等からなる透光性のエッチングストッパー層49、および透光性の誘電体層40が形成されており、かかる誘電体層40の上層側には容量線5bが形成されている。誘電体層40としては、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等のシリコン化合物を用いることができる他、アルミニウム酸化膜、チタン酸化膜、タンタル酸化膜、ニオブ酸化膜、ハフニウム酸化膜、ランタン酸化膜、ジルコニウム酸化膜等の高誘電率の誘電体層を用いることができる。容量線5bは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属化合物膜等の導電膜からなる。本形態において、容量線5bは、チタン窒化膜、アルミニウム膜、およびチタン窒化膜との3層構造を有している。ここで、容量線5bは、誘電体層40を介してドレイン電極4aと重なっており、蓄積容量55を構成している。
【0044】
容量線5bの上層側には層間絶縁膜42が形成されており、かかる層間絶縁膜42の上層側には、データ線6aと中継電極6bとが同一の導電膜により形成されている。層間絶縁膜42はシリコン酸化膜からなる。データ線6aと中継電極6bは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属化合物膜等の導電膜からなる。本形態において、データ線6aおよび中継電極6bは、アルミニウム合金膜や、チタン窒化膜とアルミニウム膜との2層乃至4層の積層膜からなる。データ線6aは、層間絶縁膜42、エッチングストッパー層49、層間絶縁膜41およびゲート絶縁層2を貫通するコンタクトホール42aを介してソース領域1b(データ線側ソースドレイン領域)に導通している。中継電極6bは、層間絶縁膜42およびエッチングストッパー層49を貫通するコンタクトホール42bを介してドレイン電極4aに導通している。
【0045】
データ線6aおよび中継電極6bの上層側にはシリコン酸化膜等からなる透光性の層間絶縁膜44が形成されており、かかる層間絶縁膜44の上層側には、遮光層7aおよび中継電極7bが同一の導電膜によって形成されている。層間絶縁膜44は、例えば、テトラエトキシシランと酸素ガスとを用いたプラズマCVD法や、シランガスと亜酸化窒素ガスとを用いたプラズマCVD法等により形成したシリコン酸化膜からなり、その表面は平坦化されている。遮光層7aおよび中継電極7bは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属化合物膜等の導電膜からなる。本形態において、遮光層7aおよび中継電極7bは、アルミニウム合金膜や、チタン窒化膜とアルミニウム膜との2層乃至4層の積層膜からなる。中継電極7bは、層間絶縁膜44を貫通するコンタクトホール44aを介して中継電極6bに導通している。遮光層7aは、データ線6aと重なるように延在しており、遮光層として機能している。なお、遮光層7aを容量線5bと導通させて、シールド層として利用してもよい。
【0046】
遮光層7aおよび中継電極7bの上層側には、シリコン酸化膜等からなる透光性の層間絶縁膜45が形成されており、かかる層間絶縁膜45の上層側には、ITO膜等の透光性導電膜からなる画素電極9aが形成されている。本形態において、画素電極9aは、ITO膜からなる。層間絶縁膜45は、例えば、テトラエトキシシランと酸素ガスとを用いたプラズマCVD法や、シランガスと亜酸化窒素ガスとを用いたプラズマCVD法等により形成したシリコン酸化膜からなる。また、層間絶縁膜45は、NSG(ノンシリケートガラス)からなる下層側の第1絶縁膜と、BSG(ボロンシリケートガラス)からなる上層側の第2絶縁膜との構造を有している場合がある。いずれの場合も、層間絶縁膜45の表面は平坦化されている。
【0047】
画素電極9aは、中継電極7bと部分的に重なっており、層間絶縁膜45を貫通するコンタクトホール45aを介して中継電極7bに導通している。その結果、画素電極9aは、中継電極7b、中継電極6bおよびドレイン電極4aを介してドレイン領域1cに電気的に接続している。
【0048】
画素電極9aの表面には、ポリイミドや無機配向膜からなる配向膜16が形成されている。本形態において、配向膜16は、SiOX(x<2)、SiO2、TiO2、MgO、Al23、In23、Sb23、Ta25等の斜方蒸着膜(傾斜垂直配向膜/無機配向膜)からなる。
【0049】
(対向基板20の構成)
対向基板20では、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体20w(透光性基板)の液晶層50側の表面(素子基板10に対向する一方面20s)には、遮光層29、シリコン酸化膜等からなる絶縁膜28、およびITO膜等の透光性導電膜からなる共通電極21が形成されており、かかる共通電極21を覆うように、ポリイミドや無機配向膜からなる配向膜26が形成されている。本形態において、共通電極21はITO膜からなる。本形態において、配向膜26は、配向膜16と同様、SiOX(x<2)、SiO2、TiO2、MgO、Al23、In23、Sb23、Ta25等の斜方蒸着膜(傾斜垂直配向膜/無機配向膜)である。かかる配向膜16、26は、液晶層50に用いた誘電異方性が負のネマチック液晶化合物を傾斜垂直配向させ、液晶パネル100pは、ノーマリブラックのVAモードとして動作する。本形態では、配向膜16、26として、各種無機配向膜のうち、シリコン酸化膜(SiOX)の斜方蒸着膜が用いられている。
【0050】
なお、図1および図2を参照して説明したデータ線駆動回路101および走査線駆動回路104には、nチャネル型の駆動用トランジスターとpチャネル型の駆動用トランジスターとを備えた相補型トランジスター回路等が構成されている。ここで、駆動用トランジスターは、画素トランジスター30の製造工程の一部を利用して形成されたものである。このため、素子基板10においてデータ線駆動回路101および走査線駆動回路104が形成されている領域も、図4に示す断面構成と略同様な断面構成を有している。
【0051】
(イオン吸着部105の具体的構成)
図5は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置100に設けたイオン吸着部105の説明図であり、図5(a)、(b)は、イオン吸着部105を拡大して電気光学装置100の断面構造を模式的に示す説明図、およびイオン吸着部105の具体的構成例を示す説明図である。図6は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置100に設けたイオン吸着部105の形状を模式的に示す説明図である。図7は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置100に設けたイオン吸着部105の形成方法を模式的に示す説明図である。なお、図5(a)は、液晶層50を設ける前の状態を示してある。
【0052】
図2および図5に示すように、本形態の電気光学装置100において、素子基板10の液晶層50と接する一方面10s側には、その最上層にイオン吸着部105が形成されている。イオン吸着部105は、シール材107と画像表示領域10aとの間に位置する周辺領域10bに設けられており、対向基板20の遮光層29(額縁部分29a)と重なっている。また、イオン吸着部105は、シール材107の封止材108が設けられている辺107a(液晶注入口107gが設けられている辺107a)と、画像表示領域10aとの間に設けられ、かかる辺107aに沿って帯状に延在している。なお、本形態では、図2(b)に示すように、周辺領域10bのうち、画像表示領域10aの周りにはダミー画素電極9bが形成されていることから、本形態において、イオン吸着部105は、ダミー画素電極9bより外側(ダミー画素電極9bとシール材107との間)に設けられている。
【0053】
ここで、イオン吸着部105は、イオン吸着部105の周りの領域(ダミー画素電極9bが形成されている領域等)よりも凹んだ複数の凹部10mからなり、イオン吸着部105は凹状に形成されている。また、イオン吸着部105において、凹部10mの内面には、シリコン酸化膜(無機配向膜)からなる配向膜16が積層されている。このため、イオン吸着部105において、液晶層50に接する面は配向膜16からなる。本形態では、凹状のイオン吸着部105を構成するにあたって、層間絶縁膜45の表面に凹部45eが形成されており、かかる凹部45eの形状は、配向膜16の表面に凹部10mとして反映されている。
【0054】
本形態において、凹部10mは、例えば、図6(a)に示すように、イオン吸着部105の延在方向に沿って延在する複数本の溝として形成されている。また、図6(b)に示すように、凹部10mは、互いに離間する穴として形成される場合もある。いずれの場合も、凹部10mの内面は、斜め上向きのテーパー面、あるいは上向きの湾曲面として形成される。
【0055】
かかる構成のイオン吸着部105は、例えば、図7に示す方法により製造することができる。例えば、図7(a)に示すように、層間絶縁膜45の表面を研磨等の方法で平坦化した後、層間絶縁膜45の表面にエッチングマスク10xを形成した状態で化学エッチングを行えば、サイドエッチングによって、上向きの湾曲面を備えた凹部45eが形成される。また、図7(b)に示すように、ハーフトーンマスク等を用いた露光技術を利用して、部位によって厚さが異なるレジストマスクからなるエッチングマスク10yを形成した状態でドライエッチングを行えば、層間絶縁膜45とともにエッチングマスク10yがエッチングされる結果、斜め上向きの概ねテーパー面を備えた凹部45eが形成される。さらに、図7(c)に示すように、レジストによって凸部を形成した後、レジストを加熱して溶融させ、側面がテーパーになっているエッチングマスク10zを形成した状態でドライエッチングを行えば、層間絶縁膜45とともにエッチングマスク10zがエッチングされる結果、斜め上向きのテーパー面を備えた凹部45eが形成される。
【0056】
従って、凹部45eを形成した後、エッチングマスク10x、10y、10zを除去し、次に、画素電極9aやダミー画素電極9bを形成した後、斜方蒸着を利用して配向膜16を形成すれば、凹部10mの内面が配向膜16で覆われたイオン吸着部105を形成することができる。なお、画素電極9aやダミー画素電極9bを形成した後、凹部45eを形成し、しかる後に、斜方蒸着等を利用して配向膜16を形成しても、凹部10mの内面が配向膜16で覆われたイオン吸着部105を形成することができる。
【0057】
なお、本形態では、図5(b)と図4とを対比すればわかるように、イオン吸着部105の形成領域では、基板本体10wの一方面側に絶縁膜12、ゲート絶縁層2の第2ゲート絶縁層2b、層間絶縁膜41、エッチングストッパー層49、層間絶縁膜42、層間絶縁膜44、および層間絶縁膜45がこの順に形成されている。また、イオン吸着部105の形成領域では、画像表示領域10aとの高さ寸法を調整すること等を目的に、画素100aの遮光層8a、走査線3a、容量線5b、データ線6a、および遮光層7aの各々を構成する導電膜と同一の導電膜8t、3t、5t、6t、7tがこの順に形成されている。
【0058】
(電気光学装置100の製造方法/液晶材料の注入工程)
本発明の実施の形態1に係る電気光学装置100を製造するにあたっては、素子基板10および対向基板20を多数取りできる大型基板の状態で途中の工程までを行い、その後、単品サイズに切断する。但し、以下の説明では、素子基板10の形成に用いられる大型基板も素子基板10として説明し、対向基板20の形成に用いられる大型基板も対向基板20として説明する。
【0059】
本形態では、図4〜図7を参照して説明したように素子基板10および対向基板20に各構成要素を形成した後、図5(a)に示すように、素子基板10と対向基板20とをシール材107で貼り合わせる。次に、矢印Lで示すように、減圧雰囲気中でシール材107の液晶注入口107gから液晶材料を注入し、しかる後に、シール材107の液晶注入口107gを封止材108で封止する(図2(a)参照)。また、所定の工程で大型基板を単品サイズの素子基板10や対向基板20に切断すれば、図2等を参照して説明した単品サイズの液晶パネル100pを得ることができる。
【0060】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の電気光学装置100において、素子基板10には、シール材107の封止材108が設けられている辺107a(液晶注入口107gが設けられている辺107a)と、画像表示領域10aとの間にイオン吸着部105が形成されている。ここで、イオン吸着部105は、複数の凹部10mを備えているため、イオン性不純物を吸着する能力を有する。また、イオン吸着部105において、凹部10mの内面はシリコン酸化膜からなる配向膜16からなり、かかる配向膜16は、クロマトグラフィーの担体としての機能を発揮し、イオン性不純物を吸着する。特に、斜方蒸着により形成した配向膜16は、素子基板10から対向基板20に向けて斜めに突出した複数の凸部を備えたカラム構造を有しているため、イオン性不純物を吸着する能力が高い。さらに、イオン吸着部105は、複数の凹部10mを備えているため、イオン吸着部105においては、配向膜16の表面積が広く、イオン吸着部105のイオン性不純物を吸着する能力が高い。
【0061】
このため、シール材107の液晶注入口107gからシール材107の内側に液晶材料を注入する際、液晶材料にイオン性不純物が混入している場合でも、かかるイオン性不純物は、液晶材料が流動しながらイオン吸着部105を通過する際、イオン吸着部105に吸着される。従って、画像表示領域10aにはイオン性不純物が侵入しにくい。
【0062】
また、封止材108を硬化させた後、封止材108からイオン性不純物が溶出した場合でも、かかるイオン性不純物は、画像表示領域10aに向かう途中でイオン吸着部105に吸着される。従って、画像表示領域10aにはイオン性不純物が侵入しにくい。
【0063】
さらに、シール材107からイオン性不純物が溶出した場合でも、かかるイオン性不純物は、画像表示領域10aに向かう途中でイオン吸着部105に吸着される。従って、画像表示領域10aにはイオン性不純物が侵入しにくい。
【0064】
また、本形態において、イオン吸着部105は凹状であるため、イオン性不純物は、イオン吸着部105の内面(凹部10mの内面)で保持される。このため、吸着状態が弱いイオン性不純物であっても、イオン吸着部105から離脱しにくいので、イオン性不純物をイオン吸着部105に滞留させておきやすい。それ故、本形態によれば、イオン性不純物に起因する表示品位の低下等が発生しにくい。
【0065】
また、イオン吸着部105を凸状に形成すると、液晶材料を注入する際に抵抗となるが、本形態では、イオン吸着部105が凹状であるため、液晶材料をスムーズに注入することができる。さらに、イオン吸着部105を凸状に形成すると、対向基板20との隙間寸法との関係から高い寸法に大きな制約があるが、凹状のイオン吸着部105であれば、かかる制約がない。それ故、イオン吸着部105を深くすることができ、表面積の広いイオン吸着部105を形成することができる。
【0066】
また、凹状のイオン吸着部105を設けるにあたって、本形態では、配向膜16の下層側に設けられた層間絶縁膜45に凹部45eが形成され、かかる凹部45eは、配向膜16の表面に凹部10mとして反映されている。このため、配向膜16自身に凹部を形成しなくても、表面が配向膜16からなる凹状のイオン吸着部105を構成することができる。ここで、凹状のイオン吸着部105を設けるにあたっては、基板本体10wに凹部を設けてもよいが、本形態では、層間絶縁膜45に凹部45eが形成されている。すなわち、本形態では、上層側に位置する層間絶縁膜45に凹部45eが形成されている。このため、配向膜16を形成するまでの間に他の膜によって凹部が埋まることを防止することができるという利点がある。しかも、本形態では、配向膜16が無機配向膜であるため、配向膜として、スピンコート法で形成したポリイミド層を利用した場合と違って、凹部45eが埋まりにくい。
【0067】
また、イオン吸着部105では、液晶材料の配向を制御できないが、イオン吸着部105は、対向基板20の遮光層29(額縁部分29a)と重なる領域に設けられているため、表示品位の低下等を発生させることがない。
【0068】
[実施の形態2]
図8は、本発明の実施の形態2に係る電気光学装置100に設けたイオン吸着部105の説明図であり、図8(a)、(b)は、イオン吸着部105を拡大して電気光学装置100の断面構造を模式的に示す説明図、およびイオン吸着部105の具体的構成例を示す説明図である。なお、図8(a)は、液晶層50を設ける前の状態を示してある。また、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0069】
実施の形態1では、素子基板10の液晶層50と接する一方面10s側にイオン吸着部105を設けたが、本形態では、図8に示すように、対向基板20の液晶層50と接する一方面20s側にイオン吸着部105が設けられている。本形態でも、実施の形態1と同様、イオン吸着部105は、シール材107の封止材108が設けられている辺107a(液晶注入口107gが設けられている辺107a)と、画像表示領域10aとの間に設けられている。また、イオン吸着部105は、周りの領域よりも凹んだ複数の凹部20mからなり、イオン吸着部105は凹状に形成されている。また、イオン吸着部105において、凹部20mの内面には、シリコン酸化膜(無機配向膜)からなる配向膜26が積層されている。
【0070】
本形態では、凹状のイオン吸着部105を構成するにあたって、基板本体20wの表面に凹部20eが形成されており、かかる凹部20eの形状は、配向膜26の表面に凹部20mとして反映されている。このため、イオン吸着部105において、液晶層50に接する面は配向膜26からなる。ここで、イオン吸着部105と重なる領域には、絶縁膜28や共通電極21が形成されていない。このため、基板本体20wの表面に形成した凹部20eを配向膜26の表面に凹部20mとして確実に反映されることができる。
【0071】
なお、凹部20mは、実施の形態1で説明した凹部10mと同様、イオン吸着部105の延在方向に沿って延在する複数本の溝や、互いに離間する穴として形成されており、いずれの場合も、凹部20mの内面は、斜め上向きのテーパー面、あるいは上向きの湾曲面として形成される。かかる構成のイオン吸着部105は、図7を参照して説明した方法により形成することができる。
【0072】
このように構成した電気光学装置100においても、実施の形態1と同様、シール材107の液晶注入口107gからシール材107の内側に液晶材料を注入する際、液晶材料にイオン性不純物が混入している場合でも、かかるイオン性不純物は、液晶材料が流動しながらイオン吸着部105を通過する際、イオン吸着部105に吸着される。また、封止材108を硬化させた後、封止材108からイオン性不純物が溶出した場合でも、かかるイオン性不純物は、画像表示領域10aに向かう途中でイオン吸着部105に吸着される。さらに、シール材107からイオン性不純物が溶出した場合でも、かかるイオン性不純物は、画像表示領域10aに向かう途中でイオン吸着部105に吸着される。従って、画像表示領域10aにはイオン性不純物が侵入しにくい。それ故、本形態によれば、イオン性不純物に起因する表示品位の低下が発生しない等、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0073】
また、本形態では、対向基板20の側にイオン吸着部105が設けられており、かかる構成によれば、イオン吸着部105を最適な領域に最適なサイズで形成することができる。具体的には、素子基板10の場合には、多数の配線が形成されているため、イオン吸着部105を深く形成するには、配線を避ける必要があるが、対向基板20には配線が形成されていない。従って、イオン吸着部105を最適な領域に最適なサイズで形成することができる。
【0074】
[実施の形態3]
実施の形態1では、素子基板10にイオン吸着部105を設け、実施の形態2では、対向基板20にイオン吸着部105を設けたが、素子基板10および対向基板20の双方にイオン吸着部105を設けてもよい。
【0075】
[実施の形態4]
上記実施の形態では、シール材107の封止材108が設けられている辺107a(液晶注入口107gが設けられている辺107a)と、画像表示領域10aとの間のみにイオン吸着部105を設けたが、シール材107において相対向する2つの辺に沿ってイオン吸着部105を設けてもよく、シール材107の4つの辺の各々に沿ってイオン吸着部105を設けてもよい。かかる構成によれば、シール材107から溶出したイオン性不純物をイオン吸着部105によって確実に吸着することができる。
【0076】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、層間絶縁膜45のみに凹部45eを形成したが、さらに下方までエッチングして深い凹部10mを形成してもよい。
【0077】
上記実施の形態では、透過型の液晶装置(電気光学装置100)に本発明を適用したが、反射型の液晶装置(電気光学装置100)に本発明を適用してもよい。
【0078】
上記実施の形態では、シール材107の途切れ部分からなる液晶注入口107gから液晶材料を注入したが、シール材107を素子基板10に塗布した後、その内側に液晶材料を滴下し、その後、対向基板20を重ね、しかる後にシール材107を硬化させる方式の電気光学装置100に本発明を適用してもよい。この場合、液晶注入口107gおよび封止材108が設けられないので、イオン吸着部105は、液晶材料に予め混入していたイオン性不純物や、シール材107から溶出したイオン性不純物を吸着することを目的に設けられる。
【0079】
上記実施の形態では、液晶装置(電気光学装置100)に本発明を適用したが、電気泳動型表示装置、有機エレクトロルミネッセンス装置等、液晶装置以外の電気光学装置に本発明を適用してもよい。
【0080】
[電子機器への搭載例]
(投射型表示装置および光学ユニットの構成例)
図9は、本発明を適用した投射型表示装置および光学ユニットの概略構成図であり、図9(a)、(b)は各々、透過型の電気光学装置を用いた投射型表示装置の説明図、および反射型の電気光学装置を用いた投射型表示装置の説明図である。
【0081】
図9(a)に示す投射型表示装置110は、液晶パネルとして透過型の液晶パネルを用いた例であるのに対して、図9(b)に示す投射型表示装置1000は、液晶パネルとして反射型の液晶パネルを用いた例である。但し、以下に説明するように、投射型表示装置110、1000はいずれも、光源部130、1021と、光源部130、1021から互いに異なる波長域の光が供給される複数の電気光学装置100と、複数の電気光学装置100から出射された光を合成して出射するクロスダイクロイックプリズム119、1027(光合成光学系)と、光合成光学系により合成された光を投射する投射光学系118、1029とを有している。また、投射型表示装置110、1000においては、電気光学装置100およびクロスダイクロイックプリズム119、1027(光合成光学系)を備えた光学ユニット200が用いられている。
【0082】
(投射型表示装置の第1例)
図9(a)に示す投射型表示装置110は、観察者側に設けられたスクリーン111に光を照射し、このスクリーン111で反射した光を観察する、いわゆる投影型の投射型表示装置である。投射型表示装置110は、光源112を備えた光源部130と、ダイクロイックミラー113、114と、液晶ライトバルブ115〜117と、投射光学系118と、クロスダイクロイックプリズム119(合成光学系)と、リレー系120とを備えている。
【0083】
光源112は、赤色光R、緑色光G、および青色光Bを含む光を供給する超高圧水銀ランプで構成されている。ダイクロイックミラー113は、光源112からの赤色光Rを透過させるとともに、緑色光G、および青色光Bを反射する構成となっている。また、ダイクロイックミラー114は、ダイクロイックミラー113で反射された緑色光Gおよび青色光Bのうち青色光Bを透過させるとともに緑色光Gを反射する構成となっている。このように、ダイクロイックミラー113、114は、光源112から出射した光を赤色光Rと緑色光Gと青色光Bとに分離する色分離光学系を構成する。
【0084】
ここで、ダイクロイックミラー113と光源112との間には、インテグレーター121および偏光変換素子122が光源112から順に配置されている。インテグレーター121は、光源112から照射された光の照度分布を均一化する構成となっている。また、偏光変換素子122は、光源112からの光を、例えばs偏光のような特定の振動方向を有する偏光にする構成となっている。
【0085】
液晶ライトバルブ115は、ダイクロイックミラー113を透過して反射ミラー123で反射した赤色光を画像信号に応じて変調する透過型の電気光学装置である。液晶ライトバルブ115は、λ/2位相差板115a、第1偏光板115b、電気光学装置100(赤色用液晶パネル100R)、および第2偏光板115dを備えている。ここで、液晶ライトバルブ115に入射する赤色光Rは、ダイクロイックミラー113を透過しても光の偏光は変化しないことから、s偏光のままである。
【0086】
λ/2位相差板115aは、液晶ライトバルブ115に入射したs偏光をp偏光に変換する光学素子である。また、第1偏光板115bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。そして、電気光学装置100(赤色用液晶パネル100R)は、p偏光を画像信号に応じた変調によってs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。さらに、第2偏光板115dは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ115は、画像信号に応じて赤色光Rを変調し、変調した赤色光Rをクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する構成となっている。
【0087】
なお、λ/2位相差板115a、および第1偏光板115bは、偏光を変換させない透光性のガラス板115eに接した状態で配置されており、λ/2位相差板115a、および第1偏光板115bが発熱によって歪むのを回避することができる。
【0088】
液晶ライトバルブ116は、ダイクロイックミラー113で反射した後にダイクロイックミラー114で反射した緑色光Gを画像信号に応じて変調する透過型の電気光学装置である。かかる液晶ライトバルブ116は、液晶ライトバルブ115と同様に、第1偏光板116b、電気光学装置100(緑色用液晶パネル100G)、および第2偏光板116dを備えている。液晶ライトバルブ116に入射する緑色光Gは、ダイクロイックミラー113、114で反射されて入射するs偏光である。第1偏光板116bは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。また、電気光学装置100(緑色用液晶パネル100G)は、s偏光を画像信号に応じた変調によってp偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。そして、第2偏光板116dは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ116は、画像信号に応じて緑色光Gを変調し、変調した緑色光Gをクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する構成となっている。
【0089】
液晶ライトバルブ117は、ダイクロイックミラー113で反射し、ダイクロイックミラー114を透過した後でリレー系120を経た青色光Bを画像信号に応じて変調する透過型の電気光学装置である。かかる液晶ライトバルブ117は、液晶ライトバルブ115、116と同様に、λ/2位相差板117a、第1偏光板117b、電気光学装置100(青色用液晶パネル100B)、および第2偏光板117dを備えている。ここで、液晶ライトバルブ117に入射する青色光Bは、ダイクロイックミラー113で反射してダイクロイックミラー114を透過した後にリレー系120の後述する2つの反射ミラー125a、125bで反射することから、s偏光となっている。
【0090】
λ/2位相差板117aは、液晶ライトバルブ117に入射したs偏光をp偏光に変換する光学素子である。また、第1偏光板117bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。そして、電気光学装置100(青色用液晶パネル100B)は、p偏光を画像信号に応じた変調によってs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。さらに、第2偏光板117dは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ117は、画像信号に応じて青色光Bを変調し、変調した青色光Bをクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する構成となっている。なお、λ/2位相差板117a、および第1偏光板117bは、ガラス板117eに接した状態で配置されている。
【0091】
リレー系120は、リレーレンズ124a、124bと反射ミラー125a、125bとを備えている。リレーレンズ124a、124bは、青色光Bの光路が長いことによる光損失を防止するために設けられている。ここで、リレーレンズ124aは、ダイクロイックミラー114と反射ミラー125aとの間に配置されている。また、リレーレンズ124bは、反射ミラー125a、125bの間に配置されている。反射ミラー125aは、ダイクロイックミラー114を透過してリレーレンズ124aから出射した青色光Bをリレーレンズ124bに向けて反射するように配置されている。また、反射ミラー125bは、リレーレンズ124bから出射した青色光Bを液晶ライトバルブ117に向けて反射するように配置されている。
【0092】
クロスダイクロイックプリズム119は、2つのダイクロイック膜119a、119bをX字型に直交配置した色合成光学系である。ダイクロイック膜119aは青色光Bを反射して緑色光Gを透過する膜であり、ダイクロイック膜119bは赤色光Rを反射して緑色光Gを透過する膜である。従って、クロスダイクロイックプリズム119は、液晶ライトバルブ115〜117の各々で変調された赤色光Rと緑色光Gと青色光Bとを合成し、投射光学系118に向けて出射するように構成されている。
【0093】
なお、液晶ライトバルブ115、117からクロスダイクロイックプリズム119に入射する光はs偏光であり、液晶ライトバルブ116からクロスダイクロイックプリズム119に入射する光はp偏光である。このようにクロスダイクロイックプリズム119に入射する光を異なる種類の偏光としていることで、クロスダイクロイックプリズム119において各液晶ライトバルブ115〜117から入射する光を合成できる。ここで、一般に、ダイクロイック膜119a、119bはs偏光の反射トランジスター特性に優れている。このため、ダイクロイック膜119a、119bで反射される赤色光R、および青色光Bをs偏光とし、ダイクロイック膜119a、119bを透過する緑色光Gをp偏光としている。投射光学系118は、投影レンズ(図示略)を有しており、クロスダイクロイックプリズム119で合成された光をスクリーン111に投射するように構成されている。
【0094】
(投射型表示装置の第2例)
図9(b)に示す投射型表示装置1000は、光源光を発生する光源部1021と、光源部1021から出射された光源光を赤色光R、緑色光G、および青色光Bの3色の色光に分離する色分離導光光学系1023と、色分離導光光学系1023から出射された各色の光源光によって照明される光変調部1025とを有している。また、投射型表示装置1000は、光変調部1025から出射された各色の像光を合成するクロスダイクロイックプリズム1027(合成光学系)と、クロスダイクロイックプリズム1027を経た像光をスクリーン(不図示)に投射する投射光学系1029とを備えている。
【0095】
かかる投射型表示装置1000において、光源部1021は、光源1021aと、一対のフライアイ光学系1021d、1021eと、偏光変換部材1021gと、重畳レンズ1021iとを備えている。本形態においては、光源部1021は、放物面からなるリフレクタ1021fを備えており、平行光を出射する。フライアイ光学系1021d、1021eは、システム光軸と直交する面内にマトリクス状に配置された複数の要素レンズからなり、これらの要素レンズによって光源光を分割して個別に集光・発散させる。偏光変換部材1021gは、フライアイ光学系1021eから出射した光源光を、例えば図面に平行なp偏光成分のみに変換して光路下流側光学系に供給する。重畳レンズ1021iは、偏光変換部材1021gを経た光源光を全体として適宜収束させることにより、光変調部1025に設けた複数の電気光学装置100を各々均一に重畳照明可能とする。
【0096】
色分離導光光学系1023は、クロスダイクロイックミラー1023aと、ダイクロイックミラー1023bと、反射ミラー1023j、1023kとを備える。色分離導光光学系1023において、光源部1021からの略白色の光源光は、クロスダイクロイックミラー1023aに入射する。クロスダイクロイックミラー1023aを構成する一方の第1ダイクロイックミラー1031aで反射された赤色光Rは、反射ミラー1023jで反射されダイクロイックミラー1023bを透過して、入射側偏光板1037r、p偏光を透過させる一方、s偏光を反射するワイヤーグリッド偏光板1032r、および光学補償板1039rを介して、p偏光のまま、電気光学装置100(赤色用液晶パネル100R)に入射する。
【0097】
また、第1ダイクロイックミラー1031aで反射された緑色光Gは、反射ミラー1023jで反射され、その後、ダイクロイックミラー1023bでも反射されて、入射側偏光板1037g、p偏光を透過させる一方、s偏光を反射するワイヤーグリッド偏光板1032g、および光学補償板1039gを介して、p偏光のまま、電気光学装置100(緑色用液晶パネル100G)に入射する。
【0098】
これに対して、クロスダイクロイックミラー1023aを構成する他方の第2ダイクロイックミラー1031bで反射された青色光Bは、反射ミラー1023kで反射されて、入射側偏光板1037b、p偏光を透過する一方、s偏光を反射するワイヤーグリッド偏光板1032b、および光学補償板1039bを介して、p偏光のまま、電気光学装置100(青色用液晶パネル100B)に入射する。なお、光学補償板1039r、1039g、1039bは、電気光学装置100への入射光および出射光の偏光状態を調整することで、液晶層の特性を光学的に補償している。
【0099】
このように構成した投射型表示装置1000では、光学補償板1039r、1039g、1039bを経て入射した3色の光は各々、各電気光学装置100において変調される。その際、電気光学装置100から出射された変調光のうち、s偏光の成分光は、ワイヤーグリッド偏光板1032r、1032g、1032bで反射し、出射側偏光板1038r、1038g、1038bを介してクロスダイクロイックプリズム1027に入射する。クロスダイクロイックプリズム1027には、X字状に交差する第1誘電体多層膜1027aおよび第2誘電体多層膜1027bが形成されており、一方の第1誘電体多層膜1027aは赤色光Rを反射し、他方の第2誘電体多層膜1027bは青色光Bを反射する。従って、3色の光は、クロスダイクロイックプリズム1027において合成され、投射光学系1029に出射される。そして、投射光学系1029は、クロスダイクロイックプリズム1027で合成されたカラーの像光を、所望の倍率でスクリーン(図示せず)に投射する。
【0100】
(他の投射型表示装置)
なお、投射型表示装置については、光源部として、各色の光を出射するLED光源等を用い、かかるLED光源から出射された色光を各々、別の電気光学装置に供給するように構成してもよい。
【0101】
(他の電子機器等)
本発明を適用した電気光学装置100については、上記の電子機器の他にも、携帯電話機、情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)、デジタルカメラ、液晶テレビ、カーナビゲーション装置、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等の電子機器において直視型表示装置として用いてもよい。また、本発明を適用した電気光学装置100については、電子ペーパーとして用いてもよい。
【符号の説明】
【0102】
9a・・画素電極、10・・素子基板、10a・・画像表示領域、10m、20m・・凹部、16・・配向膜、20・・対向基板、21・・共通電極、26・・配向膜、50・・液晶層、100・・電気光学装置、105・・イオン吸着部、107・・シール材、107g・・液晶注入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された一対の基板と、
前記一対の基板を貼り合わせるシール材と、
前記一対の基板の間において前記シール材で囲まれた領域内に設けられた電気光学物質と、
を有する電気光学装置において、
前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板は、前記電気光学物質と接する面に凹状のイオン吸着部を備えていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記一対の基板は、前記電気光学物質が位置する一方面側にスイッチング素子、画素電極および該画素電極の前記電気光学物質側の面側に設けられた無機配向膜を備えた素子基板と、前記電気光学物質が位置する一方面側に無機配向膜を備えた対向基板と、からなり、
前記電気光学物質は、液晶材料であり、
前記イオン吸着部の前記電気光学物質側の面は、前記一対の基板のうち、当該イオン吸着部が形成されている基板に設けられた前記無機配向膜からなることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記イオン吸着部においては、前記一対の基板のうち、当該イオン吸着部が形成されている基板に設けられた前記無機配向膜に対して前記電気光学物質と反対側に凹部が形成され、
当該凹部は、当該無機配向膜の前記電気光学物質側の面に反映されていることを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記凹部は、前記一対の基板のうち、当該凹部が形成されている基板に形成されている絶縁膜に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記凹部は、前記一対の基板のうち、当該凹部が形成されている基板の基板本体に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記イオン吸着部は、少なくとも前記素子基板に設けられていることを特徴とする請求項2乃至5の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記イオン吸着部は、少なくとも前記対向基板に設けられていることを特徴とする請求項2乃至5の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記イオン吸着部は、少なくとも、前記画素電極が設けられた画像表示領域と、前記シール材において液晶注入口が設けられた辺との間に設けられていることを特徴とする請求項2乃至7の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の電気光学装置を備えた投射型表示装置であって、
前記電気光学装置によって変調された光を投射する投射光学系を有していることを特徴とする投射型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−252032(P2012−252032A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122156(P2011−122156)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】