説明

電気光学装置および電子機器

【課題】 有機EL表示装置の製造プロセスを簡略化し、さらに、表示領域の輝度ムラを防止して高輝度の有機EL表示装置および電子機器を提供する。
【解決手段】 スイッチング素子と、スイッチング素子に電気的に接続された第1電極と、第1電極に対向して設けられた第2電極と、第1電極と第2電極との間に設けられた発光層と、少なくとも第1電極、第2電極および発光層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子を含むマトリクス状に配置された複数の画素と、を備える有機エレクトロルミネッセンス装置であって、第1電極に電流を供給するための第1導電部と、第2電極に電流を供給するための第2導電部とを備え、有機エレクトロルミネッセンス素子が、第1導電部および第2導電部の平坦領域に形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電界発光を利用した有機エレクトロルミネッセンス(Electro-Luminescence,以下、ELと略記する)素子は、自己発光のため視認性が高く、かつ耐衝撃性に優れる等の特徴を有することから、各種表示装置における発光素子としての利用が注目されている。有機EL素子は、例えばトップエミッション型有機EL素子の場合、反射性金属膜からなる陽極と、有機発光層を含む機能層と、透明導電膜よりなる陰極とを設けた構造が一般的である。特にEL素子を駆動する薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor,以下、TFTと略記する)等のスイッチング素子を備えたアクティブマトリクス型EL素子において、上記陽極は各TFTに接続された画素電極であり、上記陰極はマトリクス状に配置された複数の画素で共有するベタ状の共通電極である。
上記トップエミッション型有機EL表示装置は、光を均一に発光させるために、TFTやマトリクス状の配線を形成した基板の表面を有機または無機の絶縁層で平坦化し、この平面上に画素電極を形成していた。
しかしながら、(1)平坦化の工程が増える。(2)有機平坦化膜の場合、酸素・水分が平坦化膜を透過して素子特性を劣化させるので、平坦化膜の表面および側面を無機絶縁膜等でカバーする等の対策が必要となる。(3)従来の無機平坦化膜では十分な平坦性が得られない。(4)例えば、インクジェット方式により発光層などの有機層を積層させると、平坦化膜表面に生じた微少な凹凸の影響によって平坦に成膜できず、画素内において均一に発光しない、というような問題があった。
上記課題を解決する技術として、電源線を含む金属部を画素表示部と積層方向に重なる位置に設けることによって、発光層から放射される光を反射させるEL表示装置が開示されている(例えば、特許文献1)。このEL表示装置によれば、画素表示部の下方に配置される電源線は、基板から平坦なパターンを積み重ねて形成される。従って、上記画素電極をこの平坦なパターンからなる電源線の上層に形成することができるため、上述したような平坦化の工程を省略することができる。
【特許文献1】特開2004−6137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述したトップエミッション型EL表示装置では、光を共通電極側から取り出すため、共通電極にはITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜が広く利用されている。しかしながら、ITO等の透明導電膜は、アルミ等の金属と比較して比抵抗が2〜3桁大きく、特に大型ディスプレイを製造した場合には電圧降下が大きくなってしまう。従って、従来から提案されている画素電極に駆動電流を供給する方法、すなわち、補助配線等を使用して画素電極に駆動電流を供給する方法では、それほどITO電極の低抵抗化を図ることができず、EL表示装置の表示領域の中心部と外周部とで発光輝度が異なってしまい、表示品質が低下するという問題があった。さらに、このような問題と並列して上述したような画素電極を形成するための平坦化膜形成という問題も同時に解決しなければならない。
本願発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置のプロセスを簡略化し、さらに、表示領域の輝度ムラを防止して高輝度の有機エレクトロルミネッセンス表示装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するために、スイッチング素子と、前記スイッチング素子に電気的に接続された第1電極と、前記第1電極に対向して設けられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた発光層と、少なくとも前記第1電極、前記第2電極および前記発光層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子を含むマトリクス状に配置された複数の画素と、を備える有機エレクトロルミネッセンス装置であって、前記第1電極に電流を供給するための第1導電部と、前記第2電極に電流を供給するための第2導電部とを備え、前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、前記第1導電部および前記第2導電部の平坦領域に形成されていることを特徴とする。また、前記第1導電部が電源線であり、前記第2導電部が陰極補助配線であることを特徴とする。
【0005】
このような構成によれば、絶縁膜を介して直接的に、第1導電部および第2導電部の上層側に有機エレクトロルミネッセンス素子が形成される。従って、TFT等を形成した基板の表面を有機または無機の絶縁層で平坦化し、この平坦面上に第1電極を形成する工程を省略した場合でも、発光層で均一に発光させることができる。また、平坦化膜形成工程を省略することにより有機平坦化膜を使用する必要がないため、有機平坦化膜を酸素、水分が透過することもなく、表示品質の劣化を抑制することができる。また、第2電極に電流を供給するための第2導電部は、従来より配線幅が広くなるため低抵抗化を図ることができ、これにより有機エレクトロルミネッセンス表示装置の高輝度化を図ることができる。なお、本願発明における画素とは、有機エレクトロルミネッセンスその他スイッチング素子等を含む広い概念で使用している。
【0006】
また、前記第1導電部および前記第2導電部がそれぞれストライプ状に設けられ、前記第1電極の下層側にそれぞれ平面視略平行に配置されていることも好ましい。
このような構成によれば、スイッチング素子および信号線や走査線を避けて形成される第1導電部および第2導電部の上層側は平坦面となる。従って、第1電極は、第1導電部および第2導電部の上層側の平坦面上に設けることができ、画素内の光を均一に発光させることができるとともに、平坦化膜形成工程を省略することができる。また、第2導電部と第1導電部とはストライプ状に設けられているため、第2導電部の配線幅を第1導電部の配線幅とほぼ同じくして設けることも可能である。これにより、第2電極に電流を供給するための第2導電部は、従来より配線幅が広くなるため低抵抗化を図ることができ、例えば、ITOからなる第2電極に対して十分な電流を供給することができる。この結果、表示領域の周辺部と中央部で電圧降下による輝度のばらつきを解消することができ、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の高輝度化を図ることができる。
【0007】
また、前記第1導電部が、前記第2導電部と同層に設けられていることも好ましい。
このような構成によれば、第1導電部が、第2導電部と同層に設けられているため同一行程で同時に形成可能なため、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0008】
また、前記第1電極が、前記各画素内において、前記第1導電部および前記第2導電部のほぼ全面積にわたって設けられることも好ましい。
このような構成によれば、第1電極が各画素内において、第1導電部および第2導電部のほぼ全面積にわたって設けられているため、第1電極の面積を広くすることができる。従って、各画素の開口率(発光面積率)を向上させることができる。この結果、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の高輝度化を図ることができる。
【0009】
また、前記第2導電部と前記第2電極とが、これらの間に介在する絶縁層を貫通するコンタクトホールを介して電気的に接続されることも好ましい。
このような構成によれば、第2導電部と第2電極とがコンタクトホールを介して電気的に接続されているため、第2導電部と第2電極とを異なる層に形成することができるため、設計の自由度が向上する。さらに、金属に比べて比抵抗が大きいITOなどからなる第2電極に対して十分な電流を供給することができる。この結果、表示領域の周辺部と中央部で電圧降下による輝度のばらつきを解消することができ、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の高輝度化を図ることができる。
【0010】
また、前記各画素内において、前記第1導電部と前記第2導電部とに有機エレクトロルミネッセンス素子が分割して設けられ、前記第1導電部と前記第2導電部とに設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子が前記第1電極を共有することも好ましい。
有機EL表示装置の構造上、第1導電部と第2導電部との間には段差部が生じてしまう場合がある。この場合に、第1導電部と第2導電部とにわたって第1電極を形成すると、第1導電部および第2導電部間に段差部があるため、光を均一に発光させることが困難である。本発明の構成によれば、第1導電部と第2導電部との段差部を境界にして有機エレクトロルミネッセンスL素子が分割されて設けられているため、段差部を介さない平坦な有機エレクトロルミネッセンス素子を設けることができる。これにより、光を均一に発光させることができる。
また、ウエットプロセスによって有機層を形成する高分子タイプの有機エレクトロルミネッセンス表示装置の場合には、上記段差部には絶縁膜が形成されることによって有機エレクトロルミネッセンス素子が分割される。そのため、段差部に形成される絶縁膜によって、第1電極および第2電極間でのショートを防止することができる。
また、第1導電部および第2導電部上に形成される有機エレクトロルミネッセンス素子は、第1電極を共有しているため、第1導電部および第2導電部上にそれぞれ設けられた2つの有機エレクトロルミネッセンス素子が、第1電極に接続されている1つの駆動回路により駆動することができる。従って、駆動回路が占める面積を省き、これによって、画素の開口率(発光面積率)の向上を図ることができる。この結果、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の高輝度化を図ることができる。
【0011】
また、前記第1導電部と、前記第2導電部とが互いに積層して設けられ、前記第1電極が、前記第1導電部または前記第2導電部の上層側に設けられていることも好ましい。
このような構成によれば、第1導電部と第2導電部とが平面的に重なって設けられるので、有機エレクトロルミネッセンス装置の構造により、第1導電部と第2導電部とをストライプ状に設けた場合に生じる弊害、すなわち、第1導電部と第2導電部との境界に段差が生じることを回避することができる。従って、第1導電部と第2導電部との境界に段差がないため、段差部を境界として有機エレクトロルミネッセンス素子を分割させる必要がなくなり、第1電極を大面積で形成することができる。よって、画素の開口率(発光面積率)を向上させることができ、有機エレクトロルミネッセンス装置の高輝度化を図ることができる。
【0012】
また、前記第2導電部が隣接する画素ごとに分割して設けられ、前記第1導電部と同層に設けられた中継層を介して隣接する前記画素に分割して設けられた前記第2導電部同士を電気的に接続することも好ましい。
このような構成によれば、隣接する画素間に中継層が設けられているため、外部駆動回
路から供給される電流(電子)は、隣接する画素の第2導電部を次々に経由して第2電極
に到達することができる。そのため、金属に比べて比抵抗が大きいITOなどからなる第
2電極に対して十分な電流を供給することができる。この結果、表示領域の周辺部と中央
部で電圧降下による輝度のばらつきを解消することができ、有機エレクトロルミネッセン
ス表示装置の高輝度化を図ることができる。
【0013】
本発明の電子機器は、上記有機エレクトロルミネッセンス装置を備えることを特徴とす
る。
本発明によれば、上記有機エレクトロルミネッセンス装置を備えることにより、高輝度で、かつ表示品質に優れた電子機器を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の最良の形態である一実施例を図面を参照して説明する。なお、以下の全ての図において、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材の縮尺は実際のものと異なるように表している。また、陰極補助配線107(第2導電部)等については図1においては省略している。
【0015】
図1は、本実施形態の有機EL表示装置の配線構造を示す等価回路図である。
本実施形態の有機EL表示装置1は、図1に示すように、複数の走査線101と、走査線101に対して交差する方向に延びる複数の信号線102と、信号線102に並列に延びる複数の電源線103(第1導電部)とがそれぞれ格子状に配線されている。そして、走査線101と信号線102とにより区画された領域が画素Aとして構成されている。
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオラインおよびアナログスイッチを備えるデータ側駆動回路104が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタおよびレベルシフタを備える走査側駆動回路105が接続されている。
【0016】
各画素Aには、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT112と、このスイッチング用TFT112を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量4と、保持容量4によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT123とが設けられている。さらに、この各画素Aには、上記駆動用TFT123を介して電源線103に電気的に接続したときに当該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極111(第1電極)と、この画素電極に対向して配置された共通電極12(第2電極)と、この画素電極111と共通電極12との間に挟持された機能層110とが設けられている。有機EL表示装置1は、この画素Aがマトリクス状に複数形成されている。
【0017】
この構成によれば、走査線101が駆動されてスイッチング用TFT112がオンになると、そのときの信号線102の電位が保持容量4に保持され、保持容量4の状態に応じて、駆動用TFT123のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT123のチャネルを介して、電源線103から画素電極111に電流が流れ、さらに機能層110を介して共通電極12に電流が流れる。機能層110は、ここを流れる電流量に応じた輝度で発光する。
【0018】
図2は、本実施形態における有機EL表示装置1の平面模式図である。
図2に示すように、有機EL表示装置1は、大型の支持基板180上に、互いに隣接して配置された複数の基板2を備えている。支持基板180は、複数の基板2を一体に支持する基板である。図2では、4枚の基板2を2行×2列に配置しているが、基板2の枚数はこれに限定されず、少なくとも2枚以上の基板2を備えていればよい。上記各基板2は、基板2上に設けられた表示領域50と、この表示領域50の周縁部に配置されるデータ側駆動回路104および走査側駆動回路105等を備えており、表示領域50には、平面視マトリクス状に配列された複数の画素Aが形成されている。また、データ側駆動回路104および走査側駆動回路105は、上記走査線101、信号線102等を介して各画素Aを構成するスイッチング用TFT112等に電気的に接続されている。本実施形態においては、図2に示すように、4つの表示領域50により有機EL表示装置1の画像表示部115を形成している。
【0019】
なお、図2では、図面を見易くするために基板2同士の境界70a、70b近傍の各表示領域50間の間隙を広く図示しているが、実際には、70a、70bの介して隣接する画素A間の間隔は極めて狭い幅になっており、また必要に応じて遮光処理等の境界を目立たなくする処理を施している。
また、本実施形態では各基板2にデータ側駆動回路104および走査側駆動回路105が備えられている構成としているが、基板2間の境界70a、70bにおいて相互の配線を接続することにより、少ない数のデータ側駆動回路104および走査側駆動回路105によって複数の画素Aを駆動可能に構成することもできる。
【0020】
図3は、発光表示領域を構成する各画素の概略構成を示す平面図である。
図3に示すように、R(赤)、G(緑)、B(青)の3原色の後述する表示素子部(有機EL素子)を備える各画素Aが平面視ストライプ状に配置され、図中横方向に反復して配置されている(図3では3つの画素Aのみを図示する)。また、図中縦方向には、R(赤)、G(緑)、B(青)のそれぞれの同一色に対応する画素Aが配列されている。本実施形態においては、R(赤)の表示素子部を備える画素Aについて説明するが、その他の画素Aについては、上記R(赤)の表示素子部を備える画素Aと同様の構成を採用するため説明は省略する。また、画素Aの理解を容易とするため、図3においては有機機能発光層、共通電極等の図示は省略している。
【0021】
図3に示すように、信号線102、電源線103および陰極補助配線107が互いに平行して図中縦方向に延在して配置され、これらと直交するように走査線101が配置されている。そして、信号線102と走査線101との交差する点に対応してスイッチング用TFT112が設けられており、このスイッチング用TFT112に駆動用TFT123および保持容量4が接続されている。
電源線103と陰極補助配線107とは、平面視ストライプ状に図中縦方向に延在して配置され、上記スイッチング用TFT112、駆動用TFT123、その他の配線が配置されている領域を除いて画素A全域にわたって形成されている。ここで、電源線103および陰極補助配線107は、ほぼ同じ配線幅に形成されている。電源線103は、隣接して配置されている駆動用TFT123のソース領域に接続され、駆動用TFT123のスイッチがオン状態となると画素電極111に電流を供給するようになっている。また、陰極補助配線107は、後述する共通電極12(第2電極)にコンタクトホール30を介して接続され、共通電極12に電流(電子)を供給するようになっている。
【0022】
スイッチング用TFT112は、走査線101から延出されたゲート電極15aと、延出されたゲート電極15aの下層側に形成され、延出されたゲート電極15aにゲート絶縁膜35を挟んで対向して形成されたチャネル領域を有する半導体層20と、この半導体層20の両側に形成されたソース領域とドレイン領域とを有している。
駆動用TFT123は、後述する保持容量を構成する第1容量電極15から延出されたゲート電極15aと、延出されたゲート電極15aの下層側に形成され、延出されたゲート電極15aにゲートにゲート絶縁膜15aをはさんで対向して形成されたチャネル領域を有する半導体層25と、この半導体層25の両側に形成されたソース領域とドレイン領域とを有している。また、駆動用TFT123のゲート電極15aを構成する第1容量電極15は、電源線103とほぼ同じ配線幅で電源線103の下層側に矩形形状に形成されている。また、駆動用TFT123の半導体層25から延出して形成される第2容量電極16は、上記第1容量電極15とほぼ同じ面積の矩形形状から形成され、第1容量電極15の下層側に絶縁膜を介して対向して配置されている。第1容量電極15とこの第1容量電極15の積層方向に対向して形成される第2容量電極16とにより保持容量4を構成している。
【0023】
また、上記スイッチング用TFT112の半導体層20のソース領域は、コンタクトホール21を介して信号線102に接続されている。一方、スイッチング用TFT112の半導体層20のドレイン領域は、コンタクトホール22を介して第1中継導電層23に接続されている。第1中継導電層23は、コンタクトホール29を介して後述する第1容量電極15から延在する駆動用TFT123のゲート電極15aに接続されている。
また、駆動用TFT123の半導体層25のソース領域は、コンタクトホール26を介して電源線103に接続されている。一方、駆動用TFT123の半導体層25のドレイン領域は、コンタクトホール27を介して第2中継導電層24に接続されている。
【0024】
さらに、画素電極111は、コンタクトホール28を介して第2中継導電層24に接続され、駆動用TFT123がオン状態となることにより、電源線103から画素電極111に電流が供給されるようになっている。この画素電極111は、画素A内に配線された電源線103および陰極補助配線107の上層側の全面に矩形形状に形成されている。
バンク7は、後述するように第1バンク層7aと第2バンク層7bとから構成されている。バンク7は、画素電極111の周縁部および電源線103と陰極補助配線107との境界部に形成され、画素Aが2つの表示素子部に分割されている。このバンク7は、2つの表示素子部の開口部が図中縦方向に長円形状となるようにパターン形成されている。
【0025】
次に、本実施形態の有機EL表示装置1の断面構造について図4(a)、(b)を参照して説明する。
図4(a)は、図3の有機EL表示装置のA−A’に沿った断面図である。図4(a)に示すように、本実施形態の有機EL表示装置1は、基板2上に回路素子部14と表示素子部10が順に積層され、この積層体の形成された基板面が封止部によって封止された構造を有する。表示素子部10は、画素電極111と、画素電極111上に積層された有機機能層Yと、有機機能層Y上に形成された共通電極12とからなる。共通電極12および封止部は透光性を有しており、本実施形態の有機EL表示装置1は、発光層から発した表示光が封止部側から出射される、いわゆるトップエミッション型の有機EL表示装置1として構成されている。
【0026】
詳細には、図4(a)に示すように、基板2上に、シリコン酸化膜等からなる第1保護膜31、半導体層25、保持容量4を構成する第2容量電極16およびゲート絶縁膜35が積層されている。ここで、本実施形態においては、有機EL表示装置1はトップエミッション型を採用しているため、基板2には、透明基板、半透明基板、不透明基板のいずれを用いることもできる。透明または半透明な基板としては、例えばガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等が挙げられる。不透明な基板としては、例えばアルミナ等のセラミックやステンレススチール等の金属シートに表面酸化等の絶縁処理を施したものの他、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0027】
第1保護膜31上には、シリコン等の半導体材料の薄膜を所定形状にパターニングしてなる半導体層25および第2容量電極16が同層に平坦に形成され、これらを覆ってシリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜35が形成されている。ここで、半導体層25は駆動用TFT123を構成しドレイン領域、ソース領域およびチャネル領域を有する。
ゲート絶縁膜35上には、半導体層25に対向して形成されるゲート電極15aと第2容量電極16に対向して形成される第1容量電極15とが同層に平坦に形成されている。第1絶縁膜36は、ゲート電極15aと第1容量電極15とを覆って形成されている。そして、コンタクトホール26、27は、第1絶縁膜36およびゲート絶縁膜35を貫通して半導体層25に到達し、半導体層25表面を露出させるようにして形成されている。
【0028】
電源線103は、第1容量電極15上に第1絶縁膜36を介して平坦に形成され、コンタクトホール26を介して駆動用TFT123の半導体層25のソース領域に電気的に接続されている。ここで、電源線103の配線幅は、第1容量電極15とほぼ同じ配線幅であり、第1容量電極15の位置に重なるように平坦面に形成されている。電源線103は、例えばアルミニウム(Al)、クロム(Cr)またはタンタル(Tr)等の金属から構成されている。また、第2中継導電層24は、電源線103と同層に形成され、さらに、電源線103と同様の金属等から構成され、コンタクトホール27を介して画素電極111に電気的に接続されている(不図示)。
【0029】
陰極補助配線107は、電源線103と同層に隣接して平坦に形成され、陰極補助配線107の配線幅は電源線103とほぼ同じ配線幅で形成されている。陰極補助配線107は、低抵抗の導電材料を使用するのが好ましく、例えばクロム(Cr)/金(Au)、チタン(Ti)/銅(Cu)/窒化チタン(TiN)等の金属から構成されている。なお、本実施形態では、陰極補助配線107は電源線103と同層に形成されているが、陰極補助配線107が形成されている領域の下層には上記第1容量電極15等が形成されていないため、これらの境界には段差が生じている。
【0030】
第2絶縁膜37は、電源線103、陰極補助配線107および信号線102等を覆って形成され、電源線103および陰極補助配線107上は段差部を除いた領域が平坦に形成されている。
画素電極111は、電源線103および陰極補助配線107上の平坦面に第2絶縁膜37を介して形成され、電源線103と陰極補助配線107との段差部を除く領域以外は平坦面となっている。画素電極111は、例えばアルミニウム、銀等の光反射性の高い金属等から構成され、正孔を有機機能層Yに注入する機能を有している。なお、上記電源線103および陰極補助配線107の材料に光反射性の高い金属を使用した場合には、画素電極111の材料にITO等の透明導電膜を使用することも好ましい。
バンク7を構成する第1バンク層7aは、画素電極111の開口部が長円形状となるように、画素電極111の周縁部から画素電極111が形成されていない第2絶縁膜37上にわたって形成されている。さらに、第1バンク層7aは、電源線103と陰極補助配線107との段差部上に形成され、電源線103および陰極補助配線107との段差部を境界として、それぞれの表示素子部10に対応した長円形状の開口部を形成するとともに、1画素Aを2つの表示素子部10に分割している。
【0031】
そして、バンク7を構成する第2バンク層7bは、上述したように画素電極111の周縁部に一部重なるようにして第1バンク層7a上に形成されている。さらに、第2バンク層7bは、電源線103と陰極補助配線107との段差部上に形成された第1バンク層7a上に形成され、1画素Aを2つの表示素子部10に分割している。バンク7は、例えば、有機機能層Yから発光された光を遮断または抑制させるような材料により形成することが好ましい。例えば、第1バンク層7aの材料としてはSiO、TiO、SiN等を用いることが好ましく、また、第2バンク層7bの材料としてはアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等を用いることが好ましい。なお、バンク7は、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等からなる単層から構成されることも好ましい。
【0032】
バンク7間の凹部となっている領域の画素電極111上には、有機機能層Yが積層され
ている。有機機能層Yは、画素電極111上に積層された正孔注入/輸送層61と、正孔注入/輸送層上に形成された発光層62とから構成されている。正孔注入/輸送層61は、例えばポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸等の混合物を用いることができる。また、発光層62は、赤色(R)に発光する赤色発光層、緑色(G)に発光する緑色発光層、および青色(B)に発光する青色発光層の3種類を有し、各色の発光層62がストライプ配置されている。この発光層62の材料としては、赤色発光層としてシアノピリフェニレンビニレン、緑色発光層および青色発光層としてポリフェニレンビニレンなどを用いることができる。
【0033】
共通電極12は、有機機能層Yおよびバンク7上を含む領域の全面を覆って形成され、上記画素電極111の対向電極として、電子を有機機能層Yに注入する機能を有している。また、共通電極12は、有機機能層Y上に形成されたバソフェンセシウム等からなる電子注入層と、本実施形態ではトップエミッション型の有機EL装置1を採用し、発光した光を共通電極12側から取り出す必要ため、電子注入層の上層にはITO等の透明導電膜とを備える2層構造となっている。共通電極12の上層は、酸素や水分の浸入を防止するための有機または/および無機の透明封止膜43で覆われ、さらに接着層44を介してカバーガラス45が設けられている。
【0034】
図4(b)は、図3の有機EL表示装置のB−B’に沿った断面図である。なお、上記図4(a)と同様の構成部分については説明を省略する。
図4(b)に示すように、基板2上に、第1保護膜31、第2容量電極16、ゲート絶縁膜35、第1容量電極15、第1絶縁膜36が積層されている。そして、この第1絶縁膜36上の同層には、電源線103、陰極補助配線107が形成され、これらを覆って第2絶縁膜37が形成されている。また、第2絶縁層37上には、画素電極111、バンク7が積層されている。
【0035】
図4(a)のA−A’断面領域で、駆動用TFT123が形成されていた領域に、図4(b)のB−B’断面領域では、第2絶縁層37およびバンク7を貫通して陰極補助配線107に到達するコンタクトホール30が形成されている。また、図4(b)のB−B’断面領域では、陰極補助配線107の配線幅が他の部分と比較して広く形成され、コンタクトホール30の下層にまで延在し、陰極補助配線107と共通電極12とを電気的に接続するようになっている。
【0036】
本実施形態によれば、画素電極111が、電源線103および陰極補助配線107の上層側に電源線103および陰極補助配線107と平面的に重なるように設けられている。すなわち、第1絶縁膜36を介して直接的に、電源線103および陰極補助配線107の上層側に画素電極111が形成される。従って、従来のように発光層から光を均一に発光させるためにTFT等を形成した基板の表面を有機または無機の絶縁層で平坦化し、この平坦面上に画素電極111を形成する工程を省略することができる。また、平坦化膜形成工程を省略することにより有機平坦化膜を使用する必要がないため、有機平坦化膜を酸素、水分が透過することもなく、表示品質の劣化を抑制することができる。
【0037】
また、本実施例によれば、電源線103および陰極補助配線107は、ストライプ状に略平行に設けられているため、電源線103および陰極補助配線107の上層側は平坦面となる。従って、画素電極111は、電源線103および陰極補助配線107の上層側の平坦面上に設けることができ、画素A内の光を均一に発光させることができるとともに、平坦化膜形成工程を省略することができる。
また、ウエットプロセスによって有機機能層Yを形成する高分子タイプの有機EL表示装置1の場合には、上記段差部には第1バンク層7aが形成されることによって表示素子部10が分割される。そのため、段差部によって形成される第1バンク層7aによって、画素電極111と共通電極12のショートを防止することができる。
また、電源線103および陰極補助配線107は、画素電極111を共有しているため、電源線103および陰極補助配線107にそれぞれ設けられた2つの表示素子部10を、画素電極111に接続されている1つの駆動回路により駆動することができる。従って、駆動回路の省スペース化を図ることができ、これによって、画素の開口率(発光面積率)の向上を図ることができる。この結果、有機EL表示装置の高輝度化を図ることができる。
さらに、陰極補助配線107と電源線103とはストライプ状に設けられているため、陰極補助配線107の配線幅を電源線103の配線幅とほぼ同じくして設けることも可能である。これにより、共通電極12に電流(電子)を供給する陰極補助配線107は、従来より配線幅が広くなるため低抵抗化でき、ITOからなる共通電極12に対して十分な電流を供給することができる。この結果、表示領域の周辺部と中央部で電圧降下による輝度のばらつきを解消することができ、有機EL表示装置1の高輝度化と表示品質の向上を図ることができる。
【0038】
[第2の実施の形態]
以下、本実施形態について図5、図6を参照して説明する。
上記第1の実施形態においては電源線103と陰極補助配線107と同層に形成されていた。これに対して、本実施形態においては、電源線103と陰極補助配線107とが異なる層に形成されている点において異なる。その他の有機EL表示装置1の基本構成は第1の実施形態と同様であり、共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0039】
図5は、発光表示領域を構成する各画素Aの概略構成を示す平面図である。図5に示すように、R(赤)、G(緑)、B(青)の3原色の表示素子部10を備える各画素Aが平面視ストライプ状に配置されている。
図5に示すように、電源線103、陰極補助配線107および信号線102が互いに平行して図中縦方向に延在して配置され、これらと直交するように図中下側に走査線101が配置されている。そして、走査線101と信号線102との交差する点に対応してスイッチング用TFT112が設けられており、このスイッチング用TFT112に駆動用TFT123および保持容量4が接続されている。第1の実施形態と異なる点は、スイッチング用TFT112、駆動用TFT123等が画素Aの図中下側に配置されている点である。
【0040】
次に、本実施形態の有機EL表示装置1の断面構造について図6(a)、(b)を参照して説明する。
図6(a)は、図5の有機EL表示装置のC−C’に沿った断面図である。図6(a)に示すように、基板2上に、第1保護膜31、保持容量4を構成する第2容量電極16、ゲート絶縁膜35、保持容量4を構成する第1容量電極15、第1絶縁膜36が積層されている。そして、第1絶縁膜36上には、第1容量電極15の配線幅とほぼ等しく、かつ第1容量電極15の位置と重なるようにして電源線103が形成され、これらを覆って第2絶縁膜37が形成されている。
【0041】
第2絶縁膜37上には、陰極補助配線107が平坦に形成され、陰極補助配線107を含む全面を覆って第3絶縁膜38が形成されている。ここで、陰極補助配線107は、上記電源線103とは異なる層に形成され、電源線103が形成された位置とは重ならない領域に形成されている。第3絶縁膜38上には、下層側に平面視ストライプ状に形成されている電源線103と陰極補助配線107とに重なるように画素電極111が平坦に形成されている。バンク7は、画素電極111の開口部が矩形形状となるように、画素電極111の周縁部から画素電極111が形成されていない第3絶縁膜38上に形成されている。さらに、バンク7は、電源線103と陰極補助配線107との段差部上に形成され、電源線103および陰極補助配線107との段差部を境界として、それぞれに対応した矩形形状の開口部を形成するとともに、1画素Aを2つの表示素子部10に分割している。画素電極111およびバンク7上には、有機機能層Y、共通電極12、透明封止膜43、接着層44、カバーガラス45が積層されている。なお、バンク7は、上記第1の実施形態において説明したように、第1バンク層7aとこの第1バンク層7a上に形成される第2バンク層7bとから構成されている。
【0042】
図6(b)は、図3の有機EL表示装置のD−D’に沿った断面図である。なお、上記図6(a)と同様の構成部分については説明を省略する。
図6(b)に示すように、基板2上に第1保護膜31、シリコン等の半導体材料の薄膜を所定形状にパターニングしてなる駆動用TFT123の半導体層25、ゲート絶縁膜35が積層されている。駆動用TFT123のゲート電極15aは、ゲート絶縁膜35を介して半導体層25に対向して形成され、ゲート電極15aを含む全面を覆って第1絶縁膜36が形成されている。ここで、半導体層25は、ドレイン領域、チャネル領域およびソース領域を有する。そして、コンタクトホール26、27は、第1絶縁膜36およびゲート絶縁膜35を貫通して半導体層25に到達し、半導体層25表面を露出させるようにして形成されている。
【0043】
電源線103は第1絶縁膜36上に形成され、コンタクトホール26を介して駆動用TFT123のソース領域に電気的に接続されている。また、電源線103と同層に形成される第2中継導電層24は、コンタクトホール27を介して駆動用TFT123のドレイン領域に接続されている。そして、これらを覆って第2絶縁膜37が形成され、第2絶縁膜37上には陰極補助配線107が形成されている。コンタクトホール28aは、第2絶縁膜37を貫通して第2中継導電層24に到達し、第2中継導電層24表面を露出させるようにして形成され、コンタクトホール28a内部には、陰極補助配線107の一部が充填されている。コンタクトホール28aの周縁部には第2絶縁膜37が形成され、コンタクトホール28aに充填されている陰極補助配線107とコンタクトホール28aの周縁部に形成されている陰極補助配線107とを絶縁している。第3絶縁膜38は陰極補助配線107を覆って形成されている。
【0044】
コンタクトホール28bは、第3絶縁膜38を貫通して、上記コンタクトホール28aに充填された陰極補助配線107の一部に到達している。そして、画素電極111は、コンタクトホール28bを介して、陰極補助配線107の一部に接続され、この陰極補助配線107の一部を中継層にして第2中継導電層24に電気的に接続されている。
【0045】
コンタクトホール30は、第3絶縁膜38を貫通して陰極補助配線107に到達し、陰極補助配線107表面を露出させるようにして形成されている。そして、画素電極111と同層の導電層334は、コンタクトホール30を介して陰極補助配線107に電気的に接続され、さらに、バンク7を貫通するコンタクトホール30が、画素電極111と同層の導電層334を露出させるように形成されている。この画素電極111と同層の導電層334およびバンク7全面に共通電極12が形成され、共通電極12と陰極補助配線107とが電気的に接続されている。
【0046】
このように、上記第1の実施形態においては、電源線103と陰極補助配線107とはともに第2層目に形成されていたが、本実施形態においては、電源線103は第2層目に、陰極補助配線107は第3層目に形成されている点において異なる。すなわち、本実施形態では、電源線103と陰極補助配線107とは異なる層に形成されている。
本実施形態によれば、スイッチング用TFT112および駆動用TFT123を、陰極補助配線107の下層側に配置することができるため設計の自由度が向上する。また図5では、発光領域の面積がそれほど大きく見えないが、実際は配線やTFTの配置を最適化することによって、発光領域を広げることが可能である。
【0047】
[第3の実施の形態]
以下、本実施形態について図7、図8を参照して説明する。
上記第1の実施形態においては、電源線103と陰極補助配線107とが同層かつストライプ状に形成されていた。これに対して、本実施形態においては、電源線103が陰極補助配線107に重なるようにして異なる層に形成されている点において異なる。なお、その他の有機EL表示装置1の基本構成は第1の実施形態と同様であり、共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0048】
図7は、発光表示領域を構成する各画素の概略構成を示す平面図である。
図7に示すように、R(赤)、G(緑)、B(青)の3原色の表示素子部10を備える各画素Aが平面視ストライプ状に配置されている。信号線102、電源線103および陰極補助配線107が互いに平行して図中縦方向に延在して配置され、これらと直交するように走査線101が配置されている。そして、信号線102と走査線101との交差する点に対応してスイッチング用TFT112が設けられており、このスイッチング用TFT112に駆動用TFT123および保持容量4が接続されている。
【0049】
また、図7に示すように、電源線103は、スイッチング用TFT112、駆動用TFT123および保持容量4等が形成されている領域を除いて、画素A全域に矩形形状に形成され、駆動用TFT123の半導体層25のソース領域に接続されている。陰極補助配線107は、電源線103の下層側に形成され、上記電源線103とほぼ同じ面積で矩形形状に形成されている。すなわち、本実施形態においては、電源線103と陰極補助配線107とは異なる層に形成され、さらに、電源線103と陰極補助配線107とが第1絶縁膜36を介して互いに重なって平坦に形成されている。
【0050】
また、陰極補助配線107は、本実施形態では配線という文言を使用しているが、1画素Aごとに分離して、電源線103の下層側に重なって矩形形状に形成されている。そのため、電流を図中縦方向に隣接して配列されている画素A(不図示)に電流を流すため、陰極補助配線107は、複数のコンタクトホール41を介して第3中継層19に接続されている。そして、第3中継層19は、図中縦方向に隣接して配列されている画素A(不図示)の陰極補助配線107にコンタクトホール41を介して接続され、隣接する画素A間の陰極補助配線107同士が電気的に接続されている。また、陰極補助配線107は、コンタクトホール30を介して共通電極12(不図示)に電気的に接続されている。
【0051】
第1容量電極15および第2容量電極16は、電源線103および陰極補助配線107が互いに積層して形成されているため、駆動用TFT123の図中下方側に形成されている。そして、画素電極111は、絶縁膜を介して電源線103上に、駆動用TFT123および配線等を除く領域全面に矩形形状により形成されている。また、画素電極111は、コンタクトホール28を介して第2中継導電層24に接続されている。バンク7(隔壁)は、画素電極111の周縁部に一部重なるようにして形成されている。なお、バンク7は、上記第1および第2の実施形態において説明したように、第1バンク層7aとこの第1バンク層7a上に形成される第2バンク層7bとから構成されている。
【0052】
次に、本実施形態の有機EL表示装置1の断面構造について図8を参照して説明する。
図8は、図7の有機EL表示装置のE−E’に沿った断面図である。図8に示すように、基板2上に、第1保護膜31、第2容量電極16、ゲート絶縁膜35が積層されている。第1容量電極15は、ゲート絶縁膜35を介して第2容量電極16と対向して形成され、第1容量電極15と第2容量電極16とで保持容量4を構成している。陰極補助配線107は、第1容量電極15と同層に形成され、第2容量電極16を除くほぼ全域に平坦に形成されている。第1絶縁膜36は、陰極補助配線107を含む第1配線層上を覆って形成されている。電源線103は、第1絶縁膜36を介して陰極補助配線107に対向して形成され、陰極補助配線107とほぼ同じ配線幅で画素A全域に平坦に形成されている。画素電極111は、平坦に形成された電源線103上に第2絶縁膜37を介して、電源線103に重なるようにして形成されている。第1バンク層7aと第2バンク層7bとから構成されるバンク7は、画素電極111の開口部が矩形形状となるように、画素電極111の周縁部から画素電極111が形成されていない第2絶縁膜37に形成されている。
【0053】
本実施形態によれば、電源線103と陰極補助配線107とが平面的に重なって設けられるので、有機EL表示装置1の構造により、電源線103と陰極補助配線107とをストライプ状に設けた場合に生じる弊害、すなわち、電源線103と陰極補助配線107との境界に段差が生じることを回避することができる。従って、電源線103を陰極補助配線107上に積層しているため、段差部を介さない平坦な領域を形成することができる。その結果、電源線103と陰極補助配線107との境界に段差部がないため、段差部を境界として表示素子部10を分割させる必要がなくなり、画素電極111を大きな面積で形成することができる。よって、画素Aの開口率(発光面積率)を向上させることができ、有機EL表示装置1の高輝度化を図ることができる。
【0054】
[電子機器]
以下、本発明の上記実施形態の有機EL表示装置を備えた電子機器の具体例について説明する。
図9は、有機ELテレビジョン1200の一例を示した斜視図である。図9において、符号1202はテレビジョン本体、符号1203はスピーカーを示し、符号1201は上記有機EL表示装置を用いた表示部を示している。なお、上述した有機EL表示装置1は、上記有機ELテレビジョン以外にも種々の電子機器に適用することができる。例えば、プロジェクタ、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)およびエンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、ビューファインダ型またはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置などの電子機器に適用することが可能である。
【0055】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば上記実施形態で用いた共通陰極用配線の平面形状、材料、共通電極用コンタクトホールの配置等の具体的な構成は適宜変更が可能である。さらに、R(赤)、G(緑)、B(青)の各発光層をストライプ配置した場合について説明したが、本発明はこれに限られず、さまざまな配置構造を採用することができる。例えばストライプ配置の他、モザイク配置や、デルタ配置とすることもできる。また、上記実施形態では、フルカラーを実現する原理として3色発光法を使用したが、フィルタ法(白色法)、色変換法等の種々の方法によりフルカラーを実現することも可能である。
また、本実施形態では、電源線103および陰極補助配線107の配線幅をほぼ同じくして形成したが、電源線103および陰極補助配線107の配線幅の比率を適宜変更して形成する可能である。
また、本実施形態では画素電極111に反射率が高い材料を使用したが、反射率が低い材料を使用した場合でも、反射防止光学フィルターを省略してパネル輝度を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の有機EL表示装置の等価回路図である。
【図2】第1実施形態の有機EL表示装置の概略構成を示す平面図である。
【図3】同、有機EL表示装置のRGB画素のパターンを示す平面図である。
【図4】(a)は図3のA−A‘線に沿う断面図、(b)は図3のB−B‘に沿う断面図である。
【図5】第2実施形態の有機EL表示装置の概略構成を示す平面図である。
【図6】(a)は図5のC−C‘線に沿う断面図、(b)は図5のD−D‘に沿う断面図である。
【図7】第3実施形態の有機EL表示装置の概略構成を示す平面図である。
【図8】図7のE−E‘線に沿う断面図である。
【図9】本発明の電子機器の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1…有機EL表示装置、 10…表示素子部(有機EL素子)、 12…共通電極(第2電極)、 103…電源線(第1導電部)、 107…陰極補助配線(第2導電部)、 111…画素電極(第1電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子と、前記スイッチング素子に電気的に接続された第1電極と、前記第1電極に対向して設けられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた発光層と、少なくとも前記第1電極、前記第2電極および前記発光層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子を含むマトリクス状に配置された複数の画素と、を備える有機エレクトロルミネッセンス装置であって、
前記第1電極に電流を供給するための第1導電部と、前記第2電極に電流を供給するための第2導電部とを備え、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、前記第1導電部および前記第2導電部の平坦領域に形成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項2】
前記第1導電部が電源線であり、前記第2導電部が陰極補助配線であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項3】
前記第1導電部および前記第2導電部がそれぞれストライプ状に設けられ、前記第1電極の下層側にそれぞれ平面視略平行に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
前記第1導電部が、前記第2導電部と同層に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項5】
前記第1電極が、前記各画素内において、前記第1導電部および前記第2導電部のほぼ全面積にわたって設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項6】
前記第2導電部と前記第2電極とが、これらの間に介在する絶縁層を貫通するコンタクトホールを介して電気的に接続されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項7】
前記各画素内において、前記第1導電部と前記第2導電部とに前記有機エレクトロルミネッセンス素子が分割して設けられ、前記第1導電部と前記第2導電部とに設けられた前記有機エレクトロルミネッセンス素子が前記第1電極を共有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項8】
前記第1導電部と、前記第2導電部とが互いに積層して設けられ、
前記第1電極が、前記第1導電部または前記第2導電部の上層側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項9】
前記第2導電部が隣接する画素ごとに分割して設けられ、前記第1導電部と同層に設けられた中継層を介して隣接する前記画素に分割して設けられた前記第2導電部同士を電気的に接続することを特徴とする請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−11059(P2006−11059A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188347(P2004−188347)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】