説明

電気光学装置および電子機器

【課題】タッチパネル付きで薄さとフレキシブル性とを備えつつ、耐屈曲性を有しかつ信頼性の高い電気光学装置を提供すること。
【解決手段】有機EL装置1は、素子基板20と封止基板30との間に挟持された有機発光層26と、有機発光層26から光が射出される側の表示面30aと、表示面30aとは反対側の背面20aとを有する有機ELパネル2と、有機ELパネル2の背面20a側に、有機ELパネル2に平面的に重なるように設けられたタッチパネル60と、有機ELパネル2とタッチパネル60とを覆うように設けられた樹脂層51,52,57と、樹脂層51を介して表示面30aに対向配置された光透過性を有する光学フィルム53と、有機ELパネル2の表示面30a側に配置された補強層58と、樹脂層52を介してタッチパネル60に対向配置された補強層56と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネセンス装置(以下有機EL装置と呼ぶ)は、薄型、軽量な自発光デバイスであり、有機EL装置をより薄型化するとともに可撓性を持たせることで様々な電子機器等への応用が期待されている。このような有機EL装置を他のデバイス等と組み合わせることで、多様な機能を持たせることも可能である。
【0003】
携帯電話等の電子機器の入力装置として、有機ELパネル(EL素子)の背面側にタッチパネルを備え、有機ELパネルを介してタッチパネルの上下電極を接触させる電気光学装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載された電気光学装置では、有機ELパネルの基板としてポリイミド等のフィルムを用いることにより可撓性を持たせる構成となっている。
【0004】
また、電気光学装置をより薄型化するとともに可撓性を持たせる方法として、水分に対する封止性能が高いガラス基板を薄型化して用いた液晶パネルをラミネートフィルムで挟んで一体化した電気光学装置の構成が提案されている(例えば特許文献2参照)。特許文献2には、有機ELパネルを用いた有機EL装置にも同様の構造を適用可能であると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−63413号公報
【特許文献2】特許第4131639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、有機EL装置では、有機ELパネルが水分により劣化するため、液晶パネル等に比べて格段に高い封止性能が要求される。特許文献1に記載された電気光学装置の構成では、有機ELパネルを水分から封止する構造についてはなんら記載されていない。また、ガラスに比べて水分に対する封止性能が低いポリイミド等のフィルムが有機ELパネルの基板として用いられている。このため、電気光学装置内に水分が浸入した場合有機ELパネルが劣化し寿命が低下してしまうという課題があった。さらに、可撓性を有する有機EL装置では、手で持って屈曲するような使用形態が想定され、背面部を触ることでタッチパネルの誤動作等が起こる可能性があるが、このような誤動作の防止については考慮されていないという課題があった。
【0007】
特許文献2に記載された電気光学装置の構成では、ガラス基板の表面に樹脂フィルムを貼り付けて補強されているものの、点加重や屈曲等の外部応力が加えられると、樹脂フィルムがガラス基板と一緒にガラス基板の限界点(限界半径)まで容易に曲がってしまい、薄型化されたガラス基板がクラックや割れ等の損傷を受けるおそれがあるという課題があった。このため、通常の外部応力の他に入力操作時の点加重を受けるタッチパネルを備えた電気光学装置には、特許文献2に記載された構成を適用することは困難であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]本適用例に係る電気光学装置は、一対のガラス基板間に挟持された電気光学層と、前記電気光学層から光が射出される側の第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面と、を有する電気光学パネルと、前記電気光学パネルの前記第2の面側に、前記電気光学パネルに平面的に重なるように設けられたタッチパネルと、前記電気光学パネルと前記タッチパネルとを覆うように設けられた樹脂層と、前記樹脂層を介して前記第1の面に対向配置された光透過性を有する第1の表面層と、前記樹脂層を介して前記タッチパネルに対向配置された第2の表面層と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、第1の表面層の表面を指先やタッチペン等で押圧操作することで加えられる点加重により、電気光学パネルを撓ませることでタッチパネルへの入力操作を行うことができる。また、電気光学装置を手で持った場合、第1の表面層とは異なる材質の第2の表面層が、背面側の接触による圧力加重や音響波を減衰させることでタッチパネルの誤動作が抑えられる。電気光学パネルはタッチパネルとともに周囲を樹脂層で覆われ封止されるため、外部から電気光学パネルへの水分の浸入が抑えられる。
【0011】
また、電気光学パネルおよびタッチパネルが第1の表面層と第2の表面層との間に樹脂層を介して一体化され補強されるため、屈曲等の外部応力に対して電気光学パネルがガラス基板の限界点まで曲がりにくくなるのでガラス基板の損傷が抑えられる。さらに、タッチパネルへの入力操作の際に電気光学パネルが撓んでも、タッチパネルへの入力面とは反対側に設けられた第2の表面層により、電気光学パネルがガラス基板の限界点まで曲がりにくくなるのでガラス基板の損傷が抑えられる。これにより、タッチパネル付きで薄さとフレキシブル性とを備えつつ耐屈曲性を有し、かつ信頼性の高い電気光学装置を提供することができる。
【0012】
[適用例2]上記適用例に係る電気光学装置であって、前記第1の面上には、前記第1の面を覆うように光透過性を有する保護層が設けられていてもよい。
【0013】
この構成によれば、タッチペン等で押圧操作される側の第1の面上に保護層が設けられているので、電気光学パネルに点加重や屈曲等の外部応力が加えられても第1の面にクラック等が発生することが抑えられる。また、このため、第1の表面層をより薄くできるので、タッチパネルの入力感度を高めることができる。
【0014】
[適用例3]上記適用例に係る電気光学装置であって、前記保護層のヤング率は、100GPa以上であってもよい。
【0015】
この構成によれば、保護層のヤング率はガラスのヤング率よりも高い。このため、入力操作の際の点加重によりガラス基板の表面に加えられる引張り応力が緩和されるとともに、外部応力に対してガラス基板の限界点まで曲がることが抑えられる。
【0016】
[適用例4]上記適用例に係る電気光学装置であって、前記保護層は、無機材料の酸化物または窒化物からなっていてもよい。
【0017】
この構成によれば、無機材料の酸化物または窒化物を用いることにより、ガラスよりも高いヤング率を有し、かつ光透過性を有する保護層を形成できる。
【0018】
[適用例5]上記適用例に係る電気光学装置であって、前記無機材料は、アルミニウム、珪素、亜鉛、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、タンタル、硼素のうちの少なくとも一つであってもよい。
【0019】
この構成によれば、ガラスよりも高いヤング率を有し、かつ光透過性を有する保護層の材料としてこれらの材料の酸化物または窒化物を好適に用いることができる。
【0020】
[適用例6]上記適用例に係る電気光学装置であって、前記第2の表面層は、CFRP、インバー、チタン、またはチタン合金からなっていてもよい。
【0021】
この構成によれば、これらの材料を用いることにより第2の表面層の剛性をガラスよりも高くできるので、点加重や屈曲等の外部応力に対してガラス基板の損傷を抑えることができる。また、これらの材料はガラスよりも熱伝導率が高く線膨張係数が低いので、電気光学パネルから発生される熱を電気光学装置外へ放熱するとともに、温度変化に対する変形量を小さくすることができる。
【0022】
[適用例7]上記適用例に係る電気光学装置であって、前記電気光学パネルの前記第1の面側に配置された第3の表面層をさらに備え、前記第3の表面層は、前記電気光学パネルの周辺端部と前記第1の表面層の周辺端部とを少なくとも平面的に覆う大きさであるとともに、前記電気光学パネルの前記光が射出される領域に平面的に重なる開口部を有していてもよい。
【0023】
この構成によれば、第1の面側に電気光学パネルの周辺端部までを少なくとも平面的に覆う大きさの第3の表面層がさらに配置されるので、ガラス基板の周辺端部を外部応力から保護できる。また、第2の表面層と第3の表面層とでガラス基板の限界点まで曲がることを抑えることができる。第3の表面層は電気光学パネルの光が射出される領域に平面的に重なる開口部を有しているので、電気光学パネルからの光は第3の表面層により遮られることなく外に射出される。
【0024】
[適用例8]上記適用例に係る電気光学装置であって、前記第3の表面層は、CFRP、インバー、チタン、もしくはチタン合金からなっていてもよい。
【0025】
この構成によれば、第3の表面層の剛性をガラスよりも高くできるので、外部応力に対してガラス基板の損傷を効果的に抑えることができる。また、熱伝導率が高く線膨張係数が低いので、電気光学パネルから発生される熱を電気光学装置外へ放熱するとともに、温度変化に対する変形量を小さくすることができる。
【0026】
[適用例9]上記適用例に係る電気光学装置であって、前記第1の表面層は、前記樹脂層に接する基材と、前記基材の表面に設けられた表面処理層と、を有していてもよい。
【0027】
この構成によれば、第1の表面層は、基材の表面に設けられた表面処理層を含んでいる。このため、表面処理層により耐摩耗性や、外光の反射、映り込み等を抑止する機能を付与できる。
【0028】
[適用例10]上記適用例に係る電気光学装置であって、前記樹脂層は、ポリエチレンまたはポリエチレン共重合体を主成分とする材料からなっていてもよい。
【0029】
この構成によれば、ポリエチレンは吸水率が極めて低く、絶縁性、柔軟性、透明性が良好であり、共重合体であることで接着性が向上するので、樹脂層の材料として好適に用いることができる。
【0030】
[適用例11]上記適用例に係る電気光学装置であって、前記タッチパネルは、抵抗膜方式のタッチパネルであってもよい。
【0031】
この構成によれば、抵抗膜方式のタッチパネル付きの電気光学装置を提供できる。
【0032】
[適用例12]上記適用例に係る電気光学装置であって、前記タッチパネルは、音響パルス認識方式のタッチパネルであってもよい。
【0033】
この構成によれば、音響パルス認識方式のタッチパネル付きの電気光学装置を提供できる。
【0034】
[適用例13]本適用例に係る電子機器は、上記に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする。
【0035】
この構成によれば、タッチパネル付きで薄さとフレキシブル性と耐屈曲性とを有し信頼性の高い電気光学装置を備えた電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1の実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】第1の実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す平面図。
【図3】第1の実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す断面図。
【図4】第1の実施形態に係る有機ELパネルの電気的構成を示すブロック図。
【図5】第1の実施形態に係る有機ELパネルの概略構成を示す断面図。
【図6】第2の実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す断面図。
【図7】第3の実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す断面図。
【図8】電子機器の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本実施の形態について図面を参照して説明する。なお、参照する各図面において、構成をわかりやすく示すため、各構成要素の層厚や寸法の比率、角度等は適宜異ならせてある。また、参照する各図面において、素子、配線、接続部等を一部省略してある。
【0038】
(第1の実施形態)
<有機EL装置の概要>
まず、第1の実施形態に係る電気光学装置としての有機EL装置の概要について図を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す斜視図である。図2は、第1の実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す平面図である。図3は、第1の実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す断面図である。詳しくは、図2のA−A'線に沿った断面図である。
【0039】
図1に示すように、第1の実施形態に係る電気光学装置としての有機EL装置1は、電気光学パネルとしての有機ELパネル2と、樹脂層51,52,57と、第1の表面層としての光学フィルム53と、タッチパネル60(図3参照)と、第2の表面層としての補強層56と、第3の表面層としての補強層58と、フレキシブルプリント回路基板46a,46b,46cと、を備えている。なお、以下では、フレキシブルプリント回路基板46a,46b,46cをFPC46a,46b,46cと呼ぶ。また、FPC46a,46b,46cを総称してFPC46とも呼ぶ。有機EL装置1は、タッチパネル付きの電気光学装置である。
【0040】
有機ELパネル2は、補強層56と補強層58との間に位置している。有機ELパネル2の光が射出される領域を、表示領域2aと呼ぶ。光学フィルム53は、有機ELパネル2から光が射出される側に位置している。補強層56と補強層58とは、互いに対向配置されており、互いの間に介在する樹脂層51、樹脂層52、および樹脂層57により密着されている。
【0041】
補強層58は、開口部58aが設けられた所謂額縁形状を有している。額縁形状とは、有機ELパネル2の表示領域2aに平面的に重なる開口部58aを有するように有機ELパネル2を覆う形状である。つまり、開口部58a内において、有機ELパネル2により発せられる光が有機EL装置1の外に射出される。
【0042】
図2に示すように、有機ELパネル2は矩形の平面形状を有している。有機EL装置1は、有機ELパネル2よりも一回り大きい矩形の平面形状を有している。補強層58の開口部58aは表示領域2aの輪郭に沿った形状で設けられており、補強層56および補強層58の端部は有機ELパネル2の周辺端部までを覆う構成であることが好ましい。このような構成であると、補強層56および補強層58が、有機ELパネル2の周辺端部を補強できる。
【0043】
FPC46a,46b,46cは有機ELパネル2の一辺側に並んで配置されており、FPC46aがFPC46b,46cの間に位置している。FPC46a,46b,46cのそれぞれは、有機EL装置1の外に張り出した張出し部を有している。それらの張出し部の端部には、外部機器と接続するための複数の端子(図示しない)が形成されている。FPC46aには、駆動用IC(Integrated Circuit)47が実装されている。
【0044】
図3に示すように、有機ELパネル2は、一対のガラス基板としての素子基板20と封止基板30とを有している。素子基板20と封止基板30との間には、電気光学層としての有機発光層26(図5参照)が挟持されている。有機ELパネル2の表示領域2aにおいて、有機発光層26から封止基板30側に光が射出される。封止基板30における有機発光層26からの光が射出される側の面、すなわち光学フィルム53と対向する面を第1の面としての表示面30aと呼ぶ。
【0045】
素子基板20は、封止基板30に対向配置されている。素子基板20の封止基板30(表示面30a)とは反対側の面を第2の面としての背面20aと呼ぶ。素子基板20は、一辺側が封止基板30から張り出している。有機ELパネル2は、素子基板20および封止基板30の基材として薄いガラス基板を用いた所謂薄型の有機ELパネルである。有機ELパネル2の構造の詳細については後述する。
【0046】
タッチパネル60は、有機ELパネル2の背面20a側に、有機ELパネル2に平面的に重なるように設けられている。タッチパネル60は、素子基板20の背面20a上に接着固定されている。タッチパネル60は、平面的に表示領域2aよりも一回り大きな領域を有している。タッチパネル60は、基板61,67と、電極62,63と、シール材64と、スペーサー65と、フレキシブルプリント回路基板66(以下ではFPC66と呼ぶ)と、で構成されている。タッチパネル60は、電極62,63同士が接触した際に生じる抵抗値変化から入力操作位置を検出する抵抗膜方式のタッチパネルである。
【0047】
基板61は、背面20a上に配置されている。基板67は、基板61の補強層56側に、基板61に対向して配置されている。基板61,67の材料は、ガラス基板であってもよいが、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリイミド等のプラスチックフィルムの方が軽量で安価にできるため好ましい。電極62は、基板61の表面に設けられている。電極63は、基板67の表面に、電極62に対向するように設けられている。電極62,63は、例えば、ITOからなり、ストライプ状や面状に形成された複数の電極で構成される。
【0048】
基板61と基板67とは、その周縁部に形成されたシール材64によって貼り合わされ、一体化されている。基板61の一辺側には、FPC66が設けられている。FPC66は、有機EL装置1の外に張り出した張出し部を有しており、張出し部の端部には、外部機器と接続するための端子(図示しない)が形成されている。FPC66は、樹脂層52と樹脂層57との間に挟み込まれるように密着固定されている。
【0049】
電極62,63の間には、複数のドット状のスペーサー65が配置されている。スペーサー65は、電極62,63の間の間隙を保持して、有機EL装置1の屈曲や撓み等による誤接触や、入力操作等の際に電極62,63が所望の領域以外で不用意に接触することを防止する。
【0050】
タッチパネル60では、操作面となる光学フィルム53(表面処理層55)の表面を指先やタッチペン68等で押圧操作することで加えられる点加重により、光学フィルム53と樹脂層51とを介して有機ELパネル2が撓む。そうすると、有機ELパネル2と一緒に基板61が撓むことで、電極62,63同士が接触して抵抗値変化が生じる。この抵抗値変化を電位変化として検知することで、入力操作位置が検出される。
【0051】
有機ELパネル2の表示領域2aに表示された画像は、光学フィルム53を通して観察される。表示領域2aに表示される画像、例えば、複数の操作ボタンや、操作バー、プログラムのアイコン等において、所望の部位を触る(押す)ことにより、所望の操作を行うことができる。
【0052】
本実施形態では、有機ELパネル2が可撓性を有しているので、タッチパネル60を有機EL装置1の背面20a側に配置しても、有機ELパネル2が撓むことによりタッチパネル60の入力操作を行うことができる。また、タッチパネル60が背面20a側に配置されているので、タッチパネル60による光の透過率低下や反射がない。このため、タッチパネル60が表示面30a側に配置されている場合よりも、光学フィルム53を通して観察される画像を明るく表示することができる。
【0053】
なお、タッチパネル60において、素子基板20が基板61を兼ね、電極62を背面20a上に形成するとともに、シール材64で基板67を素子基板20に貼り合わせる構成としてもよい。
【0054】
樹脂層51は、有機ELパネル2の表示面30a側に配置されており、封止基板30の表示面30aおよび側面を覆っている。樹脂層57は、樹脂層51と樹脂層52との間に位置しており、素子基板20の側面を覆っている。樹脂層52は、有機ELパネル2の背面20a側に配置されており、タッチパネル60の表面を覆っている。つまり、樹脂層51,52,57は、有機ELパネル2およびタッチパネル60の表面を覆って封止するように設けられている。
【0055】
樹脂層51,52,57は、有機ELパネル2およびタッチパネル60とFPC46とFPC66と光学フィルム53と補強層56と補強層58とのそれぞれに密着しこれらを一体に保持して有機ELパネル2を保護する機能を有している。したがって、樹脂層51,52,57には、これらの構成部材との良好な接着性や、外部応力や各構成部材間の熱変形の差異を緩和できるような柔軟性が求められる。柔軟性については、例えば、密度が0.9g/cm3〜1.1g/cm3程度で、ヤング率が0.01GPa〜1GPa程度であることが望ましい。
【0056】
また、樹脂層51,52,57には、有機EL装置1の外部から有機ELパネル2(有機EL素子8)への水分の浸入を防止するための耐水性、FPC46を固定するための絶縁性および耐熱性、接着時に有機EL素子8を高温に晒さないための低温溶着性も求められる。さらに、樹脂層51は有機ELパネル2の表示面30aを覆うため、良好な光透過性も求められる。このような樹脂層51,52,57の材料として、ポリエチレンを主成分とした樹脂を好適に用いることができる。また、接着性をより向上させるため、一部極性基を持たせた共重合体であることがより好ましい。
【0057】
より具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)またはエチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−メタクリル酸ヒドロキシアルキル共重合体、エチレン−メタクリル酸アルコキシエチル共重合体、エチレン−メタクリル酸アミノエチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ヒドロキシグリシジル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−アクリル酸アルキル共重合のうち、いずれかを用いることが好ましい。これらを2つ以上組み合わせた共重合体(例えば、エチレン−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体等)、または混合物を用いてもよい。
【0058】
また、耐熱性を高めるために、エポキシ化合物やイソシアネート化合物、ポリエチレンイミン等のアミン化合物等の硬化成分を架橋剤として含んでいてもよい。なお、エチレン共重合体の中でも、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)やエチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)等エステル化されていないカルボキシル基を有する材料を用いる場合には、低温溶着性や接着性に優れるもののFPC46,66の銅配線等を腐食させる可能性があるため、エポキシ系硬化剤等の架橋成分と組み合わせて熱により架橋させ、アクリル酸が残留しないようにすることが好ましい。
【0059】
樹脂層51,52,57のそれぞれの厚さは、20μm〜100μmであることが好ましい。樹脂層51,52,57の厚さが20μmよりも薄いと、有機ELパネル2およびタッチパネル60の端部における隙間を含む段差や、有機ELパネル2とFPC46との段差およびタッチパネル60とFPC66との段差の被覆性および充填性が低下する。また、樹脂層51,52,57の厚さが100μmよりも厚いと、有機EL装置1の総厚が大きくなる。さらに、樹脂層51,52,57の材料コストや、ラミネートのし易さ(作業性)を考慮すると、20μm〜50μmの範囲内であることがより好ましい。
【0060】
樹脂層51,52,57が有機ELパネル2およびタッチパネル60の周囲を覆うように設けられているので、落下等の衝撃や屈曲等の外部応力が、有機ELパネル2(封止基板30、素子基板20)に伝わる前に緩和される。このため、外部応力による有機ELパネル2の損傷をより効果的に抑えることができる。また、有機ELパネル2と光学フィルム53や補強層56等の構成部材間の線膨張係数の差が樹脂層51,52,57により緩和されるので、有機ELパネル2の反りを抑えることができる。
【0061】
光学フィルム53は、樹脂層51を間に介して、有機ELパネル2の表示面30aに対向配置されている。光学フィルム53は、有機ELパネル2の表示領域2aを平面的に覆う大きさを有している。光学フィルム53は、有機ELパネル2の破損を防止する補強機能と、樹脂層51の表面を保護する表面フィルムとしての機能と、を有している。光学フィルム53は、表面フィルムとして良好な光透過性が求められる。光学フィルム53は、光学フィルム53のベースとなる基材54と、表面処理層55とで構成される。
【0062】
基材54の材料として、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)、TAC(トリアセチルセルロース)、COP(環状オレフィンポリマー)等の樹脂材料のいずれかを用いることができる。これらの樹脂材料は、良好な光透過性を有している。これらの樹脂材料は、線膨張係数が20ppm/℃〜60ppm/℃程度であり、ガラスに比べて温度変化に伴う寸法変化量が大きい。
【0063】
そのため、温度変化に伴う寸法変化量の差による有機ELパネル2(封止基板30)の反りが抑えられるように、基材54の厚さは12μm〜50μm程度とすることが好ましい。また、タッチパネル60の入力操作の際に、光学フィルム53に加えられた点加重や振動が有機ELパネル2に伝わり易くするために、基材54の厚さは薄い方がより好ましい。
【0064】
また、光学フィルム53は、表面フィルムとして耐摩耗性、外光反射の抑制、汚れ付着防止(指紋、ほこり付着)等の機能を有していることが望ましく、表面処理層55がこれらの機能を担う。表面処理層55は、例えば、PMMA(Polymethyl Methacrylate)等のハードコート層である。表面処理層55は、数μm程度の厚さに形成される。
【0065】
表面処理層55は、外光反射を抑止するため屈折率の異なる無機酸化物が積層された反射防止層(AR)や、低屈折率のフッ素樹脂からなる低反射防止層(LR)、表面に凹凸が設けられたアンチグレア層、埃等の付着を防ぐ帯電防止層、皮脂等の付着を抑える撥油層等であってもよい。
【0066】
補強層58は、光学フィルム53の表面処理層55側に設けられており、樹脂層51,52,57を介して補強層56に対向するように配置されている。補強層58は、有機ELパネル2の端部までを平面的に覆う大きさを有している。補強層58の開口部58aは、有機ELパネル2の表示領域2aに平面的に重なっている。開口部58a内において、有機ELパネル2により発せられる光が有機EL装置1の外に射出される。
【0067】
補強層58は、有機EL装置1に屈曲や落下等の外部応力が加えられた際に、有機ELパネル2(素子基板20、封止基板30)の破損を防止するとともに外部応力によりクラックの入り易い素子基板20、封止基板30の端部を補強する補強部材としての機能を有している。また、補強層58は、外部応力により有機EL装置1が屈曲した場合ばねのように元の形に復元させる機能も有している。
【0068】
したがって、補強層58には、素子基板20および封止基板30が破壊限界点(限界半径)まで曲がってしまうことを抑制するための強靭性(耐引張り性)が求められる。さらに、補強層58は、線膨張係数が異なる構成部材の多層構造による有機ELパネル2の反りを防止する機能と、有機ELパネル2から発生される熱を放熱する機能とを有している。
【0069】
このような補強層58の材料としては、高ヤング率(10GPa以上)であり、低線膨張係数(10ppm/℃以下)であり、かつ、高熱伝導率(10W/m,k以上)である材料が好ましい。本実施形態では、優れた引張り強度と放熱性とを兼ね備えたCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)を補強層56の材料として用いている。CFRPは、樹脂含浸炭素繊維の密度が低く(1.5g/cm3〜2.0g/cm3)、引張り強度が高く(1000MPa以上)、軽量であるため補強層58の材料として好適である。
【0070】
図示は省略するが、CFRPは炭素繊維と樹脂による複合材料であり、1方向に並行に揃えられた炭素繊維にエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、またはポリエステル等の熱可塑性を含浸させたプリプレグと呼ばれる前駆体(炭素繊維層)を異なる方向に2層以上積層し硬化した複合材料である。本実施形態では、1層の炭素繊維の延在方向を約0°としたときに、炭素繊維の延在方向が約0°、約90°、約0°、約90°となるような順に、4層が積層された構成を採用している。なお、積層数や積層順はこの形態に限定されない。
【0071】
また、CFRPの炭素繊維は高純度炭素であるため、熱伝導率が20W/m,k〜60W/m・kであり、ガラス(1W/m,k)や汎用プラスチック(約0.5W/m,k)に比べて高い。したがって、補強層58の材料としてCFRPを用いると、十分な放熱性を得ることができる。
【0072】
なお、補強層58の材料として、CFRPに近い物性を有するインバー(Ni含有率30%〜50%の鉄合金)や、チタン、チタン合金等を用いてもよい。インバーを用いると、補強層58をより薄型化できる。
【0073】
なお、補強層58は、樹脂層51と光学フィルム53とに跨るような形状で、樹脂層51に接するとともに光学フィルム53の周縁部に平面的に重なるように配置されていることが好ましい。このような形状であると、有機EL装置1に外部応力が加えられた場合でも、光学フィルム53の側面と樹脂層51との密着性を保持できる。
【0074】
補強層56は、樹脂層52を間に介して、タッチパネル60に対向配置されている。また、補強層56は、樹脂層51,52,57を間に介して、補強層58に対向配置されている。補強層56は、有機ELパネル2の端部までを平面的に覆う大きさを有している。
【0075】
補強層56は、補強層58と同様に、有機EL装置1に屈曲や落下等の外部応力が加えられた際に、有機ELパネル2の破損を防止する補強部材としての機能を有しており、外部応力により有機EL装置1が屈曲した場合ばねのように元の形に復元させる機能や放熱性等も有している。さらに、補強層56は、タッチパネル60の入力操作の際に加えられる点加重に対して、有機ELパネル2(素子基板20、封止基板30)の破損を防止する機能を有している。補強層56は、タッチパネル60の破損を防止する機能も有している。
【0076】
補強層56の材料は、補強層58と同様に、CFRPやインバー等の材料のいずれかを用いることができる。また、補強層56,58の材料を同じ材料としてもよいし、例えば補強層56,58のうちの一方にインバーを用い他方にCFRPを用いるというように、異なる材料を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
補強層56が補強層58に対向し、有機ELパネル2の端部までを平面的に覆うように配置されるので、有機EL装置1を補強する機能や破壊限界点まで曲がってしまうことを抑制するための強靭性が強化され、有機ELパネル2の端部の損傷が抑えられる。また、補強層56が補強層58に対向して配置されることにより、補強層56,58のそれぞれの弾性力や他の構成要素との間の線膨張係数の差等により発生する応力が互いに緩和される。
【0078】
さらに、タッチパネル60の入力操作の際には、タッチペン68等により有機ELパネル2(封止基板30、素子基板20)には小さな面積に大きな加重が加えられるため、有機ELパネル2が局部的に撓んで有機ELパネル2がガラス基板の破壊限界点まで曲がってしまうおそれがある。しかしながら、有機EL装置1では、このような点加重に対してタッチパネル60の背面20a側から補強層56により支持されるので、有機ELパネル2がガラス基板の破壊限界点まで曲がってしまうことが抑制される。
【0079】
FPC46(図3ではFPC46aのみを図示)は、樹脂層51,57の間に配置されている。FPC46は、例えば、ポリイミドフィルムの基材に銅箔の配線が形成された柔軟性を有する基板である。FPC46の有機EL装置1から張り出した張出し部とは反対側の部分は、異方性導電接着フィルム等により、素子基板20の一辺側が封止基板30から張り出した部分に形成された電極(図示しない)に電気的に接続されている。
【0080】
ここで、異方性導電接着フィルムによる接続だけでは機械的強度が不足するが、FPC46が樹脂層51,52,57を介して補強層56,58の間に保持されるため、柔軟性と強度とが確保される。これにより、従来のように、FPCの接続部をシリコン樹脂(接着剤)等で固定して補強しなくてもよい。なお、本実施形態では、駆動用IC47がFPC46aの張出し部に配置されているが、駆動用IC47を有機EL装置1内に配置してもよい。
【0081】
このような構成により、有機EL装置1は、有機ELパネル2が撓むことによりタッチパネル60を背面20a側に配置しても入力操作を行うことができる。また、曲げることが可能なフレキシブル性と曲げても有機ELパネル2が割れない実用強度とを兼ね備えており、タッチパネル60の入力操作の際に加えられる点加重に対しても有機ELパネル2の損傷が抑えられる。さらに、タッチパネル60の入力操作により基板61が撓む際に補強層56の剛性により基板67側が支持されるので、補強層56側にかかる圧力が減衰され、タッチパネル60の誤認識を抑えることができる。
【0082】
<有機ELパネルの構成>
続いて、第1の実施形態に係る有機ELパネル2の構成について図を参照して説明する。図4は、第1の実施形態に係る有機ELパネルの電気的構成を示すブロック図である。図5は、第1の実施形態に係る有機ELパネルの概略構成を示す断面図である。図5は、図2のA−A'線に沿った断面に対応している。
【0083】
図4に示すように、有機ELパネル2は、スイッチング素子として薄膜トランジスター(Thin Film Transistor、以下、TFTと呼ぶ)を用いたアクティブマトリックス型の有機ELパネルである。有機ELパネル2は、素子基板20と、素子基板20上に設けられた走査線16と、走査線16に対して交差する方向に延びる信号線17と、信号線17に並列に延びる電源線18とを備えている。
【0084】
有機ELパネル2において、これら走査線16と信号線17とに囲まれた領域に画素6が配置されている。画素6は、走査線16の延在方向と信号線17の延在方向とに沿ってマトリックス状に配列されている。画素6は、例えば略矩形の平面形状を有している。画素6は、有機ELパネル2の表示の最小単位である。
【0085】
画素6には、スイッチング用TFT11と、駆動用TFT12と、保持容量13と、陽極25と、陰極27と、電気光学層としての有機発光層26と、を備えている。有機発光層26は、電界により注入された正孔と電子との再結合により励起して発光する発光層を含んでいる。有機発光層26は、発光層以外の層を含む多層構造であってもよく、例えば、正孔輸送層と発光層と電子輸送層とで構成されていてもよい。また、正孔注入層や電子注入層をさらに含んでいてもよい。陽極25と、陰極27と、有機発光層26とによって、有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)8が構成される。
【0086】
信号線17には、シフトレジスター、レベルシフター、ビデオライン、およびアナログスイッチを備えたデータ線駆動回路14が接続されている。また、走査線16には、シフトレジスターおよびレベルシフターを備えた走査線駆動回路15が接続されている。
【0087】
有機ELパネル2では、走査線16が駆動されてスイッチング用TFT11がオン状態になると、信号線17を介して供給される画像信号が保持容量13に保持され、保持容量13の状態に応じて駆動用TFT12のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT12を介して電源線18に電気的に接続したとき、電源線18から陽極25に駆動電流が流れ、さらに有機発光層26を通じて陰極27に電流が流れる。有機発光層26の発光層は、陽極25と陰極27との間に流れる電流量に応じた輝度で発光する。
【0088】
図5に示すように、有機ELパネル2は、素子基板20上に、回路素子層21と、平坦化層22と、隔壁23と、反射層24と、陽極25と、有機発光層26と、陰極27と、電極保護層28と、有機緩衝層31と、ガスバリア層29と、封止基板30と、封止樹脂層32と、シール材33と、カラーフィルター34と、遮光層35と、を備えている。有機ELパネル2は、有機発光層26から発した光が表示面30a側に射出されるトップエミッション型である。
【0089】
素子基板20は、無機ガラスからなる。本実施形態では、素子基板20の材料として無アルカリガラスを用いている。素子基板20の厚さは、5μm〜100μm程度であり、10μm〜50μmであることが好ましい。本実施形態では、素子基板20は、材料として厚さが0.3mm〜0.7mm程度のガラス基板を用い、封止基板30と接着された後にエッチングや機械的研磨または化学的研磨等により上述の厚さに加工される。
【0090】
なお、有機ELパネル2がトップエミッション型であることから、素子基板20の材料として、光透過性を有する材料および光透過性を有していない材料のいずれを用いてもよい。
【0091】
回路素子層21は素子基板20上に設けられている。回路素子層21は、駆動用TFT12や配線部等を含んでいる。駆動用TFT12は、画素6に対応して設けられている。平坦化層22は、回路素子層21上に設けられており、駆動用TFT12や配線部等による表面の凹凸を緩和している。平坦化層22には、陽極25に平面的に重なるように、反射層24が内装されている。反射層24は、光反射性を有する金属材料等からなり、例えばアルミ合金等からなる。
【0092】
平坦化層22上には、陽極25が設けられている。陽極25は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)等の光透過性を有する金属酸化物導電膜からなる。陽極25の材料は、IZO(Indium Zinc Oxide)(登録商標)であってもよい。陽極25は、画素6毎に回路素子層21の駆動用TFT12のドレイン端子と電気的に接続されている。
【0093】
なお、有機ELパネル2がトップエミッション型であることから、陽極25の材料は必ずしも光透過性を有していなくてもよい。また、陽極25の材料として光透過性を有していない材料を用いる場合は、反射層24は設けなくてよい。
【0094】
隔壁23は、平坦化層22上に設けられており、画素6の領域を区画している。隔壁23は、アクリル樹脂等からなる。
【0095】
有機発光層26は、陽極25と隔壁23とを覆うように形成されている。本実施形態では、有機発光層26は、順に積層された正孔注入層と正孔輸送層と発光層と電子輸送層とで構成されている(図5では1層で図示)。正孔注入層は、例えばトリアリールアミン(ATP)多量体で形成され、正孔輸送層は、例えばトリフェニルアミン誘導体(TPD)で形成されている。
【0096】
発光層の発光色は白色である。白色発光材料としては、スチリルアミン系発光材料、アントラセン系ドーパント(青色)、あるいはスチリルアミン系発光材料、ルブレン系ドーパント(黄色)が用いられる。電子輸送層は、例えばアルミニウムキノリノール錯体(Alq3)で形成されている。有機発光層26の各層は、例えば真空蒸着法を用いて順次形成される。
【0097】
陰極27は有機発光層26上に設けられている。陰極27は、光透過性を有しており、例えばマグネシウムと銀との合金(Mg−Ag合金)で形成されている。陰極27の下層に、フッ化リチウム(LiF)等からなる電子注入バッファー層が設けられていてもよい。
【0098】
電極保護層28は、陰極27と隔壁23とを覆うように設けられている。電極保護層28は、光透過性、密着性、耐水性、ガスバリア性等を考慮して、例えば、珪素酸化物や珪素酸窒化物等の珪素化合物で構成される。また、電極保護層28の厚さは100nm以上が好ましく、隔壁23を被覆することで発生する応力によるクラック発生を防ぐため、厚さの上限は400nm以下とすることが好ましい。電極保護層28は、PVD(物理気相成長法)、CVD(化学気相成長法)、またはイオンプレーティング法等を用いて形成される。
【0099】
電極保護層28上には、有機緩衝層31とガスバリア層29とが積層されている。有機緩衝層31は、熱硬化性のエポキシ樹脂等からなる。有機緩衝層31により、隔壁23の形状が反映された電極保護層28の凹凸部分が緩和される。また、有機緩衝層31は、素子基板20の反りや体積膨張により発生する応力を緩和し、電極保護層28の剥離やガスバリア層29のクラックを防止する機能を有する。有機緩衝層31の厚さは、3μm〜5μm程度が好ましい。有機緩衝層31は、例えば、真空スクリーン印刷法、スリットコート法、インクジェット法等を用いて形成される。
【0100】
ガスバリア層29は、電極保護層28と同様の材料で構成され、外部から有機EL素子8への水分や酸素の浸入を防止する封止部材として機能する。ガスバリア層29は、電極保護層28と同様の方法で形成される。
【0101】
素子基板20の有機EL素子8が形成された面側、すなわちガスバリア層29が形成された面側には、封止基板30が対向して配置されている。封止基板30は、シール材33および封止樹脂層32を介して、素子基板20上のガスバリア層29と接着されている。封止基板30は、光透過性を有する無機ガラスからなる。本実施形態では、封止基板30の材料として無アルカリガラスを用いている。
【0102】
封止基板30の厚さは、5μm〜100μm程度であり、10μm〜50μmであることが好ましい。封止基板30は、素子基板20と同様に、材料として厚さが0.3mm〜0.7mm程度のガラス基板を用い、エッチングや機械的研磨または化学的研磨等により上述の厚さに加工される。有機ELパネル2では、素子基板20および封止基板30に、プラスチック基板に比べてガスバリア性の高いガラス基板を用い、これらのガラス基板の厚さを薄くすることにより可撓性が付与されている。
【0103】
シール材33は、素子基板20と封止基板30との間の非表示領域に配置され、封止基板30の外周に沿って枠状に設けられている。シール材33は、水分透過率が低い材料からなる。シール材33の材料としては、例えば、エポキシ系化合物に紫外線カチオン反応開始剤や酸無水物系硬化剤を添加したもので、ガラス接着向上剤としてシランカップリング剤を添加した高接着性の接着剤を用いることができる。
【0104】
封止樹脂層32は、素子基板20と封止基板30とシール材33とで囲まれた領域に隙間なく充填されるように設けられている。封止樹脂層32は、例えば、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系等の光透光性の高い樹脂からなる。耐熱性や耐水性を考慮すると、封止樹脂層32の材料として、エポキシ系樹脂を用いることが好ましい。
【0105】
カラーフィルター34は、封止基板30の有機EL素子8側に設けられている。カラーフィルター34は、赤色(R)光に対応するカラーフィルター34Rと、緑色(G)光に対応するカラーフィルター34Gと、青色(B)光に対応するカラーフィルター34Bとを有している(対応する色を区別しない場合には単にカラーフィルター34とも呼ぶ)。カラーフィルター34は、平面的に有機EL素子8に重なるように設けられている。
【0106】
カラーフィルター34R,34G,34Bを区画するように、遮光層35が設けられている。遮光層35は、隔壁23に対応するように配置されている。遮光層35は、遮光性を有する材料からなり、例えばCr(クロム)層やカーボンブラック粒子を配合した樹脂層等からなる。なお、カラーフィルター34と遮光層35とを覆うように、オーバーコート層が設けられていてもよい。
【0107】
有機ELパネル2は、赤色光を射出する画素6Rと、緑色光を射出する画素6Gと、青色光を射出する画素6Bとを有している(対応する色を区別しない場合には単に画素6とも呼ぶ)。カラーフィルター34R,34G,34Bは、画素6R,6G,6Bに対応して配置されている。
【0108】
有機EL素子8により発せられる白色光がカラーフィルター34R,34G,34Bを透過することで、画素6R,6G,6BにおいてR、G、Bの3つの異なる色の光が射出される。画素6R,6G,6Bから一つの画素群が構成され、それぞれの画素群において画素6R,6G,6Bのそれぞれの輝度を適宜変えることで、種々の色の表示を行うことができる。したがって、フルカラー表示またはフルカラー発光が可能な有機ELパネルを提供できる。
【0109】
有機ELパネル2では、有機発光層26から陰極27側に発せられた光は、表示面30a側に射出される。また、有機発光層26から陽極25側に発せられた光は、反射層24により反射されて、表示面30a側に射出される。
【0110】
<有機EL装置の製造方法>
次に、第1の実施形態に係る有機EL装置の製造方法の概略について説明する。まず、公知の方法を用いて有機ELパネル2を形成する。
【0111】
次に、有機ELパネル2の素子基板20および封止基板30を加工して、所定の厚さ、例えば5μm〜20μmまで薄くする。素子基板20および封止基板30を加工する方法として、例えば、フッ酸(フッ化水素酸:HF)を希釈した水溶液をエッチング液として用いたエッチングを適用することができる。また、エッチング液は、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の水溶液であってもよく、それらの混合物であってもよい。
【0112】
エッチング方法としては、エッチング液が循環した槽内に浸漬してもよいし、エッチング液をシャワー照射してもよい。また、素子基板20および封止基板30を加工する方法として、機械的研磨や化学的研磨等を適用してもよい。素子基板20の加工された側の面が背面20aであり、封止基板30の加工された側の面が表示面30aである。
【0113】
次に、公知の方法を用いて形成したタッチパネル60を、例えば紫外線硬化型の接着剤等を用いて、有機ELパネル2の背面20a上に接着固定する。
【0114】
次に、有機ELパネル2の素子基板20の一辺側に、FPC46a,46b,46cを接続する。そして、タッチパネル60側に樹脂層52を介在させて補強層56を配置するとともに、素子基板20の周囲または表面に樹脂層57を配置し、封止基板30側に樹脂層51を介在させて光学フィルム53および補強層58を配置しラミネートする。このとき、補強層56上に、樹脂層52、タッチパネル60、樹脂層57、FPC46が接続された有機ELパネル2、樹脂層51、光学フィルム53、補強層58の順に重ね合わせる。樹脂層57には、素子基板20の外形に対応する開口部が設けられていてもよい。
【0115】
続いて、補強層56側および補強層58側から加圧し、80℃〜120℃の範囲で加熱して圧着する。加熱圧着の方法は、ホットプレート型の並行板や一対の熱加圧ローラーを用いる方法が好ましい。また、真空圧着装置を用いてもよい。なお、樹脂層51,52,57が架橋成分を含む場合には、約100℃でアニーリング処理し、架橋を完全なものとすることが好ましい。
【0116】
ここで、ポリエチレンを主成分とした樹脂からなる樹脂層51,52,57は、室温での初期接着力がほとんどなく、気泡も抜けやすいため、各構成部材をあらかじめ積み重ねた状態での位置合わせができるだけでなく、加熱することで接着力が発現するため、1回の熱圧着ラミネートで多層構造が形成できる。このため、製造効率が良く量産性に優れている。
以上により、有機EL装置1が完成する。
【0117】
上記第1の実施形態に係る有機EL装置1の構成によれば、以下の効果が得られる。
【0118】
(1)有機ELパネル2が可撓性を有するので、タッチパネル60を背面20a側に配置することができる。樹脂層51,52,57を介して補強層56,58をラミネートすることで、有機ELパネル2およびタッチパネル60の周囲が一体化され補強される。これにより、曲げることが可能なフレキシブル性を備えながら、曲げても有機ELパネル2が割れない耐屈曲性を有し、タッチパネル60の入力操作の際の点加重に対しても有機ELパネル2の損傷が抑えられる有機EL装置1を提供できる。
【0119】
(2)耐水性を有する樹脂層51,52,57により有機ELパネル2(有機EL素子8)の周囲が封止されるので、外部から有機ELパネル2(有機EL素子8)への水分等の浸入が抑えられる。また、補強層56,58が放熱性を有しているので、有機ELパネル2の供給電流量が多く発熱しやすい大画面である場合でも効果的に放熱できる。これにより、水分や熱による有機EL素子8の寿命低下が抑えられるので、信頼性の高い有機EL装置1を提供できる。
【0120】
(3)FPC46,66を挟み込むように、絶縁性を有する樹脂層51,52,57を介して補強層56,58をラミネートするので、FPC46,66およびFPC46,66の接続部を補強でき、従来FPC接続部の補強に用いていた液状のシリコーン系モールド接着剤を不要にできる。これにより、FPC46,66をより薄くすることが可能となるとともに、接続部の可撓性および曲げ強度を向上できる。
【0121】
なお、本実施形態に係る有機EL装置1は、有機ELパネル2の表示面30a側に補強層58を備えた構成であったが、補強層58を備えていない構成としてもよい。補強層58を備えていない構成とする場合は、光学フィルム53を補強層56に平面的に重なる大きさとすることで、有機ELパネル2の端部を保護することができる。このような構成によれば、補強層58を備えている構成に比べて、有機EL装置1の表示面30a側の剛性や放熱性は若干劣るが、有機EL装置1の厚さを薄くすることができる。
【0122】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る有機EL装置の概要について図を参照して説明する。第2の実施形態に係る有機EL装置は、第1の実施形態に係る有機EL装置に対して、表示面上に保護層をさらに備えている点が異なっているが、その他の構成は同じである。図6は、第2の実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す断面図である。図6は、図2のA−A'線に沿った断面に対応している。第1の実施形態と共通する構成要素については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0123】
<有機EL装置>
図6に示すように、第2の実施形態に係る有機EL装置101は、有機ELパネル2と、タッチパネル60と、FPC46a,46b,46cと、樹脂層51,52,57と、光学フィルム53と、補強層56,58と、保護層40と、を備えている。
【0124】
保護層40は、封止基板30上に、表示面30aを覆うように設けられている。保護層40は、有機EL装置101に加えられる屈曲やタッチパネル60の入力操作による点加重等の外部応力により封止基板30の表示面30aにクラックが発生することや、封止基板30が割れ等の損傷を受けることを抑える機能を有している。したがって、保護層40のヤング率はガラスのヤング率(60GPa〜80GPa)よりも高いことが求められる。保護層40のヤング率は、100GPa以上であることが望ましい。
【0125】
また、保護層40は、有機ELパネル2において有機EL素子8から光が射出される側の封止基板30の表示面30a上に設けられるので、ガラスに近い光透過性を有する材料で形成されることが望ましい。
【0126】
保護層40の材料は無機材料の酸化物または窒化物であることが好ましく、無機材料として、例えば、アルミニウム、珪素、亜鉛、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、タンタル、硼素のうちの少なくとも一つを好適に用いることができる。例えば、酸化アルミニウムのヤング率は390GPa程度、酸化チタンのヤング率は290GPa程度、窒化珪素のヤング率は300GPa程度、酸化マグネシウムのヤング率は250GPa程度、酸化ジルコニウムのヤング率は200GPa程度である。
【0127】
これらの無機材料の酸化物または窒化物を用いることで、ガラスに近い光透過性が得られる。また、これらの無機材料の酸化物または窒化物の線膨張係数は0ppm/℃〜5ppm/℃程度であり、4ppm/℃程度の線膨張係数を有するガラスに近い。このため、封止基板30と保護層40との間で温度変化に伴う寸法変化量の差が小さいので、封止基板30の反りが抑えられる。
【0128】
保護層40のヤング率は、膜密度が高いほど大きくなる。保護層40の膜密度は、1.5g/cm3以上であることが好ましい。プラズマを用いたスパッタリング法やイオンプレーティング法を用いることで、高密度で圧縮応力の高い保護層40を成膜できるので、高いヤング率を得ることができる。保護層40の圧縮応力値としては、100MPa以上あればよく、保護層40の割れや封止基板30からの剥れを防止するため、2GPa以下であることが好ましい。
【0129】
保護層40の層厚は、50nm以上あればよく、保護層40の割れや封止基板30からの剥れを防止するため、500nm以下であることが好ましい。また、保護層40の層厚が厚いほど光透過率が低下するので、光学的には保護層40の層厚は薄い方が好ましい。
【0130】
保護層40は樹脂層51に覆われている。つまり、表示面30aに保護層40が設けられた有機ELパネル2およびタッチパネル60の表面を覆って封止するように、樹脂層51,52,57が設けられている。
【0131】
本実施形態に係る有機EL装置101では、表示面30a上に保護層40が設けられているため、屈曲等の外部応力が加えられても表示面30aにかかる引張り応力が緩和されるので、薄く加工された封止基板30がより大きな負荷に耐えることができる。これにより、表示面30aにクラックが発生することや封止基板30が割れることが抑えられる。
【0132】
特に、タッチパネル60の入力操作の際には、タッチペン68等により封止基板30の表示面30aにおいて小さな面積に大きな加重が加えられる。本実施形態に係る有機EL装置101では、表示面30a上に保護層40が設けられているので、このような点加重が加えられても、この点加重により表示面30aにクラックが発生することや封止基板30が割れることが抑えられる。
【0133】
本実施形態に係る有機EL装置101では、第1の実施形態の有機EL装置1に比べて、保護層40により封止基板30の表示面30aの強度が向上しているので、光学フィルム53の厚さをより薄くすることができる。これにより、光学フィルム53の表面での入力操作が有機ELパネル2に伝わりやすくなるため、タッチパネル60の入力感度を向上できる。
【0134】
有機EL装置101を製造する方法は、第1の実施形態に係る有機EL装置1を製造する方法とほぼ同じである。本実施形態では、有機ELパネル2の素子基板20および封止基板30を薄く加工する工程の後で、封止基板30の表示面30a上に保護層40を形成する。
【0135】
保護層40を形成する方法として、プラズマを用いたスパッタリング法やイオンプレーティング法が好適である。このような形成方法によれば、有機ELパネル2(有機EL素子8)の寿命を劣化させるような高温に晒すことなく、保護層40を成膜できる。また、このような形成方法により、膜密度が高い(ヤング率が高い)保護層40を成膜できるとともに、封止基板30への良好な密着性が得られる。なお、無機酸化物粒子を溶媒で希釈し分散して、スプレー法等の塗布法を用いて保護層40を成膜してもよい。
【0136】
上記の保護層40を形成する工程以外は、第1の実施形態に係る有機EL装置1を製造する方法を適用できる。
【0137】
上記第2の実施形態に係る有機EL装置101の構成によれば、第1の実施形態における効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0138】
封止基板30の表示面30aを覆うように保護層40が設けられているので、屈曲等の外部応力が加えられた場合や、タッチパネル60の入力操作の際の点加重に対して封止基板30がより大きな負荷に耐えることができる。これにより、表示面30aにクラックが発生することや封止基板30が割れることが抑えられる。
【0139】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る有機EL装置の概要について図を参照して説明する。第3の実施形態に係る有機EL装置は、第2の実施形態に係る有機EL装置に対して、タッチパネルの方式が異なっているが、その他の構成は同じである。図7は、第3の実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す断面図である。図7は、図2のA−A'線に沿った断面に対応している。第2の実施形態と共通する構成要素については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0140】
<有機EL装置>
図7に示すように、第3の実施形態に係る有機EL装置102は、有機ELパネル2と、タッチパネル70と、FPC46a,46b,46cと、樹脂層51,52,57と、光学フィルム53と、補強層56,58と、保護層40と、を備えている。有機EL装置102は、タッチパネル60の代わりにタッチパネル70を備えた有機EL装置である。
【0141】
タッチパネル70は、有機ELパネル2の背面20a側に設けられている。タッチパネル70は、素子基板20とピエゾセンサー74とフレキシブルプリント回路基板72(以下ではFPC72と呼ぶ)とで構成されている。本実施形態では、素子基板20がタッチパネル70の基板を兼ねた構成となっている。タッチパネル70は、複数箇所に設けられたピエゾセンサー74により、素子基板20の表面振動を電気信号に変換して検知することで入力操作位置を検出する音響パルス認識方式のタッチパネルである。
【0142】
ピエゾセンサー74は、素子基板20の背面20aに接着固定されており、素子基板20と補強層56との間に位置している。ピエゾセンサー74は、例えば、表示領域2a内の複数箇所に設けられている。なお、素子基板20とピエゾセンサー74との間に樹脂層57を設けてもよいし、感度を上げるため素子基板20とピエゾセンサー74とが直接接触するようにピエゾセンサー74の部分には樹脂層57を設けないようにしてしてもよい。
【0143】
FPC72は、ピエゾセンサー74を間に挟んで素子基板20に対向するように配置されている。FPC72は、ピエゾセンサー74に接続されるとともに、一端側が有機EL装置102の外に張り出した張出し部を有しており、張出し部の端部には外部機器と接続するための端子(図示しない)が形成されている。FPC72は、樹脂層52と樹脂層57との間に挟まれ密着固定されている。
【0144】
タッチパネル70では、操作面となる光学フィルム53(表面処理層55)の表面を指先やタッチペン68等で押圧すると、光学フィルム53と樹脂層51とを介して有機ELパネル2が振動する。このとき、素子基板20の表面振動(音響パルス波)が発生した位置から各ピエゾセンサー74に伝達されるまでの時間がピエゾセンサー74の位置によって異なるので、各ピエゾセンサー74で検知される電気信号を元に音響パルスの発生元である入力操作位置が検出される。
【0145】
ここで、保護層40のヤング率はガラスのヤング率よりも高いので、保護層40が設けられていない場合に比べて封止基板30が良好に振動する。このため、素子基板20にも良好な振動が伝えられるので、タッチパネル70における入力操作位置の検出性能を向上できる。
【0146】
タッチパネル70では、ピエゾセンサー74が光を遮るため、タッチパネル70が表示面30a側に配置される構成の場合、ピエゾセンサー74を表示領域2a外に配置しなければならないので、ピエゾセンサー74配置場所が制約される。本実施形態では、タッチパネル70が背面20a側に配置されるため、ピエゾセンサー74を表示領域2a内にも配置できるので、タッチパネル70の設計における自由度を向上できる。
【0147】
有機EL装置102を製造する方法は、第2の実施形態に係る有機EL装置101のラミネート工程において、タッチパネル60をタッチパネル70に置き換えればよい。
【0148】
上記第3の実施形態に係る有機EL装置の構成によれば、第2の実施形態における効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0149】
素子基板20がタッチパネル70の基板を兼ねるので、第2の実施形態に係る有機EL装置101に比べて、有機EL装置102をより薄くできる。
【0150】
(電子機器)
図8は、電子機器の一例を示す図である。詳しくは、図8(a)は電子機器の一例としてのディスプレイの概略構成図であり、図8(b)は電子機器の一例としての情報携帯端末の概略構成図である。
【0151】
図8(a)に示すディスプレイ1000は、電気光学装置としての有機EL装置1(1A,1B)を電子ペーパーとして用いたブック型のディスプレイである。このディスプレイ1000には、本の綴じ代に相当する部分に、有機EL装置1(1A,1B)のFPC46に接続可能なコネクター(図示しない)を備えたヒンジ部1001が設けられている。
【0152】
ヒンジ部1001には、コネクターが回転軸を中心に回転可能に取り付けられており、コネクターを回転させることにより、有機EL装置1(1A,1B)を通常の紙をめくるようにめくれるようになっている。ヒンジ部1001には複数の有機EL装置1(1A,1B)が着脱可能に接続されていてもよい。これにより、ルーズリーフのように必要な枚数だけ有機EL装置を着脱して持ち運べるようになる。
【0153】
図8(b)に示す携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)2000は、複数の操作ボタン2001、電源スイッチ2002、および電気光学装置としての有機EL装置1を備える。携帯情報端末2000では、電源スイッチ2002をONにし、複数の操作ボタン2001を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が有機EL装置1に表示される。
【0154】
本発明の有機EL装置は、上述したブック型のディスプレイに限らず、種々の電子機器に搭載することができる。電子機器としては例えば、パーソナルコンピューター、ディジタルスチルカメラ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のディジタルビデオカメラ、カーナビゲーション装置、車載用ディスプレイ、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等があげられる。
【0155】
さらに、本発明の有機EL装置は、表示デバイス以外のデバイス、例えば、可撓性を有し、「点灯」の表示部分を触れることで電源スイッチがONされる照明装置として用いることもできる。なお、有機EL装置1を各実施形態、および変形例における有機EL装置と置き換えてもよい。
【0156】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。変形例としては、例えば以下のようなものが考えられる。
【0157】
(変形例1)
上記実施形態の電気光学装置は、抵抗膜方式のタッチパネルまたは音響パルス認識方式のタッチパネルを備えた構成であったが、上記の形態に限定されない。電気光学装置は、タッチパネルとして、表面弾性波方式、振動検出方式等の振動や音響波をピエゾセンサーで検出する方式のタッチパネルを備えた構成であってもよい。このような振動や音響波をピエゾセンサーで検出する他の方式のタッチパネルを備えた構成であっても、上記第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、電気光学装置は、タッチパネルとして、静電容量方式、赤外線方式、電磁誘導方式等の他の方式のタッチパネルを備えた構成とすることも可能である。
【0158】
(変形例2)
上記実施形態の有機ELパネルは、有機発光層で白色の発光色が得られる構成であったが、上記の形態に限定されない。有機ELパネルは、R、G、Bの各発光色が得られる構成であってもよい。
【0159】
例えば、有機発光層26において、画素6R,6G,6B毎にR、G、Bの各色の発光層を形成した、所謂3色塗り分け方式による構成であってもよい。この場合、カラーフィルター34は設けられていなくてもよい。このような構成であっても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0160】
(変形例3)
上記実施形態の有機ELパネルは、有機EL素子上に積層された電極保護層と有機緩衝層とガスバリア層とを備えた多層薄膜封止層による構成であったが、上記の形態に限定されない。有機ELパネルは、有機EL素子上の凹凸の段差が小さい場合には、平坦化機能を有する有機緩衝層を省略してもよく、例えば、有機EL素子上にガスバリア層単層の薄膜封止層を備えた構成であってもよい。また、電極保護層と有機緩衝層とガスバリア層との上にさらに1層以上の薄膜封止層を備えた構成であってもよい。このような構成であっても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0161】
(変形例4)
上記実施形態の有機ELパネルは、アクティブマトリックス型の構成であったが、上記の形態に限定されない。有機ELパネルは、パッシブ(単純)マトリックス型であってもよい。
【0162】
この場合、回路素子層21は不要となり、有機発光層26を走査電極とデータ電極とで挟持する構成となる。例えば、走査電極は素子基板20側に形成し、データ電極は封止基板30側に形成する。なお、走査電極とデータ電極とは、平面的に格子状になるように、交差する方向にそれぞれ延在して形成される。このような構成であっても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0163】
(変形例5)
上記実施形態の電気光学装置は電気光学パネルとして有機ELパネルを備えた構成であったが、上記の形態に限定されない。電気光学装置は、電気光学パネルとして、一対の基板の間に液晶層が挟持された液晶パネルを備えていてもよい。また、電気光学装置は、電気光学パネルとして、一対の基板の間に電気泳動層を備えた電気泳動パネルを備えていてもよい。このように、一対の基板間に電気光学層を挟持した薄型の電気光学パネルであれば、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0164】
1,101,102…電気光学装置としての有機EL装置、2…電気光学パネルとしての有機ELパネル、20…一対のガラス基板としての素子基板、20a…第2の面としての背面、26…電気光学層としての有機発光層、30…一対のガラス基板としての封止基板、30a…第1の面としての表示面、40…保護層、51,52,57…樹脂層、53…第1の表面層としての光学フィルム、54…基材、55…表面処理層、56…第2の表面層としての補強層、58…第3の表面層としての補強層、58a…開口部、60,70…タッチパネル、1000…電子機器としてのディスプレイ、2000…電子機器としての携帯情報端末。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のガラス基板間に挟持された電気光学層と、前記電気光学層から光が射出される側の第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面と、を有する電気光学パネルと、
前記電気光学パネルの前記第2の面側に、前記電気光学パネルに平面的に重なるように設けられたタッチパネルと、
前記電気光学パネルと前記タッチパネルとを覆うように設けられた樹脂層と、
前記樹脂層を介して前記第1の面に対向配置された光透過性を有する第1の表面層と、
前記樹脂層を介して前記タッチパネルに対向配置された第2の表面層と、
を備えていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気光学装置であって、
前記第1の面上には、前記第1の面を覆うように光透過性を有する保護層が設けられていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電気光学装置であって、
前記保護層のヤング率は、100GPa以上であることを特徴とする電気光学装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の電気光学装置であって、
前記保護層は、無機材料の酸化物または窒化物からなることを特徴とする電気光学装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電気光学装置であって、
前記無機材料は、アルミニウム、珪素、亜鉛、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、タンタル、硼素のうちの少なくとも一つであることを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の電気光学装置であって、
前記第2の表面層は、CFRP、インバー、チタン、またはチタン合金からなることを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の電気光学装置であって、
前記電気光学パネルの前記第1の面側に配置された第3の表面層をさらに備え、
前記第3の表面層は、前記電気光学パネルの周辺端部と前記第1の表面層の周辺端部とを少なくとも平面的に覆う大きさであるとともに、前記電気光学パネルの前記光が射出される領域に平面的に重なる開口部を有していることを特徴とする電気光学装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電気光学装置であって、
前記第3の表面層は、CFRP、インバー、チタン、もしくはチタン合金からなることを特徴とする電気光学装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の電気光学装置であって、
前記第1の表面層は、前記樹脂層に接する基材と、前記基材の表面に設けられた表面処理層と、を有していることを特徴とする電気光学装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の電気光学装置であって、
前記樹脂層は、ポリエチレンまたはポリエチレン共重合体を主成分とする材料からなることを特徴とする電気光学装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の電気光学装置であって、
前記タッチパネルは、抵抗膜方式のタッチパネルであることを特徴とする電気光学装置。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載の電気光学装置であって、
前記タッチパネルは、音響パルス認識方式のタッチパネルであることを特徴とする電気光学装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−27952(P2011−27952A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172861(P2009−172861)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】