説明

電気光学装置の検査方法、電気光学装置の検査装置、及び電気光学装置の製造方法

【目的】 白色光を出射する光源を用いて、単色光についての二次元配光分布を測定可能な検査装置、及び検査方法を提供する。
【解決手段】 白色光を、カラーフィルタを透過させて単色光を得る第1の工程と、上記単色光を電気光学装置に入射させ、当該電気光学装置の表示面を透過させる第2の工程と、上記電気光学装置の上記表示面を透過した上記単色光を受光して、上記電気光学装置の上記表示面の測定点と観測点とを結ぶ線が、上記電気光学装置の上記表示面の法線に対してなす角度に対する当該測定点における光の強度分布である二次元配光分布を測定する第3の工程と、を含む。それにより、上記白色光を上記カラーフィルタに透過させることにより、上記白色光から上記単色光を得ることから、上記第3の工程で、上記第2の工程で上記電気光学装置の表示面を透過した上記単色光を受光することにより、当該単色光についての上記二次元配光分布を測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置の検査方法、電気光学装置の検査装置、及び電気光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学装置の評価項目の1つとして二次元配光分布がある。二次元配光分布は、電気光学装置の表示面の測定点と観測点とを結ぶ線が電気光学装置の表示面の法線に対してなす角度と、当該測定点における光強度との関係を表す(特許文献1)。電気光学装置は、一般的に、白色光を出射する光源を用いて使われることから、二次元配光分布の測定も白色光を用いて行なわれている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−114519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし近年、プロジェクター等の、赤色、緑色、青色の3色のそれぞれに対応させた3種類の電気光学装置用いて1つの製品とする使用例が増加しつつある。その場合において、上記白色光を出射する光源を用いる二次元配光分布の測定方法では、使用実態に合わせた単色光についての二次元配光分布を測定できないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る電気光学装置の検査方法は、白色光を、カラーフィルタを透過させて単色光を得る第1の工程と、上記単色光を電気光学装置に入射させ、上記電気光学装置の表示面を透過、又は反射させる第2の工程と、上記電気光学装置の表示面を透過、又は反射した上記単色光を受光して、上記電気光学装置の表示面の測定点と、観測点と、を結ぶ線が上記電気光学装置の表示面の法線に対してなす角度に対する当該測定点における光の強度分布である二次元配光分布を測定する第3の工程と、を含む。
【0006】
本発明に係る電気光学装置の検査方法によれば、上記第1の工程で、上記白色光を上記カラーフィルタに透過させることにより、上記白色光から上記単色光を得ることから、上記第3の工程で、上記第2の工程で上記電気光学装置の表示面を透過、又は反射した上記単色光を受光することにより、当該単色光についての上記二次元配光分布を測定することができる。
【0007】
好ましくは、上記第1の工程は、上記カラーフィルタとして、赤色光を抽出するカラーフィルタ、緑色光を抽出するカラーフィルタ、又は青色光を抽出するカラーフィルタ、を用いる。
【0008】
本発明に係る電気光学装置の検査方法によれば、上記白色光を、赤色光を抽出するカラーフィルタ、緑色光を抽出するカラーフィルタ、又は青色光を抽出するカラーフィルタを透過させて得られる赤色光、緑色光、又は青色光についての二次元配光分布を測定できる。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る電気光学装置の製造方法は、上述した電気光学装置を検査する工程を含む。
【0010】
本発明に係る電気光学装置の製造方法によれば、検査工程において単色光、特に赤色光、緑色光、又は青色光についての二次元配光分布を測定できるので、白色光以外の光源と共に使用される電気光学装置についても、実際の使用時と同一の条件での検査を経た電気光学装置を得ることができる。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る電気光学装置の検査装置は、白色光を出射する光源と、電気光学装置を、当該電気光学装置の表示面が上記光源の光軸に実質的に直交するように保持する電気光学装置保持手段と、上記電気光学装置から出射される光を受光して、上記電気光学装置の表示面の測定点と、観測点と、を結ぶ線が上記電気光学装置の表示面の法線に対してなす角度に対する当該測定点における光の強度分布である二次元配光分布を測定する受光手段と、上記光源と上記電気光学装置保持手段の間に位置する、カラーフィルタを保持するカラーフィルタ保持手段と、を具備する。
【0012】
本発明に係る構成により、白色光を出射する上記光源の光軸上に保持された上記電気光学装置に、上記白色光が上記カラーフィルタを透過して生じる単色光を照射する。したがって、白色光を出射する光源を用いながら、単色光についての二次元配光分布を測定できる。
【0013】
好ましくは、上記光源と上記カラーフィルタ保持手段との間、及び上記電気光学装置保持手段と上記受光手段との間の、少なくともどちらか一方に、位相差板を着脱可能な位相差板保持手段を具備する。
【0014】
本発明に係る構成により、少なくともどちらかの面の近傍に位相差板を配置した状態の電気光学装置に対して、カラーフィルタを透過させることにより得られる単色光を照射する。したがって、白色光を出射する光源を用いながら、位相差板を透過した単色光についての二次元配光分布を測定できる。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る電気光学装置の検査装置は、光源と、電気光学装置を、上記電気光学装置の一部が上記光源の光軸上に位置するように保持することが可能な電気光学装置保持手段と、上記電気光学装置から出射される光を受光して、上記電気光学装置の表示面の測定点と、観測点と、を結ぶ線が上記電気光学装置の表示面の法線に対してなす角度と、当該測定点における光強度との関係を測定する受光手段と、上記光源と上記電気光学装置保持手段との間、及び上記電気光学装置保持手段と受光手段との間の少なくともどちらか一方に位置し、位相差板を着脱可能な位相差板保持手段と、を具備する。
【0016】
本発明に係る構成により、上記光源と上記電気光学装置保持手段との間、及び上記電気光学装置保持手段と上記受光手段との間の少なくともどちらか一方に位相差板を配置した状態の電気光学装置に対して上記光源から出射される光を照射して、二次元配光分布を測定する。したがって、位相差板を透過した光についての二次元配光分布を測定できる。
【0017】
好ましくは、上記位相差板保持手段は、上記位相差板の底面の少なくとも一部、及び側面の各辺の略中央の点と接触している。
【0018】
本発明に係る構成により、上記位相差板保持手段は上記位相差板の側面を点接触で保持する。そのため、上記位相差板保持手段を固定した状態で、位相差板に中心軸を光軸とする回転動作をさせることができ、上記位相差板の方位角の微調整が可能となる。その結果、補正効果がより一層高くなる方位角を確認でき、また、補正効果がより一層高くなる構成の位相差板を選出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施例の電気光学装置として駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の透過型液晶表示装置(以下、液晶表示装置と称する。)について図面を参照して説明する。
【0020】
まず、本実施形態に係る液晶表示装置の構成について、図1、及び図2を参照して説明する。
【0021】
図1は、液晶表示装置の後述する(図2参照)画像表示領域200を構成する、マトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。本実施形態における液晶表示装置の画像表示領域200を構成するマトリクス状に形成された複数の画素には、それぞれ、画素電極105と当該画素電極105をスイッチング制御するためのTFT102とが形成されており、画像信号が供給されるデータ線106が当該TFT102のソースに電気的に接続されている。
【0022】
また、TFT102のゲートにゲート電極103が電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線108及びゲート電極103にパルス的に走査信号を、順次に印加するように構成されている。画素電極105は、TFT102のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT102を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線106から供給される画像信号を所定のタイミングで書き込む。
【0023】
画素電極105を介して電気光学物質の一例としての液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号は、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として液晶表示装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射する。
【0024】
ここで保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極105と対向電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量104を付加する。この蓄積容量104は、走査線108に並んで設けられ、固定電位側容量電極を含むとともに定電位に固定された容量電極110を含んでいる。
【0025】
図2は、図1に示すマトリクス状に形成された複数の画素からなる画像表示領域200等を含むTFTアレイ基板を、その上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た、液晶表示装置の平面図である。
【0026】
本実施形態に係る液晶表示装置では、TFTアレイ基板202と対向基板204とが対向配置されている。TFTアレイ基板202と対向基板204との間に図示しない液晶層が封入されており、TFTアレイ基板202と対向基板204とは、画像表示領域200の周囲に位置するシール領域に設けられたシール材206により相互に接着されている。
【0027】
シール材206は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板202上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。また、シール材206中には、TFTアレイ基板202と対向基板204との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。
【0028】
シール材206が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域200の額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板204側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板202側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
【0029】
周辺領域のうち、シール材206が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路208及び外部回路接続端子210がTFTアレイ基板202の一辺に沿って設けられている。また、走査線駆動回路212は、この一辺に隣接する二辺に沿い、且つ、上記額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域200の両側に設けられた二つの走査線駆動回路212間をつなぐため、TFTアレイ基板202の残る一辺に沿い、且つ、上記額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の接続配線216が設けられている。
【0030】
また、対向基板204の4つのコーナー部には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材214が配置されている。他方、TFTアレイ基板202にはこれらのコーナー部に対向する領域において上下導通端子が設けられている。これらにより、TFTアレイ基板202と対向基板204との間で電気的な導通をとることができる。
【0031】
なお、本実施形態に係る液晶表示装置はモジュール化されている。すなわち、外部回路接続端子210にフレキシブルプリント基板(以下、FPCと称する。)25が取り付けられ(図3参照)、防塵ガラス(図示せず)等とともにケース内に収容されている。FPC25には、例えば外部回路接続端子210又は検査用の端子に接続された複数の信号線が配線され、後述する駆動信号供給装置330から供給される駆動信号を液晶表示装置に伝達する。
【0032】
次に、上述したような液晶表示装置の検査を行う、実施例の検査装置の構成について、図3から図7を参照して説明する。図3は、本実施形態に係る検査装置の概略的な構成を示す図であり、図4、及び図5はカラーフィルタ保持手段、及び位相差板保持手段の組み合わせを示した概略図である。そして、図6は図3に示す検査装置における二次元配光測定手段の概略的な構成を示す図であって、図7(a)及び図7(b)は二次元配光測定手段の機能について説明するための模式図である。
【0033】
図3において、検査装置は、筐体300内に主要部として、二次元配光測定手段302、液晶表示装置を保持するステージ304、図示しない複数のプローブが設けられたプローブユニット308、及び白色光光源310を備えている。また、筐体300の外部には、液晶表示装置に検査用の駆動信号を供給する駆動信号供給装置330と、視野角特性判定手段としての検査端末340が設けられている。検査端末340は、パーソナルコンピュータ、ワークステーション等により構成される。
【0034】
そして、ステージ304の上下に位相差板を着脱可能な第1の位相差板保持手段312、及び第2の位相差板保持手段322が、それぞれ第1の位相差板保持手段装着部314、及び第2の位相差板保持手段装着部324を介して備えられている。
【0035】
そしてさらに、白色光光源310と第2の位相差板保持手段322を支持する第2の位相差板保持手段装着部324との間に、カラーフィルタを着脱可能なカラーフィルタ保持手段332が、カラーフィルタ保持手段装着部334を介して備えられている。
【0036】
二次元配光測定手段302は二次元配光分布を測定可能な光学系を備えている。図3には、二次元配光測定手段302における光学系の光軸645を示してある。筐体300内において二次元配光測定手段302は、ステージ304の上方に配置される。なお、二次元配光測定手段302の詳細な構成については後述する。
【0037】
白色光光源310はステージ304に保持された液晶表示装置20に検査光を照射する。白色光光源310は、ファイバ式としてもよいし、レーザ装置や蛍光管を用いて構成してもよい。図3に示すように、白色光光源310は液晶表示装置20の下方即ちステージ304の下方に配置される。
【0038】
ステージ304は、該ステージ304を図3中の矢印Aで示す水平方向に移動させることが可能な移動機構部306によって、筐体300内に水平に支持される。また、ステージ304の上面には検査対象となる液晶表示装置20を載置するための凹部311が形成されている。また、ステージ304には、該ステージ304に載置された液晶表示装置20の画像表示領域200に後述する白色光光源310から出射される検査光を導くための開口部309が設けられている。
【0039】
プローブユニット308は、図示しないプローブ移動機構部によって筐体300内に支持され図3に示す矢印Bで示す垂直方向に移動可能である。プローブユニット308は、FPC25に配線された複数の信号線に対応する複数のプローブを備えている。図3に示すように、プローブユニット308は検査用の駆動信号供給装置330と接続されており、検査用の駆動信号供給装置330から出力される所定の検査用駆動信号はプローブユニット308に供給される。そして、プローブユニット308は供給された検査用駆動信号を複数のプローブを介してFPC25における複数の信号線に供給する。
【0040】
駆動信号供給装置330は、液晶表示装置の画像表示領域200に検査用の画像を表示させるための検査用の駆動信号を供給する。後述するように、本実施形態における検査用の画像は全白と全黒の2種類あるので、駆動信号供給装置330は、上記2種類に対応した画像信号を供給する。
【0041】
上述したように、ステージの上下には第1の位相差板保持手段312、及び第2の位相差板保持手段322が、そして、第2の位相差板保持手段322と白色光光源との間にはカラーフィルタ保持手段332が備えられている。したがって、カラーフィルタ保持手段332に任意の範囲の波長の光のみを透過させるカラーフィルタを保持させることにより、ステージに保持されている液晶表示装置に対して、白色光を、カラーフィルタを透過させて得られる任意の単色光を照射できる。また、上記単色光を位相差板を透過させた光を照射することも可能であり、さらに液晶表示装置により変調された光を位相差板を透過させた光を二次元配光測定手段302で受光させることも可能である。
【0042】
図4、及び図5に第1、及び第2の位相差板保持手段322とカラーフィルタ保持手段332の組み合わせを概略的に示す。図4はカラーフィルタ保持手段332を備え、さらに第1の位相差板保持手段312、及び第2の位相差板保持手段322のうちの少なくとも1つを備えたものである。そして図5は、カラーフィルタ保持手段332を備えずに、第1の位相差板保持手段312、及び第2の位相差板保持手段322のうちの少なくとも1つを備えたものである。これらの組み合わせの1つを選択することにより、ステージ304に保持された液晶表示装置に、白色光、又は任意の範囲の波長の検査光を照射でき、さらに、上記検査光が液晶表示装置に照射される前、後、あるいはその双方で位相差板を透過させて二次元配光を測定できる。
【0043】
なお、反射型の液晶表示装置に応用する場合には、白色光光源310はハーフミラー等と共にステージ上方に配置される。また、カラーフィルタ保持手段装着部334は第2の位相差板保持手段装着部324とステージの間に配置することも可能である。
【0044】
続いて、図3の他、図6及び図7を参照して二次元配光測定手段302の構成及び機能について説明する。二次元配光測定手段302は、例えば上記文献1に開示されているような二次元配光分布を測定可能な光学系を用いて構成されている。
【0045】
図6において、この光学系には、対物レンズ602、リレーレンズ系604、及びフィルタ606が含まれている。なお、図6中、上記光学系の光軸645を示してある。図3、及び図6において、液晶表示装置20の画像表示領域200における画像表示面642は、図6に示す光学系の対物レンズ602の前側焦点付近に配置される。本実施形態では、画像表示面642が二次元配光分布の測定面とされる。なお、本実施形態では、画像表示面642における測定スポットの径Rは、図6に示す光学系の対物レンズ602の形状によって変化する。本実施形態では、測定スポットの径Rは好ましくは200μm程度とする。
【0046】
また、二次元配光測定手段302には、前述の光学系からの光を検出する光検出手段として、撮像手段608が設けられている。なお、光検出手段として例えばCCDを用いてもよい。対物レンズ602は、画像表示面642からの出射光をその角度に応じた位置に集めて後側焦点に結像させる。リレーレンズ系604は、対物レンズ602によって結像された像をフィルタ606を介して撮像手段608の光検出面上に縮小して再結像させる。撮像手段608によって、光検出面上に再結像された像が撮像され、二次元配光分布が得られる。即ち該撮像手段608における光検出面は撮像面となる。なお、図6において、撮像手段608の詳細な構成について図示は省略する。
【0047】
ここで、図7(a)及び図7(b)を参照して二次元配光分布について説明する。二次元配光分布は、図7(a)において、角度θとして示す仰角及び角度φとして示す方位角に対応する例えば光強度の分布として表される。図7(a)に示すように、方位角φは、測定面上に0度位置が規定されており、該0度位置から測定点600を中心として右回りに、左側(L)90度位置、180度位置、及び右側(R)90度位置が規定される。仰角θは、測定面上の観測点が測定点600の真上に位置する場合、即ち測定面の法線上に位置する場合を、θ=0度として、観測点を測定点600を中心とする同心円上に傾けた場合に、観測点と測定点600とを結ぶ線が、測定面の法線に対してなす角度を表す。そして、観測点の測定面における位置は方位角φによって規定される。
【0048】
図7(b)には、撮像面において撮像される二次元配光分布を概略的に示してある。二次元配光分布上では、右回りに方位角φの0度位置、左側(L)90度位置、180度位置、及び右側(R)90度位置が規定される。
【0049】
ここに、図6において、対物レンズ602に入射する、画像表示面642からの出射光が光軸645に対してなす角が仰角θに相当する。該仰角θは、対物レンズ602によって後側焦点面上の距離yに変換され、リレーレンズ系604によって撮像面において距離yに比例する距離とされる。よって、例えば図7(a)において仰角θ=60度における光強度の分布は、方位角φに応じて仰角0度を示す位置を中心とする円として表される。また、仰角θ=10度における光強度の分布は、仰角θ=60度における光強度の分布を表す円と同心円として、該円より小さい径の円として表される。
【0050】
次に、図8、及び図9を参照して、検査装置10によって行われる液晶表示装置20の検査について説明する。図8(a)、図8(b)及び図8(c)はそれぞれ、検査装置10おいて測定された二次元配光分布の測定結果の一例を示す図であって、図9は、横軸に仰角並びに縦軸に光強度及びコントラストをとって表された二次元配光分布の測定結果を示す視野角特性図である。
【0051】
液晶表示装置20の検査時、画像表示面642が二次元配光測定手段302における光学系の前側焦点位置に配置されるが、移動機構部306によってステージ304を自動的に移動させることによって、該位置決めは容易に行うことができる。
【0052】
また、駆動信号供給装置330から出力される検査用駆動信号が、プローブユニット308を介して液晶表示装置20に供給される。液晶表示装置20では、供給された検査用駆動信号に基づいて、走査線駆動回路212及びデータ線駆動回路208より出力される走査信号、及び画像信号が各画素部に供給されることによって、画像表示領域200において画像表示が行われる。本実施形態では、検査用駆動信号に基づいて画像表示領域200において、明状態として全白表示、及び暗状態として全黒表示が行われる。
【0053】
そして、二次元配光測定手段302によって、全白表示及び全黒表示それぞれにおいて二次元配光分布が測定される。二次元配光測定手段302には画像表示領域200からの表示光が入射され、該表示光を前述した光学系を介して撮像手段608によって受光することによって、二次元配光分布の測定が行われる。なお、液晶表示装置20の表示光は、白色光光源310から画像表示領域200に照射された検査光の透過光として、当該液晶表示装置20から出射される。
【0054】
検査端末340は、二次元配光測定手段302における撮像手段608によって撮像された二次元配光分布に基づいて、液晶表示装置20における視野角特性を判定する。
【0055】
図8(a)には、全黒表示における二次元配光分布の測定結果の一例を示してある。図8(a)に示す測定結果について、方位角φが左側(L)135度及び右側(R)45度付近における仰角θに応じた光強度の分布は、図9において視野角特性曲線902として表される。そして、全黒表示の視野角特性曲線902におけるピーク、即ち光強度が最小となる値に対応する仰角θは画像表示面642の真正面付近を示す0度付近となる。
【0056】
ここに、図8(a)は、仰角θが左側及び右側にそれぞれ0度から30度の範囲における二次元配光分布を示すものである。そして、図8(a)において、方位角φが左側(L)135度及び右側(R)45度付近で仰角θを左側に変化させる場合は、仰角θに応じて二次元配光分布は、仰角0度を示す位置から左側(L)の方位角135度を示す点線に沿って左斜め上に向かう方向に表される。他方、方位角φが左側(L)135度及び右側(R)45度付近で仰角θを右側に変化させる場合は、仰角θに応じて二次元配光分布は、仰角0度を示す位置から右側(R)の方位角45度を示す点線に沿って右斜め下に向かう方向に表される。更に、図9において、左側に変化させた場合の仰角θを負(−)の値として示してあり、右側に変化させた場合の仰角θを正(+)の値として示してある。
【0057】
また、図9において、全白表示における二次元配光分布の測定結果について、方位角φが左側(L)135度及び右側(R)45度付近における仰角θに応じた光強度の分布は、全白表示の視野角特性曲線904として表される。視野角特性曲線904におけるピーク、即ち全白表示において光強度が最大となる値に対応する仰角θは画像表示面642の真正面付近を示す0度付近となる。
【0058】
図8(a)に示す測定結果は、図9に示す視野角特性曲線904において光強度が最大となる値に対する、図9に示す視野角特性曲線902における光強度の値が占める割合を各仰角毎に算出して、該割合の分布として表したものである。図8(a)において、仰角0度即ち画像表示面642の真正面付近を中心として、同心円状に、右側の仰角0度から30度付近及び左側の仰角0度から30度付近の範囲内で、光強度の分布は0[%]から40[%]へと変化する。なお、図8(a)には、前述のように算出された割合が、0[%]となる領域、10[%]となる領域、20[%]となる領域、30[%]となる領域、及び40[%]となる領域に分けて測定結果が示されている。
【0059】
また、図8(b)には、各仰角毎に、全白表示における光強度及び全黒表示における光強度の比、即ちコントラスト比を算出して、コントラスト比の分布として表された二次元配光分布の測定結果を、図8(a)と同様に示してある。図8(b)に示す測定結果について、方位角φが左側(L)135度及び右側(R)45度付近における仰角θに応じたコントラスト比の値は、図9においてコントラスト比の視野角特性曲線906として表される。図9に示す視野角特性曲線906において、仰角0度付近、即ち画像表示面642の真正面付近において、コントラスト比の値は最大となる。
【0060】
この、コントラスト比の値は最大となる仰角θは0度であることが好ましく、0度から大きくずれると表示特性を損なう可能性がある。したがって、視野角特性の判定の際には、所定の範囲を定め、その範囲内にあるものを良品と判定する。
【0061】
上記「ずれ」は検査光の波長、すなわち検査光の色により同一の液晶表示装置を測定しても若干異なる値を示すことが判明している。また一方で、上記「ずれ」による表示特性の劣化は、位相差板によってある程度までは補正は可能である。したがって、白色光ではなく単色光を照射される液晶表示装置については、二次元配向分布測定と、その結果を基にする視野角特性の判定を、単色光について実施することが好ましい。さらに、光が照射される面と表示面との少なくともどちらか一方に位相差板を配置されて用いられる液晶表示装置については、二次元配向分布測定と、その結果を基にする視野角特性の判定は、位相差板を配置した上で実施することが好ましい。本発明に係る検査方法、及び検査装置は従来の二次元配向測定装置に、第1の位相差板保持手段312、第2の位相差板保持手段322、及びカラーフィルタ保持手段332を付加することにより、上述の態様で使用される液晶表示装置に対して、使用態様に合致した二次元配向分布測定を可能としている。
【0062】
図10〜13は同一の液晶表示装置に対して、本実施形態の検査装置を用いて白色光及び単色光を照射したときの二次元配向分布の測定結果である。図8と同様に仰角0度即ち画像表示面642の真正面付近を中心として、同心円状に、右側の仰角0度から30度付近及び左側の仰角0度から30度付近の範囲内で光強度の分布を10[%]おきに分けて示したものである。
【0063】
図10は白色光についての二次元配向分布、図11は赤色光についての二次元配向分布、図12は緑色光についての二次元配向分布、そして、図13は青色光についての二次元配向分布の一例を示したものであり、それぞれ、(a)が全黒表示、(b)がコントラスト、(c)が全白表示である。
【0064】
図示するように、同一の液晶表示装置においても検査光の色(波長)によりそれぞれ異なる二次元配向分布が得られ、コントラスト比の値は最大となる仰角θの値も異なる結果が得られる。したがって、本実施形態の検査装置、又は、本実施形態の検査方法を用いることにより、仰角θが0度からずれることによる表示特性の劣化が所定の範囲を超える液晶表示装置を確実に選出し、外部に供給されることを回避できる。
【0065】
液晶表示装置の二次元配向分布を単色光で検査すべき理由は、波長により二次元配向分布が異なることのみではない。液晶表示装置に検査光として単色光を照射した場合、当該検査光の波長により透過率が異なり、さらに、同一の液晶表示装置でも印加電圧により全白表示にしたときの二次元配向分布が異なった値を示すことも理由である。
【0066】
図14は、液晶表示装置に単色光を照射した場合の印加電圧と透過率の関係を示したものである。赤色光の透過率曲線132と緑色光の透過率曲線134は、印加電圧の増加とともに透過率も上昇することを示している。それに対し青色光の透過率曲線136は、印加電圧が3.5ボルト付近で透過率が最大となることを示している。
【0067】
液晶表示装置は、透過率が最大となる電圧と0電圧の間を所定の段階で区切ることにより階調表示を行っている。したがって、上記の液晶表示装置を、青色光が照射される態様で使用する場合は最大印加電圧を3.5ボルトに設定し、赤色光又は緑色光が照射される態様で使用する場合は最大印加電圧を5.0ボルトに設定する。
【0068】
したがって、製品としての使用時に単色光を照射されることは確実であるが、どの波長(色)の光が照射されるかは定かではない液晶表示装置の二次元配向分布検査は、青色光での検査は印加電圧を3.5ボルトに設定し、赤色光、及び緑色光での検査は印加電圧を5.0ボルトに設定することが好ましい。つまり、照射される光により印加電圧を変える必要があり、その印加電圧により二次元配向分布も異なる値を示すので、検査時の印加電圧と使用時の印加電圧を同一にするためにも、検査光を単色光にする必要がある。
【0069】
次に、本発明に係る位相差板保持手段について説明する。図15は本発明における位相差板保持手段312の形態を示す図である。図15(a)は平面図で、図15(b)は、上記図15(a)のA−A´線における断面図、そして図15(c)は第1の位相差板保持手段(以下、位相差板保持手段と称する。)312に位相差板316を載置した状態の斜視図である。(第2の位相差板保持手段も同様である。)
位相差板保持手段312は、略正方形の保持手段開口部156を囲む略正方形の平らな枠状の部材であり、内側には位相差板316を載置するための段差部158が形成されている。図15(a)に示すように段差部の平面形状は正方形ではなく、4つの隅部159と4つの中央点152、及び隅部159と中央点152との間を結ぶ直線部からなる形状である。そして、各直線部は隅部159へ向かうに伴い外周方向へ傾斜している。つまり、1つの隅部159へ向かう2つの直線部が成す角度は90度未満の鋭角である。
【0070】
この段差部に、1辺の長さが、互い対向する2つの中央点152を結ぶ長さと略同一である、略正方形の位相差板を載置すると、各辺の略中央の部分が段差部158の中央点152と接する。図15(a)の154の線は、位相差板を各辺が位相差板保持手段312の外周線と平行になるように載置したと仮定したときの位置を示したものである。図示するように、段差部158は、中央点152近辺以外は位相差板で覆われない。したがって、位相差板を所定の角度内で、図15(c)の矢印Cで示す光軸645を中心軸とする回転方向の移動をさせることができる。
そして上記の角度は、上記直線部の傾斜の度合いで決まる。したがって、本発明に係る位相差板保持手段312によれば、ステージ304で保持された液晶表示装置20に照射する検査光を、光軸を中心とする若干の回転移動をさせた位相差板を透過させられる。液晶表示装置20を透過した検査光についても同様である。
【0071】
上述した位相差板による視野角特性の補正効果は、位相差板を上記回転移動させ、位相差板と液晶表示装置との角度を変化させることで変動することが経験的に判明している。したがって、本発明に係る位相差板保持手段を用い、位相差板を回転させつつ液晶表示装置の二次元配向分布を測定することで、上記補正効果が最も高くなる角度を算出できる。その結果、位相差板と組み合わせて用いられる液晶表示装置については、当該組み合わせ時の角度と同一の角度になるように位相差板を回転させて二次元配向分布を測定でき、使用態様に合わせた検査を実施できる。また、上記組み合わせ時の角度が決定されていない場合は、上記補正効果が最も高くなる角度を算出することにより、当該角度を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】液晶表示装置の等価回路図。
【図2】液晶表示装置の平面図。
【図3】本実施形態に係る検査装置の概略的な構成を示す図。
【図4】カラーフィルタ保持手段、及び位相差板保持手段の組み合わせを示す概略図。
【図5】位相差板保持手段の組み合わせを示す概略図。
【図6】二次元配光測定手段の概略的な構成を示す図。
【図7】二次元配光測定手段の機能について説明するための模式図。
【図8】液晶表示装置の二次元配向分布の一例を示す図。
【図9】視野角特性図。
【図10】白色光についての二次元配向分布の一例を示す図。
【図11】赤色光についての二次元配向分布の一例を示す図。
【図12】緑色光についての二次元配向分布の一例を示す図。
【図13】青色光についての二次元配向分布の一例を示す図。
【図14】液晶表示装置の印加電圧と透過率の関係を示す図。
【図15】位相差板保持手段の形成を示す図。
【符号の説明】
【0073】
10…検査装置、20…液晶表示装置、25…FPC、53…額縁遮光膜、102…TFT、103…ゲート電極、104…蓄積容量、105…画素電極、106…データ線、108…走査線、110…容量電極、132…赤色光の透過率曲線、134…緑色光の透過率曲線、136…青色光の透過率曲線、152…中央点、154…位相差板を載置したと仮定したときの位置、156…保持手段開口部158…段差部、159…隅部、200…画像表示領域、202…TFTアレイ基板、204…対向基板、206…シール材、208…データ線駆動回路、210…外部回路接続端子、212…走査線駆動回路、214…上下導通材、216…接続配線、300…筐体、302…二次元配光測定手段、304…ステージ、306…移動機構部、308…プローブユニット、309…開口部、310…白色光光源、311…凹部、312…第1の位相差板保持手段、314…第1の位相差板保持手段装着部、322…第2の位相差板保持手段、324…第2の位相差板保持手段装着部、330…駆動信号供給装置、332…カラーフィルタ保持手段、334…カラーフィルタ保持手段装着部、340…検査端末、602…対物レンズ、604…リレーレンズ系、606…フィルタ、608…、撮像手段、642…画像表示面、645…光軸、902…全黒表示の視野角特性曲線、904…全白表示の視野角特性曲線、906…コントラスト比の視野角特性曲線。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色光を、カラーフィルタを透過させて単色光を得る第1の工程と、
前記単色光を電気光学装置に入射させ、前記電気光学装置の表示面を透過、又は反射させる第2の工程と、
前記電気光学装置の表示面を透過、又は反射した前記単色光を受光して、前記電気光学装置の表示面の測定点と、観測点と、を結ぶ線が前記電気光学装置の表示面の法線に対してなす角度に対する当該測定点における光の強度分布である二次元配光分布を測定する第3の工程と、を含むことを特徴とする電気光学装置の検査方法。
【請求項2】
前記第1の工程は、前記カラーフィルタとして、赤色光を抽出するカラーフィルタ、緑色光を抽出するカラーフィルタ、又は青色光を抽出するカラーフィルタ、を用いることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の検査方法。
【請求項3】
請求項1、又は2に記載の検査方法を用いて電気光学装置を検査する工程を含むことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
白色光を出射する光源と、
電気光学装置を、当該電気光学装置の表示面が前記光源の光軸に実質的に直交するように保持する電気光学装置保持手段と、
前記電気光学装置から出射される光を受光して、前記電気光学装置の表示面の測定点と、観測点と、を結ぶ線が前記電気光学装置の表示面の法線に対してなす角度に対する当該測定点における光の強度分布である二次元配光分布を測定する受光手段と、
前記光源と前記電気光学装置保持手段の間に位置する、カラーフィルタを保持するカラーフィルタ保持手段と、
を具備することを特徴とする電気光学装置の検査装置。
【請求項5】
前記光源と前記カラーフィルタ保持手段との間、及び前記電気光学装置保持手段と前記受光手段との間の、少なくともどちらか一方に、位相差板を着脱可能な位相差板保持手段を具備することを特徴とする請求項4に記載の電気光学装置の検査装置。
【請求項6】
光源と、
電気光学装置を、当該電気光学装置の一部が前記光源の光軸上に位置するように保持することが可能な電気光学装置保持手段と、
前記電気光学装置から出射される光を受光して、前記電気光学装置の表示面の測定点と、観測点と、を結ぶ線が前記電気光学装置の表示面の法線に対してなす角度と、当該測定点における光強度との関係を測定する受光手段と、
前記光源と前記電気光学装置保持手段との間、及び前記電気光学装置保持手段と受光手段との間の少なくともどちらか一方に位置し、位相差板を着脱可能な位相差板保持手段と、
を具備することを特徴とする電気光学装置の検査装置。
【請求項7】
前記位相差板保持手段は、前記位相差板の底面の少なくとも一部、及び側面の各辺の略中央の点と接触していることを特徴とする請求項5、又は6に記載の電気光学装置の検査装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−85893(P2007−85893A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275192(P2005−275192)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】