説明

電気光学装置及びその製造方法、並びに電子機器

【課題】 一対の基板に電気光学物質を挟持してなる電気光学装置において、シール材の配向膜への浸透や侵入を防止する。
【解決手段】 一対の基板のうち少なくとも一方の基板上における少なくとも画像表示領域に配向膜を形成する第1工程と、配向膜が形成された基板上における周辺領域に硬化前のシール材を塗布する第2工程と、シール材において、少なくとも配向膜と面する一部を硬化させる第3工程と、一対の基板を、シール材を介して貼り合せる第4工程と、シール材を全体的に硬化させる第5工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶装置等の電気光学装置及びその製造方法、並びに該電気光学装置を具備してなる例えば液晶プロジェクタ等の電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置には、例えば、シール材によって貼り合わされた一対の基板間に電気光学物質として液晶を挟持してなる液晶装置がある。このような液晶装置では、液晶の配向制御を、特定の表面形状をもつ配向膜により行う。より具体的には、配向膜は、例えば、一対の基板のうち少なくとも一方の基板における液晶と対向する表面上に、シリカ(SiO2)等の無機材料から形成される。
【0003】
また、シール材は、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等から形成される。そして、液晶装置の製造プロセスにおいて、シール材を一対の基板のうち少なくとも一方の基板上に塗布した後、紫外線照射、加熱等により硬化する。この際、シール材が硬化されるまでに、配向膜に、シール材の成分が拡散して浸透或いは浸入することがある。その結果、配向膜において、シール材の成分が浸透或いは浸入した部分において、液晶の配向制御が正常に行われなくなる恐れがある。このような配向不良は、特に、配向膜においてシール材近傍に位置する配向膜部分に生じる傾向がある。そして、このような配向不良が生じると、画像表示時、光漏れが生じて表示画像の品質が劣化する恐れがある。
【0004】
このような問題点を解決するために、紫外線硬化樹脂から形成されるシール材を硬化させる際、該シール材に紫外線照射が十分に行われるようにするための、一対の基板の構成が、特許文献1に開示されている。また、特許文献2によれば、一対の基板をシール材によって貼り合せた後、液晶を注入する前に、一対の基板を加熱することにより、紫外線硬化樹脂から形成されるシール材から配向膜に浸透或いは浸入する成分を揮発させる技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平4−107530号公報
【特許文献2】特開平7−168192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の技術によれば、既に説明したように、シール材を硬化させる際に、配向膜にシール材の成分が浸透或いは浸入する恐れがある。また、特許文献2に開示の技術によれば、液晶装置の製造プロセスにおける工程数が増加して、その手間が煩雑となる恐れがある。
【0007】
本発明は上述の問題点に鑑みなされたものであり、上述したような、シール材の成分の、配向膜への浸透や侵入を防止して、高品質な画像表示を行うことが可能な電気光学装置及びその製造方法、並びにこのような電気光学装置を備えてなる液晶プロジェクタ等の電子機器を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電気光学装置の製造方法は、上記課題を解決するため、電気光学物質を挟持してなる一対の基板を備えた電気光学装置を製造する電気光学装置の製造方法であって、前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板上における少なくとも画像表示領域に配向膜を形成する第1工程と、前記配向膜が形成された前記基板上における、前記画像表示領域の周辺に位置する周辺領域に、硬化前のシール材を塗布する第2工程と、前記シール材において、少なくとも前記配向膜と面する一部を硬化させる第3工程と、前記一対の基板を、前記シール材を介して貼り合せる第4工程と、前記シール材を全体的に硬化させる第5工程とを含む。
【0009】
本発明の電気光学装置の製造方法によって製造される電気光学装置において、シール材によって貼り合わされた一対の基板間に、電気光学物質として、例えば液晶が挟持されている。また、一対の基板の少なくとも一方の基板上の画像表示領域には配向膜が形成される。そして、電気光学装置を駆動させない状態で、電気光学物質は配向膜により所定の配向状態をとる。このような電気光学装置では、その動作時に、画素毎に電気光学物質に画像信号に応じた電圧を印加することにより、該電気光学物質の配向状態を変えることで、例えば光源から入射される光を変調する。そして、電気光学物質によって変調された光が表示光として出射されることにより、画像表示が行われる。
【0010】
本発明の電気光学装置の製造方法において、第1工程では、例えば、一対の基板の少なくとも一方の基板上の少なくとも画像表示領域に、シリカ(SiO2)等の無機材料を斜方蒸着する。この際、基板上に蒸着された無機材料は、所定角度の柱状構造物が配列するように、成長することにより、配向膜が形成される。こうして得られる配向膜は、表面形状効果により、電気光学物質を配向させることができる。また、ポリイミド等の有機材料を、一対の基板の少なくとも一方の基板上の少なくとも画像表示領域に成膜した後、該有機膜にラビング処理を施すことにより配向膜を形成するようにしてもよい。
【0011】
続いて、第2工程では、第1工程において、配向膜が形成された基板上の周辺領域に、例えば、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、又は紫外線・熱併用型硬化樹脂等の樹脂材料からなるシール材を塗布する。この際、シール材を、スクリーン印刷するか又はディスペンサーで描画することにより、画像表示領域を囲むように、例えば額縁状にシール材を塗布する。また、第1工程において、一対の基板の各々に配向膜が形成されている場合には、一対の基板のうち少なくとも一方の基板上にシール材を塗布するようにしてもよいし、一対の基板の両方にシール材を塗布するようにしてもよい。第2工程が終了すると、硬化されていない状態のシール材が、周辺領域に塗布された状態となる。このシール材を、その一部を切り欠いた状態で塗布することにより、第5工程において一対の基板を貼り合わせた後に、この一対の基板間に、液晶等の電気光学物質を注入するための注入口を設けるようにしてもよい。
【0012】
続いて、第3工程では、シール材に対して紫外線照射を行うか又はシール材を加熱することにより、シール材において、少なくとも配向膜と面する一部を硬化させる。この際、シール材は全体的に硬化されない、即ち第3工程終了時、シール材において硬化されない部分が残ることとなる。より具体的には、第3工程では、シール材を、シール材における基板と対向する面から、シール材の内部に向かって、配向膜の厚さより厚く硬化させる。これに加えて若しくは代えて、シール材における電気光学物質と接触することになる側の表面から、シール材の内部に向かって、シール材を硬化させるようにしてもよい。
【0013】
その後、第4工程において、前述したように硬化されない部分を有するシール材を介して、一対の基板を対向配置させて貼り合せる。この際、一対の基板の各々の対向面に、シール材における硬化されていない部分が面するように、一対の基板を対向配置させる。第3工程では、シール材は全体的に硬化されないため、第4工程において、一対の基板を、該一対の基板の間隔即ちギャップが所定値となるように対向配置させることが可能となる。例えば、シール材中に、グラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材を散布して、一対の基板の各々における対向面とは反対側の面に対して所定の圧力を加えて、一対の基板のギャップを所定値に維持しつつ、対向配置させる。ここで、第3工程で、シール材において、基板と対向する面を含む一部が硬化されている場合には、該硬化部分の厚さに対応して、シール材に散布するグラスファイバ或いはガラスビーズのサイズ、より具体的には、例えばガラスビーズの径を調整することにより、一対の基板のギャップを調整するようにしてもよい。
【0014】
続いて、第5工程において、シール材を全体的に硬化させる。そして、例えば、第5工程の後に、一対の基板間に液晶を注入することにより、電気光学装置を形成する。
【0015】
以上説明したような、本発明の電気光学装置の製造方法によれば、第4及び第5工程の前に、第3工程を行うことにより、硬化前のシール材の一部から、シール材の成分が配向膜に浸透或いは浸入する時間を、既に説明したような先行技術と比較して顕著に短くすることが可能となる。よって、第2工程から第5工程までの間に、配向膜に、特にシール材の近傍に位置する配向膜部分に、シール材が浸透或いは浸入する量を低減することができる。その結果、配向膜による配向機能が、シール材の浸透或いは浸入によって損なわれることを効果的に防止することが可能となる。また、第3工程から第5工程までの各工程は、同一の製造装置で行うことができるため、新たな製造工程の追加を伴うこと無く行うことが可能である。
【0016】
よって、以上説明したように、本発明の電気光学装置の製造方法では、液晶を封入後に、液晶の配向不良を防止することができるため、該電気光学装置の製造方法により製造された電気光学装置では、光漏れを防止して高品質な画像表示を行うことが可能となる。
【0017】
本発明の電気光学装置の製造方法の一態様では、前記第3工程では、前記シール材を、前記シール材における前記配向膜が形成された基板と対向する面から、前記シール材の内部に向かって、前記配向膜の厚さより厚く硬化させる。
【0018】
この態様によれば、第4及び第5工程の前に、第3工程を行なうことにより、第2工程から第5工程までの間に、配向膜に、特に配向膜におけるシール材の近傍に位置する配向膜部分に、シール材が浸透或いは浸入する量を、より一層顕著に低減することが可能となる。
【0019】
本発明の電気光学装置の製造方法の他の態様では、前記第3工程では、前記シール材を、前記シール材における前記電気光学物質と接触することになる側の表面から、前記シール材の内部に向かって硬化させる。
【0020】
この態様によれば、第3工程で、シール材において、電気光学物質と接触することになる側の表面を含む一部を硬化させておき、第5工程でシール材を全体的に硬化させることにより、シール材が配向膜に侵入しやすく且つ最も配向不良を引き起こしやすい領域について、該シール材の侵入を効果的に防ぐことができる。また特に、例えば、両基板の貼り合わせ前に電気光学物質をシール材に囲まれた領域に滴下する際に、シール材において硬化されていない部分が電気光学物質に接触して、この部分よりシール材の成分が、電気光学物質中に混入する事態を防止することができる。これらの結果、液晶の配向が乱れる事態をより確実に防止することができる。
【0021】
例えば、第3工程では、第2工程でシール材が塗布された基板における、シール材が塗布された側と反対側の基板面に対して、該基板面における中央よりから斜め外側に向けて、即ち、シール材における電気光学物質と接触することになる側の表面に対して、前述の反対側の基板面から斜めに光を照射する。その結果、シール材において、電気光学物質と接触することになる側の表面を含む一部を硬化させることが可能となる。
【0022】
本発明の電気光学装置の製造方法の他の態様では、前記第1工程では、前記一対の基板に夫々前記配向膜を形成する。
【0023】
この態様によれば、第2工程で、例えば夫々配向膜が形成された一対の基板の両方にシール材を塗布した後、第3工程で、一対の基板の各々について、シール材において、少なくとも配向膜と面する一部を硬化させる。このように製造することにより、一対の基板の各々について、第2工程から第5工程までの間に、配向膜に、特にシール材の近傍に位置する配向膜部分に、シール材が浸透或いは浸入する量を低減することができる。尚、このように製造された電気光学装置では、電気光学物質は、一対の基板の各々に形成された配向膜によって所定の配向状態をとる。
【0024】
本発明の電気光学装置の製造方法の他の態様では、前記第3工程及び前記第5工程において、前記シール材に紫外線照射を行って、前記シール材を硬化させる。
【0025】
この態様によれば、第2工程から第5工程までの間に、配向膜に、特にシール材の近傍に位置する配向膜部分に、シール材における、特に紫外線照射により硬化される成分が浸透或いは浸入する量を低減することができる。
【0026】
本発明の電気光学装置の製造方法の他の態様では、前記第3工程及び前記第5工程において、前記シール材を加熱して、前記シール材を硬化させる。
【0027】
この態様によれば、第2工程から第5工程までの間に、配向膜に、特にシール材の近傍に位置する配向膜部分に、シール材における、特に加熱により硬化される成分が浸透或いは浸入する量を低減することができる。
【0028】
本発明の電気光学装置の製造方法の他の態様では、前記第1工程では、前記配向膜を、無機材料により形成する。
【0029】
この態様によれば、第1工程において、配向膜を、有機材料により形成する場合と比較して、無機材料により形成する場合に、配向膜において、シール材の近傍に位置する配向膜部分に、シール材の成分が浸透或いは浸入しやすい。よって、この場合において、第2工程から第5工程までの間に、配向膜に、特に配向膜におけるシール材の近傍に位置する配向膜部分に、シール材が浸透或いは浸入する量を低減することにより、より効果的に、配向膜による配向機能が損なわれるのを防止することが可能となる。
【0030】
尚、有機材料から配向膜を形成する場合にも、シール材は、配向膜上に侵入する可能性はある、或いは条件に応じて大なり小なり侵入する或いは流れるので、本発明の上述の如き効果は、相応に得られる。
【0031】
本発明の電気光学装置の製造方法の他の態様では、前記第2工程では、前記シール材を、前記画像表示領域を囲むように額縁状に塗布すると共に、前記第3工程の後であって、前記第4工程より前に、前記配向膜が形成された基板上における前記シール材に囲まれた領域に、前記電気光学物質を載置する工程を更に含む。
【0032】
この態様によれば、第3工程で、シール材において少なくとも配向膜に面する一部を硬化させた後、シール材が塗布された基板上に、例えば電気光学物質として液晶を滴下して、載置する。この際、第3工程で、シール材において、電気光学物質と接触することになる側の表面を含む一部を硬化させておくことにより、載置された電気光学物質中にシール材の成分が混入する事態を防止することができる。
【0033】
本発明の電気光学装置は上記課題を解決するために、電気光学物質を挟持してなる一対の基板を備えた電気光学装置であって、前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板上における少なくとも画像表示領域に形成された配向膜と、前記配向膜が形成された前記基板上における、前記画像表示領域の周辺に位置する周辺領域に塗布され、少なくとも前記配向膜と面する一部が硬化された後、前記一対の基板を対向配置させて全体的に硬化されることで形成されたシール材とを備える。
【0034】
本発明の電気光学装置によれば、上述した本発明の電気光学装置の製造方法(但し、その各種態様を含む)により製造される。よって、電気光学装置において光漏れを防止して高品質な画像表示を行うことが可能となる。
【0035】
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置を具備する。
【0036】
本発明の電子機器は、上述した本発明の電気光学装置を具備してなるので、高品質な画像表示を行うことが可能な投射型表示装置、テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、本発明の電子機器として、例えば電子ペーパなどの電気泳動装置、電子放出装置(Field Emission Display及びConduction Electron-Emitter Display)、これら電気泳動装置、電子放出装置を用いた装置としてDLP(Digital Light Processing)等を実現することも可能である。
【0037】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下では、本発明の実施の形態について図を参照しつつ説明する。以下の実施形態では、本発明の電気光学装置の一例である駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。
【0039】
<1:第1実施形態>
先ず、本発明の電気光学装置に係る第1実施形態について、図1から図9を参照して説明する。
【0040】
<1−1:電気光学装置の構成>
本実施形態に係る電気光学装置の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。
【0041】
ここに図1は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素とともに対向基板の側からみた平面図であり、図2は、図1のH−H´断面図である。なお、以下で参照する各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。
【0042】
図1及び図2において、本実施形態に係る電気光学装置では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
【0043】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂や熱硬化樹脂、又は紫外線・熱併用型硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20とのギャップを所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材56が散布されている。図2には、ギャップ材56として略球状のガラスビーズを、シール材52に混入した構成を示してある。尚、ギャップ材56を、シール材52に混入されるものに加えて若しくは代えて、画像表示領域10a又は画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域に、配置するようにしてもよい。
【0044】
更に、シール材52の一部においては、図1に示すように、TFTアレイ基板10及び対向基板20により挟まれた間隙内に液晶を注入するための液晶注入口51が設けられている。完成された電気光学装置では、この液晶注入口51には、前記間隙内に導入された液晶が外部に漏れることのないようにするため、例えば紫外線硬化型アクリル系樹脂からなる封止材54が設けられる。
【0045】
図1において、シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
【0046】
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。また、走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、前記額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、前記額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
【0047】
また、対向基板20の4つのコーナー部には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10にはこれらのコーナー部に対向する領域において上下導通端子が設けられている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
【0048】
図2において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFT(Thin Film Transistor)や走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成される。この積層構造の詳細な構成については図2には図示を省略してあるが、この積層構造上に、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明材料からなる画素電極9aが形成されている。そして、画素電極9a上には、例えばシリカ(SiO2)等の無機材料からなる配向膜16が設けられている。
【0049】
他方、対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上に、遮光膜23が形成されている。遮光膜23は、例えば対向基板20における対向面上に平面的に見て、格子状に形成されている。対向基板20において、遮光膜23によって非開口領域が規定され、遮光膜23によって区切られた領域が開口領域となる。尚、遮光膜23をストライプ状に形成し、該遮光膜23と、TFTアレイ基板10側に設けられたデータ線等の各種構成要素とによって、非開口領域を規定するようにしてもよい。
【0050】
そして、遮光膜23上に、ITO等の透明材料からなる対向電極21が形成される。また、遮光膜23上に、画像表示領域10aにおいてカラー表示を行うために、開口領域及び非開口領域の一部を含む領域に、図2には図示しないカラーフィルタが形成されるようにしてもよい。
【0051】
対向基板20の対向面上における、これら各種の構成要素が作り込まれた積層構造上には、例えばシリカ等の無機材料からなる配向膜22が形成されている。尚、TFTアレイ基板10及び対向基板20のいずれか一方の対向面上に配向膜を形成するようにしてもよい。
【0052】
また、液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、画素電極9aからの電界が印加されていない状態で、一対の配向膜16及び22間で、所定の配向状態をとる。TFTアレイ基板10上に、配向膜16は、画像表示領域10a及び画像表示領域10aから延在して、周辺領域におけるシール領域を含む領域に連続的に形成されている。また、対向基板20上においても、例えば、TFTアレイ基板10上に形成された配向膜16と同様の領域に、配向膜22が形成される。
【0053】
ここで、図3には、図2に対応する断面の構成について、特に、TFTアレイ基板10上に形成された配向膜16による液晶の配向について模式的に示してある。
【0054】
図3において、TFTアレイ基板10上に、TFT等の各種構成要素が作りまれた積層構造90が形成されており、この積層構造90上には画素電極9aを構成する透明導電膜9が形成されている。そして、透明導電膜9上に、配向膜16を構成する無機材料の柱状構造物16aが、TFTアレイ基板10の基板面に対して所定の角度をなして、配列している。このように形成された配向膜16は、表面形状効果により、液晶分子50aを配向させることができる。尚、図3を参照して説明した配向膜16による液晶の配向については、対向基板20上に形成された配向膜22についても同様である。
【0055】
なお、図1及び図2に示したTFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0056】
次に、以上の如く構成された電気光学装置における回路構成及び動作について、図4を参照して説明する。図4は、電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。
【0057】
図4において、本実施形態における電気光学装置の画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素には、それぞれ、画素電極9aと当該画素電極9aをスイッチング制御するためのTFT30とが形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0058】
また、TFT30のゲートにゲート電極3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線11a及びゲート電極3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。
【0059】
画素電極9aを介して電気光学物質の一例としての液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、対向基板20に形成された対向電極21との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として電気光学装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射する。
【0060】
ここで保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極21との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70を付加する。この蓄積容量70は、走査線11aに並んで設けられ、固定電位側容量電極を含むとともに定電位に固定された容量電極300を含んでいる。
【0061】
<1−2:電気光学装置の製造方法>
以下では、上述した本実施形態の電気光学装置の製造プロセスについて、図5から図8を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る電気光学装置が、比較的大きいサイズのガラス基板上で一挙に複数形成されることを説明するための部分平面図である。また、図6及び図8は、図2に示す電気光学装置の断面の構成を、製造プロセスの各工程について順を追って示す工程図である。また、図7(a)及び図7(b)は、シール材近傍の構成について拡大して示す拡大図である。
【0062】
尚、以下においては、本実施形態において特徴的な、配向膜16やシール材52の形成に係る製造工程について、特に詳しく説明することとし、TFTアレイ基板10の積層構造における走査線11aやデータ線6a、TFT30等の製造工程、及び対向基板20の積層構造における遮光膜23や対向電極21等の製造工程に関しては詳細な説明を省略することとする。
【0063】
まず、図6及び図8を参照して詳細な製造工程の説明に入る前に、その前提として、本実施形態に係る電気光学装置は、図5に示すような比較的大きなサイズのガラス基板Sの上において、一挙に複数形成される形態がとられるものとする。すなわち、ガラス基板Sの上において、電気光学装置が縦横それぞれにマトリクス状に配列されるように形成され、各電気光学装置においては、それぞれ、図1から図4を参照して説明したような各種の構成要素(TFT30や走査線11a、データ線6a等、或いは走査線駆動回路104やデータ線駆動回路101等々)が形成されることになるのである。ちなみに、図5において示されるガラス基板Sは、図1及び図2に示されるTFTアレイ基板10に該当する。
【0064】
また、図5では、TFTアレイ基板10の側における各種の構成要素が形成されるガラス基板Sのみについて図示されているが、これとは別に、図5には図示しないガラス基板の上に、対向電極21、配向膜22等々が形成されて、対向基板20が複数形成される。そして、ガラス基板Sと、図5には図示しない別のガラス基板とを対向させて、各電気光学装置について、個別に、シール材52によって貼り合わせ、TFTアレイ基板10及び対向基板20間に液晶を封入する。その後、ガラス基板S及び図5には図示しない別のガラス基板を裁断することによって、図1及び図2に示したような各個別の電気光学装置が製造されることになる。
【0065】
さて、以上の前提の下、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法について、図6及び図8を参照して説明する。
【0066】
先ず、図6(a)において、TFTアレイ基板10上に、データ線6aや走査線11a、TFT30等が作り込まれた積層構造の最上層に画素電極9aが形成され、且つ周辺領域にはデータ線駆動回路101等が形成されている状態で、TFTアレイ基板10上に、無機材料を斜方蒸着する。この際、TFTアレイ基板10上に蒸着された無機材料の柱状構造物16aが、図3を参照して説明したように配列して成長することにより、配向膜16が形成される。尚、配向膜16の膜厚haは、例えば100[nm]で形成される。このような無機材料からなる配向膜16を、イオンビームスパッタ等の指向性スパッタ法により、形成するようにしてもよい。
【0067】
続いて、図6(b)において、配向膜16が形成されたTFTアレイ基板10上の周辺領域におけるシール領域に、例えば紫外線・熱併用型硬化樹脂から形成され、ギャップ材としてガラスビーズ56を混入させたシール材52aを、スクリーン印刷するか又はディスペンサーで描画することにより、塗布する。これにより、硬化されていない状態のシール材52aがシール領域に塗布された状態となる。尚、シール材52aのTFTアレイ基板10の基板面に沿った方向の厚さdは、例えば1[mm]となる。
【0068】
続いて、図6(c)において、シール材52aに対して紫外線照射を行うことにより、シール材52aにおいて、少なくとも配向膜16と面する一部を硬化させる。より具体的には、例えば図6(c)中の矢印X1で示す方向、即ちTFTアレイ基板10の基板面に対して概ね垂直方向に、TFTアレイ基板10においてシール材52aが塗布された面と反対側の面に対して、紫外線を照射する。これにより、図7(a)に示すように、シール材52aを、シール材52aにおけるTFTアレイ基板10と対向する面から、シール材52aの内部に向かって、所定の厚さhbだけ硬化させる。これにより形成された、シール材52aにおける硬化部分52bの厚さhbは、配向膜16の厚さhaより厚くなるのが好ましい。よって、図6(c)を参照して説明した工程では、シール材52aは全体的に硬化されない。尚、図6(c)を参照して説明した工程では、シール材52aに対して紫外線照射を行うのに加えて若しくは代えて加熱するようにしてもよい。
【0069】
その後、図8において、硬化されない部分を有するシール材52aを介して、TFTアレイ基板10及び対向基板20を対向配置させて貼り合せる。この際、図6(c)を参照して説明した工程では、シール材52aには硬化されない部分が残るため、以下に説明するように、TFTアレイ基板10及び対向基板20のギャップを所定値となるように対向配置させることが可能となる。
【0070】
ここで、以上説明したような、TFTアレイ基板10に係る製造工程と並行して又は相前後して、対向基板20において、遮光膜23や対向電極21等が作り込まれた積層構造上に、図6(a)を参照して説明した手順と同様に、配向膜22が形成される。図8に示すように、TFTアレイ基板10上に塗布されたシール材52aにおける硬化されていない部分と、対向基板20において配向膜22が形成された側の面とを対向配置させる。この際、図8中の矢印X2の方向から、対向基板20及びTFTアレイ基板10の各々における対向面とは反対側の面に対して所定の圧力を加え、これら一対の基板10及び20のギャップを所定値に維持しつつ、対向配置させる。一対の基板10及び20のギャップhcは、図7(a)に示す、シール材52aの硬化部分52bの厚さhb及びガラスビーズのサイズ(径)Rを夫々調整することにより、所定値とすることが可能となる。例えば、一対の基板10及び20のギャップhcは、2〜3[μm]となる。尚、シール材52aにギャップ材56を混入するのに加えて若しくは代えて、対向基板20上にギャップ材を散布しておいて、この対向基板20をTFTアレイ基板10と対向配置させるようにしてもよい。
【0071】
続いて、一対の基板10及び20のギャップhcを所定値に維持しつつ、シール材52aを加熱して全体的に硬化させる。尚、この際、シール材52aを加熱するのに加えて若しくは代えて紫外線照射を行うようにしてもよい。これにより図1及び図2に示すシール材52が形成される。
【0072】
ここで、図8を参照して説明した工程の前に、図6(c)を参照して説明した工程を行わない場合、シール材52aがTFTアレイ基板10上に塗布された後、このシール材52aが全体的に硬化されるまでの間、硬化前のシール材52aと配向膜16とが接触することとなる。この場合、図7(b)中の矢印Y1に示すように、シール材52aの成分が、無機材料の柱状構造物16aの隙間に拡散して、配向膜16に浸透或いは浸入する恐れがある。シール材52aの材料の粘性、表面張力等と、柱状構造物16aの多数の隙間の大きさや形状等との関係で、該隙間を縫っての毛細管現象によりシール材16aの材料が侵入しやすい。このため、配向膜16へ浸透或いは浸入するシール材52aの量は、特に、配向膜16におけるシール材52aの近傍に位置する配向膜部分において多くなる。また、一対の基板10及び20を貼り合わせる際、対向基板20上に形成された配向膜22と、硬化前のシール材52aとが接触する時間と比較して、TFTアレイ基板10上に形成された配向膜16と、硬化前のシール材52aとが接触する時間は極めて長くなる。この点を鑑みれば、前述したようなシール材52aの成分の浸透や浸入は、特に、TFTアレイ基板10側の配向膜16において発生し易くなる。これにより、配向膜16において、シール材52aの成分が浸透或いは浸入することに起因して、特に、シール材52aの近傍に位置する配向膜部分において、配向不良が発生する恐れがある。
【0073】
しかるに本実施形態では、一対の基板10及び20を貼り合せる前に、図6(c)において、シール材52aにおけるTFTアレイ基板10と対向する面を含む一部を硬化させることにより、硬化前のシール材52aの一部から、シール材52aの成分が配向膜16に浸透或いは浸入する時間を、顕著に短くすることが可能となる。よって、シール材52aを塗布後、このシール材52aを全体的に硬化させるまでの間に、配向膜16に、特にシール材52aの近傍に位置する配向膜部分に、シール材52aが浸透或いは浸入する量を低減することができる。その結果、配向膜16による配向機能が、シール材52aの浸透或いは浸入によって損なわれることを効果的に防止することが可能となる。更に、図6(c)及び図8を参照して説明した各工程は、同一の製造装置で行うことができるため、電気光学装置の製造プロセスの工程数は増加しない。
【0074】
従って、本実施形態の電気光学装置の製造方法では、液晶を封入後に、液晶の配向不良を防止することができるため、このような製造プロセスを経て製造された電気光学装置では、光漏れを防止して高品質な画像表示を行うことが可能となる。
【0075】
尚、以上説明した本実施形態では、配向膜16を、ポリイミド等の有機材料をTFTアレイ基板10上の少なくとも画像表示領域10aに成膜した後、該有機膜にラビング処理を施すことにより形成するようにしてもよい。また、これと同様に配向膜22を対向基板20上に形成するようにしてもよい。
【0076】
更に、シール材52aを、対向基板20上に塗布するようにしてもよい。この場合、図6(c)に示す工程は、対向基板20に対して行われるのが好ましい。これにより、この場合においても、前述した本実施形態の利益を享受することが可能となる。
【0077】
<1−3:変形例>
本実施形態の変形例について、図9を参照して説明する。図9(a)には、本変形例に係る製造プロセスの一工程について、図2に示す電気光学装置の断面の構成を示してあり、図9(b)は、図9(a)に示す断面について、シール材近傍の構成を拡大して示す拡大図である。
【0078】
図6(c)を参照して説明した工程では、図9(a)に示すように、矢印X3で示す方向、即ちTFTアレイ基板10におけるシール材52aが塗布された面と反対側の面から、シール材52aにおける画像表示領域10a側の側面に向かう斜め方向に、紫外線を照射する。尚、シール材52aにおける画像表示領域10a側の側面は、該シール材52aが硬化された後、一対の基板10及び20間に挟持される液晶層50に接触する表面となる。これにより、図9(b)に示すように、シール材52aにおけるTFTアレイ基板10との対向面から、シール材52aの内部に向かって、所定の厚さhb1で硬化された部分に連続的に、シール材52aにおける画像表示領域10a側の側面からシール材52aの内部に向かって、所定の厚さhb2で硬化された部分により、硬化部分52bが形成される。また、図9(a)を参照して説明した工程では、シール材52aは全体的に硬化されない。尚、シール材52aにおける画像表示領域10a側の側面からシール材52aの内部に向かって、所定の厚さhb2で硬化された部分のみにより硬化部分52bが形成されてもよい。
【0079】
このように、シール材52aにおいて硬化部分52bが形成されることにより、その後、シール材52aを全体的に硬化させれば、シール材52において硬化されていない部分が液晶層50に接触して、この部分よりシール材52の成分が液晶層50中に混入する事態を防止することができる。これにより、液晶層50において配向が乱れる事態をより確実に防止することが可能となる。
【0080】
<2:第2実施形態>
次に、本発明の電気光学装置に係る第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態と電気光学装置の製造方法が部分的に異なっている。よって、第2実施形態における電気光学装置の製造方法について、重複する説明を省略すると共に、第1実施形態との共通箇所には、同一符号を付して示し、異なる点についてのみ図10を参照して説明する。図10は、図2に示す電気光学装置の断面に対応する構成を、第2実施形態の製造プロセスの各工程について順を追って示す工程図である。
【0081】
以下に、図10(a)及び図10(b)を参照して説明する各工程は、図6を参照して説明した各工程を含む、TFTアレイ基板10側の各種構成要素に係る製造工程と並行して又は相前後して行われる。
【0082】
先ず、図10(a)において、対向基板20上に遮光膜23や対向電極21等が作り込まれた積層構造が形成され、この積層構造上に配向膜22が形成された状態で、配向膜22上に図6(b)を参照して説明した手順と同様に、硬化されていない状態のシール材52aをシール領域に塗布する。
【0083】
続いて、図10(b)において、図6(c)を参照して説明した手順と同様に、
図10(b)中の矢印X4で示す方向、即ちTFTアレイ基板10に対する矢印X1で示す方向と同様の方向で、対向基板20においてシール材52aが塗布された面と反対側の面に対して、紫外線を照射する。これにより、図7(a)を参照して説明した構成と同様に、シール材52aにおいて対向基板20と対向する面を含むシール材52aの一部に硬化部分が形成される。よって、図10(b)を参照して説明した工程では、シール材52aは全体的に硬化されない。
【0084】
その後、図8を参照して説明した手順と同様に、対向基板20とTFTアレイ基板10とを対向配置させて、夫々に形成されたシール材52a同士を接着させて、このシール材52aを全体的に硬化させる。
【0085】
よって、第2実施形態では、TFTアレイ基板10側に加えて対向基板20側においても、シール材52aを塗布後、このシール材52aを全体的に硬化させるまでの間に、配向膜22に、特にシール材52aの近傍に位置する配向膜部分に、シール材52aが浸透或いは浸入する量を低減することができる。その結果、TFTアレイ基板10上に形成された配向膜16に加え、対向基板20上に形成された配向膜22による配向機能が、シール材52aの浸透或いは浸入によって損なわれることを効果的に防止することが可能となる。
【0086】
<3:第3実施形態>
次に、本発明の電気光学装置に係る第3実施形態について説明する。第3実施形態では、第1又は第2実施形態と、シール材の構成が異なると共に、電気光学装置の製造方法が部分的に異なっている。よって、第3実施形態における電気光学装置の構成及び製造方法について、重複する説明を省略すると共に、第1又は第2実施形態との共通箇所には、同一符号を付して示し、異なる点についてのみ図11及び図12を参照して説明する。図11は、第3実施形態の電気光学装置の構成を示す、図1と同様の平面図であり、図12は、図2に示す電気光学装置の断面に対応する構成を、第3実施形態の製造プロセスの各工程について順を追って示す工程図である。
【0087】
第3実施形態では、図11に示すように、電気光学装置において、シール領域に形成されたシール材52には、液晶注入口51及び該液晶注入口51を封止する封止材54が形成されない点が、第1又は第2実施形態と異なっている。
【0088】
以下に、このような構成を有する電気光学装置の製造方法について、特徴的な製造プロセスについてのみ、図12を参照して説明する。
【0089】
図12(a)において、図9(a)を参照して説明した工程と同様に、TFTアレイ基板10に対して、矢印X3の方向に紫外線を照射する。これにより、図9(b)を参照して説明した構成と同様に、シール材52aにおける画像表示領域10a側の側面を含む硬化部分52bが、シール材52aに形成される。
【0090】
その後、図12(b)において、TFTアレイ基板10上において、シール材52aに囲まれた領域に、好ましくは真空中で、液晶を滴下して液晶層50を形成する。この際、液晶層50は、シール材52aにおける硬化部分52bと接触する。よって、シール材52aの成分が液晶層50に混入するのを防止することができる。これにより、液晶層50における配向不良を効果的に防止することが可能となる。
【0091】
続いて、図8を参照して説明した手順と同様に、TFTアレイ基板10及び対向基板20を、真空中で貼り合せる。
【0092】
尚、第3実施形態では、シール材52aを対向基板20上に塗布し、図12(a)を参照して説明した工程と同様の工程を、対向基板20に対して行った後、図12(b)を参照して説明した工程と同様の手順により、対向基板20上に液晶層50を形成するようにしてもよい。
【0093】
<4;電子機器>
次に、上述した液晶装置を各種の電子機器に適用される場合について説明する。
【0094】
<4−1:プロジェクタ>
まず、この液晶装置をライトバルブとして用いたプロジェクタについて説明する。図13は、プロジェクタの構成例を示す平面図である。この図に示されるように、プロジェクタ1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106および2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gに入射される。
【0095】
液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等であり、外部回路(図示省略)から外部接続用端子102に供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。そして、これらの液晶パネルによって変調された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、RおよびBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。したがって、各色の画像が合成される結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることとなる。
【0096】
ここで、各液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gによる表示像について着目すると、液晶パネル1110Gによる表示像は、液晶パネル1110R、1110Bによる表示像に対して左右反転することが必要となる。
【0097】
なお、液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gには、ダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必要はない。
【0098】
<4−2:モバイル型コンピュータ>
次に、液晶装置を、モバイル型のパーソナルコンピュータに適用した例について説明する。図14は、このパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。図において、コンピュータ1200は、キーボード1202を備えた本体部1204と、液晶表示ユニット1206とから構成されている。この液晶表示ユニット1206は、先に述べた液晶装置1005の背面にバックライトを付加することにより構成されている。
【0099】
<4−3;携帯電話>
さらに、この液晶パネルを、携帯電話に適用した例について説明する。図15は、この携帯電話の構成を示す斜視図である。図において、携帯電話1300は、複数の操作ボタン1302とともに、反射型の液晶装置1005を備えるものである。この反射型の液晶装置1005にあっては、必要に応じてその前面にフロントライトが設けられる。
【0100】
尚、図13から図15を参照して説明した電子機器の他にも、液晶テレビや、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等などが挙げられる。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
【0101】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置及びその製造方法、並びにこれを備えた電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本実施形態における電気光学装置の全体構成を表す平面図である。
【図2】図1のH−H’断面図である。
【図3】配向膜による液晶の配向について模式的に示す模式図である。
【図4】複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。
【図5】本実施形態に係る電気光学装置が、比較的大きいサイズのガラス基板上で一挙に複数形成されることを説明するための部分平面図である。
【図6】図2に示す電気光学装置の断面の構成を、製造プロセスの各工程について順を追って示す工程図(その1)である。
【図7】図7(a)及び図7(b)は、シール材近傍の構成について拡大して示す拡大図である。
【図8】図2に示す電気光学装置の断面の構成を、製造プロセスの各工程について順を追って示す工程図(その2)である。
【図9】図9(a)は、第1実施形態の変形例に係る製造プロセスの一工程について、図2に示す電気光学装置の断面の構成を示す図であり、図9(b)は、図9(a)に示す断面について、シール材近傍の構成を拡大して示す拡大図である。
【図10】図2に示す電気光学装置の断面に対応する構成を、第2実施形態の製造プロセスの各工程について順を追って示す工程図である。
【図11】第3実施形態の電気光学装置の構成を示す平面図である。
【図12】図2に示す電気光学装置の断面に対応する構成を、第3実施形態の製造プロセスの各工程について順を追って示す工程図である。
【図13】液晶装置を適用した電子機器の一例たるプロジェクタの構成を示す平面図である。
【図14】液晶装置を適用した電子機器の一例たるパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図15】液晶装置を適用した電子機器の一例たる携帯電話の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0103】
10…TFTアレイ基板、10a…画像表示領域、16、22…配向膜、20…対向基板、52…シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学物質を挟持してなる一対の基板を備えた電気光学装置を製造する電気光学装置の製造方法であって、
前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板上における少なくとも画像表示領域に配向膜を形成する第1工程と、
前記配向膜が形成された前記基板上における、前記画像表示領域の周辺に位置する周辺領域に、硬化前のシール材を塗布する第2工程と、
前記シール材において、少なくとも前記配向膜と面する一部を硬化させる第3工程と、
前記一対の基板を、前記シール材を介して貼り合せる第4工程と、
前記シール材を全体的に硬化させる第5工程と
を含むことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項2】
前記第3工程では、前記シール材を、前記シール材における前記配向膜が形成された基板と対向する面から、前記シール材の内部に向かって、前記配向膜の厚さより厚く硬化させること
を特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項3】
前記第3工程では、前記シール材を、前記シール材における前記電気光学物質と接触することになる側の表面から、前記シール材の内部に向かって硬化させること
を特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1工程では、前記一対の基板に夫々前記配向膜を形成すること
を特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項5】
前記第3工程及び前記第5工程において、前記シール材に紫外線照射を行って、前記シール材を硬化させることを
特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項6】
前記第3工程及び前記第5工程において、前記シール材を加熱して、前記シール材を硬化させることを
特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1工程では、前記配向膜を、無機材料により形成することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2工程では、前記シール材を、前記画像表示領域を囲むように額縁状に塗布すると共に、
前記第3工程の後であって、前記第4工程より前に、前記配向膜が形成された基板上における前記シール材に囲まれた領域に、前記電気光学物質を載置する工程を更に含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項9】
電気光学物質を挟持してなる一対の基板を備えた電気光学装置であって、
前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板上における少なくとも画像表示領域に形成された配向膜と、
前記配向膜が形成された前記基板上における、前記画像表示領域の周辺に位置する周辺領域に塗布され、少なくとも前記配向膜と面する一部が硬化された後、前記一対の基板を対向配置させて全体的に硬化されることで形成されたシール材と
を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電気光学装置を具備してなることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−78735(P2006−78735A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262161(P2004−262161)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】