説明

電気光学装置及び電子機器

【課題】液晶装置等の電気光学装置において、ダミー画素部を用いて、装置の表示特性をモニタリングする。
【解決手段】電気光学装置は、基板(10)と、基板上における複数の画素が配列されてなる画素領域(10a)に設けられており、画素への画像信号の供給を制御するトランジスタ(30)を含む画素部と、基板上におけるダミー画素領域(200)に設けられており、トランジスタを模擬するダミートランジスタを含むダミー画素部(Pd)と、ダミー画素領域を覆うように設けられており、少なくとも部分的にダミー画素部に光が入射するように、少なくとも1つの開口(210)が形成されている遮光部(53、500)と、ダミー画素部における、開口を介して入射される光に応じて変化する所定パラメータを検出する検出手段(450)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶表示装置等の電気光学装置、及び該電気光学装置を備えた、例えば液晶プロジェクタ等の電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置の場合、画素領域の縁付近では、画素領域の中央寄りに多数の画素部が存在しているのに対して、その反対側には画素部が存在していないという構造の不均衡から、例えば液晶の配向不良など、電気光学物質の動作不良が起き易い。このため、従来から画素領域の周囲を囲む周囲領域或いは額縁領域における画素領域に近い側の領域には、画素部を模擬するダミー画素部が配列されているのが一般的である。伝統的には、このようなダミー画素は、画素部と同一サイズで、同一構造のものが作り込まれ、額縁遮光膜等によって光が入射しないように遮光されている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−162634号公報
【特許文献2】特開2000−269507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術においては、ダミー画素部の構造自体を如何に本来の画素部の構造に近付けたとしても、額縁遮光膜等によってダミー画素部に光が入射されないため、実際の動作時における光リークの発生具合まで含めた厳密な意味での模擬は、実現されていない。言い換えれば、上述した技術には、ダミー画素部を有効に活用できていないという技術的問題点がある。
【0005】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、ダミー画素部を用いることで、装置の表示特性をモニタリングすることが可能な電気光学装置及び該電気光学装置を備えた電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気光学装置は上記課題を解決するために、基板と、該基板上における複数の画素が配列されてなる画素領域に、前記画素毎に設けられており、画素への画像信号の供給を制御するトランジスタを含む画素部と、前記基板上における前記画素領域の周囲を少なくとも部分的に占めるダミー画素領域に、前記画素を模擬するダミー画素毎に設けられており、前記トランジスタを模擬するダミートランジスタを含むダミー画素部と、前記基板上で平面的に見て、前記ダミー画素領域を覆うように設けられており、少なくとも部分的に前記ダミー画素部に前記光が入射するように、少なくとも1つの開口が形成されている遮光部と、前記ダミー画素部における、前記開口を介して入射される光に応じて変化する所定パラメータを検出する検出手段とを備える。
【0007】
本発明の電気光学装置によれば、その動作時に、例えば基板上に形成されたデータ線、走査線等の配線を介して、画素スイッチング用TFT(Thin Film Transistor)等により構成されるトランジスタに、画像信号、走査信号等が供給される。そして、画像信号がトランジスタから選択的に画素電極に供給され、各画素部が駆動される。これにより、複数の画素部がマトリクス状に平面配列された画素領域において、アクティブマトリクス駆動による画像表示が可能となる。
【0008】
ここに本発明では、画素領域の周囲における、例えばデータ線等に対する画像信号等の書き込み始めに位置し、かかる配線の電位が安定し難い部分や、製造時に配向膜に対するラビング処理の削りカスが除去され難く残存し易い部分等には、ダミー画素領域が形成される。ダミー画素領域は、画素領域の周囲を全体的に囲うように形成されてもよいし、画素領域の周囲において部分的に形成されてもよい。ダミー画素領域には、画素部を模擬するように構成されたダミー画素部が配置される。
【0009】
より具体的には、各ダミー画素部は、画素部におけるトランジスタの動作を模擬するダミートランジスタを含んで、ダミー画素毎に設けられている。装置の動作時には、このダミートランジスタが選択的に画像信号等の供給を行うことで、画素領域内と同様に、ダミー画素領域においても、ダミー画素部をアクティブマトリクス駆動することが可能となる。即ち、ダミー画素部は、その動作が画素部の動作を模擬するように形成される。尚、ダミー画素部は、ダミートランジスタを含んでいれば、他の構成要素が画素部と異なっていてもよい。但し、画素部と近い構成にすることで、後述する本発明の効果は、より顕著に発揮される。
【0010】
本発明の電気光学装置では、ダミー画素領域に対する光の入射側に、基板上で平面的に見て、ダミー画素領域を覆うように、典型的には額縁状の遮光部が設けられている。即ち、ダミー画素領域に形成されたダミー画素部には、光が入射しないように構成されている。尚、ここでの「光」とは、画像を表示させるために入射される光を意味しており、例えば、投射光、投影光、表示光としての白色ランプ等から投射される光源光である。尚、外光であってもよい。このような遮光部によって、ダミー画素部を介して光が抜けるのを防止でき、遮光部に囲まれた画素領域或いは画像表示領域で行われる本来の表示動作等の電気光学動作に対して悪影響を及ぼすことを未然防止できる。
【0011】
ここで本発明では特に、上述した遮光部には、少なくとも部分的にダミー画素部に光が入射するように、少なくとも1つの開口が形成されている。即ち、装置の動作時に画素部に対して入射される光が、遮光部における開口を介して、少なくとも部分的にダミー画素部に対して入射するように構成されている。尚、開口の形状や数は特に限定されないが、画素部における画像表示を妨げないようなものであることが望ましい。
【0012】
開口を介して光が入射されると、光が入射したダミー画素部における所定パラメータが変化する。尚、「所定パラメータ」とは、例えば、光電流或いは光リーク電流を含むダミートランジスタに流れる電流や、開口を介してダミー画素部に入射される光の光量或いは光強度等であり、開口を介して入射される光部分に応じて変化する、ダミー画素部の動作に影響するパラメータである。
【0013】
本発明では特に、上述した所定パラメータを検出手段によって検出することで、装置の動作時における画素部の特性をモニタリングすることが可能である。具体的には、ダミー画素部にも画素部と同様に光を入射させることで、画素部及びダミー画素部における動作時の条件が概ね同様とされる。これにより、画素部及びダミー画素部における所定パラメータが、互いに近い値となるため、ダミー画素部における所定パラメータから画素部における所定パラメータを予測可能となる。尚、検出手段は、装置を駆動する駆動回路に所定パラメータを検出する機能を持たせたものであってもよいし、別途に検出部として設けられてもよい。
【0014】
上述したように、開口を介してダミー画素部に光が入射されるため、実際の動作時における光リークの発生具合まで含めた厳密な意味での模擬が、ダミー画素部において実現される。これにより、画素部の特性を、より正確にモニタリングすることで、例えば画素部の特性に応じた補正を、より正確に行うことが可能となる。具体的には、例えばモニタリングされた光リーク電流に基づいて、光リーク電流の影響を受けて発生する表示ムラ等を改善するような補正を行うことが可能となる。また、複数のダミー画素部における所定パラメータを検出すれば、画素部の位置に起因する表示ムラ等を補正することも可能である。よって、画質を向上させることができる。
【0015】
本発明では更に、上述したモニタリングは、実際の表示を行う画素部ではなく、ダミー画素部において行われる。このため、画素部の駆動に負荷をかけることなくモニタリングを行うことができる。即ち、表示される画像に影響を及ぼさないようにモニタリングを行うことができる。よって、例えば製品として装置を動作させつつ、上述したような補正を行うことが可能となる。従って、より好適に画質を向上させることができる。
【0016】
以上説明したように、本発明の電気光学装置によれば、ダミー画素部を用いることで、装置の動作時における画素部の特性を、極めて正確にモニタリングすることが可能となる。よって、その特性を考慮した駆動を行うことができる。従って、より高品質な画像を表示させることが可能である。
【0017】
本発明の電気光学装置の一態様では、前記ダミー画素部から見て前記遮光部の反対側に、前記基板上で平面的に見て、前記ダミー画素領域を覆うように設けられた第2の遮光部を備える。
【0018】
この態様によれば、ダミー画素部から見て遮光部の反対側(即ち、光が出射される側)に第2の遮光部が備えられているため、ダミー画素部に入射された光が装置から出射されない。即ち、開口を介してダミー画素部に入射した光が、ダミー画素部を通過した後に装置から出射されない。このような第2の遮光部によって、開口により入射側に向けて露出したダミー画素部までも含めて、ダミー画素部を介して光が抜けるのを確実防止でき、遮光部に囲まれた画素領域或いは画像表示領域で行われる本来の表示動作等の電気光学動作に対して悪影響を及ぼすことを、より完璧に防止できる。尚、第2の遮光部は、典型的には、ダミー画素領域全体を覆うように設けられるが、開口を介して入射される光が通過する箇所に部分的に設けられてもよい。また、開口を介して入射される光が通過する箇所において、部分的に厚く形成されることで、遮光能力が高められたものであってもよい。
【0019】
上述したように構成することで、ダミー画素部を通過した光が表示される画像に影響を及ぼしてしまうことを防止することができる。従って、開口を形成することによる画質の低下を防止することが可能である。
【0020】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記検出手段は、前記ダミートランジスタに電気的に接続されており、前記所定パラメータとして前記ダミートランジスタに流れる電流を検出する。
【0021】
この態様によれば、検出手段は、ダミー画素部におけるダミートランジスタに電気的に接続されている。尚、検出手段はダミートランジスタと同じ基板上に設けられていてもよいし、他の基板上に設けられていてもよい。
【0022】
検出手段では、所定パラメータとして、ダミートランジスタに流れる電流が検出される。よって、例えば光が入射することに起因するリーク電流を検出することができる。従って、光リーク電流に起因する表示ムラ等を改善するような補正を行うことが可能となる。
【0023】
また、検出されたリーク電流に基づいて、ダミー画素部に入射される光の光量も算出できる。よって、電流に限らず、画素部における様々な特性をモニタリングすることが可能である。従って、画素部の特性を考慮した駆動を、より好適に行うことが可能となる。
【0024】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記開口は正方形である。
【0025】
この態様によれば、遮光部に形成された開口が正方形であるため、ダミー画素部には、開口を介して比較的均一に光が入射される。特に、ダミー画素部がマトリクス状に配置されている場合には、効率的にダミー画素部に光を入射させることが可能である。また、比較的単純な形状であるため、開口を容易に形成することができる。よって、開口を設けることにより、製造工程が複雑高度化してしまうことを抑制しつつ、ダミー画素部に確実に光を入射させることができる。従って、より好適に画素部の特性をモニタリングすることが可能となる。
【0026】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記開口は円形である。
【0027】
この態様によれば、遮光部に形成された開口が円形であるため、ダミー画素部には、開口を介して比較的均一に光が入射される。尚、ここでの「円形」は、正円だけでなく楕円も含むものとする。円形は比較的単純な形状であるため、開口を容易に形成することができる。よって、開口を設けることにより、製造工程が複雑高度化してしまうことを抑制しつつ、ダミー画素部に確実に光を入射させることができる。従って、より好適に画素部の特性をモニタリングすることが可能となる。
【0028】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記開口は、前記ダミー画素領域における四隅に夫々形成されている。
【0029】
この態様によれば、遮光部における開口が、ダミー画素領域における四隅に形成されているため、互いに比較的離れた位置にあるダミー画素部において、夫々画素部の特性をモニタリングすることができる。よって、画素部の配置位置による特性の違いを効率的にモニタリングすることが可能である。従って、画素部の特性を考慮した駆動を、より好適に行うことが可能となる。
【0030】
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置(但し、その各種態様も含む)を具備する。
【0031】
本発明の電子機器によれば、上述した本発明に係る電気光学装置を具備してなるので、高品質な表示を行うことが可能な、投射型表示装置、テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、本発明の電子機器として、例えば電子ペーパなどの電気泳動装置等も実現することも可能である。
【0032】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0034】
<電気光学装置>
本実施形態に係る電気光学装置について図1から図10を参照して説明する。以下の実施形態では、本発明の電気光学装置の一例である駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。
【0035】
先ず、本実施形態に係る電気光学装置の具体的な構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここに図1は、本実施形態に係る電気光学装置の構成を示す平面図であり、図2は、図1のH−H´線断面図である。尚、図1及び図2では、説明の便宜上、後述するダミー画素領域に形成される開口を省略して図示してある。
【0036】
図1及び図2において、本実施形態に係る電気光学装置では、本発明の「基板」の一例であるTFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板や、シリコン基板等である。対向基板20は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板である。TFTアレイ基板10と対向基板20との間には、液晶層50が封入されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で所定の配向状態をとる。TFTアレイ基板10と対向基板20とは、複数の画素電極が設けられた、本発明の「画素領域」の一例である画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
【0037】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(即ち、基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。尚、ギャップ材を、シール材52に混入されるものに加えて若しくは代えて、画像表示領域10a又は画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域に、配置するようにしてもよい。
【0038】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。尚、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。また、額縁遮光膜53は、本発明の「遮光部」の一例であり、ダミー画素領域を覆うように形成されている。即ち、ここでの図示は省略しているが、TFTアレイ基板10上の画像表示領域10aの周囲において額縁遮光膜53に覆われる額縁領域は、後述するようにダミー画素電極が配置されるダミー画素領域として形成されている。
【0039】
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
【0040】
TFTアレイ基板10上には、対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域に、両基板間を上下導通材107で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
【0041】
図2において、TFTアレイ基板10上には、駆動素子である画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成される。この積層構造の詳細な構成については図2では図示を省略してあるが、この積層構造の上に、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明材料からなる画素電極9aが、画素毎に所定のパターンで島状に形成されている。
【0042】
画素電極9aは、対向電極21に対向するように、TFTアレイ基板10上の画像表示領域10aに形成されている。TFTアレイ基板10における液晶層50の面する側の表面、即ち画素電極9a上には、配向膜16が画素電極9aを覆うように形成されている。
【0043】
対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上に、遮光膜23が形成されている。遮光膜23は、例えば対向基板20における対向面上に平面的に見て、格子状に形成されている。対向基板20において、遮光膜23によって非開口領域が規定され、遮光膜23によって区切られた領域が、例えばプロジェクタ用のランプや直視用のバックライトから出射された光を透過させる開口領域となる。尚、遮光膜23をストライプ状に形成し、該遮光膜23と、TFTアレイ基板10側に設けられたデータ線等の各種構成要素とによって、非開口領域を規定するようにしてもよい。
【0044】
遮光膜23上には、ITO等の透明材料からなる対向電極21が複数の画素電極9aと対向するように形成されている。また遮光膜23上には、画像表示領域10aにおいてカラー表示を行うために、開口領域及び非開口領域の一部を含む領域に、図2には図示しないカラーフィルタが形成されるようにしてもよい。対向基板20の対向面上における、対向電極21上には、配向膜22が形成されている。
【0045】
尚、図1及び図2に示したTFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等の駆動回路に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0046】
続いて、本実施形態に係る電気光学装置の画素部の電気的な構成について、図3を参照して説明する。ここに図3は、本実施形態に係る液晶装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。
【0047】
図3において、画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素の各々には、画素電極9a及び本発明の「トランジスタ」の一例であるTFT30が形成されている。TFT30は、画素電極9aに電気的に接続されており、本実施形態に係る電気光学装置の動作時に画素電極9aをスイッチング制御する。画像信号が供給されるデータ線6aは、TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、・・・、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0048】
TFT30のゲートには、走査線3aが電気的に接続されており、本実施形態に係る電気光学装置は、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、・・・、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、・・・、Snが所定のタイミングで書き込まれる。画素電極9aを介して電気光学物質の一例としての液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、・・・、Snは、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。
【0049】
液晶層50(図2参照)を構成する液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として電気光学装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射される。
【0050】
ここで保持された画像信号がリークすることを防ぐために、画素電極9aと対向電極21(図2参照)との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が付加されている。蓄積容量70は、画像信号の供給に応じて各画素電極9aの電位を一時的に保持する保持容量として機能する容量素子である。蓄積容量70の一方の電極は、画素電極9aと並列してTFT30のドレインに接続され、他方の電極は、定電位となるように、電位固定の容量線300に接続されている。蓄積容量70によれば、画素電極9aにおける電位保持特性が向上し、コントラスト向上やフリッカの低減といった表示特性の向上が可能となる。
【0051】
また本実施形態では特に、画像表示領域10aの周囲におけるダミー画素領域には、好ましくは画像表示領域10aから連続的に、データ線6a、容量線300及び走査線11aが同様のパターンで配線され、画素電極9aを模擬するダミー画素電極、TFT30を模擬する本発明の「ダミートランジスタ」の一例であるダミーTFT、蓄積容量70を模擬するダミー蓄積容量が配列される。即ち、図3に示すような構成が画像表示領域10aだけでなくダミー画素領域にまで形成されている。ダミー画素領域における構成については以下に詳述する。
【0052】
次に、本実施形態に係る電気光学装置のダミー画素領域における構成について、図4から図6を参照して詳細に説明する。ここに図4は、実施形態に係る電気光学装置の構成をダミー画素領域に形成される開口と共に示す平面図である。また図5は、ダミー画素領域に形成される開口の構造を示す断面図であり、図6は、ダミー画素領域に形成される開口の大きさ及び形状を示す平面図である。尚、図4では、説明の便宜上、図1において示した本実施形態に係る電気光学装置を構成する具体的な部材を一部省略して図示してある。また図5では、説明に必要な部材のみを示し、他の部材を適宜省略して図示してある。
【0053】
図4において、画素領域に対応する窓を有するフレーム500内に、図1及び図2で示した電気光学装置が収容されている。電気光学装置は、例えば縁に沿って接着剤が充填され且つ画素領域に対応する窓を有するフックがフレーム500に掛けられることで、フレーム500内に固定されている。また、外部回路接続端子102(図1参照)には、フレキシブル基板400が電気的に接続されている。フレキシブル基板400における外部回路接続端子102と接続されない方の端部は、例えば他の回路基板等に対して電気的に接続される。これにより、本実施形態に係る電気光学装置及び外部の回路間で電気信号の入力及び出力が可能となる。
【0054】
本実施形態では特に、画像表示領域10aの周囲にダミー画素領域200が設けられている。ダミー画素領域200では、上述したように、画像表示領域10aにおける画素部を構成する夫々の部材を模擬する部材が連続して配置され、ダミー画素部を形成している。このため、ダミー画素部は、画像表示領域10aにおける画素部と同様にアクティブマトリクス駆動により動作させることが可能である。
【0055】
ダミー画素領域200は、フレーム500及び上述した額縁遮光膜53(図1及び図2参照)によって、画像を表示する際に用いられる光源光が入射しないように遮光されている。即ち、フレーム500も、本発明の「遮光部」の一例であるといえる。ダミー画素領域200を遮光することで、画像表示領域10aの縁付近の周囲における、液晶が不完全に駆動される部分については、実際に表示される画像に寄与しなくなる。ダミー画素領域200では、データ線6aや走査線11aに対する画像信号や走査信号等の書き込み始めが位置する、言い換えればデータ線6aや走査線11a等の配線の先端部分が位置しており、配線の電位が安定し難く、或いは製造時に配向膜に対するラビング処理の削りカスが除去され難く残存し易い等の各種の事情により、液晶が正常に駆動され難くなる。本実施形態では、このような領域をダミー画素領域200として画像表示領域10aから排除することで、画像表示領域10aの隅々まで良好な画像表示が可能となるよう構成されている。
【0056】
ここで本実施形態では特に、フレーム500及び額縁遮光膜53には、上述したダミー画素部に光源光が入射するように開口210が形成されている。開口210は、例えば形状が正方形とされており、図に示すようにダミー画素領域200の四隅に夫々形成される。これにより、ダミー画素領域200におけるダミー画素部には、開口210を介して、部分的に光源光が入射する。
【0057】
図5において、本実施形態に係る電気光学装置に投射された光源光は、フレーム500の入射側部分500a及び額縁遮光膜53に形成された開口を介して、ダミー画素部Pdに入射する。ダミー画素部Pdに入射した光源光は、ダミー画素部Pdを通過し、本発明の「第2の遮光部」の一例である、フレーム500の出射側部分500bにおいて吸収或いは反射される。このため、
開口210を介してダミー画素部Pdに入射した光源光は装置から出射されない。よって、ダミー画素部Pdを通過した光源光が表示される画像に影響を及ぼしてしまうことを防止することができる。
【0058】
ここで特に、ダミー画素部Pdに開口を介して光源光が入射されることによって、装置の動作時におけるダミー画素部Pdの状態は、画素部と極めて近いものとされる。よって、ダミー画素部Pdにおける、入射される光に応じて変化する所定パラメータ(例えば、光電流或いは光リーク電流を含むダミートランジスタに流れる電流や、開口を介してダミー画素部に入射される光の光量或いは光強度等)は、画素部における所定パラメータと近いものとなる。従って、ダミー画素部における所定パラメータから画素部における所定パラメータを予測可能となる。
【0059】
本実施形態に係る電気光学装置には、上述した所定パラメータを検出する検出部が図4に示すフレキシブル基板400上に設けられたドライバIC450等に含まれている。検出部は、ダミー画素部Pdにおけるダミートランジスタと電気的に接続されており、所定パラメータとして、ダミートランジスタに流れる電流を検出する。尚、検出部は、図1及び図2で示したパネルに内蔵されるようなものであってもよいし、図示しない回路基板等に配置されるようなものであってもよい。
【0060】
ダミートランジスタの電流を検出することで、例えば光が入射することに起因するリーク電流を検出することができる。これにより、実際の表示を行っている画素部において発生しているリーク電流の予測ができる。また、検出されたリーク電流に基づいて、ダミー画素部に入射される光源光の光量も算出できる。よって、画素部に入射される光源光の光量も算出できる。以上のように、検出部によって所定パラメータを検出することで、装置の動作時における画素部の特性をモニタリングすることが可能である。
【0061】
上述したように、画素部の特性をモニタリングすれば、例えば画素部の特性に応じた補正を行うことが可能となる。具体的には、例えばモニタリングされた光リーク電流に基づいて、光リーク電流の影響を受けて発生する表示ムラ等を改善するような補正を行うことが可能となる。また、複数のダミー画素部における所定パラメータを検出すれば、画素部の位置に起因する表示ムラ等を補正することも可能である。よって、画質を向上させることができる。尚、このような補正を行う補正回路は、例えば検出部と同様に、図4で示すドライバIC450に含まれるように構成することができる。
【0062】
本実施形態では更に、上述したモニタリングは、実際の表示を行う画素部ではなく、実際の表示に寄与しないダミー画素部Pdにおいて行われる。このため、画素部の駆動に負荷をかけることなくモニタリングを行うことができる。即ち、表示される画像に影響を及ぼさないようにモニタリングを行うことができる。よって、例えば製品として装置を動作させつつ、上述したような補正を行うことが可能となる。従って、より好適に画質を向上させることができる。
【0063】
ここで図6に示すように、開口210は、例えば縦3画素×横3画素の9画素分のダミー画素部Pdに光源光が入射するように形成される。このように開口210を形成することで、例えば1画素分のダミー画素部Pdにしか光源光が入射しない場合と比較して、より精度の高いモニタリングが可能である。即ち、複数のダミー画素部Pdにおいて夫々所定パラメータを検出することができるため、画素毎のバラツキ等を考慮したモニタリングが可能となる。
【0064】
他方で、より多くのダミー画素部Pdに光源光を入射させようとすると、開口210が大きくなり、遮光すべき箇所にまで光が入射してしまうおそれがある。これに対し、9画素分であれば、比較的小さい開口210によって光源光を入射させることができる。よって、開口210を介して入射した光が、遮光すべき箇所にまで到達してしまうことを防止できる。従って、より好適に画素部の特性をモニタリングすることが可能である。
【0065】
また、ダミー画素部Pdを通過した光源光が表示される画像に影響を及ぼさない場合、或いは影響が極めて小さい場合には、図5で示したフレーム500の出射側部分500bにも開口210が設けられてもよい。このように構成することで、ダミー画素部Pdにおける構成を、より画像表示領域10aの画素部の構成近付けることができる。これにより、画素部における特性をモニタリングするという本実施形態の効果は、より精度の高いものとなる。
【0066】
続いて、本実施形態に係る電気光学装置の変形例について図7から図10を参照して説明する。ここに図7から図10は夫々、実施形態に係る電気光学装置の変形例を示す平面図である。尚、図7から図10では、説明の便宜上、図4において示したフレキシブル基板400を省略して図示してある。
【0067】
図7に示すように、ダミー画素領域200に形成される開口210の形状は、円形であってもよい。開口210を円形とすることで、ダミー画素部Pdには、開口を介して比較的均一に光が入射される。また、比較的単純な形状であるため、開口210を容易に形成することができる。よって、開口を設けることにより、製造工程が複雑高度化してしまうことを抑制しつつ、ダミー画素部に確実に光を入射させることができる。
【0068】
図8に示すように、開口210の形状は、比較的複雑なものであってもよい。この場合、開口を形成する工程は多少複雑化してしまうものの、光源光を入射させたいダミー画素部に対して、より好適に光源光を入射させることができる。
【0069】
図9に示すように、開口210は1つだけ形成されてもよい。開口210が1つの場合は、上述したように四隅に形成される場合のようにダミー画素部Pdの位置による所定パラメータの違いは検出できないが、画素部における特性は確実にモニタリングすることができる。尚、開口210の位置は、ダミー画素領域200内であればどこでもよい。
【0070】
図10に示すように、開口は4つ以上形成されてもよい。このような場合、より多くの箇所において所定パラメータを検出することが可能となるため、より高い精度で画素部の特性をモニタリングすることができる。
【0071】
以上説明したように、本実施形態に係る電気光学装置によれば、実際の表示に寄与しないダミー画素部Pdを用いて、画素部における特性をモニタリングすることができる。よって、その特性を考慮した駆動を行うことができ、より高品質な画像を表示させることが可能である。
【0072】
<電子機器>
次に、上述した電気光学装置である液晶装置を各種の電子機器に適用する場合について説明する。ここに図11は、プロジェクタの構成例を示す平面図である。以下では、この液晶装置をライトバルブとして用いたプロジェクタについて説明する。
【0073】
図11に示されるように、プロジェクタ1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110B及び1110Gに入射される。
【0074】
液晶パネル1110R、1110B及び1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等であり、画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。そして、これらの液晶パネルによって変調された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、R及びBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。従って、各色の画像が合成される結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることとなる。
【0075】
ここで、各液晶パネル1110R、1110B及び1110Gによる表示像について着目すると、液晶パネル1110Gによる表示像は、液晶パネル1110R、1110Bによる表示像に対して左右反転することが必要となる。
【0076】
尚、液晶パネル1110R、1110B及び1110Gには、ダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必要はない。
【0077】
尚、図11を参照して説明した電子機器の他にも、モバイル型のパーソナルコンピュータや、携帯電話、液晶テレビや、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
【0078】
また、本発明は上述の各実施形態で説明した液晶装置以外にも反射型液晶装置(LCOS)、プラズマディスプレイ(PDP)、電界放出型ディスプレイ(FED、SED)、有機ELディスプレイ、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、電気泳動装置等にも適用可能である。
【0079】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置、及び該電気光学装置を備えた電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】実施形態に係る電気光学装置の具体的構成を示す平面図である。
【図2】図1のH−H´線断面図である。
【図3】実施形態に係る電気光学装置の画像表示領域を構成する各種素子、配線等の等価回路図である。
【図4】実施形態に係る電気光学装置の構成を開口と共に示す平面図である。
【図5】ダミー画素領域に形成される開口の構造を示す断面図である。
【図6】ダミー画素領域に形成される開口の大きさ及び形状を示す平面図である。
【図7】実施形態に係る電気光学装置の変形例を示す平面図(その1)である。
【図8】実施形態に係る電気光学装置の変形例を示す平面図(その2)である。
【図9】実施形態に係る電気光学装置の変形例を示す平面図(その3)である。
【図10】実施形態に係る電気光学装置の変形例を示す平面図(その4)である。
【図11】電気光学装置を適用した電子機器の一例たるプロジェクタの構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0081】
3a…走査線、6a…データ線、9a…画素電極、10…TFTアレイ基板、10a…画像表示領域、20…対向基板、30…TFT、50…液晶層、53…額縁遮光膜、102…外部回路接続端子、200…ダミー画素領域、210…開口、400…フレキシブル基板、450…ドライバIC、500…フレーム、Pd…ダミー画素部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上における複数の画素が配列されてなる画素領域に、前記画素毎に設けられており、画素への画像信号の供給を制御するトランジスタを含む画素部と、
前記基板上における前記画素領域の周囲を少なくとも部分的に占めるダミー画素領域に、前記画素を模擬するダミー画素毎に設けられており、前記トランジスタを模擬するダミートランジスタを含むダミー画素部と、
前記基板上で平面的に見て、前記ダミー画素領域を覆うように設けられており、少なくとも部分的に前記ダミー画素部に前記光が入射するように、少なくとも1つの開口が形成されている遮光部と、
前記ダミー画素部における、前記開口を介して入射される光に応じて変化する所定パラメータを検出する検出手段と
を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記ダミー画素部から見て前記遮光部の反対側に、前記基板上で平面的に見て、前記ダミー画素領域を覆うように設けられた第2の遮光部を備えることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記ダミートランジスタに電気的に接続されており、前記所定パラメータとして前記ダミートランジスタに流れる電流を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記開口は正方形であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記開口は円形であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記開口は、前記ダミー画素領域における四隅に夫々形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の電気光学装置を具備してなることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−198942(P2009−198942A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42531(P2008−42531)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】