電気光学装置及び電子機器
【課題】狭額縁化に適した電気光学装置を提供する。
【解決手段】複数の電源線103R,103G,及び103Bのうちの少なくとも1つの電源線の少なくとも1部を第1配線層135に設けられた導電膜と第2配線層136に設けられた導電膜とにより構成することにより、電源線の線幅を狭くする。
【解決手段】複数の電源線103R,103G,及び103Bのうちの少なくとも1つの電源線の少なくとも1部を第1配線層135に設けられた導電膜と第2配線層136に設けられた導電膜とにより構成することにより、電源線の線幅を狭くする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画素電極が形成された基板と共通電極との間に、有機発光材料を用いた発光素子を備えた有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置が注目を集めている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
有機EL表示装置では、発光素子に電流が供給されることにより発光素子は発光する。その際、発光素子の輝度は基本的に供給される電流の電流量により決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−3080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、発光素子の輝度は、基本的に供給される電流の電流量により決定されるため、電流量が所望の値となるよう、正確に設定する必要がある。
【0006】
また、十分な電流量を確保しようとすると、電流を供給するための配線の幅が増大して、額縁領域が大きくなり、種々の電子機器に搭載する際に支障を来すことがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、十分な電流量を確保し、あるいは、電源電圧の変動による発光素子の輝度の変動を抑制することが第1の目的である。さらには、上記の要請を満たすとともに、狭額縁化を可能とすることができる発光装置および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用している。
【0009】
本発明の電気光学装置は、基板上の有効領域に設けられた、第1の電極と第2の電極との間に挟まれた機能層を有する電気光学素子を備えた、複数の画素と、前記有効領域の外側で前記第2の電極に接続された電極用配線と、前記第1の電極と能動素子を介して接続され、少なくとも前記有効領域に設けられた接続用配線と、前記有効領域の外側において前記接続用配線に接続された電源線と、を含み、前記電極用配線の少なくとも一部分は第1配線層に設けられた第1導電膜からなり、前記電源線の少なくとも一部分は第2配線層に設けられた第2導電膜からなり、前記第1配線層と前記第2配線層とは、層間絶縁膜により互いに隔てられて形成されており、前記第1導電膜の少なくとも一部分と前記第2導電膜の少なくとも一部分とは、重なって配置されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の電気光学装置は、上記の電気光学装置であって、前記第2導電膜は、前記第1導電膜と前記基板との間に形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の電気光学装置は、上記の電気光学装置であって、前記第2導電膜は、前記層間絶縁膜に設けられたコンタクト部を介して前記接続用配線に接続されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の電気光学装置は、上記の電気光学装置であって、前記接続用配線は、前記第2配線層に設けられた第3導電膜からなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の電気光学装置は、上記の電気光学装置であって、前記能動素子は、トランジスタであり、前記トランジスタのゲート電極は、前記第1配線層に設けられた導電膜からなり、前記トランジスタのソース又はドレイン電極は、前記第2配線層に設けられた導電膜からなることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の電気光学装置は、上記の電気光学装置であって、前記機能層は、有機エレクトロルミネッセンス材料から構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の第1の電気光学装置は、複数の発光用電源配線が基板上の第1の層に配置され、発光用電源配線を対応する電極に接続させる複数の接続用配線が第1の層と電気的に絶縁された第2の層に配置された電気光学装置であって、複数の発光用電源配線のうち、最も外側に位置する発光用電源配線が第1の層及び第2の層の双方に設けられることを特徴とするものである。
【0016】
最も外側に位置する発光用電源配線は、平面的には接続用配線と重ならないため、第2の層にも設けることができる。これにより、本発明では、第1の層及び第2の層に設けられた発光用電源配線を電気的に接続すれば、一層のみに設けた場合に比較して各層における発光用電源配線の幅を減ずることができる。従って、本発明では、発光用電源配線の幅が減少した分、パネルの額縁を小さくすることが可能になる。
【0017】
上記の電気光学装置において、複数の発光用電源配線のうち、少なくとも、最も内側に位置する発光用電源配線に接続される接続用配線が第1の層に設けられることが好ましい。
【0018】
最も内側に位置する発光用電源配線に接続される接続用配線は、この発光用電源配線以外とは重ならないため、第1の層に設けることが可能である。
【0019】
そのため、本発明では、この接続用配線の幅分、第2の層に設けられた他の接続用配線を太くすることができ、接続用配線の製造を容易化できる。また、最も外側及び内側の発光用電源配線と接続用配線とのコンタクトが不要になり、コンタクト抵抗の依存性を小さくすることができる。
【0020】
電極上には、正孔注入/輸送層と、該正孔注入/輸送層に隣接して形成される有機エレクトロルミネッセンス材料からなる発光層とが設けられる構成を採用可能である。
【0021】
従って、本発明では、発光用電源配線及び接続用配線を介して電極に駆動電流を印加することにより発光する、小型でコンタクト抵抗依存性が小さいパネルを得ることができる。
【0022】
本発明の第2の電気光学装置は、第1電極が基板上にマトリックス状に配置された第1電極領域の周囲に、前記第1電極に接続される発光用電源配線と、前記第1電極との間に機能層を挟む第2電極に接続される第2電極用配線とが配置された電気光学装置であって、前記発光用電源配線と前記第2電極用配線とは、平面視したときに少なくとも一部が互いに重なり合って配置されることを特徴とする。
【0023】
上記の電気光学装置において、前記発光用電源配線と前記第2電極用配線との間には、層間絶縁層が配置されることが好ましい。これにより上記の電気光学装置において、発光用電源配線と第2電極用配線とが平面視で重なり合う分、これらの配線による専有面積を低減することができ、パネルの額縁を狭くすることが可能になる。また、発光用電源配線と第2電極用配線との少なくとも一部が重なることにより静電容量が形成されることになり、駆動電流の電位変動をより小さくして画像表示を安定して行うことができる。
【0024】
上記の電気光学装置において、発光用電源配線と第2電極用配線との間に層間絶縁層を配置することが好ましい。これにより、発光用電源配線と第2電極用配線とを絶縁することができる。
【0025】
上記の電気光学装置において、発光用電源配線と第2電極用配線とのいずれか一方を他方が占有する領域内に配置する構成も採用可能である。
【0026】
これにより、本発明では、発光用電源配線と第2電極用配線とのいずれか一方を配置する領域を、平面視で別途設ける必要がなくなり、狭額縁化に一層寄与できる。
【0027】
機能層としては、正孔注入/輸送層と、該正孔注入/輸送層に隣接して形成される有機エレクトロルミネッセンス材料からなる発光層とが設けられる構成を採用可能である。
【0028】
従って、本発明では、発光用電源配線を介して第1電極に駆動電流を印加することにより発光する、小型のパネルを得ることができる。
【0029】
本発明の第3電気光学装置は、基板上の有効領域に設けられた、第1の電極と第2の電極との間に挟まれた機能層を有する電気光学素子を備えた、複数の画素と、前記有効領域の外側で前記第2の電極に接続された電極用配線と、前記第1の電極と能動素子を介して接続され、少なくとも前記有効領域に設けられた接続用配線と、前記接続用配線と前記有効領域の外側で接続された電源線と、を含み、前記電源線の少なくとも1部は、層間絶縁膜により隔てられた複数の導電膜と前記複数の導電膜を互いに電気的に接続する導電材料とにより形成されていることを特徴とする。
【0030】
本発明の第4の電気光学装置は、基板上の有効領域に設けられた、第1の電極と第2の電極との間に挟まれた機能層を有する電気光学素子を備えた、複数の画素と、前記有効領域の外側で前記第2の電極に接続された電極用配線と、前記第1の電極と能動素子を介して接続され、少なくとも前記有効領域に設けられた接続用配線と、前記接続用配線と前記有効領域の外側で接続された電源線と、を含み、前記電源線は、前記有効領域の外側に複数設けられており、前記電源線のうち、前記有効領域から最も離れた位置に設けられた電源線の少なくとも1部は、層間絶縁膜により隔てられた複数の導電膜と前記複数の導電膜を互いに電気的に接続する導電材料とにより形成されていることを特徴とする。
【0031】
上記の電気光学装置のように電源線を多層化することにより、一層当たりの線幅を、電源線を一つの配線層のみで構成したときに比べ、減ずることができる。これにより、十分な電流量を確保しつつ、狭額縁化が可能となる。
【0032】
本発明の第5の電気光学装置は、基板上の有効領域に設けられた、第1の電極と第2の電極との間に挟まれた機能層を有する電気光学素子を備えた、複数の画素と、前記有効領域の外側で前記第2の電極に接続された電極用配線と、前記第1の電極と能動素子を介して接続され、少なくとも前記有効領域に設けられた接続用配線と、前記接続用配線と前記有効領域の外側で接続された電源線と、を含み、前記電源線は、前記有効領域の外側に複数設けられており、前記電源線のうち、前記有効領域に最も近い位置に設けられた電源線は、一つの配線層のみに設けられた導電膜により形成されていることを特徴とする。
【0033】
本発明の第6の電気光学装置は、基板上の有効領域に設けられた、第1の電極と第2の電極との間に挟まれた機能層を有する電気光学素子を備えた、複数の画素と、前記有効領域の外側で前記第2の電極に接続された電極用配線と、前記第1の電極に能動素子を介して接続され、少なくとも前記有効領域に設けられた接続用配線と、前記接続用配線と前記有効領域の外側で接続された電源線と、を含み、前記第1の電極と、前記有効領域に設けられた接続用配線を介して、前記有効領域の外側で接続された電源線と、を含み、前記接続用配線の線幅は、当該接続用配線が接続する前記電源線の幅とは、異なっていることを特徴とする。
【0034】
有効領域内においては、画素ピッチに応じて前記接続用配線の線幅を狭くする必要となる場合があるが、一方、前記接続用配線を介して画素に供給される電流量を十分に確保する必要がある。そこで、上記の電気光学装置においては、前記電源線の線幅を前記接続用配線の線幅より大とすることにより、画素ピッチに対応し、かつ、電流量の確保するということが可能となる。
【0035】
本発明の第7の電気光学装置は、基板上の有効領域に設けられた、第1の電極と第2の電極との間に挟まれた機能層を有する電気光学素子を備えた、複数の画素と、前記有効領域の外側で前記第2の電極に接続された電極用配線と、前記第1の電極に能動素子を介して接続され、少なくとも前記有効領域に設けられた接続用配線と、前記接続用配線と前記有効領域の外側で接続された電源線と、を含み、前記接続用配線の第1の部分の線幅と第2の部分の線幅とは、互いに異なっていることを特徴とする。
【0036】
上記の電気光学装置において、前記第1の部分とは、例えば、前記接続用配線のうち、前記接続用配線が前記電源線と接続するコンタクト部近傍であり、前記第2の部分とは、例えば、前記第1の部分より前記有効領域に近いか、あるいは前記有効領域にある部分である。この場合、前記第1の部分の線幅は前記第2の部分の線幅より大とすることが好ましい。
このように、前記接続用配線のような同一の配線に線幅が互いに異なる部分を設けることにより、コンタクト部などにおける線幅や材質の差違等に由来する電圧降下や抵抗増加等による供給電流量の変動や不安定化を緩和することができる。
【0037】
本発明の第8の電気光学装置は、基板上の有効領域に設けられた、第1の電極と第2の電極との間に挟まれた機能層を有する電気光学素子を備えた、複数の画素と、前記有効領域の外側で前記第2の電極に接続された電極用配線と、前記第1の電極に能動素子を介して接続され、少なくとも前記有効領域に設けられた接続用配線と、前記接続用配線と前記有効領域の外側で接続された電源線と、を含み、前記接続用配線は複数設けられており、前記複数の接続用配線のうち、少なくとも1つは、異なる複数の配線層のそれぞれに設けられた導電膜及び前記導電膜を互いに接続する導電材料により構成されていることを特徴とする。
【0038】
前記有効領域上では、前記接続用配線は、基本的に全て同一層に設けられていることが好ましい。一方、前記接続用配線の前記電源線とのコンタクト部近傍には、多数のコンタクト部も存在することが多いため、少なくとも前記接続用配線の前記電源線とのコンタクト部近傍では、前記接続用配線の全てを同一層に設けることは、限られた空間を有効利用には不利である。そこで、上記の電気光学装置のように、前記接続用配線のうち少なくとも1つを異なる配線層を利用して構成することにより、上述の2つの要請を満たすことができる。
【0039】
本発明の第9の電気光学装置は、基板上の有効領域に設けられた、第1の電極と第2の電極との間に挟まれた機能層を有する電気光学素子を備えた、複数の画素と、前記有効領域の外側で前記第2の電極に接続された電極用配線と、前記第1の電極と能動素子を介して接続され、少なくとも前記有効領域に設けられた接続用配線と、前記接続用配線と前記有効領域の外側で接続された電源線と、を含み、前記電極用配線の少なくとも1部分を構成する第1の導電膜と前記基板との間には、前記電源線の少なくとも1部分を構成する第2の導電膜が形成されており、前記第1の導電膜と前記第2の導電膜とは、層間絶縁膜により互いに隔てられて形成されており、前記第1の導電膜の少なくとも1部分と前記第2の導電膜の少なくとも1部分とは、重なって配置されていることを特徴とする。
【0040】
上記の電気光学装置のように、前記電源線と前記電極用配線とを層間絶縁膜を介して積層することにより、額縁領域を減ずることができる。さらに、前記電源線と前記電極用配線との間に容量を形成することができるので、電圧変動の緩和という効果も奏する。
【0041】
上記の電気光学装置において、前記第2の導電膜は、前記層間絶縁膜に設けられたコンタクト部を介して前記接続用配線に接続されていることが好ましい。
【0042】
上記の電気光学装置において、前記機能層は、有機エレクトロルミネッセンス材料から構成されていてもよい。
【0043】
本発明の電子機器は、上記の電気光学装置を備えることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態を示す図であって、表示装置の配線構造の平面模式図である。
【図2】第1実施形態の表示装置の平面模式図である。
【図3】図2におけるA−A'線視断面図である。
【図4】図3に示した断面図の拡大図である。
【図5】第1実施形態におけるおける電源線及び各電源線に接続される接続用配線の拡大図である。
【図6】(a)〜(d)は本発明の実施形態の表示装置の製造方法を説明する工程図である。
【図7】(a)〜(c)は本発明の実施形態の表示装置の製造方法を説明する工程図である。
【図8】(a)〜(c)は本発明の実施形態の表示装置の製造方法を説明する工程図である。
【図9】(a)〜(c)は本発明の実施形態の表示装置の製造方法を説明する工程図である。
【図10】第2実施形態の表示装置の平面模式図である。
【図11】図10におけるA−A'線視断面図である。
【図12】第2実施形態におけるおける電源線及び各電源線に接続される接続用配線の拡大図である。
【図13】有機EL表示装置を備えた電子機器の一例を示す図であり、(a)は携帯電話、(b)は腕時計型電子機器、(c)は携帯型情報処理装置のそれぞれ斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
[第1実施形態]
以下、本発明の電気光学装置及び電子機器の実施形態を図1ないし図10を参照して説明する。なお、以下に示す各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を異ならせてある。
【0046】
図1に本発明にかかる電気光学装置の配線構造の平面模式図を示す。
図1に示すように、本実施形態の表示装置(電気光学装置)1は、複数の走査線101と、走査線101に対して交差する方向に延びる複数のデータ線102と、データ線102に並列に延びる複数の接続用配線99とがそれぞれ配線された構成を有するとともに、走査線101及びデータ線102の交差部に対応して、画素領域Aが設けられている。
【0047】
データ線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチ等を備えるデータ側駆動回路104が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタ等を備える走査側駆動回路105が接続されている。更に、画素領域Aの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用の薄膜トランジスタ112と、このスイッチング用の薄膜トランジスタ112を介してデータ線102から共有される画素信号を保持する保持容量capと、該保持容量capによって保持された画素信号が電圧としてゲート電極に供給される駆動用の薄膜トランジスタ123と、この駆動用薄膜トランジスタ123及び接続用配線99(99R、99G、99B)を介して電源線(発光用電源配線)103に電気的に接続したときに当該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(電極)111と、この画素電極111と共通電極(陰極)12との間に挟み込まれた機能層110とが設けられている。画素電極111と共通電極12と機能層110により、発光素子が構成されている。
【0048】
係る構成によれば、走査線101が駆動されてスイッチング用の薄膜トランジスタ112がオンになると、そのときのデータ線102の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capに状態に応じて、駆動用の薄膜トランジスタ123の導通状態が決まる。そして、駆動用の薄膜トランジスタ123のチャネルを介して、電源線103から接続用配線99と薄膜トランジスタ123とを介して画素電極111に電流が流れ、更に機能層110を介して共通電極12に電流が流れる。機能層110は、これを流れる電流量に応じて発光する。
【0049】
図2には本実施形態の電気光学装置の平面模式図を示す。
【0050】
基板2は、例えばガラス等の透明基板であり、基板2の中央に位置する表示領域(電極領域)2aと、基板2の周縁に位置して有効領域2aの外側に配置された非有効領域2bとに区画されている。有効領域2aは、マトリックス状に配置された発光素子を備えた画素R、画素G、及び画素Bによって形成される領域であり、表示に実際に寄与する表示領域である。画素R、画素G、及び画素Bのそれぞれは、赤、緑、及び青の画素に対応している。
【0051】
共通電極12に接続される共通電極用配線12aは、有効領域2aの外周をなす4辺のうち3辺を取り囲むようにコの字に形成されている。
【0052】
電源線103は、有効領域2aと共通電極用配線12aとの間に設けられている。電源線103R、電源線103G、及び電源線103Bはそれぞれ、図1に示した接続用配線99R、99G、及び99Bを介して、画素R、画素G、及び画素Bに電源電圧を供給している。
【0053】
電源線103R、103G、103Bのうち、有効領域2aから最も離れた位置にある電源線103Bは、2重配線構造を有しており、コンタクトホール103B3は、上下導通を行うために設けられている。
【0054】
有効領域2aと電源線103のうち有効領域2aと最も近接した電源線103Rと有効領域2aとの間には検査回路106が設けられている。この検査回路106は、製造過程や出荷時において、表示装置の品質、欠陥等の検査を行うために用いられる。
【0055】
有効領域2aに対して検査回路106の反対側の基板2の辺側には、駆動IC6を備えたフレキシブル基板5が取り付けられている。上述の共通電極用配線12a及び電源線103は、ともに配線5aを介して駆動IC6に接続されている。
【0056】
基板2のフレキシブル基板5の取り付けられた辺側から、基板2の当該辺に対向する方向で、有効領域2aと電源線103Rとの間の領域、及び有効領域2aと電源線103Gとの間の領域には、それぞれ走査線駆動回路105が設けられている。走査線駆動回路105に制御信号及び電源電圧を供給するための制御駆動回路用制御信号配線105a及び駆動回路用電源配線105bが、走査線駆動回路105と電源線103Rとの間の領域、及び走査線駆動回路105と電源線103Gとの間の領域に設けられている。
【0057】
図3には、図2におけるA−A'断面模式図を示す。図3に示すように、有効領域2aに対応して設けられた発光素子及びバンク部からなる発光素子部11と基板2との間には能動素子層14が備えられ、この能動素子層14に前述の走査線、データ線、保持容量、スイッチング用の薄膜トランジスタ112、駆動用の薄膜トランジスタ123等が備えられている。
【0058】
また、能動素子層14の非有効領域2bに対応して、前述の電源線103(103R、103G、103B)が配線されている。非有効領域2bの一部をダミー領域2dとして使用している。ダミー領域2dは、主にインクジェットプロセスを用いて発光素子110を形成するのに先だって、発光素子を形成する材料の吐出量を安定化するために用いられる領域であって、言うなれば、試し打ちするための領域である。
【0059】
前述の走査側駆動回路105、駆動回路用制御信号配線105a、及び駆動回路用電源配線105bは、ダミー領域2dの下方の能動素子層14内に設けられている。図3には図示されていないが、検査回路106の上方にダミー領域2dを設けてもよい。
【0060】
電源線103Rは、第1配線層135に設けられた導電膜を用いて形成されている。同様に電源線103Gも、第1配線層135に設けられた導電膜を用いて形成されている。それに対して、電源線103Bは、前述のように2重配線構造を有している。具体的には、第1配線層135に設けられた導電膜と第2配線層136に設けられた導電膜とにより構成されている。上記の2つの導電膜の間には、第1層間絶縁膜144aが設けられているとともに、第1層間絶縁膜144aに設けられたコンタクトホール(図2に示したコンタクトホール103B3に対応)を介して上記の2つの導電膜は電気的に接続される。
【0061】
共通電極用配線12aは、具体的には、第1配線層135に設けられた導電膜と第2配線層136に設けられた導電膜とにより構成されている。
【0062】
発光素子部11上には封止部3により覆われている。この封止部3は、能動素子層14上に設けられた封止樹脂603と、封止基板604とから構成されている。封止樹脂603は、熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂等からなり、特に、熱硬化樹脂の1種であるエポキシ樹脂よりなることが好ましい。この封止樹脂603は、基板の外周に沿って配置されており、例えば、マイクロディスペンサ等により形成されたものである。この封止樹脂603は、能動素子層14と封止缶604を接合するもので、能動素子層14と封止基板604の間から発光素子部11とにより形成された空間への水又は酸素の侵入を防いで、共通電極12または発光素子部11内に形成された図示略の発光層の劣化を防止する。
【0063】
封止基板604は、例えば、ガラス、プラスチック、金属等からなるもので、その内側には発光素子部11を収納する凹部604aが設けられている。また凹部604aには水、酸素等を吸収するゲッター剤605が配置されており、封止基板604と発光素子部11とにより形成された空間に侵入した水又は酸素を吸収できるようになっている。なお、このゲッター剤605は省略しても良い。
【0064】
共通電極12を形成するアルミニウムは、発光層110bから発した光を基板2側に反射させるもので、Al膜の他、Ag膜、AlとAgの積層膜等からなることが好ましい。また、その厚さは、例えば100〜1000nmの範囲が好ましく、特に200nm程度がよい。
【0065】
更にアルミニウム上にSiO、SiO2、SiN等からなる共通電極12等を保護するための保護層15を設けても良い。
【0066】
保護層15は共通電極12を覆うとともに、共通電極用配線12aと共通電極12との接続部を保護している。さらに、保護層15が封止樹脂603の下方まで延在しており、封止樹脂603と能動素子層14との間に介在している構造となっている。
次に図4に、表示装置における表示領域の断面構造を拡大した図を示す。この図4には3つの画素領域Aが図示されている。この表示装置1は、基板2上に、TFTなどの回路等が形成された能動素子層14と、機能層110が形成された発光素子部11とが順次積層されて構成されている。
【0067】
この表示装置1においては、機能層110から基板2側に発した光が、能動素子層14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるとともに、機能層110から基板2の反対側に発した光が共通電極12により反射されて、能動素子層14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるようになっている。なお、共通電極12として、透明な材料を用いることにより共通電極側から発光する光を出射させることができる。透明な材料としては、例えば、ITO、Pt、Ir、Ni、もしくはPdを用いることができる。膜厚としては75nmほどの膜厚にすることが好ましく、この膜厚よりも薄くした方がより好ましい。
【0068】
能動素子層14には、基板2上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜2cが形成され、この下地保護膜2c上に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜141が形成されている。尚、半導体膜141には、ドレイン領域141a及びソース領域141bが高濃度Bイオン打ち込みにより形成されている。なお、Bが導入されなかった部分がチャネル領域141cとなっている。
【0069】
更に能動素子層14には、下地保護膜2c及び半導体膜141を覆う透明なゲート絶縁膜142が形成され、ゲート絶縁膜142上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極143(走査線101)が形成され、ゲート電極143及びゲート絶縁膜142上には透明な第1層間絶縁膜144aと第2層間絶縁膜144bが形成されている。ゲート電極143は半導体膜141のチャネル領域141cに対応する位置に設けられている。
【0070】
また、第1、第2層間絶縁膜144a、144bを貫通して、半導体膜141のドレイン、ソース領域141a、141bにそれぞれ接続されるコンタクトホール145,146が形成されている。そして、第2層間絶縁膜144b上には、ITO等からなる透明な画素電極111が所定の形状にパターニングされて形成され、ドレイン領域141aは、コンタクトホール145を介して画素電極111に接続されている。また、ソース領域141bは、コンタクトホール146を介して接続用配線99に接続されている。このようにして、能動素子層14には、各画素電極111に接続された駆動用の薄膜トランジスタ123が形成されている。尚、能動素子層14には、前述した保持容量cap及びスイッチング用の薄膜トランジスタ112も形成されているが、図4ではこれらの図示を省略している。
【0071】
次に図4に示すように、発光素子部11は、複数の画素電極111上の各々に積層された機能層110と、各機能層110を区画するバンク部112と、機能層110上に形成された共通電極12とを主体として構成されている。これら画素電極111、機能層110及び共通電極12によって発光素子が構成されている。ここで、画素電極111は、例えばITOにより形成されてなり、平面視略矩形にパターニングされて形成されている。この画素電極111の厚さは、50〜200nmの範囲が好ましく、特に150nm程度がよい。バンク部112は、基板2側に位置する無機物バンク層112aと基板2から離れて位置する有機物バンク層112bとが積層されて構成されている。
【0072】
無機物バンク層112a、有機物バンク層112bは、画素電極111の周縁部上に乗上げるように形成されている。平面的には、画素電極111の周囲と無機物バンク層112aとが平面的に重なるように配置された構造となっている。また、有機物バンク層112bも同様であり、画素電極111の一部と平面的に重なるように配置されている。また無機物バンク層112aは、有機物バンク層112bよりも画素電極111の中央側に更に形成されている。このようにして、無機物バンク層112aの各第1積層部112eが画素電極111の内側に形成されることにより、画素電極111の形成位置に対応する下部開口部112cが設けられている。
【0073】
また、有機物バンク層112bには、上部開口部112dが形成されている。
【0074】
この上部開口部112dは、画素電極111の形成位置及び下部開口部112cに対応するように設けられている。上部開口部112dは、図4に示すように、下部開口部112cより広く、画素電極111より狭く形成されている。また、上部開口部112dの上部の位置と、画素電極111の端部とがほぼ同じ位置になるように形成される場合もある。この場合は、図4に示すように、有機物バンク層112bの上部開口部112dの断面が傾斜する形状となる。
【0075】
また、無機物バンク層112aは、例えば、SiO2、TiO2等の無機材料からなることが好ましい。この無機物バンク層112aの膜厚は、50〜200nmの範囲が好ましく、特に150nmがよい。
更に、有機物バンク層112bは、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶媒性のある材料から形成されている。この有機物バンク層112bの厚さは、0.1〜3.5μmの範囲が好ましい。有機物バンク層112bの厚さを2μm以上にすれば、データ線102、あるいは走査線101など、信号を供給する信号配線と共通電極12とを十分離間することができるので信号配線と共通電極12との間に生ずる寄生容量を減ずることができるので、信号の遅延、鈍り等の問題を軽減することができる。
【0076】
また、バンク部112には、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域が形成されている。親液性を示す領域は、無機物バンク層112aの第1積層部112e及び画素電極111の電極面111aであり、これらの領域は、酸素を処理ガスとするプラズマ処理によって親液性に表面処理されている。また、撥液性を示す領域は、上部開口部112dの壁面及び有機物バンク層112の上面112fであり、これらの領域は、4フッ化メタンを前駆物質とするプラズマ処理によって表面がフッ化処理(撥液性に処理)されている。尚、有機物バンク層は、フッ素ポリマーを含有する材料により形成しても良い。
【0077】
機能層110は、画素電極111上に積層された正孔注入/輸送層110aと、正孔注入/輸送層110a上に隣接して形成された有機エレクトロルミネッセンス材料からなる発光層110bとから構成されている。なお、発光層110bに隣接して電子注入輸送層などの機能を有する他の機能層を更に形成しても良い。
【0078】
正孔注入/輸送層110aは、正孔を発光層110bに注入する機能を有するとともに、正孔を正孔注入/輸送層110a内部において輸送する機能を有する。このような正孔注入/輸送層110aを画素電極111と発光層110bの間に設けることにより、発光層110bの発光効率、寿命等の素子特性が向上する。また、発光層110bでは、正孔注入/輸送層110aから注入された正孔と、共通電極12から注入される電子が発光層で再結合し、発光が得られる。
【0079】
正孔注入/輸送層110aは、下部開口部112c内に位置して画素電極面111a上に形成される平坦部110a1と、上部開口部112d内に位置して無機物バンク層の第1積層部112e上に形成される周縁部110a2から構成されている。また、正孔注入/輸送層110aは、構造によっては、画素電極111上であって、且つ無機物バンク層110aの間(下部開口部110c)にのみ形成されている(前述に記載した平坦部にのみ形成される形態もある)。この平坦部110a1は、その厚さが一定で例えば50〜70nmの範囲に形成される。
【0080】
周縁部110a2が形成される場合においては、周縁部110a2は、第1積層部112e上に位置するとともに上部開口部112dの壁面、即ち有機物バンク層112bに密着している。また、周縁部110a2の厚さは、電極面111aに近い側で薄く、電極面111aから離れる方向に沿って増大し、下部開口部112dの壁面近くで最も厚くなっている。
【0081】
周縁部110a2が上記の様な形状を示す理由としては、正孔注入/輸送層110aが、正孔注入/輸送層形成材料及び極性溶媒を含む第1組成物を開口部112内に吐出してから極性溶媒を除去して形成されたものであり、極性溶媒の揮発が主に無機物バンク層の第1積層部112e上で起こり、正孔注入/輸送層形成材料がこの第1積層部112e上に集中的に濃縮・析出されたためである。
【0082】
また発光層110bは、正孔注入/輸送層110aの平坦部110a1及び周縁部110a2上に渡って形成されており、平坦部112a1上での厚さが50〜80nmの範囲とされている。発光層110bは、赤色(R)に発光する赤色発光層110b1、緑色(G)に発光する緑色発光層110b2、及び青色(B)に発光する青色発光層110b3、の3種類を有し、各発光層110b1〜110b3がストライプ配置されている。尚、正孔注入/輸送層形成材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸等の混合物を用いることができる。また、発光層110bの材料としては、例えば、ポリフルオレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、またはこれらの高分子材料にペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、例えばルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープして用いることができる。
【0083】
次に共通電極12は、発光素子部11の全面に形成されており、画素電極111と対になって機能層110に電流を流す役割を果たす。この共通電極12が陰極である場合は、例えば、カルシウム層やアルミニウム層などの金属層が積層したものであってもよい。このとき、発光層に近い側の陰極には仕事関数が低いものを設けることが好ましく、特にこの形態においては発光層110bに直接に接して発光層110bに電子を注入する役割を果たす。また、フッ化リチウムは発光層の材料によっては効率よく発光させるために、発光層110と共通電極12との間にLiFを形成する場合もある。
【0084】
尚、赤色及び緑色の発光層110b1、1110b2にはフッ化リチウムに限らず、他の材料を用いても良い。従ってこの場合は青色(B)発光層110b3のみにフッ化リチウムからなる層を形成し、他の赤色及び緑色の発光層110b1、110b2にはフッ化リチウム以外のものを積層しても良い。また、赤色及び緑色の発光層110b1、110b2上にはフッ化リチウムを形成せず、カルシウムのみを形成しても良い。尚、フッ化リチウムの厚さは、例えば2〜5nmの範囲が好ましく、特に2nm程度がよい。またカルシウムの厚さは、例えば2〜50nmの範囲が好ましく、特に20nm程度がよい。
【0085】
図5は、有効領域2aの上側領域における電源線103R、103G、103B及び各電源線に接続される接続用配線99R、99G、99Bの拡大図である。接続用配線99R、99G、及び99Bは、第1配線層135及び第2配線層136に形成された導電膜を利用して構成されており、本実施形態では、有効領域2aに最も近い位置にある電源線103Rに接続された接続用配線99Rは、第1配線層135に設けられた導電膜により構成されており、有効領域2aに最も遠い位置にある電源線103Bに接続された接続用配線99Bは、第2配線層136に設けられた導電膜を利用して形成されている。電源線103Rと電源線103Bに挟まれた電源線103Gに接続された接続用配線99Gは、第1層間絶縁膜114aを貫通するコンタクト100Gで電源線103Gに接続されている。コンタクト100Gにおいて、第1配線層135に設けられた導電膜と第2配線層136に設けられた導電膜との導通が確保されている。
【0086】
本実施形態では、接続用配線99R、99G、及び99Bを、第1配線層135及び第2配線層136を利用して形成しているので、100Gなどのようなコンタクト部を可能な限り設けないようにしている。このように、コンタクト部を少なくすることにより、断線等の不具合を低減することができる。
接続用配線99R、99G、及び99Bは有効領域2aに向かって略平行に延在しており、接続用配線99R、99G、及び99Bのそれぞれの、少なくとも1部分の幅を異ならせている。これは、安定的に電源電圧を供給するため、接続用配線99R、99G、及び99B、電源線103R、103G、103Bの十分な線幅を確保しておくと同時に、有効領域2aの画素のピッチに適合させて、接続用配線99R、99G、及び99Bのそれぞれの線幅を狭くしているためである。
【0087】
なお、図3に示しているように、有効領域2a内では、接続用配線99R、99G、及び99Bは基本的に、全て同一の配線層にある導電膜を利用して形成されていることが望ましく、本実施形態では、第2配線層136に設けられた導電膜を利用して形成されている。一方、接続用配線99Rは、電源線103Rとのコンタクト部近傍では、図5に示したように第1配線層135を利用して形成されているので、接続用配線99Rは、上記のコンタクト部から有効領域2aに至る間の領域において、第1配線層135に設けられた導電膜から第2配線層136に設けられた導電膜への接続を行う必要がある。
【0088】
次に本実施形態の表示装置の製造方法を図面を参照して説明する。
【0089】
まず、図6ないし図8を参照して、基板2上に能動素子層14を形成する方法について説明する。なお、図6ないし図8に示す各断面図は、図2中のA−A'線に沿う断面に対応している。なお、以下の説明において、不純物濃度は、いずれも活性化アニール後の不純物として表される。
【0090】
まず、図6(a)に示すように、基板2上に、シリコン酸化膜などからなる下地保護層2cを形成する。次に、ICVD法、プラズマCVD法などを用いてアモルファスシリコン層を形成した後、レーザアニール法又は急速加熱法により結晶粒を成長させてポリシリコン層501とする。
【0091】
次に図6(b)に示すように、ポリシリコン層501をフォトリソグラフィ法によりパターニングして島状のシリコン層241,251及び261を形成し、更にシリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜142を形成する。
【0092】
シリコン層241は、有効領域2aに対応する位置に形成されて画素電極111に接続される薄膜トランジスタ123(以下、「画素用TFT」と表記する場合がある)を構成するものであり、シリコン層251,261は、走査線駆動回路105内のPチャネル型及びNチャネル型の薄膜トランジスタ(以下、「駆動回路用TFT」と表記する場合がある)をそれぞれ構成するものである。
【0093】
ゲート絶縁層142の形成は、プラズマCVD法、熱酸化法などにより、各シリコン層241、251、261及び下地保護層2cを覆う厚さ約30nm〜200nmのシリコン酸化膜を形成することにより行う。ここで、熱酸化法を利用してゲート絶縁層142を形成する際には、シリコン層241,251及び261の結晶化も行い、これらのシリコン層をポリシリコン層とすることができる。チャネルドープを行う場合には、例えば、このタイミングで約1×1012cm-2のドーズ量でボロンイオンを打ち込む。その結果、シリコン層241,251及び261は、不純物濃度が約1×1017cm-3の低濃度P型のシリコン層となる。
【0094】
次に図6(c)に示すように、シリコン層241、261の一部にイオン注入選択マスクM1を形成し、この状態でリンイオンを約1×1015cm-2のドーズ量でイオン注入する。その結果、イオン注入選択マスクM1に対してセルフアライン的に高濃度不純物が導入され、シリコン層241及び261中に高濃度ソース領域241S及び261S並びに高濃度ドレイン領域241D及び261Dが形成される。
【0095】
次に図6(d)に示すように、イオン注入選択マスクM1を除去した後に、ゲート絶縁層142上にドープドシリコン、シリサイド膜、或いはアルミニウム膜やクロム膜、タンタル膜といった厚さ約500nm程度の金属膜を第1配線層135として形成し、更にこの金属膜をパターニングすることにより、Pチャネル型の駆動回路用TFTのゲート電極252、画素用TFTのゲート電極242、Nチャネル型の駆動回路用TFTのゲート電極262を形成する。また、上記パターニングにより、走査線駆動回路用信号配線105a、電源線103R、103G,103B、接続用配線99R、共通電極用配線12aの一部を同時に形成する。
【0096】
更に、ゲート電極242,252及び262をマスクとし、シリコン層241,251及び261に対してリンイオンを約4×1013cm-2のドープ量でイオン注入する。その結果、ゲート電極242,252及び262に対してセルフアライン的に低濃度不純物が導入され、図6(d)に示すように、シリコン層241及び261中に低濃度ソース領域241b及び261b、並びに低濃度ドレイン領域241c及び261cが形成される。また、シリコン層251中に低濃度不純物領域251S及び251Dが形成される。
【0097】
次に図7(a)に示すように、ゲート電極252の周辺を除く全面にイオン注入選択マスクM2を形成する。このイオン注入選択マスクM2を用いて、シリコン層251に対してボロンイオンを約1.5×1015cm-2のドープ量でイオン注入する。結果として、ゲート電極252もマスクとして機能し、シリコン層252中にセルフアライン的に高濃度不純物がドープされる。これにより251S及び251Dがカウンタードープされ、P型チャネル型の駆動回路用TFTのソース領域及びドレイン領域となる。
【0098】
次に図7(b)に示すように、イオン注入選択マスクM2を除去した後に、基板2の全面に第1層間絶縁膜144aを形成し、更にフォトリソグラフィ法により第1層間絶縁膜144aをパターニングして、各TFTのソース電極及びドレイン電極並びに共通電極用配線12aに対応する位置にコンタクトホール形成用の孔H1を設ける。
【0099】
次に図7(c)に示すように、第1層間絶縁膜144aを覆うように、アルミニウム、クロム、タンタル等の金属からなる厚さ約200nmないし800nm程度の導電層504を形成することにより、先に形成した孔H1にこれらの金属を埋め込んでコンタクトホールを形成する。更に導電層504上にパターニング用マスクM3を形成する。
【0100】
次に図8(a)に示すように、導電層504をパターニング用マスクM3によってパターニングし、各TFTのソース電極243,253,263、ドレイン電極244及び254、電源線103B、接続用配線99G、99B、走査線回路用電源配線105b及び共通電極用配線12aを第2配線層136として形成する。
【0101】
次に図8(b)に示すように、第1層間絶縁膜144aを覆う第2層間絶縁膜144bを、例えばアクリル系などの樹脂材料によって形成する。この第2層間絶縁膜144bは、約1〜2μm程度の厚さに形成されることが望ましい。
【0102】
次に図8(c)に示すように、第2層間絶縁膜144bのうち、画素用TFTのドレイン電極244に対応する部分をエッチングによって除去してコンタクトホール形成用の孔H2を形成する。このとき、同時に共通電極用配線12a上の第2層間絶縁膜144bも除去する。このようにして、基板2上に能動素子層14が形成される。
【0103】
次に、図9を参照して、能動素子層14上に発光素子部11を形成することにより表示装置1を得る手順について説明する。図9に示す断面図は、図2中のA−A'線に沿う断面に対応している。
【0104】
まず図9(a)に示すように、基板2の全面を覆うようにITO等の透明電極材料からなる薄膜を形成し、当該薄膜をパターニングすることにより、第2層間絶縁膜144bに設けた孔H2を埋めてコンタクトホール111aを形成するとともに画素電極111及びダミー画素電極111'を形成する。画素電極111は、薄膜トランジスタ123の形成部分のみに形成され、コンタクトホール111aを介してカレント薄膜トランジスタ123(スイッチング素子)に接続される。尚、ダミー電極111'は島状に配置される。
【0105】
次に、図9(b)に示すように、第2層間絶縁膜144b及び画素電極111及びダミー画素電極111'上に無機物バンク層112a及びダミー無機物バンク層212aを形成する。無機物バンク層112aは、画素電極111の一部が開口する態様にて形成し、ダミー無機物バンク層212aはダミー画素電極111'を完全に覆うように形成する。無機物バンク層112a及びダミー無機物バンク層212aは、例えばCVD法、TEOS法、スパッタ法、蒸着法等によって第2層間絶縁膜144b及び画素電極111の全面にSiO2、TiO2、SiN等の無機質膜を形成した後に、当該無機質膜をパターニングすることにより形成する。
【0106】
更に図9(b)に示すように、無機物バンク層112a及びダミー無機物バンク層212a上に、有機物バンク層112b及びダミー有機物バンク層212bを形成する。有機物バンク層は112bは、無機物バンク層112aを介して画素電極111の一部が開口する態様にて形成し、ダミー有機物バンク層212bはダミー無機物バンク層212aの一部が開口する態様にて形成する。このようにして、第2層間絶縁膜144b上にバンク112を形成する。
【0107】
続いて、バンク112の表面に、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域を形成する。本実施例においてはプラズマ処理工程により、各領域を形成するものとしている。具体的に該プラズマ処理工程は、画素電極111、無機物バンク層112a及びダミー無機物バンク層212aを親液性にする親液化工程と、有機物バンク層112b及びダミー有機物バンク層212bを撥液性にする撥液化工程とを少なくとも具備している。
【0108】
すなわち、バンク112を所定温度(例えば70〜80℃程度)に加熱し、次いで親液化工程として大気雰囲気中で酸素を反応ガスとするプラズマ処理(O2プラズマ処理)を行う。続いて、撥液化工程として大気雰囲気中で4フッ化メタンを反応ガスとするプラズマ処理(CF4プラズマ処理)を行い、プラズマ処理のために加熱されたバンク112を室温まで冷却することで、親液性及び撥液性が所定箇所に付与されることとなる。
【0109】
更に、画素電極111上及びダミー無機物バンク層212a上にそれぞれ、機能層110並びにダミー機能層210をインクジェット法により形成する。機能層110並びにダミー機能層210は、正孔注入/輸送層材料を含む組成物インクを吐出・乾燥した後に、発光層材料を含む組成物インクを吐出・乾燥することにより形成される。なお、この機能層110及びダミー機能層210の形成工程以降は、正孔注入/輸送層及び発光層の酸化を防止すべく、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0110】
次に、図9(c)に示すように、バンク112及び機能層110並びにダミー機能層210を覆う共通電極12を形成する。共通電極12は、バンク112及び機能層110並びにダミー機能層210上に第1共通電極層12bを形成した後に、第1共通電極層12bを覆って基板2上の共通電極用配線12aに接続される第2共通電極層12cを形成することにより得られる。
【0111】
最後に、基板2にエポキシ樹脂等の封止樹脂603を塗布し、この封止樹脂603を介して基板2に封止基板604を接合する。このようにして、図1〜図3に示すような表示装置1が得られる。
【0112】
このように、有効領域2aに対して最も外側の電源線103Bは、他の電源線103R、103Gに接続する接続用配線99R、99Gと平面的に重ならないので、第1配線層135及び第2配線層136の双方に設けることが可能である。そのため、本実施の形態では、電源線103Bを第1配線層135及び第2配線層136のいずれか一方の層に設けた場合に比較して略半分の幅で形成することができ、電源線103Bの幅が減少した分、パネルの額縁を小さくすることができる。
【0113】
また、有効領域2aに対して最も内側の電源線103Rに接続する接続用配線99Rは、他の電源線103G、103Bと平面的に重ならないため、第1配線層135に形成することが可能である。そのため、本実施の形態では、接続用配線99Rの幅分、第2配線層136に設けた接続用配線99G、99Bの幅を太くすることができ、マスクの製作等、表示装置の製造を容易化できる。さらに、本実施の形態では、電源線と接続用配線とを電気的に接続するためのコンタクトが100Gの一カ所だけなので、コンタクト抵抗の依存性を低減することも可能になる。
【0114】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について述べる。図10に示した第2実施形態にかかる表示装置のレイアウトの、図2に示した第1実施形態のレイアウトとの主な相違点は、共通電極用配線12aの少なくとも1部分が、有効領域2aの周囲に設けられた電源線103R、103G、103Bのうち少なくとも一つの少なくとも1部分と平面視したときに重なる点である。共通電極用配線12aは、フレキシブル基板5が取り付けられた辺の側から、当該辺に対向する辺に向かって延在しており、基板2の外周をなす4辺のうち互いに対向する2辺と有効領域2aとの間に、それぞれ設けられており、一方の共通電極用配線12aは、電源線103Rと重なって配置されており、他方の共通電極用配線12aは、103G及び103Bの少なくとも1部分と重なって配置されている。
【0115】
これに対応した断面図を図11に示す。共通電極用配線12aは、第2配線層136に設けられた導電膜により構成されており、共通電極12と接続されている。
【0116】
電源線103R、103G、及び103Bは、第2配線層136の下方の第1配線層135に設けられた導電膜により形成されている。共通電極用配線12aと電源線103R、103G、及び103Bとは第1層間絶縁層144aにより隔てられており、電気的に絶縁されている。共通電極用配線12aと共通電極12との接続には、例えば、ITO等からなる導電層12dが介在している。
【0117】
上述のように、共通電極用配線12aは電源線103R、103G、103Bの少なくとも1部分が重なるように形成されているが、これにより、共通電極用配線12aと電源線103R、103G及び103Bとの間に容量が形成され、電源電圧の変動を緩和され、電気光学素子の安定的な駆動が可能となる。
【0118】
電源線103R、103G、及び103Bは、有効領域2aとフレキシブル基板が取り付けられた辺に対向する辺との間の領域で、図12に示したように、それぞれ、コンタクト100R、100G、及び100Bを介して接続用配線99R、99G、及び99Bに接続されている。コンタクト100R、100G、及び100Bにおいて、第1配線層135に設けられた導電膜と第2配線層136に設けられた導電膜とが接続されている。接続用配線99R、99G、及び99Bは、第2配線層136に設けられた導電膜を用いて構成されている。接続用配線99R、99G、及び99Bの線幅は、対応する電源線103R、103G、及び103Bの線幅よりも小さくなっている。
【0119】
なお、前述のように、有効領域2a内では、接続用配線99R、99G、及び99Bは基本的に、全て同一の配線層にある導電膜を利用して形成されていることが望ましく、本実施形態では、第2配線層136に設けられた導電膜を利用して形成されている。一方、接続用配線99R、99G、及び99Bは、第2配線層136に設けられた導電膜を利用して形成されている。したがって、図5に示した場合とは異なり、接続用配線99R、99G、及び99Bは、コンタクト部から有効領域2aに至る間の領域において、第1配線層135に設けられた導電膜から第2配線層136に設けられた導電膜への接続を行う必要は特にはない。
【0120】
次に、上記実施の形態の表示装置1を備えた電子機器の例について説明する。
【0121】
図13(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図10(a)において、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は上記の有機EL装置1を用いた表示部を示している。
【0122】
図13(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図10(b)において、符号1100は時計本体を示し、符号1101は上記の有機EL装置1を用いた表示部を示している。
【0123】
図13(c)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図13(c)において、符号1200は情報処理装置、符号1202はキーボードなどの入力部、符号1204は情報処理装置本体、符号1206は上記の有機EL装置1を用いた表示部を示している。
【0124】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0125】
例えば、上記実施の形態では、電源線103Bを二層構造としたが、有効領域2aに対して最も外側に配置されている電源線であれば、他の電源線であってもよい。また、第1配線層135と第2配線層136に設けられる電源線、接続用配線等を逆に配置する構成としてもよい。
【0126】
また、上記実施の形態では、発光素子部11の構成として基板2側から画素電極111、正孔注入/輸送層110a、発光層110b、共通電極12の順序で形成するものとしたが、これに限定されるものではなく、逆の順序で配置する構成も採用可能である。さらに、上記実施の形態では、発光素子部11の発光が透明基板2を介して外面側に出射される形式の例を用いて説明したが、発光素子部11の発光が透明基板2と逆側から封止部3を介して出射される形式であっても適用可能である。この場合、上述したように優れた光透過性(透明性)を有する共通電極及び封止層を設ければよい。
【0127】
また、上記の実施形態においては、R、G、Bの各発光層をストライプ配置した場合について説明したが、本発明はこれに限られず、様々な配置構造を採用しても良い。例えばストライプ配置の他、モザイク配置や、デルタ配置とすることができる。
【0128】
以上説明したように、本発明では狭額縁化を実現した小型で、且つ製造が容易で高品質の電気光学装置及び電子機器を得ることができる。
【0129】
なお、上述の本実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0130】
1…表示装置(有機EL表示装置、電気光学装置)、2…基板、2a…有効領域(表示領域)、99R,99G,99B…接続用配線、103,103R,103G,103B…電源線(発光用電源配線)、110a…正孔注入/輸送層、110b…発光層、111…画素電極(電極)、135…第1配線層(第1の層)、136…第2配線層(第2の層)、144a…第1層間絶縁膜(絶縁層)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画素電極が形成された基板と共通電極との間に、有機発光材料を用いた発光素子を備えた有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置が注目を集めている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
有機EL表示装置では、発光素子に電流が供給されることにより発光素子は発光する。その際、発光素子の輝度は基本的に供給される電流の電流量により決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−3080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、発光素子の輝度は、基本的に供給される電流の電流量により決定されるため、電流量が所望の値となるよう、正確に設定する必要がある。
【0006】
また、十分な電流量を確保しようとすると、電流を供給するための配線の幅が増大して、額縁領域が大きくなり、種々の電子機器に搭載する際に支障を来すことがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、十分な電流量を確保し、あるいは、電源電圧の変動による発光素子の輝度の変動を抑制することが第1の目的である。さらには、上記の要請を満たすとともに、狭額縁化を可能とすることができる発光装置および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用している。
【0009】
本発明の電気光学装置は、基板上の有効領域に設けられた、第1の電極と第2の電極との間に挟まれた機能層を有する電気光学素子を備えた、複数の画素と、前記有効領域の外側で前記第2の電極に接続された電極用配線と、前記第1の電極と能動素子を介して接続され、少なくとも前記有効領域に設けられた接続用配線と、前記有効領域の外側において前記接続用配線に接続された電源線と、を含み、前記電極用配線の少なくとも一部分は第1配線層に設けられた第1導電膜からなり、前記電源線の少なくとも一部分は第2配線層に設けられた第2導電膜からなり、前記第1配線層と前記第2配線層とは、層間絶縁膜により互いに隔てられて形成されており、前記第1導電膜の少なくとも一部分と前記第2導電膜の少なくとも一部分とは、重なって配置されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の電気光学装置は、上記の電気光学装置であって、前記第2導電膜は、前記第1導電膜と前記基板との間に形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の電気光学装置は、上記の電気光学装置であって、前記第2導電膜は、前記層間絶縁膜に設けられたコンタクト部を介して前記接続用配線に接続されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の電気光学装置は、上記の電気光学装置であって、前記接続用配線は、前記第2配線層に設けられた第3導電膜からなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の電気光学装置は、上記の電気光学装置であって、前記能動素子は、トランジスタであり、前記トランジスタのゲート電極は、前記第1配線層に設けられた導電膜からなり、前記トランジスタのソース又はドレイン電極は、前記第2配線層に設けられた導電膜からなることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の電気光学装置は、上記の電気光学装置であって、前記機能層は、有機エレクトロルミネッセンス材料から構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の第1の電気光学装置は、複数の発光用電源配線が基板上の第1の層に配置され、発光用電源配線を対応する電極に接続させる複数の接続用配線が第1の層と電気的に絶縁された第2の層に配置された電気光学装置であって、複数の発光用電源配線のうち、最も外側に位置する発光用電源配線が第1の層及び第2の層の双方に設けられることを特徴とするものである。
【0016】
最も外側に位置する発光用電源配線は、平面的には接続用配線と重ならないため、第2の層にも設けることができる。これにより、本発明では、第1の層及び第2の層に設けられた発光用電源配線を電気的に接続すれば、一層のみに設けた場合に比較して各層における発光用電源配線の幅を減ずることができる。従って、本発明では、発光用電源配線の幅が減少した分、パネルの額縁を小さくすることが可能になる。
【0017】
上記の電気光学装置において、複数の発光用電源配線のうち、少なくとも、最も内側に位置する発光用電源配線に接続される接続用配線が第1の層に設けられることが好ましい。
【0018】
最も内側に位置する発光用電源配線に接続される接続用配線は、この発光用電源配線以外とは重ならないため、第1の層に設けることが可能である。
【0019】
そのため、本発明では、この接続用配線の幅分、第2の層に設けられた他の接続用配線を太くすることができ、接続用配線の製造を容易化できる。また、最も外側及び内側の発光用電源配線と接続用配線とのコンタクトが不要になり、コンタクト抵抗の依存性を小さくすることができる。
【0020】
電極上には、正孔注入/輸送層と、該正孔注入/輸送層に隣接して形成される有機エレクトロルミネッセンス材料からなる発光層とが設けられる構成を採用可能である。
【0021】
従って、本発明では、発光用電源配線及び接続用配線を介して電極に駆動電流を印加することにより発光する、小型でコンタクト抵抗依存性が小さいパネルを得ることができる。
【0022】
本発明の第2の電気光学装置は、第1電極が基板上にマトリックス状に配置された第1電極領域の周囲に、前記第1電極に接続される発光用電源配線と、前記第1電極との間に機能層を挟む第2電極に接続される第2電極用配線とが配置された電気光学装置であって、前記発光用電源配線と前記第2電極用配線とは、平面視したときに少なくとも一部が互いに重なり合って配置されることを特徴とする。
【0023】
上記の電気光学装置において、前記発光用電源配線と前記第2電極用配線との間には、層間絶縁層が配置されることが好ましい。これにより上記の電気光学装置において、発光用電源配線と第2電極用配線とが平面視で重なり合う分、これらの配線による専有面積を低減することができ、パネルの額縁を狭くすることが可能になる。また、発光用電源配線と第2電極用配線との少なくとも一部が重なることにより静電容量が形成されることになり、駆動電流の電位変動をより小さくして画像表示を安定して行うことができる。
【0024】
上記の電気光学装置において、発光用電源配線と第2電極用配線との間に層間絶縁層を配置することが好ましい。これにより、発光用電源配線と第2電極用配線とを絶縁することができる。
【0025】
上記の電気光学装置において、発光用電源配線と第2電極用配線とのいずれか一方を他方が占有する領域内に配置する構成も採用可能である。
【0026】
これにより、本発明では、発光用電源配線と第2電極用配線とのいずれか一方を配置する領域を、平面視で別途設ける必要がなくなり、狭額縁化に一層寄与できる。
【0027】
機能層としては、正孔注入/輸送層と、該正孔注入/輸送層に隣接して形成される有機エレクトロルミネッセンス材料からなる発光層とが設けられる構成を採用可能である。
【0028】
従って、本発明では、発光用電源配線を介して第1電極に駆動電流を印加することにより発光する、小型のパネルを得ることができる。
【0029】
本発明の第3電気光学装置は、基板上の有効領域に設けられた、第1の電極と第2の電極との間に挟まれた機能層を有する電気光学素子を備えた、複数の画素と、前記有効領域の外側で前記第2の電極に接続された電極用配線と、前記第1の電極と能動素子を介して接続され、少なくとも前記有効領域に設けられた接続用配線と、前記接続用配線と前記有効領域の外側で接続された電源線と、を含み、前記電源線の少なくとも1部は、層間絶縁膜により隔てられた複数の導電膜と前記複数の導電膜を互いに電気的に接続する導電材料とにより形成されていることを特徴とする。
【0030】
本発明の第4の電気光学装置は、基板上の有効領域に設けられた、第1の電極と第2の電極との間に挟まれた機能層を有する電気光学素子を備えた、複数の画素と、前記有効領域の外側で前記第2の電極に接続された電極用配線と、前記第1の電極と能動素子を介して接続され、少なくとも前記有効領域に設けられた接続用配線と、前記接続用配線と前記有効領域の外側で接続された電源線と、を含み、前記電源線は、前記有効領域の外側に複数設けられており、前記電源線のうち、前記有効領域から最も離れた位置に設けられた電源線の少なくとも1部は、層間絶縁膜により隔てられた複数の導電膜と前記複数の導電膜を互いに電気的に接続する導電材料とにより形成されていることを特徴とする。
【0031】
上記の電気光学装置のように電源線を多層化することにより、一層当たりの線幅を、電源線を一つの配線層のみで構成したときに比べ、減ずることができる。これにより、十分な電流量を確保しつつ、狭額縁化が可能となる。
【0032】
本発明の第5の電気光学装置は、基板上の有効領域に設けられた、第1の電極と第2の電極との間に挟まれた機能層を有する電気光学素子を備えた、複数の画素と、前記有効領域の外側で前記第2の電極に接続された電極用配線と、前記第1の電極と能動素子を介して接続され、少なくとも前記有効領域に設けられた接続用配線と、前記接続用配線と前記有効領域の外側で接続された電源線と、を含み、前記電源線は、前記有効領域の外側に複数設けられており、前記電源線のうち、前記有効領域に最も近い位置に設けられた電源線は、一つの配線層のみに設けられた導電膜により形成されていることを特徴とする。
【0033】
本発明の第6の電気光学装置は、基板上の有効領域に設けられた、第1の電極と第2の電極との間に挟まれた機能層を有する電気光学素子を備えた、複数の画素と、前記有効領域の外側で前記第2の電極に接続された電極用配線と、前記第1の電極に能動素子を介して接続され、少なくとも前記有効領域に設けられた接続用配線と、前記接続用配線と前記有効領域の外側で接続された電源線と、を含み、前記第1の電極と、前記有効領域に設けられた接続用配線を介して、前記有効領域の外側で接続された電源線と、を含み、前記接続用配線の線幅は、当該接続用配線が接続する前記電源線の幅とは、異なっていることを特徴とする。
【0034】
有効領域内においては、画素ピッチに応じて前記接続用配線の線幅を狭くする必要となる場合があるが、一方、前記接続用配線を介して画素に供給される電流量を十分に確保する必要がある。そこで、上記の電気光学装置においては、前記電源線の線幅を前記接続用配線の線幅より大とすることにより、画素ピッチに対応し、かつ、電流量の確保するということが可能となる。
【0035】
本発明の第7の電気光学装置は、基板上の有効領域に設けられた、第1の電極と第2の電極との間に挟まれた機能層を有する電気光学素子を備えた、複数の画素と、前記有効領域の外側で前記第2の電極に接続された電極用配線と、前記第1の電極に能動素子を介して接続され、少なくとも前記有効領域に設けられた接続用配線と、前記接続用配線と前記有効領域の外側で接続された電源線と、を含み、前記接続用配線の第1の部分の線幅と第2の部分の線幅とは、互いに異なっていることを特徴とする。
【0036】
上記の電気光学装置において、前記第1の部分とは、例えば、前記接続用配線のうち、前記接続用配線が前記電源線と接続するコンタクト部近傍であり、前記第2の部分とは、例えば、前記第1の部分より前記有効領域に近いか、あるいは前記有効領域にある部分である。この場合、前記第1の部分の線幅は前記第2の部分の線幅より大とすることが好ましい。
このように、前記接続用配線のような同一の配線に線幅が互いに異なる部分を設けることにより、コンタクト部などにおける線幅や材質の差違等に由来する電圧降下や抵抗増加等による供給電流量の変動や不安定化を緩和することができる。
【0037】
本発明の第8の電気光学装置は、基板上の有効領域に設けられた、第1の電極と第2の電極との間に挟まれた機能層を有する電気光学素子を備えた、複数の画素と、前記有効領域の外側で前記第2の電極に接続された電極用配線と、前記第1の電極に能動素子を介して接続され、少なくとも前記有効領域に設けられた接続用配線と、前記接続用配線と前記有効領域の外側で接続された電源線と、を含み、前記接続用配線は複数設けられており、前記複数の接続用配線のうち、少なくとも1つは、異なる複数の配線層のそれぞれに設けられた導電膜及び前記導電膜を互いに接続する導電材料により構成されていることを特徴とする。
【0038】
前記有効領域上では、前記接続用配線は、基本的に全て同一層に設けられていることが好ましい。一方、前記接続用配線の前記電源線とのコンタクト部近傍には、多数のコンタクト部も存在することが多いため、少なくとも前記接続用配線の前記電源線とのコンタクト部近傍では、前記接続用配線の全てを同一層に設けることは、限られた空間を有効利用には不利である。そこで、上記の電気光学装置のように、前記接続用配線のうち少なくとも1つを異なる配線層を利用して構成することにより、上述の2つの要請を満たすことができる。
【0039】
本発明の第9の電気光学装置は、基板上の有効領域に設けられた、第1の電極と第2の電極との間に挟まれた機能層を有する電気光学素子を備えた、複数の画素と、前記有効領域の外側で前記第2の電極に接続された電極用配線と、前記第1の電極と能動素子を介して接続され、少なくとも前記有効領域に設けられた接続用配線と、前記接続用配線と前記有効領域の外側で接続された電源線と、を含み、前記電極用配線の少なくとも1部分を構成する第1の導電膜と前記基板との間には、前記電源線の少なくとも1部分を構成する第2の導電膜が形成されており、前記第1の導電膜と前記第2の導電膜とは、層間絶縁膜により互いに隔てられて形成されており、前記第1の導電膜の少なくとも1部分と前記第2の導電膜の少なくとも1部分とは、重なって配置されていることを特徴とする。
【0040】
上記の電気光学装置のように、前記電源線と前記電極用配線とを層間絶縁膜を介して積層することにより、額縁領域を減ずることができる。さらに、前記電源線と前記電極用配線との間に容量を形成することができるので、電圧変動の緩和という効果も奏する。
【0041】
上記の電気光学装置において、前記第2の導電膜は、前記層間絶縁膜に設けられたコンタクト部を介して前記接続用配線に接続されていることが好ましい。
【0042】
上記の電気光学装置において、前記機能層は、有機エレクトロルミネッセンス材料から構成されていてもよい。
【0043】
本発明の電子機器は、上記の電気光学装置を備えることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態を示す図であって、表示装置の配線構造の平面模式図である。
【図2】第1実施形態の表示装置の平面模式図である。
【図3】図2におけるA−A'線視断面図である。
【図4】図3に示した断面図の拡大図である。
【図5】第1実施形態におけるおける電源線及び各電源線に接続される接続用配線の拡大図である。
【図6】(a)〜(d)は本発明の実施形態の表示装置の製造方法を説明する工程図である。
【図7】(a)〜(c)は本発明の実施形態の表示装置の製造方法を説明する工程図である。
【図8】(a)〜(c)は本発明の実施形態の表示装置の製造方法を説明する工程図である。
【図9】(a)〜(c)は本発明の実施形態の表示装置の製造方法を説明する工程図である。
【図10】第2実施形態の表示装置の平面模式図である。
【図11】図10におけるA−A'線視断面図である。
【図12】第2実施形態におけるおける電源線及び各電源線に接続される接続用配線の拡大図である。
【図13】有機EL表示装置を備えた電子機器の一例を示す図であり、(a)は携帯電話、(b)は腕時計型電子機器、(c)は携帯型情報処理装置のそれぞれ斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
[第1実施形態]
以下、本発明の電気光学装置及び電子機器の実施形態を図1ないし図10を参照して説明する。なお、以下に示す各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を異ならせてある。
【0046】
図1に本発明にかかる電気光学装置の配線構造の平面模式図を示す。
図1に示すように、本実施形態の表示装置(電気光学装置)1は、複数の走査線101と、走査線101に対して交差する方向に延びる複数のデータ線102と、データ線102に並列に延びる複数の接続用配線99とがそれぞれ配線された構成を有するとともに、走査線101及びデータ線102の交差部に対応して、画素領域Aが設けられている。
【0047】
データ線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチ等を備えるデータ側駆動回路104が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタ等を備える走査側駆動回路105が接続されている。更に、画素領域Aの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用の薄膜トランジスタ112と、このスイッチング用の薄膜トランジスタ112を介してデータ線102から共有される画素信号を保持する保持容量capと、該保持容量capによって保持された画素信号が電圧としてゲート電極に供給される駆動用の薄膜トランジスタ123と、この駆動用薄膜トランジスタ123及び接続用配線99(99R、99G、99B)を介して電源線(発光用電源配線)103に電気的に接続したときに当該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(電極)111と、この画素電極111と共通電極(陰極)12との間に挟み込まれた機能層110とが設けられている。画素電極111と共通電極12と機能層110により、発光素子が構成されている。
【0048】
係る構成によれば、走査線101が駆動されてスイッチング用の薄膜トランジスタ112がオンになると、そのときのデータ線102の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capに状態に応じて、駆動用の薄膜トランジスタ123の導通状態が決まる。そして、駆動用の薄膜トランジスタ123のチャネルを介して、電源線103から接続用配線99と薄膜トランジスタ123とを介して画素電極111に電流が流れ、更に機能層110を介して共通電極12に電流が流れる。機能層110は、これを流れる電流量に応じて発光する。
【0049】
図2には本実施形態の電気光学装置の平面模式図を示す。
【0050】
基板2は、例えばガラス等の透明基板であり、基板2の中央に位置する表示領域(電極領域)2aと、基板2の周縁に位置して有効領域2aの外側に配置された非有効領域2bとに区画されている。有効領域2aは、マトリックス状に配置された発光素子を備えた画素R、画素G、及び画素Bによって形成される領域であり、表示に実際に寄与する表示領域である。画素R、画素G、及び画素Bのそれぞれは、赤、緑、及び青の画素に対応している。
【0051】
共通電極12に接続される共通電極用配線12aは、有効領域2aの外周をなす4辺のうち3辺を取り囲むようにコの字に形成されている。
【0052】
電源線103は、有効領域2aと共通電極用配線12aとの間に設けられている。電源線103R、電源線103G、及び電源線103Bはそれぞれ、図1に示した接続用配線99R、99G、及び99Bを介して、画素R、画素G、及び画素Bに電源電圧を供給している。
【0053】
電源線103R、103G、103Bのうち、有効領域2aから最も離れた位置にある電源線103Bは、2重配線構造を有しており、コンタクトホール103B3は、上下導通を行うために設けられている。
【0054】
有効領域2aと電源線103のうち有効領域2aと最も近接した電源線103Rと有効領域2aとの間には検査回路106が設けられている。この検査回路106は、製造過程や出荷時において、表示装置の品質、欠陥等の検査を行うために用いられる。
【0055】
有効領域2aに対して検査回路106の反対側の基板2の辺側には、駆動IC6を備えたフレキシブル基板5が取り付けられている。上述の共通電極用配線12a及び電源線103は、ともに配線5aを介して駆動IC6に接続されている。
【0056】
基板2のフレキシブル基板5の取り付けられた辺側から、基板2の当該辺に対向する方向で、有効領域2aと電源線103Rとの間の領域、及び有効領域2aと電源線103Gとの間の領域には、それぞれ走査線駆動回路105が設けられている。走査線駆動回路105に制御信号及び電源電圧を供給するための制御駆動回路用制御信号配線105a及び駆動回路用電源配線105bが、走査線駆動回路105と電源線103Rとの間の領域、及び走査線駆動回路105と電源線103Gとの間の領域に設けられている。
【0057】
図3には、図2におけるA−A'断面模式図を示す。図3に示すように、有効領域2aに対応して設けられた発光素子及びバンク部からなる発光素子部11と基板2との間には能動素子層14が備えられ、この能動素子層14に前述の走査線、データ線、保持容量、スイッチング用の薄膜トランジスタ112、駆動用の薄膜トランジスタ123等が備えられている。
【0058】
また、能動素子層14の非有効領域2bに対応して、前述の電源線103(103R、103G、103B)が配線されている。非有効領域2bの一部をダミー領域2dとして使用している。ダミー領域2dは、主にインクジェットプロセスを用いて発光素子110を形成するのに先だって、発光素子を形成する材料の吐出量を安定化するために用いられる領域であって、言うなれば、試し打ちするための領域である。
【0059】
前述の走査側駆動回路105、駆動回路用制御信号配線105a、及び駆動回路用電源配線105bは、ダミー領域2dの下方の能動素子層14内に設けられている。図3には図示されていないが、検査回路106の上方にダミー領域2dを設けてもよい。
【0060】
電源線103Rは、第1配線層135に設けられた導電膜を用いて形成されている。同様に電源線103Gも、第1配線層135に設けられた導電膜を用いて形成されている。それに対して、電源線103Bは、前述のように2重配線構造を有している。具体的には、第1配線層135に設けられた導電膜と第2配線層136に設けられた導電膜とにより構成されている。上記の2つの導電膜の間には、第1層間絶縁膜144aが設けられているとともに、第1層間絶縁膜144aに設けられたコンタクトホール(図2に示したコンタクトホール103B3に対応)を介して上記の2つの導電膜は電気的に接続される。
【0061】
共通電極用配線12aは、具体的には、第1配線層135に設けられた導電膜と第2配線層136に設けられた導電膜とにより構成されている。
【0062】
発光素子部11上には封止部3により覆われている。この封止部3は、能動素子層14上に設けられた封止樹脂603と、封止基板604とから構成されている。封止樹脂603は、熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂等からなり、特に、熱硬化樹脂の1種であるエポキシ樹脂よりなることが好ましい。この封止樹脂603は、基板の外周に沿って配置されており、例えば、マイクロディスペンサ等により形成されたものである。この封止樹脂603は、能動素子層14と封止缶604を接合するもので、能動素子層14と封止基板604の間から発光素子部11とにより形成された空間への水又は酸素の侵入を防いで、共通電極12または発光素子部11内に形成された図示略の発光層の劣化を防止する。
【0063】
封止基板604は、例えば、ガラス、プラスチック、金属等からなるもので、その内側には発光素子部11を収納する凹部604aが設けられている。また凹部604aには水、酸素等を吸収するゲッター剤605が配置されており、封止基板604と発光素子部11とにより形成された空間に侵入した水又は酸素を吸収できるようになっている。なお、このゲッター剤605は省略しても良い。
【0064】
共通電極12を形成するアルミニウムは、発光層110bから発した光を基板2側に反射させるもので、Al膜の他、Ag膜、AlとAgの積層膜等からなることが好ましい。また、その厚さは、例えば100〜1000nmの範囲が好ましく、特に200nm程度がよい。
【0065】
更にアルミニウム上にSiO、SiO2、SiN等からなる共通電極12等を保護するための保護層15を設けても良い。
【0066】
保護層15は共通電極12を覆うとともに、共通電極用配線12aと共通電極12との接続部を保護している。さらに、保護層15が封止樹脂603の下方まで延在しており、封止樹脂603と能動素子層14との間に介在している構造となっている。
次に図4に、表示装置における表示領域の断面構造を拡大した図を示す。この図4には3つの画素領域Aが図示されている。この表示装置1は、基板2上に、TFTなどの回路等が形成された能動素子層14と、機能層110が形成された発光素子部11とが順次積層されて構成されている。
【0067】
この表示装置1においては、機能層110から基板2側に発した光が、能動素子層14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるとともに、機能層110から基板2の反対側に発した光が共通電極12により反射されて、能動素子層14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるようになっている。なお、共通電極12として、透明な材料を用いることにより共通電極側から発光する光を出射させることができる。透明な材料としては、例えば、ITO、Pt、Ir、Ni、もしくはPdを用いることができる。膜厚としては75nmほどの膜厚にすることが好ましく、この膜厚よりも薄くした方がより好ましい。
【0068】
能動素子層14には、基板2上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜2cが形成され、この下地保護膜2c上に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜141が形成されている。尚、半導体膜141には、ドレイン領域141a及びソース領域141bが高濃度Bイオン打ち込みにより形成されている。なお、Bが導入されなかった部分がチャネル領域141cとなっている。
【0069】
更に能動素子層14には、下地保護膜2c及び半導体膜141を覆う透明なゲート絶縁膜142が形成され、ゲート絶縁膜142上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極143(走査線101)が形成され、ゲート電極143及びゲート絶縁膜142上には透明な第1層間絶縁膜144aと第2層間絶縁膜144bが形成されている。ゲート電極143は半導体膜141のチャネル領域141cに対応する位置に設けられている。
【0070】
また、第1、第2層間絶縁膜144a、144bを貫通して、半導体膜141のドレイン、ソース領域141a、141bにそれぞれ接続されるコンタクトホール145,146が形成されている。そして、第2層間絶縁膜144b上には、ITO等からなる透明な画素電極111が所定の形状にパターニングされて形成され、ドレイン領域141aは、コンタクトホール145を介して画素電極111に接続されている。また、ソース領域141bは、コンタクトホール146を介して接続用配線99に接続されている。このようにして、能動素子層14には、各画素電極111に接続された駆動用の薄膜トランジスタ123が形成されている。尚、能動素子層14には、前述した保持容量cap及びスイッチング用の薄膜トランジスタ112も形成されているが、図4ではこれらの図示を省略している。
【0071】
次に図4に示すように、発光素子部11は、複数の画素電極111上の各々に積層された機能層110と、各機能層110を区画するバンク部112と、機能層110上に形成された共通電極12とを主体として構成されている。これら画素電極111、機能層110及び共通電極12によって発光素子が構成されている。ここで、画素電極111は、例えばITOにより形成されてなり、平面視略矩形にパターニングされて形成されている。この画素電極111の厚さは、50〜200nmの範囲が好ましく、特に150nm程度がよい。バンク部112は、基板2側に位置する無機物バンク層112aと基板2から離れて位置する有機物バンク層112bとが積層されて構成されている。
【0072】
無機物バンク層112a、有機物バンク層112bは、画素電極111の周縁部上に乗上げるように形成されている。平面的には、画素電極111の周囲と無機物バンク層112aとが平面的に重なるように配置された構造となっている。また、有機物バンク層112bも同様であり、画素電極111の一部と平面的に重なるように配置されている。また無機物バンク層112aは、有機物バンク層112bよりも画素電極111の中央側に更に形成されている。このようにして、無機物バンク層112aの各第1積層部112eが画素電極111の内側に形成されることにより、画素電極111の形成位置に対応する下部開口部112cが設けられている。
【0073】
また、有機物バンク層112bには、上部開口部112dが形成されている。
【0074】
この上部開口部112dは、画素電極111の形成位置及び下部開口部112cに対応するように設けられている。上部開口部112dは、図4に示すように、下部開口部112cより広く、画素電極111より狭く形成されている。また、上部開口部112dの上部の位置と、画素電極111の端部とがほぼ同じ位置になるように形成される場合もある。この場合は、図4に示すように、有機物バンク層112bの上部開口部112dの断面が傾斜する形状となる。
【0075】
また、無機物バンク層112aは、例えば、SiO2、TiO2等の無機材料からなることが好ましい。この無機物バンク層112aの膜厚は、50〜200nmの範囲が好ましく、特に150nmがよい。
更に、有機物バンク層112bは、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶媒性のある材料から形成されている。この有機物バンク層112bの厚さは、0.1〜3.5μmの範囲が好ましい。有機物バンク層112bの厚さを2μm以上にすれば、データ線102、あるいは走査線101など、信号を供給する信号配線と共通電極12とを十分離間することができるので信号配線と共通電極12との間に生ずる寄生容量を減ずることができるので、信号の遅延、鈍り等の問題を軽減することができる。
【0076】
また、バンク部112には、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域が形成されている。親液性を示す領域は、無機物バンク層112aの第1積層部112e及び画素電極111の電極面111aであり、これらの領域は、酸素を処理ガスとするプラズマ処理によって親液性に表面処理されている。また、撥液性を示す領域は、上部開口部112dの壁面及び有機物バンク層112の上面112fであり、これらの領域は、4フッ化メタンを前駆物質とするプラズマ処理によって表面がフッ化処理(撥液性に処理)されている。尚、有機物バンク層は、フッ素ポリマーを含有する材料により形成しても良い。
【0077】
機能層110は、画素電極111上に積層された正孔注入/輸送層110aと、正孔注入/輸送層110a上に隣接して形成された有機エレクトロルミネッセンス材料からなる発光層110bとから構成されている。なお、発光層110bに隣接して電子注入輸送層などの機能を有する他の機能層を更に形成しても良い。
【0078】
正孔注入/輸送層110aは、正孔を発光層110bに注入する機能を有するとともに、正孔を正孔注入/輸送層110a内部において輸送する機能を有する。このような正孔注入/輸送層110aを画素電極111と発光層110bの間に設けることにより、発光層110bの発光効率、寿命等の素子特性が向上する。また、発光層110bでは、正孔注入/輸送層110aから注入された正孔と、共通電極12から注入される電子が発光層で再結合し、発光が得られる。
【0079】
正孔注入/輸送層110aは、下部開口部112c内に位置して画素電極面111a上に形成される平坦部110a1と、上部開口部112d内に位置して無機物バンク層の第1積層部112e上に形成される周縁部110a2から構成されている。また、正孔注入/輸送層110aは、構造によっては、画素電極111上であって、且つ無機物バンク層110aの間(下部開口部110c)にのみ形成されている(前述に記載した平坦部にのみ形成される形態もある)。この平坦部110a1は、その厚さが一定で例えば50〜70nmの範囲に形成される。
【0080】
周縁部110a2が形成される場合においては、周縁部110a2は、第1積層部112e上に位置するとともに上部開口部112dの壁面、即ち有機物バンク層112bに密着している。また、周縁部110a2の厚さは、電極面111aに近い側で薄く、電極面111aから離れる方向に沿って増大し、下部開口部112dの壁面近くで最も厚くなっている。
【0081】
周縁部110a2が上記の様な形状を示す理由としては、正孔注入/輸送層110aが、正孔注入/輸送層形成材料及び極性溶媒を含む第1組成物を開口部112内に吐出してから極性溶媒を除去して形成されたものであり、極性溶媒の揮発が主に無機物バンク層の第1積層部112e上で起こり、正孔注入/輸送層形成材料がこの第1積層部112e上に集中的に濃縮・析出されたためである。
【0082】
また発光層110bは、正孔注入/輸送層110aの平坦部110a1及び周縁部110a2上に渡って形成されており、平坦部112a1上での厚さが50〜80nmの範囲とされている。発光層110bは、赤色(R)に発光する赤色発光層110b1、緑色(G)に発光する緑色発光層110b2、及び青色(B)に発光する青色発光層110b3、の3種類を有し、各発光層110b1〜110b3がストライプ配置されている。尚、正孔注入/輸送層形成材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸等の混合物を用いることができる。また、発光層110bの材料としては、例えば、ポリフルオレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、またはこれらの高分子材料にペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、例えばルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープして用いることができる。
【0083】
次に共通電極12は、発光素子部11の全面に形成されており、画素電極111と対になって機能層110に電流を流す役割を果たす。この共通電極12が陰極である場合は、例えば、カルシウム層やアルミニウム層などの金属層が積層したものであってもよい。このとき、発光層に近い側の陰極には仕事関数が低いものを設けることが好ましく、特にこの形態においては発光層110bに直接に接して発光層110bに電子を注入する役割を果たす。また、フッ化リチウムは発光層の材料によっては効率よく発光させるために、発光層110と共通電極12との間にLiFを形成する場合もある。
【0084】
尚、赤色及び緑色の発光層110b1、1110b2にはフッ化リチウムに限らず、他の材料を用いても良い。従ってこの場合は青色(B)発光層110b3のみにフッ化リチウムからなる層を形成し、他の赤色及び緑色の発光層110b1、110b2にはフッ化リチウム以外のものを積層しても良い。また、赤色及び緑色の発光層110b1、110b2上にはフッ化リチウムを形成せず、カルシウムのみを形成しても良い。尚、フッ化リチウムの厚さは、例えば2〜5nmの範囲が好ましく、特に2nm程度がよい。またカルシウムの厚さは、例えば2〜50nmの範囲が好ましく、特に20nm程度がよい。
【0085】
図5は、有効領域2aの上側領域における電源線103R、103G、103B及び各電源線に接続される接続用配線99R、99G、99Bの拡大図である。接続用配線99R、99G、及び99Bは、第1配線層135及び第2配線層136に形成された導電膜を利用して構成されており、本実施形態では、有効領域2aに最も近い位置にある電源線103Rに接続された接続用配線99Rは、第1配線層135に設けられた導電膜により構成されており、有効領域2aに最も遠い位置にある電源線103Bに接続された接続用配線99Bは、第2配線層136に設けられた導電膜を利用して形成されている。電源線103Rと電源線103Bに挟まれた電源線103Gに接続された接続用配線99Gは、第1層間絶縁膜114aを貫通するコンタクト100Gで電源線103Gに接続されている。コンタクト100Gにおいて、第1配線層135に設けられた導電膜と第2配線層136に設けられた導電膜との導通が確保されている。
【0086】
本実施形態では、接続用配線99R、99G、及び99Bを、第1配線層135及び第2配線層136を利用して形成しているので、100Gなどのようなコンタクト部を可能な限り設けないようにしている。このように、コンタクト部を少なくすることにより、断線等の不具合を低減することができる。
接続用配線99R、99G、及び99Bは有効領域2aに向かって略平行に延在しており、接続用配線99R、99G、及び99Bのそれぞれの、少なくとも1部分の幅を異ならせている。これは、安定的に電源電圧を供給するため、接続用配線99R、99G、及び99B、電源線103R、103G、103Bの十分な線幅を確保しておくと同時に、有効領域2aの画素のピッチに適合させて、接続用配線99R、99G、及び99Bのそれぞれの線幅を狭くしているためである。
【0087】
なお、図3に示しているように、有効領域2a内では、接続用配線99R、99G、及び99Bは基本的に、全て同一の配線層にある導電膜を利用して形成されていることが望ましく、本実施形態では、第2配線層136に設けられた導電膜を利用して形成されている。一方、接続用配線99Rは、電源線103Rとのコンタクト部近傍では、図5に示したように第1配線層135を利用して形成されているので、接続用配線99Rは、上記のコンタクト部から有効領域2aに至る間の領域において、第1配線層135に設けられた導電膜から第2配線層136に設けられた導電膜への接続を行う必要がある。
【0088】
次に本実施形態の表示装置の製造方法を図面を参照して説明する。
【0089】
まず、図6ないし図8を参照して、基板2上に能動素子層14を形成する方法について説明する。なお、図6ないし図8に示す各断面図は、図2中のA−A'線に沿う断面に対応している。なお、以下の説明において、不純物濃度は、いずれも活性化アニール後の不純物として表される。
【0090】
まず、図6(a)に示すように、基板2上に、シリコン酸化膜などからなる下地保護層2cを形成する。次に、ICVD法、プラズマCVD法などを用いてアモルファスシリコン層を形成した後、レーザアニール法又は急速加熱法により結晶粒を成長させてポリシリコン層501とする。
【0091】
次に図6(b)に示すように、ポリシリコン層501をフォトリソグラフィ法によりパターニングして島状のシリコン層241,251及び261を形成し、更にシリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜142を形成する。
【0092】
シリコン層241は、有効領域2aに対応する位置に形成されて画素電極111に接続される薄膜トランジスタ123(以下、「画素用TFT」と表記する場合がある)を構成するものであり、シリコン層251,261は、走査線駆動回路105内のPチャネル型及びNチャネル型の薄膜トランジスタ(以下、「駆動回路用TFT」と表記する場合がある)をそれぞれ構成するものである。
【0093】
ゲート絶縁層142の形成は、プラズマCVD法、熱酸化法などにより、各シリコン層241、251、261及び下地保護層2cを覆う厚さ約30nm〜200nmのシリコン酸化膜を形成することにより行う。ここで、熱酸化法を利用してゲート絶縁層142を形成する際には、シリコン層241,251及び261の結晶化も行い、これらのシリコン層をポリシリコン層とすることができる。チャネルドープを行う場合には、例えば、このタイミングで約1×1012cm-2のドーズ量でボロンイオンを打ち込む。その結果、シリコン層241,251及び261は、不純物濃度が約1×1017cm-3の低濃度P型のシリコン層となる。
【0094】
次に図6(c)に示すように、シリコン層241、261の一部にイオン注入選択マスクM1を形成し、この状態でリンイオンを約1×1015cm-2のドーズ量でイオン注入する。その結果、イオン注入選択マスクM1に対してセルフアライン的に高濃度不純物が導入され、シリコン層241及び261中に高濃度ソース領域241S及び261S並びに高濃度ドレイン領域241D及び261Dが形成される。
【0095】
次に図6(d)に示すように、イオン注入選択マスクM1を除去した後に、ゲート絶縁層142上にドープドシリコン、シリサイド膜、或いはアルミニウム膜やクロム膜、タンタル膜といった厚さ約500nm程度の金属膜を第1配線層135として形成し、更にこの金属膜をパターニングすることにより、Pチャネル型の駆動回路用TFTのゲート電極252、画素用TFTのゲート電極242、Nチャネル型の駆動回路用TFTのゲート電極262を形成する。また、上記パターニングにより、走査線駆動回路用信号配線105a、電源線103R、103G,103B、接続用配線99R、共通電極用配線12aの一部を同時に形成する。
【0096】
更に、ゲート電極242,252及び262をマスクとし、シリコン層241,251及び261に対してリンイオンを約4×1013cm-2のドープ量でイオン注入する。その結果、ゲート電極242,252及び262に対してセルフアライン的に低濃度不純物が導入され、図6(d)に示すように、シリコン層241及び261中に低濃度ソース領域241b及び261b、並びに低濃度ドレイン領域241c及び261cが形成される。また、シリコン層251中に低濃度不純物領域251S及び251Dが形成される。
【0097】
次に図7(a)に示すように、ゲート電極252の周辺を除く全面にイオン注入選択マスクM2を形成する。このイオン注入選択マスクM2を用いて、シリコン層251に対してボロンイオンを約1.5×1015cm-2のドープ量でイオン注入する。結果として、ゲート電極252もマスクとして機能し、シリコン層252中にセルフアライン的に高濃度不純物がドープされる。これにより251S及び251Dがカウンタードープされ、P型チャネル型の駆動回路用TFTのソース領域及びドレイン領域となる。
【0098】
次に図7(b)に示すように、イオン注入選択マスクM2を除去した後に、基板2の全面に第1層間絶縁膜144aを形成し、更にフォトリソグラフィ法により第1層間絶縁膜144aをパターニングして、各TFTのソース電極及びドレイン電極並びに共通電極用配線12aに対応する位置にコンタクトホール形成用の孔H1を設ける。
【0099】
次に図7(c)に示すように、第1層間絶縁膜144aを覆うように、アルミニウム、クロム、タンタル等の金属からなる厚さ約200nmないし800nm程度の導電層504を形成することにより、先に形成した孔H1にこれらの金属を埋め込んでコンタクトホールを形成する。更に導電層504上にパターニング用マスクM3を形成する。
【0100】
次に図8(a)に示すように、導電層504をパターニング用マスクM3によってパターニングし、各TFTのソース電極243,253,263、ドレイン電極244及び254、電源線103B、接続用配線99G、99B、走査線回路用電源配線105b及び共通電極用配線12aを第2配線層136として形成する。
【0101】
次に図8(b)に示すように、第1層間絶縁膜144aを覆う第2層間絶縁膜144bを、例えばアクリル系などの樹脂材料によって形成する。この第2層間絶縁膜144bは、約1〜2μm程度の厚さに形成されることが望ましい。
【0102】
次に図8(c)に示すように、第2層間絶縁膜144bのうち、画素用TFTのドレイン電極244に対応する部分をエッチングによって除去してコンタクトホール形成用の孔H2を形成する。このとき、同時に共通電極用配線12a上の第2層間絶縁膜144bも除去する。このようにして、基板2上に能動素子層14が形成される。
【0103】
次に、図9を参照して、能動素子層14上に発光素子部11を形成することにより表示装置1を得る手順について説明する。図9に示す断面図は、図2中のA−A'線に沿う断面に対応している。
【0104】
まず図9(a)に示すように、基板2の全面を覆うようにITO等の透明電極材料からなる薄膜を形成し、当該薄膜をパターニングすることにより、第2層間絶縁膜144bに設けた孔H2を埋めてコンタクトホール111aを形成するとともに画素電極111及びダミー画素電極111'を形成する。画素電極111は、薄膜トランジスタ123の形成部分のみに形成され、コンタクトホール111aを介してカレント薄膜トランジスタ123(スイッチング素子)に接続される。尚、ダミー電極111'は島状に配置される。
【0105】
次に、図9(b)に示すように、第2層間絶縁膜144b及び画素電極111及びダミー画素電極111'上に無機物バンク層112a及びダミー無機物バンク層212aを形成する。無機物バンク層112aは、画素電極111の一部が開口する態様にて形成し、ダミー無機物バンク層212aはダミー画素電極111'を完全に覆うように形成する。無機物バンク層112a及びダミー無機物バンク層212aは、例えばCVD法、TEOS法、スパッタ法、蒸着法等によって第2層間絶縁膜144b及び画素電極111の全面にSiO2、TiO2、SiN等の無機質膜を形成した後に、当該無機質膜をパターニングすることにより形成する。
【0106】
更に図9(b)に示すように、無機物バンク層112a及びダミー無機物バンク層212a上に、有機物バンク層112b及びダミー有機物バンク層212bを形成する。有機物バンク層は112bは、無機物バンク層112aを介して画素電極111の一部が開口する態様にて形成し、ダミー有機物バンク層212bはダミー無機物バンク層212aの一部が開口する態様にて形成する。このようにして、第2層間絶縁膜144b上にバンク112を形成する。
【0107】
続いて、バンク112の表面に、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域を形成する。本実施例においてはプラズマ処理工程により、各領域を形成するものとしている。具体的に該プラズマ処理工程は、画素電極111、無機物バンク層112a及びダミー無機物バンク層212aを親液性にする親液化工程と、有機物バンク層112b及びダミー有機物バンク層212bを撥液性にする撥液化工程とを少なくとも具備している。
【0108】
すなわち、バンク112を所定温度(例えば70〜80℃程度)に加熱し、次いで親液化工程として大気雰囲気中で酸素を反応ガスとするプラズマ処理(O2プラズマ処理)を行う。続いて、撥液化工程として大気雰囲気中で4フッ化メタンを反応ガスとするプラズマ処理(CF4プラズマ処理)を行い、プラズマ処理のために加熱されたバンク112を室温まで冷却することで、親液性及び撥液性が所定箇所に付与されることとなる。
【0109】
更に、画素電極111上及びダミー無機物バンク層212a上にそれぞれ、機能層110並びにダミー機能層210をインクジェット法により形成する。機能層110並びにダミー機能層210は、正孔注入/輸送層材料を含む組成物インクを吐出・乾燥した後に、発光層材料を含む組成物インクを吐出・乾燥することにより形成される。なお、この機能層110及びダミー機能層210の形成工程以降は、正孔注入/輸送層及び発光層の酸化を防止すべく、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0110】
次に、図9(c)に示すように、バンク112及び機能層110並びにダミー機能層210を覆う共通電極12を形成する。共通電極12は、バンク112及び機能層110並びにダミー機能層210上に第1共通電極層12bを形成した後に、第1共通電極層12bを覆って基板2上の共通電極用配線12aに接続される第2共通電極層12cを形成することにより得られる。
【0111】
最後に、基板2にエポキシ樹脂等の封止樹脂603を塗布し、この封止樹脂603を介して基板2に封止基板604を接合する。このようにして、図1〜図3に示すような表示装置1が得られる。
【0112】
このように、有効領域2aに対して最も外側の電源線103Bは、他の電源線103R、103Gに接続する接続用配線99R、99Gと平面的に重ならないので、第1配線層135及び第2配線層136の双方に設けることが可能である。そのため、本実施の形態では、電源線103Bを第1配線層135及び第2配線層136のいずれか一方の層に設けた場合に比較して略半分の幅で形成することができ、電源線103Bの幅が減少した分、パネルの額縁を小さくすることができる。
【0113】
また、有効領域2aに対して最も内側の電源線103Rに接続する接続用配線99Rは、他の電源線103G、103Bと平面的に重ならないため、第1配線層135に形成することが可能である。そのため、本実施の形態では、接続用配線99Rの幅分、第2配線層136に設けた接続用配線99G、99Bの幅を太くすることができ、マスクの製作等、表示装置の製造を容易化できる。さらに、本実施の形態では、電源線と接続用配線とを電気的に接続するためのコンタクトが100Gの一カ所だけなので、コンタクト抵抗の依存性を低減することも可能になる。
【0114】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について述べる。図10に示した第2実施形態にかかる表示装置のレイアウトの、図2に示した第1実施形態のレイアウトとの主な相違点は、共通電極用配線12aの少なくとも1部分が、有効領域2aの周囲に設けられた電源線103R、103G、103Bのうち少なくとも一つの少なくとも1部分と平面視したときに重なる点である。共通電極用配線12aは、フレキシブル基板5が取り付けられた辺の側から、当該辺に対向する辺に向かって延在しており、基板2の外周をなす4辺のうち互いに対向する2辺と有効領域2aとの間に、それぞれ設けられており、一方の共通電極用配線12aは、電源線103Rと重なって配置されており、他方の共通電極用配線12aは、103G及び103Bの少なくとも1部分と重なって配置されている。
【0115】
これに対応した断面図を図11に示す。共通電極用配線12aは、第2配線層136に設けられた導電膜により構成されており、共通電極12と接続されている。
【0116】
電源線103R、103G、及び103Bは、第2配線層136の下方の第1配線層135に設けられた導電膜により形成されている。共通電極用配線12aと電源線103R、103G、及び103Bとは第1層間絶縁層144aにより隔てられており、電気的に絶縁されている。共通電極用配線12aと共通電極12との接続には、例えば、ITO等からなる導電層12dが介在している。
【0117】
上述のように、共通電極用配線12aは電源線103R、103G、103Bの少なくとも1部分が重なるように形成されているが、これにより、共通電極用配線12aと電源線103R、103G及び103Bとの間に容量が形成され、電源電圧の変動を緩和され、電気光学素子の安定的な駆動が可能となる。
【0118】
電源線103R、103G、及び103Bは、有効領域2aとフレキシブル基板が取り付けられた辺に対向する辺との間の領域で、図12に示したように、それぞれ、コンタクト100R、100G、及び100Bを介して接続用配線99R、99G、及び99Bに接続されている。コンタクト100R、100G、及び100Bにおいて、第1配線層135に設けられた導電膜と第2配線層136に設けられた導電膜とが接続されている。接続用配線99R、99G、及び99Bは、第2配線層136に設けられた導電膜を用いて構成されている。接続用配線99R、99G、及び99Bの線幅は、対応する電源線103R、103G、及び103Bの線幅よりも小さくなっている。
【0119】
なお、前述のように、有効領域2a内では、接続用配線99R、99G、及び99Bは基本的に、全て同一の配線層にある導電膜を利用して形成されていることが望ましく、本実施形態では、第2配線層136に設けられた導電膜を利用して形成されている。一方、接続用配線99R、99G、及び99Bは、第2配線層136に設けられた導電膜を利用して形成されている。したがって、図5に示した場合とは異なり、接続用配線99R、99G、及び99Bは、コンタクト部から有効領域2aに至る間の領域において、第1配線層135に設けられた導電膜から第2配線層136に設けられた導電膜への接続を行う必要は特にはない。
【0120】
次に、上記実施の形態の表示装置1を備えた電子機器の例について説明する。
【0121】
図13(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図10(a)において、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は上記の有機EL装置1を用いた表示部を示している。
【0122】
図13(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図10(b)において、符号1100は時計本体を示し、符号1101は上記の有機EL装置1を用いた表示部を示している。
【0123】
図13(c)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図13(c)において、符号1200は情報処理装置、符号1202はキーボードなどの入力部、符号1204は情報処理装置本体、符号1206は上記の有機EL装置1を用いた表示部を示している。
【0124】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0125】
例えば、上記実施の形態では、電源線103Bを二層構造としたが、有効領域2aに対して最も外側に配置されている電源線であれば、他の電源線であってもよい。また、第1配線層135と第2配線層136に設けられる電源線、接続用配線等を逆に配置する構成としてもよい。
【0126】
また、上記実施の形態では、発光素子部11の構成として基板2側から画素電極111、正孔注入/輸送層110a、発光層110b、共通電極12の順序で形成するものとしたが、これに限定されるものではなく、逆の順序で配置する構成も採用可能である。さらに、上記実施の形態では、発光素子部11の発光が透明基板2を介して外面側に出射される形式の例を用いて説明したが、発光素子部11の発光が透明基板2と逆側から封止部3を介して出射される形式であっても適用可能である。この場合、上述したように優れた光透過性(透明性)を有する共通電極及び封止層を設ければよい。
【0127】
また、上記の実施形態においては、R、G、Bの各発光層をストライプ配置した場合について説明したが、本発明はこれに限られず、様々な配置構造を採用しても良い。例えばストライプ配置の他、モザイク配置や、デルタ配置とすることができる。
【0128】
以上説明したように、本発明では狭額縁化を実現した小型で、且つ製造が容易で高品質の電気光学装置及び電子機器を得ることができる。
【0129】
なお、上述の本実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0130】
1…表示装置(有機EL表示装置、電気光学装置)、2…基板、2a…有効領域(表示領域)、99R,99G,99B…接続用配線、103,103R,103G,103B…電源線(発光用電源配線)、110a…正孔注入/輸送層、110b…発光層、111…画素電極(電極)、135…第1配線層(第1の層)、136…第2配線層(第2の層)、144a…第1層間絶縁膜(絶縁層)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の有効領域に設けられた、第1の電極と第2の電極との間に挟まれた機能層を有する電気光学素子を備えた、複数の画素と、
前記有効領域の外側で前記第2の電極に接続された電極用配線と、
前記第1の電極と能動素子を介して接続され、少なくとも前記有効領域に設けられた接続用配線と、
前記有効領域の外側において前記接続用配線に接続された電源線と、を含み、
前記電極用配線の少なくとも一部分は第1配線層に設けられた第1導電膜からなり、
前記電源線の少なくとも一部分は第2配線層に設けられた第2導電膜からなり、
前記第1配線層と前記第2配線層とは、層間絶縁膜により互いに隔てられて形成されており、
前記第1導電膜の少なくとも一部分と前記第2導電膜の少なくとも一部分とは、重なって配置されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気光学装置において、
前記第2導電膜は、前記第1導電膜と前記基板との間に形成されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気光学装置において、
前記第2導電膜は、前記層間絶縁膜に設けられたコンタクト部を介して前記接続用配線に接続されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電気光学装置において、
前記接続用配線は、前記第2配線層に設けられた第3導電膜からなることを特徴とする電気光学装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電気光学装置において、
前記能動素子は、トランジスタであり、
前記トランジスタのゲート電極は、前記第1配線層に設けられた導電膜からなり、
前記トランジスタのソース又はドレイン電極は、前記第2配線層に設けられた導電膜からなることを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の電気光学装置において、
前記機能層は、有機エレクトロルミネッセンス材料から構成されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
基板上の有効領域に設けられた、第1の電極と第2の電極との間に挟まれた機能層を有する電気光学素子を備えた、複数の画素と、
前記有効領域の外側で前記第2の電極に接続された電極用配線と、
前記第1の電極と能動素子を介して接続され、少なくとも前記有効領域に設けられた接続用配線と、
前記有効領域の外側において前記接続用配線に接続された電源線と、を含み、
前記電極用配線の少なくとも一部分は第1配線層に設けられた第1導電膜からなり、
前記電源線の少なくとも一部分は第2配線層に設けられた第2導電膜からなり、
前記第1配線層と前記第2配線層とは、層間絶縁膜により互いに隔てられて形成されており、
前記第1導電膜の少なくとも一部分と前記第2導電膜の少なくとも一部分とは、重なって配置されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気光学装置において、
前記第2導電膜は、前記第1導電膜と前記基板との間に形成されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気光学装置において、
前記第2導電膜は、前記層間絶縁膜に設けられたコンタクト部を介して前記接続用配線に接続されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電気光学装置において、
前記接続用配線は、前記第2配線層に設けられた第3導電膜からなることを特徴とする電気光学装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電気光学装置において、
前記能動素子は、トランジスタであり、
前記トランジスタのゲート電極は、前記第1配線層に設けられた導電膜からなり、
前記トランジスタのソース又はドレイン電極は、前記第2配線層に設けられた導電膜からなることを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の電気光学装置において、
前記機能層は、有機エレクトロルミネッセンス材料から構成されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−277101(P2010−277101A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157651(P2010−157651)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【分割の表示】特願2009−16293(P2009−16293)の分割
【原出願日】平成15年6月2日(2003.6.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【分割の表示】特願2009−16293(P2009−16293)の分割
【原出願日】平成15年6月2日(2003.6.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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