説明

電気光学装置用基板及び電気光学装置、並びに電子機器

【課題】各画素における開口領域に効率的に集光できると共に比較的容易に製造可能な電気光学装置用基板を提供する。
【解決手段】電気光学装置用基板は、第1透明基板(210)と、この第1透明基板に対向して配置され、第1透明基板に対向する側の表面における開口領域(D1)を除く非開口領域(D2)の少なくとも一部に、非開口領域に入射される光を開口領域へ向かうように屈折させるための溝(225)が掘られた第2透明基板(220)と、第1及び第2透明基板を接着する接着部材(250)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶装置等の電気光学装置に用いられる電気光学装置用基板、及び該電気光学装置用基板を備えてなる電気光学装置、並びに該電気光学装置を備えた、例えば液晶プロジェクタ等の電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置では、その画像表示領域内に、データ線、走査線、容量線等の各種配線や、薄膜トランジスタ(以下適宜、TFT(Thin Film Transistor)と称す)等の各種電子素子が作り込まれたTFTアレイ基板と、対向基板とが、例えば液晶層等の電気光学物質層を介して対向配置されている。このため、電気光学装置に平行光を入射した場合、そのままでは、全光量のうち各画素の開口率に応じた光量しか利用できない。
【0003】
そこで従来は、各画素に対応するマイクロレンズを含んでなるマイクロレンズアレイを対向基板に作り込んだり、マイクロレンズアレイ板を対向基板に貼り付けたりしている。このようなマイクロレンズによって、そのままでは各画素における開口領域を除いた非開口領域に向かって進行する筈の光を、画素単位で集光して、電気光学物質層を透過する際には、各画素の開口領域内に導かれるようにしている。この結果、電気光学装置において明るい表示が可能となる。
【0004】
このようなマイクロレンズアレイ板は、マイクロレンズのレンズ曲面を規定する凹部又は凸部が形成された透明板部材の片面に、光硬化性樹脂等の接着剤でカバーガラスを張り合わされることで製造される。例えば特許文献1には、マイクロレンズアレイ板に用いられる接着剤の厚みを一定化する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−133261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したようなマイクロレンズアレイの場合、各マイクロレンズのレンズの大きさや曲率等の形状を正確に制御することは実践上困難であり、理想的な形状のマイクロレンズを形成することが困難であるという技術的問題点がある。このため、光の集光が乱れ、表示品質の劣化を招いてしまうおそれもある。この結果、製造歩留まりが低下し、装置の信頼性が低下してしまうおそれもある。
【0007】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、各画素における開口領域に効率的に集光できると共に比較的容易に製造可能な電気光学装置用基板、及び該電気光学装置用基板を備えた電気光学装置、並びに該電気光学装置を具備してなる電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電気光学装置用基板は上記課題を解決するために、第1透明基板と、該第1透明基板に対向して配置され、前記第1透明基板に対向する側の表面における開口領域を除く非開口領域の少なくとも一部に、前記非開口領域に入射される光を前記開口領域へ向かうように屈折させるための溝が掘られた第2透明基板と、前記第1及び第2透明基板を接着する接着部材とを備える。
【0009】
本発明の電気光学装置用基板は、例えば、複数の画素が配列された画素領域(或いは「画像表示領域」とも呼ぶ)に、データ線、走査線等の各種配線や、画素スイッチング用TFT等の各種電子素子が作り込まれた素子基板に、例えば液晶層等の電気光学物質層を介して対向配置される対向基板として用いられる。
【0010】
本発明の電気光学装置用基板によれば、例えばガラス基板等からなる第1及び第2透明基板が、互いに対向して配置され、例えば透明樹脂からなる接着部材によって接着される。
【0011】
接着部材は、典型的には、第1又は第2透明基板上の全面に塗布され第1及び第2透明基板間に配置される。
【0012】
本発明では特に、第2透明基板上の第1透明基板に対向する側の表面における非開口領域の少なくとも一部に、例えばエッチング等によって溝が掘られている。ここで本発明に係る「非開口領域」とは、開口領域を除く領域をいい、本発明に係る「開口領域」とは、例えば画素領域内において画素毎に表示に寄与する光が出射する領域など、有効領域内において電気光学素子或いは電気光学物質による電気光学動作が実際に行なわれる領域をいう。言い換えれば、非開口領域とは、例えば画素領域内において画素毎に表示に寄与する光が出射しない領域など、有効領域内において電気光学素子或いは電気光学物質による電気光学動作が実際に行なわれない領域をいう。例えば、画素領域に複数の画素がマトリクス状に配列される場合、開口領域は、画素毎に対応したマトリクス状の領域として規定され、非開口領域は、画素毎の開口領域を互いに隔てる、例えば格子状の領域として規定される。
【0013】
第2透明基板の表面に掘られる溝は、第2透明基板上で平面的に見て、例えば開口領域を囲むように或いは開口領域の各辺に沿って掘られた、例えばV字溝或いはV溝として形成される。このような第2透明基板と第1透明基板とが接着部材によって互い接着されることにより、接着部材のうち溝内に設けられた部分からなる光屈折部が形成される。光屈折部の表面の一部は、溝内における溝表面によって規定される。このような、第2透明基板上の非開口領域内に例えばV字溝等として形成された溝(言い換えれば、接着部材のうち溝内に配置された部分からなり、例えばガラス基板からなる第2透明基板と屈折率が異なる光屈折部)によって、第1透明基板側から非開口領域に入射される光を開口領域へ向かうように屈折させ、例えば素子基板における開口領域へ出射させることができる。言い換えれば、溝内の溝表面は、非開口領域に入射される光を開口領域へ集光させるレンズ面として機能することができる。即ち、例えば、液晶層等の電気光学物質層を介して対向配置された素子基板における画素領域に配列された複数の画素の各開口領域に効率的に集光することができる。
【0014】
更に、このような溝は、仮に第2透明基板における開口領域毎にマイクロレンズのレンズ曲面を規定する凹部又は凸部を形成する場合と比較して、容易に高精度で形成することができる。言い換えれば、マイクロレンズに比べて容易に形成可能な例えばV字溝等の溝によって、各開口領域に効率的に集光することができる。これにより、歩留まりも向上可能であり、当該電気光学装置基板自体の信頼性が高まる。
【0015】
以上説明したように、本発明の電気光学装置用基板によれば、第2透明基板における非開口領域に設けられた溝によって、各画素における開口領域に効率的に集光できる。更に、このような溝は、例えばマイクロレンズに比べて、容易に形成することができるので、信頼性に優れた電気光学装置用基板を提供できる。
【0016】
本発明の電気光学装置用基板の一態様では、前記接着部材は、前記溝内に配置される。
【0017】
この態様によれば、接着部材は、溝内に配置され、第1及び第2透明基板間における他の部分には配置されない。即ち、接着部材は、第1及び第2透明基板間における少なくとも開口領域には設けられない。よって、仮に開口領域に接着部材が設けられる場合に生じ得る、接着部材に気泡や不純物が混入し、画像表示に悪影響を及ぼしてしまうことを低減或いは防止できる。
【0018】
本発明の電気光学装置用基板の他の態様では、前記接着部材は、前記第1及び第2透明基板間における少なくとも前記開口領域及び前記非開口領域に配置される。
【0019】
この態様によれば、接着部材は、第1及び第2透明基板間における開口領域及び非開口領域を含む比較的広い領域に、膜状或いは層状に接着膜或いは接着層として形成されるので、第1及び第2透明基板を確実に接着できると共に膜厚等を比較的容易に制御できる。
【0020】
本発明の電気光学装置用基板の他の態様では、前記第2透明基板上の前記第1透明基板に対向する側とは反対側の表面における前記非開口領域の少なくとも一部に、遮光膜が形成される。
【0021】
この態様によれば、遮光膜によって、例えば、当該電気光学装置用基板に対向配置される素子基板における非開口領域内に作り込まれた、例えば画素スイッチング用TFTを遮光することができる。
【0022】
上述した、遮光膜が形成される態様では、前記溝は、前記非開口領域のうち少なくとも前記遮光膜が形成された遮光領域に形成されるように構成してもよい。
【0023】
この場合には、溝によって、非開口領域のうち少なくとも遮光領域に入射される光を確実に、開口領域に向かうように屈折させることができる。よって、非開口領域に入射される光を開口領域に、より確実に集光させることができる。
【0024】
上述した、溝が少なくとも遮光領域に形成される様では、前記遮光膜は、前記非開口領域を規定する格子状のパターンとして形成され、前記溝は、前記遮光領域に形成されるように構成してもよい。
【0025】
この場合には、遮光膜は、いわゆるブラックマトリクスとして機能できる。更に、溝は、遮光領域に対応して、例えば格子状のパターンとして形成される。よって、非開口領域に入射される光を開口領域に、より確実に集光させることができる。
【0026】
本発明の電気光学装置は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置用基板(但し、各種態様を含む)を備える。
【0027】
本発明の電気光学装置によれば、上述した本発明の電気光学装置用基板を備えるので、高品質な画像を表示することができる。尚、本発明の電気光学装置は、例えば、上述した本発明の電気光学装置用基板と、例えば、複数の画素が配列された画素領域に、データ線、走査線等の各種配線や、画素スイッチング素子等の各種電子素子が作り込まれた素子基板とが、例えば液晶層等の電気光学物質層を介して対向配置されてなる。
【0028】
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置を具備してなる。
【0029】
本発明の電子機器によれば、上述した本発明の電気光学装置を具備してなるので、高品質な画像表示を行うことが可能な、投射型表示装置、テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、本発明の電子機器として、例えば電子ペーパなどの電気泳動装置、電子放出装置(Field Emission Display及びConduction Electron-Emitter Display)、これら電気泳動装置、電子放出装置を用いた表示装置を実現することも可能である。
【0030】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下では、本発明の電気光学装置用基板及び電気光学装置、並びに電子機器の各実施形態を説明する。尚、本実施形態では、本発明の電気光学装置の一例として、駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例に挙げる。
【0032】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る液晶装置について、図1から図6を参照して説明する。
【0033】
先ず、本実施形態に係る液晶装置の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここに図1は、本実施形態に係る液晶装置の構成を示す平面図であり、図2は、図1のH−H´線断面図である。
【0034】
図1及び図2において、本実施形態に係る液晶装置では、TFTアレイ基板10と本発明に係る「電気光学装置用基板」の一例としての対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
【0035】
図1において、シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。また、この一辺に沿ったシール領域よりも内側に、サンプリング回路7が額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿ったシール領域の内側に、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。また、TFTアレイ基板10上には、対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域に、両基板間を上下導通材107で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
【0036】
TFTアレイ基板10上には、外部回路接続端子102と、データ線駆動回路101、走査線駆動回路104、上下導通端子106等とを電気的に接続するための引回配線90が形成されている。
【0037】
図2において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用TFTや走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成されている。画像表示領域10aには、画素スイッチング用TFTや走査線、データ線等の配線の上層に画素電極9aがマトリクス状に設けられている。画素電極9a上には、配向膜(図示省略)が形成されている。他方、対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上に、遮光膜23が形成されている。遮光膜23は、例えば遮光性金属膜等から形成されており、後述する図5に示すように、対向基板20上の画像表示領域10a内で、格子状にパターニングされている。そして、遮光膜23を覆うように、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明材料からなる対向電極21が複数の画素電極9aと対向して対向基板20のほぼ全面に形成されている。対向電極21上には配向膜(図示省略)が形成されている。また、液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
【0038】
尚、ここでは図示しないが、TFTアレイ基板10上には、データ線駆動回路101、走査線駆動回路104の他に、製造途中や出荷時の当該液晶装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路、検査用パターン等が形成されていてもよい。
【0039】
次に、本実施形態に係る液晶装置の画素部の電気的な接続構成について、図3を参照して説明する。ここに図3は、本実施形態に係る液晶装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。
【0040】
図3において、画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素の夫々には、画素電極9a及びTFT30が形成されている。TFT30は、画素電極9aに電気的に接続されており、液晶装置の動作時に画素電極9aへ供給される画像信号をスイッチング制御する。画像信号が供給されるデータ線6aは、TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0041】
TFT30のゲートに走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snが所定のタイミングで書き込まれる。画素電極9aを介して液晶層50(図2参照)に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、対向基板20に形成された対向電極21(図2参照)との間で一定期間保持される。
【0042】
液晶層50を構成する液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として液晶装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射される。ここで保持された画像信号がリークすることを防ぐために、画素電極9aと対向電極21との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が電気的に接続されている。蓄積容量70を構成する一方の電極は、画素電極9aと電気的に接続されており、他方の電極は、固定電位を供給する容量線300と電気的に接続されている。蓄積容量70は、画像信号の供給に応じて各画素電極9aの電位を一時的に保持する保持容量として機能する容量素子である。蓄積容量70によれば、画素電極9aにおける電位保持特性が向上し、コントラスト向上やフリッカの低減といった表示特性の向上が可能となる。
【0043】
次に、上述した本実施形態に係る液晶装置が備える対向基板の詳細な構成について、図4及び図5を参照して説明する。ここに図4は、一つの画素について、図2に示す断面の構成をより詳細に示す断面図である。図5は、対向基板における、遮光膜及び溝の配置関係を模式的に示す平面図である。尚、図4においては、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。また、図4では、一つの画素についてのみ示しているが、他の画素も同様に構成されている。
【0044】
図4において、対向基板20は、透明基板210及び220が互いに対向して配置され、接着部材250によって互いに接着されることによって形成されている。接着部材250は、例えば熱硬化性樹脂接着剤或いは光硬化性樹脂接着剤等の透明な樹脂接着剤からなり、透明基板210或いは220上の全面に塗布され透明基板210及び220間に配置された後に硬化させられたものである。
【0045】
透明基板210は、本発明に係る「第1透明基板」の一例であり、ガラス基板からなる。
【0046】
透明基板220は、本発明に係る「第2透明基板」の一例であり、透明基板210よりも薄い厚さを有するガラス基板からなる。透明基板220の表面のうち透明基板210に対向する側(即ち、接着部材250に接触する側、つまり図中、上側)の表面における非開口領域D2に溝225が掘られている。一方、透明基板220の表面のうち透明基板210に対向しない側(即ち、接着部材250に接触する側とは反対側、つまり図中、下側)の表面における非開口領域D2に、図2を参照して上述した遮光膜23が形成されている。更に、遮光膜23を覆うように、図2を参照して上述した対向電極21が透明基板220のほぼ全面に形成されている。対向電極21上には配向膜(図示省略)が形成されている。
【0047】
図5に示すように、遮光膜23は、格子状の平面パターンを有するように形成されている。対向基板20において、遮光膜23によって非開口領域D2が規定され(即ち、遮光膜23が形成された遮光領域23aが非開口領域D2として規定され)、遮光膜23によって区切られた領域が開口領域D1となる。尚、遮光膜23をストライプ状に形成し、該遮光膜23と、TFTアレイ基板10側に設けられる容量線300やデータ線6a等の各種構成要素とによって、非開口領域を規定するようにしてもよい。
【0048】
図4において、溝225は、遮光膜23と互いに重なるように、例えばエッチング等によってV字溝(即ち、断面がV字形状を有する溝)として形成されている。
【0049】
図5に示すように、溝225は、遮光膜23と概ね同様に、格子状の平面パターンを有するように形成されている。尚、図5では、溝225におけるV字溝の中心225c(図4も参照)の位置のみを示している。溝225は、遮光膜23の幅と概ね同じ幅を有するように形成されている。
【0050】
再び図4において、このような溝225が掘られた透明基板220と透明基板210と接着部材250によって互い接着されることにより、対向基板20には、接着部材250のうち溝225内に設けられた部分からなる光屈折部230が形成されている。光屈折部230の表面の一部は、溝225内における溝表面225aによって規定されている。光屈折部230は、開口領域D1を囲む、格子状の平面パターンを有することになる。
【0051】
ここで、接着部材250は、透明な樹脂接着剤からなり、ガラス基板からなる透明基板220(屈折率は約1.46)と異なる屈折率、例えば1.6〜1.8程度の屈折率を有している。よって、このような光屈折部230によって、透明基板210側から非開口領域D2に入射される光(図中、矢印P1で示す)を開口領域D1へ向かうように屈折させ、TFTアレイ基板10における開口領域D2へ向かう光として(図中、矢印P2で示す)出射させることができる。言い換えれば、溝225内の溝表面225aは、非開口領域D2に入射される光を開口領域D1へ集光させるレンズ面として機能することができる。即ち、液晶層50を介して対向配置されたTFTアレイ基板10における画像表示領域10aに配列された複数の画素電極9aの各開口領域D1に効率的に集光することができる。つまり、対向基板20に入射された光のうち非開口領域D2に向かう光も、溝225(或いは光屈折部230又は溝表面225a)の集光作用により開口領域D1に効率よく入射させ、光の利用効率を高めることができる。従って、本実施形態に係る液晶装置によれば、明るく高品質な画像表示が可能となる。
【0052】
更に、このような溝225は、仮に透明基板220における開口領域D1毎にマイクロレンズのレンズ曲面を規定する凹部又は凸部を形成する場合と比較して、容易に高精度で形成することができる。言い換えれば、マイクロレンズに比べて容易に形成可能な溝225によって、各開口領域D1に効率的に集光することができる。これにより、歩留まりも向上可能であり、当該液晶装置自体の信頼性が高まる。
【0053】
加えて、本実施形態では特に、接着部材250は、透明基板210及び220間における開口領域及び非開口領域を含む比較的広い領域に膜状に形成されているので、透明基板210及び220を確実に接着できると共に、当該接着部材250の膜厚等を比較的容易に制御できる。
【0054】
尚、本実施形態では、接着部材250を溝225内にも配置されるように構成したが、接着部材250を、例えば、画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域に、画像表示領域10aを囲むように配置するなど、溝225内を除く領域の一部或いは全部に配置してもよい。この場合にも、溝225内が空気などの気体で充填された状態或いは真空状態とされることで、溝225内の溝表面225aは、非開口領域D2に入射される光を開口領域D1へ集光させるレンズ面として機能することができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る液晶装置によれば、本実施形態に係る対向基板20を備えるので、透明基板220における非開口領域D2に設けられた溝225によって、各画素における開口領域D1に効率的に集光できる。更に、このような溝225は、例えばマイクロレンズに比べて、容易に形成することができるので、信頼性に優れた液晶装置を提供できる。
【0056】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る液晶装置について、図6を参照して説明する。ここに図6は、第2実施形態における図4と同趣旨の断面図である。尚、図6において、図1から図5に示した第1実施形態に係る構成要素と同様の構成要素に同一の参照符合を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0057】
図6において、第2実施形態に係る液晶装置は、上述した第1実施形態における対向基板20に代えて対向基板22を備える点で、上述した第1実施形態に係る液晶装置と異なり、その他の点については、上述した第1実施形態に係る液晶装置と概ね同様に構成されている。
【0058】
対向基板22は、上述した第1実施形態における接着部材250に代えて接着部材252を備える点で、上述した第1実施形態における対向基板20と異なり、その他の点については、上述した第1実施形態における対向基板20と概ね同様に構成されている。即ち、対向基板22は、透明基板210及び220が互いに対向して配置され、例えば熱硬化性樹脂接着剤或いは光硬化性樹脂接着剤等の透明な樹脂接着剤からなる接着部材252によって互いに接着されることによって形成されている。
【0059】
本実施形態では特に、接着部材252は、溝225内に配置されており、透明基板210及び220間における他の部分には配置されていない。即ち、接着部材252は、透明基板210及び220間における開口領域D1には設けられていない。よって、接着部材252に気泡や不純物が混入することにより、画像表示に悪影響を及ぼしてしまうことを低減できる。
【0060】
更に、本実施形態では特に、接着部材252は、溝225内に配置されており、上述した第1実施形態における接着部材250のうち溝225内に設けられた部分と同様に、透明基板210側から非開口領域D2に入射される光(図中、矢印P1で示す)を開口領域D1へ向かうように屈折させる光屈折部として機能することができる。
【0061】
<電子機器>
次に、上述した電気光学装置である液晶装置を各種の電子機器に適用する場合について説明する。ここに図7は、プロジェクタの構成例を示す平面図である。以下では、この液晶装置をライトバルブとして用いたプロジェクタについて説明する。
【0062】
図7に示されるように、プロジェクタ1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110B及び1110Gに入射される。
【0063】
液晶パネル1110R、1110B及び1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等であり、画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。そして、これらの液晶パネルによって変調された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、R及びBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。従って、各色の画像が合成される結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることとなる。
【0064】
ここで、各液晶パネル1110R、1110B及び1110Gによる表示像について着目すると、液晶パネル1110Gによる表示像は、液晶パネル1110R、1110Bによる表示像に対して左右反転することが必要となる。
【0065】
尚、液晶パネル1110R、1110B及び1110Gには、ダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必要はない。
【0066】
尚、図7を参照して説明した電子機器の他にも、モバイル型のパーソナルコンピュータや、携帯電話、液晶テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
【0067】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置用基板、該電気光学装置用基板を備えた電気光学装置、及び該電気光学装置を備えてなる電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】第1実施形態に係る液晶装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1のH−H´線断面図である。
【図3】第1実施形態に係る液晶装置の複数の画素部の等価回路図である。
【図4】一つの画素について、図2に示す断面の構成をより詳細に示す断面図である。
【図5】対向基板における、遮光膜及び溝の配置関係を模式的に示す平面図である。
【図6】第2実施形態における図4と同趣旨の断面図である。
【図7】電気光学装置を適用した電子機器の一例たるプロジェクタの構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0069】
6a…データ線、7…サンプリング回路、9a…画素電極、10…TFTアレイ基板、10a…画像表示領域、11a…走査線、20…対向基板、21…対向電極、23…遮光膜、50…液晶層、52…シール材、53…額縁遮光膜、101…データ線駆動回路、102…外部回路接続端子、104…走査線駆動回路、106…上下導通端子、107…上下導通材、210、220…透明基板、225…溝、230…光屈折部、D1…開口領域、D2…非開口領域、250…接着部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1透明基板と、
該第1透明基板に対向して配置され、前記第1透明基板に対向する側の表面における開口領域を除く非開口領域の少なくとも一部に、前記非開口領域に入射される光を前記開口領域へ向かうように屈折させるための溝が掘られた第2透明基板と、
前記第1及び第2透明基板を接着する接着部材と
を備えたことを特徴とする電気光学装置用基板。
【請求項2】
前記接着部材は、前記溝内に配置されることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置用基板。
【請求項3】
前記接着部材は、前記第1及び第2透明基板間における少なくとも前記開口領域及び前記非開口領域に配置されることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置用基板。
【請求項4】
前記第2透明基板上の前記第1透明基板に対向する側とは反対側の表面における前記非開口領域の少なくとも一部に、遮光膜が形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気光学装置用基板。
【請求項5】
前記溝は、前記非開口領域のうち少なくとも前記遮光膜が形成された遮光領域に形成されることを特徴とする請求項4に記載の電気光学装置用基板。
【請求項6】
前記遮光膜は、前記非開口領域を規定する格子状のパターンとして形成され、
前記溝は、前記遮光領域に形成される
ことを特徴とする請求項5に記載の電気光学装置用基板。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の電気光学装置用基板を備えた電気光学装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電気光学装置を具備してなることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−145730(P2008−145730A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332904(P2006−332904)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】