説明

電気化学キャパシタ

【課題】大容量かつ薄い電気化学キャパシタを得ることを課題とする。
【解決手段】正極集電体に接し、表面に凹凸構造を有する正極活性物質と、前記正極活性物質の該凸部の先端部に設けられた第1の絶縁体と、負極集電体に接し、表面に凹凸構造を有する負極活性物質と、前記負極活性物質の該凸部の先端部に設けられた第2の絶縁体と、前記正極集電体と前記負極集電体とが対向配置され、前記第1の絶縁体と前記第2の絶縁体が介在して、前記正極活性物質と前記負極活性物質の凸部と凹部が直接接触しないように噛み合って形成された空間部に設けられ、リチウムイオンを含む電解質とを有する電気化学キャパシタに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される発明は、電気化学キャパシタに関する。
【0002】
近年、電池材料にリチウム金属酸化物を用い、リチウムイオンが正極と負極の間を移動することによって充放電を行う方式の二次電池である、リチウムイオン二次電池、及び、電気化学キャパシタの開発が盛んに進められている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−294314号公報
【特許文献2】特開2002−289174号公報
【特許文献3】特開2007−299580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
容量の大きい電気化学キャパシタを得るためには、正極及び負極の表面積を大きくする必要がある。正極及び負極の表面積を大きくするには、正極及び負極のそれぞれの表面に凹凸を設ければよい。
【0005】
凹凸が設けられた正極及び負極の間に電解質を設けることにより、大容量のキャパシタを得ることができる。
【0006】
しかしながら、正極及び負極のそれぞれの表面に凹凸を設けた電気化学キャパシタは、その厚さが厚くなってしまう恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
正極及び負極それぞれの表面に複数の突起を設け、それぞれの突起上に絶縁体を配置し、かつ、正極及び負極それぞれの表面に複数の突起を互い違い(交互)に配置する。正極及び負極の突起は、突起状に設けられた絶縁体により絶縁されている。
【0008】
すなわち、正極集電体に接する正極活性物質及び負極集電体に接する負極活性物質のそれぞれの表面を凹凸構造とする。また、正極活性物質及び負極活性物質における凹凸構造の凸部の先端部には絶縁体を設ける。
【0009】
また、正極活性物質及び負極活性物質における凹凸構造の凸部と凸部の間隔は、凸部の幅よりも広くしておき、正極活性物質及び負極活性物質の凹凸構造を噛み合わせた場合にも直接接触しないようにする。
【0010】
そして正極活性物質と負極活性物質の凸部と凹部が直接接触しないように噛み合って形成された空間部に電解質を充填する。
【0011】
さらに、正極集電体及びそれに接する正極活性物質(正極集電体及び正極活性物質を合わせて「正極」とする)、並びに、負極集電体及びそれに接する負極活性物質(負極集電体及び負極活性物質を合わせて「負極」とする)のそれぞれの表面を凹凸構造とする。また、正極及び負極における凹凸構造の凸部の先端部には絶縁体を設ける。
【0012】
また、正極及び負極における凹凸構造の凸部と凸部の間隔は、凸部の幅よりも広くしておき、正極及び負極の凹凸構造を噛み合わせた場合にも直接接触しないようにする。
【0013】
そして正極と負極の凸部と凹部が直接接触しないように噛み合って形成された空間部に電解質を充填してもよい。
【0014】
正極集電体に接し、表面に凹凸構造を有する正極活性物質と、前記正極活性物質の該凸部の先端部に設けられた第1の絶縁体と、負極集電体に接し、表面に凹凸構造を有する負極活性物質と、前記負極活性物質の該凸部の先端部に設けられた第2の絶縁体とを有する電気化学キャパシタに関する。該電気化学キャパシタにおいて、前記正極集電体と前記負極集電体とが対向配置され、前記第1の絶縁体と前記第2の絶縁体が介在して、前記正極活性物質と前記負極活性物質の凸部と凹部が直接接触しないように噛み合って形成された空間部に設けられ、リチウムイオンを含む電解質とを有することを特徴とする。
【0015】
表面に凹凸構造を有する正極集電体及び正極活性物質からなる正極と、前記正極の該凸部の先端部に設けられた第1の絶縁体と、表面に凹凸構造を有する負極集電体及び負極活性物質からなる負極と、前記負極の該凸部の先端部に設けられた第2の絶縁体とを有する電気化学キャパシタに関する。該電気化学キャパシタは、前記正極と前記負極とが対向配置され、前記第1の絶縁体と前記第2の絶縁体が介在して、前記正極と前記負極の凸部と凹部が直接接触しないように噛み合って形成された空間部に設けられ、リチウムイオンを含む電解質とを有することを特徴とする。
【0016】
表面に凹凸構造を有する正極集電体及び正極活性物質からなる正極と、前記正極の該凹部に設けられた第1の絶縁体と、表面に凹凸構造を有する負極集電体及び負極活性物質からなる負極と、前記負極の該凹部に設けられた第2の絶縁体とを有する電気化学キャパシタに関する。該電気化学キャパシタにおいて、前記正極と前記負極とが対向配置され、前記第1の絶縁体と前記第2の絶縁体が介在して、前記正極と前記負極の凸部と凹部が直接接触しないように噛み合って形成された空間部に設けられ、リチウムイオンを含む電解質とを有することを特徴とする。
【0017】
表面に凹凸構造を有する正極集電体と、前記正極活集電体の該凸部の先端部に設けられた第1の絶縁体と、前記正極集電体及び前記第1の絶縁体に接し、表面に凹凸構造を有する正極活物質と、表面に凹凸構造を有する負極集電体と、前記負極活集電体の該凸部の先端部に設けられた第2の絶縁体と、前記負極集電体及び前記第2の絶縁体に接し、表面に凹凸構造を有する負極活物質とを有する電気化学キャパシタに関する。該電気化学キャパシタにおいて、前記正極活物質と前記負極活物質とが対向配置され、前記第1の絶縁体と前記第2の絶縁体が介在して、前記正極活性物質と前記負極活性物質の凸部と凹部が直接接触しないように噛み合って形成された空間部に設けられ、リチウムイオンを含む電解質とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
正極及び負極それぞれの表面に複数の突起を設けるため、表面積が大きくなり、大容量のキャパシタを得ることができる。
【0019】
またそれぞれの突起を互い違い(交互)に配置することにより、薄くて小型なキャパシタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】電気化学キャパシタの作製工程を示す断面図。
【図2】電気化学キャパシタの作製工程を示す断面図。
【図3】電気化学キャパシタの作製工程を示す断面図。
【図4】電気化学キャパシタの作製工程を示す断面図。
【図5】電気化学キャパシタの作製工程を示す断面図。
【図6】電気化学キャパシタの作製工程を示す断面図。
【図7】電気化学キャパシタの作製工程を示す断面図。
【図8】電気化学キャパシタの作製工程を示す断面図。
【図9】電気化学キャパシタの作製工程を示す断面図。
【図10】電気化学キャパシタの作製工程を示す断面図。
【図11】電気化学キャパシタの作製工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本明細書に開示された発明の実施の態様について、図面を参照して説明する。但し、本明細書に開示された発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本明細書に開示された発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に示す図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0022】
[実施の形態1]
本実施の形態を、図1(A)〜図1(B)、図2(A)〜図2(D)、図3(A)〜図3(D)、図4(A)〜図4(E)、図5(A)〜図5(E)、図6(A)〜図6(D)、図7(A)〜図7(B)、図8(A)〜図8(B)、図9(A)〜図9(B)、図10(A)〜図10(B)、図11(A)〜図11(B)を用いて説明する。
【0023】
まず図1(A)に示す電気化学キャパシタ135の構成及びその作製方法について、図1(A)、図2(A)〜図2(D)、図3(A)〜図3(D)を用いて説明する。
【0024】
まず板状の正極集電体111を用意する(図2(A)参照)。正極集電体111は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、等の単体あるいは化合物を用いればよい。
【0025】
次いで、正極集電体111上に、正極活物質112の材料となる板状正極活物質材料101を形成する(図2(B)参照)。
【0026】
板状正極活物質材料101は、活性炭、あるいは、LiCoO、LiNiO等の化学式Li(ただし、MはCo、Ni、Mn、V、Fe、またはTiを示し、xは0.2≦x≦2.5、yは0.8≦y≦1.25の範囲である)で示されるリチウム含有複合酸化物を用いればよい。
【0027】
板状正極活物質材料101上に、エッチング工程においてマスクとなる絶縁体113を複数形成する(図2(C)参照)。
【0028】
絶縁体113は、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、レジスト等の有機樹脂が挙げられる。絶縁体113は、このような有機樹脂を、印刷法やスピンコート法等で形成すればよい。例えば、未感光の感光性アクリルを板状正極活物質材料101の表面に印刷法で形成し、絶縁体113を形成する領域に光を当てることにより、絶縁体113を形成すればよい。
【0029】
また絶縁体113として、酸化珪素膜、窒素を含む酸化珪素膜、酸素を含む窒化珪素膜、窒化珪素膜等の無機絶縁物を用いてもよい。
【0030】
さらに絶縁体113は、上述の有機樹脂あるいは無機絶縁物の単層でもよいし、2つ以上の有機樹脂の積層あるいは2つ以上の無機絶縁物の積層、さらにあるいは、2つ以上の有機樹脂と無機絶縁物を積層したものを用いてもよい。
【0031】
次いで、絶縁体113をマスクとして、板状正極活物質材料101をドライエッチング法で異方性エッチングを行う。これにより、幅aと高さbの比が3以上1000以下、好ましくは、10以上1000以下、例えば、幅aが1μm〜10μm、高さbが10μm〜100μm、さらに例えば幅aが1μm、高さbが10μmとなる突起115を複数有する正極活物質112を形成する(図2(D)参照)。図2(D)は断面図のため、正極活物質112は櫛状に示されている。しかし突起115が奥方向にも連なって形成されるので、正極活物質112は剣山のような形状を有する。
【0032】
また、突起115の上面から見た形状は、円、四角形、三角形、星型、五角形、六角形等を用いることができ、必要に応じて形状を決めればよい。
【0033】
板状正極活物質材料101の材料のうち、ドライエッチングが難しい材料は、例えば、機械加工、スクリーン印刷、電解メッキ、ホットエンボス加工等の別の方法で、突起115を形成してもよい。さらにドライエッチングが可能な板状正極活物質材料101であっても、これらの方法を用いて突起115を形成してもよい。以上のようにして正極117が形成される。
【0034】
また一方、板状の負極集電体121を用意する(図2(A)参照)。負極集電体121は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)等の単体あるいは化合物を用いればよい。
【0035】
次いで、負極集電体121上に、負極活物質122の材料となる板状負極活物質材料105を形成する(図3(B)参照)。
【0036】
板状負極活物質材料105は、リチウムイオンを吸蔵、放出可能な炭素材、シリコン材料、シリコン合金材料等のリチウムイオン保持体を負極活物質として用いる。このような炭素材として、粉末状または繊維状の黒鉛等の炭素材を用いることが可能である。
【0037】
次いで、板状負極活物質材料105上に、エッチング工程においてマスクとなる絶縁体123を複数形成する(図3(C)参照)。絶縁体123は、絶縁体113と同様の材料及び同様の作製方法で形成すればよい。
【0038】
次いで、絶縁体123をマスクとして、ドライエッチングが可能な板状負極活物質材料105をドライエッチング法で異方性エッチングを行う。これにより、幅cと高さdの比が3以上1000以下、好ましくは、10以上1000以下、例えば、幅cが1μm〜10μm、高さdが10μm〜100μm、さらに例えば幅cが1μm、高さdが10μmとなる突起125を複数有する負極活物質122を形成する(図3(D)参照)。図3(D)は断面図のため、負極活物質122は櫛状に示されている。しかし突起125が奥方向にも連なって形成されるので、負極活物質122は剣山のような形状を有する。
【0039】
また、突起125の上面から見た形状は、円、四角形、三角形、星型、五角形、六角形等を用いることができ、必要に応じて形状を決めればよい。また突起115に対応する形状を形成すればよい。
【0040】
板状負極活物質材料105の材料のうち、ドライエッチングが難しい材料は、例えば、機械加工、スクリーン印刷、電解メッキ、ホットエンボス加工等の別の方法で、突起125を形成してもよい。さらにドライエッチングが可能な板状負極活物質材料105であっても、これらの方法を用いて突起125を形成してもよい。以上のようにして、負極127が形成される。
【0041】
また、電気化学キャパシタの中でも、リチウムイオンキャパシタを作製する場合には、負極にリチウムイオンを添加するプレドーピング工程を行う。
【0042】
次いで、正極117と負極127を対向させ、正極活物質112の突起115と、負極活物質122の突起125が互い違い(交互)となるように配置する。このとき、正極活物質112の突起115と負極活物質122、並びに、負極活物質122の突起125と正極活物質112は、それぞれ絶縁体113並びに絶縁体123により絶縁されるように配置する。
【0043】
電解質132を正極117及び負極127の間の空間に配置する。以上により電気化学キャパシタ135を作製する。(図1(A)参照)。
【0044】
電解質132はリチウムイオンを含み、リチウムイオンが電気伝導を担っている。電解質132は、溶媒と、その溶媒に溶解するリチウム塩とから構成されている。リチウム塩として、例えば、LiPF(六フッ化リン酸リチウム)、LiClO、LiBF、LiPF、LiAlCl、LiSbF、LiSCN、LiCl、LiCFSO、LiCFCO、Li(CFSO、LiAsF、LiN(CFSO、LiB10Cl10、LiN(CSO)、LiPF(CF、およびLiPF(C等を挙げることができ、これらを使用する電解質132に単独または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
また電解質132中の溶媒として、例えば、エチレンカーボネート(以下、ECと略す)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、およびビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート類、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(以下、EMCと略す)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、メチルイソブチルカーボネート(MIPC)、およびジプロピルカーボネート(DPC)などの非環状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、およびプロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、およびエトキシメトキシエタン(EME)等の非環状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン等やリン酸トリメチル、リン酸トリエチル、およびリン酸トリオクチルなどのアルキルリン酸エステルやそのフッ化物を挙げることができ、これらの一種または二種以上を混合して使用する。
【0046】
正極活物質112の突起115と負極活物質122の突起125は、それぞれ絶縁体113及び絶縁体123に絶縁するので、正極117と負極127が接触しショートすることがない。以上によって、容量は大きく、かつ、厚さが薄い電気化学キャパシタを得ることが可能である。
【0047】
次いで図1(A)と異なる構成を有する電気化学キャパシタ235及びその作製方法について、図1(B)、図4(A)〜図4(E)、図5(A)〜図5(E)を用いて説明する。
【0048】
正極集電体211の材料となる板状正極材料219上に、エッチング工程においてマスクとなる絶縁体217を複数形成する(図4(A)参照)。
【0049】
板状正極材料219は、正極集電体111と同様の材料をを用いればよい。また絶縁体217は、絶縁体113と同様の材料及び作製方法を用いてばよい。
【0050】
次いで、絶縁体217をマスクとして、板状正極材料219をドライエッチング法で異方性エッチングを行う。これにより、突起247を複数有する正極集電体211を形成する(図4(B)参照)。図4(B)は断面図のため、正極集電体211は櫛状に示されている。しかし突起247が奥方向にも連なって形成されるので、正極集電体211は剣山のような形状を有する。
【0051】
板状正極材料219の材料のうち、ドライエッチングが難しい材料は、例えば、機械加工、スクリーン印刷、電解メッキ、ホットエンボス加工等の別の方法で、突起247を形成してもよい。さらにドライエッチングが可能な板状正極材料219であっても、これらの方法を用いて突起247を形成してもよい。
【0052】
次いで、正極集電体211の突起247の先端上に存在する絶縁体217を除去する(図4(C)参照)。
【0053】
次いで、複数の突起247を有する正極集電体211を覆って、正極活物質212を形成する(図4(D)参照)。正極活物質212は、板状正極活物質材料101と同様の材料を用いればよい。
【0054】
以上の工程により、正極集電体211及び正極活物質212により、複数の突起245が形成される。図4(D)は断面図のため、正極集電体211及び正極活物質212を含む突起245は櫛状に示されている。しかし突起245が奥方向にも連なって形成されるので、剣山のような形状となる。
【0055】
また、突起245の上面から見た形状は、円、四角形、三角形、星型、五角形、六角形等を用いることができ、必要に応じて形状を決めればよい。
【0056】
突起245は幅cと高さdを有しているが、幅eと高さfの比が3以上1000以下、好ましくは、10以上1000以下、例えば、幅eが1μm〜10μm、高さhが10μm〜100μm、さらに例えば幅eが1μm、高さhが10μmとなるとよい。
【0057】
次いで、突起245の先端表面上に、絶縁体213を形成する(図4(E)参照)。絶縁体213は、絶縁体113で説明した有機樹脂を用いインクジェット法等にて形成すればよい。以上にして正極241が作製される。
【0058】
また一方、負極集電体221の材料となる板状負極材料229上に、エッチング工程においてマスクとなる絶縁体227を複数形成する(図5(A)参照)。
【0059】
板状負極材料229は、負極集電体121と同様の材料を用いればよい。絶縁体227は、絶縁体113と同様の材料及び同様の作製方法で形成すればよい。
【0060】
次いで、絶縁体227をマスクとして、ドライエッチングが可能な板状負極材料229をドライエッチング法で異方性エッチングを行う。これにより、突起248を複数有する負極集電体221を形成する(図(B)参照)。図4(B)は断面図のため、負極集電体221は櫛状に示されている。しかし突起248が奥方向にも連なって形成されるので、負極集電体221は剣山のような形状を有する。
【0061】
板状負極材料229の材料のうち、ドライエッチングが難しい材料は、例えば、機械加工、スクリーン印刷、電解メッキ、ホットエンボス加工等の別の方法で、突起248を形成してもよい。さらにドライエッチングが可能な板状負極材料229であっても、これらの方法を用いて突起248を形成してもよい。
【0062】
次いで、負極集電体221の突起248の先端上に存在する絶縁体227を除去する(図5(C)参照)。
【0063】
次いで、複数の突起248を有する負極集電体221を覆って、負極活物質222を形成する(図5(D)参照)。負極活物質222は、板状負極活物質材料105と同様の材料を用いればよい。
【0064】
以上の工程により、負極集電体221及び負極活物質222により、複数の突起246が形成される。図5(D)は断面図のため、負極集電体221及び負極活物質222を含む突起246は櫛状に示されている。しかし突起246が奥方向にも連なって形成されるので、剣山のような形状となる。
【0065】
また、突起246の上面から見た形状は、円、四角形、三角形、星型、五角形、六角形等を用いることができ、必要に応じて形状を決めればよい。また突起245に対応する形状を形成すればよい。
【0066】
突起246は幅gと高さhを有しているが、幅gと高さhの比が3以上1000以下、好ましくは、10以上1000以下、例えば、幅gが1μm〜10μm、高さhが10μm〜100μm、さらに例えば幅gが1μm、高さhが10μmとなるとよい。
【0067】
また、電気化学キャパシタの中でも、リチウムイオンキャパシタを作製する場合には、負極にリチウムイオンを添加するプレドーピング工程を行う。
【0068】
次いで、突起246の先端表面上に、絶縁体223を形成する(図5(E)参照)。絶縁体223は、絶縁体113で説明した有機樹脂を用いインクジェット法等にて形成すればよい。以上にして負極242が作製される。
【0069】
次いで、正極241と負極242を対向させ、正極241の突起245と、負極242のの突起246が互い違い(交互)となるように配置する。このとき、正極241の突起245と負極活物質222、並びに、負極242の突起245と正極活物質212は、それぞれ絶縁体213並びに絶縁体223により絶縁されるように配置する。
【0070】
電解質232を正極241及び負極242の間の空間に配置する。以上により電気化学キャパシタ235を作製する。(図1(B)参照)。
【0071】
また図1(A)及び図1(B)の構成とは異なる電気化学キャパシタ及びその作製方法を、図6(A)〜図6(D)及び図7(A)を用いて説明する。
【0072】
まず図4(A)〜図4(D)で述べられた作製工程に基づいて、突起245を有する正極集電体211及び正極活物質212を作製する。次いで、正極集電体211及び正極活物質212上に、絶縁層271を形成する(図6(A)参照)。
【0073】
絶縁層271は、絶縁体113の材料のうち有機樹脂を用いて形成すればよい。
【0074】
次いで、絶縁層271と正極活物質212との間で選択比が異なるエッチャントを用いて、絶縁層271をエッチングする。絶縁層271のエッチングは、突起245の先端が露出し、かつ、隣り合う突起245の間の凹部に絶縁体272が残るように行う(図6(B)参照)。以上のようにして、正極237を形成する。
【0075】
一方、まず図5(A)〜図5(D)で述べられた作製工程に基づいて、突起246を有する負極集電体221及び負極活物質222を作製する。次いで、負極集電体221及び負極活物質222上に、絶縁層273を形成する(図6(C)参照)。
【0076】
絶縁層273は、絶縁体113の材料のうち有機樹脂を用いて形成すればよい。
【0077】
次いで、絶縁層273と負極活物質222との間で選択比が異なるエッチャントを用いて、絶縁層273をエッチングする。絶縁層273のエッチングは、突起246の先端が露出し、かつ、隣り合う突起246の間の凹部に絶縁体274が残るように行う(図6(D)参照)。以上のようにして、負極238を形成する。
【0078】
次いで、正極237と負極238を対向させ、正極237の突起245と、負極238の突起246が互い違い(交互)となるように配置する。このとき、正極237の突起245と負極活物質222、並びに、負極238の突起245と正極活物質212は、それぞれ絶縁体274並びに絶縁体272により絶縁されるように配置する。
【0079】
電解質275を正極237及び負極242の間の空間に配置する。以上により電気化学キャパシタ236を作製する。(図7(A)参照)。
【0080】
また図1(A)、図1(B)及び図7(A)の構成とは異なる電気化学キャパシタ及びその作製方法を、図7(B)、図8(A)〜図8(B)、図9(A)〜図9(B)、図10(A)〜図10(B)、図11(A)〜図11(B)を用いて説明する。
【0081】
まず図4(A)〜図4(B)で述べられた作製工程に基づいて、突起247を有する正極集電体211、並びに、突起247上の絶縁体217を形成する。さらに正極集電体211及び絶縁体217を覆って、正極活物質251を形成する(図8(A)参照)。
【0082】
なお、突起247の上面から見た形状は、円、四角形、三角形、星型、五角形、六角形等を用いることができ、必要に応じて形状を決めればよい。
【0083】
次いで、正極活物質251上に、絶縁層252を形成する(図8(B)参照)。
【0084】
絶縁層252は、絶縁体113の材料のうち有機樹脂を用いて形成すればよい。
【0085】
次いで、絶縁層252及び正極活物質251、並びに、絶縁体217との間で選択比が異なるエッチャントを用い、絶縁層252及び正極活物質251をエッチングして、絶縁体254及び正極活物質253を得る。
【0086】
絶縁層252及び正極活物質251のエッチングは、絶縁体217が後の工程で正極活物質253と負極活物質263が絶縁できる程度の厚さになるように行う(図9(A)参照)。すなわち、絶縁体217の一部が露出しており、露出している絶縁体217の一部は正極活物質253に覆われていない。
【0087】
次いで絶縁体254と正極活物質253との間で、選択比が異なるエッチャントを用い、絶縁体254をエッチングして除去する(図9(B)参照)。これにより正極255が作製される。
【0088】
一方、まず図5(A)〜図5(B)で述べられた作製工程に基づいて、突起248を有する負極集電体221、並びに、突起248上の絶縁体227を形成する。さらに負極集電体221及び絶縁体227を覆って、負極活物質261を形成する(図10(A)参照)。
【0089】
また、突起248の上面から見た形状は、円、四角形、三角形、星型、五角形、六角形等を用いることができ、必要に応じて形状を決めればよい。また突起247に対応する形状を形成すればよい。
【0090】
次いで、負極活物質261上に、絶縁層262を形成する(図10(B)参照)。
【0091】
絶縁層262は、絶縁体113の材料のうち有機樹脂を用いて形成すればよい。
【0092】
次いで、絶縁層262及び負極活物質261、並びに、絶縁体227との間で選択比が異なるエッチャントを用い、絶縁層262及び負極活物質261をエッチングして、絶縁体264及び負極活物質263を得る。
【0093】
絶縁層262及び負極活物質261のエッチングは、絶縁体227が後の工程で正極活物質253と負極活物質263が絶縁できる程度の厚さになるように行う(図11(A)参照)。すなわち、絶縁体227の一部が露出しており、露出している絶縁体227の一部は負極活物質263に覆われていない。
【0094】
次いで絶縁体264と負極活物質263との間で、選択比が異なるエッチャントを用い、絶縁体264をエッチングして除去する(図11(B)参照)。これにより負極265が作製される。
【0095】
次いで、正極255と負極265を対向させ、正極255の突起247上の絶縁体217と、負極265の突起248上の絶縁体227が互い違い(交互)となるように配置する。このとき、正極255の正極活物質253と負極265の負極活物質263は、絶縁体217並びに絶縁体227により絶縁されるように配置する。
【0096】
電解質257を正極255及び負極265の間の空間に配置する。以上により電気化学キャパシタ267を作製する。(図7(B)参照)。
【符号の説明】
【0097】
101 板状正極活物質材料
105 板状負極活物質材料
111 正極集電体
112 正極活物質
113 絶縁体
115 突起
117 正極
121 負極集電体
122 負極活物質
123 絶縁体
125 突起
127 負極
132 電解質
135 電気化学キャパシタ
211 正極集電体
212 正極活物質
213 絶縁体
217 絶縁体
219 板状正極材料
221 負極集電体
222 負極活物質
223 絶縁体
227 絶縁体
229 板状負極材料
232 電解質
235 電気化学キャパシタ
236 電気化学キャパシタ
237 正極
238 負極
241 正極
242 負極
245 突起
246 突起
247 突起
248 突起
251 正極活物質
252 絶縁層
253 正極活物質
254 絶縁体
255 正極
257 電解質
261 負極活物質
262 絶縁層
263 負極活物質
264 絶縁体
265 負極
267 電気化学キャパシタ
271 絶縁層
272 絶縁体
273 絶縁層
274 絶縁体
275 電解質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体に接し、表面に凹凸構造を有する正極活性物質と、
前記正極活性物質の該凸部の先端部に設けられた第1の絶縁体と、
負極集電体に接し、表面に凹凸構造を有する負極活性物質と、
前記負極活性物質の該凸部の先端部に設けられた第2の絶縁体と、
前記正極集電体と前記負極集電体とが対向配置され、前記第1の絶縁体と前記第2の絶縁体が介在して、前記正極活性物質と前記負極活性物質の凸部と凹部が直接接触しないように噛み合って形成された空間部に設けられ、リチウムイオンを含む電解質と、
を有することを特徴とする電気化学キャパシタ。
【請求項2】
表面に凹凸構造を有する正極集電体及び正極活性物質からなる正極と、
前記正極の該凸部の先端部に設けられた第1の絶縁体と、
表面に凹凸構造を有する負極集電体及び負極活性物質からなる負極と、
前記負極の該凸部の先端部に設けられた第2の絶縁体と、
前記正極と前記負極とが対向配置され、前記第1の絶縁体と前記第2の絶縁体が介在して、前記正極と前記負極の凸部と凹部が直接接触しないように噛み合って形成された空間部に設けられ、リチウムイオンを含む電解質と、
を有することを特徴とする電気化学キャパシタ。
【請求項3】
表面に凹凸構造を有する正極集電体及び正極活性物質からなる正極と、
前記正極の該凹部に設けられた第1の絶縁体と、
表面に凹凸構造を有する負極集電体及び負極活性物質からなる負極と、
前記負極の該凹部に設けられた第2の絶縁体と、
前記正極と前記負極とが対向配置され、前記第1の絶縁体と前記第2の絶縁体が介在して、前記正極と前記負極の凸部と凹部が直接接触しないように噛み合って形成された空間部に設けられ、リチウムイオンを含む電解質と、
を有することを特徴とする電気化学キャパシタ。
【請求項4】
表面に凹凸構造を有する正極集電体と、
前記正極活集電体の該凸部の先端部に設けられた第1の絶縁体と、
前記正極集電体及び前記第1の絶縁体に接し、表面に凹凸構造を有する正極活物質と、
表面に凹凸構造を有する負極集電体と、
前記負極活集電体の該凸部の先端部に設けられた第2の絶縁体と、
前記負極集電体及び前記第2の絶縁体に接し、表面に凹凸構造を有する負極活物質と、
前記正極活物質と前記負極活物質とが対向配置され、前記第1の絶縁体と前記第2の絶縁体が介在して、前記正極活性物質と前記負極活性物質の凸部と凹部が直接接触しないように噛み合って形成された空間部に設けられ、リチウムイオンを含む電解質と、
を有することを特徴とする電気化学キャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−219392(P2010−219392A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65970(P2009−65970)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】