説明

電気化学デバイス用外装体及び電気化学デバイス

【課題】 デッドスペースを低減でき、耐圧性に優れたシール構造を有する電気化学デバイス用外装体を提供すること。
【解決手段】 電気化学デバイスの発電要素を内部に収容するための外装体であって、互いに対向する第1のラミネートフィルム51及び第2のラミネートフィルム52により構成され、上記第1及び第2のラミネートフィルム51,52の縁部同士が接着されてなるシール部を有し、上記シール部の少なくとも一部は、上記第2のラミネートフィルム52の縁部が、上記第1のラミネートフィルム51の外装体外部側の面の縁部に重なるように折り曲げられて接着された外面シール部5となっている、電気化学デバイス用外装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学デバイス用外装体及び電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電池や電気二重層キャパシタ等の電気化学デバイスでは、アルミラミネート外装体を用いたものが実用化されている。アルミラミネート外装体は、軽量であり形状の自由度が高いという利点がある。
【0003】
従来のラミネート外装体の構造は、発電要素収容部の周囲に設けた糊代部分でラミネートフィルムを熱プレス等によりシールする構造となっている(例えば、特許文献1〜4参照)。これらのラミネート外装体の構造では、糊代分のデッドスペースが生じるため、ラミネート外装体の糊代部分(シール部)を折り畳むことで省スペース化することが提案されている(例えば、特許文献5〜9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−77043号公報
【特許文献2】特開2000−133216号公報
【特許文献3】特開2000−149993号公報
【特許文献4】特開2000−285904号公報
【特許文献5】特開2000−200585号公報
【特許文献6】特開2000−251855号公報
【特許文献7】特開2000−268807号公報
【特許文献8】特開2001−325925号公報
【特許文献9】特開2001−325943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献5〜9に記載されたラミネート外装体の構造でも、折り畳んだ糊代部分がデッドスペースになるため、更なるデッドスペース低減の余地を有している。また、上記特許文献1〜9に記載されたラミネート外装体の構造では、外装体内部の内圧が高まった場合に糊代部分が徐々に押し広げられ、剥がれが生じやすいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、デッドスペースを低減でき、耐圧性に優れたシール構造を有する電気化学デバイス用外装体、及び、それを用いた電気化学デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、電気化学デバイスの発電要素を内部に収容するための外装体であって、互いに対向する第1のラミネートフィルム及び第2のラミネートフィルムにより構成され、上記第1及び第2のラミネートフィルムの縁部同士が接着されてなるシール部を有し、上記シール部の少なくとも一部は、上記第2のラミネートフィルムの縁部が、上記第1のラミネートフィルムの外装体外部側の面の縁部に重なるように折り曲げられて接着された外面シール部となっている、電気化学デバイス用外装体を提供する。
【0008】
かかる電気化学デバイス用外装体によれば、シール部の少なくとも一部が上記構造の外面シール部となっていることにより、シール部が外装体の外側に設けられた従来の外装体と比較して、デッドスペースを十分に低減することができる。また、上記構造の外面シール部は、外装体内部の内圧が高まった場合でも、シール部を押し広げる方向に力が働かないため剥がれが生じ難く、優れた耐圧性を得ることができる。
【0009】
本発明の電気化学デバイス用外装体は、外形が矩形状であり、電極端子を導出する辺に接する二辺のうちの少なくとも一方の辺が、上記外面シール部となっていることが好ましい。かかる構造の外装体は、上記外面シール部を備えることによるデッドスペースの低減及び耐圧性の向上効果がより有効に得られる。
【0010】
本発明はまた、上記本発明の電気化学デバイス用外装体と、上記外装体の内部に密閉した状態で収容された発電要素及び電解質溶液と、一端が上記発電要素の各電極に接続され、他端が上記外装体の外部に露出された電極端子と、を備える、電気化学デバイスを提供する。かかる電気化学デバイスは、上述した構造の外装体を備えるため、デッドスペースが十分に低減されており、優れた耐圧性を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、デッドスペースを十分に低減でき、耐圧性に優れたシール構造を有する電気化学デバイス用外装体、及び、それを用いた電気化学デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の電気化学デバイス用外装体の好適な一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の電気化学デバイス用外装体の好適な一実施形態を示す正面図である。
【図3】従来の電気化学デバイス用外装体の一例を示す斜視図である。
【図4】本発明の電気化学デバイス用外装体の構成材料となるラミネートフィルムの基本構成の一例を示す模式断面図である。
【図5】図1に示した電気化学デバイス用外装体1を作製する際の一連の工程図である。
【図6】本発明の電気化学デバイス(リチウムイオン二次電池)の好適な一実施形態を示す正面図である。
【図7】図6に示すリチウムイオン二次電池の内部を負極10の表面の法線方向からみた場合の展開図である。
【図8】図6に示すリチウムイオン二次電池を図6のX1−X1線に沿って切断した場合の模式断面図である。
【図9】図6に示すリチウムイオン二次電池を図6のX2−X2線に沿って切断した場合の要部を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0014】
図1は、本発明の電気化学デバイス用外装体の好適な一実施形態を示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態の外装体1は、互いに対向する一対のラミネートフィルム51,52(第1のラミネートフィルム51及び第2のラミネートフィルム52)により構成され、第1及び第2のラミネートフィルム51,52の縁部同士が接着されてなるシール部は、第2のラミネートフィルム52の縁部が、第1のラミネートフィルム51の外装体外部側の面の縁部に重なるように折り曲げられて接着された外面シール部5となっている。外装体1は、外形が矩形状であり、一枚のラミネートフィルムを折り曲げて形成したものである。
【0015】
また、外装体1においては、図1に開口部として示した辺1Aが電極端子を導出する辺となっており、これに接する二辺1B,1Cが両方とも上記外面シール部5となっている。また、外装体1の辺1Aと対向する辺1Dは折り曲げ部であり、一対のラミネートフィルム51,52が連続している。ここで、辺1Dは折り曲げ部であるため、電気化学デバイスを作製後、外装体内部の内圧が高まった場合に、外装体1の辺1Dと辺1B及び辺1Cとが接する角部から電解質溶液が漏れ出す場合がある。したがって、外装体1の辺1Dと辺1B及び辺1Cとが接する角部は、ヒートシール又は接着剤等によってシールすることが好ましい。具体的には、図2(a)に示すように、辺1Dと辺1B及び辺1Cとが接する角部にのみにシール部Sを設けるか、図2(b)に示すように、辺1D全体にシール部Sを設けることが好ましい。
【0016】
一方、図3は、シール部が外装体の外側に形成された従来の外装体の一例を示す斜視図である。図3に示すように、従来の外装体4において、一対のラミネートフィルム51,52の縁部同士が接着されてなるシール部6は、外装体の外側に設けられている。外装体4においては、図3に開口部として示した辺4Aが電極端子を導出する辺となっており、これに接する二辺4B,4Cの両方、並びに、辺4Aと対向する辺4Dがシール部6となっている。
【0017】
図3に示した外装体4の構造では、シール部6がデッドスペースとなる。これに対し、図1に示した外装体1の構造によれば、シール部が外面シール部5となっていることにより、デッドスペースを十分に低減することができる。
【0018】
また、図3に示した外装体4の構造では、外装体内部の内圧が高まった場合、シール部6に対して図3中の矢印Pの方向、すなわちシール部6が押し広げられる方向に力が働き、剥がれが生じやすい。これに対し、図1に示した外装体1の構造によれば、外装体内部の内圧が高まった場合、外面シール部5が押し広げられる方向に力が働かないため、剥がれが生じ難く、優れた耐圧性が得られる。
【0019】
本実施形態の外装体1を構成する一対のラミネートフィルム51,52(第1のラミネートフィルム51及び第2のラミネートフィルム52)としては、可とう性を有するラミネートフィルムが用いられる。ラミネートフィルムは軽量であり薄膜化が容易なため、電気化学デバイス自体の形状を薄膜状とすることができる。そのため、本来の体積エネルギー密度を容易に向上させることができるとともに、電気化学デバイスの設置されるべき空間の体積を基準とする体積エネルギー密度も容易に向上させることができる。
【0020】
このラミネートフィルムは可とう性を有するものであれば特に限定されないが、外装体の十分な機械的強度と軽量性とを確保しつつ、外装体の外部から内部への水分や空気の侵入及び外装体の内部から外部への電解質成分の逸散を効果的に防止する観点から、収容する発電要素に接触する高分子製の最内部の層と、該最内部の層の上記発電要素と接する側と反対側に配置される金属層と、該金属層の上記最内部の層と接する側と反対側に配置される高分子製の層と、を少なくとも有する3層以上の層から構成されるラミネートフィルムであることが好ましい。
【0021】
ラミネートフィルムの積層構造としては、例えば、図4に示す構成のラミネートフィルムが挙げられる。図4に示すラミネートフィルム53は、その内面F1において外装体内部に収容する発電要素と接触する高分子製の最内部の層53aと、最内部の層53aのもう一方の面(外側の面)上に配置された金属層53cと、金属層53cの外側の面に配置された高分子製の最外部の層53bと、を有する。
【0022】
最内部の層53aは可とう性を有する層であり、その構成材料は上記の可とう性を発現させることが可能であり、且つ、外装体の内部に収容される電解質溶液に対する化学的安定性(化学反応、溶解、膨潤が起こらない特性)、並びに、酸素及び水(空気中の水分)に対する化学的安定性を有している高分子であれば特に限定されないが、更に酸素、水(空気中の水分)及び電解質溶液の成分に対する透過性の低い特性を有している材料が好ましい。最内部の層53aの構成材料としては、例えば、エンジニアリングプラスチック、並びに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン酸変成物、ポリプロピレン酸変成物、ポリエチレンアイオノマー、ポリプロピレンアイオノマー等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0023】
なお、「エンジニアリングプラスチック」とは、機械部品、電気部品、住宅用材等で使用されるような優れた力学特性と耐熱性、耐久性を有しているプラスチックを意味し、例えば、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシテトラメチレンオキシテレフタロイル(ポリブチレンテレフタレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。
【0024】
また、最外部の層53bの構成材料としては、上記最内部の層53aと同様の構成材料を使用してもよい。本実施形態の外装体においては、第2のラミネートフィルム52の縁部が折り曲げられるため、外面シール部5では、第1のラミネートフィルム51の外面(図4中の面F2)と第2のラミネートフィルム52の内面(図4中の面F1)とが接着されることになる。そのため、熱プレスにより外面シール部5を形成する際に、加熱温度を調節することで縁部の面F1と面F2とを選択的に熱融着させることが可能となることから、最外部の層53bの構成材料は、最内部の層53aの構成材料よりも融点の低い材料を用いることが好ましい。最外部の層53bの構成材料として好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。これらの中でも、吸水率が極めて低いことから、ポリプロピレン、ポリエチレンが特に好ましい。
【0025】
金属層53cとしては、酸素、水(空気中の水分)及び電解質溶液に対する耐腐食性を有する金属材料から形成されている層であることが好ましい。例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、クロム等からなる金属箔を使用してもよい。
【0026】
本実施形態の外装体に用いるラミネートフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートからなる最内部の層53aと、アルミニウムからなる金属層53cと、ポリプロピレンからなる最外部の層53bとで構成された3層構造のラミネートフィルムが特に好ましい。
【0027】
上述した構造を有するラミネートフィルム53は、ドライラミネーション法、ウエットラミネーション法、ホットメルトラミネーション法、エクストルージョンラミネーション法等の既知の製法を用いて作製することができる。例えば、ラミネートフィルム53を構成する高分子製の層となるフィルム、及び、アルミニウム等からなる金属箔をそれぞれ用意する。金属箔は、例えば金属材料を圧延加工することにより用意することができる。次に、好ましくは先に述べた複数の層の構成となるように、高分子製の層となるフィルムの上に接着剤を介して金属箔を貼り合わせる等してラミネートフィルム(多層フィルム)53を作製する。得られたラミネートフィルム53は、所定の形状及び大きさに切断して使用される。
【0028】
次に、上述した電気化学デバイス用外装体の製造方法の例について説明する。図5(a)〜(c)は、図1に示した外装体1を作製する際の一連の工程図である。まず、図5(a)に示すように、一枚のラミネートフィルム50を用意する。このラミネートフィルム50は、図中の折り曲げ線Y−Yにおいて折り曲げられるものである。ラミネートフィルム50は、折り曲げ線Y−Yにおいて折り曲げた場合に対向配置された状態となる第1のラミネートフィルム51及び第2のラミネートフィルム52の領域を有している。図中の52Bは、第2のラミネートフィルム52の縁部であり、この部分が第1のラミネートフィルム51の縁部51Bの外面に重なるように折り曲げられて接着されることで外面シール部5が形成されることとなる。また、図中の51A及び52Aは、それぞれ第1及び第2のラミネートフィルム52の外面シール部5を形成しない部分領域を示す。
【0029】
次に、図5(b)に示すように、折り曲げ線Y−Yにおいてラミネートフィルム50を二つ折りにする。次いで、図5(c)に示すように、第2のラミネートフィルム52の縁部52Bを、第1のラミネートフィルム51の外装体外部側の面の縁部51Bに重なるように折り曲げ、重なり合った縁部51Bと52Bとを接着することで外面シール部5を形成する。その後、図2に示したように、必要に応じて外装体1の角部を含む領域をシールする。これにより、外装体1を作製することができる。
【0030】
上記外装体1の製造方法において、重なり合った縁部51Bと縁部52Bとの接着方法は特に限定されないが、例えば、ヒートシールによる接着方法や接着剤を用いた接着方法を用いることができる。生産性の観点からは、ヒートシール法を用いることが好ましい。ヒートシール法により接着する場合、例えば、接着する縁部51B,52Bのみを細いブレードで挟んで熱プレスする方法や、熱を通さない板状の部材を外装体内部に入れ、外面シール部5を形成する側から外部プレス(熱プレス)する方法を用いることができる。また、ラミネートフィルム50が図4に示したような高分子製の最内部の層53a、金属層53c及び高分子製の最外部の層53bを有し、且つ、最外部の層53bの構成材料の融点が最内部の層53aの構成材料の融点よりも低い場合には、第1及び第2のラミネートフィルム51,52の外側から外装体の全体又は一部(例えば、外面シール部5を形成する部分)を熱プレスし、重なり合った縁部51B及び縁部52B間のみを選択的に熱融着させる方法を用いることもできる。
【0031】
以上、本発明の電気化学デバイス用外装体の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明の電気化学デバイス用外装体は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態の説明における外装体1は、電極端子を導出する辺に接する2辺が両方とも外面シール部5となっているが、一方のシール部が外面シール部5であり、他方のシール部が従来のシール部6であってもよい。また、本発明の外装体は、図1に示した矩形状のものに限定されず、円筒形等の形状でもよい。
【0032】
また、図1に示した外装体1においては、一枚のラミネートフィルムを折り曲げて第1及び第2のラミネートフィルム51,52を形成しているが、第1のラミネートフィルム51と第2のラミネートフィルム52とは別々のフィルムであってもよい。この場合、外装体1における折り曲げ部はシール部となり、図2(b)に示したように辺1D全体がシールされる。
【0033】
次に、上述した電気化学デバイス用外装体を用いた電気化学デバイスの好適な一実施形態について説明する。本実施形態では、外装体として図1に示した外装体1を用いたリチウムイオン二次電池について説明する。
【0034】
図6は、本発明の電気化学デバイス(リチウムイオン二次電池)の好適な一実施形態を示す正面図である。また、図7は図6に示すリチウムイオン二次電池の内部を負極10の表面の法線方向からみた場合の展開図である。更に、図8は図6に示すリチウムイオン二次電池を図6のX1−X1線に沿って切断した場合の模式断面図である。また、図9は図6に示すリチウムイオン二次電池を図6のX2−X2線に沿って切断した場合の要部を示す模式断面図である。
【0035】
図6〜図9に示すように、リチウムイオン二次電池100は、主として、互いに対向する板状の負極10及び板状の正極20と、負極10と正極20との間に隣接して配置される板状のセパレータ40と、リチウムイオンを含む電解質溶液と、これらを密閉した状態で収容する外装体1と、負極10に一方の端部が電気的に接続されると共に他方の端部が外装体1の外部に突出される負極用リード12と、正極20に一方の端部が電気的に接続されると共に他方の端部が外装体1の外部に突出される正極用リード22とから構成されている。以下、本実施形態の各構成要素の詳細を説明する。
【0036】
なお、本明細書において、「負極」とは、電池の放電時の極性を基準とする電極であって、放電時の酸化反応により電子を放出する電極である。更に、「正極」とは、電池の放電時の極性を基準とする電極であって、放電時の還元反応により電子を受容する電極である。
【0037】
まず、負極10及び正極20について説明する。負極10は、負極集電体と、該負極集電体上に形成された負極活物質含有層とからなる。また、正極は、正極集電体と、該正極集電体上に形成された正極活物質含有層とからなる。
【0038】
負極集電体及び正極集電体は、負極活物質含有層及び正極活物質含有層への電荷の移動を充分に行うことができる良導体であれば特に限定されず、公知のリチウムイオン二次電池に用いられている集電体を使用することができる。例えば、負極集電体及び正極集電体としては、それぞれ銅、アルミニウム等の金属箔が挙げられる。
【0039】
また、負極10の負極活物質含有層は、主として、負極活物質と、結着剤とから構成されている。なお、負極活物質含有層は、更に導電助剤を含有していることが好ましい。
【0040】
負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンと該リチウムイオンのカウンターアニオン(例えば、PF、ClO)とのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能なものであれば特に制限されず、公知の負極活物質を使用できる。このような負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等の炭素材料、Al、Si、Sn等のリチウムと化合することのできる金属、SiO、SiO、SiO、SnO等の酸化物を主体とする非晶質の化合物、チタン酸リチウム(LiTi12)、TiOが挙げられる。
【0041】
負極10に用いられる結着剤としては、公知の結着剤を特に制限なく使用することができ、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂が挙げられる。この結着剤は、活物質粒子や必要に応じて添加される導電助剤等の構成材料同士を結着するのみならず、それらの構成材料と集電体との結着にも寄与している。
【0042】
また、上記の他に、結着剤としては、例えば、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴムを用いてもよい。
【0043】
更に、上記の他に、結着剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等を用いてもよい。また、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、その水素添加物、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、その水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子を用いてもよい。更に、シンジオタクチック1、2−ポリブタジエン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン(炭素数2〜12)共重合体等を用いてもよい。また、導電性高分子を用いてもよい。
【0044】
必要に応じて用いられる導電助剤としては特に限定されず、公知の導電助剤を使用できる。例えば、カーボンブラック類、炭素材料、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属粉、炭素材料及び金属粉の混合物、ITOのような導電性酸化物が挙げられる。
【0045】
正極20の正極活物質含有層は、主として、正極活物質と、結着剤とから構成されている。なお、正極活物質含有層は、更に導電助剤を含有していることが好ましい。
【0046】
正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンと該リチウムイオンのカウンターアニオン(例えば、ClO)とのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能であれば特に限定されず、公知の電極活物質を使用できる。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、リチウムマンガンスピネル(LiMn)、及び、一般式:LiNiCoMn(x+y+z+a=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦a≦1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crより選ばれる1種類以上の元素)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV)、オリビン型LiMPO(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素またはVOを示す)、チタン酸リチウム(LiTi12)等の複合金属酸化物が挙げられる。
【0047】
正極20に用いられる結着剤としては、負極10に用いられる結着剤と同様のものを使用することができる。また、正極20に必要に応じて用いられる導電助剤としては、負極10に用いられる導電助剤と同様のものを使用することができる。
【0048】
また、正極20の正極集電体は、例えばアルミニウムからなる正極用リード22の一端に電気的に接続され、正極用リード22の他端は外装体1の外部に延びている。一方、負極10の負極集電体も、例えば銅又はニッケルからなる負極用リード12の一端に電気的に接続され、負極用リード12の他端は外装体1の外部に延びている。
【0049】
負極10と正極20との間に配置されるセパレータ40は、イオン透過性を有し、且つ、電子的絶縁性を有する多孔体から形成されていれば特に限定されず、公知のリチウムイオン二次電池に用いられるセパレータを使用することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリオレフィンからなるフィルムの積層体や、上記高分子の混合物の延伸膜、或いは、セルロース、ポリエステル及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも一種の構成材料からなる繊維不織布等が挙げられる。
【0050】
電解質溶液(図示せず)は外装体1の内部空間に充填され、その一部は、負極10、正極20、及びセパレータ40の内部に含有されている。電解質溶液は、リチウム塩を有機溶媒に溶解した非水電解質溶液が使用される。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiClO、LiBF、LiAsF、LiCFSO、LiCFCFSO、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiN(CFCFCO)等の塩が使用される。なお、これらの塩は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、電解質溶液は、高分子等を添加することによりゲル状としてもよい。
【0051】
また、有機溶媒は、公知の電気化学デバイスに使用されている溶媒を使用することができる。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、及び、ジエチルカーボネート等が好ましく挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で混合して使用してもよい。
【0052】
外装体1は、図1、図2(a)及び図5に示した構造を有するものであり、電極端子を導出する辺に接する2辺のシール部が外面シール部5となっており、また、折り曲げ部側の角部がシールされてシール部Sが形成されている。また、図6及び図7に示すように、第1のラミネートフィルム51及び第2のラミネートフィルム52の電極端子を導出する辺側の縁部51a及び52aは、電極端子(負極用リード12及び正極用リード22)を挟んだ状態でシールされている。第1のラミネートフィルム51の縁部51a及び第2のラミネートフィルム52の縁部52aのシール部に接触する負極用リード12の部分には、負極用リード12と第1及び第2のラミネートフィルム中の金属層との接触を防止するための絶縁体14が被覆されている。更に、第1のラミネートフィルム51の縁部51a及び第2のラミネートフィルム52の縁部52aのシール部に接触する正極用リード22の部分には、正極用リード22と第1及び第2のラミネートフィルム中の金属層との接触を防止するための絶縁体24が被覆されている。
【0053】
これら絶縁体14及び絶縁体24の構成は特に限定されないが、例えば、それぞれ高分子から形成されていてもよい。なお、負極用リード12及び正極用リード22のそれぞれに対するラミネートフィルム中の金属層の接触が充分に防止可能であれば、これら絶縁体14及び絶縁体24は配置しない構成としてもよい。
【0054】
次に、上述したリチウムイオン二次電池100の製造方法について説明する。
【0055】
発電要素60(負極10、セパレータ40及び正極20がこの順で順次積層された積層体)の製造方法は、特に限定されず、公知のリチウムイオン二次電池の製造に採用されている公知の方法を用いることができる。
【0056】
負極10及び正極20を作製する場合、先ず、上述した各構成成分を混合し、結着剤が溶解可能な溶媒に分散させ、電極形成用塗布液(スラリー又はペースト等)を作製する。溶媒としては、結着剤が溶解可能であれば特に限定されるものではないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等を用いることができる。
【0057】
次に、上記電極形成用塗布液を集電体表面上に塗布し、乾燥させ、圧延することにより集電体上に活物質含有層を形成し、負極10及び正極20の作製を完了する。ここで、電極形成用塗布液を集電体の表面に塗布する際の手法は特に限定されるものではなく、集電体の材質や形状等に応じて適宜決定すればよい。塗布方法としては、例えば、メタルマスク印刷法、静電塗装法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
【0058】
その後、作製した負極10及び正極20のそれぞれに対して、負極用リード12及び正極用リード22をそれぞれ電気的に接続する。
【0059】
次に、負極10と正極20との間に、セパレータ40を接触した状態(好ましくは非接着状態)で配置し、発電要素60を完成する。このとき、負極10の負極活物質含有層側の面、及び、正極20の正極活物質含有層側の面がセパレータ40と接触するように配置する。
【0060】
一方、外装体1を先に説明した製造方法により製造する。図1及び図5に示したように、外装体1には、発電要素60を外装体1中に導入するための開口部を確保するために、一部にヒートシールを行わない部分を設けておく。これにより開口部を有した状態の外装体1が得られる。
【0061】
そして、開口部を有した状態の外装体1の内部に、負極用リード12及び正極用リード22が電気的に接続された発電要素60を挿入する。そして、電解質溶液を注入する。続いて、負極用リード12、正極用リード22の一部をそれぞれ外装体1内に挿入した状態で、シール機を用いて、外装体1の開口部をシールする。これにより、外装体1及びリチウムイオン二次電池100の作製が完了する。
【0062】
以上、本発明の電気化学デバイスの好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態の説明においては、負極10及び正極20をそれぞれ1つずつ備えたリチウムイオン二次電池100について説明したが、負極10及び正極20をそれぞれ2以上備え、負極10と正極20との間にセパレータ40が常に1つ配置される構成としてもよい。
【0063】
また、上記実施形態の説明においては、外装体として図1に示した外装体1を用いた場合について説明したが、外装体は図1に示した外装体1に限定されるものではない。更に、本発明の電気化学デバイス(リチウムイオン二次電池)は、図6に示したような形状のものに限定されず、例えば、円筒形等の形状でもよい。
【0064】
また、上記実施形態の説明においては、電気化学デバイスがリチウムイオン二次電池の場合について説明したが、本発明の電気化学デバイスはリチウムイオン二次電池に限定されるものではなく、金属リチウム二次電池等のリチウムイオン二次電池以外の二次電池や、電気二重層キャパシタ、擬似容量キャパシタ、シュードキャパシタ、レドックスキャパシタ等の電気化学キャパシタ等であってもよい。なお、リチウムイオン二次電池以外の電気化学デバイスの場合、電極活物質としては、それぞれの電気化学デバイスに適したものを用いればよい。例えば、電気二重層キャパシタの場合には、正極活物質含有層及び負極活物質含有層中に含まれる活物質として、アセチレンブラック、グラファイト、黒鉛、活性炭などが用いられる。
【符号の説明】
【0065】
1…電気化学デバイス用外装体、5…外面シール部、10…負極、12…負極用リード、14…絶縁体、20…正極、22…正極用リード、24…絶縁体、40…セパレータ、50…ラミネートフィルム、51…第1のラミネートフィルム、52…第2のラミネートフィルム、60…発電要素、100…リチウムイオン二次電池。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学デバイスの発電要素を内部に収容するための外装体であって、
互いに対向する第1のラミネートフィルム及び第2のラミネートフィルムにより構成され、
前記第1及び第2のラミネートフィルムの縁部同士が接着されてなるシール部を有し、
前記シール部の少なくとも一部は、前記第2のラミネートフィルムの縁部が、前記第1のラミネートフィルムの外装体外部側の面の縁部に重なるように折り曲げられて接着された外面シール部となっている、電気化学デバイス用外装体。
【請求項2】
外形が矩形状であり、
電極端子を導出する辺に接する二辺のうちの少なくとも一方の辺が、前記外面シール部となっている、請求項1記載の電気化学デバイス用外装体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電気化学デバイス用外装体と、
前記外装体の内部に密閉した状態で収容された発電要素及び電解質溶液と、
一端が前記発電要素の各電極に接続され、他端が前記外装体の外部に露出された電極端子と、
を備える、電気化学デバイス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−175847(P2011−175847A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38875(P2010−38875)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】