説明

電気化学的バイオセンサー用電極ストリップ及びその調製方法

開示されるのは、電気化学的バイオセンサー用電極ストリップであり、そのものはポリマー材料を含む非導電性基材上にニッケル含有金属層を形成し、その上に炭素層を形成し、更にパターン化を行うことにより製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造コストが低いにもかかわらず高い性能を有する電気化学的バイオセンサー用電極ストリップ、及びその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、生体サンプル中の特定物質、例えば血中グルコースの定量的分析に用いる、電気化学的バオサンサー用テストストリップのための電極ストリップ、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野では最近、血液などの生体サンプルの分析に電気化学的バイオセサーがよく使われている。特に酵素を用いる電気化学的バイオセンサーは、その適用しやすさ、高い測定感度、及び素早く結果を得られることから、現在広く用いられている。
【0003】
このような電気化学的バイオセンサーには、酵素的分析が適用される。酵素的分析は、検出法により、比色法(分光法)及び電極法(電気化学法)に分けられる。
【0004】
まず、比色法は、生体サンプルの酵素との反応に起因する指示薬の色の変化を観察することによる生体サンプルの分析である。しかし、比色法では、測定値は変色の度合いに基づくため、測定を正確に実施することが難しい。また、比色法は電極法よりも長い測定時間を必要とし、生体サンプルの濁りによる測定エラーのため、重要な生体物質の分析に困難を伴う。
【0005】
したがって、生体サンプル測定用電極システムを予め構成し、分析用試薬を電極上に固定し、生体サンプルをそれに添加する電極法が、電気化学的バイオセンサーに最近よく用いられている。この方法では、予め定めた電位を印加することにより電流/電圧を測定し、それによりサンプル中の特定の物質を定量的に測定する。
【0006】
以下では、このような電気化学的バイオセンサーの一例である血糖値測定用バイオセンサーの操作原理を説明する。
【0007】
血糖値測定用バイオセンサーでは、特定の電極を形成し、次いで分析用試薬としてグルコースオキシダーゼを電極の一部上に固定し、反応層を形成する。血液サンプルが反応層に添加されると、血糖がグルコースオキシダーゼにより酸化され、グルコースオキシダーゼが還元される。電子受容体は、グルコースオキシダーゼを酸化し、自身を還元する。還元された電子受容体は電子を失い、予め定めた電圧が印加されると共に、電極表面上が電気化学的に再酸化される。血液サンプル内のグルコース濃度は電子受容体の酸化プロセスで生じる電流量に比例するため、電流量を測定することにより血糖濃度を測定できる。
【0008】
このような電気化学的バイオサンサーを使用することにより、血中の尿酸及びタンパク質、並びにグルコースの測定が可能であり、また、DNA及び肝機能検査におけるGOT(グルタミン酸オキザロ酢酸アミノ基転移酵素)又はGPT(グルタミン酸ピルビン酸アミノ基転移酵素)の酵素活性についても測定可能である。
【0009】
本明細書では、バオセンサーは、測定される物体を同定する同定部、及び電気信号への変換を行う変換部に分けられる。同定部では、生体物質が用いられ、測定される物体の生体物質の同定は、化学的又は物理学的変化を起こす。この変化は、一般にバイオセンサー用電極と呼ばれる変換部で電気信号に変換される。
【0010】
このようなバイオセンサー用電極の製造方法の1つはシルク印刷法である。シルク印刷法は、プラチナインク、炭素インク、又は銀/塩化銀インクを用いる印刷法であり、必要とされる装置のコストは低いが、再現性を必要とする感知装置用電極の製造には抵抗変化の調節が難しいという問題がある。
【0011】
バオセンサー用電極の別の製造方法があり、パターンマスク及び貴金属を用いて電極パターンを形成する真空蒸着又はスパッタリング法である。この製造方法では、パターンマスクを基材上に置き、貴金属を用いてその上に真空蒸着又はスパッタリングを実施する。高価な貴金属の使用は高コストを要するという問題があり、貴金属は回収しにくく、電極抵抗を大きく低減するためには製造単価が増加する負担がかかる。
【0012】
更に、パターンマスクを用いる従来のスパッタリング法によると、スパッタリングはシートタイプで行われるため、効率はそれほど高くない。
【0013】
一方、プリント基板(PCB)の製造に従来利用されてきた金属のパターン成形技術は、血液などの生体サンプル中の特定物質の定量に用いる電気化学的バオセンサー用電極の製造にも適用できる。
【0014】
しかし、銅などを使用して電極を製造する従来のPCB製造では、銅基材上への金属層形成により不均一なでこぼこの表面が生じ、サンプルが下層の銅に流れるため、値の測定を妨害する電気信号が生じる。したがって、この方法は、バイオセンサー用電極の製造に適用するには不適当である。その上、電気化学的バイオセンサーで従来用いられる電圧において、PCBで使用される銅又はニッケルは電気活性がある(すなわち不安定である)ため、電気化学的バイオセンサーで使用される電極材料としては不適当である。
【0015】
一方、従来は、プラスチックフィルムなどの基材上に電極パターンを形成するためには、熱などによる蒸着でパラジウムを有する銅などの厚膜ワイヤを接着する方法、又は液相電極材料をスクリーン印刷する別の方法が使用されている。
【0016】
しかし、基材、例えばプラスチックフィルム上に厚膜ワイヤを接着する方法では、その上に蒸着されたパラジウムを有する銅を用いることによる、細かく鋭角な厚膜ワイヤの作製は難しい。厚膜ワイヤ法では細かく鋭角な厚膜ワイヤ電極の作製できないため、検出効率が制限される。また、電極材料として用いられるパラジウムは非常に高価であり、妨害物質との高い反応性から多くの不要な電流を発生する。その上、厚膜ワイヤは、ワイヤのプラスチックフィルムとの接着力が弱いため、電極がプラスチックフィルムから簡単に剥離するという問題がある。
【0017】
一方、液相電極材料をスクリーン印刷する方法は、液相めっき溶液を必要とする。特に、金、パラジウム、プラチナなどの高い検出効率及び高い耐化学薬品性を有する材料を用いて電極を形成するためには、非常に高価な液相めっき溶液を必要とする。したがって、使用可能な材料が制限されることにより、炭素が主に用いられる。しかし、炭素をスクリーン印刷することにより形成された電極ストリップは、表面が非常に不均一で、そのため検出特性が低くなる問題がある。
【0018】
一方、金は、電気化学反応において妨害物質との反応性が最も低く、耐化学薬品性が最も高いことが知られている。しかし、一般に、非常に薄いプレートとして作製された電極が接着される、又は液相電極材料がスクリーン印刷により接着されると、それによりバイオセンサーである電極ストリップの厚さが大になる。したがって、金をこの方法で接着すると、製造コストが大きく上昇する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、本発明は従来技術で起こる上記問題を解決するためのものであり、本発明は、改良された電気化学的バイオセンサー用電極及びその製造方法を提供する。
【0020】
より少ない構成要素を用い、かつ製造プロセスを簡略化することにより製造時間及び製造コストを削減することができる、電気化学的バイオセンサー電極及びその製造方法の提供が本発明の目的である。
【0021】
高価な貴金属を用いずに優れた電気的特性を示すことができる、電気化学的バイオセンサー用電極及びその製造方法の提供が本発明の別の目的である。
【0022】
必要に応じ適切に変形でき、均一な表面を有する必要な形状にパターンを形成できる性能により優れた検出特性を有することができる、電気化学的バイオセンサー用電極、及びその製造方法の提供が本発明の更なる目的である。
【0023】
したがって、本発明は、低い製造コストを必要とし優れた性能を有する、電気化学的バイオセンサーに用いられる電極ストリップを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の態様に従うと、電気化学的バイオセンサー用電極ストリップが提供され、この電極ストリップは、ストリップ形状の非導電性基材と、その基材上に設けられ作用電極及び参照電極として機能する少なくとも2つの電極と、を含み、電極は、金属層及び炭素層を含み、金属層は基材上に設けられ、炭素層は金属層上に設けられ、かつ金属層がニッケル(Ni)を含む。
【0025】
本発明の別の態様に従うと、電気化学的バイオセンサー用電極ストリップの製造方法が提供され、この方法は、非導電性基材を調製する工程と、基材上にニッケル含有金属層を形成する工程と、形成された金属層上に炭素層を形成し、それにより金属層及び炭素層を含む導電性層を形成する工程と、導電性層の部分エッチングにより電極形状をパターン化する工程と、を含む。
【0026】
本発明の先述の及び他の、目的、特徴並びに長所は、添付の図面と関連づけられる次の詳細な説明から、さらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の1つの実施形態による電気化学的バイオセンサー用電極ストリップの製造プロセスを示す概略図。
【図2】図1に示すプロセスで製造された電極ストリップの電極配置を示す平面図。
【図3】図2の線A−A’で示される方向に沿って切り取られた、図1に示すプロセスで製造された電極ストリップを示す断面図。
【図4】図2の線B−B’で示される方向に沿って切り取られた、図1に示すプロセスで製造された電極ストリップを示す断面図。
【図5】本発明による電気化学的バイオセンサー用電極ストリップの別の実施形態を示す図。
【図6】本発明による電気化学的バイオセンサー用電極ストリップの別の実施形態を示す図。
【図7】本発明による電気化学的バイオセンサー用電極ストリップの別の実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、添付の図面を参照して、本発明による電気化学的バイオセンサー用電極ストリップ及びその製造方法をより詳細に説明する。
【0029】
しかしこの説明は、本発明について説明するための一例にすぎず、本発明の範囲はこれに限定されない。
【0030】
まず、図1を参照すると、本発明による電気化学的バイオセンサー用電極ストリップの製造プロセス、及びこのプロセスで得られる電気化学的バイオセンサー用電極ストリップの構造が容易に理解される。
【0031】
本発明による電気化学的バイオセンサー用電極ストリップ100は、ストリップ形の非導電性基材10と、基材上に設けられ作用電極101及び参照電極102(両方とも図2に示す)として機能する少なくとも2つの電極と、を含む。電極は、金属層20及び炭素層30を含み、本明細書では金属層20は基材10上に設けられ、炭素層30は金属層20上に設けられ、かつ金属層20がニッケル(Ni)を含む。
【0032】
図2は、本発明の実施形態による電極ストリップの電極配置を示す平面図であり、図3は、図2の線A−A’で示される方向に沿って切り取られた断面図であり、及び図4は、図2の線B−B’で示される方向に沿って切り取られた断面図である。
【0033】
本発明の実施形態によると、金属層20及び炭素層30をスパッタリングにより形成してよい。スパッタリングにより、均一な厚さを有する薄膜の形成が可能である。
【0034】
本発明の実施形態によると、各金属層20及び炭素層30は、約200〜2000Åの範囲内の厚さを有してよく、電気伝導度及び製造容易性を考慮し、約500〜1000Åの範囲内の厚さを有してもよい。
【0035】
本発明では、電極を形成する金属層20は、主材料としてニッケルを含む金属層である。
【0036】
銅と比較すると、ニッケルは、比較的均一な厚さの薄膜を形成でき、生体サンプルの測定に用いられる生体サンプル又は試薬(例えば酵素)との反応において害がない。
【0037】
一方、ニッケルは比較的高い電気伝導度を有するが、その伝導度はバイオセンサー用電極の材料に従来用いられている貴金属よりは高くない。また、貴金属は、生体サンプルの測定に用いられる生体サンプル又は試薬(例えば酵素)との反応性がなく、一方ニッケルはある程度の反応性を示す。
【0038】
このようなニッケルの欠点を克服するため、本発明では、ニッケルを含む金属層が基材上に予め形成され、炭素層がその上に形成される。
【0039】
炭素層は、生体サンプル又は試薬との反応性がなく、いくらかの導電性を有するため、ニッケルの欠点を補完することができる。
【0040】
上述したように、本発明によるバイオセンサー用電極は、金、銀、プラチナ、パラジウムなどの高価な貴金属を用いない場合でも、優れた電気的特性を示せることを特徴とする。
【0041】
一方、本発明によるバイオセンサー用電極ストリップは、基材10として非導電性材料、例えばポリマーフィルムを使用する。したがって本発明では、ニッケルと基材との間の接着性を改良するため、金属層はニッケルに加えて別の材料を含んでよい。
【0042】
本発明の実施形態によると、金属層20として、ニッケル及びクロムの混合層を適用してよい。本発明の別の実施形態によると、金属層は、ニッケル及び酸化ニッケル(NiO)の混合層として形成されてよい。本明細書では、クロム及び酸化ニッケルは、電気伝導度をある程度犠牲にするが、ニッケルと基材10との間の接着性を改良する役割を果たすことができる。
【0043】
ニッケル及びクロムの混合層を含む金属層20では、ニッケルとクロムの含有比は、電気伝導度及び基材との接着性を考慮して90:10重量%〜50:50重量%の範囲であってよい。
【0044】
同様に、ニッケル及び酸化ニッケルの混合層を含む金属層20では、ニッケルと酸化ニッケルの含有比は、90:10重量%〜50:50重量%の範囲であってよい。
【0045】
本発明の実施形態によると、作用電極101と参照電極102との間に、補助電極104を更に形成してよい。この構造では、測定される生体サンプルを、補助電極が上部に形成されている領域に適用できる。
【0046】
言いかえれば、本発明による電気化学的バイオセンサー用電極ストリップ100がバイオセンサーに適用されるとき、測定される生体サンプルと反応性を有する試薬などは、作用電極101及び参照電極102に隣接する領域、又は補助電極104が配置される領域に置かれる。
【0047】
例えば、本発明による電気化学的バイオセンサー用電極ストリップが血中グルコースの測定により血糖を測定するキットに用いられるさいに、補助電極104の領域が反応部分であってもよい。反応部分では、試薬として、ヒドロゲル及びグルコースオキシダーゼ(以降は「GO」と称する)に基づく任意の試薬を置くことができる。本明細書では、血液サンプルが反応部分に適用されると、血液サンプル中に含有されるグルコースはGOによる酵素反応により酸化され、GOが還元される。還元されたGOは電子受容体との反応により再酸化され、酸化されたGOは別のグルコースと反応する。これにより、還元された電子受容体は電子を失い、電圧が印加された電極表面上に移動することによって電気化学的に再酸化されし、このようにして反応に連続的に加わる。電子受容体の酸化プロセスで生じる電流は血中グルコース濃度に比例するため、作用電極101と参照電極102との間の電流量を測定することにより血中グルコース濃度を定量的に測定できる。一方、補助電極104は、作用電極101と参照電極102との間の電流を増加させる役割を果たすことができ、反応部分を示す指標として機能することができる。
【0048】
また、電気化学的バイオセンサー用電極ストリップがテスターに挿入されて使用される場合を考慮して、電極ストリップがテスター内に正しく挿入されたかどうかを検出する認識電極103を更に備えてよい。例えば、電極ストリップがテスターに挿入される場合には、テスターを認識電極103が更にテスター内に含まれる検出回路に電気的に接続される方法で構成できる。
【0049】
本発明の実施形態によると、非導電性基材10として、ポリマーフィルム、特に絶縁ポリマーフィルムを用いてよい。絶縁特性を示す限りは、絶縁ポリマーフィルムに用いられる材料に制限はない。このような絶縁ポリマーフィルムの例として、ポリエチレンテレフタレート(telephthalate)(PET)フィルム、エポキシ樹脂フィルム、フェノール樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレン(polystylene)フィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0050】
本発明はまた、電気化学的バイオセンサー用電極ストリップの製造方法も提供し、この方法は、非導電性基材を調製する工程と、基材上にニッケル含有金属層を形成する工程と、形成された金属層上に炭素層を形成し、それにより金属層及び炭素層を含む導電性層を提供する工程と、導電性層の部分エッチングにより電極形をパターン化する工程と、を含む。
【0051】
本発明の実施形態によると、大きくて幅の広い基材を用いることができ、複数の電極パターンを1つの基材上に形成し、続いて単独の独立した電極となる各電極パターンに合わせて基材を切断する。
【0052】
本発明の実施形態によると、ニッケル(Ni)含有金属層及び炭素層をスパッタリングにより形成できる。
【0053】
ニッケル及びクロムを同時にスパッタリングすることによりニッケル(Ni)含有金属層を形成でき、本明細書では、ニッケルとクロムのスパッタリング比は90:10重量%〜50:50重量%の範囲にできる。
【0054】
本発明の別の実施形態によると、ニッケル及び酸化ニッケル(NiO)を同時にスパッタリングすることによりニッケル(Ni)含有金属層を形成でき、本明細書では、ニッケルと酸化ニッケルのスパッタリング比も90:10重量%〜50:50重量%の範囲にできる。
【0055】
本明細書では、各ニッケル(Ni)含有金属層及び炭素層は、スパッタリングにより200〜2000Åの範囲内の厚さを有することができる。製造容易性及び電気伝導度を考慮して、厚さを調節してよい。
【0056】
金属層及び炭素層のスパッタリングにより金属層及び炭素層を含有する導電性層を形成した後、エッチングにより電極パターンを形成する。本明細書では、エッチングとして、レーザーエッチングを本発明に適用してよい。
【0057】
レーザーエッチングを用いて電極パターンを形成すると、微小形状の電極パターンを簡便に形成することができる。また、溶媒を用いる一般的なエッチング法とは異なり、レーザーエッチングは、溶媒が原因の環境汚染を起こさないという利点がある。
【0058】
本発明の実施形態によると、基材の全表面をスパッタリングした後、レーザーエッチングを行って電極パターンを形成し、スパッタリング中にパターンマスクを用いる必要がない。
【0059】
すなわち、本発明でレーザーエッチング法を用いる場合には、直接スパッタリング法、すなわち基材の全表面を一度にスパッタリングする方法を採用してよい。直接スパッタリングの場合、スパッタリング中にパターンマスクを用い、ロールツーロールプロセス(基材を巻きながらスパッタリングが行われるプロセス)を適用する必要がないため、スパッタリングプロセスが簡便である。結果としてスパッタリング時間が短くなり、直接スパッタリング法に続きレーザーエッチングを行うことで生産効率が上がる。
【0060】
更に、レーザーエッチング法の適用により電極パターンが容易に形成されるため、大量生産を実現することができる。
【0061】
エッチングにより、作用電極101及び参照電極102を形成でき、更に少なくとも1つ以上の追加電極、例えば補助電極104及び認識電極103を任意に形成してよい。
【0062】
このような本発明による電気化学的バイオセンサー用電極ストリップを、図1に示すように製造できる。
【0063】
本発明による電気化学的バイオセンサー用電極ストリップの別の実施形態を図5〜7に示す。
【0064】
図5及び6に示されるように、電気化学的バイオセンサー用電極ストリップは、それぞれが作用電極101及び参照電極102のみを備える基本的に構造化された電極ストリップである。
【0065】
図7に示されるように、電気化学的バイオセンサー用電極ストリップは、作用電極101及び参照電極102に加え、認識電極103を備える別の電極ストリップである。
【0066】
上述したように、本発明による電極ストリップは、高価な貴金属の代わりにニッケル及びクロムを主に用い、また炭素をも用いて製造されることから、製造コストが低いという利点を有する。また、電極のパターンが、基材上に形成される導電性層のエッチングにより形成されるため、電極の製造が簡便である。その上、ニッケル含有金属層上に炭素層が形成されるため、炭素を均一に適用することができ、電極の抵抗変化が改善される。したがって、より信頼性のあるテスト結果を得ることが可能である。
【0067】
本発明による電気化学的バイオセンサー用電極ストリップを用い、生体サンプルの特定の物質を測定する電気化学的バイオセンサーの適用により、生体サンプルの様々な物質を測定することができる。例えば、電極ストリップを用いて血中のグルコース、尿酸、タンパク質を測定することができ、DNA及び肝機能検査にも適用することができる。
【0068】
本発明の代表的な実施形態を例示目的で記載したが、当業者には、添付の「特許請求の範囲」に開示されている本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、様々な修正、追加及び置換が可能であることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的バイオセンサー用電極ストリップであって、ストリップ形状の非導電性基材と、前記基材上に設けられて作用電極及び参照電極として機能する少なくとも2つの電極と、を含み、
前記電極が金属層及び炭素層を含み、
前記金属層が前記基材上に設けられ、前記炭素層が前記金属層上に設けられ、
前記金属層がニッケル(Ni)を含み、任意に補助電極が前記作用電極と前記参照電極との間に更に設けられる、電極ストリップ。
【請求項2】
前記金属層が、ニッケル及びクロムの混合層、又はニッケル及び酸化ニッケル(NiO)の混合層である、請求項1に記載の電極ストリップ。
【請求項3】
前記ニッケルと前記クロムの含有比が90:10重量%〜50:50重量%の範囲であり、又は前記ニッケルと前記酸化ニッケルの含有比が90:10重量%〜50:50重量%の範囲である、請求項2に記載の電極ストリップ。
【請求項4】
前記金属層及び前記炭素層のそれぞれが、200オングストローム〜2000オングストロームの範囲内の厚さを有する、請求項1に記載の電極ストリップ。
【請求項5】
認識電極を更に含む、請求項1に記載の電極ストリップ。
【請求項6】
電気化学的バイオセンサー用電極ストリップの製造方法であって、
非導電性基材を調製する工程と、
前記基材上にニッケル(Ni)含有金属層を形成する工程と、
前記形成された金属層上に炭素層を形成し、それにより前記金属層及び前記炭素層を含む導電性層を形成する工程と、
前記導電性層の部分エッチングにより電極形状をパターン化する工程と、を含む、方法。
【請求項7】
前記ニッケルと前記クロムの比が90:10重量%〜50:50重量%の範囲であり、又は前記ニッケルと前記酸化ニッケルの比が90:10重量%〜50:50重量%の範囲である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ニッケル(Ni)含有金属層及び前記炭素層のそれぞれが200オングストローム〜2000オングストロームの範囲内の厚さを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記電極形状が作用電極及び参照電極に相当する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記作用電極及び前記参照電極に加えて、補助電極及び認識電極の中の少なくとも1つに相当する追加の電極形状が更に形成される、請求項9に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2012−524903(P2012−524903A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507285(P2012−507285)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/031563
【国際公開番号】WO2010/123802
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】