説明

電気化学的素子

本発明は、少なくとも1個の正極と少なくとも1個の負極(5,6)とを有する電気化学的素子を含んでおり、該正極と該負極は平坦で電気的に非伝導性の基板(1)上に互いに並んで配置され、またイオンを伝導できる電解質(7)を経由して互いに接続されている。この場合、対応する個々のセルは、複数の、好ましくは多数の、基板上に対で互いに並んで配置されている正極と負極とにより互いに接続することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1個の正極と少なくとも1個の負極とを有する電気化学素子と、このような電気化学的素子を製造する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学的素子と電池は、広範囲の異なる実施例で知られている。これらはまた、機能部品、特に電極および導体路が適切な基板上に印刷されている、いわゆる印刷電池を含む。
【0003】
従来の印刷電池において、出力導体はいろいろなレベルに配置される。2つのコレクタレベル、2つの電極レベルおよび1つのセパレータレベルがある。このような電池の1つが特許文献1に説明されている。セルは異なる部品の積み重ねとして形成され、電気的出力導体はセルの上面および下面に配置される。複数のセルが、電池を形成するために積み重ねられる。この場合下側のセルの負極が自動的に上側のセルの正極に接続される。
特許文献2は柔軟性のある電極を説明している。この電極は、活性物質、導電性材料および有機性結合剤から成る。エチレン・アクリル酸が、結合剤として提案されている。
【0004】
特許文献3には別のセルが説明されている。これはそれぞれの場合に、積層されたアノードおよびカソードを持つ1つの出力導体を含んでいる。ゲル状の電解質は、その間の繊維フェルト内に配置されている。増粘剤は、ヒドロキシエチルセルロースである。
【0005】
特許文献4は平型電池用の接触装置を説明している。筐体フィルムは、2つに分割された導電層、および外側に配置された分離層から成る。導電層の一方のあるいは他方が、分離層の2つの窓を通して接続される。この筐体フィルムは、電極スタックの周りに取り付けられ、これによって導電性フィルムの一方がアノードとの接触部を作り、他方がカソードとの接触部を作る。
【0006】
特許文献5は水性電解質を持つ開放セルを説明している。電解質は電極間に配置され、吸湿性の物質、イオンを伝導する物質、および接着効果によって電極を結合する水溶性のポリマーから成る。このセルは、通常の気候条件では乾ききることはない。さらに生成されるガスは周囲へと放出され、これによってセルの膨張を防いでいる。
【0007】
特許文献6は、特許文献5で説明されている平型セルの、タイマ、注入器、温度計、グルコースセンサおよび電子ゲームなどのいろいろな薄型機器での使用につき説明している。さらに特許文献7において平型電池のさらなる改良が説明されている。この場合、電池内あるいは電池上に作られたチップが、機能性を改善している。これはDC/DCコンバータにおける電圧変動を補償する。
【0008】
説明したすべての設計は従来のスタック構造を有し、一般に5層である機能層が違いに積み重なって配置されている。
【特許文献1】US4,119,770
【特許文献2】US4,195,121
【特許文献3】JP60155866
【特許文献4】US4,623,598
【特許文献5】US5,652,043
【特許文献6】US5,897,522
【特許文献7】WO0062365
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明は、既存の電気化学的素子および電池の設計を改良する目的に基づいている。1つの特別な目的は、できるだけ薄くて平坦であり、できるだけ簡単な設計を有する電池を提供することである。この場合、これに対応する電池をできるだけ簡単に製造できることも必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1の特徴を有する電気化学的素子により、また請求項16の特徴を有する方法により達成される。この電気化学的素子およびこの方法の好ましい実施例は、それに従属する特許請求項2から15および従属請求項17にそれぞれ説明されている。すべての請求項の文言は、この明細書の文脈の参照によりここに含まれる。
【0011】
本発明による電気化学的素子において、少なくとも1個の正極と少なくとも1個の負極とが平坦で電気的に非伝導性の基板上に並んで配置され、イオンを伝導する電解質を経由して互いに接続される。平坦な基板は、好ましくはフィルムで、プラスチックフィルムの使用もまた好ましい。
【0012】
正極および負極が互いに並んだ配置は、基本的に3つのレベルに互いに重ねて配置された電気化学的素子の機能部分となる。これらは平坦で電気的に非伝導性の基板、基板上に配置された電極およびイオンを伝導し2つの電極を互いに接続し、この場合少なくとも部分的にこれらを覆っている電解質である。これにより全体として非常に平坦な、薄型電気化学的素子設計が得られる。この検討において、電極のレベルは、そこで電極自身がもちろん異なる部分、たとえば対応する出力導体/コレクタならびに活性電極材料から形成され得る平面と見なされる。これについては、次の文章でさらに詳しく説明する。
【0013】
正極および負極は一般的に、以下の文章でも説明するように、平坦な基板の一方の側のみに配置される。しかし、電気化学的素子の対応する、異なる構成を達成するための方法として、本発明により正極および負極を平坦な基板の両側に配置することも同様に可能である。しかし、本発明によるこの場合の重要な要素は、正極および負極が互いに並んで(互いに上下の異なるレベル上でなく)配置されることである。
【0014】
ある発展形において、本発明による電気化学的素子が、出力導体/コレクタとして使用され、好ましくはまた巧みに平坦な基板と実際の電極あるいは(電気化学的)活性電極材料との間に配置される導体路を有する。
これらの導体路は、いろいろな方法で提供されうる。たとえば一方において、電気的に伝導性のフィルム、特に金属フィルムをこのような導体路として使用することが可能であり、また好ましい。他方において、この導体路は、好ましくは従来のメタライゼーションプロセスにより基板に適用することができる薄い金属層であってもよい。最後に、強調しておかなければならない特に好ましい変形は、導体路が印刷できるペーストとして基板に適用されることである。これらのペーストは、また従来のいわゆる導電性接着剤であってもよい。
本発明による電気化学的素子の好ましい実施例において、電極および電極材料自身が印刷可能なペーストとして基板に適用される。この変形により、本発明のすでに説明した利点が特に良く達成される。適切なペーストを、標準プロセスを用いて比較的容易に、実際にまた本発明により好ましいように薄膜の形で正確に、適切な基板に適用できる。
【0015】
本発明による電気化学的素子の場合、正極および負極は1つのレベル上に配置されるが、物理的に互いに分離されている。正極と負極との間の電気的接続は、イオンを伝導することができる電解質経由でのみ作られる。この配置の場合、一方では正極と負極とが接触しないことが必須である。他方では空間をできるだけ節約する設計を確保するために、2つの電極の間の距離が大きすぎないように選ぶのが目的に適っている。したがって、本発明では少なくとも1個の正極と少なくとも1個の負極とが基板上で互いに1μmから10mmの距離をおいて配置されるのが好ましい。この範囲の中で100μmから1mmの距離が好ましい。
【0016】
本発明により、イオンを伝導することができる電解質としてゲル状の電解質を使用することが同様に好ましい。これらのような電解質は、平坦な構成、特に薄く平坦な構成を特に容易に達成することを可能にする。ゲル状の電解質をもっと機械的に丈夫にするために、本発明に従って電解質をフェルト内に固定するか安定化するのがまた好ましい。
本発明による1つの実施例において、電解質は好ましくは層の形状、特に薄いフィルムである。この層は、正極と負極との間に必要な導電性を確保するように配置することが必要である。この場合、電解質は、充分な導電性を提供するために、一般的にこのような状態において電極を少なくとも部分的に覆うこととなる。この場合、電解質あるいは電解質層が正極および負極を完全に覆う、あるいは特に対応する電極範囲を越えて飛び出す位が好ましい。これらのような電解質層の配置はまた、さらに容易に製造できる。
【0017】
本発明による電気化学的素子の発展形の1つにおいて、(最初に述べたように3つのレベルを含む層状構造に基づき)電解質レベル上に配置され、従って電解質および電極またはそのいずれかを少なくとも部分的に覆う、さらなるプラスチックフィルムを提供することができる。この場合、同様に電解質および電極が完全に覆われることが好ましい。
このさらなるプラスチックフィルムは、一方では電解質/電極を機械的損傷あるいは好ましくない物質の侵入あるいは天候の影響に対して保護するために、これらに対する保護機能を有する。他方では、このさらなるプラスチックフィルムは、電気化学的素子を全体としてさらに機械的に頑丈にする。
さらなるプラスチックフィルムを持つこのような設計において、またプラスチックフィルムが基板と一緒になって、電解質および電極を取り囲み密閉を形成する一種の筐体を形成するのが好ましい。これは図面に関連してさらに詳しく説明する。さらなるプラスチックフィルムの代替として、適切な保護および適切な頑丈さまたはそのいずれかを違うやり方で、たとえばフィルムあるいは対応する層を電解レベルの上に好ましくは印刷によって適用することにより、提供することも可能である。一般的にこの層は、同様にプラスチック、つまり少なくともポリマーベースであるプラスチックから成る。
【0018】
本発明による電気化学的素子の特に好ましい変形の1つが、複数の、特に多数の正極および負極を、平坦な電気的に非伝導性の基板の上に配置することにより提供される。この配置は特に対で、つまりそれぞれの場合に1つの正極とそれぞれの場合に1つの陰電極とを対で、並んで配置することによりうまく作られる。これにより複数あるいは多数の個々のセル(正極および負極を有する)を互いに接続することができる。この態様は図面と併せてまたさらに詳しく説明する。
【0019】
最後に述べた好ましい実施例の場合、特に基板が導体路を有し、それを経由して基板上に配置された電極(つまり複数あるいは多数の電極)が直列および並列またはそのいずれかで接続される。これらの導体路の適用に関しては、出力導体/コレクタに関連する上記の説明を参照することができる。
【0020】
上記のように電気化学的素子の製造についての発明による方法は、電極あるいは電極を形成する機能部分が、基板として使われる無限細長片に適用されることを特徴とする。これによりそれぞれが1個の正極および1個の負極を有する多数のセルが製造され、その場合、必要ならばこれらの個々のセルの接続(直列あるいは並列に)のために適切な導体路をこの方法に組み込むことができる。
この方法の好ましい実施例において、無限細長片はすでに電極の出力導体/コレクタを備えており、これによって全体の方法手順がかなり簡単化する。さらに本発明による方法の場合、電極がペーストの形、特に好ましくは印刷することにより基板あるいは対応する出力導体への印刷の形で適用されるのが特に好ましい。
【0021】
これまでの実施例にて、本発明に伴う利点をもう一度説明してきた。電気化学的素子が個々のセルの形である場合、機能部品が配置されるレベルの数を減らすことができるので、全体としてより簡単な、かなり薄い設計という利点の結果が得られる。すべての電気的接触部が1つのレベルに配置されるので、異なるレベル間、特に互いに良く分離されているレベル間の複雑なスルーめっきの必要がない。さらに本発明により複数あるいは多数の個々のセルを簡単なやり方で互いに接続することが可能になる。この場合一方では、複数あるいは多数の電極を対にして平坦な、電気的に非伝導性の基板上に配置し、この段階でこの基板上の個々のセルに接続のための適切な導体路を備えることが可能である。他方では、完全に完成した個々のセルをさらに個々のセルの接続のために必要な導体路をすでに有するキャリアフィルムに取り付け、それらを適切な接触作成手段によって互いに接続することが可能である。この場合、取り付け目的に対して通常の接着剤を使うことができ、また接触を作るために従来の導電性接着剤あるいは導電性ワニス、たとえば銀を含む導電性接着剤を一般的に使用できる。複数あるいは多数の個々のセルを含む電池全体が完成すると、これを最終的に被覆フィルムで(さらに)覆うことができる。例として、これを接着剤により接着あるいは積層することができる。その結果、このような電池(すでに説明したさらなるプラスチックフィルムの場合のような)は機械的に頑丈になり、外部の影響、たとえば天候の影響、に対して保護される。電池の電気的接触部は、キャリアフィルムの上を通って出し、機械的にあるいは同様に導電性接着剤を使って引き出すことができる。
【0022】
本発明による電気化学的素子は、個々のセルの形でもまた複数あるいは多数の個々のセルから形成される電池の形でも、従来技術により電気化学的素子と比較して、特に薄く、必要な場合にはまた特に柔軟である。したがって本発明による電気化学的素子は、薄さとできるかぎり高い柔軟性が望ましいこれらの用途、つまりたとえばいわゆるスマートカードあるいはスマートタグに対して特にうまく使うことができる。
【0023】
本発明のさらなる特徴は、従属の請求項に関連する好ましい実施例の図面および以下の説明から明らかとなろう。この場合、個々の特徴はそれら自身の権利で、あるいは本発明の1つの実施例の中にそれらの2つまたはそれ以上を互いに組み合わせた形で、実現することができる。説明した特定の実施例は、説明目的だけに使用して本発明の理解を助けることを意図しており、限定的と考えてはならない。以下の文章で説明する図面もまた現在の説明の一部であり、手早く参照して明らかにするためのものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、いわゆる個々のセルの形の、本発明による電気化学的素子を示す。この場合、いわゆるコレクタ/出力導体3,4は、平坦な基板1に電気的に非伝導性の薄いプラスチックフィルム2の形で適用される。これらは基板1に電気的に伝導性のペーストの形(好ましくは銀、銅、ニッケル、アルミニウム、インジウム、ビスマスあるいはグラファイト)で適用され、それから乾燥される。このようなペーストは、たとえば熱的にあるいは化学的に硬化できるポリマーの形の結合剤を通常含んでよい。
【0025】
すでに最初に説明したように、コレクタ/出力導体3,4の適用は、電気的に伝導性のペーストに限定されない。コレクタ/出力導体3,4は、同様に薄い電気的に導電性のフィルム(金属フィルム、導電性の物質で満たしたプラスチックフィルム)を含んでもよい。これらのフィルムは、好ましくは基板1に冷たいあるいは熱い接着剤の接着で接続される。さらにコレクタ/出力導体3,4はまた、従来のメタライゼーションプロセス(真空デポジション、スパッタリング、電気化学的デポジション)を使って作ることができる。
【0026】
カソード5(つまり対応する電極材料)が図1に示すようにコレクタ3に適用される。この適用は、好ましくは印刷できるペーストを使って実行される。しかし別個に作成したカソードフィルムを適用することも可能である。
アノード6(つまり対応する電極材料)がコレクタ4に適用される。カソード5とアノード6の両方はコレクタ/出力導体3,4と電気的接触を作る。この場合、電気化学的素子の適切な全体設計に伴って、これらを大まかに置けば充分である。またコレクタ/出力導体3,4と電極5,6との間に、しっかりした接続を作ることが可能である。
【0027】
ゲル状電解質7は、電極(出力導体3を伴うカソード5;出力導体4を伴うアノード6)の上に配置され、網目構造あるいはフェルト8によって固定される。この場合、フェルト8を伴う電解質7は、カソード5とアノード6との活性電極材料を覆う。
【0028】
さらなるプラスチックフィルム2が、フェルト8を伴う電解質7の上に配置され、一方では電解質7を完全に覆い、他方ではまた電解質7の寸法を越えてはみ出ている。このような方法で基板1とプラスチックフィルム2とが筐体を形成し、これは基板1とプラスチックフィルム2との間にある機能部品、特に活性電極(5,3;6,4)に対して密封を形成して閉じている。
【0029】
図1は、本発明による電気化学的素子の改良した薄型設計を明確に示す。実際の設計は、3つのレベルのみ(互いに重ねて配置された)、特に基板1のレベル、電極(互いに並べて配置された、出力導体3を伴うカソード5、出力導体4を伴うアノード6)のレベルおよび電極のレベルの上の電解質のレベルを含む。図1は4つのレベルを持つ好ましい実施例を示すが、ここではさらに電解質のレベルの上のプラスチックフィルム2がまた自然のレベルを形成し、基板1と共に、機能部品伴う実際の2つのレベルに対して密封を形成して閉じている筐体を形成する。
【0030】
図2は、対で並んで配置された電極を持つ3個の個々のセル(つまり図1に示すような3個の個々のセル)が互いに電気的に伝導性の経路(導体路9)を経由して接続されている電気化学的素子(電池)の概略設計を示す。これによってより高い電圧が使用できる。このような直列接続で、本発明により特に容易にまた特に低コストで製造できる、30Vあるいはそれ以上の電圧を持つ電気化学的素子を得ることができる。
【0031】
図3は、対で並んで配置された電極を持つ4個の個々のセル(図1参照)を持つ電気化学的素子(電池)の概略設計を示す。この場合、これらの4個の個々のセルは直列と並列の両方で接続されている。この設計により異なる全体電圧および容量、ならびに達成すべき負荷能力が得られる。
【0032】
図4は、本発明による製造プロセスの詳細を概略的に示す。この場合、本発明による電気化学的素子は、基板12(キャリア細長片)の上に、1列で(図示のように)あるいはそうでなければ複数の列で(図示されていない)無限細長片の形で無限に製造することができる。コレクタ/出力導体として使用される導体路10および11は、実際に個々のセルを製造するプロセスの前でも基板12に適用される。それから(図1に関連して説明されているように)実際の電極あるいは対応する電極材料が、この目的のために意図する場所において導体路10および11に適用される。電解質がそれから適用され、フェルトの手段によってゲル状の電解質として安定化される。図1に関する情報に基づき、実際の電極および電解質には図4において参照符号が与えられていない。最後に、被覆フィルム13の形のさらなるプラスチックフィルムが、電解質の上に適用され、それから基板12上のそれぞれの個々のセルをこれと共に筐体の形で閉じる。
最終的に、必要な場合、個々のセルはふたたび分離することができるが、あるいはそうでなければ複数の次のプロセス段階に送ることができる。
【0033】
この文脈において、図4に示すように、またこれとは別に、全体的な一般形状において基板12と被覆フィルム13の両方は、粘着フィルムから製造することができることにも言及しなければならない。一方では、これは被覆フィルムをそれぞれの完成した個々のセルに適用するのがより容易にする。他方では、製造した個々のセルの分離後に必要な場合、基板12は接着剤の接着により、たとえば印刷回路基板の上に、追加の接着剤なしに、直接取り付けることができる。
【実施例】
【0034】
1.5V電池システムを製造するために、図1に説明する電気化学的素子を製造するのに以下の手順が採用される。この場合の目的は、亜鉛・炭素システムを製造することである。このシステムは単に例のために説明するが、比較的低コストを特徴としている。
【0035】
最初に、基板用および被覆フィルムとして使用されるさらなるプラスチックフィルム用に、適切なフィルムを製造する。この場合、小さいガスおよび水蒸気拡散率を持つプラスチックフィルム、つまり特にPET、PPあるいはPEから成るものが好ましい。これらのフィルムを続いて互いにホットシールすることを意図する場合、製造されるベースフィルムは、さらに低溶融点の材料で被覆できる。たとえば、これはPEに基づく共重合体から成る溶融接着剤であってもよい。
【0036】
負極(アノード)を作るために、それからまずコレクタを基板の上に(銀、銅あるいはグラファイトを基にする)導電性接着剤の形で印刷する。銀、ニッケルあるいはグラファイトを基にする導電性接着剤を正極(カソード)用のコレクタ/出力導体材料として引用し、同様に印刷することができる。
【0037】
特に薄いコレクタ/出力導体を作ることが目的である場合、真空めっきも使用できる。この場合、アノード用に銅、カソード用にニッケルが、コレクタ/出力導体として高真空中で蒸着される。
【0038】
アノード用の電極材料が、それから適切なコレクタ/出力導体の上に印刷される。これを行うのにスクリーン印刷を使用するのが好ましい。電極材料は、亜鉛粉末と、適切な結合剤と、および適切な溶剤とを含む亜鉛ペーストである。カソード材料を他のコレクタ/出力導体に印刷するためのペーストもまた、対応するやり方で使用される。このカソード材料は、適切な結合剤と適切な溶剤と共に、導電性材料として二酸化マンガン(MnO2)、カーボンブラック、およびグラファイトまたはそのいずれかから成る。ここでもまた好ましくはスクリーン印刷が使用される。
【0039】
最後に、次の方法段階で電解質が適用される。この電解質は、好ましくはゲル状のペーストで、たとえば塩化亜鉛の水溶液から成り、その場合この溶液は完全にあるいは部分的に前もって乾燥しておくことができる。この電解質は、同様に好ましくは印刷プロセスで適用される。電解質は(図1で示すように)好ましくは両方の電極表面を完全に覆う。図1で同様に示すように、電解質はフェルト様あるいは網目様の材料で補強し、安定化することができる。
【0040】
このように作った個々のセルは、それから例のように第2の(さらなる)プラスチックフィルムで覆われ、つまり筐体の形に密封される。述べたように、これは好ましくはホットシールプロセスを使って行われる。図4と併せて説明したように、好ましくは基板用とさらなるプラスチックフィルム用に粘着フィルムを同様に使用することが可能である。またこれにより、個々のセルあるいは複数の個々のセルから形成される電池を、電流が供給されるユニットの対応する基体に特に簡単に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、電極が互いに並んで配置されている個々のセルとしての、本発明による電気化学的素子の概略設計を示す。
【図2】図2は、3個の個々のセルを持つ、本発明による電気化学的素子の概略設計を示す。
【図3】図3は、4個の個々のセル(直列および並列に接続された)を持つ、本発明による電気化学的素子の概略設計を示す。
【図4】図4は、基板として使用される無限細長片上に個々のセルを形成するための製造プロセスの図式的詳細を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦で電気的に非伝導性の基板(1)上に互いに並んで配置され、かつイオンを伝導できる電解質(7)を経由して互いに接続されている、少なくとも1個の正極と少なくとも1個の負極(5,6)とを有する、電気化学的素子。
【請求項2】
前記平坦な基板(1)がフィルム、特にプラスチックフィルムであることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学的素子。
【請求項3】
前記電気化学的要素が、出力導体(3,4)として使用され、かつ好ましくは前記基板(1)と前記電極(5,6)との間に配置される導体路を有することを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の電気化学的素子。
【請求項4】
前記電気化学的要素が、導体路として電気的に伝導性のフィルム、特に金属フィルムを有することを特徴とする、請求項3に記載の電気化学的素子。
【請求項5】
前記電気化学的要素が、従来のメタライゼーションプロセスにより前記基板に適用できる導体路としての薄い金属層を有することを特徴とする、請求項3に記載の電気化学的素子。
【請求項6】
前記電気化学的要素が、印刷できるペーストとして前記基板に適用される導体路を有することを特徴とする、請求項3に記載の電気化学的素子。
【請求項7】
前記電気化学的要素が、印刷できるペーストとして前記基板に適用される電極を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の電気化学的素子。
【請求項8】
前記の少なくとも1個の正極と前記の少なくとも1個の負極とが前記基板上で互いに1μmから10mm、好ましくは100μmから1mmの間の距離をおいて配置されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の電気化学的素子。
【請求項9】
前記電気化学的要素が、ゲル状の電解質を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の電気化学的素子。
【請求項10】
前記電解質が、フェルト(8)内に固定されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか、特に請求項9に記載の電気化学的素子。
【請求項11】
前記電解質が、好ましくは前記電極を完全に覆う層の形であることを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載の電気化学的素子。
【請求項12】
前記電気化学的要素が、前記電解質(7)および前記電極(5,6)またはそのいずれかを、少なくとも部分的に、しかし好ましくは完全に覆うプラスチックフィルム(2)をさらに有することを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載の電気化学的素子。
【請求項13】
前記のさらなるプラスチックフィルムが前記基板と共に、前記電解質と前記電極とを取り囲み密閉を形成する筐体を形成することを特徴とする、請求項12に記載の電気化学的素子。
【請求項14】
前記電気化学的要素が、前記基板上に対で互いに並んで配置されている、複数の、好ましくは多数の正極と負極とを有することを特徴とする、請求項1から13のいずれかに記載の電気化学的素子。
【請求項15】
前記基板が、前記基板上に配置された前記電極が直列および並列またはそのいずれかで接続される際に経由する導体路(9)を有することを特徴とする、請求項1から14のいずれかに記載の電気化学的素子。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載の電気化学的素子の製造方法であって、前記電極が、基板として使用され、好ましくは連続的に出力導体(10,11)を備える無限細長片(12)に適用されることを特徴とする、方法。
【請求項17】
前記電極が印刷されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−535194(P2008−535194A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504684(P2008−504684)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003132
【国際公開番号】WO2006/105966
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(502350250)ヴァルタ マイクロバッテリー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (15)
【出願人】(501296748)アクレオ アーベー (6)
【Fターム(参考)】