電気化学的電池
本発明は、陰電極と、導電性塩を含む電解質と、陽電極とを備える電気化学的電池に関する。前記電解質はSO2系であり、前記陽電極と前記陰電極との間の空間は、電池の充電時に、陰電極上に析出する活性物質が前記陽電極に接触してその表面上で局所的に制限された短絡反応が起こるように形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰電極(陰極)と、導電性塩を含む電解質と、陽電極(陽極)とを備える電気化学的電池に関する。特に、本発明は、活性物質が、電池の充電中に陰電極上および/又は内に保存されるアルカリ金属であるアルカリ金属電池に関する。但し、前記活性物質は、別の金属、特に、アルカリ土金属、又は、周期律表の第2群の金属とすることも可能である。前記電解質の導電性塩は、前記活性物質の金属の陽イオンと適当な陰イオンとを含む。アルカリ金属電池の場合、LiAlCl4等のアルカリ金属の四ハロゲン化アルミン酸塩が特に好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
以後、アルカリ金属電池、特に、リチウム電池について特に言及する。しかし、これは本発明の一般的適用性を制限するものと解釈されてはならない。
【0003】
このタイプの電池においては、それらの厚みよりも遥かに大きな主表面を有する複数の層が互いに上下に配置されている構成が典型的である。それらは、ほぼ同等サイズの主表面寸法を有し、電池内において、サンドイッチ状に上下に配置されている。一般的な形状は、典型的には、直方体状ハウジングと、直線状層とを有する角柱状電池と、内部で複数の層がロール状に巻回された円筒状電池である。
【0004】
典型的な電池は、少なくとも三つの層、即ち、陰電極と、陽電極と、これら二つの電極を電気的かつ物理的に分離する分離層とを有する。前記分離相は困難な要件を満たす必要がある。即ち、
それは、陽電極と陰電極との間の電気的分離を提供しなければならない。そのような電気的分離無しでは、電池の作動は不可能である。
それは、両電極間の液体電解質の均等な分布に寄与しなければならない。
それは、陰極チャンバと陽極チャンバとの物理的分離を提供しなければならないが、それと同時に、必要な電解質の輸送と、電池の前記二つの部分チャンバ間の気体の輸送も提供する必要がある。
それは、両電極間の短絡を確実に防止しなければならない。これは、電池の充電中に、活性金属が電極表面に析出する場合、特に当てはまる。
【0005】
後者の問題は、活性物質が、特に、複数の充電/放電サイクル後において、平坦な表面を有する平滑層の上ではなく、部分的にフィラメント状の構造上に析出する場合には、特に重大である。特にアルカリ金属電池、特にリチウム電池の場合、通常、実質的に等しい直径を有する(特定の電極を備える特定の電池について)枝分かれしてないフィラメントが、電池の充電中に形成される。これらのフィラメントは、互いに絡み合いながら成長し、ウィスカと呼ばれている。ウィスカの形成は、自己放電反応の結果として、反応活性金属の表面上に生成される薄いカバー層に拠るものである。この層は、完全に均質ではなく、それによって、電解析出した活性金属が、そのカバー層を通して薄い点において、そして、更に、特定のフィラメントの端部において優先的に成長する。
【0006】
前記セパレータは、そのようなフィラメント状構造の形成により強い物理的応力を受ける。更に、適当な材料の選択は、更に別の要件によって制限される。即ち、
セパレータは、電池中において不活性でなければならない。
それは、高エネルギ密度を可能にするには可能な限り薄いものでなければならない。
電池の性能と、その寿命は、電解質イオンに対するセパレータの透過性によって部分的に決まる。
セパレータのコストは許容可能なものでなければならない。
【0007】
完全に機能するセパレータは、リチウムイオン電池とリチウムポリマー電池とにおいて特に重要である。もしもこれら電池において、リチウム金属が陰電極の表面上に析出する場合、この反応性の高い金属と陽極との接触は勿論回避されなければならない。なぜなら、そのような接触によって起こる短絡によって、「熱暴走」と呼ばれる制御されない一連の反応が直ちに起こるからである。そのような電池の有機電解質溶液は、制御不能に消費したり、あるいは破裂すらするであろう。これらのリスクにより、これらのタイプの電池は、通常、比較的小型のものだけが製造されている。更に、追加の安全手段、主として電子的安全手段が使用される。
【0008】
これらの電池タイプにおいて、陰電極は、通常、「挿入電極」である。この用語は、一般に、活性金属をその内部において、電池の充電、放電中に電解質との交換が容易となるように含む電極を指す。リチウムイオン及びリチウムポリマー電池では、陰電極がグラファイト系の挿入電極であり、導電性塩の金属イオンは、電池の充電中にその内部に蓄えられる。可能であるならば、電池は、活性金属が電極の表面上に析出する作動状態が回避されるように作動されるべきである。しかし、これは、実際には、電池の過剰充電と比較的高い電流(特定の電池に対して有効な限界値以上)での充電を確実に回避する複雑な電子手段を使用することによってのみ達成されるものであるかもしれなない。電子装置は極めて精度が高く(例えば、4.2V±0.01Vのカットオフ電圧)、かつ信頼性が高い(一億のパーツで1つの欠陥品以下)ものでなければならない。そのような手段によってコストは大幅に増大する。それにも拘わらずいくつかのリスクが残る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これに基づき、本発明は、その特定の電池タイプの有利な特性(リチウム電池の場合は、特に、その比類ない高エネルギ密度)が完全に保持されるか、更には改善されるものでありながら、可能な限り最低のコストで可能な限り最高の安全基準を満たす充電可能な電気化学的電池、特に、アルカリ金属電池、更に、とりわけ、リチウム電池を提供することをその技術課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、本発明の第1態様においては、陰電極と、導電性塩を含む電解質と、陽電極とを備える電気化学的電池であって、前記電解質がSO2系であり、前記陽電極と前記陰電極との間の空間が、電池の充電時に、陰電極上に析出する活性物質が前記陽電極に接触してその表面上で局所的に制限された短絡反応が起こるように形成されている電気化学的電池によって達成される。
【0011】
本発明の関連において、SO2系の電解質を含む電池は、陰極の表面上に析出した活性金属が陽電極と接触する時に、完全に予想外の短絡現象を示すものであることが実験によって示された。もし、適当な手段によってそのような短絡が局所的に制限されるのであれば、この場合に起こる反応は「熱暴走」を引き起こさないし、不可逆的反応も起こらない。これは、活性金属の一部が不動態化され、電池の充電能力が低下するためである。むしろ、電池の特性は、この種の局所的に制限された短絡、及びそれに関連する反応によって全く悪影響を受けるものではない。従って、本発明の電池は、セパレータ無しで作動する。その代わり、それは、電池の充電中における陰電極上に析出した活性物質と陽電極との局所的な接触が合目的的に許容されるように構成される。これは現在の典型的な電池構造とは大幅に異なるものである。
【0012】
上述したように、これらの観察は、SO2系の電解質を有する電池に適用される。ここで、電解質は、それがSO2を低濃度の添加物として含む場合のみならず、この電解質に含まれ、電荷輸送を引き起こす前記導電性塩のイオンの移動性が、SO2によって少なくとも部分的に確保される場合に「SO2系」と称される。この点に関する追加情報は、ここに引用するWO 00/79631から得ることができる。
【0013】
本発明がそれに基づくところの実験によれば、前記局所的短絡とその結果起こる電解質の加熱とによって、活性金属とSO2との化合物の形成、リチウム電池の場合は亜ジチオン酸リチウム(Li2S2O4)の形成がおこる。この化合物は、溶解性が比較的悪いものではあるが、前記反応(LiとSO2)において消費される出発生成物のいずれも電池機能から恒久的に撤退されるものではない。なぜなら、亜ジチオン酸塩の形成は、電池機能にとって有利な均衡をもたらすのに十分に急速な消滅反応によって補填されるからである。この点に関するより詳細な情報は、WO 00/79631から得ることができる。
【0014】
更に、陽電極との反応が局所的短絡の近傍で起こるかもしれない。これは、陽電極が金属酸化物、特に原子番号22〜28の遷移金属の酸化物を含む場合の電池に特に当てはまる。前記酸化物は、好適には、前記活性金属と、上述した遷移金属の1つと、酸素とから成るインターカレーション化合物として提供される。とりわけ、遷移金属としては、コバルト、ニッケル、鉄が特に好ましい。格子構造中に二又は三種類の遷移金属を含む二成分系又は三成分系の金属酸化物インターカレーション化合物も実用的重要性を有する。本発明において特に好適なこれらの電極物質についての更なる詳細は、再び、ここに引用するWO 00/79631とUS 4,567,031を参照することができる。例えば、酸化コバルトをベースとする陽電極が使用される場合、本発明者等の知見によれば下記の反応が前記局所的短絡によって起こる。
【0015】
CoO2+Li → LiCoO2
【0016】
この反応は、電池の放電中における活性金属のインターカレーションに対応する。
【0017】
主として二つの作動状態において、金属リチウムは、それが、もしもセパレータが無い場合は、即ち、特に高い電流での充電中、又は、過剰充電中、即ち、充電中に加えられる電荷の量が陰電極の能力を超える場合に陰電極が陽電極に接触する可能性のある状態の陰電極上で析出が起こる。これらの作動状態においては、電池の放電に対応する短絡反応は不利でないどころかむしろ有利である。このように前記局所的短絡は有利な結果をもたらすので、「有益な短絡」と呼ぶことができる。
【0018】
以上要するに、本発明の実験試験中に、無セパレータ電池を使用して、安全性と電池データ(サイクル安定性、容量等)との両方に関して非常に良好な結果が達成されることが示された。
【0019】
それらのうち、とりわけ下記の利点が達成される。
【0020】
非常に小さな孔を有し、これらの孔が詰まる傾向があるセパレータが存在しないので電池の内部抵抗が減少する。
従来の電池においては、セパレータの損傷に関連するリスクが存在しないので、安全性が大幅に改善される。
典型的なセパレータ材料は大きなコスト要因であることから、コストが低減される。
電池の重量と体積が減少するので、より大きなエネルギと電力密度を達成することができる。
電池表面上の活性金属の析出に関連するリスクが無いため、高電流で、従って、急速に、電池を充電することができる。
標準的な生産設備、例えば、リチウムイオン電池用の生産設備を使用することができる。
【0021】
前記短絡、及びこれら短絡から生じる加熱によって引き起こされるすべての反応を適当な手段によって局所的に制限することが必要である。
【0022】
この目的を達成するために、好適には、多孔性絶縁層が提供され、これは、電池の充電中において前記陰電極上に析出する活性物質が、この絶縁層の孔を通って、陽電極の表面まで成長することができるように、配置使用される。前記多孔性絶縁層は、好ましくは、前記陽電極と、これら両方の表面がその全面積に渡って互いに接触した状態で、直接接触状態とされる。
【0023】
前記絶縁層の孔は、前記層を通り、陽電極の表面への活性物質の所望の成長を可能にするのに十分大きなものでなければならない。更に、陽極に対する構造と配置は、活性物質と陽極との間の接触が電極表面の局所的部位(一部領域)に制限され、追加のリチウム(これは、前記多孔性絶縁層中又は、陰電極へのその境界の他の部分に存在する)の反応を引き起こさない局所的短絡のみが起こるようなものでなければならない。もしも局所的短絡によって更なる短絡がトリガーされれば、大きな熱増加によってリチウムの制御されない反応、即ち、「熱暴走」を予期しなければならなくなるであろう。
【0024】
前記多孔性絶縁層の適当な構造は、各特定の電池構造それぞれに対して個々に決定しなければならない。リチウムの析出中に形成される前記ウィスカの径は電池ごとに異なることを考慮すべきである。これは、異なる電解質で操作する電池を比較することによって特に明確に示される。もしも、有機電解質が使用されるのであれば、そのウィスカはSO2系の電解質が使用される場合よりも、一般に遥かに大きな径を有するものとなる。従って、特定の多孔性を有する層によって、第1の電池構造におけるウィスカの貫通(貫通成長)を防止し、従って、セパレータとして作用するものが、別の電池では、この同じ層が析出された活性物質によって貫通されてしまうということは十分可能である。
【0025】
この理由及びその他の理由により、適当な絶縁層の孔径についての数値又はその他の量的情報を提供することは実際には不可能である。更に、「平均孔径」や「最大孔径」といった多孔性層材料の製造業者の典型的な仕様データは、本発明においては、適当な層材料を特徴付けるために使用することはできない。というのは、孔サイズ分布が非常に重要であるからである。例えば、非常に微細な孔を高い比率で有するが、活性物質がそれを通して成長可能なより粗い孔を十分な数有する層が適当であるかもしれない。但し、ここに記載される作用を達成するための層材料の適性は、以下に詳述するように、実験的に問題無くテストすることができる。
【0026】
前記多孔性絶縁層は、例えば、自己支持型膜、バインダによって接続された、粒子、ファイバ、マイクロチューブから成る多孔性複合構造、更には、緩い注入可能な製品等として実施することができる。いずれにせよ、前記層が十分に湿潤化され、電解質溶液がその層に容易に貫通するように構成することが有利である。前記多孔性絶縁層は、好ましくは、特に、酸化物、炭化物、又は、化学的に安定なケイ酸塩から形成可能な、粒子状、ファイバ状、又は筒状の多孔性材料を含む。特に好適なバインダは、テトラクロロエタン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンのターポリマーである。
【0027】
前記多孔性絶縁層は、必ずしも、電池の他の機能層から区別され得る別層とされる必要はない。これは、本発明の一好適実施例に特に当てはまり、そこでは、前記陰電極は、例えば、金属シート、発泡材、又はファブリックの形態である平坦な導電性基材と、この基材に接合された非導電性析出層との組み合わせからなり、前記非導電性析出層が、前記基材の表面上に析出する活性物質が、その孔を貫通して、更にその内部に析出するように形成位置決めされる。そのような構成は、この点に関して参照されるWO 02/09213から知られている。但し、そこに記載されている電池構造とは異なり、本発明によれば、前記析出層と陽電極との間には、活性物質に対して不透過性のバリア層は存在しない。前記バリア層の不在によって不可避的に生じる前記短絡の局所化にとって有利な前記多孔性絶縁層は、前記析出層と一体の(区別できない)構成要素によって形成することができ、或いは、これを、析出層と陽電極との間に延出して、析出層の全面に連続的に接合される別層によって形成することも可能である。
【0028】
一般に、本発明は、陰電極が、電池の充電中において、前記導電性塩の陽金属イオンがその内部に取り込まれる電池構成において特に有利である。このタイプの電池では、電池の正常な充電中、最初は、活性金属の電極表面上の析出はなく、むしろ、充電中の活性金属の保存が陰電極の構成要素である構造の内部で起こる。この条件が当てはまる電極タイプを、ここでは、総称的に「挿入電極」と命名する。以上説明した構造、即ち、平坦な導電性基材とそれに接合された析出層とを有し、その内部に活性物質が充電中に取り込まれる孔を有する構造が、この一般的定義によって挿入電極として理解される。
【0029】
別のバリエーションに拠れば、前記陽金属イオンの取り込みは、陰電極の構成成分である導電性電極物質の内部のことを指す。そのような導電電極物質の重要な具体例は、炭素を含有する電極、特に、リチウムイオン電池にも使用されているようなグラファイト電極である。この場合、リチウムは、充電中、多孔性キャビティへの析出によってではなく、前記導電性電極物質の格子構造へのインターカレーションによって蓄えられる。上述したグラファイト電極に加えて、Li4Ti5O12系のリチウムインターカレーション電極、又は、合金電極をそのような電極材料の具体例として挙げることができる。
【0030】
このタイプの電池構成においては、陰電極と陽電極との間(即ち、それらそれぞれの導電電極物質)間の直接的電気接触、従って、短絡を避けるために、別体の多孔性絶縁層を提供することが必須である。そのような構造については、後に図面を参照して更に詳細に記載される。
【0031】
本発明の第2の態様は、電気化学的電池の製造方法、特に、そのような方法中に起こる洗浄工程に関する。この方法において、電池の電極が、電極に接合されたOH−イオンを除去することによって、その機能のために最適化される。この方法は、本発明の前記第1主態様による電池の製造に特に適しているが、それはそれから独立した重要性も有する。
【0032】
前記第2主態様によれば、前記OH−イオンは、前記電極から、これらOH−イオンと反応する第1洗浄成分を含有する洗浄剤を使用して除去される。それは、電極と、それに結合したOH−イオンが、前記第1洗浄成分との反応によって電極表面から除去され、前記洗浄剤の成分又は電池の機能の障害となりうる反応生成物が電極から除去されるように接触される。
【0033】
無水電池、特に、SO2系電解質で作動する電池の機能のためには、電極構造内に存在する水残滓(水分子とH+とOH−イオンとの両方)が完全に除去されることが非常に重要である。これは、上述した挿入電極が使用される場合に特に重大な問題となる。
【0034】
本発明の関連において、化学結合した水の存在によって電極の不動態化が起こり、それによって電極プロセスが阻止されることがわかった。挿入電極、特に、アルカリ金属インターカレーション電極(例えば、金属酸化物インターカレーション化合物からなる、WO 00/79631から知られている、上述したタイプのもの)の場合、これは、電池の充電中のアルカリ金属の除去、および/又は放電中のインターカレーションに関連する。前記不動態化によって、電池の内部抵抗が増大する。
【0035】
本発明者等は、不動態化は、電極の表面分子と水(例えば、環境湿度からの)とが反応し、それによって、活性金属の水酸化物、即ち、アルカリ金属Aの場合は、AOHタイプの化合物を含むカバー層が形成されることに起因する可能性があることを見出した。ほんの僅かな量の水でも、水酸化物カバー層が形成される。本発明者等の知るところ、カバー層の形成は、その活性物質が金属酸化物インターカレーション化合物、特にLiCoO2をベースにするものである電極の製造中ではほとんど不可避である。これは、電極の外表面のみならず、(多孔性電極材料の典型的な場合)その内表面(前記孔の内部)にも関係する。前記電極の不動態化は、OH−イオンと反応し、以後ここで、第1洗浄成分と称される前記洗浄成分との反応によって除去することができる。前記第1洗浄成分は、以後、活性化成分とも称される。但し、これは限定的なものと解釈されてはならない。
【0036】
本発明の前記第2主態様は、実質的にOH−イオンを有さない表面を有する挿入電極、特に、インターカレーション電極にも関する。好ましくは、前記電極は、H+イオンも実質的に含まない。そのような電極を有する電気化学的電池も、本発明の1つの課題である。この場合、「OH−イオンおよび/又はH+イオンを実質的に含まない」とは、これらイオンの存在によって引き起こされる電極の不動態化、および/又は、その結果生じる容量の損失が、電池の電極の必要な実用的機能がそれによって損なわれない程度に低減されるということを意味するものと理解される。後に詳述するように、不動態化によって、充電及び放電サイクル中に電池の内部抵抗の連続的増加が起こる。電極のそれぞれの性質は、例えば、これも又後に詳述するように、サイクリックボルタモグラムを使用することによって観察することができる。活性物質の表面における水酸化物イオンの不在は、好ましくは、前記第1洗浄成分を使用した上述の方法によって達成される。
【0037】
本発明の関連において、ここに記載のタイプの挿入電極は、化学的に結合した水の含有率が約10,000ppm(即ち、電気化学的活性電極物質、特に、LiCoO2に対して1重量%のH2O)を有するものであることが示された。本発明によって最適化された電極は、5000ppm以下、好ましくは、1000ppm以下、特に好ましくは100ppm以下、非常に好ましくは10ppm以下の水含有率を有する。
【0038】
無プロトンルイス酸が、第1洗浄成分として特に好適であることが判った。この用語は、G.N.Lewisによって定義された酸特性(即ち、電子受容体である)を有するが、H+イオンを含まない物質のことを言う。ルイス酸の好適具体例は、AlF3,BF3,CO2,CS2及びGaCl3である。一般に、本発明の目的に対するルイス酸の好適性は実験によってテストすることができる。
【0039】
好適なルイス酸は、それらの強度に基づき予め選択することができ、これは、又、その酸の形成する原子(例えば、AlF3の場合はAlとF)の電気陰性度値の差から推定することができる。この差が大きければ大きいほど、そのルイス酸は強い。
【0040】
前記洗浄剤は、通常、適当な溶媒中に前記第1成分を含有する液体である。前記溶媒としては、特に、四塩化炭素(CCl4)等の非プロトン性液体が適当である。前記溶媒の必要な水の不在性は、モレキュラーシーブ、特に、大きな表面を有する金属アルミノケイ酸塩をベースとするものによって達成することができる。原則的には、気体又は超臨界流体、特に、超臨界CO2系のものも、前記溶媒として使用可能である。前記洗浄成分自身は流体(例えば、超臨界CO2)又は気体(例えば、CS2)とすることができる。そのような場合において、前記洗浄剤は、明らかに追加の溶媒を含有する必要はない。
【0041】
前記洗浄剤中の前記活性成分の濃度は可能な限り高いものとするべきであり、その上限は、溶液の場合、活性成分の溶解性から得られる。通常、飽和溶液が好ましい。但し、原理的には、より低い濃度でも活性効果は可能である。適当な濃度は、特に洗浄処理の持続時間との関連において、実験的に決められるべきであり、これは、勿論、使用されるルイス酸の作用の関数でもある。前記洗浄剤は、実際には下記の条件を満たさなければならない。
もしも前記方法が、電池の製造中において、前記洗浄剤の少なくとも一部が挿入電極内に残るように適用される場合には、その洗浄剤は、電池の作用に対して無害のものでなければならない。有害な成分に対しては、簡単で完全な除去性が必須である。
前記洗浄剤は、前記電極材と適合性があるものでなければならない。特に、それは、電極作用の障害となるような如何なる反応も起こすものであってはならない。
【0042】
好適実施例によれば、前記製造方法において挿入電極を最適化するために第2洗浄成分が使用される。それは、H+イオンと反応し、洗浄剤中の挿入電極と、その内部に結合したH+イオンが、前記第2洗浄生物との反応によって電極の内部から除去されるように接触される。本発明の関連において、挿入電極、特に、上述したタイプのインターカレーション電極の特性は、H+イオン(プロトン)が、電極材料に結合する場合にも損なわれ得ることか判った。プロトンは、挿入電極のアルカリ金属イオンと交換し、活性金属(特に、アルカリ金属)を受け取る能力が低下し、それによって、電池の電気容量を減少させる。プロトンは、前記第2洗浄成分によって、挿入電極から抽出される。電池の取り込み容量、従って、その蓄電容量もそれによって改善される。
【0043】
特に、挿入電極中に結合されたプロトンとイオン交換反応する塩が、前記第2洗浄成分として好適である。それの具体例には、ハロゲン化物、特に、アルカリ金属、アルカリ土金属、又は周期律表の第3主群の金属のフッ化物がある。一般性を限定することなく、ここで、「洗浄塩」という用語を以後第2洗浄成分のために使用する。
【0044】
洗浄成分と、それらの前記製造方法における使用法との両方において種々のバリエーションが可能である。例えば、前記洗浄塩の少なくとも一部分を前記電極物質、従って、その製造中に、電極内に予め導入することができる。前記第1および/又は第2洗浄成分が前記洗浄成分に直接導入されない方法も使用可能である。むしろ、これらの成分が、適当な前の反応物を使用してインサイチュで形成されることも勿論可能である。具体例として、それらから洗浄塩を、ハロゲン化物、好ましくは、フッ化物を切断することによって形成することが可能な塩が挙げられる。これは、具体的には、PF6−,AsF6−,BF4−及びAlF4−の陰イオンの塩を含む。洗浄塩のインサイチュ形成用の出発物として有機塩も好適に使用される。
【0045】
この製造方法の一好適実施例によれば、OH−及びH+イオンは、それぞれにおいて別の(好ましくは、異種でもある)溶媒が使用される二つの別々の工程での二つの段階で除去される。
【0046】
具体的には、第1段階では、前記挿入電極は、CCl4等の高揮発性非プロトン性溶媒中に無プロトンルイス酸を含有する洗浄剤と接触され得る。この洗浄剤は、OH−イオンが電極から洗浄剤中に移動完了するまで反応させられる。その後、それは除去される。
【0047】
第2段階では、前記電極を、前記第2洗浄成分を含有する第2洗浄剤と接触させる。プロトンの電極から洗浄剤内への移動に必要な反応の完了後、前記第2洗浄剤も除去することができる。その結果得られる最適化された電極は、勿論、その性質が水とその成分OH−とH+との吸収によって再び劣化することがないように無水環境でさらに処理されなければならない。
【0048】
原則的に、前記特定電池の電解質も、洗浄液の溶媒として使用することが可能である。特に、適当な洗浄塩を電解質と共に電池内に導入することが好ましい。挿入電極中に含まれるプロトンとのイオン交換によって形成されるHFやHCl等の化合物は揮発性であるので、それらは自発的に逃げる。これは、部分真空(真空抜き)を適用することによって、加速することができる。そのような場合、前記洗浄液は、電池から除去される必要はなく、その内部に電解質として残る。洗浄塩の残り部分は、(電極からのH+イオンの抽出に加えて)別の好適な作用を有する。
【0049】
前記電極は、原則的に、電池の内部と外部との両方において前記洗浄剤によって処理することができる。前記二段階方法の場合、前記第1方法段階(OH−イオンの除去)を電池の外で行い、その後、電池に部分的に最適化された電極を設置し、前記第2洗浄段階(H+イオンの除去)を電池内で行うことが好適である。
【0050】
本発明の第3の態様は、前記電池への電解質溶液の充填に関する。DE 19911800 C1において、電気化学的電池を充填するための装置と方法が記載されており、それらによって、SO2系電解質に関連する特殊な問題が解決される。このタイプの電解質は、室温で気体状である溶媒(SO2)での溶媒和塩である。その結果生じる特殊な問題を克服するために、カニューラを電池の入れ口を通して気密状に電解スタックまで案内しなければならない複雑な装置が提案されている。これには、カニューラ端部によって電極スタックが損傷を受け、内部短絡が発生するというリスクがある。更に、そのように薄いカニューラは、結晶化した導電性塩によって容易に詰まるかもしれない。充填のために、電池は真空抜きされ、バルブの切換後、電解質溶液を電池内に吸引する。この場合、電解質溶液と電池内部との間の大きな圧力差が不利である。溶媒(SO2)は、最初は電解質溶液から気化する。導電性塩の結晶化、従って、充填装置の目詰まりの危険性が大幅に増大する。
【0051】
これに対して、本発明は、好ましくは、二つの他の主要な態様との関連で使用されるものではあるが、それ独自の重要性も有する遥かに単純な方法を提案するものである。この場合、電解質溶液の移送は、以下の部分工程を含む。
ハウジングの内部をガス状SO2で満たす。
前記ハウジングの充填開口部を、前記ガス状SO2が電解質溶液中に容易に溶解するようなSO2濃度の電解質溶液を含む容器に気密状態に取付ける。
前記電解質溶液を、SO2の溶解から生じる部分真空状態による駆動によって前記ハウジング内に流入させる。
【0052】
より詳細な説明は、以下、図面を参照して行われる。この方法は、単純な方法で電池のSO2系電解質での完全な充填を可能にする。
【0053】
第4の主要な態様によれば、本発明は、陰電極上のカバー層の形成、特に、SO2系電解質を有する電池における電池の一回目の充電中での電気化学的条件によるものから生じる問題に関連する。本発明の関連において、このカバー層の形成が、電池の放電容量の大幅な低下の原因であり、この点に関する最適化が、そのカバー層を形成するために必要な活性金属を、予備供給源(reserve supply)から、電極の1つに移すことによって達成することが可能であることが判った。この方法において、
前記予備供給源は、前記電解質溶液と接触状態にされる。
補助電極が前記電解質溶液と電気接触状態にされる。
前記補助電極と、前記活性金属が移される電極との間に電線接続を形成する。
前記活性金属の移送を、前記補助電極と前記活性金属が移される電極との間に流れる電流によって行う。
【0054】
この主要態様については、一般性を限定することなく、以後、活性金属がアルカリ金属である電池に基づいて説明する。この場合、前記カバー層は、アルカリ金属亜ジチオン酸塩(A2S2O4)、即ち、リチウム電池の場合は、Li2S2O4を含む。前記カバー層形成は、電池の正常な作動電圧よりも低い電圧(リチウム電池の場合、3ボルト対Li/Li+)でカバー層形成が起こるという事実に関連するものとして単純化して記載することが可能な電気化学条件によって起こる。従って、金属アルカリ金属が陰電極上に、及び/又は陰電極内に蓄えられ、それによって電池を充電する前に、先ず、亜ジチオン酸塩が形成される。
【0055】
Li2S2O4の形成のためのリチウム(ここでもその他のアルカリ金属に対する一例として挙げる)は、通常は、陽電極から発生する。これにより、第1の充電サイクルにおいて早くも、電池容量のために実際に必要とされるリチウムの一部が消費されてしまう。この問題は、陰電極の活性物質が非常に多孔性が高く、従って、内部面積が大きい場合に特に深刻である。それに応じてより大きなカバー層表面が形成され、陽電極中に最初に含まれるリチウムのより大きな割合(例えば、約25%)が、一回目の充電サイクルのカバー層形成に消費されてしまう。この問題は、陰電極が挿入電極、特に、それがグラファイト系のものである場合に特に存在する。
【0056】
前記第4主要態様の種々の実施例は、追加活性金属源、使用される補助電極、そして、追加活性金属の移送の標的である電極(以後、「標的電極」という)に関して異なる。
【0057】
具体的に、活性金属の予備供給源を適用する以下の変形例を使用することが可能であり、これらは、原則的に互いに組み合わせることができる。
前記活性金属は、純金属(即ち、化学的に結合されていない)として前記電解質と(好ましくは、浸漬によって)接触させることができる。
追加量の電解質を、前記電池のハウジングの外部の容器、又は、電池自身の内部に設けることができる。第1の場合、追加電解質は(イオン輸送を可能にする)電解質ブリッジを介して電池内の電解質と接続される。
前記追加の活性金属は、適当な化合物、アルカリ金属Aの場合は、好ましくは、亜ジチオン酸塩A2S2O4として使用することができる。
【0058】
前記補助電極は、原則的には、電池の作動に必要な成分に加えて、前記電解質溶液に浸漬させる導電性部材によって形成することができる。但し、好ましくは、前記電池自身のハウジング、より正確には、その内壁の少なくとも導電性部分が、補助電極として使用される。もしも追加金属の供給源が金属製伝導体である場合、それ自身によって補助電極を形成することができる。
【0059】
前記標的電極は、電池の陰電極と陽電極の両方とすることができる。
活性金属の予備供給源から陰電極への移送は、電解質の充電の後、但し電池の一回目の充電の前に行われるべきであり、電池の正常充電中と略同じ量、(金属アルカリ金属が陰電極上および/又は内に蓄積される前に)電極表面上にカバー層が形成されるまで続けられるべきである。
陽電極の場合、目的は、前の充電中にカバー層形成の結果として陽電極に起こった損失を、アルカリ金属の追加供給によって、置き換えることにある。この場合、電解質の充填後、電池の充電によってカバー層が陰電極上に形成され、この充電処理は、好ましくは、金属アルカリ金属が陰電極上および/又は内に蓄積され、それによって電池が充電されるまで継続される。その後、充電処理中に陽電極から抽出されたアルカリ金属を、それに活性金属を供給することによって置換する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
本発明を、以後、図面を参照して更に詳細に説明する。図示及び記載されている特徴構成は、それぞれ個々に、又は組み合わせで使用されて、本発明の好適実施例を提供するものである。
【0061】
図1は、ハウジング2を備える電気化学的電池1を略示している。その内部には、サンドイッチ構造の複数の層、即ち、陰電極3、多孔性絶縁層4及び陽電極5が収納されている。前記両電極3,5は、電気リード線6,7を介して端子接点8,9に接続され、これらを介して、電池充電用の充電装置に、又は使用時に電気エネルギ消費装置に接続することができる。
【0062】
前記電池の構造は、概して従来式のものであって、詳細に説明する必要がないものである。重要な特徴は、両電極3,5間にセパレータが存在しないことである。むしろ、この電池は多孔性絶縁層4を有し、これは電池の充電中に陰電極の陽電極5に面する表面上に析出する活性金属がそれを通して成長することを促進する。これにより、活性金属と陰電極3に面する陽電極5の表面との間に局所的接触が発生する。
【0063】
図1そして、より明瞭には図2は、前記両電極3,5が、好ましくは、前記絶縁層4よりも遥かに厚みが大きいことを示している。前記絶縁層4は、好ましくは、100μm以下の厚みを有し、これに対して、前記両電極は、典型的には約0.1mm〜2mmの厚みを有する。これらの数値は、これら図面の図示がそれらの厚みの絶対厚に対してではなく、およその厚み関係に対して尺度されたものであることを示している。むしろ、市販の電池は、通常、複数の薄い層から成るパックを有する。この点に関して、本発明は、ここに記載する特徴構成以外においては、典型的な電池と異なるものではない。
【0064】
前記両電極3,5の比較的大きな厚みは、この図示されている好適実施例において、両電極が、それぞれ、その内部において活性金属のイオンが、電池の充電および/又は放電中に受け取られる導電性電極物質11及び12を有することによるものである。好適な材料については既に述べた。陰電極3は、特に好ましくは、その(好ましくは多孔性)電極物質11が主として炭素から成るグラファイト電極である。陽電極は、好ましくは、リチウムコバルト酸化物からなる電極物質12を備え、好ましくは、多孔性構造も有するインターカレーション電極である。放電状態において、リチウムは、陽電極の内部に蓄えられる。充電中、リチウムイオンが、多孔性絶縁層4を通って陰電極の電極物質11内に移動する。更に、特定の作動状態において、上述したように、前記活性金属が、電極物質11と多孔性絶縁層4との間の境界部に析出する。この場合、活性金属は、絶縁層4の孔を貫通して、最終的には、この多孔性絶縁層4を通して、陽電極5と絶縁層4との間の境界部にまで成長し、ここで、説明した局所的短絡が発生する。
【0065】
両電極物質11,12と前記リード線6,7との間に必要な電気的接続は、図1及び2には図示されていない。それは、典型的には両電極物質11,12に接続することが可能な金属導電部材によって確保される。例えば、両電極物質11,12の多孔性絶縁層4の反対側の表面上の薄い導電シートを使用することができるが、適当な代替物は、例えば、前記電極物質が部分的又は完全に組み入れられた金属発泡材として構成された多孔性金属構造である。このタイプの構造は関連技術から知られているので、この点に関して更に説明は不要である。
【0066】
上述したように、それらによって本発明の関連において必要な機能(陰電極上に析出した活性物質に対する透過性、但し、局所的に範囲を定めた短絡を確保しながら)が達成される、前記多孔性絶縁層4の特徴構成の一般的に有効な具体的値(例えば、その多孔性及びその構造的構成要素に対する)を特定することは不可能である。但し、特定の電池に対する絶縁層用に提供される金属の好適性は、容易に実験によってテストすることができる。適当な実験構成が図3に非常に概略的に図示されている。これは、以下の層順序を有する。
【0067】
ニッケル金属からなる陰電極5;薄い金属シートとニッケルから成る発泡材又は延伸された金属の両方が適切である。
テスト材料16:絶縁層4に対するその好適性が評価される材料。
ニッケル金属からなる補助電極17:これは、液体透過性でなければならず、例えば、延伸された金属又は穿孔されたシートメタルから形成することができる。
セパレータ18:典型的なセパレータ材が好適である。この実験構成において、その電気絶縁特性、同時に電解質に対する透過性のみが重要である。
陽電極19:ニッケル発泡材としてのLiCoO2。
【0068】
これらの層は積層され、フレーム(図示せず)を使用して互いに圧縮される。全構成が、予定される電池の電解質溶液に対応する組成を有するSO2系電解質溶液中に浸漬される。
【0069】
図示の実験用電池は、充電装置20を使用して充電され、これによって、(図1及び2の電池について前述したように)リチウムが陽電極19から抽出され、陰電極に析出する。充電処理中、陰電極と補助電極との間の電位差を、電圧測定装置21を使用してモニタする。それは、通常は3.3ボルト(リチウム−ニッケル元素の電圧)である。リチウムが絶縁層16を通って補助電極17まで成長すると、これによって前記電位差の低下が起こる。この時点で、測定を停止し、実験用電池を分解する。絶縁層(その補助電極17に面する側)を視覚的に調べることによって、リチウム成長のタイプを確立することができる。リチウムが透過成長したポイントとリチウムの可能な蓄積のポイントも十分に認識することができる。従って、所望の場合、リチウムがテストした層16を局所的に制限されたポイントにおいてのみ貫通したか否か、その結果、それが本発明のための多孔性絶縁層として適切か否を調べることができる。
【0070】
図4は、本発明による無セパレータ測定電池の実験結果を図示している。この特定のケースにおいて、電池はLiCoO2から成る陽電極と、この陽電極の電極物質と直接に接触する構造である炭化ケイ素の多孔性構造中における金属リチウムの直接的析出で作動する陰電極とを有するものであった。LiAlCl4×1.5 SO2が電解質として使用された。
【0071】
公称容量の百分率での電池の容量Cが、充電及び放電サイクルの回数Nとの関係でプロットされている。陰電極の構造的不均一性による初期容量損失後、容量は90%で安定している。これは、前記無セパレータ構造の機能能力を示している。
【0072】
図5〜8は、本発明の第2主要態様の実験テスト中に得られた結果である。この場合、本発明によって最適化された陽電極が最適化されない電極と比較された。この実験構成は以下の特徴を有するものであった。
【0073】
幾何学的電極面積:1cm2
電極容量:40mAh
電解質溶液:LiAlCl4×1.5 SO2
電極材料:LiCoO2
【0074】
典型的な実験用電池(電位のゼロ電流測定用の参照電極を有する「E電池」)で、電圧を0.2mVsのサイクル速度で3.5Vと4.5Vとの間で変化させるサイクルを行った。図5及び6に、本発明によって最適化されない電極を使用した場合と、本発明による最適化電極を使用した場合に、それぞれ得られたサイクリックボルタモグラムを示す。mA単位での測定電流Iが、Li/Li+半電池に対してV単位で電池に印加された電圧Uに対してプロットされている。そのそれぞれが第1サイクルZ1と最終サイクルZ40とを含む4つのサイクルが図示されている。
【0075】
本発明によって最適化されない陽電極を有する電池の場合、図5は、主として、より高い電圧にシフトしている陽極ピークの位置に関して、サイクリックボルタモグラムの大きな変化を示している。それは最初のサイクルではまだ大幅に4Vを下回るものであるが、それは40回目のサイクルでは4.2V近くになっている。これは、電池の内部抵抗の増加に対応するものであり、これは、本発明者等の知見によれば、陽電極の不動態化によって引き起こされるものである。
【0076】
図6に示されている結果は、本発明による電極の最適化によって、40回のサイクル中、サイクリックボルタモグラムが実質的に変化しないこと、電池の電気値、特にその内部抵抗が一定であることを示している。
【0077】
これらの結果が図7に要約されている。ここでは、ピークの最大値(Umaxボルト)の変化が、本発明によって最適化された電極を有する電池(曲線A)、そして本発明によって最適化されない電極を有する電池(曲線B)について、サイクル回数に対してプロットされており、これらのデータは150回以上のサイクルに基づくものである。このプロットは又、本発明の電極最適化無しではピーク位置、従って、電池の内部抵抗が連続的に変化するのに対して、これらの電池データは、本発明によって最適化された電極が使用される場合にはほぼ一定に留まるということも図示している。
【0078】
図8は、電気放電容量(理論的容量のパーセント)の充電/放電サイクルの回数Nに対する依存性を、本発明によって最適化された電極を有する電池(曲線A)と、非最適化電極を有する電池(曲線B)とについて図示している。これらの特性も、本発明によって大幅に改善されている。最初の容量は約7%高い。更に、電池の充電/放電の繰返しによって起こる容量減少は遥かに少なくなっている。
【0079】
図9は、本発明の第3主態様による電解質溶液による電池の充填を図示している。図示されている時点において、両電極と多孔性絶縁層とは、例えば、図1に図示されているように、電池1のハウジング2内にすでに設置されている。充填手順は以下の工程を含む。
最初に、電池1のハウジング2を、ライン29(V=真空)を介して真空抜きする。この手順は、圧力測定装置30を使用して制御することができる。次に、ガス状SO2を、ライン31を介して供給し、これによって、ハウジング2の内部をガス状SO2で充填する。
次に、容器32内に提供される電解質溶液の充填を行う。そのSO2濃度は比較的低いので、電池1内に存在するガス状二酸化硫黄は、ハウジング2と容器32との間の接続を開放すると、電解質溶液中に容易に溶解する。言い換えると、電解質溶液との弱い発熱反応が起こる。従って、ハウジング2中のガスの量は減少する。電池1内に部分真空状態が発生し、それによって、更に電解質が容器32から吸引される。電解質は、電池1の内部に存在する層のすべての孔に浸透する。これは、導電性塩の一部が、この時点において、電池の内部に既に存在しているならば(例えば、前記第2主態様による洗浄工程の結果として)、更に補助される。
【0080】
図10〜12は、本発明の第4の主態様を図示している。活性金属としてのリチウムと、陰グラファイト挿入電極と、二酸化リチウムコバルトから成る電極物質を備える陽インターカレーション電極とを備える電池に基づき説明する。それは、一般的なその他の適切な活性金属と電極材料とにも容易に移し替えることが可能である。
【0081】
図10は、電解質24が充填された電池2を図示している。この図面において陽電極は見えないが、これも勿論存在する。前記電池1は、充填用に適した接続チューブ25を有し、これを通して、リチウム金属26の片を電解質24中に浸漬することができる。前記リチウム金属26は、電池の陰極8、即ち、陰電極3に電気接続されている。外部電圧を印加することなく、この構成においてはリチウム26の漸進的溶解が起こり、その間同時に、亜ジチオン酸リチウムのカバー層が陰電極上に形成される。この処置の間、陽電極と陰電極との間の電池回路は開放されている。
【0082】
この実施例では、前記リチウム金属26が、補助電極と活性金属の予備供給源とを同時に形成する。陰電極NEと補助電極AEとにおいて下記の反応が起こる。
【0083】
NE:2Li++2SO2+2e− →2Li2S2O4
AE:2Li → 2Li++2e−
【0084】
前記補助電極での反応によって発生した自由電子は、ライン接続27を介して陰電極へと流れ、そこで起こる反応によって消費される。熱力学的条件により、ライン27では電圧源は不要である。
【0085】
図10に図示の実施例では、電池の一回目の充電前に、陰電極上にカバー層が形成され、その間、陽電極からのリチウムは消費されない。従って、陽電極のリチウム含有率は、電池の充電及びその後の放電のためにフルに利用可能である。
【0086】
図10に類似の構成は、前の充電処理中のカバー層の形成の結果、陽電極において起こる活性金属の損失を置換することによって、一回目の充電処理後に陽電極を「再生」するためにも使用することができる。この場合、陽電極はリチウム移送の標的電極となる。即ち、電池の一回目の充電後、リチウム金属26と陽電極との間の接続27は閉じられ、他方、これと同時に陽電極と陰電極との間の電池回路は開放される。これによって、リチウムイオンが陽電極内に目的通りに導入され、以下の反応がそこで生じる。
【0087】
PE:Li(1−x)CoO2+xLi++xe− → LiCoO2
【0088】
図11は、追加量の電解質35が、リチウムの予備供給源として提供される実施例を図示している。この図示の実施例において、追加量の電解質は、容器36内に位置し、この容器が電解質ブリッジ37を介して電池2の電解質24に接続されている。補助電極38が、ライン接続39を介して電池の陰端子接点8に、従って、陰電極3に接続されている。前記ライン接続39に配置された電圧源40によって、(実験的に最適化された)電圧が前記補助電極38と陰電極3との間に印加され、これによって両電極において以下の反応が起こる。
【0089】
NE:2Li++2SO2+2e− → 2Li2S2O4
AE:2AlCl4− → 2AlCl3+Cl2+2e−
【0090】
補助電極での反応は、前記ライン接続39を介して、陰電極上に前記カバー層を発生させるために必要な電子を提供する。必要なLi+イオンは、前記追加量の電解質(即ち、その中に含まれる導電性塩中)から取り出すことができる。
【0091】
一回目の充電操作とそれによるリチウムの損失後に陽電極を再生するための図11に図示の構成の種々の変形例が可能である。そのような実施例においても、再び、電池の陽端末接点へのライン接続が提供される。但し、リチウムの移動は一回目の充電処理後に起こる。
【0092】
図12は、補助電極が電池2のハウジング41の金属壁42によって形成される実施例を図示している。従って、ライン接続43は、ハウジング41と陰端末接点8との間に設けられる。リチウムの予備供給源は、亜ジチオン酸リチウム44として提供され、これが電池に充填(例えば、粉体として)、それが前記ハウジング41の内壁と陰電極3との間の中間空間に位置するように充填される。従って、以下に説明される反応の反応生成物は、補助電極(ハウジング壁42)と標的電極(ここでは陰電極3)との両方への短い拡散経路を有するものなる。
【0093】
前記ライン接続43に接続された電圧源45の電圧によって駆動されて、以下の反応が両電極で起こる。
【0094】
NE:2Li++2SO2+2e− → 2Li2S2O4
AE:2AlCl4− → 2AlCl3+Cl2+2e−
【0095】
補助電極(ハウジング壁)での反応によって、下記の別の反応が起こる。
【0096】
(a):Cl2+SO2 → SO2Cl2
(b):SO2Cl2+Li2S2O4 → 2LiCl+3SO2
(c):2LiCl+2AlCl3 → 2Li++2AlCl4−
【0097】
反応(a)では、補助電極に形成された塩素が電解質からのSO2と反応して塩化スルフリルを形成し、これが更に反応(b)でリチウム予備供給源として提供された亜ジチオン酸リチウムと反応して塩化リチウムと二酸化硫黄とを形成する。反応(c)によって、前の反応の生成物から進んで−リチウムイオンが形成され、これらが更に陰電極のカバー層形成において反応する。
【0098】
この場合も、陽電極を標的電極とすることができ、前の実施例と同じ説明が同様に当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明による電池の略断面図
【図2】本発明の実施例での構成原理と電極物質のサイズ比とを示す斜視図
【図3】多孔性絶縁層陽の適当な材料を実験的に選択するための方法を説明するための略斜視図
【図4】本発明の第1主要態様の実験テストからの測定結果のグラフ
【図5】本発明の第2主要態様の実験テストからのサイクリックボルタモグラムのグラフ
【図6】本発明の第2主要態様の実験テストからのサイクリックボルタモグラムのグラフ
【図7】図5及び図6に図示されたサイクリックボルタモグラムに基づいて得られた結果の図
【図8】充電及び放電サイクルの回数の関数としての電池の放電容量のグラフ
【図9】本発明の第3主要態様を説明する略図
【図10】本発明の第4主要態様の第1変形例を説明する略図
【図11】本発明の第4主要態様の第2変形例を説明する略図
【図12】本発明の第4主要態様の第3変形例を説明する一部断面の略図
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰電極(陰極)と、導電性塩を含む電解質と、陽電極(陽極)とを備える電気化学的電池に関する。特に、本発明は、活性物質が、電池の充電中に陰電極上および/又は内に保存されるアルカリ金属であるアルカリ金属電池に関する。但し、前記活性物質は、別の金属、特に、アルカリ土金属、又は、周期律表の第2群の金属とすることも可能である。前記電解質の導電性塩は、前記活性物質の金属の陽イオンと適当な陰イオンとを含む。アルカリ金属電池の場合、LiAlCl4等のアルカリ金属の四ハロゲン化アルミン酸塩が特に好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
以後、アルカリ金属電池、特に、リチウム電池について特に言及する。しかし、これは本発明の一般的適用性を制限するものと解釈されてはならない。
【0003】
このタイプの電池においては、それらの厚みよりも遥かに大きな主表面を有する複数の層が互いに上下に配置されている構成が典型的である。それらは、ほぼ同等サイズの主表面寸法を有し、電池内において、サンドイッチ状に上下に配置されている。一般的な形状は、典型的には、直方体状ハウジングと、直線状層とを有する角柱状電池と、内部で複数の層がロール状に巻回された円筒状電池である。
【0004】
典型的な電池は、少なくとも三つの層、即ち、陰電極と、陽電極と、これら二つの電極を電気的かつ物理的に分離する分離層とを有する。前記分離相は困難な要件を満たす必要がある。即ち、
それは、陽電極と陰電極との間の電気的分離を提供しなければならない。そのような電気的分離無しでは、電池の作動は不可能である。
それは、両電極間の液体電解質の均等な分布に寄与しなければならない。
それは、陰極チャンバと陽極チャンバとの物理的分離を提供しなければならないが、それと同時に、必要な電解質の輸送と、電池の前記二つの部分チャンバ間の気体の輸送も提供する必要がある。
それは、両電極間の短絡を確実に防止しなければならない。これは、電池の充電中に、活性金属が電極表面に析出する場合、特に当てはまる。
【0005】
後者の問題は、活性物質が、特に、複数の充電/放電サイクル後において、平坦な表面を有する平滑層の上ではなく、部分的にフィラメント状の構造上に析出する場合には、特に重大である。特にアルカリ金属電池、特にリチウム電池の場合、通常、実質的に等しい直径を有する(特定の電極を備える特定の電池について)枝分かれしてないフィラメントが、電池の充電中に形成される。これらのフィラメントは、互いに絡み合いながら成長し、ウィスカと呼ばれている。ウィスカの形成は、自己放電反応の結果として、反応活性金属の表面上に生成される薄いカバー層に拠るものである。この層は、完全に均質ではなく、それによって、電解析出した活性金属が、そのカバー層を通して薄い点において、そして、更に、特定のフィラメントの端部において優先的に成長する。
【0006】
前記セパレータは、そのようなフィラメント状構造の形成により強い物理的応力を受ける。更に、適当な材料の選択は、更に別の要件によって制限される。即ち、
セパレータは、電池中において不活性でなければならない。
それは、高エネルギ密度を可能にするには可能な限り薄いものでなければならない。
電池の性能と、その寿命は、電解質イオンに対するセパレータの透過性によって部分的に決まる。
セパレータのコストは許容可能なものでなければならない。
【0007】
完全に機能するセパレータは、リチウムイオン電池とリチウムポリマー電池とにおいて特に重要である。もしもこれら電池において、リチウム金属が陰電極の表面上に析出する場合、この反応性の高い金属と陽極との接触は勿論回避されなければならない。なぜなら、そのような接触によって起こる短絡によって、「熱暴走」と呼ばれる制御されない一連の反応が直ちに起こるからである。そのような電池の有機電解質溶液は、制御不能に消費したり、あるいは破裂すらするであろう。これらのリスクにより、これらのタイプの電池は、通常、比較的小型のものだけが製造されている。更に、追加の安全手段、主として電子的安全手段が使用される。
【0008】
これらの電池タイプにおいて、陰電極は、通常、「挿入電極」である。この用語は、一般に、活性金属をその内部において、電池の充電、放電中に電解質との交換が容易となるように含む電極を指す。リチウムイオン及びリチウムポリマー電池では、陰電極がグラファイト系の挿入電極であり、導電性塩の金属イオンは、電池の充電中にその内部に蓄えられる。可能であるならば、電池は、活性金属が電極の表面上に析出する作動状態が回避されるように作動されるべきである。しかし、これは、実際には、電池の過剰充電と比較的高い電流(特定の電池に対して有効な限界値以上)での充電を確実に回避する複雑な電子手段を使用することによってのみ達成されるものであるかもしれなない。電子装置は極めて精度が高く(例えば、4.2V±0.01Vのカットオフ電圧)、かつ信頼性が高い(一億のパーツで1つの欠陥品以下)ものでなければならない。そのような手段によってコストは大幅に増大する。それにも拘わらずいくつかのリスクが残る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これに基づき、本発明は、その特定の電池タイプの有利な特性(リチウム電池の場合は、特に、その比類ない高エネルギ密度)が完全に保持されるか、更には改善されるものでありながら、可能な限り最低のコストで可能な限り最高の安全基準を満たす充電可能な電気化学的電池、特に、アルカリ金属電池、更に、とりわけ、リチウム電池を提供することをその技術課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、本発明の第1態様においては、陰電極と、導電性塩を含む電解質と、陽電極とを備える電気化学的電池であって、前記電解質がSO2系であり、前記陽電極と前記陰電極との間の空間が、電池の充電時に、陰電極上に析出する活性物質が前記陽電極に接触してその表面上で局所的に制限された短絡反応が起こるように形成されている電気化学的電池によって達成される。
【0011】
本発明の関連において、SO2系の電解質を含む電池は、陰極の表面上に析出した活性金属が陽電極と接触する時に、完全に予想外の短絡現象を示すものであることが実験によって示された。もし、適当な手段によってそのような短絡が局所的に制限されるのであれば、この場合に起こる反応は「熱暴走」を引き起こさないし、不可逆的反応も起こらない。これは、活性金属の一部が不動態化され、電池の充電能力が低下するためである。むしろ、電池の特性は、この種の局所的に制限された短絡、及びそれに関連する反応によって全く悪影響を受けるものではない。従って、本発明の電池は、セパレータ無しで作動する。その代わり、それは、電池の充電中における陰電極上に析出した活性物質と陽電極との局所的な接触が合目的的に許容されるように構成される。これは現在の典型的な電池構造とは大幅に異なるものである。
【0012】
上述したように、これらの観察は、SO2系の電解質を有する電池に適用される。ここで、電解質は、それがSO2を低濃度の添加物として含む場合のみならず、この電解質に含まれ、電荷輸送を引き起こす前記導電性塩のイオンの移動性が、SO2によって少なくとも部分的に確保される場合に「SO2系」と称される。この点に関する追加情報は、ここに引用するWO 00/79631から得ることができる。
【0013】
本発明がそれに基づくところの実験によれば、前記局所的短絡とその結果起こる電解質の加熱とによって、活性金属とSO2との化合物の形成、リチウム電池の場合は亜ジチオン酸リチウム(Li2S2O4)の形成がおこる。この化合物は、溶解性が比較的悪いものではあるが、前記反応(LiとSO2)において消費される出発生成物のいずれも電池機能から恒久的に撤退されるものではない。なぜなら、亜ジチオン酸塩の形成は、電池機能にとって有利な均衡をもたらすのに十分に急速な消滅反応によって補填されるからである。この点に関するより詳細な情報は、WO 00/79631から得ることができる。
【0014】
更に、陽電極との反応が局所的短絡の近傍で起こるかもしれない。これは、陽電極が金属酸化物、特に原子番号22〜28の遷移金属の酸化物を含む場合の電池に特に当てはまる。前記酸化物は、好適には、前記活性金属と、上述した遷移金属の1つと、酸素とから成るインターカレーション化合物として提供される。とりわけ、遷移金属としては、コバルト、ニッケル、鉄が特に好ましい。格子構造中に二又は三種類の遷移金属を含む二成分系又は三成分系の金属酸化物インターカレーション化合物も実用的重要性を有する。本発明において特に好適なこれらの電極物質についての更なる詳細は、再び、ここに引用するWO 00/79631とUS 4,567,031を参照することができる。例えば、酸化コバルトをベースとする陽電極が使用される場合、本発明者等の知見によれば下記の反応が前記局所的短絡によって起こる。
【0015】
CoO2+Li → LiCoO2
【0016】
この反応は、電池の放電中における活性金属のインターカレーションに対応する。
【0017】
主として二つの作動状態において、金属リチウムは、それが、もしもセパレータが無い場合は、即ち、特に高い電流での充電中、又は、過剰充電中、即ち、充電中に加えられる電荷の量が陰電極の能力を超える場合に陰電極が陽電極に接触する可能性のある状態の陰電極上で析出が起こる。これらの作動状態においては、電池の放電に対応する短絡反応は不利でないどころかむしろ有利である。このように前記局所的短絡は有利な結果をもたらすので、「有益な短絡」と呼ぶことができる。
【0018】
以上要するに、本発明の実験試験中に、無セパレータ電池を使用して、安全性と電池データ(サイクル安定性、容量等)との両方に関して非常に良好な結果が達成されることが示された。
【0019】
それらのうち、とりわけ下記の利点が達成される。
【0020】
非常に小さな孔を有し、これらの孔が詰まる傾向があるセパレータが存在しないので電池の内部抵抗が減少する。
従来の電池においては、セパレータの損傷に関連するリスクが存在しないので、安全性が大幅に改善される。
典型的なセパレータ材料は大きなコスト要因であることから、コストが低減される。
電池の重量と体積が減少するので、より大きなエネルギと電力密度を達成することができる。
電池表面上の活性金属の析出に関連するリスクが無いため、高電流で、従って、急速に、電池を充電することができる。
標準的な生産設備、例えば、リチウムイオン電池用の生産設備を使用することができる。
【0021】
前記短絡、及びこれら短絡から生じる加熱によって引き起こされるすべての反応を適当な手段によって局所的に制限することが必要である。
【0022】
この目的を達成するために、好適には、多孔性絶縁層が提供され、これは、電池の充電中において前記陰電極上に析出する活性物質が、この絶縁層の孔を通って、陽電極の表面まで成長することができるように、配置使用される。前記多孔性絶縁層は、好ましくは、前記陽電極と、これら両方の表面がその全面積に渡って互いに接触した状態で、直接接触状態とされる。
【0023】
前記絶縁層の孔は、前記層を通り、陽電極の表面への活性物質の所望の成長を可能にするのに十分大きなものでなければならない。更に、陽極に対する構造と配置は、活性物質と陽極との間の接触が電極表面の局所的部位(一部領域)に制限され、追加のリチウム(これは、前記多孔性絶縁層中又は、陰電極へのその境界の他の部分に存在する)の反応を引き起こさない局所的短絡のみが起こるようなものでなければならない。もしも局所的短絡によって更なる短絡がトリガーされれば、大きな熱増加によってリチウムの制御されない反応、即ち、「熱暴走」を予期しなければならなくなるであろう。
【0024】
前記多孔性絶縁層の適当な構造は、各特定の電池構造それぞれに対して個々に決定しなければならない。リチウムの析出中に形成される前記ウィスカの径は電池ごとに異なることを考慮すべきである。これは、異なる電解質で操作する電池を比較することによって特に明確に示される。もしも、有機電解質が使用されるのであれば、そのウィスカはSO2系の電解質が使用される場合よりも、一般に遥かに大きな径を有するものとなる。従って、特定の多孔性を有する層によって、第1の電池構造におけるウィスカの貫通(貫通成長)を防止し、従って、セパレータとして作用するものが、別の電池では、この同じ層が析出された活性物質によって貫通されてしまうということは十分可能である。
【0025】
この理由及びその他の理由により、適当な絶縁層の孔径についての数値又はその他の量的情報を提供することは実際には不可能である。更に、「平均孔径」や「最大孔径」といった多孔性層材料の製造業者の典型的な仕様データは、本発明においては、適当な層材料を特徴付けるために使用することはできない。というのは、孔サイズ分布が非常に重要であるからである。例えば、非常に微細な孔を高い比率で有するが、活性物質がそれを通して成長可能なより粗い孔を十分な数有する層が適当であるかもしれない。但し、ここに記載される作用を達成するための層材料の適性は、以下に詳述するように、実験的に問題無くテストすることができる。
【0026】
前記多孔性絶縁層は、例えば、自己支持型膜、バインダによって接続された、粒子、ファイバ、マイクロチューブから成る多孔性複合構造、更には、緩い注入可能な製品等として実施することができる。いずれにせよ、前記層が十分に湿潤化され、電解質溶液がその層に容易に貫通するように構成することが有利である。前記多孔性絶縁層は、好ましくは、特に、酸化物、炭化物、又は、化学的に安定なケイ酸塩から形成可能な、粒子状、ファイバ状、又は筒状の多孔性材料を含む。特に好適なバインダは、テトラクロロエタン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンのターポリマーである。
【0027】
前記多孔性絶縁層は、必ずしも、電池の他の機能層から区別され得る別層とされる必要はない。これは、本発明の一好適実施例に特に当てはまり、そこでは、前記陰電極は、例えば、金属シート、発泡材、又はファブリックの形態である平坦な導電性基材と、この基材に接合された非導電性析出層との組み合わせからなり、前記非導電性析出層が、前記基材の表面上に析出する活性物質が、その孔を貫通して、更にその内部に析出するように形成位置決めされる。そのような構成は、この点に関して参照されるWO 02/09213から知られている。但し、そこに記載されている電池構造とは異なり、本発明によれば、前記析出層と陽電極との間には、活性物質に対して不透過性のバリア層は存在しない。前記バリア層の不在によって不可避的に生じる前記短絡の局所化にとって有利な前記多孔性絶縁層は、前記析出層と一体の(区別できない)構成要素によって形成することができ、或いは、これを、析出層と陽電極との間に延出して、析出層の全面に連続的に接合される別層によって形成することも可能である。
【0028】
一般に、本発明は、陰電極が、電池の充電中において、前記導電性塩の陽金属イオンがその内部に取り込まれる電池構成において特に有利である。このタイプの電池では、電池の正常な充電中、最初は、活性金属の電極表面上の析出はなく、むしろ、充電中の活性金属の保存が陰電極の構成要素である構造の内部で起こる。この条件が当てはまる電極タイプを、ここでは、総称的に「挿入電極」と命名する。以上説明した構造、即ち、平坦な導電性基材とそれに接合された析出層とを有し、その内部に活性物質が充電中に取り込まれる孔を有する構造が、この一般的定義によって挿入電極として理解される。
【0029】
別のバリエーションに拠れば、前記陽金属イオンの取り込みは、陰電極の構成成分である導電性電極物質の内部のことを指す。そのような導電電極物質の重要な具体例は、炭素を含有する電極、特に、リチウムイオン電池にも使用されているようなグラファイト電極である。この場合、リチウムは、充電中、多孔性キャビティへの析出によってではなく、前記導電性電極物質の格子構造へのインターカレーションによって蓄えられる。上述したグラファイト電極に加えて、Li4Ti5O12系のリチウムインターカレーション電極、又は、合金電極をそのような電極材料の具体例として挙げることができる。
【0030】
このタイプの電池構成においては、陰電極と陽電極との間(即ち、それらそれぞれの導電電極物質)間の直接的電気接触、従って、短絡を避けるために、別体の多孔性絶縁層を提供することが必須である。そのような構造については、後に図面を参照して更に詳細に記載される。
【0031】
本発明の第2の態様は、電気化学的電池の製造方法、特に、そのような方法中に起こる洗浄工程に関する。この方法において、電池の電極が、電極に接合されたOH−イオンを除去することによって、その機能のために最適化される。この方法は、本発明の前記第1主態様による電池の製造に特に適しているが、それはそれから独立した重要性も有する。
【0032】
前記第2主態様によれば、前記OH−イオンは、前記電極から、これらOH−イオンと反応する第1洗浄成分を含有する洗浄剤を使用して除去される。それは、電極と、それに結合したOH−イオンが、前記第1洗浄成分との反応によって電極表面から除去され、前記洗浄剤の成分又は電池の機能の障害となりうる反応生成物が電極から除去されるように接触される。
【0033】
無水電池、特に、SO2系電解質で作動する電池の機能のためには、電極構造内に存在する水残滓(水分子とH+とOH−イオンとの両方)が完全に除去されることが非常に重要である。これは、上述した挿入電極が使用される場合に特に重大な問題となる。
【0034】
本発明の関連において、化学結合した水の存在によって電極の不動態化が起こり、それによって電極プロセスが阻止されることがわかった。挿入電極、特に、アルカリ金属インターカレーション電極(例えば、金属酸化物インターカレーション化合物からなる、WO 00/79631から知られている、上述したタイプのもの)の場合、これは、電池の充電中のアルカリ金属の除去、および/又は放電中のインターカレーションに関連する。前記不動態化によって、電池の内部抵抗が増大する。
【0035】
本発明者等は、不動態化は、電極の表面分子と水(例えば、環境湿度からの)とが反応し、それによって、活性金属の水酸化物、即ち、アルカリ金属Aの場合は、AOHタイプの化合物を含むカバー層が形成されることに起因する可能性があることを見出した。ほんの僅かな量の水でも、水酸化物カバー層が形成される。本発明者等の知るところ、カバー層の形成は、その活性物質が金属酸化物インターカレーション化合物、特にLiCoO2をベースにするものである電極の製造中ではほとんど不可避である。これは、電極の外表面のみならず、(多孔性電極材料の典型的な場合)その内表面(前記孔の内部)にも関係する。前記電極の不動態化は、OH−イオンと反応し、以後ここで、第1洗浄成分と称される前記洗浄成分との反応によって除去することができる。前記第1洗浄成分は、以後、活性化成分とも称される。但し、これは限定的なものと解釈されてはならない。
【0036】
本発明の前記第2主態様は、実質的にOH−イオンを有さない表面を有する挿入電極、特に、インターカレーション電極にも関する。好ましくは、前記電極は、H+イオンも実質的に含まない。そのような電極を有する電気化学的電池も、本発明の1つの課題である。この場合、「OH−イオンおよび/又はH+イオンを実質的に含まない」とは、これらイオンの存在によって引き起こされる電極の不動態化、および/又は、その結果生じる容量の損失が、電池の電極の必要な実用的機能がそれによって損なわれない程度に低減されるということを意味するものと理解される。後に詳述するように、不動態化によって、充電及び放電サイクル中に電池の内部抵抗の連続的増加が起こる。電極のそれぞれの性質は、例えば、これも又後に詳述するように、サイクリックボルタモグラムを使用することによって観察することができる。活性物質の表面における水酸化物イオンの不在は、好ましくは、前記第1洗浄成分を使用した上述の方法によって達成される。
【0037】
本発明の関連において、ここに記載のタイプの挿入電極は、化学的に結合した水の含有率が約10,000ppm(即ち、電気化学的活性電極物質、特に、LiCoO2に対して1重量%のH2O)を有するものであることが示された。本発明によって最適化された電極は、5000ppm以下、好ましくは、1000ppm以下、特に好ましくは100ppm以下、非常に好ましくは10ppm以下の水含有率を有する。
【0038】
無プロトンルイス酸が、第1洗浄成分として特に好適であることが判った。この用語は、G.N.Lewisによって定義された酸特性(即ち、電子受容体である)を有するが、H+イオンを含まない物質のことを言う。ルイス酸の好適具体例は、AlF3,BF3,CO2,CS2及びGaCl3である。一般に、本発明の目的に対するルイス酸の好適性は実験によってテストすることができる。
【0039】
好適なルイス酸は、それらの強度に基づき予め選択することができ、これは、又、その酸の形成する原子(例えば、AlF3の場合はAlとF)の電気陰性度値の差から推定することができる。この差が大きければ大きいほど、そのルイス酸は強い。
【0040】
前記洗浄剤は、通常、適当な溶媒中に前記第1成分を含有する液体である。前記溶媒としては、特に、四塩化炭素(CCl4)等の非プロトン性液体が適当である。前記溶媒の必要な水の不在性は、モレキュラーシーブ、特に、大きな表面を有する金属アルミノケイ酸塩をベースとするものによって達成することができる。原則的には、気体又は超臨界流体、特に、超臨界CO2系のものも、前記溶媒として使用可能である。前記洗浄成分自身は流体(例えば、超臨界CO2)又は気体(例えば、CS2)とすることができる。そのような場合において、前記洗浄剤は、明らかに追加の溶媒を含有する必要はない。
【0041】
前記洗浄剤中の前記活性成分の濃度は可能な限り高いものとするべきであり、その上限は、溶液の場合、活性成分の溶解性から得られる。通常、飽和溶液が好ましい。但し、原理的には、より低い濃度でも活性効果は可能である。適当な濃度は、特に洗浄処理の持続時間との関連において、実験的に決められるべきであり、これは、勿論、使用されるルイス酸の作用の関数でもある。前記洗浄剤は、実際には下記の条件を満たさなければならない。
もしも前記方法が、電池の製造中において、前記洗浄剤の少なくとも一部が挿入電極内に残るように適用される場合には、その洗浄剤は、電池の作用に対して無害のものでなければならない。有害な成分に対しては、簡単で完全な除去性が必須である。
前記洗浄剤は、前記電極材と適合性があるものでなければならない。特に、それは、電極作用の障害となるような如何なる反応も起こすものであってはならない。
【0042】
好適実施例によれば、前記製造方法において挿入電極を最適化するために第2洗浄成分が使用される。それは、H+イオンと反応し、洗浄剤中の挿入電極と、その内部に結合したH+イオンが、前記第2洗浄生物との反応によって電極の内部から除去されるように接触される。本発明の関連において、挿入電極、特に、上述したタイプのインターカレーション電極の特性は、H+イオン(プロトン)が、電極材料に結合する場合にも損なわれ得ることか判った。プロトンは、挿入電極のアルカリ金属イオンと交換し、活性金属(特に、アルカリ金属)を受け取る能力が低下し、それによって、電池の電気容量を減少させる。プロトンは、前記第2洗浄成分によって、挿入電極から抽出される。電池の取り込み容量、従って、その蓄電容量もそれによって改善される。
【0043】
特に、挿入電極中に結合されたプロトンとイオン交換反応する塩が、前記第2洗浄成分として好適である。それの具体例には、ハロゲン化物、特に、アルカリ金属、アルカリ土金属、又は周期律表の第3主群の金属のフッ化物がある。一般性を限定することなく、ここで、「洗浄塩」という用語を以後第2洗浄成分のために使用する。
【0044】
洗浄成分と、それらの前記製造方法における使用法との両方において種々のバリエーションが可能である。例えば、前記洗浄塩の少なくとも一部分を前記電極物質、従って、その製造中に、電極内に予め導入することができる。前記第1および/又は第2洗浄成分が前記洗浄成分に直接導入されない方法も使用可能である。むしろ、これらの成分が、適当な前の反応物を使用してインサイチュで形成されることも勿論可能である。具体例として、それらから洗浄塩を、ハロゲン化物、好ましくは、フッ化物を切断することによって形成することが可能な塩が挙げられる。これは、具体的には、PF6−,AsF6−,BF4−及びAlF4−の陰イオンの塩を含む。洗浄塩のインサイチュ形成用の出発物として有機塩も好適に使用される。
【0045】
この製造方法の一好適実施例によれば、OH−及びH+イオンは、それぞれにおいて別の(好ましくは、異種でもある)溶媒が使用される二つの別々の工程での二つの段階で除去される。
【0046】
具体的には、第1段階では、前記挿入電極は、CCl4等の高揮発性非プロトン性溶媒中に無プロトンルイス酸を含有する洗浄剤と接触され得る。この洗浄剤は、OH−イオンが電極から洗浄剤中に移動完了するまで反応させられる。その後、それは除去される。
【0047】
第2段階では、前記電極を、前記第2洗浄成分を含有する第2洗浄剤と接触させる。プロトンの電極から洗浄剤内への移動に必要な反応の完了後、前記第2洗浄剤も除去することができる。その結果得られる最適化された電極は、勿論、その性質が水とその成分OH−とH+との吸収によって再び劣化することがないように無水環境でさらに処理されなければならない。
【0048】
原則的に、前記特定電池の電解質も、洗浄液の溶媒として使用することが可能である。特に、適当な洗浄塩を電解質と共に電池内に導入することが好ましい。挿入電極中に含まれるプロトンとのイオン交換によって形成されるHFやHCl等の化合物は揮発性であるので、それらは自発的に逃げる。これは、部分真空(真空抜き)を適用することによって、加速することができる。そのような場合、前記洗浄液は、電池から除去される必要はなく、その内部に電解質として残る。洗浄塩の残り部分は、(電極からのH+イオンの抽出に加えて)別の好適な作用を有する。
【0049】
前記電極は、原則的に、電池の内部と外部との両方において前記洗浄剤によって処理することができる。前記二段階方法の場合、前記第1方法段階(OH−イオンの除去)を電池の外で行い、その後、電池に部分的に最適化された電極を設置し、前記第2洗浄段階(H+イオンの除去)を電池内で行うことが好適である。
【0050】
本発明の第3の態様は、前記電池への電解質溶液の充填に関する。DE 19911800 C1において、電気化学的電池を充填するための装置と方法が記載されており、それらによって、SO2系電解質に関連する特殊な問題が解決される。このタイプの電解質は、室温で気体状である溶媒(SO2)での溶媒和塩である。その結果生じる特殊な問題を克服するために、カニューラを電池の入れ口を通して気密状に電解スタックまで案内しなければならない複雑な装置が提案されている。これには、カニューラ端部によって電極スタックが損傷を受け、内部短絡が発生するというリスクがある。更に、そのように薄いカニューラは、結晶化した導電性塩によって容易に詰まるかもしれない。充填のために、電池は真空抜きされ、バルブの切換後、電解質溶液を電池内に吸引する。この場合、電解質溶液と電池内部との間の大きな圧力差が不利である。溶媒(SO2)は、最初は電解質溶液から気化する。導電性塩の結晶化、従って、充填装置の目詰まりの危険性が大幅に増大する。
【0051】
これに対して、本発明は、好ましくは、二つの他の主要な態様との関連で使用されるものではあるが、それ独自の重要性も有する遥かに単純な方法を提案するものである。この場合、電解質溶液の移送は、以下の部分工程を含む。
ハウジングの内部をガス状SO2で満たす。
前記ハウジングの充填開口部を、前記ガス状SO2が電解質溶液中に容易に溶解するようなSO2濃度の電解質溶液を含む容器に気密状態に取付ける。
前記電解質溶液を、SO2の溶解から生じる部分真空状態による駆動によって前記ハウジング内に流入させる。
【0052】
より詳細な説明は、以下、図面を参照して行われる。この方法は、単純な方法で電池のSO2系電解質での完全な充填を可能にする。
【0053】
第4の主要な態様によれば、本発明は、陰電極上のカバー層の形成、特に、SO2系電解質を有する電池における電池の一回目の充電中での電気化学的条件によるものから生じる問題に関連する。本発明の関連において、このカバー層の形成が、電池の放電容量の大幅な低下の原因であり、この点に関する最適化が、そのカバー層を形成するために必要な活性金属を、予備供給源(reserve supply)から、電極の1つに移すことによって達成することが可能であることが判った。この方法において、
前記予備供給源は、前記電解質溶液と接触状態にされる。
補助電極が前記電解質溶液と電気接触状態にされる。
前記補助電極と、前記活性金属が移される電極との間に電線接続を形成する。
前記活性金属の移送を、前記補助電極と前記活性金属が移される電極との間に流れる電流によって行う。
【0054】
この主要態様については、一般性を限定することなく、以後、活性金属がアルカリ金属である電池に基づいて説明する。この場合、前記カバー層は、アルカリ金属亜ジチオン酸塩(A2S2O4)、即ち、リチウム電池の場合は、Li2S2O4を含む。前記カバー層形成は、電池の正常な作動電圧よりも低い電圧(リチウム電池の場合、3ボルト対Li/Li+)でカバー層形成が起こるという事実に関連するものとして単純化して記載することが可能な電気化学条件によって起こる。従って、金属アルカリ金属が陰電極上に、及び/又は陰電極内に蓄えられ、それによって電池を充電する前に、先ず、亜ジチオン酸塩が形成される。
【0055】
Li2S2O4の形成のためのリチウム(ここでもその他のアルカリ金属に対する一例として挙げる)は、通常は、陽電極から発生する。これにより、第1の充電サイクルにおいて早くも、電池容量のために実際に必要とされるリチウムの一部が消費されてしまう。この問題は、陰電極の活性物質が非常に多孔性が高く、従って、内部面積が大きい場合に特に深刻である。それに応じてより大きなカバー層表面が形成され、陽電極中に最初に含まれるリチウムのより大きな割合(例えば、約25%)が、一回目の充電サイクルのカバー層形成に消費されてしまう。この問題は、陰電極が挿入電極、特に、それがグラファイト系のものである場合に特に存在する。
【0056】
前記第4主要態様の種々の実施例は、追加活性金属源、使用される補助電極、そして、追加活性金属の移送の標的である電極(以後、「標的電極」という)に関して異なる。
【0057】
具体的に、活性金属の予備供給源を適用する以下の変形例を使用することが可能であり、これらは、原則的に互いに組み合わせることができる。
前記活性金属は、純金属(即ち、化学的に結合されていない)として前記電解質と(好ましくは、浸漬によって)接触させることができる。
追加量の電解質を、前記電池のハウジングの外部の容器、又は、電池自身の内部に設けることができる。第1の場合、追加電解質は(イオン輸送を可能にする)電解質ブリッジを介して電池内の電解質と接続される。
前記追加の活性金属は、適当な化合物、アルカリ金属Aの場合は、好ましくは、亜ジチオン酸塩A2S2O4として使用することができる。
【0058】
前記補助電極は、原則的には、電池の作動に必要な成分に加えて、前記電解質溶液に浸漬させる導電性部材によって形成することができる。但し、好ましくは、前記電池自身のハウジング、より正確には、その内壁の少なくとも導電性部分が、補助電極として使用される。もしも追加金属の供給源が金属製伝導体である場合、それ自身によって補助電極を形成することができる。
【0059】
前記標的電極は、電池の陰電極と陽電極の両方とすることができる。
活性金属の予備供給源から陰電極への移送は、電解質の充電の後、但し電池の一回目の充電の前に行われるべきであり、電池の正常充電中と略同じ量、(金属アルカリ金属が陰電極上および/又は内に蓄積される前に)電極表面上にカバー層が形成されるまで続けられるべきである。
陽電極の場合、目的は、前の充電中にカバー層形成の結果として陽電極に起こった損失を、アルカリ金属の追加供給によって、置き換えることにある。この場合、電解質の充填後、電池の充電によってカバー層が陰電極上に形成され、この充電処理は、好ましくは、金属アルカリ金属が陰電極上および/又は内に蓄積され、それによって電池が充電されるまで継続される。その後、充電処理中に陽電極から抽出されたアルカリ金属を、それに活性金属を供給することによって置換する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
本発明を、以後、図面を参照して更に詳細に説明する。図示及び記載されている特徴構成は、それぞれ個々に、又は組み合わせで使用されて、本発明の好適実施例を提供するものである。
【0061】
図1は、ハウジング2を備える電気化学的電池1を略示している。その内部には、サンドイッチ構造の複数の層、即ち、陰電極3、多孔性絶縁層4及び陽電極5が収納されている。前記両電極3,5は、電気リード線6,7を介して端子接点8,9に接続され、これらを介して、電池充電用の充電装置に、又は使用時に電気エネルギ消費装置に接続することができる。
【0062】
前記電池の構造は、概して従来式のものであって、詳細に説明する必要がないものである。重要な特徴は、両電極3,5間にセパレータが存在しないことである。むしろ、この電池は多孔性絶縁層4を有し、これは電池の充電中に陰電極の陽電極5に面する表面上に析出する活性金属がそれを通して成長することを促進する。これにより、活性金属と陰電極3に面する陽電極5の表面との間に局所的接触が発生する。
【0063】
図1そして、より明瞭には図2は、前記両電極3,5が、好ましくは、前記絶縁層4よりも遥かに厚みが大きいことを示している。前記絶縁層4は、好ましくは、100μm以下の厚みを有し、これに対して、前記両電極は、典型的には約0.1mm〜2mmの厚みを有する。これらの数値は、これら図面の図示がそれらの厚みの絶対厚に対してではなく、およその厚み関係に対して尺度されたものであることを示している。むしろ、市販の電池は、通常、複数の薄い層から成るパックを有する。この点に関して、本発明は、ここに記載する特徴構成以外においては、典型的な電池と異なるものではない。
【0064】
前記両電極3,5の比較的大きな厚みは、この図示されている好適実施例において、両電極が、それぞれ、その内部において活性金属のイオンが、電池の充電および/又は放電中に受け取られる導電性電極物質11及び12を有することによるものである。好適な材料については既に述べた。陰電極3は、特に好ましくは、その(好ましくは多孔性)電極物質11が主として炭素から成るグラファイト電極である。陽電極は、好ましくは、リチウムコバルト酸化物からなる電極物質12を備え、好ましくは、多孔性構造も有するインターカレーション電極である。放電状態において、リチウムは、陽電極の内部に蓄えられる。充電中、リチウムイオンが、多孔性絶縁層4を通って陰電極の電極物質11内に移動する。更に、特定の作動状態において、上述したように、前記活性金属が、電極物質11と多孔性絶縁層4との間の境界部に析出する。この場合、活性金属は、絶縁層4の孔を貫通して、最終的には、この多孔性絶縁層4を通して、陽電極5と絶縁層4との間の境界部にまで成長し、ここで、説明した局所的短絡が発生する。
【0065】
両電極物質11,12と前記リード線6,7との間に必要な電気的接続は、図1及び2には図示されていない。それは、典型的には両電極物質11,12に接続することが可能な金属導電部材によって確保される。例えば、両電極物質11,12の多孔性絶縁層4の反対側の表面上の薄い導電シートを使用することができるが、適当な代替物は、例えば、前記電極物質が部分的又は完全に組み入れられた金属発泡材として構成された多孔性金属構造である。このタイプの構造は関連技術から知られているので、この点に関して更に説明は不要である。
【0066】
上述したように、それらによって本発明の関連において必要な機能(陰電極上に析出した活性物質に対する透過性、但し、局所的に範囲を定めた短絡を確保しながら)が達成される、前記多孔性絶縁層4の特徴構成の一般的に有効な具体的値(例えば、その多孔性及びその構造的構成要素に対する)を特定することは不可能である。但し、特定の電池に対する絶縁層用に提供される金属の好適性は、容易に実験によってテストすることができる。適当な実験構成が図3に非常に概略的に図示されている。これは、以下の層順序を有する。
【0067】
ニッケル金属からなる陰電極5;薄い金属シートとニッケルから成る発泡材又は延伸された金属の両方が適切である。
テスト材料16:絶縁層4に対するその好適性が評価される材料。
ニッケル金属からなる補助電極17:これは、液体透過性でなければならず、例えば、延伸された金属又は穿孔されたシートメタルから形成することができる。
セパレータ18:典型的なセパレータ材が好適である。この実験構成において、その電気絶縁特性、同時に電解質に対する透過性のみが重要である。
陽電極19:ニッケル発泡材としてのLiCoO2。
【0068】
これらの層は積層され、フレーム(図示せず)を使用して互いに圧縮される。全構成が、予定される電池の電解質溶液に対応する組成を有するSO2系電解質溶液中に浸漬される。
【0069】
図示の実験用電池は、充電装置20を使用して充電され、これによって、(図1及び2の電池について前述したように)リチウムが陽電極19から抽出され、陰電極に析出する。充電処理中、陰電極と補助電極との間の電位差を、電圧測定装置21を使用してモニタする。それは、通常は3.3ボルト(リチウム−ニッケル元素の電圧)である。リチウムが絶縁層16を通って補助電極17まで成長すると、これによって前記電位差の低下が起こる。この時点で、測定を停止し、実験用電池を分解する。絶縁層(その補助電極17に面する側)を視覚的に調べることによって、リチウム成長のタイプを確立することができる。リチウムが透過成長したポイントとリチウムの可能な蓄積のポイントも十分に認識することができる。従って、所望の場合、リチウムがテストした層16を局所的に制限されたポイントにおいてのみ貫通したか否か、その結果、それが本発明のための多孔性絶縁層として適切か否を調べることができる。
【0070】
図4は、本発明による無セパレータ測定電池の実験結果を図示している。この特定のケースにおいて、電池はLiCoO2から成る陽電極と、この陽電極の電極物質と直接に接触する構造である炭化ケイ素の多孔性構造中における金属リチウムの直接的析出で作動する陰電極とを有するものであった。LiAlCl4×1.5 SO2が電解質として使用された。
【0071】
公称容量の百分率での電池の容量Cが、充電及び放電サイクルの回数Nとの関係でプロットされている。陰電極の構造的不均一性による初期容量損失後、容量は90%で安定している。これは、前記無セパレータ構造の機能能力を示している。
【0072】
図5〜8は、本発明の第2主要態様の実験テスト中に得られた結果である。この場合、本発明によって最適化された陽電極が最適化されない電極と比較された。この実験構成は以下の特徴を有するものであった。
【0073】
幾何学的電極面積:1cm2
電極容量:40mAh
電解質溶液:LiAlCl4×1.5 SO2
電極材料:LiCoO2
【0074】
典型的な実験用電池(電位のゼロ電流測定用の参照電極を有する「E電池」)で、電圧を0.2mVsのサイクル速度で3.5Vと4.5Vとの間で変化させるサイクルを行った。図5及び6に、本発明によって最適化されない電極を使用した場合と、本発明による最適化電極を使用した場合に、それぞれ得られたサイクリックボルタモグラムを示す。mA単位での測定電流Iが、Li/Li+半電池に対してV単位で電池に印加された電圧Uに対してプロットされている。そのそれぞれが第1サイクルZ1と最終サイクルZ40とを含む4つのサイクルが図示されている。
【0075】
本発明によって最適化されない陽電極を有する電池の場合、図5は、主として、より高い電圧にシフトしている陽極ピークの位置に関して、サイクリックボルタモグラムの大きな変化を示している。それは最初のサイクルではまだ大幅に4Vを下回るものであるが、それは40回目のサイクルでは4.2V近くになっている。これは、電池の内部抵抗の増加に対応するものであり、これは、本発明者等の知見によれば、陽電極の不動態化によって引き起こされるものである。
【0076】
図6に示されている結果は、本発明による電極の最適化によって、40回のサイクル中、サイクリックボルタモグラムが実質的に変化しないこと、電池の電気値、特にその内部抵抗が一定であることを示している。
【0077】
これらの結果が図7に要約されている。ここでは、ピークの最大値(Umaxボルト)の変化が、本発明によって最適化された電極を有する電池(曲線A)、そして本発明によって最適化されない電極を有する電池(曲線B)について、サイクル回数に対してプロットされており、これらのデータは150回以上のサイクルに基づくものである。このプロットは又、本発明の電極最適化無しではピーク位置、従って、電池の内部抵抗が連続的に変化するのに対して、これらの電池データは、本発明によって最適化された電極が使用される場合にはほぼ一定に留まるということも図示している。
【0078】
図8は、電気放電容量(理論的容量のパーセント)の充電/放電サイクルの回数Nに対する依存性を、本発明によって最適化された電極を有する電池(曲線A)と、非最適化電極を有する電池(曲線B)とについて図示している。これらの特性も、本発明によって大幅に改善されている。最初の容量は約7%高い。更に、電池の充電/放電の繰返しによって起こる容量減少は遥かに少なくなっている。
【0079】
図9は、本発明の第3主態様による電解質溶液による電池の充填を図示している。図示されている時点において、両電極と多孔性絶縁層とは、例えば、図1に図示されているように、電池1のハウジング2内にすでに設置されている。充填手順は以下の工程を含む。
最初に、電池1のハウジング2を、ライン29(V=真空)を介して真空抜きする。この手順は、圧力測定装置30を使用して制御することができる。次に、ガス状SO2を、ライン31を介して供給し、これによって、ハウジング2の内部をガス状SO2で充填する。
次に、容器32内に提供される電解質溶液の充填を行う。そのSO2濃度は比較的低いので、電池1内に存在するガス状二酸化硫黄は、ハウジング2と容器32との間の接続を開放すると、電解質溶液中に容易に溶解する。言い換えると、電解質溶液との弱い発熱反応が起こる。従って、ハウジング2中のガスの量は減少する。電池1内に部分真空状態が発生し、それによって、更に電解質が容器32から吸引される。電解質は、電池1の内部に存在する層のすべての孔に浸透する。これは、導電性塩の一部が、この時点において、電池の内部に既に存在しているならば(例えば、前記第2主態様による洗浄工程の結果として)、更に補助される。
【0080】
図10〜12は、本発明の第4の主態様を図示している。活性金属としてのリチウムと、陰グラファイト挿入電極と、二酸化リチウムコバルトから成る電極物質を備える陽インターカレーション電極とを備える電池に基づき説明する。それは、一般的なその他の適切な活性金属と電極材料とにも容易に移し替えることが可能である。
【0081】
図10は、電解質24が充填された電池2を図示している。この図面において陽電極は見えないが、これも勿論存在する。前記電池1は、充填用に適した接続チューブ25を有し、これを通して、リチウム金属26の片を電解質24中に浸漬することができる。前記リチウム金属26は、電池の陰極8、即ち、陰電極3に電気接続されている。外部電圧を印加することなく、この構成においてはリチウム26の漸進的溶解が起こり、その間同時に、亜ジチオン酸リチウムのカバー層が陰電極上に形成される。この処置の間、陽電極と陰電極との間の電池回路は開放されている。
【0082】
この実施例では、前記リチウム金属26が、補助電極と活性金属の予備供給源とを同時に形成する。陰電極NEと補助電極AEとにおいて下記の反応が起こる。
【0083】
NE:2Li++2SO2+2e− →2Li2S2O4
AE:2Li → 2Li++2e−
【0084】
前記補助電極での反応によって発生した自由電子は、ライン接続27を介して陰電極へと流れ、そこで起こる反応によって消費される。熱力学的条件により、ライン27では電圧源は不要である。
【0085】
図10に図示の実施例では、電池の一回目の充電前に、陰電極上にカバー層が形成され、その間、陽電極からのリチウムは消費されない。従って、陽電極のリチウム含有率は、電池の充電及びその後の放電のためにフルに利用可能である。
【0086】
図10に類似の構成は、前の充電処理中のカバー層の形成の結果、陽電極において起こる活性金属の損失を置換することによって、一回目の充電処理後に陽電極を「再生」するためにも使用することができる。この場合、陽電極はリチウム移送の標的電極となる。即ち、電池の一回目の充電後、リチウム金属26と陽電極との間の接続27は閉じられ、他方、これと同時に陽電極と陰電極との間の電池回路は開放される。これによって、リチウムイオンが陽電極内に目的通りに導入され、以下の反応がそこで生じる。
【0087】
PE:Li(1−x)CoO2+xLi++xe− → LiCoO2
【0088】
図11は、追加量の電解質35が、リチウムの予備供給源として提供される実施例を図示している。この図示の実施例において、追加量の電解質は、容器36内に位置し、この容器が電解質ブリッジ37を介して電池2の電解質24に接続されている。補助電極38が、ライン接続39を介して電池の陰端子接点8に、従って、陰電極3に接続されている。前記ライン接続39に配置された電圧源40によって、(実験的に最適化された)電圧が前記補助電極38と陰電極3との間に印加され、これによって両電極において以下の反応が起こる。
【0089】
NE:2Li++2SO2+2e− → 2Li2S2O4
AE:2AlCl4− → 2AlCl3+Cl2+2e−
【0090】
補助電極での反応は、前記ライン接続39を介して、陰電極上に前記カバー層を発生させるために必要な電子を提供する。必要なLi+イオンは、前記追加量の電解質(即ち、その中に含まれる導電性塩中)から取り出すことができる。
【0091】
一回目の充電操作とそれによるリチウムの損失後に陽電極を再生するための図11に図示の構成の種々の変形例が可能である。そのような実施例においても、再び、電池の陽端末接点へのライン接続が提供される。但し、リチウムの移動は一回目の充電処理後に起こる。
【0092】
図12は、補助電極が電池2のハウジング41の金属壁42によって形成される実施例を図示している。従って、ライン接続43は、ハウジング41と陰端末接点8との間に設けられる。リチウムの予備供給源は、亜ジチオン酸リチウム44として提供され、これが電池に充填(例えば、粉体として)、それが前記ハウジング41の内壁と陰電極3との間の中間空間に位置するように充填される。従って、以下に説明される反応の反応生成物は、補助電極(ハウジング壁42)と標的電極(ここでは陰電極3)との両方への短い拡散経路を有するものなる。
【0093】
前記ライン接続43に接続された電圧源45の電圧によって駆動されて、以下の反応が両電極で起こる。
【0094】
NE:2Li++2SO2+2e− → 2Li2S2O4
AE:2AlCl4− → 2AlCl3+Cl2+2e−
【0095】
補助電極(ハウジング壁)での反応によって、下記の別の反応が起こる。
【0096】
(a):Cl2+SO2 → SO2Cl2
(b):SO2Cl2+Li2S2O4 → 2LiCl+3SO2
(c):2LiCl+2AlCl3 → 2Li++2AlCl4−
【0097】
反応(a)では、補助電極に形成された塩素が電解質からのSO2と反応して塩化スルフリルを形成し、これが更に反応(b)でリチウム予備供給源として提供された亜ジチオン酸リチウムと反応して塩化リチウムと二酸化硫黄とを形成する。反応(c)によって、前の反応の生成物から進んで−リチウムイオンが形成され、これらが更に陰電極のカバー層形成において反応する。
【0098】
この場合も、陽電極を標的電極とすることができ、前の実施例と同じ説明が同様に当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明による電池の略断面図
【図2】本発明の実施例での構成原理と電極物質のサイズ比とを示す斜視図
【図3】多孔性絶縁層陽の適当な材料を実験的に選択するための方法を説明するための略斜視図
【図4】本発明の第1主要態様の実験テストからの測定結果のグラフ
【図5】本発明の第2主要態様の実験テストからのサイクリックボルタモグラムのグラフ
【図6】本発明の第2主要態様の実験テストからのサイクリックボルタモグラムのグラフ
【図7】図5及び図6に図示されたサイクリックボルタモグラムに基づいて得られた結果の図
【図8】充電及び放電サイクルの回数の関数としての電池の放電容量のグラフ
【図9】本発明の第3主要態様を説明する略図
【図10】本発明の第4主要態様の第1変形例を説明する略図
【図11】本発明の第4主要態様の第2変形例を説明する略図
【図12】本発明の第4主要態様の第3変形例を説明する一部断面の略図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰電極と、導電性塩を含む電解質と、陽電極とを備える電気化学的電池であって、
前記電解質はSO2系であり、
前記陽電極と前記陰電極との間の中間空間は、電池の充電時に陰電極上に析出する活性物質が前記陽電極に接触して、その表面上で局所的に制限された短絡反応が起こるように配置構成されている電気化学的電池。
【請求項2】
多孔性絶縁層が前記陽電極に隣接し、且つそれと平行に延出し、これは前記陰電極上に析出した活性物質が前記電池の充電中に、前記絶縁層の孔を通って前記陽電極の表面まで成長が可能であるように配置形成されている請求項1に記載の電気化学的電池。
【請求項3】
前記陰電極は、電池の充電中に、その内部に前記導電性塩の陽金属イオンを取り込むように構成されている請求項1又は2に記載の電気化学的電池。
【請求項4】
前記陰電極は導電性電極物質を含み、この内部に前記電池の充電中に前記導電性塩の前記金属イオンが取り込まれ、前記多孔性絶縁層は前記陰電極の前記導電性電極物質と前記陽電極との間に位置している請求項3に記載の電気化学的電池。
【請求項5】
前記陰電極の前記導電性電極物質は、カーボンを含む請求項4に記載の電気化学的電池。
【請求項6】
前記陰電極は、平坦な導電性基材と、この基材上に結合された非導電性析出層とを有し、前記析出層は、前記基材の表面上に析出した活性物質がその孔を貫通して更にその内部に析出されるように配置形成され、
前記活性物質に対して不透過性のバリア層が前記析出層と前記陽電極との間に不在であり、前記多孔性絶縁層が前記析出層によって形成されるか、若しくは別の層である請求項2に記載の電気化学的電池。
【請求項7】
前記多孔性絶縁層は、粒子状、ファイバ状、又はチューブ状の孔構造材を含む請求項2に記載の電気化学的電池。
【請求項8】
前記孔構造材は、酸化物、炭化物、又は化学的に安定なケイ酸塩を含む請求項7に記載の電気化学的電池。
【請求項9】
前記多孔性絶縁層は、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンのターポリマーをベースとするバインダを含む請求項2に記載の電気化学的電池。
【請求項10】
ハウジング内に陽電極と陰電極とを有する請求項1〜9の何れかに記載の電気化学的電池の製造方法であって、
電極の表面から、その最適化のために水酸化物イオンを除去し、
水酸化物イオンと反応する第1洗浄成分を含む洗浄剤が、前記電極と、それに結合した水酸化物イオンが前記第1洗浄成分と反応することによって前記電極表面から取り除かれるように接触され、
前記電池の機能に障害となりうる前記洗浄剤、又はその反応生成物の成分を前記電極から除去する電気化学的電池の製造方法。
【請求項11】
前記第1洗浄成分は無プロトンルイス酸である請求項10に記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項12】
前記無プロトンルイス酸は、AlF3,BF3,CO2,CS2,及びGaCl3から成る群から選択される請求項11に記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項13】
前記電極は挿入電極、好ましくは、インターカレーション電極である請求項10〜12の何れかに記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項14】
H+イオンと反応する第2洗浄成分を含む洗浄剤が、前記挿入電極と、その内部に結合したH+イオンが前記成分との反応による前記電極から抽出されるように接触される請求項13に記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項15】
前記第2洗浄成分は、前記挿入電極に結合したH+イオンとイオン交換反応する塩である請求項10〜14の何れかに記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項16】
前記塩はハロゲン化物であり、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土金属、又は周期律表の第3主群の元素のフッ化物であり、特に、LiCl又はLiFである請求項15に記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項17】
実質的に水酸化物イオンを有さない電極表面を備える請求項1〜9の何れかに記載の電気化学的電池のための挿入電極、好ましくはインターカレーション電極。
【請求項18】
実質的にH+イオンを含まない請求項17に記載の挿入電極。
【請求項19】
請求項17又は18の電極を備える請求項1〜9の何れかに記載の電気化学的電池。
【請求項20】
ハウジング内に陽電極と陰電極とを有する請求項12の電気化学的電池の製造方法であって、該方法が、導電性塩を含有するSO2系電解質溶液が前記ハウジングに移送される工程を含み、この電解質溶液の移送は以下の部分工程:
ハウジングの内部をガス状SO2で満たす工程、
前記ハウジングの充填開口部を、前記ガス状SO2が電解質溶液中に容易に溶解するようなSO2濃度の電解質溶液を含む容器に気密状態に取付ける工程、
前記電解質溶液を、前記溶液中のSO2の溶解から生じる部分真空状態による駆動によって前記ハウジング内に流入させる工程、
を含む電気化学的電池の製造方法。
【請求項21】
前記導電性塩はLiAlCl4であり、前記電解質溶液のSO2濃度は、LiAlCl4×3.5 SO2以下である請求項20に記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項22】
ハウジング内に陽電極と陰電極とを有する請求項10〜16及び20〜21の何れかに記載の電気化学的電池の製造方法であって、該方法が、導電性塩を含有するSO2系電解質溶液が前記ハウジングに移送される工程を含み、前記電池の前記活性金属を含むカバー層が、前記電解質溶液の前記移送後に前記陰電極上に形成され、
前記方法は、更に、前記カバー層の形成によって引き起こされるその放電容量の減少に関して前記電池を最適化するために、前記カバー層を形成するために必要な活性金属が、予備供給源から、電極の1つに移される工程を有し、
前記予備供給源は前記電解質溶液と接触状態にされ、
補助電極が前記電解質溶液と電気接触状態にされ、
前記補助電極と、前記活性金属が移される電極との間に電線接続が形成され、
前記予備供給源から前記電極への前記活性金属の移送は、前記補助電極と、前記活性金属が移される電極との間に流れる電流によって行われる電気化学的電池の製造方法。
【請求項23】
前記予備供給源は、金属形態の活性金属を含む請求項22に記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項24】
前記予備供給源は、前記活性金属を化合物中に含む請求項22に記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項25】
その活性金属がアルカリ金属Aであり、前記予備供給源が前記アルカリ金属の亜ジチオン酸塩A2S2O4である電池を製造するための請求項24に記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項26】
前記予備供給源は、追加量の前記電解質を含む請求項22に記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項27】
前記活性金属が移送される前記電極と前記ハウジングとの間のライン接続が、前記ハウジングの内壁の導電性部分が前記補助電極を形成するように構成されている請求項22〜26の何れかに記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項28】
前記活性金属が移送される前記電極は前記陰電極であり、前記移送は、前記電池の最初の充電の前に起こる請求項22〜27の何れかに記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項29】
前記活性金属が移送される前記電極は前記陽電極であり、
前記移送は、前記活性金属を含有するカバー層の前記陰電極上の形成を伴って前記電池が初めて少なくとも部分的に充電された後に起こり、
前記陽電極に対する前記活性金属の供給は、前の充電によって引き起こされた活性金属の含有量の低下を少なくとも部分的に補填する請求項22〜28の何れかに記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項30】
前記活性金属は、アルカリ金属類、アルカリ土金属類、及び周期律表の第2群の金属から成る群から選択される請求項1又は19の電気化学的電池、あるいは請求項10、20又は22の何れかに記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項31】
前記活性金属は、リチウム、ナトリウム、カルシウム、亜鉛、又はアルミニウムである請求項30の電気化学的電池又は電気化学的電池の製造方法。
【請求項32】
前記陽電極は、金属酸化物を含む請求項1又は19の電気化学的電池、あるいは請求項10、20又は22の何れかに記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項33】
前記陽電極は、インターカレーション化合物を含む請求項32の電気化学的電池又は電気化学的電池の製造方法。
【請求項34】
前記陽電極は、CoO2を含むインターカレーション化合物を含有する請求項33の電気化学的電池又は電気化学的電池の製造方法。
【請求項1】
陰電極と、導電性塩を含む電解質と、陽電極とを備える電気化学的電池であって、
前記電解質はSO2系であり、
前記陽電極と前記陰電極との間の中間空間は、電池の充電時に陰電極上に析出する活性物質が前記陽電極に接触して、その表面上で局所的に制限された短絡反応が起こるように配置構成されている電気化学的電池。
【請求項2】
多孔性絶縁層が前記陽電極に隣接し、且つそれと平行に延出し、これは前記陰電極上に析出した活性物質が前記電池の充電中に、前記絶縁層の孔を通って前記陽電極の表面まで成長が可能であるように配置形成されている請求項1に記載の電気化学的電池。
【請求項3】
前記陰電極は、電池の充電中に、その内部に前記導電性塩の陽金属イオンを取り込むように構成されている請求項1又は2に記載の電気化学的電池。
【請求項4】
前記陰電極は導電性電極物質を含み、この内部に前記電池の充電中に前記導電性塩の前記金属イオンが取り込まれ、前記多孔性絶縁層は前記陰電極の前記導電性電極物質と前記陽電極との間に位置している請求項3に記載の電気化学的電池。
【請求項5】
前記陰電極の前記導電性電極物質は、カーボンを含む請求項4に記載の電気化学的電池。
【請求項6】
前記陰電極は、平坦な導電性基材と、この基材上に結合された非導電性析出層とを有し、前記析出層は、前記基材の表面上に析出した活性物質がその孔を貫通して更にその内部に析出されるように配置形成され、
前記活性物質に対して不透過性のバリア層が前記析出層と前記陽電極との間に不在であり、前記多孔性絶縁層が前記析出層によって形成されるか、若しくは別の層である請求項2に記載の電気化学的電池。
【請求項7】
前記多孔性絶縁層は、粒子状、ファイバ状、又はチューブ状の孔構造材を含む請求項2に記載の電気化学的電池。
【請求項8】
前記孔構造材は、酸化物、炭化物、又は化学的に安定なケイ酸塩を含む請求項7に記載の電気化学的電池。
【請求項9】
前記多孔性絶縁層は、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンのターポリマーをベースとするバインダを含む請求項2に記載の電気化学的電池。
【請求項10】
ハウジング内に陽電極と陰電極とを有する請求項1〜9の何れかに記載の電気化学的電池の製造方法であって、
電極の表面から、その最適化のために水酸化物イオンを除去し、
水酸化物イオンと反応する第1洗浄成分を含む洗浄剤が、前記電極と、それに結合した水酸化物イオンが前記第1洗浄成分と反応することによって前記電極表面から取り除かれるように接触され、
前記電池の機能に障害となりうる前記洗浄剤、又はその反応生成物の成分を前記電極から除去する電気化学的電池の製造方法。
【請求項11】
前記第1洗浄成分は無プロトンルイス酸である請求項10に記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項12】
前記無プロトンルイス酸は、AlF3,BF3,CO2,CS2,及びGaCl3から成る群から選択される請求項11に記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項13】
前記電極は挿入電極、好ましくは、インターカレーション電極である請求項10〜12の何れかに記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項14】
H+イオンと反応する第2洗浄成分を含む洗浄剤が、前記挿入電極と、その内部に結合したH+イオンが前記成分との反応による前記電極から抽出されるように接触される請求項13に記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項15】
前記第2洗浄成分は、前記挿入電極に結合したH+イオンとイオン交換反応する塩である請求項10〜14の何れかに記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項16】
前記塩はハロゲン化物であり、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土金属、又は周期律表の第3主群の元素のフッ化物であり、特に、LiCl又はLiFである請求項15に記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項17】
実質的に水酸化物イオンを有さない電極表面を備える請求項1〜9の何れかに記載の電気化学的電池のための挿入電極、好ましくはインターカレーション電極。
【請求項18】
実質的にH+イオンを含まない請求項17に記載の挿入電極。
【請求項19】
請求項17又は18の電極を備える請求項1〜9の何れかに記載の電気化学的電池。
【請求項20】
ハウジング内に陽電極と陰電極とを有する請求項12の電気化学的電池の製造方法であって、該方法が、導電性塩を含有するSO2系電解質溶液が前記ハウジングに移送される工程を含み、この電解質溶液の移送は以下の部分工程:
ハウジングの内部をガス状SO2で満たす工程、
前記ハウジングの充填開口部を、前記ガス状SO2が電解質溶液中に容易に溶解するようなSO2濃度の電解質溶液を含む容器に気密状態に取付ける工程、
前記電解質溶液を、前記溶液中のSO2の溶解から生じる部分真空状態による駆動によって前記ハウジング内に流入させる工程、
を含む電気化学的電池の製造方法。
【請求項21】
前記導電性塩はLiAlCl4であり、前記電解質溶液のSO2濃度は、LiAlCl4×3.5 SO2以下である請求項20に記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項22】
ハウジング内に陽電極と陰電極とを有する請求項10〜16及び20〜21の何れかに記載の電気化学的電池の製造方法であって、該方法が、導電性塩を含有するSO2系電解質溶液が前記ハウジングに移送される工程を含み、前記電池の前記活性金属を含むカバー層が、前記電解質溶液の前記移送後に前記陰電極上に形成され、
前記方法は、更に、前記カバー層の形成によって引き起こされるその放電容量の減少に関して前記電池を最適化するために、前記カバー層を形成するために必要な活性金属が、予備供給源から、電極の1つに移される工程を有し、
前記予備供給源は前記電解質溶液と接触状態にされ、
補助電極が前記電解質溶液と電気接触状態にされ、
前記補助電極と、前記活性金属が移される電極との間に電線接続が形成され、
前記予備供給源から前記電極への前記活性金属の移送は、前記補助電極と、前記活性金属が移される電極との間に流れる電流によって行われる電気化学的電池の製造方法。
【請求項23】
前記予備供給源は、金属形態の活性金属を含む請求項22に記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項24】
前記予備供給源は、前記活性金属を化合物中に含む請求項22に記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項25】
その活性金属がアルカリ金属Aであり、前記予備供給源が前記アルカリ金属の亜ジチオン酸塩A2S2O4である電池を製造するための請求項24に記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項26】
前記予備供給源は、追加量の前記電解質を含む請求項22に記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項27】
前記活性金属が移送される前記電極と前記ハウジングとの間のライン接続が、前記ハウジングの内壁の導電性部分が前記補助電極を形成するように構成されている請求項22〜26の何れかに記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項28】
前記活性金属が移送される前記電極は前記陰電極であり、前記移送は、前記電池の最初の充電の前に起こる請求項22〜27の何れかに記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項29】
前記活性金属が移送される前記電極は前記陽電極であり、
前記移送は、前記活性金属を含有するカバー層の前記陰電極上の形成を伴って前記電池が初めて少なくとも部分的に充電された後に起こり、
前記陽電極に対する前記活性金属の供給は、前の充電によって引き起こされた活性金属の含有量の低下を少なくとも部分的に補填する請求項22〜28の何れかに記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項30】
前記活性金属は、アルカリ金属類、アルカリ土金属類、及び周期律表の第2群の金属から成る群から選択される請求項1又は19の電気化学的電池、あるいは請求項10、20又は22の何れかに記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項31】
前記活性金属は、リチウム、ナトリウム、カルシウム、亜鉛、又はアルミニウムである請求項30の電気化学的電池又は電気化学的電池の製造方法。
【請求項32】
前記陽電極は、金属酸化物を含む請求項1又は19の電気化学的電池、あるいは請求項10、20又は22の何れかに記載の電気化学的電池の製造方法。
【請求項33】
前記陽電極は、インターカレーション化合物を含む請求項32の電気化学的電池又は電気化学的電池の製造方法。
【請求項34】
前記陽電極は、CoO2を含むインターカレーション化合物を含有する請求項33の電気化学的電池又は電気化学的電池の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−506260(P2007−506260A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527267(P2006−527267)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【国際出願番号】PCT/DE2004/002105
【国際公開番号】WO2005/031908
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(504274619)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【国際出願番号】PCT/DE2004/002105
【国際公開番号】WO2005/031908
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(504274619)
【Fターム(参考)】
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