説明

電気化学装置および電気化学エネルギーを供給する方法

電気化学装置(例えば電池)は、流体表面を有する少なくとも1つの電極を備えている。この流体表面は、表面エネルギーの作用を利用して流体表面の位置を維持しても、および/または、流体内の流れを調整することができる。流体案内構造部によっても、流れを調整、または、流体を所定のパターンに保持することができる。上記装置内の電解質は、イオン搬送流体(例えば、多孔性固体支持部中に浸潤させたイオン搬送流体)をさらに備えていてもかまわない。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔背景技術〕
最近の“グリーン”なエネルギー生成に寄せられる関心は、電力を提供するための様々な新しいプロセスおよび既存の方法の改良を創造してきた。しかしながら、多数の再生可能なエネルギー源(例えば、太陽エネルギーや風力エネルギー)は継続的に利用可能できない。したがって、需要に応じて電気を供給するためには、高い蓄電能力が必要とされることがある。たとえ連続的に利用可能な電力源(例えば核エネルギー)であっても、連続的に利用可能な平均容量を超える断続的なピーク負荷を許容できる蓄電によって恩恵を受けることもある。これらの目的にはふさわしいと言われている既存の電池はときに高価であり、特に寿命に基づいて考えると(サイクル寿命が限定されていることを考慮すると)高価である。
【0002】
さらに、既存の電池のエネルギー密度は、化石燃料のエネルギー密度に比べてはるかに低く、したがって、個人的な移動のための炭化水素の使用には公知の負の効果があるにもかかわらず、このような目的のためには主に炭化水素燃料を引き続き使用しようと考える理由になっている。電池技術が向上すれば、電気自動車のより広範囲な使用および“グリーン”なエネルギー生成が可能になり得る。
【0003】
〔発明の概要〕
一つの態様では、電気化学装置が、2つの電極(1つの陽極および1つの陰極)と、一方の電極に接触している表面からもう一方の電極に接触している表面へ、イオン電流を伝導するように構成された電解質とを備えている。上記電極のうちの少なくとも一方(または、任意に、両方)の電極は、表面エネルギーの作用によって実質的に平滑な固体支持部に少なくとも部分的に付着可能な流体特性を有する電気化学活性流体層を備え、該電気化学活性流体層の表面は該電解質に接触している。
【0004】
両方の電極が電気化学活性流体層を備えているのであれば、これらの層は上記固体支持部に共通する表面に接触していてもかまわない。上記固体支持部は、流体案内構造部を備えていてもかまわない。この流体案内構造部は、例えば、表面溝、導管、または、異なる濡れ性を有する複数領域からなるパターンなどであり、いずれも、表面張力によって流体の流動を案内するように構成されていてもかまわない。上記流体案内構造部は、流体表面積を圧力に応じて調節するように構成されていてもよく、また、流体の流量または流動方向を制御するように構成されていてもよい。上記流体案内構造部は(例えば、上記電気化学装置の電気特性を最大化もしくは最小化することによって、または、選択値が得られるように該電気特性を調節することによって)、該電気特性を最適化するように選択されるフローパターンにしたがって、流体を分配するように構成されていてもかまわない。上記装置は、上記流体案内構造部の特性、例えば表面エネルギー、濡れ挙動、形状、または、温度を、例えば、上記装置の特性、例えば、全体的な電流、全体的な電圧、局所的な電流、局所的な電圧、電流密度、電気化学活性流体の量、電気化学活性流体の組成、反応生成物の量、または、反応生成物の組成に応じて動的に変化させるように構成されていてもかまわない。さらに、このような動的な変化によって、上記電気化学活性流体層の流動特性を変化させてもかまわない。
【0005】
上記電気化学活性流体層の少なくとも一部が、上記実質的に平滑な固体支持部に空間的に変化する様態で付着していてもかまわない。上記実質的に平滑な固体支持部は電気的な接触部を備えていてもよく、また、湾曲していてもよい。上記固体支持部と流体層とが異なる組成を有していてもかまわない。
【0006】
上記電解質が、正イオンおよび負イオンの一方または両方の動きによって、イオン電流を伝導してもよく、また、陰極から陽極および陽極から陰極への一方または両方の向きに電流を通してもよい。上記電解質が固体表面を有していてもよく、この固体表面が上記電気化学活性流体に対して不浸性を有していてもよい。また、上記電解質が、上記電気化学活性流体層の流体の流動を案内するように構成された流体案内構造部を備えていてもかまわない。上記電解質が、イオンが内部を移動して上記イオン電流を発生させることができるイオン搬送流体を含んでいてもかまわない。また、上記電解質が、固体構造部、例えば、上記イオン搬送流体を浸潤させた多孔性構造部(例えば、スポンジ、ウィック(wick)、複数のファイバー、織物、部分的焼結物、メッシュ、開孔部を有するシート、織り目加工済み表面、または、粒子の集合体)をさらに備えていてもかまわない。上記イオン搬送流体が上記多孔性構造部を濡らしてもかまわない。また、上記電気化学活性流体が、上記固体構造部を濡らすより、上記イオン搬送流体を多く濡らしてもかまわない(上記固体構造部を濡らさない場合も含める)。上記陰極および陽極が、それぞれ、電気化学活性流体層を備えるのであれば、上記電気化学活性流体層が互いを濡らすより、上記イオン搬送流体が各電気化学活性流体層を多く濡らしてもかまわない(上記電気化学活性流体層が互いを濡らさない場合も含める)。上記イオン搬送流体が超臨界状態にあってもよく、また、電気化学活性流体に一方または両方の電極において接触していてもよい。上記イオン搬送流体が、上記電気化学活性流体に対して不混和性を有していてもかまわない。上記イオン搬送流体が外部の貯蔵部に通じていてもよく、また、上記イオン搬送流体の流動によって熱を取り除くように構成されていてもかまわない。
【0007】
上記電解質の厚さは、約1cm、1mm、100μm、10μm、1μm、100nm、または、10nm未満であってもかまわない。上記電解質が、上記陰極の少なくとも一部と上記陽極の少なくとも一部との反応生成物を含有していてもかまわない。上記反応生成物が流体であれば、該反応生成物が、上記電解質の固体表面、または、上記電極のうちの少なくとも一方を濡らしてもよく、または、上記電極のうちの少なくとも一方の固体表面に付着してもよい。上記反応生成物が貯蔵部に通じていてもよく、また、上記電解質が、上記反応生成物の流動によって熱を取り除くように構成されていてもかまわない。上記陰極の少なくとも一部と上記陽極の少なくとも一部との反応生成物が、上記電気化学活性流体にて相互に混合されていてもかまわない。上記電解質、または、上記電極のうちの一方が、上記陰極の少なくとも一部と上記陽極の少なくとも一部との反応生成物を案内するように構成された流体反応構造物を備えていてもかまわない。
【0008】
上記電気化学活性流体層が、液体、ペースト、ゲル、乳濁液、揺変性を有する流体、超臨界流体、または、非ニュートン流体を備えていてもよく、また、イオン性または電子伝導体であってもよい。上記電気化学活性流体層が、電気化学活性を有しないキャリア流体を備えていてもかまわない。上記電気化学活性流体層が、上記電解質を濡らしてもよく、または、これに付着してもよい。上記流体層が溶解気体、例えば酸素を含有していてもよく、または、液体金属、例えば合金を含有していてもよい。該液体金属が、約100℃、50℃、25℃、または、0℃で液体であってもよい。上記電気化学活性流体が外部の貯蔵部に通じていてもよく、また、上記電池からから熱エネルギーを搬出するように構成されていてもかまわない。
【0009】
上記陽極が、リチウム、ナトリウム、水銀、スズ、セシウム、ルビジウム、カリウム、または、これらのうちのいずれかの合金、溶液、アマルガム、もしくは、金属間化合物を含有していてもかまわない。上記陰極が、ガリウム、鉄、水銀、スズ、硫黄、塩素、または、これらのうちのいずれかの合金、溶液、アマルガム、もしくは、金属間化合物を含有していてもかまわない。上記電解質が、過塩素酸塩、エーテル、グラフェン、ポリイミド、サクシノニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、エチレンカーボネート、β−アルミナ、または、イオン伝導性ガラスを含有していてもかまわない。上記電気化学装置が冷却システムを備え、この冷却システムが、熱パイプ、熱交換体、または、微小溝部を備えていてもかまわない。
【0010】
別の態様では、電気化学エネルギーを供給する方法が、第1の電極に接触している第1の電解質表面から第2の電極に接触している第2の電解質表面へイオン電流を伝導するように構成された電解質によって分離された、該第1の電極および該第2の電極に電気的負荷をかけることを含む。これら電極のうちの少なくとも一方が、表面エネルギーの作用によって加速度の場(例えば重力場)に逆らって固体支持部に付着する電気化学活性流体シートを備えている。上記流体シートの表面が、上記電解質に接触している。
【0011】
別の態様では、電池を充電する方法が、第1の電極に接触している第1の電解質表面から第2の電極に接触している第2の電解質表面へイオン電流を伝導するように構成された電解質によって分離された、該第1の電極および該第2の電極に電位をかけることを含む。これら電極のうちの少なくとも一方が、表面エネルギーの作用によって加速度の場(例えば重力場)に逆らって固体支持部に付着する電気化学活性流体シートを備えている。上記流体シートの表面が上記電解質に接触している。
【0012】
別の態様では、表面エネルギーの作用によって実質的に平滑な固体支持部に付着する電気化学活性流体層を備えた電極を有する電池を充電する方法が、上記電気化学活性流体を上記実質的に平滑な固体支持部に沿って流動させることによって、該電気化学活性流体層をリフレッシュすることを含む。リフレッシュには、電気化学種が枯渇した流体を除去すること、および、該電気化学種を含有する流体を導入することを含んでもよく、また、上記流体を実質的に層流で流動させることを含んでもよい。
【0013】
別の態様では、イオン搬送流体を備えた電解質層を有する電池をリフレッシュする方法が、上記イオン搬送流体を上記電解質層を介して流動させることによって、上記イオン搬送流体をリフレッシュすることを含む。上記イオン搬送流体のリフレッシュには、電気化学種が枯渇した流体を除去すること、および、該電気化学種を含有する流体を導入することを含んでもよい。
【0014】
別の態様では、電気化学反応の流体反応生成物を生成する電池をリフレッシュする方法が、上記流体反応生成物を流動させることによって、該電池をリフレッシュすることを含む。
【0015】
別の態様では、電池用電極が、表面エネルギーの作用によって実質的に平滑な固体支持部に付着する電気化学活性流体層を備え、該電気化学活性流体層が電解質に接触するように構成されている。
【0016】
別の態様では、電池を製作する方法が、2つの電極に電解質を対とすることを含み、これら電極のうちの少なくとも一方が、該電解質とイオン流通状態にある電気化学活性流体層を表面エネルギーの作用によって実質的に平滑な固体支持部において支持するように構成されている。
【0017】
別の態様では、電気化学装置が、2つの電極(1つの陽極および1つの陰極)と、一方の電極からもう一方の電極にイオン電流を伝導するように構成された電解質とを備えている。該電極のうちの少なくとも一方が、該電解質に接触している表面を有する電気化学活性流体層と、この電気化学活性流体を所定のフローパターンにしたがって案内するように構成された流体案内構造部を有する、マイクロパターンが形成された支持部とを備えている。上記マイクロパターンが形成された支持部は、マイクロ機械加工法、リソグラフィー法、成型法、印刷法、打ち出し法、または、レプリカ印刷法(replica−printing)で作製されていてもよく、また、複数の流体をそれぞれの所定のフローパターンにしたがって案内するように構成された流体案内構造部を備えていてもよい。上記マイクロパターンが、上記陽極の電気化学活性流体を案内するように構成された第1の流体案内構造部と、上記陰極の電気化学活性流体を案内するように構成された第2の流体案内構造部とを備えていてもかまわない。上記マイクロパターンが形成された支持部が、上記陽極の電気化学活性流体を濡らすように構成された第1の流体案内構造部と、上記陰極の電気化学活性流体を濡らすように構成された第2の流体案内構造部とを備えていてもかまわない。上記マイクロパターンが形成された支持部が、電気化学活性流体と電解質との間の接触を空間的に変化させるように構成されていてもかまわない。
【0018】
上記マイクロパターンが形成された支持部が流体溝を備えていてもよい。また、この流体溝が、上記電気化学活性流体を濡らす表面を有していてもよく、または、上記電気化学活性流体を表面張力によって保持するように構成されていてもよい。上記流体溝のある寸法がこの流体溝の長さ方向に沿って変化してもよい。また、該流体溝が、上記電解質に接触している電気化学活性流体の表面に対して平行であっても、平行でなくても(例えば垂直であっても)かまわない。上記マイクロパターンが形成された支持部が複数の流体溝を備えていてもよく、これらの流体溝が相互に通じていてもよい。上記マイクロパターンが形成された支持部が、電気化学活性流体層に対して異なる濡れ挙動を有する第1の領域および第2の領域を備えていてもかまわない。上記流体案内構造部が、上記マイクロパターンが形成された支持部上に、規定された表面形状(例えば、複数の表面突出部)を有していてもかまわない。
【0019】
上記電気化学装置が、上記流体案内構造部の特性、例えば、表面エネルギー、濡れ挙動、形状、または、温度を動的に変化させて、例えば、上記電気化学活性流体層の流動特性を変化させるように構成されていてもかまわない。上記流体案内構造部の特性の動的変化は、装置の特性、例えば、全体的な電流、全体的な電圧、局所的な電流、局所的な電圧、電流密度、電気化学活性流体の量、電気化学活性流体の組成、反応生成物の量、または、反応生成物の組成に応じて発生させればよい。
【0020】
別の態様では、電気化学エネルギーを供給する方法が、第1の電極に接触している第1の電解質表面から第2の電極に接触している第2の電解質表面へイオン電流を伝導するように構成された電解質によって分離された、該第1の電極および該第2の電極に電気的負荷をかけることを含み、これら電極のうちの少なくとも一方が、流体案内構造部を有するマイクロパターンが形成された支持部を備え、かつ、電気化学活性流体が該電解質に接触し、所定のフローパターンにしたがって流動するように該流体案内構造部によって案内される構成で、該電気化学活性流体を該マイクロパターンが形成された支持部に沿って流動させる。
【0021】
別の態様では、電池を充電する方法が、第1の電極に接触している第1の電解質表面から第2の電極に接触している第2の電解質表面へイオン電流を伝導するように構成された電解質によって分離された、該第1の電極および該第2の電極に電位をかけることを含み、これら電極のうちの少なくとも一方が、流体案内構造部を有するマイクロパターンが形成された支持部を備え、かつ、電気化学活性流体が該電解質に接触し、所定のフローパターンにしたがって流動するように該流体案内構造部によって案内される構成で、該電気化学活性流体を該マイクロパターンが形成された支持部に沿って流動させる。
【0022】
別の態様では、マイクロパターンが形成された固体支持部に沿って流動し、電解質に接触する電気化学活性流体層を備えた電極を有する電池を充電する方法が、この電気化学活性流体を所定のフローパターンにしたがって該固体支持部に沿って流動させることによって、該電気化学活性流体をリフレッシュすることを含む。上記電気化学活性流体のリフレッシュには、電気化学種が枯渇した電気化学活性流体を除去すること、および、該電気化学種を含有する電気化学活性流体を導入することを含んでもかまわない。上記電気化学活性流体の流動には、上記電気化学活性流体を実質的に層流で流動させることを含んでもかまわない。
【0023】
別の態様では、電池用電極が、表面エネルギーの作用によってマイクロパターンが形成された固体支持部に付着する電気化学活性流体層を備え、この電気化学活性流体が電解質に接触するように構成され、該マイクロパターンが形成された固体支持部が、所定のフローパターンにしたがって該電気化学活性流体を案内するように構成された流体案内構造部を備えている。
【0024】
別の態様では、電池を製作する方法が、1つの陽極および1つの陰極を含めた2つの電極に電解質を対とすることを含み、これら電極のうちの少なくとも一方が、該電解質とイオン流通状態にある電気化学活性流体層をマイクロパターンが形成された固体支持部において支持するように構成され、このマイクロパターンが形成された固体支持部が、該電気化学活性流体を所定のフローパターンにしたがって案内するように構成された流体案内構造部を備えている。
【0025】
別の態様では、電気化学装置が、2つの電極(1つの陰極および1つの陽極)と、該電極のうちの一方に接触している第1の電解質表面から別の電極に接触している第2の電解質表面へ、イオン電流を伝導するように構成された電解質とを備えている。該電極のうちの少なくとも一方が、該電解質に接触している表面を有する電気化学活性流体層と、この電気化学活性流体を所定の位置に保持するように構成された流体案内構造部を有する、マイクロパターンが形成された支持部とを備えている。
【0026】
別の態様では、電気化学エネルギーを供給する方法が、第1の電極に接触している第1の電解質表面から第2の電極に接触している第2の電解質表面へイオン電流を伝導するように構成された電解質によって分離された、該第1の電極および該第2の電極に電気的負荷をかけることを含む。該第1の電極および第2の電極のうちの少なくとも一方が、流体案内構造部を有するマイクロパターンが形成された支持部を備えている。上記方法は、電気化学活性流体が該電解質に接触し該流体案内構造部によって所定の位置に保持される構成で、該電気化学活性流体を該マイクロパターンが形成された支持部に沿って流動させることをさらに含む。
【0027】
別の態様では、電池を充電する方法が、第1の電極に接触している第1の電解質表面から第2の電極に接触している第2の電解質表面へイオン電流を伝導するように構成された電解質によって分離された、該第1の電極および該第2の電極に電位をかけることを含む。該第1の電極および第2の電極のうちの少なくとも一方が、流体案内構造部を有するマイクロパターンが形成された支持部を備えている。上記方法は、電気化学活性流体が該電解質に接触し該流体案内構造部によって所定の位置に保持される構成で、該電気化学活性流体を該マイクロパターンが形成された支持部に沿って流動させることをさらに含む。
【0028】
別の態様では、マイクロパターンが形成された固体支持部に沿って流動し、電解質に接触する電気化学活性流体層を備えた電極を有する電池を充電する方法が、この電気化学活性流体を該固体支持部に沿って流動させる一方で、電気化学活性流体を所定の位置に保持することによって、該電気化学活性流体層をリフレッシュすることを含む。上記電気化学活性流体層のリフレッシュには、電気化学種が枯渇した電気化学活性流体を除去すること、および、該電気化学種を含有する電気化学活性流体を導入することを含んでもかまわない。上記電気化学活性流体の流動には、上記電気化学活性流体を実質的に層流で流動させることを含んでもかまわない。
【0029】
別の態様では、電池用電極が、表面エネルギーの作用によってマイクロパターンが形成された固体支持部に付着する電気化学活性流体層を備え、この電気化学活性流体層が電解質に接触するように構成され、該マイクロパターンが形成された固体支持部が、電気化学活性流体を所定の位置に保持するように構成された流体案内構造部を備えている。
【0030】
別の態様では、電池を製作する方法が、2つの電極(1つの陽極および1つの陰極)に電解質を対とすることを含む。これら電極のうちの少なくとも一方が、該電解質とイオン流通状態にある電気化学活性流体層をマイクロパターンが形成された固体支持部において支持するように構成され、このマイクロパターンが形成された固体支持部が、該電気化学活性流体を所定の位置に保持するように構成された流体案内構造部を備えている。
【0031】
別の態様では、電気化学装置が、2つの電極(1つの陰極および1つの陽極)と、該電極のうちの一方に接触している第1の電解質表面から別の電極に接触している第2の電解質表面へ、イオン電流を伝導するように構成された電解質とを備えている。上記陰極は、上記電解質に関与するように構成された第1のマイクロ構造を有する流体案内構造部に付着するように構成された第1の電気化学活性流体層を備え、上記陽極は、上記電解質に関与するように構成された第2のマイクロ構造を有する流体案内構造部に付着するように構成された第2の電気化学活性流体層を備えている。上記第1のマイクロ構造を有する流体案内構造部は、上記第1の電気化学活性流体を第1の所定のフローパターンにしたがって案内するように構成されていてもよく、一方で、上記第2のマイクロ構造を有する流体案内構造部は、上記第2の電気化学活性流体を第2の所定のフローパターンにしたがって案内するように構成されていてもよい。上記第1のマイクロ構造を有する流体案内構造部は、上記第1の電気化学活性流体を第1の所定の位置に保持するように構成されていてもよく、一方で、上記第2のマイクロ構造を有する流体案内構造部は、上記第2の電気化学活性流体を第2の所定の位置に保持するように構成されていてもよい。上記第1のマイクロ構造を有する流体案内構造部は、マイクロ機械加工されていても、リソグラフィー法で作製されていても、または、成型法、印刷法、打ち出し法、または、レプリカ印刷(replica−printing)法で作製されていてもかまわない。
【0032】
上記第1のマイクロ構造を有する流体案内構造部が複数のファイバーまたは複数の粒子を備えていてもよく、このファイバーまたは粒子が上記電解質の表面に固着してもよい。上記第1のマイクロ構造を有する流体案内構造部が流体溝を備えていてもよく、この流体溝が流体溝の長さ方向に沿って変化する寸法を有していても、上記電解質の表面に対して平行であっても、平行でなくてもよい。上記第1のマイクロ構造を有する流体案内構造部が複数の流体溝を備えていてもよく、そのうちの少なくとも2つの流体溝が相互に通じていてもよい。上記第1のマイクロ構造を有する流体案内構造部が、空間的に変化する特性を有していてもかまわない。上記電気化学装置が、上記第1のマイクロ構造を有する流体案内構造部の特性を動的に変化させるように構成されていてもかまわない。
【0033】
別の態様では、電気化学エネルギーを供給する方法が、陰極に接触している第1の電解質表面から陽極に接触している第2の電解質表面へイオン電流を伝導するるように構成された電解質によって分離された、該陰極および該陽極に電気的負荷をかけることを含む。上記陰極は、上記電解質に関与するように構成された第1のマイクロ構造を有する流体案内構造部を備え、上記陽極は、上記電解質に関与するように構成された第2のマイクロ構造を有する流体案内構造部を備えている。上記方法は、上記電解質と関与状態にある第1のマイクロ構造を有する流体案内構造部に沿って第1の電気化学活性流体を流動させること、および、上記電解質と関与状態にある第2のマイクロ構造を有する流体案内構造部に沿って第2の電気化学活性流体を流動させることをさらに含む。
【0034】
別の態様では、電池を充電する方法が、陰極に接触している第1の電解質表面から陽極に接触している第2の電解質表面へイオン電流を伝導するように構成された電解質によって分離された、該陰極および該陽極に電位をかけることを含む。上記陰極は、上記電解質に関与するように構成された第1のマイクロ構造を有する流体案内構造部を備え、上記陽極は、上記電解質に関与するように構成される第2のマイクロ構造を有する流体案内構造部を備えている。上記方法は、上記電解質と関与状態にある第1のマイクロ構造を有する流体案内構造部に沿って第1の電気化学活性流体を流動させること、および、上記電解質と関与状態にある第2のマイクロ構造を有する流体案内構造部に沿って第2の電気化学活性流体を流動させることをさらに含む。
【0035】
別の態様では、電解質に関与するように構成された第1のマイクロ構造を有する流体案内構造部に付着する第1の電気化学活性流体層と、該電解質に関与するように構成された第2のマイクロ構造を有する流体案内構造部に付着する第2の電気化学活性流体層とを備えた電極を有する電池を充電する方法が、この第1の電気化学活性流体を上記第1のマイクロ構造を有する流体案内構造部に沿って流動させることによって第1の電気化学活性流体層をリフレッシュすることを含む。上記第1の電気化学活性流体層のリフレッシュには、電荷キャリアが枯渇した電気化学活性流体を除去すること、および、該電荷キャリアを含有する電気化学活性流体を導入することを含んでもかまわない。上記第1の電気化学活性流体の流動には、上記第1の電気化学活性流体を実質的に層流で流動させることを含んでもかまわない。
【0036】
別の態様では、1対の電池用電極が、電解質に関与し、第1の電気化学活性流体層を支持するように構成された第1のマイクロ構造を有する流体案内構造部と、該電解質に関与し、第2の電気化学活性流体層を支持するように構成された第2のマイクロ構造を有する流体案内構造部とを備えている。
【0037】
別の態様では、電池を製作する方法が、2つの電極(1つの陰極および1つの陽極)に電解質を対とすることを含み、該陰極が、該電解質に関与し、第1の電気化学活性流体層を支持するように構成された第1のマイクロ構造を有する流体案内構造部を備え、該陽極が、該電解質に関与し、第2の電気化学活性流体層を支持するように構成された第2のマイクロ構造を有する流体案内構造部を備えている。
【0038】
別の態様では、電気化学装置が、2つの電極(第1の電気化学活性流体層を有する1つの陰極、および、第2の電気化学活性流体層を有する1つの陽極)と、該電極のうちの一方に接触している第1の電解質表面から別の電極に接触している第2の電解質表面へ、イオン搬送流体を介してイオン電流を伝導するように構成された電解質と、該第1の電気化学活性流体、第2の電気化学活性流体、または、イオン搬送流体である制御される流体に表面張力を介して関与するように構成された流体制御構造部とを備えている。上記陰極および/または陽極が固体支持部をさらに備えていてもよく、上記電気化学活性流体層が、この固体支持部に表面エネルギーの作用によって付着してもよい。上記第1の電気化学活性流体層および/または第2の電気化学活性流体層が、上記電解質の表面に沿って流動するように構成されていてもかまわない。上記イオン搬送流体は、上記装置内部を流動するように構成されても、上記装置を通って流動するように構成されていてもかまわない。上記電解質が、固体構造部、例えば、上記イオン搬送流体を浸潤させた多孔性構造部をさらに備えていてもかまわない。上記多孔性構造部が、スポンジ、ウィック(wick)、複数のファイバー、織物、部分的焼結物、メッシュ、開孔部を有するシート、織り目加工済み表面、または、粒子の集合体を備えていてもかまわない。上記イオン搬送液体が上記多孔性構造部を濡らしてもかまわない。上記第1の電気化学活性流体および第2の電気化学活性流体のうちの少なくとも一方が、上記固体構造部を濡らすより、上記イオン搬送流体を多く濡らしてもかまわない(上記固体構造部を濡らさない場合も含める)。上記電気化学活性流体層が互いを濡らすより、上記イオン搬送流体が上記各第1の電気化学活性流体および第2の電気化学活性流体層を多く濡らしてもかまわない。また、上記電気化学活性流体層が互いを濡らさなくてもかまわない。上記イオン搬送流体が超臨界状態にあってもよく、また、上記第1の電気化学活性流体および上記第2の電気化学活性流体層のうちの一方だけまたは両方に接触していてもよい。上記イオン搬送流体が、上記電気化学活性流体に対して不混和性を有していてもかまわない。上記イオン搬送流体が、外部の貯蔵部に通じていてもかまわない。
【0039】
上記電解質が、上記イオン搬送流体の流動によって熱を取り除くように構成されていてもかまわない。上記流体制御構造部が、上記制御される流体の流動を保持または案内するように構成されていてもよく、また、マイクロ構造を有していも、マイクロパターンが形成されていても、または、実質的に平滑であってもよい。
【0040】
別の態様では、電気化学エネルギーを供給する方法が、第1の電極に接触している第1の電解質表面から第2の電極に接触している第2の電解質表面へ、イオン搬送流体を介してイオン電流を伝導するように構成された電解質によって分離された、該第1の電極および該第2の電極に電気的負荷をかけることを含む。上記第1の電極は第1の電気化学活性流体層を備え、上記第2の電極は第2の電気化学活性流体層を備えている。上記方法は、この第1の電気化学活性流体層または第2の電気化学活性流体層を上記イオン搬送流体の表面張力流動によって制御することをさらに含む。
【0041】
別の態様では、電池を充電する方法が、第1の電極に接触している第1の電解質表面から第2の電極に接触している第2の電解質表面へ、イオン搬送流体を介してイオン電流を伝導するように構成された電解質によって分離された該第1の電極および該第2の電極に電位をかけることを含む。上記第1の電極は第1の電気化学活性流体層を備え、上記第2の電極は第2の電気化学活性流体層を備えている。上記方法には、上記イオン搬送流体、第1の電気化学活性流体層、または、第2の電気化学活性流体層を表面張力流動によって制御することをさらに含む。
【0042】
別の態様では、第1の電気化学活性流体層を有する第1の電極と、第2の電気化学活性流体層を有する第2の電極と、イオン搬送流体を有する電解質とを備えた電池を充電する方法が、該イオン搬送流体、第1の電気化学活性流体層、または、第2の電気化学活性流体層を流動させることによってリフレッシュすることを含む。流動によるリフレッシュには、電気化学種が枯渇した流体を除去すること、および、該電気化学種を含有する流体を導入することを含んでもよく、また、上記流体を実質的に層流で流動させることを含んでもよい。
【0043】
別の態様では、電池を製作する方法が、2つの電極(1つの陽極および1つの陰極)に電解質を対とすることを含み、該第1の電極が、該電解質とイオン流通状態にある第1の電気化学活性流体層を支持するように構成され、該第2の電極が、該電解質とイオン流通状態にある第2の電気化学活性流体層を支持するように構成されている。
【0044】
発明の概要は例示にすぎず、いかなる限定を加えるものでもない。上述の例示としての各態様、実施形態、および、特徴に加えて、さらにさまざまな態様、実施形態、および、特徴があることは、図面および以下の詳細な説明を参照することによって自ずから明らかになるであろう。
【0045】
図1は、電気化学装置の概略図である。
【0046】
図2は、別の電気化学装置の電極表面の概略図である。
【0047】
図3は、電気化学装置の別の電極表面の概略図である。
【0048】
図4は、別の電気化学装置の概略図である。
【0049】
〔発明の詳細な説明〕
以下の詳細な説明では、詳細な説明の一部をなす添付の図面を参照する。図面中では、類似の符号は、特に明記しないかぎり一般に類似の部材を特定する。詳細な説明、図面、および、請求項において記載する例示としての実施形態は、限定を加えるものではない。他の実施形態を用いてもよく、他の変更を加えてもよく、これらは、ここに提示する主題の精神または技術的範囲から逸脱するものではない。
【0050】
ここでは、「流体」という用語は、各種液体、ペースト、ゲル、乳濁液、および、超臨界流体などの、剪断強度をほぼ持たない任意の凝縮相を含む。特に明記しないかぎり、「流体」と記載されている電気化学装置内の物質は、装置の運転温度(例えば室温などの温度(例えば、0℃、25℃、50℃、75℃、100℃、または、任意の他の適切な温度))および圧力(周囲圧力などの適した運転圧力)において流体性の形質を有している。
【0051】
ここでは、「平滑」という用語は、流体層によって濡れた表面について記載するために使用された場合には、流体層の厚さに比べてかなり大きな局所的な曲率半径を有する表面を含む。
【0052】
ここでは、「付着」という用語は、固体に接触している流体について記載するために使用された場合には、該固体を濡らす、または、他の様態で(例えば、重力に逆らって固体との接触を維持するために十分な力で)該固体にほぼ接着する流体を含む。
【0053】
ここでは、「イオン電流」という用語は、バルク拡散またはイオンの流動によって生成される、電荷の任意の移動を含む。「イオン電流」は、たとえ、一部または全体が(負に帯電した)イオンの反対方向の運動によって生成されたとしても、正の電位から負の電位へ流れると表現される。イオンが物質を通過し、全体として電荷の流れが生成できる場合に、該物質がイオン電流を「伝導」すると表現する。これらのイオンは該物質中にすでに存在していてもよく、境界面を介して供給されてもよい。
【0054】
ここでは、「マイクロパターンが形成された」という用語は、所定の形状を形成する、または、近傍の流体の流動に対して所定の作用を及ぼす、凡そ1mm未満のサイズの構造(マイクロメートルスケールの構造およびナノメートルスケールの構造を含める)を有する表面を含む。マイクロパターンが形成された表面が特徴的構造の繰り返しパターンを備えていてもよいが、必ずしも備えている必要はなく、例えば、マイクロ機械加工、リソグラフィー、成型(押し出しを含む)、印刷、打ち出し、レプリカ印刷(replica−printing)、または、その他のプロセスを実施することによって作製されてもかまわない。
【0055】
ここでは、「マイクロ構造を有する」という用語は、凡そ1mm未満のサイズの構造(マイクロメートルスケールの構造およびナノメートルスケールの構造を含める)を有する表面を含み、この構造の形状または流動特性がランダムな成分を備えていてもよいが、必ずしも備えている必要はない。
【0056】
ここでは、「不浸性を有する」という用語は、指定された流体の流動に抵抗する物質を含む。物質が流体によって経時的に徐々に劣化する場合にも、該流体に対して「不浸性を有する」と表現する。
【0057】
図1は、電気化学装置(例えば電池)の概略図である。図示するように、上記装置は、陰極100、陽極102、および、電解質104を備えている。陰極100は、固体支持部106と、固体支持部に付着する流体層108とを備えている。一部の実施形態では、流体層108は、電解質104も濡らしてかまわない。図示した上記電解質104は、多孔性層112(例えば、スポンジ、ウィック(wick)、複数のほぼ平行なファイバー、織物、部分的焼結物、メッシュ、開孔部を有するシート、織り目加工済み表面(例えば複数の突出部を備えた表面)、または、任意の適切な形状またはサイズの粒子の集合体)中に浸潤させるイオン搬送流体110を備えている。一部の実施形態では、イオン搬送流体110は多孔性層112を濡らさなくてもかまわない。他の実施形態(図示せず)では、電解質104は流体または固体であってもよく、さらに、図1に示す浸潤固体以外の組み合わせであってもよい(例えば、固体層に付着する流体層)。装置の動作中、陰極100および陽極102はどちらも電解質104に接触しているが、一部の実施形態では、いずれかの電極が電解質104の固体部だけに接触していても、液体部だけに接触していても、さらに、(両方が存在していれば)両方と接触していてもよい。図示した実施形態では、陽極102は固体構造部である。他の実施形態(図示せず)では、陽極102は、図1の陰極100中に示す流体層および固体支持部に相応する流体層および固体支持部を備えていてもかまわない。さらに、陽極102は、1つ以上の貯蔵部を備えていてもかまわない(詳細については陰極100との関連において後述する)。図示した実施形態はほぼ平坦であるが、他の実施形態では、上記装置は、1つのまたは2つの曲率半径を有して湾曲していてもかまわない。
【0058】
図示した実施形態では、陰極100は、陰極流体層108のための貯蔵部114および貯蔵部116をさらに含む。この電池の動作中に、陰極流体が貯蔵部114から貯蔵部116へ支持部106(支持部106は実質的に平滑な支持部であってもかまわない)に沿って流動し、陰極流体中で枯渇する可能性がある電気化学種を補充してもかまわない(「枯渇」には種の濃度が低下することを含めることもあり、必ずしも使い果たしたことを指しているとは限らない)。一部の実施形態では、貯蔵部114および貯蔵部116が通じており、陰極流体の再循環ができるようになっていてもかまわない。上記陰極流体は、主に、上記電気化学反応に関与する種から構成されてもよく、(電気化学的に不活性であってもよい)キャリア流体を備えていてもよい。相補的な半反応が陽極102で発生する。電解質104は、陰極100と陽極102との間における少なくとも1つのイオン種の転送を補助する一方で、電子の転送を防止する。こうすることによって、上記2つの半反応の異なる化学ポテンシャルが、陰極100と陽極102との間で電池の電位を生じさせる。
【0059】
例えば、一部の実施形態では、上記陰極流体が、所望の運転温度では液体であり、リチウム含有化合物(例えばLiFePO)でドーピングしたキャリア流体(例えば、水銀、ガリウム、または、ガリウム合金(例えばGALINSTAN(商標))、ならびに、ガリウム、インジウム、および、スズの近共融合金)から、ほぼ構成されていてもかまわない。上記陰極流体中でリチウムイオンが中性リチウムに転化すると、電気化学種が枯渇した流体が貯蔵部116に流れ込む一方で、新しいリチウムイオンが貯蔵部114から流体層108へ流れ込む。固体支持部106は、陰極流体で濡れる非常に多種多様な物質のうちの任意の物質であればよい。上述のように、流体に接する表面を有する陽極を備えた一実施形態では、陽極流体が、リチウム金属で(例えば、約10原子%の濃度で)ドーピングした、ナトリウム/カリウム合金(例えば、共融NaK)であってもかまわない。電解質104は、溶解リチウム塩(例えば過塩素酸リチウム)を含有する有機溶媒(例えばジエチルエーテル)を浸潤させた、多種多様な多孔性固体支持部のうちの任意の固体支持部(例えば、ポリテトラフルオロエチレンやポリエチレンテレフタレート)を備えていてもかまわない。一部の実施形態では、陽極100と陰極102とが互いに接触して内部短絡を起こすことを、表面張力またはその他の力によって防止できるという条件が満足される限りにおいて、流体有機溶媒および(必要であれば)溶解塩から構成された電解質層を用いて、上記多孔性固体支持部を使わずに済ませることも可能である(例えば、陽極流体および陰極流体が、互いを濡らすより、上記電解質流体を多く濡らして、短絡が起こる可能性を抑制してもよく、一部または全ての流体が不混和性を有していてもよい)。他の実施形態では、上記電解質層が、例えば、β−アルミナ、硫化物ガラスなどのイオン伝導性ガラス(例えばLi超イオン伝導性ガラス(LISICON))、リチウム/亜鉛/ゲルマニウム酸化物ガラスなどの、十分なイオン搬送性を有する固体であってもかまわない。その他の適した電解質については、例えば、Patel, et al.,“Plastic-polymer composite electrolytes: Novel soft matter electrolytes for recharegable lithium batteries,”Electrochem. Comm. 10(12):1912-1915 (2008)、MacFarlane, et al.,“Lithium-doped plastic crystal electrolytes exhibiting fast ion conduction for secondary batteries,”Nature 402:792-794 (1999)、および、米国特許第4,237,196号(“Sodium ion-conducting glass electrolyte for sodium-sulfur batteries”(1980))に記載されている。なお、これらの文献および特許の内容は全て参照によってここに引用されるものとする。図示した実施形態では、上記電解質層が貯蔵部118、貯蔵部120に通じている。なお、この貯蔵部118、貯蔵部120は、貯蔵部114、貯蔵部116を用いた陰極流体のリフレッシュと同様に、電解質流体をリフレッシュするために使用されてもよい。
【0060】
上記電解質層は、一部または全体が、上記陽極流体と陰極流体との反応生成物から構成されてもかまわない(例えば、上記陽極流体および陰極流体が、境界面における重合に関与する単量体を含有していてもかまわない)。このような実施形態の場合、電池が動作中に固体または液体の反応生成物を連続的に除去することによって、電気化学種が枯渇した電極流体を引き抜くことさえも可能である。一部の実施形態では、反応生成物が上記陽極流体または陰極流体のいずれかの中に存在する可能性もある。この場合、任意に、陰極流体または陽極流体を流動させることによって、反応生成物を除去してもかまわない。一部の実施形態では、表面エネルギーの作用によって、反応生成物が固体支持部106(または、陽極の同様な構造)に付着する可能性がある。したがって、任意に、反応生成物を電極/電解質の境界面から除去してもよい。上記固体支持部は、反応生成物の流動を促進する1つ以上の流体案内構造部をさらに備えていてもかまわない。
【0061】
一部の実施形態では、可能な限り薄い電解質を備え、その一方で電極間のアーク放電を回避することが好ましい。電極は1cm以上もの厚さを有していてもよいが、1mm、100μm、10μm、1μm、100nm、さらに、10nmという薄い電極であってもかまわない。
【0062】
別の一実施形態では、電気化学装置(例えば図1に示す電気化学装置)を使用して、電気化学種が枯渇した電気化学活性流体を再充電してもかまわない。このような一実施形態では、上記陽極と陰極との電位差から電流を引き出すのではなく、電圧を印加して上記反応を逆方向に進め、上記電気化学活性流体を高い化学エネルギー状態に戻して、同じ装置、または、別の装置における後ほどの使用に備える。
【0063】
一部の実施形態では、固体支持部106が1つ以上の流体を案内する特徴的構造(図示せず)を備えていてもかまわない。例えば、固体支持部106は、流体の流動を案内する波紋状構造物もしくは溝、または、流体の濡れ挙動に影響を与える可変表面エネルギーを有する領域を備えていてもかまわない。一部の実施形態では、表面エネルギーが、例えば、Lahann, et al.,“A Reversibly Switching Surface,”Science 299:5605, pp. 371 - 374 (2003)(この文献の内容は参照によってここに引用されるものとする)に記載の方法で動的に調節されてもかまわない。これらの流体を案内する特徴的構造が、例えば、上記装置の電気特性(例えば、全体的な電流もしくは局所的な電流、電圧、電流密度、電気化学活性流体の量もしくは組成、または、反応生成物の量もしくは組成)を最適化するフローパターンにとって都合の良いように選択されてもかまわない。例えば、上記流体の電荷キャリアが枯渇するにつれて電解質に対する電極流体の接触表面積を大きくすることによって、電極/電解質の境界面における電流を等しくするようなフローパターンを選択してもかまわない。一部の実施形態では、流体を案内する特徴的構造が、圧力および/または印加される場に対して応答性を有していてもよく、また、例えば、表面エネルギー、形状、および/または、温度を動的に変化させることによって、流量、流体の接触面積、流動方向、または、濡れ挙動を調節してもよい。
【0064】
図2は、電気化学装置と共に使用するための電極の概略図である。該電極は、実質的に平滑である、または、成型済み表面もしくは織り目加工済み表面を有する、活性表面130を備えている。図示した実施形態では、上記装置は、電極を厚さ方向(図示した実施形態では、電極の図示した面に対して垂直な方向)に貫き、電極表面上の表面溝140、表面溝142によって通じた複数の導管132、導管134、導管136、導管138を備えている。使用時には、陰極流体は、貯蔵部(図示せず)を出て導管132を上向きに通り、表面溝140に沿って流れ、導管136を下向きに通り、さらに、同じまたは別の貯蔵部(図示せず)へと流動する。陽極流体も同様に、導管134を上向きに通って表面溝142に沿って流れ、導管138を下向きに流動する。図示した実施形態では、表面溝の各セットについて、各溝は、流れが表面に沿って進むにつれて幅を広げる。この形状によって、圧力降下を生み、流れを促進することが期待できる。一部の実施形態では、上記導管または表面溝がそれぞれ対応する流体を濡らす、または、表面張力によって流体を保持してもかまわない。さらに、溝または導管が、表面上または電極内部のいずれかで互いに通じていてもかまわない。上記電極の図示した面は、上述のように、電解質(図示せず)に接触するように設置される。該電解質は、流体、固体、または、例えば流体を浸潤させた多孔性固体などの組み合わせであってもかまわない。上記電解質を表面溝140、142中の流体に接触して設置すると、陰極から陽極へ向かうイオン電流が電解質中に生成される。一部の実施形態では、表面溝140、142は小さい、および/または、間隔が非常に狭い(例えば、ミリメートルまたはマイクロメートルのオーダの間隔で配置されている)ので、電解質を通る電流密度を増加させることができ、図示した電極を用いた電池の比出力を増加させることができる。一部の実施形態では、図示した電極および電解質は可撓性を有する。電極および電解質が、所望の形態を達成できるように積層構造または別の構成を有していてもかまわない(例えば、巻き取ったシート状の電極および電解質を可撓性を有するまたは剛性が高い“ゼリーロール(jellyroll)”状に構成してもよい)。
【0065】
図示した電極は、マイクロ機械加工、リソグラフィー、成型(押し出しを含む)、印刷、打ち出し、レプリカ印刷(replica−printing)、または、その他の、MEMSやその他のマイクロスケールもしくはナノメートルスケールデバイスを作製する公知のプロセスによって生成されてもかまわない。さらに、所定のパターンに合わせて流体を案内する他の電極構成も使用可能である。図2に示す構成は一例にすぎない。いくつかのこのような実施形態では、上記電解質の互いに対向する複数の表面上に配置された2つの電極(図1に示す構成に類似)を使用してもかまわない。
【0066】
図3は、電気化学装置の別の電極表面の概略図である。電極プレート150は平滑であるか、または、織り目加工済みである。表面は、異なる濡れ性を有する複数の領域(例えば、親水性表面、疎水性表面、親油性表面、または、疎油性表面)が形成できるように処理される。表面処理は、例えば、異なる官能基の異なる部位への(例えば、ソフトリソグラフィー法で)結合処理、エッチング(エッチングによって、例えば、物性を変化、もしくは、ある素材で被覆された別の素材を露出させる)、化学蒸着もしくは物理蒸着、レーザ処理(例えばフェムトセカンドレーザパルスによる、例えばアブレーションもしくは表面再構築によるレーザ処理)、表面の粗化もしくは別の物理的改変処理、または、これらの手法の組み合わせによって実施すればよい。
【0067】
図示した実施形態では、表面は、領域152および領域154において2つの異なる表面処理方法で処理される。領域152は陰極流体によって濡らされるように処理され、領域154は陽極流体によって濡らされるように処理される。一実施形態では、陰極種のキャリア流体は本質的には水性であり、陽極種のキャリア流体は非水性である。また、領域152および領域154は、それぞれ、水性種および非水性種によって濡らされるように処理される。使用時には、電極プレート150の表面に上記流体を流して、対応する領域に選択的に付着させてもよい。この場合、電極を電解質(図示せず)に接触するように設置して、上記電気化学反応を生じさせてもかまわない。表面処理された領域に設置されている(例えば、電極プレート150の背面を介して接続される)接触部(図示せず)において、上記電気化学反応から電気エネルギーを抽出してもかまわない。一部の実施形態では、上記陰極流体および陽極流体は、互いに対する親和性より大きな親和性を上記電解質に対して有し、こうすることによって、陰極流体および陽極流体が直接電気的に接触する機会が抑制される。領域152および領域154において流体の電気化学種が枯渇したら(任意に、まず表面を拭って流体を除去した後で)、新しい流体を表面に流し、補充してもかまわない。一部の実施形態では、この流体を流すことを、反応速度を遅らせるか、または、流体を流すプロセスの一部の間、上記流体のうちの少なくとも1つを非反応相(例えば固体相)に置くかのいずれかによって、該プロセス時の流体の過度な反応を防止する温度で実施してもかまわない。あるいは、流体を、(例えば、電極プレート150の背面から溝を介して)もっと選択的に各領域に配置し、電極プレート150の異なる領域の異なる表面エネルギーによって所定の位置に保持させてもかまわない。別の一実施形態では、各々が電極流体の単一の種に対する領域を保持する2つの電極プレートを使用する。なお、図示した実施形態では、陽極流体に対しては、陰極流体に対する2倍の数の領域が存在する。他の実施形態では、この比が逆転してもよく、面積比が等しくてもよい(または、電極種の量、化学活性、および、利用可能性を考慮に入れた、任意の他の適切な比であってもよい)。
【0068】
別の一実施形態では、局所的な表面エネルギー領域152、154が、固体電解質の表面上に直接、設置されてもかまわない。この場合、この電解質は、上記電極流体に流されて、適切な領域に堆積する。表面エネルギーが異なる領域が、全て、上記電解質の1つの共通な表面上に配置されてもよく、対向する表面上に配置されてもよい。
【0069】
図4は、別の電気化学装置の概略図である。陰極170および陽極172は、それぞれ、上述のように電気化学活性流体を浸潤させたシート状の複数のほぼ平行なファイバーを備えている。これらのファイバーは電解質174によって分離されている。使用時には、上記ファイバーは、矢印で示すように、電気化学活性流体の流れを上記電解質の表面に沿って案内するように機能する。図示した実施形態では上記ファイバーがほぼ一様な厚さを有するが、テーパ形状を有するファイバーを使用して、上記電解質に対して流体の異なる表面積を提供してもよく、上記ファイバーが湾曲していて、湾曲した流路を規定してもよい。一部の実施形態では、上記ファイバーは互いに、または、電解質174に固着してもかまわない。
【0070】
別の一実施形態では、平行ファイバーではなく、流体が他の構造(例えば微粒子または多孔性媒体)によって公知の経路に沿って案内されてもかまわない。これらの場合のうちのいずれにおいても、流体が、毛細管流動によって上記ファイバー、微粒子、または、その他の媒体を介して引き出される。
【0071】
一般に、上述のいずれの電気化学装置に電気エネルギーを抽出または保存するためであっても、接触部を使用して、装置を電気的負荷または電源に接続する。これらの接触部は、上記電極流体と電気的に接触している任意の便利な位置に設置すればよい。上記流体自身が導電性である場合、接触部を単純に上記流体に浸漬しても、他の方法で流体に接触した状態で設置してもよい。一部の実施形態では、上記電気化学活性流体は非導電性であっても、比較的低い導電率を有していてもかまわない。これらの場合、上記流体を支持する支持構造が存在するのなら、該支持構造を電気的接続点として作用させれば都合がいいことがある。
【0072】
ここで説明した電気化学装置は、いずれも、ある量の廃棄熱を生成する可能性があり、冷却システムが設けられてもかまわない。一部の実施形態では、電極または電解質流体の流動によって冷却が行われる。
【0073】
一部の実施形態では、電気化学装置が、上記電極または電解質の各種流体の枯渇レベルをモニターするための回路またはその他のメカニズムをさらに備えていてもかまわない。一部の実施形態では、これらの装置が、枯渇レベルを推察するために、電気出力をモニターしても、化学濃度または活性を直接測定してもかまわない。これらのモニターされる枯渇レベルを、(例えば、枯渇した流体を新しい流体と置き換えることによって電池を再充電する際に)例えば、残存する電池の寿命を求めるために、または、枯渇した流体の経済的価値を特定するために使用してもかまわない。
【0074】
ここで説明した電気化学装置では、さまざまな化学反応を利用してもかまわない。一部の実施形態については、表の中で大きく離れている反応が高い装置電圧を生成するので好ましいが、原則的として、標準的電極電位表に記載した半反応のうちの任意の対を、陰極および陽極において使用すればよい(標準的電極電位の一例としての表を別表Aとして添付する。ただし、別表Aに挙げていない反応も、ここで説明した装置において使用可能である)。一部の実施形態では、運転温度で液体である反応物(例えば、液体金属および液体金属の合金)が好ましい。陽極物質の例としては、リチウム、ナトリウム、水銀、スズ、セシウム、ルビジウム、カリウム、および、これらのうちのいずれかを含有する化合物などが挙げられる。また、陰極物質の例としては、ガリウム、鉄、水銀、スズ、塩素、および、これらのうちのいずれかを含有する化合物などが挙げられる。適切な電解質物質としては、一般に、選択した陽極物質および陰極物質に合った塩などが挙げられる。上記物質のうちのいずれも、溶解気体(例えば酸素)を含有していてよく、さらに、いくつかの実施形態では、この溶解気体が上記電気化学反応に関与してもかまわない。
【0075】
ここでは、電気化学装置および方法の各種実施形態について説明してきた。一般に、1つの特定の実施形態との関連において記載した特徴を、特に明記しないかぎり、他の実施形態において使用してもかまわない。例えば、図3との関連において記載した電極を、図1との関連において記載した装置において採用しても、ここで説明した各実施形態のうちのいずれにおいて採用してもかまわない。このような特徴の記載は、簡潔に記載するために繰り返しはしなかったが、ここで説明したさまざまな態様および実施形態に含められるものであることは理解できるであろう。
【0076】
一般に、ここで使用した用語、特に添付の請求項で使用した用語が、一般に“オープン”な用語として用いられていることは理解できるであろう(例えば、「...を含める」という用語は「...を含めるが、これらの例に限定されるものではない」と解釈すべきであり、「...を有する」という用語は「少なくとも...を有する」と解釈すべきであり、「...を備えている」という用語は「...を備えているが、これらの例に限定されるものではない」と解釈すべきである)。さらに、請求項において導入された構成要素について具体的な個数が意図されているのであれば、このような意図は請求項中で明示的に記載されるのであって、このような明示的な記載が存在しなければ、このような意図が一切存在しないのであることも理解できるであろう。理解の一助として例を挙げると、下記の添付の請求項において、請求項の構成要素を導入するために、例えば、「少なくとも1つの」や「1つ以上の」という導入表現を使用することがある。しかし、このような表現を使用していたとしても、不定冠詞「a」または「an」によって請求項の構成要素を導入していることが、請求項においてこうして導入された構成要素を含む任意の特定の請求項を、該構成要素を1つしか含まない発明に限定していることを暗示するものであると解釈すべきではない。このような解釈は、たとえ、「1つ以上の」または「少なくとも1つの」という導入表現と「a」または「an」などの不定冠詞とが、同一請求項に含まれている場合であっても、するべきではない(例えば、「電極」は通常「少なくとも1つの電極」を意味していると解釈すべきである)。同じことが、請求項の構成要素を導入するために使用される定冠詞の用法にも当てはまる。さらに、たとえ請求項において導入された構成要素について具体的な個数が明示的に記載されていたとしても、このような記載は、通常、少なくとも記載された個数が含まれていることを意味していると解釈すべきであることが理解できるであろう(例えば、他の修飾語を使わずに単に「2つの流体案内構造部」または「複数の流体案内構造部」と記載されている場合、通常、少なくとも2つの流体案内構造部を意味する)。さらに、例えば、「A、B、および、Cのうちの少なくとも1つ」、「A、B、または、Cのうちの少なくとも1つ」、または、「A、B、および、Cからなる群より選択される」などの表現が使用されている場合、一般に、このような表現構造は、択一的であることを意図している(例えば、これらの表現はいずれも、Aだけを有するシステム、Bだけを有するシステム、Cだけを有するシステム、AおよびBを共に有するシステム、AおよびCを共に有するシステム、BおよびCを共に有するシステム、または、A、B、および、Cを共に有するシステムを含めるが、これらのシステムに限定されるものではない。さらに、同表現はいずれも、A、B、または、Cのうちの2つ以上を含めることもある。例えばA、A、および、Cを共に有するシステム、A、B、B、C、および、Cを共に有するシステム、または、BおよびBを共に有するシステムを含めることもある)。また、選択肢となる2つ以上の用語を提示する択一的な言葉または表現は、実質的にいずれも、その言葉または表現が明細書、請求項、または、図面のいずれにおいて記載されているのであっても、これら複数の用語のうちの1つを含める可能性、複数の用語のうちの一方を含める可能性、および、複数の用語を共に含める可能性について考慮しているものであると理解すべきであることが理解できるであろう。例えば、「AまたはB」という表現は、「A」である可能性、または、「B」である可能性、または、「AおよびB」である可能性を含めるものであると理解できるであろう。
【0077】
ここでは各種態様および実施形態について開示してきたが、当業者であれば、他の態様および実施形態も可能であることは自ずから明らかであろう。ここで開示した各種態様および実施形態は、例示を目的とするものであって、限定を加えることを目的とするものではなく、真の技術的範囲および精神は以下の請求項に記載する。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
【表5】

【0083】
【表6】

【0084】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、電気化学装置の概略図である。
【図2】図2は、別の電気化学装置の電極表面の概略図である。
【図3】図3は、電気化学装置の別の電極表面の概略図である。
【図4】図4は、別の電気化学装置の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極および陽極を含めた2つの電極と、
該電極のうちの一方に接触している第1の電解質表面から別の電極に接触している第2の電解質表面へ、イオン電流を伝導するように構成された電解質とを備え、
該電極のうちの少なくとも一方が、表面エネルギーの作用によって実質的に平滑な固体支持部に少なくとも部分的に付着可能な流体特性を有する電気化学活性流体層を備え、
該電気化学活性流体層の表面が該電解質に接触している、電気化学装置。
【請求項2】
上記2つの電極が、それぞれ、表面エネルギーの作用によって固体支持部に付着可能な流体特性を有する流体層を備え、
各流体層が上記電解質に接触している、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
各流体層が上記固体支持部の共通な表面に接触している、請求項2に記載の電気化学装置。
【請求項4】
上記固体支持部が流体案内構造部を備えている、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項5】
上記流体案内構造部が、
流体の流動を表面張力によって案内するように構成されているか、
表面溝であるか、
該流体案内構造部の表面につながる導管であるか、
流体表面積を圧力に応じて調節するように構成されている、または、
流体の流量または方向を制御するように構成されている、請求項4に記載の電気化学装置。
【請求項6】
上記流体案内構造部が、互いに異なる濡れ性を有する第1の領域および第2の領域を備えた、請求項4に記載の電気化学装置。
【請求項7】
上記流体案内構造部が、例えば、上記電気化学装置の電気特性を最大化もしくは最小化することによって、または、選択値が得られるように該電気特性を調節することによって、該電気特性を最適化するように選択されるフローパターンにしたがって、流体を分配するように構成されている、請求項4に記載の電気化学装置。
【請求項8】
上記電気化学装置が、上記流体案内構造部の特性、例えば表面エネルギー、濡れ挙動、形状、または、温度を、任意に、上記装置の特性、例えば、全体的な電流、全体的な電圧、局所的な電流、局所的な電圧、電流密度、電気化学活性流体の量、電気化学活性流体の組成、反応生成物の量、または、反応生成物の組成に応じて動的に変化させ、さらに、任意に、動的に変化させることによって上記電気化学活性流体層の流動特性を変化させるように構成されている、請求項4に記載の電気化学装置。
【請求項9】
上記電気化学活性流体層の少なくとも一部が、上記実質的に平滑な固体支持部に空間的に変化する様態で付着する、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項10】
上記固体支持部が電気的な接触部を備えている、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項11】
上記固体支持部が湾曲している、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項12】
上記固体支持部と流体層とが異なる組成を有する、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項13】
上記電解質が、上記第2の電解質表面から第1の電解質表面へ、イオン電流を伝導するようにさらに構成されている、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項14】
上記電解質が、上記電気化学活性流体に対して不浸性を有する固体表面を備えている、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項15】
上記電解質が、上記電気化学活性流体層の流体の流動を案内するように構成された流体案内構造部を備えている、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項16】
上記電解質が、イオンが内部を移動して上記イオン電流を発生させることができるイオン搬送流体を含んでいる、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項17】
上記電解質が、任意に上記イオン搬送流体を浸潤させた、固体構造部、例えば、スポンジ、ウィック、複数のファイバー、織物、部分的焼結物、メッシュ、開孔部を有するシート、織り目加工済み表面、または、粒子の集合体をさらに備えている、請求項16に記載の電気化学装置。
【請求項18】
上記イオン搬送液体が上記多孔性構造部を濡らす、請求項17に記載の電気化学装置。
【請求項19】
上記電気化学活性流体が、上記固体構造部を濡らすより、上記イオン搬送流体を多く濡らす、請求項17に記載の電気化学装置。
【請求項20】
上記陰極および陽極が、それぞれ、電気化学活性流体層を備え、
上記電気化学活性流体層が互いを濡らすより、上記イオン搬送流体が各電気化学活性流体層を多く濡らす、請求項16に記載の電気化学装置。
【請求項21】
上記イオン搬送流体が超臨界状態にある、請求項16に記載の電気化学装置。
【請求項22】
上記イオン搬送流体が、上記電気化学活性流体層に一方の電極においてのみ接触している、請求項16に記載の電気化学装置。
【請求項23】
上記陰極および陽極が、それぞれ、電気化学活性流体層を備え、
上記イオン搬送流体が、上記2つの電極のそれぞれにおいて対応する電気化学活性流体層に接触している、請求項16に記載の電気化学装置。
【請求項24】
上記イオン搬送流体が、上記電気化学活性流体に対して不混和性を有する、請求項16に記載の電気化学装置。
【請求項25】
上記イオン搬送流体が外部の貯蔵部に通じている、請求項16に記載の電気化学装置。
【請求項26】
上記電解質が、上記イオン搬送流体の流動によって熱を取り除くように構成されている、請求項16に記載の電気化学装置。
【請求項27】
上記電解質が、上記陰極の少なくとも一部と上記陽極の少なくとも一部との反応生成物を含有する、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項28】
上記反応生成物が流体である、請求項27に記載の電気化学装置。
【請求項29】
上記反応生成物が、上記電解質の固体表面、または、上記電極のうちの少なくとも一方を濡らす、または、これに付着する、請求項28に記載の電気化学装置。
【請求項30】
上記反応生成物が貯蔵部に通じている、請求項28に記載の電気化学装置。
【請求項31】
上記電解質が、上記反応生成物の流動によって熱を取り除くように構成されている、請求項28に記載の電気化学装置。
【請求項32】
上記陰極の少なくとも一部と上記陽極の少なくとも一部との反応生成物が、上記電気化学活性流体と相互に混合されている、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項33】
上記電解質、または、上記電極のうちの少なくとも一方が、上記陰極の少なくとも一部と上記陽極の少なくとも一部との流体性反応生成物を案内するように構成された流体案内構造部を備えている、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項34】
上記電気化学活性流体層が、液体、ペースト、ゲル、乳濁液、超臨界流体、および、非ニュートン流体からなる群より選択される流体を備えている、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項35】
上記電気化学活性流体層が、イオン伝導体または電子伝導体である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項36】
上記電気化学活性流体層が、電気化学活性を有しないキャリア流体を備えている、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項37】
上記電気化学活性流体層が、揺変性を有する流体を備えている、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項38】
上記電気化学活性流体層が、上記電解質を濡らす、または、これに付着する、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項39】
上記陽極が、リチウム、ナトリウム、水銀、スズ、セシウム、ルビジウム、カリウム、または、これらのうちのいずれかの合金、溶液、アマルガム、もしくは、金属間化合物を含有する、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項40】
上記陰極が、ガリウム、鉄、水銀、スズ、硫黄、塩素、または、これらのうちのいずれかの合金、溶液、アマルガム、もしくは、金属間化合物を含有する、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項41】
上記電解質が、過塩素酸塩、エーテル、グラフェン、ポリイミド、サクシノニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、エチレンカーボネート、β−アルミナ、または、イオン伝導性ガラスを含有する、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項42】
上記流体層が溶解気体、例えば酸素を含有する、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項43】
上記流体層が液体金属を含有し、
任意に、この液体金属が合金であってもよい、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項44】
上記電気化学活性流体層が外部の貯蔵部に通じている、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項45】
上記流体層が、上記電池から熱エネルギーを搬出するように構成されている、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項46】
冷却システムをさらに備え、
この冷却システムが、任意に、熱パイプ、熱交換体、または、微小溝部を備えた、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項47】
第1の電極に接触している第1の電解質表面から第2の電極に接触している第2の電解質表面へイオン電流を伝導するように構成された電解質によって分離された、該第1の電極および該第2の電極に電気的負荷をかけることを含み、
該第1の電極および第2の電極のうちの少なくとも一方が、表面エネルギーの作用によって加速度の場に逆らって固体支持部に付着する電気化学活性流体シートを備え、
該電気化学活性流体シートの表面が、該電解質に接触している、電気化学エネルギーを供給する方法。
【請求項48】
上記加速度の場が重力場である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
第1の電極に接触している第1の電解質表面から第2の電極に接触している第2の電解質表面へイオン電流を伝導するように構成された電解質によって分離された、該第1の電極および該第2の電極に電位をかけることを含み、
該第1の電極および第2の電極のうちの少なくとも一方が、表面エネルギーの作用によって加速度の場に逆らって固体支持部に付着する電気化学活性流体シートを備え、
該電気化学活性流体シートの表面が、該電解質に接触している、電池を充電する方法。
【請求項50】
上記加速度の場が重力場である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
表面エネルギーの作用によって実質的に平滑な固体支持部に付着する電気化学活性流体層を備えた電極を有する電池を充電する方法であって、
上記電気化学活性流体を上記実質的に平滑な固体支持部に沿って流動させることによって、該電気化学活性流体層をリフレッシュすることを含む、方法。
【請求項52】
上記電気化学活性流体層のリフレッシュには、電気化学種が枯渇した電気化学活性流体を除去すること、および、該電気化学種を含有する電気化学活性流体を導入することを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
上記電気化学活性流体の流動には、上記電気化学活性流体を実質的に層流で流動させることを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
イオン搬送流体を備えた電解質層を有する電池をリフレッシュする方法であって、
上記イオン搬送流体を上記電解質層を介して流動させることによって、上記イオン搬送流体をリフレッシュすることを含む、方法。
【請求項55】
上記イオン搬送流体のリフレッシュには、電気化学種が枯渇したイオン搬送流体を除去すること、および、該電気化学種を含有するイオン搬送流体を導入することを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
電気化学反応の流体反応生成物を生成する電池をリフレッシュする方法であって、
上記流体反応生成物を流動させることによって、該電池をリフレッシュすることを含む、方法。
【請求項57】
表面エネルギーの作用によって実質的に平滑な固体支持部に付着する電気化学活性流体層を備えた電池用電極であって、
該電気化学活性流体層が電解質に接触するように構成されている、電極。
【請求項58】
陽極および陰極を含めた2つの電極に電解質を対とすることを含み、
該電極のうちの少なくとも一方が、該電解質とイオン流通状態にある電気化学活性流体層を表面エネルギーの作用によって実質的に平滑な固体支持部において支持するように構成されている、電池を製作する方法。
【請求項59】
陰極および陽極を含めた2つの電極と、
該電極のうちの一方に接触している第1の電解質表面から別の電極に接触している第2の電解質表面へ、イオン電流を伝導するように構成された電解質とを備え、
該電極のうちの少なくとも一方が、該電解質に接触している表面を有する電気化学活性流体層と、この電気化学活性流体を所定のフローパターンにしたがって案内するように構成された流体案内構造部を有する、マイクロパターンが形成された支持部とを備えている、電気化学装置。
【請求項60】
陰極および陽極を含めた2つの電極と、
該電極のうちの一方に接触している第1の電解質表面から別の電極に接触している第2の電解質表面へ、イオン電流を伝導するように構成された電解質とを備え、
該電極のうちの少なくとも一方が、該電解質に接触している表面を有する電気化学活性流体層と、この電気化学活性流体を所定の位置に保持するように構成された流体案内構造部を有する、マイクロパターンが形成された支持部とを備えている、電気化学装置。
【請求項61】
陰極および陽極を含めた2つの電極と、
該電極のうちの一方に接触している第1の電解質表面から別の電極に接触している第2の電解質表面へ、イオン電流を伝導するように構成された電解質とを備え、
該陰極が、該電解質に関与するように構成された第1のマイクロ構造を有する流体案内構造部に付着するように構成された第1の電気化学活性流体層を有し、
該陽極が、該電解質に関与するように構成された第2のマイクロ構造を有する流体案内構造部に付着するように構成された第2の電気化学活性流体層を有している、電気化学装置。
【請求項62】
第1の電気化学活性流体層を有する陰極および第2の電気化学活性流体層を有する陽極を含めた2つの電極と、
該電極のうちの一方に接触している第1の電解質表面から別の電極に接触している第2の電解質表面へ、イオン搬送流体を介してイオン電流を伝導するように構成された電解質と、
該第1の電気化学活性流体、第2の電気化学活性流体、および、イオン搬送流体からなる群より選択される制御される流体に表面張力を介して関与するように構成された流体制御構造部とを備えた、電気化学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−500576(P2013−500576A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522806(P2012−522806)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/002100
【国際公開番号】WO2011/014242
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(508156546)シーレイト リミテッド ライアビリティー カンパニー (54)
【氏名又は名称原語表記】SEARETE LLC
【住所又は居所原語表記】1756−114th Ave.Se,Suite 110,Bellevue,WA 98004,United States of America
【Fターム(参考)】