説明

電気器具

【課題】コードリールを器体外殻の開口部下方に設置する場合でも、カバー部材等を設けることなく安全を確保することができる電気器具を提供する。
【解決手段】器体外殻1が、その底面を構成する底部材2と、この底部材2と上下に一体化される外殻上方部材3とを有し、前記器体外殻1の開口部15の下方にコードリール20をその巻取り軸26が水平方向を向くように設置し、前記コードリール20は、ケース部材21の一端側開口にカバー部材22が結合され、カバー部材22の側面に外部端子23が露出する本体ケーシング24を備え、この本体ケーシング24の結合隙間27を開口部15の下方からカバー部材22側に外して位置させ、前記外殻上方部材3の内面に下向きの突壁30を前記ケース部材21の外周面上部に合致する先端形状で形成し、この突壁30の先端と前記底部材2の内底面とにより前記コードリール20を上下に挟持させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炊飯器などの電気器具に関し、より詳しくは、器体に内蔵するコードリールの設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気器具にコードリールを内蔵することは広く行われているが、設置空間の都合により器体外殻の開口部の下方に配置せざるを得ない場合がある。その一例として、従来からある圧力式炊飯器の器体後部付近を拡大した縦断面を図9(a)に示し、(b)に(a)図のb−b線の断面を示す。
【0003】
図9(a)、(b)に示す炊飯器の器体外殻40は、その底面を構成する底部材41と、この底部材41と上下方向に一体化される外殻上方部材42と、外殻上方部材42の肩部後端に形成されたヒンジ部43を覆うように取付けられるヒンジカバー44とを有する(特許文献1参照)。
【0004】
ヒンジカバー44の上面には、蓋側へ配するリード線を通すための開口部45が形成されている。このため、稀ではあるが、蓋を開いた場合等に、蓋外面を伝ったおねばや結露がヒンジ部43に流れ、開口部45から器体内に浸入することが起こり得る。
【0005】
ところが、この開口部45の下方には、コードリール50が設置されている。コードリール50は、電源コード51と、この電源コード51の巻取り軸52と、この巻取り軸52を巻取り方向に回転付勢する回転付勢手段(図示省略)とを収納する本体ケーシング53を備えている。この本体ケーシング53は、合成樹脂ケース54の一端側開口部に金属カバー55が一体結合され、金属カバー55の側面に外部端子56が露出する構造を有する。
【0006】
上記のコードリール50は、巻取り軸52が水平方向を向き、外部端子56が開口部45の下方に配置されているため、安全上、外部端子56がおねば等で濡れたり、本体ケーシング53内の充電部がその合成樹脂ケース54と金属カバー55との結合隙間57から浸入したおねば等で濡れたりすることを防止する必要がある。
【0007】
そこで、外殻上方部材42には、開口部45とコードリール50との間を仕切る壁面46が形成されている。この壁面46は、外部端子56の上方を覆うように後端側に屈曲されおり、その下端水平部には、コネクタ47へリード線を通すための下側開口部48が形成されている。この下側開口部48は、外部端子56の近傍に位置しているので、ヒンジカバー44によりその上方が塞がれている。また、おねば等が、蓋リングに取付けられた補強金具(図示省略)の後端付近から壁面46を伝う恐れがあるため、本体ケーシング53には、外部端子56を隠すように遮熱カバー58が被せられている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−49741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の例では、おねば等の浸入に対するコードリール50の安全策として、ヒンジカバー44や遮熱カバー58を用いるので、部品数が増える。さらに、器体外殻40にヒンジカバー44の取付け部を形成しなければならないため、器体外殻40を成型する金型が複雑になる。
【0010】
それ故、特許文献1に記載のようなコードリールの設置構造を採用すると、コスト高な電気器具になるという問題があった。
【0011】
そこで、この発明の課題は、コードリールを器体外殻の開口部下方に設置する場合でも、カバー部材を設けることなく安全を確保することができる電気器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決する手段として、この発明は、器体外殻が、その底面を構成する底部材と、この底部材と上下に一体化される外殻上方部材とを有し、前記器体外殻の開口部下方にコードリールをその巻取り軸が水平方向を向くように設置した電気器具において、前記コードリールは、ケース部材の一端側開口にカバー部材が結合され、カバー部材側面に外部端子が露出する本体ケーシングを備え、この本体ケーシングの結合隙間を開口部下方からカバー部材側に外して位置させ、前記外殻上方部材の内面に下向きの突壁を前記ケース部材の外周面上部に合致する先端形状で形成し、この突壁の先端と前記底部材の内底面とにより前記コードリールを上下に挟持させた構成を採用した。ここで、前記ケース部材の外周面上部とは、その外周面のうち、上面視において露出する部分をいう。
【0013】
この発明の構成では、前記コードリールは、ケース部材の一端側開口にカバー部材が結合され、カバー部材側面に外部端子が露出する本体ケーシングを備え、この本体ケーシングの結合隙間を開口部下方からカバー部材側に外して位置させたので、前記本体ケーシングのうち、前記ケース部材の外周面上部のみが前記開口部に臨む。ここで、前記外殻上方部材の内面に下向きの突壁を前記ケース部材の外周面上部に合致する先端形状で形成し、この突壁の先端と前記底部材の内底面とにより前記コードリールを上下に挟持させたので、前記結合隙間および前記外部端子と前記開口部下方の空間とが前記突壁により仕切られる。
【0014】
したがって、前記開口部からおねば等が落下した場合でも、浸入したおねば等は、前記突壁の壁面に沿って前記ケース部材の外周面上部を流れ、或は、前記ケース部材の側面を流れる。また、前記ケース部材の外周面を伝うおねば等は、突壁最下端を過ぎても、前記突壁の壁面と平行な方向に流れ落ちるので、前記結合隙間や前記外部端子へ向けて流れない。これにより、ヒンジカバー等を省略することが可能になり、ヒンジカバーの取付け部を器体外殻に形成する必要もなくなる。
【0015】
前記ケース部材は、樹脂製のものが好ましい。おねば等による腐食の恐れがなく、また、本体ケーシングの内部絶縁が不良になった場合におねば等が流れても、樹脂の絶縁性により安全が確保されるからである。
【0016】
また、この発明の構成では、前記突壁を、前記外部端子よりも下方位置まで前記ケース部材の外周面に合致するように設けた構成を採用することができる。この構成によれば、前記ケース部材の外周面上部を伝うおねば等は、前記突壁により前記外部端子の下方まで確実に案内される。なお、前記突壁によって前記ケース部材の外周面上部を仕切る範囲は、想定される浸水に応じて定められる。例えば、炊飯器の場合、粘り気を有するおねばが少量浸入するだけなので、前記ケース部材の外周面上部の周方向全域を前記突壁によって仕切る必要はなく、少なくとも前記外部端子の上方を仕切り、前記突壁の最下端部を過ぎたおねば等が前記突壁の壁面と平行な方向に流れれば十分である。
【0017】
また、この発明の構成では、前記外殻上方部材の内面に、前記本体ケーシングの両側面を挟む下向きの対壁を形成した構成を採用することができる。この構成によれば、前記コードリールの倒れが防止されるので、前記ケース部材の外周面上部と前記突壁先端との合致状態が安定する。また、器体の組立てを上下逆向きの状態で進めると、前記コードリールが前記突壁先端と前記対壁とにより設置位置に定まるので、器体の組立て作業性が向上する。
【発明の効果】
【0018】
以上に述べたように、この発明によれば、コードリールを器体外殻の開口部下方に設置する場合でも、カバー部材等を設けることなく安全を確保することができる電気器具を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態を添付図面の図1〜図8に基づいて説明する。
図1、図2に示すように、この実施形態に係る電気器具は、器体外殻1が、その底面を構成する底部材2と、この底部材2と上下に一体化される外殻上方部材3とを有する炊飯器として構成されている。外殻上方部材3は、器体外殻1の周側部と肩部とを構成している。勿論、従来同様、器体外殻は、その肩部を構成する外殻上方部材と、その周側部を構成する胴部材と、その底面を構成する底部材とを有し、外殻上方部材と底部材とで胴部材が上下に挟持された構造のものや、その肩部を構成する外殻上方部材と、その周側部と底面を構成する底部材とが上下に一体化された構造のものでもよい。
【0020】
外殻上方部材3には、内鍋4の鍔部4aを載せるフランジ部3aが設けられている。このフランジ部3aの下端縁には、内鍋4を囲む内胴部材5が嵌合されている。内胴部材5は、外殻上方部材3と、誘導加熱コイル6を巻付けた保護枠7とで上下に挟持されている。
【0021】
保護枠7は椀状に設けられており、その底部中央には、内鍋4の温度を測定するための温度センサー8が設置されている。また、保護枠7の縁部7aは、内胴部材5の下端との嵌合部となっている。保護枠7の高さは、誘導加熱コイル6の巻付けに要する最低限度の高さが確保されるように、縁部7aが誘導加熱コイル6の最上端6aの直上に設けられている。これにより、従来、最上端6aと縁部7aとの間にあった保護枠7の無駄部分がなくなるので、その分だけ材料費を低減することができる。
【0022】
また、外殻上方部材3の上面後端部は、蓋10を開閉させるためのヒンジピン11を通すヒンジ部12となっている。ヒンジピン11には、蓋10を開方向に付勢するヒンジばね13が通されている。
【0023】
図3〜図6に示すように、ヒンジ部12は、上面開放のボックス状に形成されており、両側の側壁部12a,12bには、ヒンジピン11の挿通孔12cが形成されている。後壁部12dの中央には、下向きの切欠き12eが形成されている。切欠き12eは、蓋10の開閉時に、蓋10に係止されたヒンジばね13の一端側巻き端部の移動空間となっている。また、ヒンジ部12の上面中央には、ヒンジピン11を支持するピン受部12fが、後壁部12dおよび前壁部12gと一体に形成されている。ピン受部12fを境として、ヒンジ部12の上面一方側に、ヒンジばね13の他端側の巻き端部を係止するための凹入部14が形成されており、他方側に上下方向の開口部15が形成されている。この開口部15には、蓋10側へ配するリード線16が通される。
【0024】
開口部15の下方には、コードリール20が設置されている。コードリール20は、従来周知のものであり、ケース部材21の一端側開口部にカバー部材22が結合され、カバー部材22の側面に外部端子23が露出する本体ケーシング24を備え、電源コード25と、電源コード25の巻取り軸26と、この巻取り軸26を巻取り方向に回転付勢する回転付勢手段(図示省略)とが本体ケーシング24に収納されたものである。
【0025】
ケース部材21は、樹脂製であり、その外周面上部が円形に設けられおり、巻取り軸26と外部端子23とは、ケース部材21の頂上21aの下方に配されている。
【0026】
このコードリール20は、巻取り軸26が水平方向を向き、外部端子23が器体外殻1の前方側を向くように配向されており、本体ケーシング24の結合隙間27が開口部15の下方からカバー部材22側にΔCだけ外れて位置し、ケース部材21の頂上21aが開口部15の下方から巻取り軸26と交差する方向にΔSだけ外れて位置するように配置されている。
【0027】
コードリール20は、上記の配置において、外殻上方部材3の内面に下向きに形成された突壁30の先端と底部材2の内底面とにより上下に挟持されている。突壁30は、ヒンジ部12の前壁部12gから下向きに延び、先端形状がケース部材21の外周面上部に合致するように設けられている。この合致範囲は、外部端子23の上方からヒンジ部12の側壁部12aの下方までに亘っている。これにより、結合隙間27および外部端子23と開口部15の下方は、突壁30により仕切られている。
【0028】
勿論、突壁30は、図7に示すように、外部端子23よりも下方までケース部材21の外周面に合致するように設けることもできる。
【0029】
さらに、外殻上方部材3の内面には、本体ケーシング24の両側面を挟む下向きの対壁31,31が、巻取り軸26と交差する方向において外部端子23の両側に位置するように突壁30と一体に形成されている。突壁30と対壁31,31の一体形成により突壁30の剛性が高められるので、突壁30の先端とケース部材21の外周面上部との合致状態がより安定する。
【0030】
また、突壁30は、巻取り軸26と交差する方向において一端側の端部が凹入部14に連なり、他端側の壁面に下向きのリブ30aが一体形成された構造となっている。このため、突壁30の倒れが凹入部14とリブ30aにより効果的に防止される。
【0031】
図8に示すように、器体外殻1の組立て時、外殻上方部材3の下面を上向けた状態で、コードリール20がその上面を下向けて対壁31,31に載せられると、ケース部材21の外周面上部に突壁30の先端が当たり、コードリール20が上記の配置に保持される。この状態で、底部材2の上端が外殻上方部材3に嵌合されると、カバー部材22の下縁に形成された突片部22aが底部材2の底面に形成された貫通口2aに嵌まり、突壁30の先端と底部材2の内底面とによりコードリール20が挟持される。そして、従来同様、外殻上方部材3と底部材2とがねじ締結されると、突壁30の先端がケース部材21の外周面上部に密接する。
【0032】
この炊飯器の使用時において、例えば、蓋10を開く際、その蒸気孔10aからおねば等が蓋外面を伝って切欠き12eからヒンジ部12内に流れたとしても、おねば等はピン受部12fがヒンジ部12の底部上面に対し高さをもっているので、堰き止められる。また、ピン受部12fを伝って開口部15からおねば等が器体内に落下したとても、そのおねば等は、ケース部材21の外周面上部を突壁30の壁面に沿って流れ、或は、ケース部材21の側面を流れ(図5参照)、突壁30の最下端部を過ぎた後も突壁30の壁面と平行する方向に流れ落ちる。流れ落ちたおねば等は、底部材2の貫通口2aなどから外部に流出する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態に係る電気器具の外観を示す後方斜視図。
【図2】図1のII−II線の断面図。
【図3】(a)同上の外殻上方部材を、そのヒンジ部の後壁部を部分的に切欠き、コードリールを想像線で示す後面図。(b)(a)図のヒンジ部付近を拡大して示す上面図。(c)(a)図のc−c線の断面図。(d)(a)図のd−d線の断面図。
【図4】同上の外殻上方部材のヒンジ部付近を拡大して示す下面図。
【図5】図1のV−V線の断面図。
【図6】同上の外殻上方部材からコードリールを外した状態を斜め下方からの視線で示す分解斜視図。
【図7】同上の外殻上方部材に形成する突壁の別例を、想像線で描いたコードリールと共に示す概略後面図。
【図8】同上の上下逆向きにした状態で、外殻上方部材と底部材とが分離した状態を示す分解斜視図。
【図9】従来例の器体後部付近を拡大して示す部分縦断側面図。
【符号の説明】
【0034】
1,40 器体外殻
2,41 底部材
2a 貫通口
3,42 外殻上方部材
3a フランジ部
4 内鍋
4a 鍔部
5 内胴部材
6 誘導加熱コイル
6a 最上端
7 保護枠
7a 縁部
8 温度センサー
10 蓋
10a 蒸気孔
11 ヒンジピン
12,43 ヒンジ部
12a,12b 側壁部
12c 挿通孔
12d 後壁部
12e 切欠き
12f ピン受部
12g 前壁部
13 ヒンジばね
14 凹入部
15,45 開口部
16 リード線
20,50 コードリール
21 ケース部材
21a 頂上
22 カバー部材
22a 突片部
23,56 外部端子
24,53 本体ケーシング
25,51 電源コード
26,52 巻取り軸
27,57 結合隙間
30 突壁
30a リブ
31 対壁
44 ヒンジカバー
46 壁面
47 コネクタ
48 下側開口部
54 合成樹脂ケース
55 金属カバー
58 遮熱カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
器体外殻が、その底面を構成する底部材と、この底部材と上下に一体化される外殻上方部材とを有し、前記器体外殻の開口部下方にコードリールをその巻取り軸が水平方向を向くように設置した電気器具において、前記コードリールは、ケース部材の一端側開口にカバー部材が結合され、カバー部材側面に外部端子が露出する本体ケーシングを備え、この本体ケーシングの結合隙間を開口部下方からカバー部材側に外して位置させ、前記外殻上方部材の内面に下向きの突壁を前記ケース部材の外周面上部に合致する先端形状で形成し、この突壁の先端と前記底部材の内底面とにより前記コードリールを上下に挟持させたことを特徴とする電気器具。
【請求項2】
前記突壁を、前記外部端子よりも下方位置まで前記ケース部材の外周面に合致するように設けたことを特徴とする請求項1に記載の電気器具。
【請求項3】
前記外殻上方部材の内面に、前記本体ケーシングの両側面を挟む下向きの対壁を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の電気器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−192145(P2006−192145A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8063(P2005−8063)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】